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ループヒートパイプの熱輸送特性に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ループヒートパイプの熱輸送特性に関する研究

岡本, 篤

https://doi.org/10.15017/1807031

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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(様式2)

氏 名 :岡 本 篤

名 :ループヒートパイプの熱輸送特性に関する研究 区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

本研究は、作動流体の蒸発潜熱を利用して無動力で大容量かつ長距離の熱輸送が可能なループヒ ートパイプの宇宙機への適用に向けて、重力がループヒートパイプの熱輸送特性に及ぼす影響を明 らかにするとともに、ループヒートパイプの起動時における信頼性を向上させることを目的として いる。本論文は以下に示す8章からなる。

第一章では宇宙機の熱制御の現状と今後の動向に基づきループヒートパイプの必要性について述 べ、ループヒートパイプに関する従来の研究を概観し、本研究の意義と目的を明確化した。

第二章ではループヒートパイプの構成と動作原理について述べ、ループヒートパイプの動作を P-T 線図、T-s 線図を用いて熱力学的考察を行い、ループヒートパイプにとって重要となる作動流 体の選定方法、作動流体封入量とリザーバ設計の考え方についてまとめた。また、ループヒートパ イプの特徴と宇宙機に適用する利点について整理を行った。

第三章ではループヒートパイプの最大熱輸送量や動作温度を算出するための解析手法を示した。

第四章ではリザーバ内蔵型ループヒートパイプを用いた展開型ラジエータ実験装置を技術試験衛 星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)に搭載して軌道上実験を行い、微小重力環境下における熱特性を調べた。さらに 地上の重力下で得られた結果と比較することで、重力がループヒートパイプの熱輸送特性に及ぼす 影響を確認した。その結果、軌道上環境では凝縮器内の過冷領域の長さが短くなり、地上環境と比 較して低熱入力下で温度の振動が生じやすいことが明らかとなった。軌道上環境で過冷領域が短く なる理由は地上環境に比べて蒸発器からリザーバへの熱リーク量が低減するためであり、その原因 は、系の圧力損失の低下およびウィックとリザーバ内蒸気間の伝熱量の低下であると考えられる。

しかしながら過冷領域の長さが短くなると放熱面を有効に利用できるため、地上環境より動作温度 を低くできることを示した。

第五章では中性子ラジオグラフィー技術を利用してループヒートパイプ内部の作動流体の可視化 を行い、作動流体の挙動と熱輸送特性の相関を調べた。その結果、セカンダリウィックを有さない ループヒートパイプのボトムヒート姿勢におけるドライアウト発生時のプライマリウィックおよび 蒸発器中心部の気液分布の変化を視覚的に捉えることができ、本来であれば重力によりリザーバか ら蒸発器に液が供給される姿勢においても、蒸発器中心部が高圧になる条件では液がリザーバから 蒸発器に供給されない場合があることを明らかにして、これを解決するためにはセカンダリウィッ クのようなリザーバから蒸発器に液供給を行う方策が必要となることを示した。

次に、セカンダリウィックを実装したループヒートパイプの可視化実験を行い、蒸発器がリザー バの上方に位置するループヒートパイプの安定起動・動作に対して一番過酷な姿勢においても安定 して作動流体がリザーバから蒸発器に供給されていることを確認でき、セカンダリウィックを採用

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することにより、ループヒートパイプの起動時の信頼性を向上させるとともに、姿勢によらず安定 して動作させることができることを明らかにした。

第六章では第四章に示したリザーバ内蔵型ループヒートパイプの軌道上実験および第五章に示し た中性子ラジオグラフィー技術を利用したリザーバ外付け型ループヒートパイプ内部の作動流体の 可視化実験で得られた知見を反映して、リザーバ外付け型ループヒートパイプの地上実験モデルの 設計、製作を行った。評価実験の結果、1W という非常に小さな熱量で安定して起動することを確 認するとともに、蒸発器への熱負荷や凝縮器のシンク温度を急激に大きく変化させた場合でも安定 して動作することが確認でき、セカンダリウィックの導入によりループヒートパイプの起動特性お よび動作安定性を向上できることを示した。また、PID制御によりリザーバの加熱・冷却量を制御 することにより蒸発器への熱負荷や凝縮器のシンク温度が急激に大きく変化した場合でも動作温度 を目標温度に高い精度で漸近させることが可能であることを示した。次にループヒートパイプ動作 時にリザーバを加熱して蒸発器よりも高温にすることで、たとえ蒸発器に熱入力があり作動流体の 蒸発が生じている状態においてもループヒートパイプの熱輸送機能を任意に停止できることを確認 した。さらに、リザーバをペルチェ素子により冷却することにより、蒸発器に熱入力がない状態に おいてもループヒートパイプを起動できることを確認した。それによりループヒートパイプを宇宙 機に適用することで熱設計や軌道上運用における柔軟性を向上できることを示した。

第七章では宇宙用途、地上用途のそれぞれについてループヒートパイプを用いた排熱システムを 提案した。まず宇宙用途として、従来型ヒートパイプに比べて熱輸送特性が重力の影響を受けにく いという特性および配管レイアウトが自在であるという特徴を活かすことにより、これまで高発熱 機器を搭載できなかった衛星の内部パネル等の非放熱面への高発熱機器の搭載により衛星への機器 の高密度実装を実現し、衛星構体の小型化を図ることを提案した。また、ループヒートパイプ配管 の可撓性を有する特徴を活かして、畳んで収納した状態で打ち上げ、軌道上で展開することにより 放熱面積を拡張する展開ラジエータを用いた熱制御システムの提案を行った。次に地上用途として、

テレビ、プロジェクタ等の家電における排熱および自動車における排熱システムの提案を行った。

最後に、今後ループヒートパイプ技術をさらに発展していくための研究課題として、分散した高発 熱源への対応、起動時の信頼性向上、排熱能力の大容量化、の3点を挙げた。また、ループヒート パイプを含む宇宙機用熱制御技術の将来展望を述べ、要求される排熱能力の大容量化についてはル ープヒートパイプでは限界があるため、大容量化に対応する技術として沸騰二相流ポンプループの 必要性およびその実用化に向けた取り組みについて提案を行った。

第八章では本論文の結論として本研究で得られた成果をまとめた。

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