号 11
ページ 71‑76
発行年 1931‑07‑05
権利 同志社大學英文學科文學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016780
最 初
の
血
ノ、
ー
パ ー ト
・ リ 1
ド71
夜っぴての降雪・夜の引きあけは害に白い光らう︒嘗つての日の傷痕と痘
痕を包む雪に︑地面はまもなく美はしい化粧の衣ぞかつぐの花︒云ひ知れぬ
みじめな姿に︑地膚は鞠ん百鑑種をまとひ︑悉皆の指祉を引き剥れて︑打ち
のめされた一本の案山子でしかなかったに︒何んと云ふ粉銃︒
庇蔭の聖森・まさしく此の森の紳こそモロック花︒兇暴の古紳︒共の腕に
庇護を求めるは只穣人の腕に別離を告するに蛍るの記︒古紳の聖所・是等無
数の洞窟と
E
講を内競する陰晴の疎地・ほのかな鴎と共に吾五日は見る百らふか︑聖森の樹々が共の最後の一枚をも喪失し只懐々と引き裂れに樹幹の片片
に一掃されるのぞ︒権穫の樹々と云はふか︑綿ては支離滅裂に恰も標的に突
き﹀った数々の槍身花︒エーカーに亙る錯乱の濯木森・突出聖一一後線中の最兇
の地動記(突出陣地︑それは軍なる突出陣地
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はない︒まこと人類が負ふべき﹁
十字
架﹂
の意
味に
於け
る﹁
十字
架し
の如
く)
突出陣地︑もはやそれは五口五日に取って一つの巌然大る象徴ですらある︒苦
闘の日日が五口五日の胸に固め行く象徴の念︑それは翠なる可制の事賓としてで
はなく病熱の梯子を禁じ登り次第に崩落し行く暴威となゐとき︑かの突出陣
地は不動の理念となり得るの記︒此の戟続に於ける種尖の確保︑それが全軍
を豆大な狂態の意志に迄迫ひやるの花︒戦術以上の戦術・がむしやらの衝動・
その故に︑あ︾幾日路間千の膏血ぞ流せし事か!
此の陣地の尖頭に立つ身は︑あまねく肉躍をつけ狙ふ四面砲火の洗曜の中
にある︒南側を巡って蓬かに敵軍は五口が背後に迄伸びてゐるの記︒地面の起
伏につれて︑彼等には向背面射撃すらが可能なの
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︒か﹀る際に︑あ︾聖濠防備が来して何んである百らふ︒
けじめもない背描と胸壁・前面と側面・共庭じ何等の匿別すら有り得ないvの冗︒最善の方法!只固形陣地の構成︑記︒然も事寛︑陣地は外側に濠をめぐ
らしに土鰻頭に終るだらふ︒ふやけに泥棒の地そ堀り下山げて何の投に立つの
記︒せめては鼠巻溺らすがおちではないか︒大地は
A1
水膨じてゐるの記︒
築堤は地面ぞ這ふ数々の低い洞穴に貫かれ︑それ等洞穴の高さは僅かにニ
コ一択にも足らない︒此底では坐る事さえが出来ないのかo只眠りと望息する矯
に︑肺臓の自白な呼吸・食物・用便の震には吾吾は待ち伏せする狙撃兵の銃先
きを歩まねばならない︒不可能・擦も尚可能の見込ありとすれば僅に︑夜中の
仕事記︒白目の下には只歩哨が各の交代の矯にひたすら蛇の様に泥海板を滑
り出すか︑或ひは叉偵察と異放のなきを確めに這ひ出す士官の片影のみ官︒
ま七しでも敵は精兵を撰りすぐって此の地に鴫集せんとする︒融味方針抗
の狙撃競争!西部戦総に於て果して此れ以上の娯繋があるだらふか︒二人の
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兵士を射落し損ねに日は惨な敗北の日行︒
雪に化粧すゐ大地に︑整濠の入口は黒く目立にしい︒積雪する泥棒板の上
を這ふ歩哨蓮・共の影は零を走る兎にもましてしるい冗らふ︒巌多に再び白
衣が必要花︒それは儲狙撃の機曾ぞ卒等にする光らふか︒
新らしい下士官の危い放れ業・彼は最初︑日中の整壕を這ひ出すだらふO
i ‑ ‑ ‑
と耳
ぞ打
つ鞭
風の
銃撃
︑記
︒息
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凝らす・真赤な血が彼の頻に散る・績い
て震揺する背後の空気・椙弾は彼が正面する胸壁に宮って弾ね返る︒身ぬち
を貫いて一関する恐怖・地面にぶつ倒れ泥降板の桟宇佐引き把む彼の手︒
彼は此の恐怖ぞ忘れてしまったのか︒街彼は切迫する死の恐怖・絶え歩執
劫につけ狙ふ死の恐怖そ理解しないのか︒仲間の註一言︒﹁貴様腹つ這ふん花︒L然も緩急の際どうして此の註言に思ひ宮らふ︒自らになる人間の態度でない
ことを如何にすべきか!
陣地の夜間偵察・陣地は完全な環扶ぞ作ってゐない︒散在する四つの陣地
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秘やかな地難l
共庭には二人の歩哨達が狭い割自在遁じて甲銭板の内部から援っと外部を見張ってゐる︒一一一時間毎に下士官が巡回し報告をまとめて
行く
彼は第一陣地︑そして第一から第二︑第二から第一一一へと次第に腹芸いぞ ︒
績ける︒﹁頭さへ下山げてりや︑何大丈夫さ︑結構隣陣地へ行けるん行よ﹂第三
の陣地の仲間が告けるの記が︒彼は結句曲むで歩けることに喜ん︑にでもあら
ふ︒もはや彼の膝も腕も雪まみれ
r
︒被は立ち止まってしばし聖譲の壁に依り掛る︑頭上の空は暗捨たる暗茨色に陪やけ︑僅かに粉砕された遁風口に聞
く貫白い光景は物凄い迄に陰惨に輝いてゐた︒眼前・泥棒に架する泥板は粗
雑な聖濠内を遥かに伸び蹟がり末端途ひに一つの地害に迄積いてゐ大︒地害
の国く盛り上った屋根は恰も立波なドlムの様にも見えた︒
地空
口か
ら現
れる
高い
人影
・m
m碕
︒伍
長コ
スア
ロ
iの姿だ︒彼は伍長の赤く陰った顔︑茶褐色の眼ぞ認める︒伍長コステロi・クリイプランドの産れ︑彼は嘗って訓練所の日同じ中隊に属してゐた事ではないか︒
錫の食器を手に︑そこはかの用事の震に︑空を仰ぐ彼・とまたしても寂莫
を破るいまいましい銃撃・叫喚・泥棒の土に傾く伍長の痩身︒
頭部を貫く完全命中・血まみれの闘韓・噴出する鮮血が零を彩った︒
止血器!止血器︑た!言葉が士官の頭や混乱の中にが鳴り渡った︒止血器!
然しなんだ︒ど︑ヲして此の溢れ来る鮮血の噴出を止めようと云ふの
r
︒兵士連は聖譲を這ひ出し彼の身幽脂身胸壁の陰に引きホhり込む︒揖指を以って動脈の切端を摩する兵士・何んの震に︒兵士連は彼の頚に繍帯やかける︒その聞にも彼の顔色は紫に費って往くのだ︒不気味な死の喉一一羽田が最後に引き裂れた
彼の喉からプロプロと聞かれた︒
微動︑たにすることの出来ぬ下士官・呆然と
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‑‑
!呆然と自らを失ふ彼・胸に
さし来る劇しい晦吐を感じながら︒兵士建が白らの仲間を︑優しく雪に横へ︑
硬ばつ七屍瞳必柔らかに防水布にくるむ聞も彼は共庭に呆然と立ちつくす︒
やがてに彼は直結した胸壁から白らの感覚を失くした雨手を垂らす︒劇しい
吐気︑かすかに彼の眼前︑荒々しく書きなぐられた﹁便所﹂の文字を認めるこ
とが出来た︒彼は諾い聖濠の中を無やみと轄がり込み︑最後に彼の顔ぞパク
ツにのっかける︒不思議に苦痛は薄らいでいった︒恐らくは再度の目量ひが
お互に中和されたのであらふ︒鼻ぞ筒く一面のクロライドの悪臭︑立︒兵士建
はそれぞ屍躍と云は令使と云は歩一様に振り撒くの花︒
戦鶴巻引き返した彼は再び見るだらふo伍長コステロi
の横
る品
出回
って
の地
︒
雪に白い地膚ぞ彩る鮮血の損ごり︒白日の下無惨にも友の自在覆ふべき何物
もない︒屍韓は防水布にくるままつ允優にその日ひと
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聖濠の側に冷たく横った︒夜︑兵士はそれを戦線の後方埋渡所に連れて往くと云ふの花︒
突出陣地に於ては然も此の日すらが静かな日の一一回なのだ︒﹁貴様幸運の
野郎だよ﹂共の日蓮く中隊長がつぶやくのだ︒﹁奴等に砲撃を喰はされんです
むなんて︑此底教んノ月こんな換な番なんぞ誠多になかったんだ﹂
雲は
夜と
共に
再び
降り
始め
に︒
一宮
昔︑
国一
奇は
あの
血汐
を童
くぬ
ぐひ
去る
だら
ふ
か︑いや︑或ひは更にその績がりを大きくするだらふか?
今・彼の眼の縁を抹量る神経質な小鎮︑それこそ彼に治へて行く青春の無
邪気さの悲しい謹ではないか︒
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夜来の雪は朝方も降りつめた︒伍長コステローが戦死した嘗つての怨痕の
地域に︑いま新らしい士官が入れ代ってくる︒兵士建は屍鰭を夜中にはこび
去った︑が倫雪に残る鞠んだ血汐の活賄︒新らしい士官は無閣と気難しい︒
聖濠の入口に止まって叫ぶ彼の聾︒
﹁コ
一フ
ヅ﹂
頭髪
を乱
しに
士官
の顔
が現
れる
︒
﹁何んでむやみにクロライドぞ此の泥揮にまちらかすんだ?
( 井
口
﹂生
課)