• 検索結果がありません。

上場ファミリー企業の所有と経営に関する一考察小松智子

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "上場ファミリー企業の所有と経営に関する一考察小松智子"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

上場ファミリー企業の所有と経営に関する一考察

1.はじめに

近年,経営学やファイナンス,とりわけコー ポレート・ガバナンスの分野において,ファミ リー企業への関心が高まっている。これまでの コーポレート・ガバナンスの研究は,所有と経 営の分離した企業で,エージェンシー問題をい かに軽減し,経営をいかに効率化させるかとい う点が議論の対象とされてきた。「所有と経営 の分離」と,それに伴い成立した「専門経営者」

は,現代企業の最大の特徴であるとされてきた

(Berle & Means, 1932)。

しかしながら,株式市場の現実は,創業者一 族による大規模な株式所有と経営への参加がみ られるファミリー企業が,後進国のみならず先進 国においても広く観察されている(La Porta et  al., 1999)。例えば,株式の分散が進んでいると 見られていたアメリカにおいても,S&P500 社 の 34%(Anderson and Reeb, 2003),ドイツ・

フランスなどの西欧においてもファミリー企業 が数多く存在することが報告されている1)。日 本においても,創業者の引退後に,創業者一族 が大株主2)である,あるいは創業者一族が経

営者である上場企業が多数観察されている。

株式会社は,上場することで不特定多数の資 本を調達し,大規模な企業組織を経営するため の制度である(亀川,2015)。ひとたび上場す ると,株式は広く分散し,株式をほとんど持た ない経営者によって経営されることになり,所 有と経営の分離は専門経営者の選任を容易にす る。そのため,コーポレート・ガバナンスが有 効に機能しなければ,株主と経営者の利害が対 立し,エージェンシー問題が大きくなる。そこ で,この問題を緩和する所有構造として,株式 の経営者所有が指摘されている。経営者が多 数の株式を所有している場合,所有と経営が 一致することによるアライメント効果が働け ば,経営者と株主の利害が一致するからである

(Lilienfeld-Toal and Ruenzi, 2014,鄭,2015)。

ファミリー企業の特徴のひとつに,創業者一 3)という大株主の存在があげられる。創業 者一族が大株主の場合,大株主=創業者一族の 富が企業の価値と密接に関係することから,ア ライメント効果が強く働けば,長期的に企業価 値を高める質の高い経営を行なうと考えられ る。従って,エージェンシー理論に依拠する

上場ファミリー企業の所有と経営に関する一考察

小 松 智 子

A study on the ownership and management of publicly traded family firms in Japan

KOMATSU, Tomoko

本稿では,日本の株式市場に上場している電気機器企業における株式所有構造に着目し,日本 のファミリー企業に関する実証研究のための予備的な考察を行う。ファミリー企業における所有 と経営およびガバナンスに焦点を当てる。

キーワード: ファミリー 企 業(family firms),創 業 者 一 族(founding family),大 株 主(major  shareholder),取締役(directors),ガバナンス(governance)

〔レフリー論文 研究ノート〕

(2)

ファミリービジネス研究では,創業者一族の持 株比率が重要な変数だと考えられている(淺 羽,2015)。

くわえて,ファミリー企業では,株式保有と 同時に経営にも創業者一族が参画することが少 なくない。経営者が多数の株式を所有している 場合,所有と経営が一致することから,経営者 は企業価値の最大化を図る。従って,創業者一 族によって所有され,かつ経営されているファ ミリー企業の最大の利点は,所有者と経営者の 利害の一致によるエージェンシー問題の緩和だ とされている(淺羽,2015)。

では,少数株主から見たファミリー企業は,

どのような存在であろうか。所有や経営の集 中は,大株主による少数株主の搾取という新 たな問題に関係してくる(Fama and Jensen,  1983)。従来議論されてきた経営者と株主の間 の利害対立ではなく,一部の大株主が自身の利 益になるよう企業の意思決定を左右し,モラ ル・ハザードが生じて少数株主の利益が毀損さ れる可能性が生じる。株式市場にファミリー企 業が数多く存在しているという事実は,大株主 と少数株主との間の利害対立が少なからず発生 し,相応の規模となっているのではないかと思 わせる。例えば,出光興産創業家が,昭和シェ ルとの統合において経営陣に対立姿勢を示した ため,両社の統合に時間を要したことは記憶に 新しい4)

本稿では,日本の株式市場に上場している電 気機器企業の株式所有構造に着目し,所有と経 営およびガバナンスの現状について検証する。

「創業者一族が,ファミリー企業の経営に関与 し続けることは可能か」というリサーチ・ク エスチョンに基づき,10 大株主構成と経営者,

取締役会の構成に代表されるガバナンスに焦点 を当てる。

2.上場ファミリー企業―定義と分類―

オ ー ナ ー シ ッ プ, ビ ジ ネ ス, フ ァ ミ リ ー の 3 つの要因から構成されるファミリー企業

(Gersick et al., 1997)は,創業者一族の所有と 経営における関与度の相違により,経営のスタ イルや関心が異なってくる(奥村,2015)。

ファミリービジネスに関する研究は,欧米を 中心に,企業業績,事業承継,コーポレート・

ガバナンスの 3 つの分野において,理論・実証 研究の蓄積がされてきた。それらの研究におい て,ファミリー企業は,創業者あるいは創業者 一族の「所有(family ownership)」と「経営

(family management)」により定義されている

(入山・山野井,2014)。その一方で,特に企業 業績の分析は,ファミリー企業の定義とサンプ ルの性質に敏感であるとの指摘がされている

(Miller et al., 2007)。

そこで本章では,日本の上場ファミリー企業 研究における代表的な先行研究を,ファミリー 企業の定義と分類の観点からレビューする。

2.1 倉科(2003)

倉科(2003)は,2000 年 3 月期における全一, 

二部上場企業 2,515 社(店頭公開,ジャスダッ ク市場は除く)を分析し,専門経営者企業と ファミリー企業を,次のように分類している。

①  専門経営者企業/機関投資家,金融機関 並びに親会社が主たる株主で,経営者は 限定された株式しか有していない。

②  ファミリー企業Ⓐ/個人として最大株主 でありかつ創業者またはファミリー一族 が経営トップ(会長,社長,副社長など)

を担っている。

③  ファミリー企業Ⓑ/個人大株主である が,経営トップとしては参画していな い。ファミリー一族が取締役または常務 クラスで参画している場合もある。

④  ファミリー企業Ⓒ/個人大株主ではない が,創業者一族のファミリーが経営トッ プ(会長,社長,副社長など)として経 営に参画している。

上記の分類に従い,専門経営者企業は 1,441 社(全体の 57.3%),ファミリー企業は,Ⓐ

(3)

925 社(36.8 %), Ⓑ 119 社(4.7 %), Ⓒ 30 社

(1.2%)という結果を得ている。そして,全上 場企業の約 40%が,創業者企業も含めた広義 のファミリー企業に分類されるとしている。

2.2 齋藤(2006,2008)

齋藤(2006)は,1990 年度の東証一部・二部,

大証一部・二部,地方市場の全上場企業をサン プルとして,創業者一族によって所有され経営 されているファミリー企業と非ファミリー企業 の利益率を分析している。齋藤(2006)は,ファ ミリー企業を,創業者一族による株式保有比率 が 5%以上,社長もしくは会長が創業者一族出 身者である企業と定義している。

1990 年 度 の 上 場 企 業 1,823 社 の う ち, 約 40%にあたる 738 社で,創業者一族が 5%以上 の株式を保有し,約 34%にあたる 612 社で創 業者もしくはその子孫が経営者として経営に 参画していると分析している。そして,一族 が 5%以上の株式を保有し,かつ創業者もしく はその子孫が経営に当たっている企業は,477 社で約 26%であるとしている。このことから,

日本においても,創業者一族が大株主として経 営に当たっている上場企業が,数多く存在して いると指摘している。

さらに齋藤(2008)は,日本では,創業者一 族の株式所有比率が低くても,経営参画の程度 が下がらないことを検証している。創業者一族 の所有比率が「10%から 20%」の企業 199 社 のうち 87%にあたる 173 社が,「1%から 10%

未満」の企業 343 社のうち 75%の 256 社が,

創業家から経営陣に人材が送り込まれていると している。

2.3 吉村(2007)

吉村(2007)は,1980 年度から 1995 年度ま で 5 年間隔で,東京,大阪,名古屋の各証券取 引所に上場している「全製造業・商業」企業の 株式所有構造を調査し,次の 4 つに分類してい る。

①  支配的株主不在/事業法人のなかで最大 の持株比率を持つ一事業法人の持株比率 が(間接所有も含めて)20%未満であり,

かつ個人株主のなかで最大の持株比率を 持つ一家族の持ち株比率が 10%以下に 該当する企業

②  同族支配/事業法人のなかで最大の持株 比率を持つ一事業法人の比率が(間接所 有も含めて)20%未満であり,かつ個人 株主の中で最大の持株比率をもつ一家族 の持株比率が 10%超に該当する企業

③  法人少数支配/事業法人中で最大の持株 比率を持つ一事業法人の持株比率が(間 接所有も含めて)20%以上,50%以下に 該当する企業

④  法人過半数支配/事業法人の中で最大の 持株比率を持つ一事業法人の持株比率が

(間接所有も含めて)50%超に該当する 企業

その結果,日本の大企業では株式の分散は進 展しておらず,上場して時間が経過しても支配 的な影響力を行使しうる株主が存在しているこ とを報告している。これらのことは,「上場に ともない株式の分散が進行」「大株主は例外的 な存在」という,株式所有構造に関するそれま での常識と相容れない現実を明らかにしてい る。とはいえ,「同族支配」は 1980 年度 20.3% 

→ 1995 年度 12.8%に低下し,一方で「支配的 株主不在」は同期間に 48.5% → 55.4%に増加 している。このように「同族支配」から「支配 的株主不在」へと移行したケースが多いことか ら,株式の分散がある程度進み,創業者一族あ るいは法人の支配力が徐々に低下しているとし ている。

一方,吉村(2007)は,株式所有構造におけ る上記 4 つのタイプと経営者の属性との関係性 が必ずしも一致しておらず,所有と経営との ギャップが存在していることを報告している。

具体的には,「同族企業」は,創業者あるいは 創業者の同族が社長になっていることが多いも

(4)

のの,その例外も多く,一方,「支配的株主不 在」と生え抜き社長の組合せも増加傾向にある とはいえ圧倒的なレベルとはいえず,残りの大 半は同族企業出身者で占められているとしてい る。

2.4 ユパナ・沈(2015)

ユパナと沈(2015)は,長期にわたる日本の 上場企業のデータを分析し,日本のファミリー 企業の特徴を明らかにしている。両者は,ファ ミリー企業の定義として,創業者一族が 10 大 株主である,もしくは最高意思決定が可能なポ ジションにいる(社長または代表権を持つ会 長)企業と定義している。

そして,日本の全株式市場において,新規公 開して上場した企業数の推移を分析し,以下の 特徴があると指摘している。

①  1949 年 5 月に,戦争中に中断されてい た株式市場が再開され,戦前から活動し てきた多くの企業が再上場した。戦前の 日本経済を牽引してきた財閥=ファミ リー企業が,GHQ 政策という外部の力 によって強制的に解体され,多くは非 ファミリー企業になった。

②  一方,1961 年から 1964 年までに約 700 社が上場したが,これは,1961 年 10 月 に主要な株式市場に二部市場が新設され たことに起因する。それまで上場できず にいた,比較的若くて小規模の企業を中 心に上場を果たした。

③  二部市場新設までは,新規上場企業の多 くを非ファミリー企業が占めていたが,

1961 年の二部市場新設以降は,新規上 場企業の大半をファミリー企業が占めて いる。

④  1949 年から 1950 年の新規 IPO の最初の 波と,1961 年から 1964 年までの第 2 の 波を除けば,1980 年以後の新興市場新 設までの新規 IPO 企業数は,年間 50 社 を下回り,低調に推移した。

上記のことから,1960 年までに上場した非 ファミリー企業群と,1961 年以降に新規上場 した若いファミリー企業群とが,戦後の日本経 済を牽引してきたと分析している。

2.5 後藤(2015,2018)

後藤(2015)は,ファミリービジネスを「ファ ミリーが同一時期あるいは異なった時点にお いて役員または株主のうち 2 名以上を占める企 業」と定義したうえで,所有と経営における創 業者一族の関与度合いに基づき,ファミリー企 業を次の 6 つに類型化している。

①  ファミリー企業 A /創業者一族が筆頭 株主で,取締役に創業者一族がいる。

②  ファミリー企業<a>/創業者一族が 10 大株主(筆頭株主以外)で,取締役に創 業者一族がいる。

③  ファミリー企業 B /創業者一族が筆頭 株主だが,取締役に創業者一族はいな い。

④  ファミリー企業<b>/創業者一族が 10 大株主(筆頭株主以外)だが,取締役に 創業者一族はいない。

⑤  ファミリー企業 C /創業家一族が 10 大 株主ではないが,会長・社長が創業者一 族である。

⑥  ファミリー企業<c>/創業家一族が 10 大株主ではないが,会長・社長以外の役 員に創業者一族がいる。

後藤(2018)が 2016 年度の全上場企業を対 象に調査したところ5),ファミリー企業の比率 は全市場の上場企業で 52.9%,上記分類ごとの 比率は,① 34.0%,② 6.2%,③ 5.9%,④ 3.7%,

⑤ 2.2%,⑥ 1.0%となっている(表 1 参照)。

以上みてきたように,ファミリー企業の分類 や定義は,創業者一族がどの程度株式を保有 し,どのように経営に参画しているのかにより 異なっている。

(5)

3.上場電気機器企業のケース

ファミリー企業という経営形態は,事業承継 を重ねるにつれ増資や相続税等により創業者一 族の持株比率が低下し,所有における創業者一 族の関与度が低下することは,ある程度避けら れない(太宰,2015)。

片や,経営への創業者一族の参画において は,カプコンの辻本憲三氏のように,「家業を 最も知るのは家族」との考えから 3 人の子供を 会社に入れて要職に就ける経営者もいれば,本 田技研工業の本田宗一郎氏のように,親族内承 継の弊害を危惧し,創業者一族の子孫の入社を 排除する姿勢を貫く経営者もいる。キッコーマ ンのように,1 家から 1 世代で 1 人のみ入社と いう取り決めのうえで,必ずしも創業家者一族 が取締役に就任するとは限らない方針の企業も ある。

本稿では,「創業者一族が,ファミリー企業 の経営に関与し続けることは可能か」というリ サーチ・クエスチョンに基づき,日本のファミ リー企業の「ファミリー企業としての存続性」

について,予備的な考察をおこなう。10 大株 主構成と経営者,取締役会の構成に代表される ガバナンスに焦点を当てる。

3.1 サンプルと定義およびデータ

上場企業を対象に,10 大株主構成と経営者,

取締役の構成,ガバナンスの観点からファミ リー企業の現状を検証するにあたり,電気機器 企業をサンプルとした理由は 3 つある。

先ず,電気機器企業は,戦後の日本経済を牽 引してきた圧倒的なリーディング産業のひとつ であり,日本を代業する企業が多数含まれてい るからである。次に,日本経済の流れを体現し ている産業だと考えられるからである。電気機 器産業は,高度経済成長期を経て,1990 年度 末に東証一部での業種別時価総額(金融・保険 を除く)が最大となって以降の低迷に加え,国 際競争力が問われる,競争が激しい産業であ る。そして最後に,ファミリー企業のサンプル 数が多いと考えたからである。電気機器産業 は,重電,家電,電子(エレクトロニクス)と 順次新しい事業分野を追加してきた産業であ り,継続的に IPO 企業が存在する産業である。

かつ,IPO 時点でファミリー企業である企業の 数が,非ファミリー企業である企業の数より多 く(岡室・ユパナ・沈,2008),上場企業数も 製造業のなかでは最も多い(2017 年 7 月 21 日 時点,後藤,2018)6)

ファミリー企業の定義は,後藤(2018)に倣 い,持株比率には具体的な数値基準を設けてい ない。その理由は,日本では,例えばパナソ 表 1 上場企業のファミリー企業比率/分類・市場別

企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率

932 46.9% 298 57.6% 584 61.5% 63 68.5% 1,877 52.9%

566 28.5% 189 36.6% 414 43.6% 37 40.2% 1,206 34.0%

123 6.2% 36 7.0% 52 5.5% 8 8.7% 219 6.2%

92 4.6% 35 6.8% 73 7.7% 9 9.8% 209 5.9%

61 3.1% 26 5.0% 38 4.0% 5 5.4% 130 3.7%

61 3.1% 8 5.0% 4 0.4% 4 4.3% 77 2.2%

29 1.5% 4 1.5% 3 0.3% 36 1.0%

1,055 53.1% 219 42.4% 366 38.5% 29 31.5% 1,669 47.1%

1,987 100.0% 517 100.0% 950 100.0% 92 100.0% 3,546 100.0%

総企業数

C:社長/会長,10 大株主でない c:社長/会長以外の役員,10 大株主でない 非ファミリー企業

強い(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

A:筆頭株主,創業者一族の役員あり a:10 大株主(筆頭株主以外),同 弱い(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

B:筆頭株主,創業者一族の役員不在 b:10 大株主(筆頭株主以外),同不在 微弱(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

東証一部 東証二部 新興 地方単独 総計

ファミリー企業

出所:2016 年度決算データに基づく。後藤,2018,p.3 を基に筆者作成。

(6)

ニックのように創業者一族の株式所有比率が極 端に低いにも拘らず,創業者一族が,代表取締 役や取締役に就任している企業が,他国との比 較で数多く存在している可能性が指摘されてお り(入山・山野井,2014),そのような優良ファ ミリー企業を対象から漏らすことなく分析を行 うほうが,予備的考察を行うにあたり適切と考 えたためである。具体的には,所有と経営にお いて,創業者一族が 10 大株主もしくは取締役 にいる場合をファミリー企業としたうえで,以 下のサブグループに分けて検証をおこなった。

①  所有と経営:創業者一族が 10 大株主で あり,取締役に創業者一族がいる

②  所有のみ:創業者一族が 10 大株主であ るが,取締役に創業者一族がいない

③  経営のみ:創業者一族は 10 大株主でな いが,取締役に創業者一族がいる なお,分析対象は,2019 年 7 月 27 日時点で 日経 NEEDS において,東証業種分類→電気機 器にて検索された 249 社とする。

分析に用いるデータは,公開された企業情報 である,2017 年度(2017 年 4 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日)の有価証券報告書の決算データ を用いる。当該企業の創業者や創業者一族の特 定は,有価証券報告書に記載されている情報,

例えば,企業の沿革,役員の状況,大株主の状 況や,大株主総覧,日経 NEEDS,各社ホーム

ページ,後藤(2018)の巻末資料で得られた創 業者一族名等の情報を参照し,手作業でおこ なった。具体的には以下の情報から導出される 変数となる。

・10 大株主情報

・上場からの経過月数

・役員情報  取締役,監査役,指名委員会

・売上高

・総資産額

・自己資本比率

・ROE

・配当性向

3.2  上場電気機器企業の所有と経営および  ガバナンスの現状

1)ファミリー企業比率

後藤(2018)の分類に倣い,株式市場に上場 している電気機器企業 249 社を 2017 年度決算 データに基づき分析したところ,そのうちファ ミリー企業は 145 社(58.2%)であった。東証 一部市場では,ファミリー企業は 84 社あり絶 対数は圧倒的に多い一方,地方市場ではその 数は少ないものの,ファミリー企業比率は高い

(表 2 参照)。東証一部市場におけるファミリー 企業比率は,52.5%と約半数であった。上場電 気機器企業はファミリー企業比率が比較的高い 産業といえる7)

表 2 上場電気機器企業のファミリー企業比率/分類・市場別

企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率 企業数 比率

84 52.5% 20 57.1% 38 76.0% 3 75.0% 145 58.2%

32 20.0% 12 34.3% 25 50.0% 2 50.0% 71 28.5%

15 9.4% 4 11.4% 3 6.0% 1 25.0% 23 9.2%

7 4.4% 3 8.6% 7 14.0% 0 0.0% 17 6.8%

10 6.3% 0 0.0% 3 6.0% 0 0.0% 13 5.2%

16 10.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 16 6.4%

4 2.5% 1 2.9% 0 0.0% 0 0.0% 5 2.0%

76 47.5% 15 42.9% 12 24.0% 1 25.0% 104 41.8%

160 100.0% 35 100.0% 50 100.0% 4 100.0% 249 100.0%

C:社長/会長,10 大株主でない c:社長/会長以外の役員,10 大株主でない 非ファミリー企業

総企業数

強い(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

A:筆頭株主,創業者一族の役員あり a:10 大株主(筆頭株主以外),同 弱い(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

B:筆頭株主,創業者一族の役員不在 b:10 大株主(筆頭株主以外),同不在 微弱(ファミリーメンバーが及ぼす影響)

東証一部 東証二部 新興 地方単独 総計

ファミリー企業

出所:筆者作成。

(7)

2)所有と経営

表 3 では,電気機器企業の創業者一族の持株 比率と経営への参画状況を示す。創業者一族 が 5%以上の株式を保有するファミリー企業は 109 社(43.7%),同 20%以上保有する企業は 55 社(22.1%)であることが観察された。ま た,創業者一族が社長や会長である企業は 108 社(43.4%)である。創業者一族が株式を所有 しかつ経営者である企業数が過半数を占めてお り,所有と経営が分離していない企業が少なく ないことが検証された。

3)ガバナンス

上場電気機器企業において,社外取締役は 3 8)を除く 246 社で設置され,ほぼ 100%の企 業で選任されており,社外取締役比率は 30 〜 40%台に集中している(表 4 参照)。また,社 外監査役の設置企業数は 172 社(69.1%)であ る(表 5 参照)。

上場企業の社外取締役は,会社法改正(2014 年)9)とコーポレートガバナンス・コード策 定(2015 年)により,急激にその採用が進ん 10)。社外取締役の 2 名採用が事実上の最低 基準とされたことにより,従来の監査役を監査 表 3 上場電気機器企業のファミリー企業社数/創業者一族持ち株比率と経営参画

創業者一族による株式保有比率 経営者(社長・会長) 取締役のみ 取締役不在

Family Ownership=0% 16 4 104 124

0<Family Ownership<5 11 0 5 16

5≦Family Ownership<10 13 1 5 19

10≦Family Ownership<15 10 2 5 17

15≦Family Ownership<20 13 0 5 18

20≦Family Ownership 45 2 8 55

108 9 132 249

創業者一族の経営への参画

出所:筆者作成。

表 4 上場電気機器企業のガバナンス①/創業者一族持ち株比率と社外取締役比率/企業数

一族による株式保有 0% 〜 10%迄 〜 20%迄 〜 30%迄 〜 40%迄 〜 50%迄 50%超

Family Ownership =0 0 3 22 36 40 16 7 124

0<Family Ownership<5 0 1 3 7 4 1 0 16

5≦Family Ownership<10 1 1 7 6 1 1 2 19

10≦Family Ownership<15 0 0 2 7 5 3 0 17

15≦Family Ownership<20 0 0 2 10 4 1 1 18

20≦Family Ownership 2 0 15 20 11 6 1 55

3 5 51 86 65 28 11 249

コーポレート・ガバナンス/社外取締役比率

出所:筆者作成。

表 5 上場電気機器企業のガバナンス②/創業者一族持ち株比率と監査役会設置企業数

創業者一族による株式保有 経営者(社長・会長) 取締役のみ 取締役不在

Family Ownership=0  10 2 78 90

0<Family Ownership<5 7 0 4 11

5≦Family Ownership<10 10 1 4 15

10≦Family Ownership<15 8 1 4 13

15≦Family Ownership<20 4 0 2 6

20≦Family Ownership 34 0 3 37

73 4 95 172

コーポレート・ガバナンス/監査役会設置

出所:筆者作成。

(8)

委員とし,社外監査役を社外取締役へと移行さ せる会社が増加したためである(上田,2018)。

上場電気機器企業のうち,創業者一族が株式 を所有していない非ファミリー企業において,

社外取締役比率「〜 40%迄」に 40 社が集中し ている点が注目される(表 4 参照)。非ファミ リー企業には,外国人や機関投資家の持株比率 が高い企業が多い。外国人や機関投資家は,議 決権行使の基準として「取締役総数の 3 分の 1 が独立社外取締役であるか否か」を採用してい ることが多く,その点に対応しているものと推 察される。

指名委員会の設置11)については,ファミリー 企業では 15 社(ファミリー企業の 10.3%),非 ファミリー企業では 26 社(非ファミリー企業 の 25.0%)が設置しており,ファミリー企業の 方が採用割合は低い(表 6 参照)。指名委員会 を設置している企業は,いずれも東証一部(37 社)および二部市場(4 社)に上場している企 業であり,10 大株主に外国人投資家あるいは 機関投資家のいる企業である。

上場企業において,指名委員会を含む委員会 設置の採用が拡大しない理由として,指名委員 会の過半数は社外取締役で構成され,取締役の 選任・解任を株主総会に提案するのは指名委員 会とされている点があげられる。従来のよう に,現社長が,意中の後継者を次期社長に自ら 推薦することが出来なくなるためではないかと 考えられる(三戸他,2018)。ファミリー企業 の文脈においても同様に,オーナー経営者が,

創業者一族内から後継者を選任できなくなるた め,指名委員会の採用が拡大しないのではない かと推察される。

4)ファミリー企業と非ファミリー企業の比較 上場電気機器企業におけるファミリー企業と 非ファミリー企業のグループ別記述統計量およ び 検定の結果を表 7 に示す。以下の項目にお いて,両者の平均値の差は統計上有意であるこ とが検証された。「上場からの経過月数」,「総 役員数」,「社外取締役比率」,「自己資本比率」

において 5%もしくは 1%有意,「総資産額(連 結)」「売上高」において 10%有意となった。

ファミリー企業は,非ファミリー企業と比較 して,社外取締役比率が低いことから,やや閉 ざされた経営をしているといえる。一方,非 ファミリー企業の社外取締役比率の中央値およ び平均値が約 3 分の 1 であることは,外国人や 機関投資家の議決権行使を意識していると推察 される。

ファミリー企業は,非ファミリー企業と比較 して,自己資本比率が高く,より安定性が高い といえる。資産を自社株式に集中させているで あろう創業者一族は,太宰(2015)が指摘する ように,倒産を回避するため借入金増加に抑制 的な力が働く可能性が考えられる。

また,ファミリー企業は,非ファミリー企業 と比較して,総資産額(連結および単体)と売 上高が小規模な傾向にあることが認められた。

末廣(2006)は,ファミリー企業は事業の拡大 過程で投資資金,人的資源,および生産技術と 表 6 上場電気機器企業のガバナンス③/創業者一族持ち株比率と指名委員会設置企業数

創業者一族による株式保有 経営者(社長・会長) 取締役のみ 取締役不在

Family Ownership  =0 5 1 26 32

0<Family Ownership<5 1 1 0 2

5≦Family Ownership<10 2 1 0 3

10≦Family Ownership<15 0 0 0 0

15≦Family Ownership<20 0 0 0 0

20≦Family Ownership 1 0 3 4

9 3 29 41

コーポレート・ガバナンス/指名委員会設置

出所:筆者作成。

(9)

情報知識といった3つの側面で「経営的臨界点」

に達することを指摘しており,それら臨界点を 超えた場合,ファミリー企業ではない企業形態 への移行が観察されるとしている12)。その指 摘を鑑みるに,ファミリー企業がファミリー企 業であり続けることを望む場合,売上高や総資 産額を一定の範囲内に抑制する力が働くのでは ないかと推察される。

統計上その平均値の差は有意ではないもの の,収益性の指標である ROE については,ファ ミリー企業は非ファミリー企業に比べ平均値お よび中央値が低い結果となった。電機機器産業 は,国内需要の減少や,海外市場ではアジア メーカーの台頭等,競合メーカーが多数存在す る厳しい事業環境下にあり,経営手腕が一層問 われる状況にある。2017 年度決算において当 期純利益(単体)がマイナスである企業 19 社 は,全てファミリー企業であった。

5)上場後の経過時間

上場電気機器企業のファミリー企業群(2017 年度決算期)において,上場からの経過時間

(経過月数)と創業者一族持株比率については,

負の相関がみられる(表 8 参照)。上場後の時 間の経過とともに,創業者一族持株比率が低下

する傾向にあることが検証された(表 8 参照)。

上場電気機器企業のファミリー企業群を,① 所有と経営(創業者一族が 10 大株主であり取 締役に創業者一族がいる),②所有のみ(創業 者一族が 10 大株主であるが,取締役に創業者 一族がいない),③経営のみ(創業者一族は 10 大株主でないが,取締役に創業者一族がいる)

の 3 つのサブグループごとに相関分析を行った ところ,②所有のみのサブグループにおいて,

「上場からの月数」と「創業者一族持株比率」

との間に負の相関,「上場からの月数」と「自 己資本比率」(連結および単体)との間に負の 相関がある一方,「売上高」と「総資産額」と の間には正の相関がみられた(表 9 参照)。そ れらのことから,以下の点が推察される。

②所有のみのサブグループにおいて,

  株式市場に上場し,当該企業が成長を追 求し大規模化すると,総資産額は増え自 己資本比率は低下する一方,大規模化の 過程において,創業者一族の持ち株比率 は低下する。

  創業者一族の持ち株比率と ROE が正の 相関にあることから,創業者一族の株主 としてのガバナンスが収益性にプラスに 表 7 上場電気機器企業/ファミリー企業と非ファミリー企業の比較

創業者一族持株比率(%) 0.00 60.83 15.47 18.25 15.70 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 14.00 ***

上場からの経過月数(ヶ月) 4 827 317 342 193.56 49 846 632 511 261.97 -5.57 ***

総役員数(人) 5 20 10 10 2.851 5 25 11 11.31 2.903 -2.46 **

取締役数(人) 4 17 8 8.16 2.538 4 20 8 8.57 2.530 -1.26

社外取締役比率(%) 0.00 83.30 27.30 27.86 11.99 10.00 80.00 33.30 32.82 12.77 -3.13 ***

総資産額(連結)(百万円) 1249 6,291,148 36,502 236,619 2,235,859 2,741 19,065,538 79,990 630,091 2,235,859 -1.69 *

自己資本比率(連結)(%) 0.0 94.10 62.80 60.36 20.86 0.0 86.90 49.25 49.14 18.63 4.10 **

ROE(連結)(%) -11.00 33.30 6.40 7.28 6.88 -122.0 29.00 7.70 5.98 16.58 0.70

売上高(百万円) 142 4,056,083 15,923 105,944 392,646 177 2,676,821 44,275 204,454 444,084 -1.81 * 総資産額(百万円) 901 4,427,681 24,777 153,814 516,853 1,370 12,325,379 55,206 376,934 1,318,672 -1.62

自己資本比率(%) -5.70 97.60 66.80 63.11 21.07 2.8 94.4 51.5 52.41 19.74 4.06 ***

ROE(%) -23.20 47.30 6.50 7.36 8.82 -132.10 114.00 7.60 7.77 21.63 -0.17

配当性向(%) -19.4 959.90 36.15 58.14 95.82 -64.50 445.20 37.70 52.04 61.53 0.51

*p<0.10  **p<0.05  ***p<0.01

標準偏差 t検定

t

①Family Firm ②Nonfamily Firm ①vs②

最小値 最大値 中央値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 中央値 平均値

出所:筆者作成。

(10)

表 8 上場電気機器ファミリー企業の相関 上場からの

月数 創業者一族

持株比率 売上高 総資産額 自己資本比率 ROE 配当性向

上場からの月数 1

創業者一族持株比率 -.486** 1

売上高 .371** -.212* 1

総資産額 .379** -.221** .940** 1

自己資本比率 -.011 -.030 -.116 -.050 1

ROE .135 .001 .145 .139 -.068 1

配当性向 -.013 -.002 .001 .008 .082 -.264** 1

**.相関係数は 1% 水準で有意(両側)

*

.相関係数は 5% 水準で有意(両側)

Family Farm の相関係数

出所:筆者作成。

表 9 上場電気機器ファミリー企業の相関/サブグループごと

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営

①所有と経営

②所有

③経営 上場からの月数

創業者一族持株比

売上高(連結)

総資産額(連結)

自己資本比率(連結)

ROE(連結)

売上高

総資産額

自己資本比率

ROE

**.相関係数は 1% 水準で有意(両側)

*.相関係数は 5% 水準で有意(両側)

上場からの月数 創業者一族

持株比率 売上高

(連結)総資産額

(連結)

自己資本比率

(連結) ROE

(連結) 売上高 総資産額自己資本

比率 ROE

Family Farm の相関係数

1 1 1 -.302** 1 -.478** 1 -.425 1

.286** -.163 1 .495** -.214 1 .386 -.133 1 .222* -.125 .953** 1 .468* -.214 .992** 1 .390 -.137 .958** 1 .018 .214* -.215* -.200 1 -.496* -.044 -.359 -.342 1 -.560* .460 .088 .286 1

.197 .009 .055 .079 .126 1 -.162 .444* .253 .199 .008 1 -.332 .154 .019 -.036 .139 1

.305** -.190 .639** .394** -.124 -.244* 1 .571** -.243 .976** .951** -.352 .219 1 .384 -.132 .997** .957** .258 -.067 1 .292** -.183 .930** .832** -.136 .034 .801** 1 .574** -.247 .948** .920** -.348 .186 .956** 1 .380 -.126 .950** .997** .252 -.050 .945** 1 -.191 .170 -.060 .024 .792** .104 -.214* -.059 1 -.676** .087 -.414* -.381* .817** .083 -.467** -.468** 1 -.436* .391 -.330 -.222 .850** .215 -.335 -.215 1

.145 -.021 -.005 -.004 .145 .907** -.012 -.002 .124 1 .574** .197 -.448* -.522** -.026 .831** -.277 -.245 .121 1 -.233 .404 .085 .049 .160 .592* .082 .042 -.065 1

出所:筆者作成。

(11)

働く側面がある。

4. 今後の研究に向けて―予備的な考察 とまとめ―

本稿では,日本の株式市場に上場している電 気機器企業の株式所有構造に着目し,「創業者 一族が,ファミリー企業の経営に関与し続ける ことは可能か」というリサーチ・クエスチョン に基づき,ファミリー企業の「ファミリー企業 としての存続性」における要因分析に向けて,

予備的考察をおこなった。10 大株主構成と経 営者および取締役会の構成に代表されるガバナ ンスに焦点を当て検証をおこなったところ,以 下の点が実証された。

  上場電気機器ファミリー企業と非ファミ リー企業との比較において,ガバナン ス,企業規模,安定性においてその平均 値に統計上有意な差がみられる。

  上場後の時間の経過と創業者一族の持ち 株比率は負の相関にある。

  株式を所有することにより創業者一族が 間接的に経営に関与するファミリー企業 では,創業者一族の持株比率(株主とし てのガバナンス)が,ROE と正の相関 にある。

以上のことから,「ファミリー企業としての 存続性」に関する要因分析において,創業者一 族の持株比率が重要な変数となることが実証さ れた。

本稿は,サンプルが上場電気機器企業に限ら れており,データ項目および内容も限定されて いることから,今後は対象業種を増やしたうえ でより精緻な分析を行う。

1) Faccio and Lang(2002)は,イギリス,アイル ランドを除く西欧 11 ヶ国の上場企業のおおよそ 半数以上において,創業家一族が 20%以上の議 決権を握っていると報告している。

2) 株主は,直接経営に関与することはできないが,

自己の選任する取締役を通じて間接的に,経営

の意思決定に影響を及ぼすことができる。多く の議決権を持つ大株主は,企業に多大な影響を 与えることになる。また,株主総会以降,経営 に関わる全ての意思決定は,取締役会によって 執り行われる。代表取締役,執行役,各委員会 の委員についても,株主総会直後の取締役会決 議によって選定・解職される。取締役会では,

代表取締役(いわゆる会長や社長)も取締役も 同様に,一取締役につき一票ずつしか議決権を 持ち得ない。ちなみに,取締役は他の取締役に よって解任が可能である。取締役会の決議に よって臨時株主総会を開催して,会長もしくは 社長であろうとも,その議決をもって解任する ことができる。

3) 本稿でいう創業者一族とは,創業者ないし創業 者の一族,または創業者一族と密接な関係を持 つ法人である有限会社や財団法人等とする。創 業者の一族とは,創業者の配偶者,子とその配 偶者,孫とその配偶者,創業者の兄弟を含む。

4) 経営陣が出光興産と日石の統合を発表した当初

(2015 年)は,2017 年 4 月までの統合を目指す としていたが,実際には 2019 年 4 月に統合さ れた。統合に時間を要している間に,JX ホー ルディングスと東燃ゼネラル石油の統合によ り,2016 年 8 月に JXTG グループ誕生が誕生し た。出光興産創業家が,増資に伴う新株式発行 の差止め仮処分を裁判所に申請するなど,両者 の合意に時間を要している間に,競合 2 社の統 合に先を越される事態となった(日本経済新聞,

2017)。

5) 後藤(2018)のファミリー企業の分類は,2016 年度決算期データをもとに行われている。(巻末 資料 pp.184-274)

6) 製造業の上場企業数は,多いものから,電気機 器 259 社, 機 械 231 社, 化 学 212 社, 食 料 品 126 社と続く。

7) 製造業におけるファミリー企業比率が高い業 種(全上場市場/ 2016 年度決算期データに基づ く)は,食料品 67.2%,機械 62.8%,金属製品 62.6%,精密機械 60.8%,電気機器 56.0%,医 薬品 53.1%となっている。なお,全産業平均は 52.9%,製造業平均は 55.1%,非製造業平均は 51.36%であった。

8) ピクセラ,santec,アルチザネットワークスの 3 社である。3 社とも,社外取締役を設置してい ないものの,監査役会を設置したうえで社外監 査役を選任している。santec の 2017 年度決算報 告書には,「当社は経営の意思決定機能と,執行 役員による業務執行を管理監督する機能をもつ 取締役に対し,監査役 3 名中 3 名を社外監査役

(12)

とすることで,経営への監督機能を強化してい る。(中略)社風,事業内容を鑑み,現状の体制 が最適であると判断しています。」との説明がさ れている。

9) 社外取締役を不採用の場合に,株主総会におい て社外取締役を置くことが相当ではない理由の 説明が義務付けられた(会社法 327 条の 2)。

10) 2015 年のコーポレートガバナンス・コードの策 定により,「上場会社は資質を十分に備えた独立 社外取締役を少なくとも 2 名以上選任すべきで ある」とされた。これを受け,社外取締役を 2 名採用することが上場会社として事実上の最低 基準となった(上田,2018)。

11) 取締役会のなかに指名委員会,報酬委員会,監 査委員会という 3 つの委員会制度を持つ指名委 員会設置会社は 2003 年に導入され,その数は 2017 年 8 月現在,全上場企業のうち 73 社であ る(東証一部 62 社,同二部 3 社,日本取締役協 会)。一方,2015 年の会社法改正により新たに 導入された監査等委員会設置会社は,監査役会 がないかわりに取締役会のなかに監査委員会が 設けられる。指名委員会,報酬委員会の設置の 必要がないことから,監査等設置委員会会社へ の移行は,経営陣に受け入れやすい統治機構と なっている(三戸他,2018)。

12) 久保田・斎藤(2014)によると,臨界点に達し ていない中小規模のファミリー企業においては,

同族内能力主義が機能する余地がある。例えば,

業歴 100 年超で年商が 3 億円未満の長寿企業の ほとんどが非上場であり,多くの中小老舗企業 が規模の拡大より,一定範囲内の顧客の満足,

地域於ける信用・信頼の維持や向上を目指して いるとしている。

参考文献

Anderson, R. C., and Reeb, D. M. (2003)  Founding  Family Ownership and Performance. Evidence  from  the  S&P  500,   ,  58,  pp.1301-1327.

Berle, A. A., and G. C. Means (1932) 

, Macmillian.

(北島忠男訳『近代株式会社と私有財産』文雅堂 書店,1958 年)

Faccio,  Mara  and  Larry  H.  P.  Lang  (2002)  The  ultimate ownership of Western European cor- porations   , 65,  pp.365-395.

Fama, E., and Jensen, M. (1983)  Separation of Own- ership  and  Control,  

, 26, pp.301-325.

Gersick,  K.  E.,  Davis,  J.  A.,  Hampton,  M.  M.,  and  Lansberg, L. S. (1997) 

,  Harvard  Business School Press.(犬飼みずほ・岡田康司 訳『オーナー経営の存続と承継』流通科学大学 出版,1999 年)

La Porta, R., Lopez-de-Silanes, and Shleifer, A. (1999)  Corporate  Ownership  Around  the  World,  

, 54, pp.471-517.

Lilienfeld-Toal, U. and S. Ruenzi (2014) 

,  Stock  Market  Performance,  and  Managerial Discretion,   , 44,  pp.1013-1050.

Miller, Danny, Isabelle Le Breton-Miller, Richard H. 

Lester, Albert A. Cannella Jr (2007)  Are family  firms really superior performers?,  

, 13, pp.829-858.

Villalonga, Belen and Raphael Amit (2006)  How do  family ownership, control and management af- fect firm value?,  

, 80, pp.385-417.

淺羽 茂(2015)「日本のファミリービジネス研究」

『一橋ビジネスレビュー』2015 AUT(63 巻 2 号),

pp.20-28.

今村明代(2017)『創業者一族の経営とコーポレー ト・ガバナンス』中央出版社.

入山章栄・山野井順一(2014)「世界の同族企業研究 の潮流」『組織科学』48,pp.25-37.

ウィワッタナカンタン ユパナ,沈 政郁(2015)「ファ ミリービジネスと戦後の日本経済:上場企業の データから見えてくる日本のファミリービジネ スの姿」『一橋ビジネスレビュー』63 巻 2 号,

pp.32-46.

上 田 亮 子(2018)「2018 年 株 主 総 会 の 分 析 と コ ー ポレート・ガバナンス」『資本市場』No.399,

pp.23-33.

岡室博之・ウィワッタナカンタン,ユパナ・沈 政 郁(2008)「日本企業の所有構造の発展過程(1950

〜 2004)―安定株主持ち株比率の測定―」『COE- RES Discussion Paper Series』265,pp.1-28.

奥村昭博(2015)「ファミリービジネスの理論 昨日  今日 これから」『一橋ビジネスレビュー』 2015  AUT(63 巻 2 号),pp.6-19.

落 合 康 弘(2014)「 フ ァ ミ リ ー ビ ジ ネ ス の 事 業 継 承と継承者の能動的行動」『組織科学』47(3),  pp.40-51.

加 藤 敬 太(2014)「 フ ァ ミ リ ー ビ ジ ネ ス に お け る 企業活動のダイナニズム」『組織科学』47(3),  pp.29-39.

亀川雅人(2015)『ガバナンスと利潤の経済学―利潤

表 8 上場電気機器ファミリー企業の相関 上場からの 月数 創業者一族持株比率 売上高 総資産額 自己資本比率 ROE 配当性向 上場からの月数 1 創業者一族持株比率 -.486 ** 1 売上高 .371 ** -.212 * 1 総資産額 .379 ** -.221 ** .940 ** 1 自己資本比率 -.011 -.030 -.116 -.050 1 ROE .135 .001 .145 .139 -.068 1 配当性向 -.013 -.002 .001 .008 .082 -.264 **

参照

関連したドキュメント

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

3.排出水に対する規制

参考資料ー経済関係機関一覧(⑤各項目に関する機関,組織,企業(2/7)) ⑤各項目に関する機関,組織,企業 組織名 概要・関係項目 URL

(2)特定死因を除去した場合の平均余命の延び

耐震性及び津波対策 作業性を確保するうえで必要な耐震機能を有するとともに,津波の遡上高さを

 奥村(2013)の調査結果によると,上場企業による財務諸表本体および注記

運営規程の記載例 運営規程の利用料を「介護報酬の告示上の額」と定めている事業所は、運営規程の変更届も必要となり

 5つめは「エンゲージメントを高める新キャリアパス制度の確