九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
窯業系廃棄物の再資源化による多孔質材料の創製に 関する研究
古田, 祥知子
https://doi.org/10.11501/3180550
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
o
窯業系廃棄物の再資源化による 多孔質材料の創製に関する研究
平成12年11月
古田祥知子
目 次
第1章 緒論
第1節 緒言---
第2節 陶磁器産業における廃棄物問題一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 4 第3節 廃棄物を原料とした多孔質セラミックスの創製一一一一一一一一一一一 8 第4節 本論文の概要一一一一一一……一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一9
第2章 肥前地区における窯業系廃棄物の性状
第1節 緒言一一一一一一……一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一11 第2節 粗粒石英残澄一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一11 2・1 じ 旦同小
2-2 排出状況
2・3 粗粒石英残澄の特性 2・4 本節のまとめ
第3節 石膏廃棄物…一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一18 3-1 背反
3-2 排出状況
3・3 石膏廃棄物の特性 3-4 本節のまとめ
第4節 本章のまとめ……一一一一一一一一一一一一一一一一一一一………----24
第3章 粗粒石英残澄を用いた多孔質シリカの創製
第1節 緒言一一一一一一一………一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一25 第2節 プレス成形法による多孔質シリカの作製と特性一一一一一一一一一一一26 2-1 序
2-2 実験方法 2-3 結果と考察 2-4 本節のまとめ
第3節 押出し成形法による多孔質シリカの作製と特性一一一一…一一一一一一35 3-1 序
3-2 実験方法 3-3 結果と考察
3・4 本節のまとめ
第4節 本章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一…一一………一一一-38
第4章 石膏廃棄物を用いた水酸アパタイトの合成
第1節 緒言一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一40 第2節 石膏廃棄物を原料とした水酸アパタイト多孔体の合成一一一一一一一一41 2-1 序
2-2 実験方法 2-3 結果と考察 2・4 本節のまとめ
第3節 石膏の水酸アパタイト化に及ぼすマイクロ波照射の効果一一一一一一一一52 3・1 序
3-2 実験方法 3-3 結果と考察
3・4 本節のまとめ
第4節 本章のまとめ一一一一………ー……一一一一一一……一一一一一一一一一一60
第5章 粗粒石英残透から作製した多孔質シリカの食品工業への応用
第1節 緒言一一---62
第2節 セラミックスパイオリアクターによる超淡口醤油の製造-一一一一一一一65 2-1 序
2-2 実験方法 2-3 結果と考察 2・4 本節のまとめ
第3節 活性炭によるシリカ多孔体の表面改質と酵母固定化能の検討一一一一一72 3-1 序
3-2 実験方法 3・3 結果と考察
3-4 本節のまとめ
第4節 本章のまとめ一一一…一一一一一一一一一一一一………一一一…一一-80
第6章 石膏廃棄物から合成した水酸アパタイト多孔体の応用
第1節 緒言一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一82 第2節 石膏廃棄物から合成した水酸アパタイトによるPb2+イオンの除去一一-83 2-1 序
2-2 実験方法
2-3 結果と考察 2-4 本節のまとめ
第3節 Pb2+イオンを回収したアパタイトからのPb2+イオンの再溶出…………-93 3-1 序
3-2 実験方法
3・3 結果と考察 3-4 本節のまとめ
第4節 本章のまとめ…一一一一一………一一一一一…………一一一一一一101
第7章 総括一一一一一一一………一一一一一一一一一一一一一一一一一103
参考文献一一一一………一一一一一一一…………一一一一一一一一一一一一一一一一105
謝辞...
参考論文一一一一...・---112
第1章緒論
第1 章 緒 論
第1節 緒言
近年、 環境問題への関心が世界的に高まっている。 新聞やテレビ等のメディアにおいて も環境のことが語られない日はほとんどない。 産業革命以降の技術進歩により人間の生活 水準が世界的に向上するにつれて経済活動も拡大し、 自然界に存在する資源及びエネルギ ーの消費量が急激に増加してきた。 地球の長い歴史の中で蓄積されてきた鉱物資源や化 燃料がわずか100年足らずで急激に減少している。 そして産業の多様化・使い捨て文化の
蔓延により、 発生する廃棄物の種類・量も加速度的に増加するという結果となった。 人間 は生きていく上で、 地球から必ず何らかの資源を採取し、 使用した後に廃棄する。 文明が 発達する以前は、 社会生活の中から発生する廃棄物はさほど多くはなく、 自然生態系の中 での物質循環で十分に処理されていた。 しかし現代の複雑化かつ巨大化した人間社会から 発生する廃棄物はもはや自然生態系の循環だけでは処理しきれなくなり、 二酸化炭素の放 出による地球温暖化、 都市部での大気汚染、 水質汚染、 埋め立て処分場の飽和など数多く の深刻な社会問題を引き起こしている。 現代は、 地球資源の採取から廃棄に至るあらゆる 段階で、 環境への負荷が高まっている時代であるといえる。
人類が今後も豊かな文明を維持していくためには物質循環を自然の力に委ねるだけで はなく、 鉱物資源や化石燃料など限りある地球の資源を少しでも長持ちさせるために廃棄 物を再利用し、 物質循環(リサイクル)型の社会システムを構築することが求められてい る1,2)。 このような観点から、 平成3年には「再生資源の利用の促進に関する法律J (略称・
リサイクル法)が制定された3)。 この法律では再生資源の利用目標が掲げられ、 国や地方 公共団体は、 再生資源利用を促進するための施策を実施し、 地域の実情に即して再生資源 の利用を促進するよう努めることとされている。 また、 関係事業者の責務として、 製造業 者は自ら発生した副産物の利用に努めるとともに、 用途に応じた規格・仕様に加工するな ど、 副産物を再生資源として利用することが挙げられている。 さらに再生資源の利用を推 進するために、 平成12年5月には「循環型社会基本法」が成立した4)。 この法律は国 ・ 地方行政・事業者・消費者が役割を分担して資源リサイクル・省エネルギー ・排出物最少 化を行うことで持続的発展可能な社会の形成を目指すものである。 平成13 年4月より実 施に移される予定となっている。
日本国内で発生する廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分類される。 そのうち産業廃棄
第1章緒論
物は表1-1に示すように19種類が法律と政令で定められている5)。
表1-1 産業廃棄物の種類一覧
燃えがら 石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃排出物、その他の焼却残澄
活性汚泥法による余剰汚泥、パノレプ廃液汚泥、動植物性原料使用工業
|
2 汚でい の廃水処理汚泥、ヒ。ルヒ。ット汚泥、カーバイトかす、赤泥、炭酸カノレシウム かすなど工場排水などの処理後に残る泥状のもの及び各種製造業の製 造工程ででる泥状のもの
1去 3 廃油 潤滑油系、絶縁油系、洗浄油系および切削油系の廃油類、廃溶剤および
|
律 ターノレヒ。ッチ類など、鉱物性油及び動植物性油脂に係るすべての廃油
4 廃酸 廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類など、すべての酸性廃液
5 廃アノレカリ 廃ソーダ液、金属せっけん液など、すべてのアルカリ性廃液
6 廃プラスチック類 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくずなど、合成高分子系化合物に 係る固形状液状すべての廃プラスチック類
紙くず パノレプ製造業、紙製造業、紙加工品製造業、新開業、出版業、製本業、
印刷物加工業から生ずる紙くずおよびPCBが塗布された紙くず
建設業に係るもの並びに木材または木材木製品製造業(家具製造業を含 2 木くず む)、パノレプ製造業、輸入木材卸売業から生ずる木材片、おがくず、パー
ク類など
3 繊維くず 衣服その他の繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊 毛くず等の天然繊維くず
4 動植物性残澄 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業、あめかす、のりかす、醸造力 す、発酵かす、魚及び獣のあらなど
5 ゴムくず 天然ゴムくず
6 金属くず 鉄鋼、非鉄金属の研磨くず、切削くずなど
7 ガラスくずおよび
ガラスくず、耐火れんがくず、陶磁器くずなど 政 陶磁器くず
メ寸b1、
8 鉱さし\ 高炉・平炉・電気炉などの残さい、キューポラのノ口、ボ夕、不良鉱石、不 良石炭、粉炭かすなど
9 建設廃材 工作物の除去にともなって生ずるコンクリートの破片、レンガの破片その他 これに類する不要物
10 動物のふん尿 畜産農業から排出される牛・馬・豚・めん羊・にわとりなどのふん尿 11 動物の死体 畜産農業から排出される牛・馬・豚・めん羊・にわとりなどの死体
大気汚染防止法に定めるばし1煙発生施設又は汚泥、廃油、廃酸、廃アノレ カリ、廃プラスチック類、上記1に掲げるものでPCBが塗布された紙くずもし 12 ばいじん くは上記6に掲げるもので、PCBが付着し又は封入された金属くずの焼却
施設において発生するばいじんで、あって、集じん施設によって集められた もの
燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類又は上記l 13 その他 '"'-' 12に掲げる産業廃棄物を処分するために処理したもので、あって、これら
の産業廃棄物に該当しなしもの
第1章緒論
厚生省の調査によると、 図1-1 に示すように平成2年以降産業廃棄物の総排出量はほぼ 横ばい傾向にあり、 平成8年度のデータでは全国で約4億500万トンとなっているG)。 こ のうち全体の37%にあたる1億5000万トンが再生利用され、 46%の1 億87 00万トンは 中間処理などで減量化されている。 最終的に処分されている量は平成6 年度より減少傾向 にあるが、 平成8年度の時点でも17%にあたる6800万トンが最終処分に回されている。
最終処分される廃棄物はその化学的安定性に応じて、 安定型処分場、 管理型処分場、 遮断 型処分場に分けて廃棄される。 いずれの処分場も、 残存容量と残余年数は非常に厳しい状 況にあり、 廃棄物そのものの発生を抑制するための根本的な解決が望まれる。
45000 40000
�
35000 咽30000 拡25000ES
20000監
15000諸問。
5000 0
H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8
年度
図1-1 圏内の産業廃棄物の総排出量 (厚生省資料)
ロ再生使用量 圃減量化量 ロ最終処分量
このような背景を受けて、 資源の再利用を促進し環境に配慮した製造フロセスを構築す るための取り組みは各産業において増えてきている。 18014 000シリーズの取得 を目指す 企業もここ数年急激に増加しており、 日本の産業界全体での取得件数は平成8年9月から 平成11 年9月までの3 年間で89件から2531件と約3 0倍に伸びている7)。 今後、 モノ 作りの立場から環境への負荷低減を考える上で重要なポイントとしては、 ①できるだけ少 ない材料とエネルギーで製品を製造すること(省資源化製造技術)、 ②耐久性が高く、 寿命 の長い製品を設計すること(製品の長寿命化技術)、 ③再利用を前提とし、 分解や分別の容
第1章緒論
易な製品を設計すること(環境に優しい材料設計)、④生産工程で発生する廃棄物を資源と
して再利用するフロセス (再資源化技術、 再生資源利用技術) の4つを確立することであ るが。 このうち①、 ②は企業において生産性向上や製品のコストパフォーマンス向上とい う面を強化していくことの延長線上にある。 最近では③についても、 家電品メーカーなど を中心として、 解体の容易な製品設計を行うなどの取り組みが進んでいる。④については 発生する廃棄物の量や性状によっては再資源化が容易でないものも多いが、 企業・ 大学・
公設試験研究機関等で種々の廃棄物を再利用するための基礎研究や応用研究が行われてい る9� 13)。
第2節 陶磁器産業における廃棄物問題
表1-1に示すように政令で指定されている産業廃棄物中、 陶磁器は第7番目の「ガラス および陶磁器くずJとして分類されている8)。 産業別にまとめられた平成8年度の産業廃 棄物の排出量を見てみると、 製造業が全体の 33.8%を占めている。 また業種別に見ると、
陶磁器産業単独では分類されていないが、 表1-2に見られるように窯業・ 土石製品関連廃 棄物の総量は1579万トンであり、 産業廃棄物全体の3.9%を占める。 この3.9%という数 値は、 産業廃棄物全体に占める割合としては決して大きな数値ではない。 しかし陶磁器を 含む窯業系廃棄物の問題点は、 再生 利用や減量化処理の割合が少なく、 最終処分に回され る割合が高いということにある。 平成8年度の主な産業廃棄物の種類別処理状況では、 図 1-2に示されるように「ガラスおよび陶磁器くず」の最終処分の割合は60%と、 ゴムくず の次に高い。 中でもガラスと比べ、 陶磁器は再資源化される割合が低いといわれている。
この理由としては、 溶融しなおすことで合成原料として再使用することが可能な金属材料 やプラスチック材料と違い、 構成元素が複雑で鉱物組成が多種多様なために原料としての 再生が極めて困難なことが考えられる14)。しかし陶磁器製品というのはもともと粘土や を原料として製造された無機物であるから、 特殊な場合を除いて有害な重金属や分別困難 な有機系ポリマーをほとんど含んでいない。 よって最終処分された場合に環境に与える悪 影響はプラスチックや金属と比較すれば小さく、「ガラスおよび陶磁器くずJは、「安定型 産業廃棄物」に分類され、 最終処分時には「安定型埋立処分場Jに埋めることができると されている。 しかしながら今後の産業の有り方として、 地球環境に対する負荷を低減させ るという観点から、 陶磁器の製造工程においてもまた排出される物質をできるだけ少なく し、 また生じた排出物を再資源化し、 有効利用の可能性を探っていくことは重要である。
第1章緒論
表1・2 平成8年度の各産業廃棄物の排出量
業 種 平成8年度排出量と割合
排出量(千t) 割合(%)
農業 72,517 17.9
林業 。 0.0
漁業 58 0.0
鉱業 27,999 6.9
建設業 77,138 19.1
製造業 136,563 33.8
食料品 11,696 2.9
飲料・飼料・たばこ 5,331 1.3
繊維工業 2,550 0.6
衣服・その他の繊維製品 198 0.0
木材・木製品 4,071 1.0
家具・装備品 464 0.1 パルプ・紙・紙加工品 28,296 7.0
出版・印刷・同関連 1,083 0.3
化学工業 17,840 4.4
製 石油製品・石炭製品 808 0.2
1 丑r=l二
プラスチック製品 1,421 0.4
業
内 ゴム製品 314 0.1
訳 なめし革・同製品・毛皮 157 0.0
窯業・土石製品 15,791 3.9
鉄鋼業 28,033 6.9
非鉄金属 3,794 0.9
金属製品 3,470 0.9
一般機械器具 1,721 0.4 電気機械器具 4,092 1.0 輸送用機械器具 4,163 1.0
精密機械器具 228 0.1
その他 1,043 0.3
電気・ガス・熱供給・水道業 79,970 19.8
運輸・通信業 1,102 0.3
卸売り・小売業 5,689 1.4
サービス業 3,546 0.9
ノ0�予カ告E 21 0.0
合計 404,602 100.0
第1章緒論
圃
国圃 - 圃
ロ再生使用量
・減量化量 ロ最終処分量 100%
80%
60%
40%
20%
Aw--仰のが設け一酬坦恭 汚泥ゴムくず繊維くず木くず廃プラスチック類廃油ガラス及び陶磁器屑紙くずばいじん建設廃材金属くず鉱さい
0%
巾成8年度の主な産業廃棄物の種類別処理状況(厚生省資料) 苅1-2
す 図中に示すような各工程で廃棄物が発 程を図1・3に示す。
大まかな陶磁器の製造
その中で最 いくつかの産地に集積しているという特徴がある。
る。 国内の陶磁器産業は、
が九州西北部の も生産規模の大きいのが瀬戸や美濃を中心とした中京地区であり、 二番
佐賀県・長崎県にまたがる肥前地区である。 同じ陶磁器の産地でありながら、 中京地区と肥 前地区では大企業を中心とした大量生産と中小零細企業による多品種少量生産という企業 また、 使用されている原料の種類や量も異なるため、 製造プロセス内 形態の違いがある。
それぞれの 者を同列に扱うことはできず、
資源化を議論する時に で発生する廃棄物の
また、 廃棄物の再利用の際には運 産地に適した廃棄物の有効利用法を見出す必要がある。
搬コストの低減という観点からも、 地域の廃棄物はできるだけその地域内で再資源化する さらに地域産業がすでに有している能力で十分対応可能な技術を提案するのが望ま こと、
これは窯業のみならず他の産業においても共通しており、 特定の地域に産業が集積 しい。
その産業で発生する廃棄物の再利用はそれぞれの地域内での研究課題 している場合には、
とされ、 各県の公設研究機関で地域特有の産業廃棄物の利用研究が近年活発に行われてい
る15�18)。
陶磁器製造工程
原料採取
中京地区:粘土+珪石+長石 肥前地区:天草陶石
第1章緒論
発生する廃棄物
一令|
原料中の不要部分一
川
不良品・破損品石膏廃材|
不良品・破損品
不良品・破損品
不良品・破損品
破損品・返品分 図1-3一般的な陶磁器の製造工程と各工程で発生する廃棄物
陶磁器産業について見てみると、 中京地区の場合は自動化された大規模な工場が中心で あるため、 発生する廃棄物の量がまとまっており、 スケールメリットの点から再資源化に おけるコストを抑えるのに有利である。 また大企業ほど自社グルーフの工場開で不要物を 循環・再利用することが容易で、 大手メーカーを中心としてゼロ・エミッションへの取り組 みが進んでいる 19�21)。 一方の肥前地区では佐賀県 ・ 長崎県合わせると陶磁器関連企業の 数は500社を超えるが、 その大半が従業員20人以下の中小零細企業である。 そのため製 造の各工程で生じる廃棄物の品質や量にばらつきがあり、 一括処理も困難で、 中京地区と 比べると廃棄物再資源化への地域全体での取り組みが進んでいないのが現状である。
廃棄物を再利用するための方法には、 廃棄物を何らかの形で加工し原料中に混合して再
第1章緒論
利用する方法と、 全く新しい別の製品を製造するための原料として廃棄物を用いるβ法の 二つがある。 廃棄物を原料中に混合して再利用することの利点は、 製造プロセスの中で物 質循環を完結させることができることにあるが、 その一方で製品の性能を低下させる恐れ がある。 一方、 廃棄物を用いて新しい素材の開発を行う場合には、 廃棄物のもつ特性を十 分に生かし、 できるだけ新たなエネルギーを使わずに新しい素材を合成することが重要で ある。 どちらの方法であっても、 地域が抱える窯業系廃棄物の再資源化を促進するには、
地域内で有している設備と技術ポテンシャルで十分対応可能な方法を提案することが望ま れる。
第3節 廃棄物を原料とした多孔質セラミックスの創製
多孔質セラミックスは物質内に無数の気孔をもっ無機材料である。気孔のサイズ、 分布、
組織形態の違いによって多孔質セラミックスには図1・4に示すように分離22,23)、吸着24)、
分散25)、 担持26)、 軽量化27)、 断熱28)など様々な機能があり、 各機能に対応した多くの産 業分野で応用されている。 多孔質セラミックスの主な製造方法には、 粒子同士の焼結が完 全に進行する前の状態、で保持し、 粒子と粒子の隙間を気孔として利用する焼結法29,30)、 金 属アルコキシドの加水分解を利用したゾル・ゲル法31,32)、 ガラスの分相現象を利用した分
1nm 10nm 100nm
a-・� 10nm
限外ろ過 --
1nm 100nm
20nm �
分子ふSい
1nm:
吸着斉日
: 2nm
lμm 10μm 100μm 1mm 1cm
触媒担体 -ー
40μm
4 酵母担体 惨
10μm 400μm
精密ろ過 惨 :
透J性タイノレF材
唱・ ガスろ過 ・ー
2μm � 100μm
-・ ・・
4 散気盤
10μm 600μm
図1-4 各種多孔質素材の気孔サイズと用途
ー_....
第1章緒論
相法33,34)、 またゼオライトの分子構造やシリカゲルのネットワーク構造からなるミクロポ アやメソポアを生成させる合成法 35�37)、 など様々な方法があり、 目的の気孔サイズをも っ多孔質セラミックスを合成するのに適した原料とフロセスが用いられる。 近年ではファ インな原料だけでなく、 窯業系廃棄物をはじめとする建材、 ガラス廃棄物、 石炭灰など各 種無機系廃棄物、 火山灰のような未利用資源を有効利用した多孔質セラミックスの試作研 究と用途開発が、 それらの廃棄物の発生する各地域で活発に行われるようになった。 例え ば火山灰のシラスを用いた多孔質ガラス38)、石炭灰や都市ゴミ焼却灰を用いたゼオライト 39, 40)、 汚泥焼却灰や窯業系廃材をを用いた舗装用ブロック 41)、 など様々な開発が行われ ている。 図1-4で示した多孔質セラミックスの用途の中で、 精密ろ過、 限外ろ過、 ガスろ 過、 分子ふるいなど、 気孔サイズの均一性によって性能が左右されるような材料では、 厳 密な材料設計とフロセス管理が必要不可欠である42�45)。 しかし、 散気盤、 透水性タイル、
微生物担体など、 比較的気孔サイズに幅がある場合、 天然原料や廃棄物原料から製造した 製品でも十分利用価値がある。 また使用目的によっては従来の陶磁器と同程度またはそれ より低い焼成温度で創製することができるので、 製造にかかるエネルギーコスト及び新た な設備投資を少なくできるという利点がある。
九州西北部に位置する窯業の集積地である肥前地区は、 中小零細企業が多いこともあっ て環境対策、 廃棄物の再資源化利用が遅れている。 本論文においては、 肥前地区で発生す る窯業系廃棄物の現状を調査し、 廃棄物の特性を生かした新規な多孔質セラミックス素材 の創製を目指すことにした。
第4節 本論文の概要
本論文は、 九州西北部にある肥前地区で発生する窯業系廃棄物を原料とした多孔質セラ ミックスの創製とその活用に関して述べたものである。 陶磁器製造フロセスでは各段階で 廃棄物が発生するが、 本論文ではその中で陶土製造工程で生じる粗粒石英質廃棄残澄と、
陶磁器の成形工程で発生する使用済み石膏型の2種類に着目し、 本来持っている材料特性 を生かした多孔質セラミックスを創製するとともに、 その応用について研究を行った。
第1章では、 現在の社会における環境問題の重要性について延べ、 その中での窯業系廃 棄物の位置付け、 陶磁器業界における廃棄物の再資源化の方向性について概要を述べた。
第2章では、 九州西北部を中心とする肥前地区の陶磁器産地の現場で、 陶磁器製造の各 工程から生じている廃棄物の現状を調査し、 概要を述べた。 その中で特に、 陶土製造工程
�
第1章緒論
で生じる粗粒石英残澄と陶磁器の成形工程で発生する石膏廃棄物の二つを取り上げ、 これ らが発生する背景について述べるとともに、 現在の排出量、 原料としての特性について議
諭した。
第3章では陶土製造工程で生じる粗粒石英残澄を原料として焼結法により多孔質セラミ ックスを合成し、 その特性について述べた。
第4章では石膏廃棄物を原料として水熱処理法により水酸アパタイト多孔体を合成し、
そのキャラクタリゼーションを行った。 また近年省エネルギープロセスとして注目されて いるマイクロ波水熱処理を用い、 石膏の水酸アパタイト化に及ぼすマイクロ波導入の効果 を論じた。
第5章では、 粗粒石英残澄から合成した多孔質シリカのもつ気孔が、 食品工業に利用さ れている酵母類の固定化に適した孔径であることに着目し、 多孔質シリカに醤油製造用の 主発酵酵母を固定化させ、 超淡口醤油製造用バイオリアクター担体として用いた実用例を 紹介した。 さらに、 微生物との親和性が注目されている炭素材で多孔質シリカを修飾する ことによる酵母固定化能の向上を図った。
第6章では、 石膏廃棄物から合成した水酸アパタイト多孔体の水質浄化用部材としての 活用を図るため、 重金属に対するイオン回収能を利用して、 水溶液中からの鉛イオンの除 去試験を行った。 また、 鉛イオンを回収した後のアパタイトからの鉛イオンの再溶出試験 を行い、 実用上の問題を検討した。
第7章では本論文の総括を行った。
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
第2章 肥前地区における窯業系廃棄物の性状
第1節 緒言
第1章で述べたように、 佐賀・長崎両県にまたがる肥前地区は、 中京地区に次ぐ日本第2 の陶磁器産地である。 いずれの産地においても、 主力製品は磁器である4G)。 大量生 産を とする大企業の多い中京地区に対し、 肥前地区は中小零細企業の集合体で、あるという特徴 がある。 また原料の面では、 可塑性粘土と珪砂と長石を配合した陶土を磁器の主原料に使 用している中京地区に対し、 肥前地区は主に陶石単味から精製した陶土原料を使用してい るという違いがある47)。 これは中京地区が世界でも有数の良質な可塑性粘土を豊富に産出 する東濃地区を抱えているのに対し、 肥前地区では熊本県天草郡で良質な陶石が産出する という地域的な理由による。 さらに肥前地区では製造の分業化が進み、 製土を専門に行う 陶土業、 成形と素焼き専門の企業、 上絵付けを専門に行う上絵業など、 各工程を専門に行 う業者が存在する48)。 したがって、 原料の調製から製品製造の各工程における廃棄物の排 出状況は中京地区のそれと比較して複雑である。
肥前地区における磁器製造工程を図2-1に示す。 この工程の中で発生する主な廃棄物に
は(1)陶土を製造する際、 水簸残澄として分離される粗粒石英残澄、(2)製造の各工程 で発生する不良品や破損品などの陶磁器屑、(3)鋳込み成形等の型材として使用したあと の石膏廃棄物がある48)。 これらの中で、 本論文では( 1 )の陶石から陶土を製造する過程 で生じる粗粒石英残澄と、 陶磁器製品の成形過程で発生する(3)の石膏廃棄物について 有用な多孔質素材への転換を試みた。 廃棄物から新しい材料を合成する際に考慮しなけれ ばならないのは、 素材の持つ本来の特性を生かし、 できるだけ少ないエネルギーで新しい 素材への転換を行うことである。 そのためにはまず廃棄物の素性と特性を明らかにする必 要がある。 本章ではこれら2種類の廃棄物が陶磁器製造工程で生じる背景、 排出量につい て明らかにするとともに、 材料としての特性を調べた。
第2節 粗粒石英残澄 2-1 背示
磁器の原料として必要な鉱物組成は、 主に骨格としての石英(α - Quartz)、 成形時の 可塑性を付与するカオリナイト(Kaolinite)等の粘土成分、 焼成時に素地中にガラス相を 形成するための長石(Feldsper)の3つである。 肥前地区で磁器の主原料に用いられてい
---
--
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
陶磁器製造工程 発生する廃棄物
一一一一一一
川
粗粒石英残溢一一-
�
不良品破損品石膏廃材一一一
川
不良品破損品ー--
�
不良品破損品---
.{
不良品破損品一一一
叫
破損品返品分図2-1 肥前地区における陶磁器の製造工程と発生する廃棄物
る熊本県天草郡産の天草陶石はこれらの必要成分をすべて内包しており、 陶石単独で磁器 用陶土を生成することが可能な原料である49)。 天草陶石のX線回折パターンを図2・2に、
化学分析値を表2-1に示す。 鉱物的には石英(α - Quartz)を主成分とし、 粘土成分とし てカオリナイトCKaolinite)、 セリサイトCSericite)を含有している。 図の X 線回折パ ターンではほとんど確認されないが、 少量の長石CFeldsper)を含む。 また、 褐鉄鉱や菱 鉄鉱由来のFe203を僅かに含有している50)。
草陶石の場合、 原石中に含まれる石英分は磁器の製造には過剰であり、 これを除去し ないと陶土の成形性や可塑性の低下、 成形体の不均質などの不具合が生じる。 また石英分 が粗粒のまま存在すると、 以下のような理由で焼成時に問題が生じる。
J固』
9000 8000 7000 I
令υ0 6000
--=-- 5000
性1RH 4000 要3000
2000 1000 I
。I
。
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
4・ ....
あ 10
。
。
20 30
2 e /0 (Cu-K α)
0 石英企 セリサイト - カオリナイト
40
刈2-2 天草陶石原鉱のX線回折パターン
表2・1 天草陶石原鉱の化学分析値(単位:wt%)
50
強熱減量 Si02 Al203 Fe203 Ti02 CaO MgO Na20 K20 2.75 78.50 14.77 0.47 0.02 0.09 0.06 0.10 2.75
図2-3に磁器素地の焼成に伴う組成の変化を示す51)。素地中において長石成分が融液化 したガラス相は高温になるに従って伸展し、 素地の紋密化を促進する。 カオリナイトはメ タカオリン→スピネルを経て、 ムライト[3Alz03.2Si02]の針状結品となり焼結体の機械的 強度を高めるはたらきをする。一方素地中に存在する微細な石英粒子は12000C付近からガ ラス相に熔融し始めるが、 完全には熔化せず、 ガラス相の中に石英の形で残存する。 最終 的に焼成体を構成するのは、 図2・4に示すように残存した石英、 析出した針状ムライト、
そしてガラス相で、 僅かな気泡を除いてはほとんど気孔は存在しない。 ここで素地中に粗 粒の石英が存在すると、 焼成の最終段階でß-クリストバライトに変化することがある。
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
14000C 石英-のクリストノくライト化
12000C斗焼結完了 長石の融液化 10000C斗粘土のムライト化
珪酸の遊離 8000C斗
6000C斗
石英のα→8転移 石英
↓
の3→臼転移4000C斗粘土の結晶水の揮発
クリストパライトの3→α転移
室温」付着水の蒸発
週日
図2・3 磁器素地の焼成に伴う変化
。
l々
。
ガラス相そミ
イ\ 0
口 二三 。
図2・4 磁器焼成体中の成分の分布モデル
-回』
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
冷却過程に入ると5730Cで石英結晶の3→α転移があり、 石英の密度が2.51 g/cm3から 2.65g/cm3へと変化するので6%程度の体積収縮が起きる。さらに焼成体中にクリストバラ イトが生成している場合には2200Cにおいても3型(2.18 g/cm3)からα型(2.34 g/cm3)への 転移に伴う体積収縮が起きる。 焼成体中の石英粒子の粒径が小さい場合にはこれらの体積 収縮は大きな問題にはならないが、 成形体素地中に粗粒の石英粒子が過剰に存在している と、 石英粒子が粗粒のまま焼成体中に残ったりクリストパライト化が起こる可能性が高く なるので、 冷却時の相転移に伴う体積変化が大きくなり、 割れの原因となる。
したがって、 このような問題を解消するために、 天草陶石から陶土を製造する工程では、
陶石中に含まれる過剰な石英分が取り除かれることになる。 通常、 磁器原料の陶土は 60 μm以上の粗粒石英を含まない状態に調製されている。 本節では陶土製造工程で除かれる 過剰の石英分について排出状況を述べるとともに原料としての特性を調べた。
2-2 排出状況
天草陶土の製造工程を図2-5に示す。 原石 は粗砕後、 スタンプミル(図2・6)による衝 撃粉砕工程で微粉砕される。 この工程では粘 土を多く含む軟質部分だけが微粉砕され石英 を多く含む硬質部分は粗粒のまま残る。 次に 薄い懸濁液中での粒子の沈降速度の差を利用 した水簸工程と呼ばれる分離法で粗粒子の石 英質部分と微粒子の粘土部分を分離する。 こ のようにして約 60μm 以上の粗粒の石英分 を取り除き、粘土分を多く含む約60μm以下 の粒子を濃縮し、 脱水、 土練り工程を経て陶 土を調製する。 水簸工程で取り除かれた粗粒 の石英分が、 肥前地区で「珪」と呼ばれる残 澄である。本論文においては「粗粒石英残澄」
と表記する。
粗粒石英残澄
図2・5 天草陶石からの陶土の製造工程
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
天草陶土の化学 分析値 の例を表 2-2に示す。 表2-1の天草陶石原鉱 の分析値と比較して調製された陶
中の Si02は減少し、 石英分が除去 されていることがわかる。 天草陶石 を原料として肥前地区全体で製造さ れている陶土は年間約27 ,OOOtであ るが、 これに伴って排出されている 粗粒の石英残澄は約 4,OOO'"'-'5,500t で、 原石の約15'"'-'20wt%を占めて いる48)。排出された 石英残澄のうち 約4分の1は工業用陶磁器の石英源
図 2・6 陶石の微粉砕に使用されている スタンプミjレ
や外装用タイルの紬薬用 原料として再利用されているが、 残り は野積み状態、のまま放置さ れており再資源化技術に関する研究が望まれている。
表2・2 天草陶土の化学分析値(単位: wt%)
強熱減量 Si02 Al203 Fe203 Ti02 CaO MgO Na20 K20 3.95 75.83 16.17 0.44 0.05 0.04 0.17 0.47 2.93
2-3 粗粒石英残澄の特性
粗粒石英残澄は湿った状態で野積みされている。 これを採取し乾燥した後に、 微量含ま れている 1mm 以上の粗大粒子を飾で取り除き、 原料としてのキャラクタリゼーションを 行った。 まず図2・7に粗粒石英残澄のX線回折パターンを示す。 図に示されるようにほぼ α一石英からなり、 図2-2のX線回折パターンにあるようなカオリナイトやセリサイトな どの粘土成分は水簸によって取り除かれているためほとんどみられな い。 化学分析値を表
2-3に示す。 化学組成の93%以上はSi02からなるが、 Ab03、 Fe203、 K20などを少量含 む。Si02以外のこれら の成分は、 粗粒石英粒子表面に僅かに付着している粘土の微粒子と 微量の褐鉄鉱や菱鉄鉱に由来すると考えられる。 昆J 2-8は粗粒石英残澄のSEM写真であ る。 スタンプミル粉砕で 粒子同士が擦れ合うことにより、 粒子 の形状は全体的に角が少な
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハU ハu nU ハU ハU ハU 06 ヴi ハhU Fhυ λ斗A nJ nL 1i
(凶♂)MmM恕礎×
0 石英 。
。 10
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JJ J L
20 30
2 e /0 (Cu-K α)
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40 50
図2-7 粗粒石英残澄のX線回折パターン
表2・3 粗粒石英残澄の化学分析値(単位: wt%)
Al203 K20
強熱減量 Si02
1.16 93.31 4.28 0.05
図2-8 粗粒石英残澄のSEM写宍
Fe203 Na20
0.29 0.87
く丸みを帯びているのが特徴である。 直径約 20'"" 100μm程度の粒子が観察される。 粒子 表面には凹凸があり、 この隙聞に微量の粘土 成分が付着していると考えられる。 X線透過 法で測定した粗粒石英残澄の粒度分布を図 2-9に示す。 中心粒径は約45μmで、 粒子の 大半が20'"" 120μmの範囲に存在する。 特に 20μm以下の粒子はほとんど存在しない、 廃 棄物としては非常に粒度の整った材料といえ る。粉末の集合体は図2-10の写真に示すよう に流動性が非常に高く、 成形性は乏しい。
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120
100
品m
捌 … 4020
。
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
10 100 1000
粒径(μm)
図2・9 粗粒石英残澄の粒度分布 珂2-1 0 粗粒石英残澄外観
2-4 本節のまとめ
本節では天草陶石から陶土を製造する工程で発生する粗粒石英残澄の排出状況と特性に ついて述べた。 粗粒石英残澄とは、 原石に含まれる過剰の石英部分を陶土精製工程で分離 したものである。 排出される粗粒石英残澄は原石の約15""20%にあたり、 年間約4000""
5000t排出されている。 粗粒石英残澄の化学組成は93wt%以上がSi02からなり、 鉱物組 成のほとんどがα一石英である。 Si02以外の成分は陶石中の粘土成分に由来するもので、
石英粒子の表面に付着している。粗粒石英質残澄の粒径はほぼ20μmから120μmの聞に 分布しており、 廃棄物としては比較的揃った粒度分布を持っていることがわかった。 また 粒子の形状は丸みを帯びており、 粉体の流動性は高く、 成形性は乏しい。
第3節 石膏廃棄物
3-1 背景
石膏は硫酸カルシウムの一般名として知られる物質で、 古代エジプト時代から工芸品や 天然の石材、 積石の白地等として使用されてきた52,53)。 硫酸カルシウムの形態としては表 2・4に示すように2水石膏、 半水石膏、 無水石膏(I""ill型) がある。 このうち工業的に
多く利用されているのが半水石膏である。 室温で半水石膏(CaS04・1I2H20)を水と
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
比約1:1で混合、撹持すると水和し、約30分で完全に硬化して結晶水 を含むCaS04.2H20 の化学式を持つ2水石膏となる。 この水和による優れた凝結硬化性は他の単塩にはほとん ど見られない性質であり、 完全に硬化するまでの時間が短いので、 建築材料、 金属精密鋳 造用型材など多くの分野で利用されている。 また硬化した 2水石膏は高い気孔率を有する ので陶磁器成形用の多孔質型材としても古くから利用されてきた52)。石膏型が使用される 陶磁器の主な成形方法には鋳込み成形(排泥鋳込み、 圧力鋳込み)および塑性成形(機械 ロク口、 ローラーマシン)がある。 図2-11に石膏型のモデル図を、 図2・12に異なる3種 類の成形法に用いられる石膏型の写真 を示す。 鋳込み成形というのは原料の陶土粉末を水
表2・4 硫酸カルシウムの形態
名称 別称
2水石膏 半水石膏 石膏 焼石膏
I型無水石膏 E型無水石膏 E型無水石膏
α型無水石膏 3型無水石膏 γ型無水石膏
(高温型無水石膏) (低温型無水石膏) (可溶性無水石膏) 硬石膏
務目
苅2-11 陶磁器の成形に使用される石膏型のモデル図
茎12・12 陶磁器の成形に使用される石膏型の写真(左から常圧鋳込用、 圧力鋳 込用、 ローラーマシン用)
--
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
および解惨材と混合して泥しょうを作製し、 十分に乾燥した石膏型の中に流し込んで吸水 させ、 着肉後、 型から取り外す成形法で、 主に複雑形状品の製造に用いられる。 このうち 排泥鋳込みは着肉後、 余分の泥しょうを排出して脱型する方法であり、 圧力鋳込みは圧力 をかけて泥しょうを石膏型に流し込んで、吸水させ、 排泥せずに成形体を得る方法である。
排泥鋳込みは花瓶やポットのような袋型の製品の製造に、 圧力鋳込は肉厚製品の製造に適 している。 機械ロクロ、 ローラーマシンなどの塑性成形は、 石膏型に杯土を置き、 こてや ローラーごてで回転により陶土を圧延しながら成形する方法で、 平皿や碗など単純な
円形状製品の成形に多用されている。 石膏型は安価で複雑形状の鋳型が簡単に作製でき、
成形時の離型性が良好であるなど型材として優れた機能を有するが、 吸水すると軟質化し 耐磨耗性が著しく低下するという欠
点がある。 石膏の室温付近での水に 対する溶解度 は図 2-13 の よ う に CaS04比で約 0.2wt%で54)、使用を 重ねると表面が目減りしてくる。 こ のため使用回数が増えるにしたがっ て成形体の寸法が大型化するという 問題が生じ、 寸法の合わなくなった 石膏型は順次廃棄されている。 本節 では、 陶磁器の成形工程で生じる使 用済み石膏型の排出状況と特性につ
nO Fhd
泊uI
nυ AU
nu (渓).0∞MWハ)
0.3
0.2 0.1
50 75 100 125 150 175 2∞
混 度("C)
図2・13 石膏の溶解度曲線 いて述べる。
3-2 排出状況
肥前地区における石膏型の使用量は3000'"'"'5000 t /年である。 石膏型を利用した成形法 のうち、 鋳込み成形では水分量の多い粘土泥しょうを使用するため石膏型の磨耗が早く、
高精度品で約50回程度、 一般品でも1 00'"'"'150回程度の使用後に廃棄されている。特に圧 力鋳込み成形では型の磨耗が早い。 また機械ロクロやローラーマシンなど塑性成形用の 膏型の場合は鋳込み成形より寿命が長いがそれでも使用回数が増えてくると成形体表面が 荒れてくるため約300回程度の使用後に廃棄されている。 大型で厳しい寸法精度が要求さ れる衛生陶器の製造現場においては石膏の消耗の問題が深刻であるため 、 製品精度の向上
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
と排出物削減を目指し最近では耐磨耗性に優れた多孔質樹脂型が右膏に代わって主流の型 材となりつつある。 しかし製品デザインの変化が少ない衛生陶器と異なり、 日常食器や割 烹食器を主力製品とする肥前地区では製品のライフサイクルが短いため高価な樹脂型はか えってコスト高になるという理由から全く使用されていない。 石膏廃棄物のリサイクル法 のひとつにセメント骨材としての再利用がある。 例えば中京地区の大手陶磁器メーカーで 生じる大量の石膏廃材はセメント会社が引き取り原料の一部として用いるなど、 業種を超 えた資源の循環が形成されている。 しかしながら肥前地区では石膏の廃棄物はセメント用 の原料としてはほとんど利用されていない。 この理由としては、 少ない品種の大量生産を 行っている大手メーカーの場合排出される石膏の性状がほぼ一定でまとまった排出量が見 込めるのに対し、 中小零細企業の集合体からなる肥前地区の窯業産地では使用されている 石膏の特性および排出量が安定しないので、 セメントの原料として安定的に供給すること が困難であることがあげられる。 石膏型はひとたび廃棄物として排出された場合には焼却 処分ができないので埋め立て処分されることになるが、 水に僅かに溶けて硫酸根が流出し たり、 周囲の環境によっては硫化水素ガスが発生する恐れがあるため、 管理型処分場に埋 め立てることが義務付けられている。 平成11年5月に発表された佐賀県産業廃棄物処理 基本計画によれば、 佐賀県内の産業廃棄物最終処分場の残存容量は非常に厳しい状態で、
特に管理型処分場の残余年数が平成10年4月時点であと2.5年と逼迫している状況にあ る55)。 これ以降のデータはまだ示されていないが、 非常に厳しい状況であることに変わり はない。 このような中、 中小の窯元では処分に苦慮し、 使用済み石膏を処理業者に出さず 工場の敷地内に野積み状態で放置しているところも多い。 このため肥前地区全体での正確 な排出量の把握は困難であるが、 基本的に石膏型は消耗品であるから使用量に準じた量が 廃棄されていると見積もることができる。
3・3 石膏廃棄物の特性
廃棄されている多孔質の石膏型は図2・14 に示されるようにCaS04・2H20で表される 2 水石膏である。 2 水石膏は結晶学的には単斜品系に属し、 針状または板状の結晶形態を7 す。 図2-15 は硬化した石膏の組織写真である。 長さ数"-'10μm程度の針状結晶が絡まり あって多孔質組織を形成していることが観察される。 石膏はモース硬度が2 で、 滑石(タ ルク)の次に軟らかい鉱物として位置付けられている。 従って再資源化の際には粉砕は比 較的容易に行うことができ、 また研削も容易にできる材料である。
_6i・・ー
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
図2-14 2水石膏の結品構造 文12-15 硬化した 2水石膏の組織写真
陶磁器用石膏型は成形方法に応じて排泥鋳込み用、 圧力鋳込み用、 機械ロクロ用、 など 使い分けられている。 例として表2・5にノリタケカンパニーで販売されている石膏型を数 種類示す。 水との配合量、 硬化時間がそれぞれ異なり、 作成される型材の気孔特性も異な ることが予測できる。 表2・6と図2-16に実際に肥前地区で使用された 5 種類の使用済み 石膏型の気孔特性を示す。 サンプリングした5種類の石膏型は廃棄石膏の中から任意に選 んだもので、 石膏型作製の際の水の配合量や硬化時間などは不明であるが、 表2・5の例と 同様一般的に圧力鋳込み用石膏は常圧鋳込み用より水の配合量は少ないと思われる。 いず れの石膏型も気孔分布曲線はシャープであった。 今回調べた5つの廃石膏では気孔直径は 概ね1"-'3μmの範囲にあり、 大きな違いはなかった。 こ れは、 石膏の気孔直径は主に針状 結晶のサイズに依存すると考えられるが、 水和硬化による半水石膏から2水石膏への変化
表 2・5 市販されている型材用半水石膏粉末と石膏型作製条件の例(ノリタケ カンパニー)
種類 水分配合量 流し込み時間
一般用 73% 8分
圧力鋳込み用 68% 8分
ロクロ成形用 58% 8分
硬質ローラーマシン用 53% 8分
�圃』
第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
が常に常温常圧で行われるために、 半水石膏と水の混合比率が多少異なったとしても生成 する石膏の針状結品のサイズにはさほど大きな差が生じなかったためではないか考えられ る。 これに対して気孔率のばらつきは大きくなり25'"'-'60%という広い範囲にわたった。特 に圧力鋳込み用2の石膏型は高圧鋳込み用の型材であり、 他の石膏型と比べて極端に低い 気孔率を示している。 これは配合する水分量の違いにより水和硬化時に2水石膏の結晶中 に取り込まれない余分の水の量が異なるため、 生成した2水石膏の針状結品同士の隙間の 容積に差が生じるからである。
表2・6 石膏廃棄物の気孔特性(肥前地区使用)
常圧鋳込用 常圧鋳込用 常庄鋳込用 圧力鋳込用 圧力鋳込用
1 2 3 1 2
気孔率(%) 26.94
気孔直径(μm)
57.97 54.73 55.50 53.05
2.26 2.13 1.65 1.97 2.68
0.7 0.6
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0.01 0.1 1 10
気孔直径(μm)
100 1i ハU ハU ハU
文12・16 石膏廃棄物の気孔分布曲線
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第2章肥前地区における窯業系廃棄物の性状
3-4 本節のまとめ
本節では陶磁器の成形工程で用いられる石膏型の使用後の排出状況と特性について述べ た。 石膏型は肥前地区で年間約3000""'5000t 使用され、 使用後、 磨耗したものはJI[貢に廃棄 されている。 石膏は最終処分時には管理型処分場への埋め立てが義務付けられているが、
処分容量の残余年数 が逼迫していることから、多くの中小の窯元では処分に苦慮している。
石膏型は長さ数""'10μm程度の針状結品が絡まりあった多孔質組織を形成している。 廃 石膏は使用目的によって気孔特性に差があり、特に気孔率のばらつきは25""'60%と大きい が、 気孔直径は概ね1""'3μmの範囲にあり大きな違いはないことがわかった。 また気孔分 布はシャープであった。
第4節 本章のまとめ
本論文で機能性材料を創製するための原料として取上げた陶磁器系産業廃棄物は、(1) 陶土製造工程で排出される粗粒石英残澄と(2)陶磁器の成形に用いられる石膏型の使用 済み廃棄物の2つである。 本章ではこれらの廃棄物が発生する背景を明らかにするととも に現在の排出状況を調べ、 材料としてのキャラクタリゼーションを行った。
( 1)粗粒石英残澄の化学組成は93wt%以上がSi02からなり、 鉱物組成のほとんどが α一石英である。 Si02以外の成分は陶石中の粘土成分に由来するもので、 石英粒子の表面 に付着している。 粗粒石英質残澄の粒径はほぼ20""'120μmの聞に分布しており、 廃棄物 としては比較的揃った粒度分布を持っていることがわかった。 また粒子の形状は丸みを帯 びており、 粉体の流動性は高く、 成形性は乏しい。
(2)石膏廃棄物は気孔率25""'60%、 気孔直径1""'3μm程度の多孔体である。 2水石膏 の針状結晶が絡まりあって多孔質組織を形成している。 常圧鋳込み用、 圧力鋳込み用、 ロ ーラーマシン用、 など様々な種類の石膏型が使用されており、 種類の違いによって異なる 気孔特性を示す。
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第3章粗粒石英残澄を用いた多孔質シリカの創製
第3章 粗粒石英残澄を用いた多孔質シリカの創製
第1 節 緒言
第 2 章で述べたように、 天草陶石を原料とした陶土製造工程で生じる粗粒石英残澄はSi02 の含有量が93wt%以上、 表面には微量の粘土成分が付着し、 平均粒径が約45μmの丸みを帯 びた粒子である。粒子径分布は20'"'"'120μmの聞に存在し、 廃棄物としては粒度が均一に揃っ ていることが特徴である。 したがって、 この特性を生かせば、 多孔質セラミックスの製造法の ひとつである焼結法で、粗粒石英残澄から気孔径分布がシャープな多孔体が簡単に製造できる と期待される。粗粒石英残澄の粒子サイズが20'"'"'120μmであるから、 これを原料として作製 した多孔質セラミックスの気孔は数~数十μm 付近にシャープな分布をもつことが予想され る。 表1-3で示したように、 この範囲の気孔サイズは触媒や酵母の担体、 ガスろ過、 散気盤な ど様々な用途に応用でき、 汎用性が高い 56�58)。 陶土製造工程で生じる粗粒石英残澄を利用す れば、 このような汎用性のある多孔質セラミックスを簡単なフ。ロセスで創製することが可能で ある。
焼結法による多孔質セラミックスの作
製法には、 図3-1 に示すように充填され た原料粒子の表面同士が相互に結合する ことを利用する方法29,30,59)と、図3-2の ように骨材粒子にガラス質のフラックス や粘土質などの結合材を混合し、 骨材粒 子同士を融着させる方法とがある60�62)。
例えば工業的に広く使われている砥石な どは、 セラミックスの粒子を有機物、 金 属、 ガラス質などの各種結合材で融着し て製造されている63)。結合材を使用すれ ば骨材粒子のみの焼結による場合より多 孔体の焼成温度を低くすることができる。
前章第2節で述べたように、 磁器の焼成 過程は原料素地中にガラス成分が生成し、
英が熔化していく過程である。 これと
図3-1 セラミックス骨材粒子同士の結合
図3-2 結合材を用いたセラミックス骨材 同士の融着
_A・ー-
第3章粗粒石英残澄を用いた多孔質シリ力の創製
同じように、粗粒石英粒子の表面がガラ ス質の結合相の中に熔化する条件を作 り出せば、陶磁器と同程度の焼成温度で 図 3・3のモデル図のように気孔径の揃 った多孔質セラミックスが形成される。
本章では粗粒石英残澄の粒度が均ー であるという特性を生かし、焼結法によ って陶磁器と同程度の温度で汎用性の 高い多孔質シリカを合成することを目 的とし、いくつかの結合材を用いてシャ
ープな気孔分布を持つ多孔質セラミッ クスを作製し、基礎的な特性を調べるこ とにした。
図3・3 粗粒石英残澄を骨材とした多孔質 シリカのモデル灰
第2節 プレス成形法による多孔質シリカの作製と特性
2-1 序
粗粒石英残澄を骨材とし、 焼結法で多孔質セラミックスを作製するためには、 骨材粒子の表 面同士をガラス質の結合相で融着させる必要がある。粗粒石英粒子の表面には微量の粘土分が 付着しているが、 粗粒石英表面同士をガラス化して融着させるためには不十分である。 また石 英粒子は流動性が高く成形性がほとんどないので、 成形助材を加える必要がある。 陶磁器と同 程度の焼成温度帯(1300'""14000C)で多孔質セラミックスを焼成することを目標におき、 結 合助材と成形助材を兼ねた材料として(1)炭酸カルシウム、(2)珪灰石利、(3)べントナイトの
3種類の原料粉末を選定した。 いずれの結合材も焼成時に石英粒子表面の微量の粘土成分とb ざり合い、ガラス相を形成させうる原料である。珪灰石粕とベントナイトの化学分析値を友3-1 に示す。 珪灰石利は陶磁器用の粕薬として用いられている材料の一つでNa20、 K20、 CaOな どを含み、 通常の陶磁器の製造工程においては焼成時にガラス化して陶磁器表面にガラス層を 形成する役割を担う。ベントナイトは層状粘土鉱物の一種で、組成中にMgOやNa20 を含み、
陶磁器の焼成温度で、ある13000C付近では完全に熔融する。
本節ではまずプレス成形法を用い、 粗粒石英残澄に上記結合助材を加えて焼結法で多孔質セ
J'・ーー
第3章粗粒石英残澄を用いた多孔質シリ力の創製
ラミックスを作製し、 得られた多孔体の基礎的な特性を評価した。 さらに粗粒石英残澄を分級 することによる気孔径制御、 有機気孔形成材を添加することによる気孔率の制御についても基 礎的な検討を行った。
表3-1 結合助材に用いた材料の化学分析値(単位: wt%)
強熱減量 Si02 Al203 Fe203 Ti02 CaO MgO Na20 K20 珪灰石粕 4.58 68.99 1l.63 0.14 0.03 8.40 0.02 2.25 2.88 ベントナイト 6.23 6l.50 2l.40 2.10 0.16 0.50 3.26 3.83 0.09
2・2 実験方法
粗粒石英残澄を原料とした多 孔質シリカの作製 プロセスを図 3・4に示す。 まず粗粒石英残澄 を53μm の節で分級し、 20""' 53μmと53""'120μmの2つに
炭酸カノレシウム結合助材 ベントナイト珪灰石紬
6wt%
気孔形成材 結晶セノレロース
lO'"'-'25wt%
分離した。 次に石英残澄に炭酸 カルシウム、 珪灰石利、 ベント ナイトの3種類の助材を原料粉 末に対して6wt%加え、 乾式で 振とう混合し、 直径6cmφの金 型で15MPaの圧力でプレス成 形した。 焼成は大気中で 1300
""' 15000Cの範囲で、行い、 得られ たサンプルについて水銀圧入法 で細孔分布を調べるとともに
SEMによる多孔体の組織観察
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プレス成形
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1300'"'-' 15000C 多孔質シリカ送13・4 粗粒石英残澄を原料とした多孔質シリカの 製造プロセス
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第3章組粒石英残澄を用いた多孔質シリカの創製
を行った。 またサンプルを5X5X50 mmの柱状に切り出し、3点曲げ法による強度測定を行っ た。 有機気孔形成材としては粒径約15μmの結晶セルロース粉末を10'"'-'25wt%添加して 、 気 孔特性に及ぼす影響を調べた。
2-3 結果と考察
( 1 )原料の分級による気孔特性の制御
20'"'-'53μm、 および53'"'-'100μmに分 級した粗粒石英残澄の粒度分布曲線を図 3-5 に示す。 53μm 以上と以下に完全に は分離していないが 、 中心粒径が33.2μ
mと58.4μmのシャープな分布を もっ粉 末が得られた。 これらの原料粉末を用い 炭酸 カ ル シ ウ ム を 結 合助材 と し た 13000C焼成体の気孔分布曲線を図3-6 に 示す。 いずれも非常にシャープな気孔分 布を有していることがわかる。 特に20'"'-' 53μmの粒子を原料としたサンプルは分 布がシャープであった。 それぞれの中心 粒径と気孔直径の関係は33.2μmのとき 17.4μm、 58.4μmのとき29.6μmと 、
原料粒子の中心粒子径の約半分程度の気 孔径を有する多孔質シリカが得られた。
このように 、 原料粉体を分級することで ある程度気孔径を変化させることが可能 である。 すなわち原料の粒度分布が20'"'-' 120μm の範囲にあるので 、 この範囲内 での気孔径のコントロールが可能である。
20'"'-'53μmの石英残澄を原料とし、 炭 酸カルシウムを結合材に用い て 13000C で焼成して得られたサンプルのSEM写
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100 m
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粒径(μm)
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図3-5 分級した粗粒石英残澄の粒度分布
図3-6 異なる粒径の粗粒石英残澄か ら 作製した多孔質シリカ(13000C焼成体) の気孔分布曲線
第3章粗粒石英残澄を用いた多孔質シリカの創製
真を関3-7に示す。 骨材となる粗粒石英 粒子がガラス質の結合部分で結合して いる保子が観察される。このサンプルの 気孔直径は17.4μm、 気孔率は 46.0%
である。このサンプルの粒子内部の元素 の分布をEDXによって調べた結果を図 3・8に示す。 骨材粒子の中心部に近い部 位(PointA)にはほとんどSiしか検出
されないのに対し、粒子同士の結合部分 (Point B) ではSiととも にAlおよび Caが存在していることがわかる。 いず れの部位にもAuが検出されているのは
図3-7 53μm 以下の粗粒石英残澄から作製 した多孔質シリカ
(焼成温度:13000C、 結合助材: CaCÛ3)
図3・8 粗粒石英残澄から合成した多孔質シリカの粒子内部の元素の分布
観察のためにAuを蒸着したことによる。 以上のように、 図3-3のモデルで示すような結合部 分が骨材粒子聞に存在していることが確認できる。 骨材粒子部分とガラス相部分の境がほとん
ど観察されないのは、 骨材粒子がガラス相に熔化しているからであると思われる。
文13-9に示すX線回折の結果 から、石英粒子は焼成温度が高くなるにつれクリストパライト に変化し、 15000Cではクリストパライトの単一相となっていることがわかる。1300'"'"'15000C の温度範聞では石英とクリストパライト以外の結晶相は観察されないので、粒子間の結合部分