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神田久男先生の定年ご退職にあたって 心理学科長

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Academic year: 2021

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 2013年の3月末をもって,神田久男先生は立教 大学を定年退職されました。本来ならば1年前に 発行された「立教大学心理学研究」第55号にこ の文章は掲載されなければならなかったのです が,退職教員を送る言葉は学科長が書くという慣 例があり,神田先生がその年度の学科長だったた めに1年遅れになってしまったのです。定年退職 が予定されている年度に学科長をお願いせざるを 得なかった事情はいくつかあるのですが,その一 つは私が前期に研究休暇をとっていたことであ り,まことに申し訳なく思っております。その数 年前にも私が急病で大学センター試験の監督がで きなくなったときに代わってくださるなど,神田 先生には助けられてばかりいました。

 思えば心理学科全体が,ずっと神田先生に助け られ,支えられて来たのです。少なくとも私が立 教大学に着任した1998年以降はそうだったと断 言できます(その年の学科長も神田先生でした)。

文学部心理学科時代は,専任教員の中でたった一 人の臨床心理学担当として,毎年大勢の学部生,

大学院生を指導し,心理学専攻が臨床心理士第1 種指定大学院に指定されるために奔走されまし た。2006年度に現代心理学部ができてからは4 連続学科長の後,2年間学部長,そして最後の1 年に学科長と,休む間もなく重責をお引き受けく ださいました。

 神田先生は1971年に立教大学文学部心理学科 をご卒業の後,大学院に進まれ77年まで在籍,

日本総合愛育研究所,淑徳短期大学社会福祉学科 などを経て,88年から立教大学文学部心理学科 に助教授として着任され,91年に教授に昇格し ました。キャリアのほとんどを立教大学で積み上 げて来たわけです。

 臨床家としてはイメージ療法・芸術療法の大家 として著名ですが,家族心理学や青年期臨床心理 学の研究でも重要な業績を残されています。神田

先生は最近の著書の中で次のように書いていま す:

 心理治療とは,クライエントとセラピストとの 人間的な出会いによって新しい関係を築くことに より,さまざまな問題や課題を一緒に解決してい こうとする相互の営みのことである。したがって,

臨床心理学におけるパーソナリティの研究法や諸 理論,それに治療技法といったものは,すべてこ うした生きた臨床実践の積み重ねが礎になって生 まれてくるといっても過言ではない。(『心理援助 アプローチのエッセンス』p.iii)

 クライエントの表現を素朴に受け取ろうとはせ ず,まずはそれを理論的なカテゴリーにはめ込ん だり,細かく概念化してとらえたのでは通り一遍 の理解しか得られない。(同p.147)

 これらの文章は神田先生の臨床心理学や学問全 般に対する基本姿勢をよく表しているように思い ます。まだ臨床心理学専攻が心理学専攻の中に あった時に,修論発表会などの席で,他の教員が ともすれば理論的枠組みの欠如,概念定義の曖昧 さ,統計分析の不備などを批判するのを尻目に,

まったく違う観点から論文を評価しておられまし た。あるとき,「最近はこぢんまりときれいにま とまったつまらない修論ばかり増えた」と嘆いて いましたが,それは他の教員の指導に対する痛烈 な皮肉だったのかもしれません。

 神田先生が目指したことは,上手に論文をまと めるスキルを持った修了生を育てることなどでは なく,「クライエントとの人間的な出会いによっ て新しい関係を築くことにより,さまざまな問題 や課題を一緒に解決」する力を持ったセラピスト を育てることだったと,今更ながらに気づいた私 です。

神田久男先生の定年ご退職にあたって

心理学科長 芳 賀  繁

参照

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