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言語理解のメカニズム解明の目標について ―言語の認知構造―

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Academic year: 2021

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言語理解のメカニズム解明の目標について

―言語の認知構造―

松倉 茂

1.はじめに

ヒトの認知構造は発達することが知られている。生まれたての乳児は聴覚や視覚などは別にし ても、ほとんど認知能力が無に等しいにもかかわらず成人するまでの間にはその認知能力は著し く発達する。

このように急激に認知能力が発達すること自体はよく知られた事実であるが、それがどのよう なメカニズムで起きるのかはまだよく分かっていない。

本研究の目標は言語の認知能力のメカニズムの解明である。

2.音声

言語で言えば音声と音素の区別などが挙げられるが、実際の言語使用の場面では同じ音素/p/

は[p]となって様々に発音されるが、その様々な[p]の根底に同じ音素/p/を認識する能力がヒトに は備わっていると言える。

音声学は実験装置を使用して実際の音声を分析して音素との差異を記述することができるが、

人間の脳内にそのような音声を分析する精密な装置があるわけではないので、どのようにしてヒ トは音声を認識しているのかというメカニズムを解明するのが本研究の掲げる目標である。

3.統語

統語論の分野においても、いわゆる非文法的と考えられる文を実際の言語使用の場面で はヒトは処理し理解することが少なくない。

例えば、否定対極表現の「全然」の使用例で

1) 全然よくない

2) *全然よい

3) 全然いい

2)は否定対極表現の「全然」が「よい」という肯定の形容詞と共に使われているので非

(2)

文法的であるが、この表現を話者が発した場合聴者は十分に意味を理解できる。統語論の 分野においても、このように非文法的な表現や語句や文を理解できる能力のメカニズムの 解明も本研究の目標である。

4.意味

意味論の分野においても、通常、意味解釈が不可能な語句であったとしても、ヒトは簡単 に意味が分かってしまう場合がよくある。例えば、次の例を考えてみると、

4) 青い心

「心」には色彩がないので「青い」という形容詞とは共起不可能であるというのが意味論 における通常の分析であるが、詩などにおいて上記の4)のような語句が出てきた場合に は読者は十分その意味を理解してしまう。このような事例は語用論で扱うというのが従来 のやり方であるが、それでは多くの言語事象が語用論の問題になり、いわゆる語用論が「ゴ ミ箱化」してしまうことになる。本研究の目標はこのような意味論の分析では容認不可能 であるとされる語句がどのようにしてヒトによって理解されるのかというメカニズムを解 明することである。

5.まとめ

言語研究の3つの主要な分野を例にとって言語能力のメカニズムの解明の目標はどのよ うなものであるべきかをこれまで論じてきた。われわれは言語を使用するヒトの能力のメ カニズムのすべてを網羅する理論の構築を目標とするものである。

参考文献

Chomsky N. 1957. Syntactic Structures, The Hague.

Chomsky N. 1965. Aspects of the Theory of Syntax, Cambridge, Mass.

Chomsky N. 1972. Studies on Semantics in Generative Grammar, The Hague.

参照

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