小笠原諸島の自然再生における 絶滅危惧種の域内域外統合的保全手法の開発 (4-1402) I. 成果の概要 i 1. はじめに ( 研究背景等 ) 2. 研究開発目的 3. 研究開発の方法 4. 結果及び考察 5. 本研究により得られた主な成果 6. 研究成果の主な発表状況 7. 研究者略歴 II.

Environment Research and Technology Development Fund

環境省環境研究総合推進費終了研究等成果報告書

小笠原諸島の自然再生における

絶滅危惧種の域内域外統合的保全手法の開発

(4-1402)

平成26年度～平成28年度

Integrated Approach of In-situ and Ex-situ Conservation of Threatened Species in the Ogasawara Islands

国立研究開発法人 森林総合研究所 東北大学 首都大学東京 神奈川県立生命の星・地球博物館 特定非営利活動法人 小笠原自然文化研究所 平成29年5月 環境省 総合環境政策局総務課環境研究技術室 環境保健部環境安全課環境リスク評価室 地球環境局総務課研究調査室

小笠原諸島の自然再生における

絶滅危惧種の域内域外統合的保全手法の開発

（4-1402）

I．成果の概要 ・・・・・・・ i １． はじめに（研究背景等） ２． 研究開発目的 ３． 研究開発の方法 ４． 結果及び考察 ５． 本研究により得られた主な成果 ６． 研究成果の主な発表状況 ７． 研究者略歴 II．成果の詳細 （１）生物進化に配慮したハビタットの持続的管理手法の開発 ・・・・・・・ １ （国立研究開発法人 森林総合研究所） 要旨 ・・・・・・・ １ １． はじめに ・・・・・・・ １ ２． 研究開発目的 ・・・・・・・ ２ ３． 研究開発方法 ・・・・・・・ ３ ４． 結果及び考察 ・・・・・・・ ６ ５． 本研究により得られた成果 ・・・・・・・ ２３ ６． 国際共同研究等の状況 ・・・・・・・ ２４ ７． 研究成果の発表状況 ・・・・・・・ ２４ ８． 引用文献 ・・・・・・・ ２７ （２）絶滅危惧植物の繁殖成功に配慮した域内保全手法の開発 ・・・・・・・ ２９ （首都大学東京） 要旨 ・・・・・・・ ２９ １． はじめに ・・・・・・・ ２９ ２． 研究開発目的 ・・・・・・・ ３１ ３． 研究開発方法 ・・・・・・・ ３１ ４． 結果及び考察 ・・・・・・・ ３３ ５． 本研究により得られた成果 ・・・・・・・ ４４ ６． 国際共同研究等の状況 ・・・・・・・ ４４ ７． 研究成果の発表状況 ・・・・・・・ ４４ ８． 引用文献 ・・・・・・・ ４７ （３）絶滅危惧昆虫の域内・域外保全および再導入手法の開発 ・・・・・・・ ４９ （神奈川県立生命の星・地球博物館） 要旨 ・・・・・・・ ４９ １． はじめに ・・・・・・・ ４９ ２． 研究開発目的 ・・・・・・・ ５０ ３． 研究開発方法 ・・・・・・・ ５０ ４． 結果及び考察 ・・・・・・・ ５１ ５． 本研究により得られた成果 ・・・・・・・ ６１ ６． 国際共同研究等の状況 ・・・・・・・ ６２ ７． 研究成果の発表状況 ・・・・・・・ ６２ ８． 引用文献 ・・・・・・・ ６３

（４）絶滅危惧陸産貝類の域内・域外保全および再導入手法の開発 ・・・・・・・ ６４ （東北大学） 要旨 ・・・・・・・ ６４ １． はじめに ・・・・・・・ ６４ ２． 研究開発目的 ・・・・・・・ ６５ ３． 研究開発方法 ・・・・・・・ ６６ ４． 結果及び考察 ・・・・・・・ ６８ ５． 本研究により得られた成果 ・・・・・・・ ７７ ６． 国際共同研究等の状況 ・・・・・・・ ８０ ７． 研究成果の発表状況 ・・・・・・・ ８０ ８． 引用文献 ・・・・・・・ ８１ （５）絶滅危惧海鳥の域内保全手法の開発と飼育技術確立のための食性の解明 ・・・・・・・ ８２ （特定非営利活動法人小笠原自然文化研究所） 要旨 ・・・・・・・ ８２ １． はじめに ・・・・・・・ ８２ ２． 研究開発目的 ・・・・・・・ ８３ ３． 研究開発方法 ・・・・・・・ ８４ ４． 結果及び考察 ・・・・・・・ ８６ ５． 本研究により得られた成果 ・・・・・・・ ９２ ６． 国際共同研究等の状況 ・・・・・・・ ９３ ７． 研究成果の発表状況 ・・・・・・・ ９３ ８． 引用文献 ・・・・・・・ ９５ III．英文Abstract ・・・・・・・ ９８

4⁻1402-i 課 題 名 4-1402 小 笠 原 諸 島 の 自 然 再 生 に お け る 絶 滅 危 惧 種 の 域 内 域 外 統 合 的 保 全 手 法 の 開 発 課 題 代 表 者 名 川 上 和 人 （ 国 立 研 究 開 発 法 人 森 林 総 合 研 究 所 野 生 動 物 研 究 領 域 鳥 獣 生 態 研 究 室 主 任 研 究 員 ） 研 究 実 施 期 間 平 成 26～ 28年 度 累 計 予 算 額 134,496千 円 （ う ち 平 成 28年 度 ： 43,985千 円 ） 予 算 額 は 、 間 接 経 費 を 含 む 。 本 研 究 の キ ー ワ ー ド 域 外 保 全 、 域 内 保 全 、 遺 伝 的 攪 乱 、 侵 略 的 外 来 種 、 再 導 入 、 植 栽 、 生 息 地 管 理 、 絶 滅 危 惧 種 研 究 体 制 （ １ ） 生 物 進 化 に 配 慮 し た ハ ビ タ ッ ト の 持 続 的 管 理 手 法 の 開 発 （ 国 立 研 究 開 発 法 人 森 林 総 合 研 究 所 ） （ ２ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 に 配 慮 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 （ 首 都 大 学 東 京 ） （ ３ ） 絶 滅 危 惧 昆 虫 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 （ 神 奈 川 県 立 生 命 の 星 ・ 地 球 博 物 館 ） （ ４ ） 絶 滅 危 惧 陸 産 貝 類 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 （ 東 北 大 学 ） （ ５ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の 開 発 と 飼 育 技 術 確 立 の た め の 食 性 の 解 明 （ 特 定 非 営 利 活 動 法 人 小 笠 原 自 然 文 化 研 究 所 ） 研 究 概 要 １ ． は じ め に （ 研 究 背 景 等 ） 小 笠 原 諸 島 は 、 多 数 の 固 有 種 が 進 化 し 、 貴 重 な 生 態 系 を 有 す る が 、 そ れ と 同 時 に 侵 入 し た 外 来 種 に よ っ て 多 く の 絶 滅 が 生 じ て い る 。 こ れ ま で の 研 究 に よ り 、 小 笠 原 に 侵 入 し た 外 来 種 の 影 響 と そ の 駆 除 手 法 に 関 す る 成 果 が 多 く 得 ら れ 、 ア カ ギ や ク マ ネ ズ ミ 等 の 外 来 種 駆 除 事 業 に 応 用 さ れ た 。 外 来 種 駆 除 を 実 施 し た 地 域 に お い て は 、 多 数 の 在 来 動 植 物 の 再 生 、 鳥 類 や 陸 貝 類 の 回 復 な ど 目 覚 ま し い 成 果 が 確 認 さ れ て い る 。 し か し 、 そ の 一 方 で 、 外 来 種 の ノ ヤ ギ や ト ク サ バ モ ク マ オ ウ （ 以 下 、 モ ク マ オ ウ ） 等 が 他 の 外 来 植 物 の 増 加 を 抑 え て い た 側 面 も 明 ら か に な っ て き た 。 そ の 結 果 、 あ る 外 来 種 の 駆 除 を 行 っ た 場 合 に 他 の 外 来 種 が 増 加 し 、 新 た に 絶 滅 危 惧 種 の 生 息 環 境 の 劣 化 と 個 体 群 へ の 影 響 を 生 じ る 事 例 が 生 じ て い る 。 こ の た め 、 現 在 の 小 笠 原 の 絶 滅 危 惧 種 は 、 外 来 種 の 影 響 そ の も の に 加 え 、 一 部 の 外 来 種 駆 除 後 の 急 速 な 環 境 変 化 に さ ら さ れ て い る 。 ２ ． 研 究 開 発 目 的 急 速 な 環 境 変 化 と 外 来 生 物 の 影 響 に さ ら さ れ て い る 絶 滅 危 惧 種 を 保 全 し 、 世 界 自 然 遺 産 の 価 値 を 維 持 し て い く た め に は 、 こ れ ら の 絶 滅 危 惧 種 の 生 息 地 を 適 切 に 管 理 す る こ と と 、 そ れ ぞ れ の 種 の 特 性 に 応 じ た 域 内 ・ 域 外 保 全 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 特 に 、 固 有 性 が 高 く 小 笠 原 諸 島 内 で も 分 布 の 狭 い 種 で は 、 絶 滅 の 危 険 性 が 高 い と 考 え ら れ る た め 、 緊 急 の 対 策 が 必 要 と な る 。 絶 滅 危 惧 種 の 生 息 環 境 を 維 持 す る た め に は 、 外 来 植 物 駆 除 後 の 在 来 種 の 植 栽 が 必 要 と な る 場 合 も あ る 。 た だ し 、 植 栽 は 生 態 系 に 対 し て 人 為 的 攪 乱 を 生 じ さ せ る お そ れ が あ る た め 外 来 種 駆 除 後 に 在 来 種 の 更 新 が 不 良 な 場 所 に 限 る べ き で あ り 、 植 栽 対 象 種 の 遺 伝 的 攪 乱 へ の 配 慮 も 必 要 で あ る 。 ま た 、 絶 滅 が 危 惧 さ れ る 保 全 対 象 種 に は 、 生 活 史 や 生 息 環 境 条 件 が 未 知 の 種 も 多 い 。 海 洋 島 は 独 自 の 進 化 を 遂 げ た 生 物 相 を も つ た め 、 そ れ ぞ れ の 種 の 進 化 過 程 と 種 間 相 互 作 用 に 応 じ た 手 法 を 適 用 し な け れ ば 、 有 効 な 保 全 は で き な い 。 陸 産 貝 類 や 昆 虫 で は 分 布 の 狭 い 新 種 が 相 次 ぎ 発 見 さ れ て い る が 、 こ の よ う な 種 は 絶 滅 リ ス ク が 高 く 、 飼 育 増 殖 と 再 導 入 を 含 む 域 外 保 全 と 域 内 保 全 を 組 み 合 わ せ た 保 全 策 を 緊 急 に 開 発 す る 必 要 が あ る 。 以 上 の こ と か ら 、 特 に 危 機 的 な 状 況 に あ る 絶 滅 危 惧 種 と し て 、 送 粉 系 攪 乱 の 影 響 を 強 く 受 け て い る 特 異 な 性 表 現 を 持 つ 植 物 、 外 来 種 捕 食 者 お よ び 外 来 植 物 に よ る 環 境 改 変 の 影 響 を 強 く 受 け て い る 陸 産 貝 類 、 昆 虫 、 海 鳥 を 主 要 な 対 象 と し て 、 生 息 地 の 維 持 と 管 理 、 域 内 及 び 域 外 保 全 手 法 を 確 立 し 、 そ れ ら を 統 合 し た 保 全 手 法 を 開 発 す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と し た 。 ３ ． 研 究 開 発 の 方 法 （ １ ） 生 物 進 化 に 配 慮 し た ハ ビ タ ッ ト の 持 続 的 管 理 手 法 の 開 発 １ ） モ ク マ オ ウ 駆 除 後 に 植 栽 を 必 要 と す る 条 件 の 解 明 2010年 に モ ク マ オ ウ の 駆 除 を 大 規 模 に 行 っ た 西 島 に お い て 、 駆 除 の 効 果 お よ び 植 栽 が 必 要 に な る 条 件 を 明 ら か に す る た め 、 モ ク マ オ ウ が 優 占 す る 森 林 （ 外 来 林 ） お よ び 在 来 樹 種 が 優 占 す る 森 林 （ 在 来

4⁻1402-ii 林 ） の モ ク マ オ ウ 駆 除 区 と 非 駆 除 区 （ 対 照 区 ） で 環 境 変 化 お よ び 生 物 相 変 化 に 関 す る モ ニ タ リ ン グ 調 査 を 行 っ た 。 ま た 、 モ ク マ オ ウ 駆 除 区 に お い て 植 物 の 更 新 状 況 を 明 ら か に し 、 在 来 樹 お よ び 外 来 樹 の 更 新 数 と 地 形 条 件 の 関 係 を 評 価 し た 。 さ ら に 、1978年 ・ 2009年 ・ 2014年 に 撮 影 さ れ た 空 中 写 真 を 用 い て 、 モ ク マ オ ウ の 侵 入 プ ロ セ ス や 在 来 樹 種 の 分 布 域 の 読 み 取 り を 行 っ た 。 ２ ） 植 栽 候 補 樹 に お け る 遺 伝 構 造 解 析 小 笠 原 で 植 栽 候 補 種 と な っ て い る8種 （ ア カ テ ツ 〔 コ バ ノ ア カ テ ツ を 含 む 〕 、 ア コ ウ ザ ン シ ョ ウ 、 キ ン シ ョ ク ダ モ 〔 ム ニ ン シ ロ ダ モ を 含 む 〕 、 シ マ イ ス ノ キ 、 シ マ モ チ 〔 ム ニ ン モ チ を 含 む 〕 、 シ ャ リ ン バ イ 、 ム ニ ン ノ キ 、 ヤ ロ ー ド ） に つ い て 、 サ ン プ リ ン グ を 行 い 、 マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト マ ー カ ー を 用 い て 遺 伝 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を も と に 、 各 種 の 種 苗 配 布 区 分 を 策 定 し た 。 ３ ） サ ブ テ ー マ 間 の 統 合 各 サ ブ テ ー マ か ら 得 ら れ た 結 果 を 統 合 し 、 複 数 の 外 来 種 が 侵 入 し 複 数 の 保 全 対 象 種 が い る 環 境 に お い て 、 駆 除 対 象 と な る 外 来 種 の 組 み 合 わ せ と 、 そ の 駆 除 が 各 保 全 対 象 種 に 与 え る 影 響 を 予 測 し た 。 こ の 結 果 に 基 づ き 、 そ れ ぞ れ の 外 来 種 駆 除 時 に 必 要 な 保 全 手 法 を 提 案 し た 。 （ ２ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 に 配 慮 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 １ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 と 進 化 過 程 を 担 保 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 と 進 化 過 程 を 担 保 す る た め の 域 内 保 全 手 法 の 開 発 の た め 、 特 異 な 性 表 現 を も つ 絶 滅 危 惧 植 物 （ オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ ・ ム ニ ン ハ ナ ガ サ ノ キ ） を 対 象 に 、 野 外 に お け る 個 々 の 種 の 繁 殖 特 性 、 個 体 群 構 造 に つ い て の 調 査 を 行 っ た 。 こ れ ら の 種 は 異 型 花 柱 性 お よ び 雄 性 両 全 性 異 株 と い う 極 め て 特 異 な 性 表 現 を 持 ち 、 小 笠 原 諸 島 の 生 態 系 を 象 徴 す る 進 化 的 価 値 を 持 つ が 、 外 来 種 に よ る 送 粉 系 崩 壊 に よ る 影 響 を 強 く 受 け て い る 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 こ れ ら の 種 の マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト マ ー カ ー を 開 発 し 、 そ の 遺 伝 的 マ ー カ ー を 活 用 し て 遺 伝 構 造 ・ 花 粉 流 動 を 調 査 し た 。 ２ ） 外 来 樹 駆 除 地 に お け る 主 要 在 来 樹 種 の 機 能 特 性 と 繁 殖 状 況 の 解 明 外 来 樹 種 モ ク マ オ ウ の 駆 除 後 に 侵 入 し た 外 来 樹 種 ギ ン ネ ム が 在 来 木 本 種 の 実 生 の 定 着 に 及 ぼ す 影 響 を 評 価 す る た め に 、 モ ク マ オ ウ の 駆 除 跡 に 移 植 し た4種 の 在 来 木 本 種 （ タ コ ノ キ 、 シ ャ リ ン バ イ 、 ヒ メ ツ バ キ 、 モ モ タ マ ナ ） の 生 残 と 成 長 を ギ ン ネ ム 存 在 下 と 不 在 下 で 比 較 し た 。 ま た 、 モ ク マ オ ウ を 駆 除 し な い で 在 来 木 本 種 に よ る 更 新 が 可 能 か ど う か を 検 証 す る た め に 、 モ ク マ オ ウ が 優 占 す る 森 林 に 在 来 木 本 種 で あ る ヒ メ ツ バ キ の 実 生 を 移 植 し 、 そ の 生 残 と 成 長 を モ ニ タ リ ン グ し た 。 さ ら に 、 モ ク マ オ ウ 駆 除 後 の 在 来 木 本 種 の 更 新 の 可 能 性 を 検 証 す る た め に 、 主 要 木 本 種 で あ る オ ガ サ ワ ラ ビ ロ ウ 、 タ コ ノ キ 、 ウ ラ ジ ロ エ ノ キ の 結 実 状 況 を 把 握 し 、 結 実 の 有 無 と 個 体 サ イ ズ と の 関 係 を 明 ら か に し た 。 （ ３ ） 絶 滅 危 惧 昆 虫 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 １ ） オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ の 生 息 地 再 生 と 飼 育 個 体 の 野 生 復 帰 オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ は 、 父 島 の 戦 前 の 標 本 を も と に 記 載 さ れ て い た が 、 戦 後 は 確 認 さ れ て お ら ず 、1980年 代 に な っ て 兄 島 台 地 上 の 裸 地 で 再 発 見 さ れ た 。 そ の 後 、 新 産 地 も 見 つ か っ て い た が 、 2000 年 代 に 激 減 し た 。 主 な 減 少 要 因 は 、 外 来 樹 種 モ ク マ オ ウ 、 リ ュ ウ キ ュ ウ マ ツ の 落 葉 が 裸 地 を 被 覆 し 、 幼 虫 の 生 息 環 境 を 脅 か し た こ と と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 、 こ の 種 の 域 内 保 全 の た め 、 外 来 樹 駆 除 に よ る 環 境 再 生 を 行 い 、 そ の 後 の 個 体 群 調 査 を 実 施 し た 。 開 発 し た 環 境 再 生 の 手 法 の 評 価 と マ ニ ュ ア ル 化 を 行 っ た 。 ま た 、 域 外 系 統 保 存 個 体 群 を 用 い て 野 外 へ の 導 入 を 行 い 、 野 生 復 帰 に 向 け た 技 術 の 評 価 を 行 っ た 。 ２ ） ア ニ ジ マ イ ナ ゴ の 系 統 保 存 技 術 の 開 発 と 生 息 地 再 生 ア ニ ジ マ イ ナ ゴ は 、2011年 に 新 属 新 種 と し て 記 載 さ れ た が 、 兄 島 に 侵 入 し た グ リ ー ン ア ノ ー ル に よ る 影 響 が 心 配 さ れ て い る 。 本 種 の 分 布 や 生 活 史 に つ い て 断 片 的 な 知 見 し か な い た め 、 保 全 に 必 要 な 情 報 を 得 る た め の 調 査 を 行 っ た 。 こ の 情 報 を 元 に 飼 育 手 法 を 確 立 す る た め に 本 州 で の 飼 育 試 験 を 行 い 、 系 統 保 存 技 術 の マ ニ ュ ア ル 化 を 行 っ た 。 ３ ） 固 有 ト ン ボ 類 の 生 息 地 再 生 小 笠 原 に は5種 の 固 有 ト ン ボ 類 が 知 ら れ て い る が 、 父 島 ・ 母 島 で は そ の ほ と ん ど が 絶 滅 し て お り 、 主 要 因 は グ リ ー ン ア ノ ー ル の 捕 食 圧 と 考 え ら れ て い る 。2004年 か ら 生 息 地 確 保 の た め の 人 工 池 設 置 を 各 地 で 進 め 、 個 体 群 の 安 定 化 を 図 っ て き た が 、 本 研 究 で は 特 に 危 機 的 な 状 況 に あ る オ ガ サ ワ ラ ア オ イ ト ト ン ボ の 中 長 期 的 な 種 の 存 続 を 目 指 し 、 弟 島 、 兄 島 、 西 島 で の 池 の 増 設 を 行 い 、 保 全 効 果 の モ ニ タ リ ン グ を 行 っ た 。 本 種 の 保 全 的 導 入 を 目 標 に 、 導 入 元 で あ る 弟 島 と 導 入 予 定 地 で あ る 西 島 の 環 境 整 備 を 行 っ た 。 ま た 、 固 有 ト ン ボ 類 復 元 の た め の 環 境 整 備 手 法 お よ び 導 入 手 法 の マ ニ ュ ア ル 化 を 行 っ た 。

4⁻1402-iii （ ４ ） 絶 滅 危 惧 陸 産 貝 類 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 １ ） 保 全 的 導 入 に 向 け た カ タ マ イ マ イ 類 の 飼 育 技 術 の 確 立 と 候 補 地 選 定 陸 産 貝 類 は 小 笠 原 の 世 界 自 然 遺 産 の 価 値 の 中 心 を な す 分 類 群 だ が 、 ネ ズ ミ や プ ラ ナ リ ア の 補 食 に よ り 危 機 的 状 況 に あ る 。 カ タ マ イ マ イ は 小 笠 原 で の 進 化 を 示 す 代 表 的 陸 貝 で 人 工 飼 育 の 技 術 が 開 発 さ れ て き た 。 本 研 究 で は 野 外 で の 繁 殖 技 術 を 改 良 す る た め 、 交 配 を め ぐ る 選 好 性 を 調 べ る 目 的 で 、 室 内 に お い て 様 々 な 性 質 の 組 み 合 わ せ で 交 配 実 験 を 行 っ た 。 た だ し 、 カ タ マ イ マ イ は 希 少 種 で あ る た め に 行 う こ と の で き る 実 験 に 制 約 が あ る た め 、 カ タ マ イ マ イ に 最 も 近 縁 な 本 土 の 種 で あ るEuhadra属 と オ ナ ジ マ イ マ イ 属 の 種 を 用 い た 。 さ ら に 、 カ タ マ イ マ イ 類 が 野 外 で 栄 養 と し て 利 用 す る 餌 を 調 べ る 目 的 で 、 軟 体 部 の 炭 素 安 定 同 位 体 比 （δ13C） を 母 島 の カ タ マ イ マ イ 類 の 保 管 さ れ て い る 冷 凍 試 料 を 用 い て 解 析 し た 。 ま た 殻 に つ い て もδ13Cを 調 べ て 、 両 者 の 結 果 を 比 較 し た 。 ま た 、 母 島 南 崎 を モ デ ル 地 と し て 、 二 種 の カ タ マ イ マ イ 類 の 生 息 状 況 と 生 息 環 境 を 詳 細 に 調 査 し た 。 こ の デ ー タ か ら 、 屋 外 施 設 で の 繁 殖 に 必 要 な 環 境 要 因 、 設 置 条 件 な ど を 推 定 し た 。 父 島 周 辺 の 離 島 の 陸 貝 相 と 環 境 調 査 を 行 い 、 特 に カ タ マ イ マ イ を 中 心 に 飼 育 中 の 種 類 を 導 入 す る た め の 適 地 の 探 索 を 行 っ た 。 そ し て カ タ マ イ マ イ 類 に つ い て は 、 上 記 で 得 ら れ た デ ー タ を も と に 条 件 の 最 も あ う 島 を 候 補 地 と し て 提 案 し た 。 ２ ） 小 型 陸 貝 類 の 飼 育 技 術 の 開 発 小 型 種 の オ ガ サ ワ ラ ヤ マ キ サ ゴ や エ ン ザ ガ イ 類 、 キ セ ル ガ イ モ ド キ 類 の よ う に 、 通 常 の 餌 で は 飼 育 が 困 難 な 種 類 の 餌 を 特 定 す る た め 、 餌 分 析 を 行 っ た 。 母 島 で 得 ら れ た 菌 類 を 単 離 培 養 し 、 陸 貝 に 餌 と し て 与 え 、 最 も 成 績 の 良 い 餌 の ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 小 型 種 陸 貝 に 最 も 適 し た 給 餌 方 法 の 検 討 を 行 い 、 人 工 餌 に よ る 飼 育 技 術 の 開 発 を 行 っ た 。 ま た 、 種 の 違 い に よ る 餌 の 選 好 性 の 違 い を 調 べ た 。 ま た 、 樹 上 性 の 小 型 種 の 人 工 繁 殖 に お い て 、 特 に 幼 貝 の 死 亡 率 を 軽 減 さ せ る こ と を 目 指 し 、 飼 育 漕 の 高 さ や 内 部 基 質 の 違 い な ど に よ る 死 亡 率 や 成 長 率 の 違 い を 調 べ 、 最 適 条 件 を 探 索 し た 。 ３ ） 保 全 単 位 と 優 先 度 の 判 定 の 基 礎 情 報 保 全 の 優 先 度 、 保 全 単 位 の 決 定 が 重 要 で あ る た め 、 ヤ マ キ サ ゴ 類 ・ エ ン ザ ガ イ 類 ・ キ セ ル ガ イ モ ド キ 類 に つ い て 遺 伝 子 解 析 を 行 い 、 系 統 推 定 を 行 っ た 。 ま た 、 ヤ マ キ サ ゴ 類 に つ い て は 、 野 外 へ の 導 入 に 向 け て 、 形 態 的 に 識 別 で き る 集 団 や 、 遺 伝 的 に 分 離 さ れ た 集 団 間 で ニ ッ チ 利 用 に ど の よ う な 差 が あ る か を 調 べ た 。 保 全 単 位 と し て 現 在 の 分 類 に 従 う こ と が 妥 当 か ど う か 、 ま た そ れ に 基 づ い て 保 全 の 優 先 度 の 決 定 を 行 っ た 。 な お 、 絶 滅 種 が 再 発 見 さ れ る 可 能 性 が あ っ た た め 、 原 記 載 標 本 や 戦 前 の 標 本 を 用 い た 形 態 解 析 も 行 っ た 。 （ ５ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の 開 発 と 飼 育 技 術 確 立 の た め の 食 性 の 解 明 １ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の た め の 生 息 地 探 索 小 笠 原 の 海 鳥 は 外 来 ネ ズ ミ に よ る 捕 食 圧 を 強 く 受 け て お り 、 特 に 小 型 の オ ガ サ ワ ラ ヒ メ ミ ズ ナ ギ ド リ と セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ は 危 機 的 状 況 に あ る 。 し か し 、 そ の 分 布 や 生 態 に は 不 明 点 が 多 い 。 そ こ で こ れ ら の 種 の 生 息 地 を 明 ら か に す る た め 、 聟 島 列 島 、 父 島 列 島 、 母 島 列 島 に お い て 、 屋 外 録 音 装 置 を 用 い て 、 夕 方 か ら 翌 朝 に か け て15分 お き に １ 分 間 の 録 音 を 行 っ た 。 回 収 し た 録 音 デ ー タ を 解 析 し 、 音 紋 波 形 に よ る 分 析 を 行 っ た 。 ま た 、 音 声 分 析 に よ り オ ガ サ ワ ラ ヒ メ ミ ズ ナ ギ ド リ の 飛 来 ピ ー ク で あ る と 判 断 さ れ た 冬 期 に 東 島 で 直 接 観 察 を 目 的 と し た 夜 間 調 査 を 行 っ た 。 東 島 で は 音 声 記 録 頻 度 の 分 析 か ら オ ガ サ ワ ラ ヒ メ ミ ズ ナ ギ ド リ が 選 好 す る 生 息 環 境 を 推 定 し た 。 ま た 、 小 笠 原 で 繁 殖 す る セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 保 全 上 の 地 位 を 明 ら か に す る た め 、DNA分 析 に よ り 系 統 の 解 析 を 行 っ た 。 ２ ） 食 性 解 析 の た め の 糞DNA解 析 手 法 の 開 発 絶 滅 の 危 険 性 の 高 い 海 鳥 で は 人 工 飼 育 手 法 を 確 立 す る 必 要 が あ る が 、 小 笠 原 の 海 鳥 の 食 性 に は 不 明 点 が 多 い 。 海 鳥 の 食 性 の 重 要 な 構 成 要 素 で あ る 魚 類 お よ び 軟 体 類 を 糞 中 か ら 識 別 す る た め 、DNAバ ー コ ー デ ィ ン グ を 用 い た 糞 分 析 を 行 っ た 。 ま ず 、 手 法 確 立 の た め 、 小 笠 原 諸 島 に お い て 広 く 分 布 す る 普 通 種 で あ る と オ ナ ガ ミ ズ ナ ギ ド リ の 営 巣 地 に お け る 糞 サ ン プ ル に も と づ く 食 性 解 析 を 行 っ た 。 糞 サ ン プ ル は 産 卵 期 前 と 育 雛 期 中 に そ れ ぞ れ 採 取 し た 。 こ の 分 析 に よ り 方 法 論 を 確 立 し た 上 で 、 絶 滅 危 惧1B 類 で あ る セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ を 対 象 に 父 島 属 島 東 島 の 営 巣 地 周 辺 に お い て 産 卵 期 と 巣 立 ち 期 に そ れ ぞ れ 糞 サ ン プ ル を 採 取 し 、 同 様 の 方 法 で 食 性 解 析 を 行 っ た 。 ４ ． 結 果 及 び 考 察 （ １ ） 生 物 進 化 に 配 慮 し た ハ ビ タ ッ ト の 持 続 的 管 理 手 法 の 開 発 １ ） モ ク マ オ ウ 駆 除 後 に 植 栽 を 必 要 と す る 条 件 の 解 明 モ ク マ オ ウ が 駆 除 さ れ る と 、 光 条 件 ・ 地 表 の 物 理 的 条 件 ・ 水 分 条 件 が 劇 的 に 変 化 し 、 改 善 さ れ た 。

4⁻1402-iv ま た 、 鳥 類 相 に つ い て は 、 外 来 植 物 後 に 更 新 し た ウ ラ ジ ロ エ ノ キ 等 の 果 実 を 食 物 と す る 種 を 中 心 に 個 体 数 が 増 加 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 陸 産 貝 類 は 駆 除 後 に 在 来 植 生 の 更 新 が 見 ら れ た 場 所 で は 多 様 度 指 数 の 上 昇 が 見 ら れ た が 、 植 生 の 更 新 が 見 ら れ ず 乾 燥 化 が 進 む と 低 下 が 見 ら れ た 。 た だ し 、 落 枝 を 用 い た シ ェ ル タ ー を 作 る こ と で 集 団 の 維 持 が 可 能 だ っ た 。 モ ク マ オ ウ 駆 除 地 で の 在 来 植 物 の 更 新 は 、 南 斜 面 お よ び 緩 傾 斜 地 に 比 べ て 、 北 斜 面 お よ び 急 傾 斜 地 で 悪 か っ た 。 一 方 、 外 来 植 物 に つ い て は 、 特 に 傾 斜 や 方 位 と の 関 係 は 見 ら れ な か っ た 。 つ ま り 、 モ ク マ オ ウ 駆 除 後 に 速 や か に 在 来 樹 が 更 新 し 環 境 が 改 善 さ れ た プ ロ ッ ト も あ れ ば 、 在 来 樹 の 更 新 が 不 良 で モ ク マ オ ウ が 再 生 し た プ ロ ッ ト も あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 撮 影 時 期 の 異 な る 空 中 写 真 の 読 み 取 り に よ り 、 モ ク マ オ ウ の 侵 入 は 方 角 や 地 形 に 関 係 な く 全 方 向 的 に 進 行 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ れ は 、 調 査 プ ロ ッ ト に お け る モ ニ タ リ ン グ の 結 果 と 同 じ 傾 向 で あ っ た 。 ま た 、 空 中 写 真 を 立 体 視 に よ り 、 一 部 の 在 来 樹 の 樹 種 判 別 が で き た 。 こ れ ら よ り 、 空 中 写 真 を 用 い る こ と で 、 長 期 的 ・ 広 域 で の 外 来 種 の 侵 入 、 在 来 種 の 衰 退 を 把 握 で き る 可 能 性 が 明 ら か に な っ た 。 ２ ） 植 栽 候 補 樹 に お け る 遺 伝 構 造 解 析 植 栽 候 補 樹 種 が 小 笠 原 群 島 全 体 お よ び 各 列 島 内 で い く つ の 遺 伝 的 グ ル ー プ に 分 か れ る の か 、 ま た そ の 遺 伝 的 組 成 が ど の よ う に 分 布 し て い る の か が 明 ら か に な っ た 。 例 え ば 、 父 島 列 島 の キ ン シ ョ ク ダ モ で は 、 島 間 で 異 な る 遺 伝 的 グ ル ー プ を 維 持 し て い る だ け で な く 、 島 内 で も 距 離 に 応 じ た 遺 伝 的 組 成 の 違 い が み ら れ た 。 植 栽 候 補 樹 種 の 遺 伝 構 造 は 種 に よ っ て 異 な っ た た め 、 各 種 で そ れ ぞ れ の 結 果 に 基 づ い て 種 苗 配 布 区 分 を 設 定 し た 。8種 （ ア カ テ ツ 〔 コ バ ノ ア カ テ ツ を 含 む 〕 、 ア コ ウ ザ ン シ ョ ウ 、 キ ン シ ョ ク ダ モ 〔 ム ニ ン シ ロ ダ モ を 含 む 〕 、 シ マ イ ス ノ キ 、 シ マ モ チ 〔 ム ニ ン モ チ を 含 む 〕 、 シ ャ リ ン バ イ 、 ム ニ ン ノ キ 、 ヤ ロ ー ド ） に つ い て 、 「 小 笠 原 諸 島 に お け る 植 栽 木 の 種 苗 移 動 に 関 す る 遺 伝 的 ガ イ ド ラ イ ン2」 と し て 一 般 向 け の パ ン フ レ ッ ト を 作 成 し た 。 今 回 策 定 し た 遺 伝 的 ガ イ ド ラ イ ン を 用 い る こ と で 、 植 栽 が 必 要 と な っ た 地 域 で 植 栽 可 能 な 樹 種 を 選 定 し 、 種 子 を 採 取 す る 地 域 を 検 討 で き る よ う に な っ た 。 ３ ） サ ブ テ ー マ 間 の 統 合 こ れ ま で の 西 島 の モ ニ タ リ ン グ 結 果 お よ び 各 サ ブ テ ー マ で 得 ら れ た 結 果 に 基 づ き 、 ヤ ギ 、 ネ ズ ミ 、 モ ク マ オ ウ の3種 が 定 着 し て い る 状 況 で 、 1種 、 2種 、 3種 の 外 来 種 を 駆 除 し た 場 合 に 、 植 生 、 植 物 、 鳥 類 、 陸 産 貝 類 、 昆 虫 が 受 け る 影 響 を 予 測 し た 。 そ の 結 果 、 ネ ズ ミ の み を 駆 除 す る 場 合 に は 、 特 に 保 全 対 象 種 に 負 の 影 響 を 与 え る こ と は な い が 、 ヤ ギ の み 、 モ ク マ オ ウ の み 、 お よ び3種 の 内 の 2種 を 組 み 合 わ せ て 駆 除 す る 場 合 に は 、 い ず れ か の 保 全 対 象 種 に 負 の 影 響 が 生 じ る と 予 測 さ れ た 。 た と え ば 、 ヤ ギ の 駆 除 に よ り 外 来 樹 種 や ネ ズ ミ な ど が 増 加 す る こ と で 、 絶 滅 危 惧 種 の 生 息 地 の 環 境 改 変 や 捕 食 圧 の 上 昇 が 生 じ る 可 能 性 が あ る 。 こ の た め 、 一 部 の 外 来 種 の 駆 除 だ け で は 、 必 ず し も 対 象 と な る 絶 滅 危 惧 種 の 保 全 に つ な が ら な い と 考 え ら れ る 。 全 て の 絶 滅 危 惧 種 を 保 全 す る た め に は 、 全 種 の 外 来 種 の 駆 除 が 望 ま し い が 、 こ れ が 難 し い 場 合 に は 、 各 サ ブ テ ー マ で 提 案 す る 保 全 対 象 種 の 特 性 に 応 じ た 局 所 的 な 外 来 種 駆 除 や 域 外 保 全 を 組 み 合 わ せ る 必 要 が あ る 。 現 在 、 小 笠 原 諸 島 に お け る 外 来 種 駆 除 事 業 で は 外 来 種 を 含 む 種 間 関 係 図 に 基 づ い て 計 画 が 立 て ら れ て い る が 、 駆 除 対 象 外 来 種 の 組 み 合 わ せ に よ る 自 然 再 生 の 効 果 に つ い て は 検 討 が 不 十 分 で あ る 。 今 後 は こ れ を 検 討 す る こ と で 、 よ り 効 果 的 な 自 然 再 生 事 業 が 可 能 に な る と 考 え ら れ る 。 （ ２ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 に 配 慮 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 １ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 と 進 化 過 程 を 担 保 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ は 、 い ず れ の 集 団 で も 、 形 態 的 に 短 花 柱 花 を も つ 個 体 と 長 花 柱 花 を も つ 個 体 の 二 種 類 か ら な る こ と が 確 認 さ れ た 。 二 型 花 柱 性 の 植 物 は 一 般 に 自 家 ・ 同 型 花 間 に お け て 不 和 合 性 を 示 す が 、 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ も 基 本 的 に は 同 様 の 特 性 を も っ て い た 。 た だ し 、 一 部 の 集 団 （ 父 島 集 団 ） に お い て は 、S‐ S花 間 （ 短 花 柱 花 間 ） で 部 分 的 な 和 合 性 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 父 島 ・ 母 島 ・ 兄 島 の 各 野 外 集 団 に お い て 、 二 型 花 そ れ ぞ れ の 結 果 率 は い ず れ も10％ 程 度 と 低 か っ た 。 そ し て 、 S型 花 の 結 果 率 がL型 花 に 比 べ て 極 端 に 低 か っ た 。 こ れ は 、 L型 か ら S型 へ の 送 粉 が う ま く い っ て い な い こ と を 示 唆 し て い る 。 こ の 結 果 は 、 本 来 の 送 粉 者 と 考 え ら れ る 口 吻 の 長 い ス ズ メ ガ 類 で は な く 、 外 来 の セ イ ヨ ウ ミ ツ バ チ が 送 粉 し て い る こ と が 影 響 し て い る と 考 え ら れ た 。 父 島 ・ 兄 島 ・ 母 島 （ 石 門 ・ 乳 房 山 ） に お い て オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ の 個 体 群 構 造 を 調 べ た と こ ろ 、 母 島 石 門 で の み 幼 木 を 確 認 で き た 。 現 存 す る オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ の 集 団 の 中 で 、 母 島 石 門 集 団 が 唯 一 の 健 全 な 世 代 更 新 が 行 わ れ て い る 集 団 で あ る と 考 え ら れ た 。 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ と ム ニ ン ハ ナ ガ サ ノ キ に お い て 、 次 世 代 シ ー ケ ン サ ー を 用 い て マ イ ク ロ サ テ

4⁻1402-v ラ イ ト マ ー カ ー を 設 計 し た 。 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ で26遺 伝 子 座 、 ム ニ ン ハ ナ ガ サ ノ キ で 25遺 伝 子 座 、 多 型 の あ る マ ー カ ー が 開 発 で き た 。 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ は 、 父 島 ・ 母 島 間 で 有 意 な 遺 伝 的 分 化 が み ら れ た 。 ま た 、 兄 島 と 母 島 石 門 に お い て 花 粉 流 動 を 調 べ た と こ ろ 、 兄 島 集 団 で は ほ と ん ど の 場 合 、 花 粉 の 移 動 距 離 が50 m以 下 だ っ た の に 対 し 、 母 島 石 門 集 団 で は100 m以 上 離 れ た 個 体 間 で も 交 配 し て い る こ と が 推 定 さ れ た 。 ま た 、 二 型 花 柱 性 を 示 す 植 物 で は 、 異 型 花 間 で 送 粉 が 行 わ れ る シ ス テ ム が 維 持 さ れ て い る と 考 え ら れ て き た が 、 兄 島 集 団 で は 同 型 花 間 の 送 粉 が 一 部 で 示 唆 さ れ （S型 同 士 ： 16％ 、 L型 同 士 ： 8％ ） 、 母 島 石 門 集 団 で はL型 に 結 実 し た ほ と ん ど の 種 子 が 同 型 花 間 も し く は 自 殖 に よ り 形 成 さ れ た こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ の 保 全 の た め に は 、 唯 一 稚 樹 の 更 新 が あ る 健 全 な 母 島 石 門 地 域 に お い て 、 花 粉 流 動 の 促 進 と 結 実 率 の 向 上 に 努 め る 必 要 が あ る 。 具 体 的 に は 、 当 該 地 域 に お い て 送 粉 系 を 攪 乱 す る グ リ ー ン ア ノ ー ル や セ イ ヨ ウ ミ ツ バ チ の エ リ ア 根 絶 が 考 え ら れ る 。 ム ニ ン ハ ナ ガ サ ノ キ の 聟 島 ・ 父 島 ・ 母 島 列 島 に 分 布 す る 個 体 の 遺 伝 構 造 を 調 べ た と こ ろ 、 集 団 間 の 遺 伝 的 分 化 の 程 度FSTの 平 均 値 は0.17で あ り 、 父 島 列 島 と 母 島 列 島 の 集 団 間 で は 全 て の 組 み 合 わ せ に お い て 、 有 意 な 遺 伝 的 分 化 が み ら れ た 。 ま た 、 個 体 レ ベ ル の ク ラ ス タ ー 解 析 で は 、2つ の 遺 伝 的 ク ラ ス タ ー に 分 け ら れ 、 聟 島 列 島 と 弟 島 を 除 く 父 島 列 島 が1つ の ク ラ ス タ ー 、 母 島 が １ つ の ク ラ ス タ ー に 割 り 振 ら れ 、 弟 島 の 個 体 は2つ の ク ラ ス タ ー が 混 じ っ て い た 。 ム ニ ン ハ ナ ガ サ ノ キ の 種 内 の 遺 伝 的 多 様 性 や 遺 伝 構 造 を 維 持 し て 保 全 し て い く た め に は 、 各 集 団 を 保 全 ユ ニ ッ ト と し て 、 結 実 率 の 向 上 を 促 す よ う な 対 策 を と る こ と が 望 ま し い と 考 え ら れ る 。 ２ ） 外 来 樹 駆 除 地 に お け る 主 要 在 来 樹 種 の 機 能 特 性 と 繁 殖 状 況 の 解 明 父 島 洲 崎 の モ ク マ オ ウ 駆 除 跡 に 移 植 し た 在 来 樹 種 の 内 、 タ コ ノ キ 、 シ ャ リ ン バ イ 、 モ モ タ マ ナ は 移 植 か ら1年 経 過 し た 段 階 で 90 %以 上 の 個 体 が 生 残 し た が 、 ヒ メ ツ バ キ の 生 残 率 は 50%以 下 だ っ た 。 ヒ メ ツ バ キ の 死 亡 は2～ 3月 に 集 中 し て お り 、 ま た 実 験 区 の ほ と ん ど が 海 側 の 開 け た 場 所 で あ っ た こ と か ら 、 冬 季 に お け る 海 水 を 含 む 風 に 影 響 を 受 け た こ と に よ る と 考 え ら れ た 。 移 植 時 の 個 体 サ イ ズ と ギ ン ネ ム の 播 種 処 理 の 有 無 に よ る 生 残 個 体 数 の 違 い は 明 確 に は み ら れ な か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 モ ク マ オ ウ 駆 除 後 の ギ ン ネ ム の 侵 入 は 、 短 期 的 に は 移 植 個 体 の 生 残 に は 強 く 影 響 し な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 つ ま り 、 ギ ン ネ ム の 侵 入 が あ っ て も 在 来 樹 種 の 実 生 は 生 残 可 能 で あ る と 考 え ら れ る 。 一 方 で 、 実 生 の 成 長 は 、 ギ ン ネ ム の 侵 入 に よ っ て 抑 制 さ れ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 父 島 洲 崎 の モ ク マ オ ウ 優 占 林 に 移 植 し た ヒ メ ツ バ キ の 実 生 の う ち 、 移 植 か ら 約6年 後 、 75%以 上 の 個 体 が 生 残 し た 。 移 植 時 の 実 生 の サ イ ズ に よ る 生 残 個 体 数 に お け る 違 い は 見 ら れ な か っ た 。 実 生 の 成 長 速 度 は 、 移 植 時 の サ イ ズ に 関 わ ら ず 安 定 し て い た が 、 モ ク マ オ ウ 駆 除 跡 に 移 植 し た ヒ メ ツ バ キ の 成 長 速 度 よ り 低 か っ た 。 以 上 の 結 果 は 、 モ ク マ オ ウ が 優 占 す る 森 林 に お い て モ ク マ オ ウ の 駆 除 を し な く と も 在 来 木 本 種 の 実 生 の 定 着 が 可 能 で あ る こ と を 示 唆 す る 。 一 方 で 、 駆 除 を 実 施 し な い 場 合 、 堆 積 し て い る モ ク マ オ ウ の リ タ ー は 維 持 さ れ る た め 、 移 植 し た 個 体 は 成 長 し 、 種 子 生 産 を し た と し て も 、 そ の 種 子 が 発 芽 し 、 定 着 す る 可 能 性 は 低 い 。 つ ま り 、 在 来 木 本 種 の 更 新 に は 、 最 終 的 に モ ク マ オ ウ の 駆 除 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 西 島 の モ ク マ オ ウ の 駆 除 地 に お い て 確 認 さ れ た オ ガ サ ワ ラ ビ ロ ウ の 約70%で 、 タ コ ノ キ の 7%で 結 実 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 結 実 の 有 無 と 樹 高 の サ イ ズ ク ラ ス と の 間 に は 有 意 な 関 係 が 見 ら れ た 。 一 方 、 ウ ラ ジ ロ エ ノ キ の 約90%で 結 実 が 確 認 さ れ た 。 結 実 の 有 無 と 樹 高 の サ イ ズ ク ラ ス と の 間 に は 有 意 な 関 係 が 見 ら れ な か っ た 。 （ ３ ） 絶 滅 危 惧 昆 虫 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 １ ） オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ の 生 息 地 再 生 と 飼 育 個 体 の 野 生 復 帰 オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ の 生 息 環 境 の 再 生 の た め 、 兄 島 の 大 丸 山 か ら 乾 沢 源 頭 部 周 辺 の 過 去 の 産 地2 か 所 で 、 周 辺 尾 根 部 ま で 含 め た 外 来 樹 の 枯 殺 を 行 い 、 枯 殺 後 は 、 枯 死 木 と 枯 死 時 の 落 葉 の 除 去 も 実 施 し た 。 こ の 作 業 に よ っ て 、 周 辺 か ら の 新 た な 種 子 供 給 も 断 ち 、 作 業 実 施 後2年 目 で 稚 樹 更 新 も ほ と ん ど な く な っ た 。 ま た 、 周 囲 か ら の リ タ ー の 供 給 も な く な っ た た め 、 リ タ ー 除 去 の 効 果 も 顕 著 で 急 速 に 良 好 な 裸 地 環 境 が 再 生 し て い る 。 巣 穴 の カ ウ ン ト 調 査 に よ る 個 体 群 サ イ ズ の 推 定 で は 、2014年 に 総 個 体 数 約500頭 ま で 落 ち 込 ん だ 個 体 群 を 2016年 2月 に は 、 約 2200頭 に ま で 回 復 さ せ る こ と が で き た 。 こ れ ま で の 結 果 か ら 、 オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ の 生 息 地 再 生 に は 以 下 の こ と を 実 施 す る こ と が 効 果 的 で あ る と 考 え ら れ る 。a. 大 径 木 の 外 来 樹 種 は 薬 剤 注 入 に よ り 枯 殺 す る 。 b. 樹 高 4 m程 度 の 外 来 樹 種 は 枝 払 い に よ っ て 駆 除 す る 。 こ れ に よ り 生 息 地 で の 薬 剤 使 用 料 を 抑 制 で き る 。c. 生 息 地 周 辺 の 外 来 樹 種 は 、 駆 除 後 の 新 た な 種 子 供 給 源 と な っ て し ま う た め 、 外 来 樹 種 の エ リ ア 根 絶 を 実 施 す る 。 特 に 、 生 息 地 よ り 標 高 が 高 い 位 置 に 分 布 す る 外 来 樹 は 完 全 枯 殺 す る 。d. 外 来 樹 故 殺 後 は 堆 積 し た リ タ ー を 除 去 す る 。

4⁻1402-vi 2015年 に 飼 育 個 体 を 導 入 し た と こ ろ 、 10個 の 巣 穴 が 確 認 さ れ 、 秋 の 発 生 時 期 の 調 査 で 1頭 の 未 マ ー キ ン グ 個 体 が 確 認 さ れ 、 放 虫 個 体 由 来 の 新 規 個 体 で あ る 可 能 性 が 高 い と 考 え ら れ た 。2016年 秋 に も 約 40頭 の 放 虫 を 実 施 し た 。 ２ ） ア ニ ジ マ イ ナ ゴ の 系 統 保 存 技 術 の 開 発 と 生 息 地 再 生 兄 島 に お け る 分 布 調 査 に よ り 、 本 種 は 島 内 の 乾 性 林 に は 広 く 分 布 し 、 シ マ イ ス ノ キ 群 落 の 中 に 点 在 す る タ コ ノ キ を ね ぐ ら 的 に 使 用 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、 食 樹 に つ い て は 、 シ マ イ ス ノ キ の み を 摂 食 す る こ と が 分 か っ た 。 な お 、 本 土 に 自 生 す る シ マ イ ス ノ キ に 近 縁 の イ ス ノ キ を 与 え た と こ ろ 、 摂 食 ・ 成 長 が 見 ら れ た が 、 初 令 で 死 亡 し た 。 こ れ は 、 本 土 で の 飼 育 の 際 に 、 代 替 食 の 確 立 で 大 き な 課 題 と な る こ と が 分 か っ た 。 本 種 の 生 活 史 に つ い て は 、 成 虫 は 年 間 を 通 し て 確 認 さ れ る が 、 幼 虫 は5月 ～ 9月 に か け て 記 録 さ れ 、 6月 に ピ ー ク を 持 つ 一 山 型 の 発 生 と 推 定 さ れ た 。 外 来 樹 種 モ ク マ オ ウ 、 リ ュ ウ キ ュ ウ マ ツ は 、 ね ぐ ら と な る タ コ ノ キ の 葉 鞘 に 落 葉 を 堆 積 す る こ と で 、 本 種 の 生 息 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る 。 そ こ で 、 大 量 の 落 葉 に 被 覆 さ れ 衰 退 の 可 能 性 が 高 い2 ヶ 所 の 生 息 地 で タ コ ノ キ 周 辺 の 外 来 種 駆 除 を 実 施 し た 結 果 、 駆 除 後 も 生 息 が 継 続 確 認 で き た 。 本 研 究 で 開 発 し た ア ニ ジ マ イ ナ ゴ の 系 統 保 存 技 術 は 以 下 の 通 り で あ る 。a. 湿 度 の 保 持 、 観 察 の 容 易 さ の 観 点 か ら 、 飼 育 容 器 は 透 明 プ ラ ス テ ィ ッ ク 容 器 を 用 い る 。 た だ し 、 適 度 な 湿 度 を コ ン ト ロ ー ル す る た め に 、 乾 燥 剤 を 用 い る 。b. 容 器 内 に シ マ イ ス ノ キ と タ コ ノ キ を 入 れ る 。 c. 糞 の 掃 除 を 数 日 お き に 行 い 、 カ ビ の 発 生 を 抑 止 す る 。d. 樹 上 で の 交 尾 が 見 ら れ る 時 期 に な っ た ら 、 小 型 の 容 器 （ 10 cm×5 cm×深 さ 5 cm） に 水 と 砕 い た 赤 玉 土 を 詰 め る と 、 小 型 容 器 に 産 卵 す る 。 e. 産 卵 さ れ た 小 型 の 容 器 は 保 管 を 続 け る と 、5～ 6月 に 孵 化 す る 。 f. 幼 虫 の 飼 育 は 、 成 虫 と 同 様 の 方 法 で 問 題 な い 。 g. 気 温 が 10℃ を 下 回 る と 、 飼 育 個 体 の 活 性 が 低 下 す る こ と か ら 、 冬 期 は 加 温 が 必 要 で あ る 。 ま た 、 夏 期 の 高 温 に も 注 意 が 必 要 で あ る 。 以 上 の よ う な 管 理 を 行 う こ と で 、 人 工 飼 育 は 比 較 的 容 易 で あ り 、 系 統 保 存 技 術 は 確 立 で き た と 言 え る 。 ３ ） 固 有 ト ン ボ 類 の 生 息 地 再 生 ト ン ボ 池 の 保 全 効 果 の 調 査 に よ り 、 兄 島 で こ れ ま で 単 発 の 成 虫 記 録 し か な か っ た オ ガ サ ワ ラ ア オ イ ト ト ン ボ の 幼 虫 を 島 南 東 部 の 人 工 池 で 初 め て 確 認 で き た 。 確 認 例 は 少 な い が 、 部 分 的 に 定 着 地 が 創 出 さ れ た 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 リ ュ ウ キ ュ ウ マ ツ 、 モ ク マ オ ウ の 落 葉 が 入 る 人 工 池 で は 固 有 ト ン ボ が ほ と ん ど 発 生 し な い た め 、 人 口 池 周 辺 の 外 来 樹 木 の 駆 除 を 実 施 し た 。 兄 島 、 弟 島 の 南 部 の 試 験 実 施 地 域 で は こ の 改 善 に よ っ て 、 池 へ の 落 葉 が ほ ぼ 抑 止 で き 、 秋 季 の 調 査 に お い て 良 好 な 生 息 状 況 を 示 し た 。 こ れ ま で の 結 果 か ら 、 小 笠 原 固 有 ト ン ボ 類 の う ち 止 水 性 の3種 （ オ ガ サ ワ ラ ア オ イ ト ト ン ボ 、 オ ガ サ ワ ラ イ ト ト ン ボ 、 オ ガ サ ワ ラ ト ン ボ ） の 生 息 環 境 復 元 に は 以 下 の こ と が 求 め ら れ る 。a. 運 搬 時 の 負 担 を 考 慮 し 、100リ ッ ト ル 程 度 の 容 量 の プ ラ ス テ ィ ッ ク 容 器 の 設 置 が 望 ま し い 。 紫 外 線 に よ る 容 器 の 劣 化 を 避 け る た め 、 透 明 ・ 半 透 明 の 容 器 は 避 け 、 耐 久 性 の 高 い も の を 選 択 す る 。b. 降 水 量 が 例 年 並 み で あ る 場 合 に は 給 水 は 必 要 な く 、 設 置 後 の 自 然 降 雨 の み で 水 量 は 十 分 で あ る 。c. 在 来 林 中 の ス ポ ッ ト 上 に 上 空 が 開 け た 場 所 に 容 器 を 設 置 す る 。 林 内 以 外 の 開 放 放 地 で は 、 固 有 ト ン ボ 類 と 競 合 す る 広 域 分 布 種 （ ヒ メ ハ ネ ビ ロ ト ン ボ や ベ ニ ヒ メ ト ン ボ な ど ） が 先 に 定 着 す る た め 、 そ の よ う な 場 所 は 避 け る 。 ま た 、 モ ク マ オ ウ や リ ュ ウ キ ュ ウ マ ツ な ど の 外 来 林 で は 、 落 葉 が 容 器 内 に 大 量 に 堆 積 す る た め 、 避 け る 。 こ れ ま で に 長 期 間 に 渡 っ て 特 に 効 果 的 だ っ た 設 置 場 所 は 、 シ マ イ ス ノ キ や ヒ メ フ ト モ モ 、 コ ヤ ブ ニ ッ ケ イ な ど の 樹 陰 下 に 設 置 し た 容 器 で あ る 。d. 容 器 に は 、 枯 れ 枝 を 入 れ る こ と で 、 羽 化 時 期 の 足 場 や 幼 虫 の 生 息 場 所 と な り 、 さ ら に 餌 と な る ユ ス リ カ の 定 着 も 促 さ れ る 。e. 容 器 内 の 落 葉 除 去 の た め 、 年1回 の メ ン テ ナ ン ス が 必 要 で あ る 。 そ の 際 に 、 水 が 白 濁 し て い る 場 合 は 水 質 悪 化 が 危 惧 さ れ る た め 、 水 を 抜 く 必 要 が あ る 。 こ れ ら を 実 施 す る こ と で 安 定 し た 水 域 が 創 出 さ れ 、 固 有 ト ン ボ 類 の 定 着 支 援 と し て 十 分 に 機 能 す る と 考 え ら れ る 。 （ ４ ） 絶 滅 危 惧 陸 産 貝 類 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 １ ） 保 全 的 導 入 に 向 け た カ タ マ イ マ イ 類 の 飼 育 技 術 の 確 立 と 候 補 地 選 定 Euhadra属 と オ ナ ジ マ イ マ イ 属 を 利 用 し て 、 交 配 様 式 を 調 べ た と こ ろ 、 交 尾 後 の 精 子 の 保 有 率 や 受 精 率 、 生 存 率 の 分 析 か ら 、 交 尾 を 巡 る オ ス と し て の 役 割 と メ ス と し て の 役 割 に 対 立 が あ り 、 そ れ が 交 尾 行 動 の 重 要 な 要 因 と し て 働 い て い る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 こ の 性 質 の 副 産 物 と し て 、 互 い に 同 じ 体 の 大 き さ の 個 体 と の み 交 尾 す る 同 類 交 配 が 生 じ て お り 、 体 サ イ ズ が 同 じ 個 体 同 志 が 選 択 的 に 交 尾 す る 傾 向 が あ り 、 サ イ ズ の 違 う 個 体 と は 交 配 で き な い こ と が 分 か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 カ タ マ イ マ イ 類 の 交 配 様 式 は 複 雑 で あ り 、 特 に 人 為 的 な 操 作 を あ ま り 行 わ な い 屋 外 で の 人 工 繁 殖 で は 、 室 内 で 飼 育 し た 個 体 と の 定 期 的 な 入 れ 替 え な ど が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 母 島 の3種 の カ タ マ イ マ イ 類 の 安 定 同 位 体 の 分 析 結 果 で は 、 軟 体 部 の δ13C値 に 有 意 な 差 が 認 め ら れ

4⁻1402-vii た 。δ13C値 が 最 も 大 き い 樹 上 性 の 種 の 主 な 餌 は 菌 類 で あ り 、 一 方 、 そ れ よ り も δ13C値 が 低 い 潜 没 型 の 種 で は 菌 類 ま た は 動 物 性 の 餌 を 利 用 し て い る こ と が 推 定 さ れ た 。 ま た 、 軟 体 部 のδ13C値 で 認 め ら れ た 種 間 の 違 い の パ タ ー ン と 整 合 的 な パ タ ー ン が 殻 のδ13C値 か ら も 認 め ら れ た 。 さ ら に 、 殻 の 成 長 に 伴 うδ13C値 の 変 化 か ら 、 野 外 で は 幼 貝 と 成 貝 で 主 に 利 用 す る 餌 の 種 類 が 異 な る 可 能 性 も 示 唆 さ れ た 。 ま だ 環 境 条 件 と 生 息 状 況 が 健 全 な 、 母 島 の 二 種 の カ タ マ イ マ イ 類 を モ デ ル と し て 、 そ の 生 息 に 適 し た 環 境 条 件 の 推 定 と 、 生 活 様 式 を 調 査 し た と こ ろ 、2種 間 で の 休 眠 場 所 の 違 い や 、 1日 の 移 動 距 離 、 地 表 か ら の 深 さ 等 が 明 ら か に な っ た 。 こ の 結 果 は 、 安 定 炭 素 同 位 体 比 の 分 析 か ら 推 定 さ れ た 、 植 物 食 と 菌 類 ・ 動 物 食 と い う 、 二 種 の 餌 の 違 い と 整 合 的 で あ っ た 。 以 上 の 結 果 を 踏 ま え る と 、 カ タ マ イ マ イ の 屋 外 飼 育 施 設 は 少 な く と も10×10 mの 面 積 が 必 要 で あ り 、 飼 育 場 所 の 周 囲 を 囲 っ て 個 体 の 移 出 防 止 を 図 る こ と が 必 要 で あ る 。 ま た 、 カ タ マ イ マ イ の 野 外 飼 育 に は 、 十 分 な 低 温 の 微 環 境 が 必 要 で あ る と 判 断 さ れ る 。 帰 家 行 動 が な い た め 、 好 適 な 微 環 境 は 広 く 点 在 し て い る 必 要 が あ る 。 二 種 を 同 時 に 飼 育 す る 場 合 に は 、 複 雑 な リ タ ー 構 造 が 共 存 に 必 要 で あ り 、 様 々 な 種 ・ 大 き さ 等 の 異 な る 落 ち 葉 の 供 給 が 求 め ら れ る 。 ま た 、 菌 類 や 動 物 遺 体 の 供 給 が 必 要 で あ る 可 能 性 が 高 く 、 土 壌 動 物 を 同 時 に 野 外 飼 育 施 設 内 で 共 存 さ せ る こ と が 有 効 で あ る と 考 え ら れ る 。 現 在 、 保 全 的 導 入 が 検 討 さ れ て い る チ チ ジ マ カ タ マ イ マ イ と カ タ マ イ マ イ に つ い て 、 様 々 な 条 件 を 考 慮 す る と 、 西 島 が 最 適 で あ る と 判 断 さ れ る 。 た だ し 、 安 定 な 植 生 と 土 壌 動 物 相 の 健 全 な 維 持 が 不 可 欠 で あ る た め 、 モ ク マ オ ウ の 駆 除 な ど 植 生 管 理 と 一 体 と し て 保 全 的 導 入 は 進 め ら れ な け れ ば な ら な い 。 ２ ） 小 型 陸 貝 類 の 飼 育 技 術 の 開 発 小 笠 原 在 来 の カ ビ か ら 、 小 型 陸 貝 の 餌 と な る カ ビ を 単 離 、 培 養 に 成 功 し た 。 こ れ は ク ラ ド ス ポ リ ウ ム の1種 で あ り 、 培 養 は 容 易 で か つ 幅 広 い 種 に 供 与 が 可 能 で あ っ た 。 こ の カ ビ を 用 い て 、 ヤ マ キ サ ゴ 類 の 安 定 的 な 世 代 交 代 に 成 功 し 、 少 な く と も ヤ マ キ サ ゴ 類 は こ の エ サ を 用 い て 人 工 繁 殖 が 可 能 で あ る こ と が わ か っ た 。 ま た こ の 餌 は 、 樹 上 性 の カ タ マ イ マ イ 類 の 餌 と し て も 、 非 常 に 良 い 成 績 を 示 し た 。 同 じ 餌 に よ り 、 エ ン ザ ガ イ や オ ガ サ ワ ラ オ カ モ ノ ア ラ ガ イ の 維 持 に も 成 功 し た 。 樹 上 性 の オ ガ サ ワ ラ オ カ モ ノ ア ラ ガ イ の 飼 育 環 境 を 改 善 す る た め の 幾 つ か の 技 術 開 発 を 行 っ た 。 高 さ30 cm程 度 の 容 器 を 用 い 、 内 部 に 餌 と は 無 関 係 に タ コ ノ キ や オ オ タ ニ ワ タ リ の 苗 を 設 置 す る こ と に よ り 、 幼 貝 の 死 亡 率 を ほ ぼ0 %に す る こ と が で き た 。 ま た 飼 育 容 器 の 高 さ を よ り 大 き く す る こ と に よ っ て 、 成 貝 の 生 存 率 を 有 意 に 高 め る こ と が で き た 。 ３ ） 保 全 単 位 と 優 先 度 の 判 定 の 基 礎 情 報 小 型 種 の 保 全 の 優 先 度 、 保 全 単 位 を 決 定 す る た め 、 系 統 推 定 を 行 っ た と こ ろ 、 オ ガ サ ワ ラ ヤ マ キ サ ゴ 属 は 、 著 し く 遺 伝 的 に 多 様 な 系 統 か ら な り 、 多 数 の 同 胞 種 が 存 在 す る こ と が わ か っ た 。 島 間 ・ 同 じ 島 の 中 で も 地 域 間 で 遺 伝 的 分 化 や 種 分 化 が 進 ん で お り 、 保 全 の 単 位 は こ れ ら 各 地 域 の 集 団 と 見 な す べ き で あ る 。 特 に 、 兄 島 の ヤ マ キ サ ゴ 類 は 、 植 生 の 違 い に よ り 生 態 的 な 分 化 を 生 じ て い る 可 能 性 が あ る た め 、 系 統 保 存 す べ き 個 体 の 選 定 や 、 後 の 再 導 入 に 際 し て は 、 生 息 地 の 植 生 に も 注 意 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ た 。 オ ガ サ ワ ラ キ セ ル ガ イ モ ド キ 属 は 従 来4種 が 知 ら れ て お り 、 媒 島 に 分 布 す る ヒ ラ セ キ セ ル ガ イ モ ド キ を 除 き 、 父 島 列 島 、 母 島 列 島 い ず れ に も 共 通 な 種 が 分 布 す る と 考 え ら れ て き た 。 し か し 、 分 子 系 統 解 析 の 結 果 、 父 島 列 島 と 母 島 列 島 の 種 は 別 系 統 で あ り 、 従 来 同 種 と 考 え ら れ て い た 種 は 、 系 統 の 異 な る 種 に 生 じ た 形 態 の 収 斂 進 化 の 結 果 で あ る と 考 え ら れ た 。 キ セ ル モ ド キ 類 が 島 ご と に 遺 伝 的 分 化 を 示 し 、 同 胞 種 群 を 含 ん で い る こ と は 、 島 ご と に 保 全 単 位 を 想 定 す る 必 要 が あ る こ と を 示 し て い る 。 ま た こ の 結 果 か ら 鳥 山 の キ セ ル ガ イ モ ド キ の 保 全 価 値 が 高 い こ と が 示 さ れ た 。 エ ン ザ ガ イ 属 の 系 統 関 係 は 比 較 的 形 態 と よ く 対 応 し 、 上 記2属 の よ う な 形 態 と 分 子 系 統 の 不 一 致 は 認 め ら れ な か っ た 。 い ず れ の 種 の 集 団 も 単 系 統 で あ り 、 亜 種 と し て 記 載 さ れ た 集 団 も 、 比 較 的 近 縁 で あ っ た 。 ま た 、 父 島 鳥 山 に 残 存 す る ハ タ イ エ ン ザ ガ イ と 判 断 さ れ る 集 団 の 保 全 的 価 値 と 優 先 度 は 極 め て 高 い こ と が 明 ら か に な っ た 。 （ ５ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の 開 発 と 飼 育 技 術 確 立 の た め の 食 性 の 解 明 １ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の た め の 生 息 地 探 索 父 島 列 島 の 東 島 と 巽 島 、 聟 島 列 島 の 北 之 島 、 媒 島 に お い て 、 オ ガ サ ワ ラ ヒ メ ミ ズ ナ ギ ド リ の 音 声 を 確 認 で き た 。 飛 来 期 間 は 、11月 ～ 翌 年 5月 の 少 な く と も 半 年 間 に 渡 る こ と が 判 明 し た 。 特 に 、 東 島 で は 録 音 期 間 中 の 記 録 頻 度 が 高 く 、 ま た 、1夜 当 た り の 確 認 回 数 は 2月 か ら 増 加 し て 3月 末 が 最 高 値 と な っ た 。 冬 期 に 直 接 の 夜 間 探 索 を 実 施 し た と こ ろ 、10個 体 を 確 認 し 、 種 を 確 認 す る た め に 4個 体 を 捕 獲 し 、 形 態 測 定 お よ び 足 環 装 着 後 に 速 や か に 放 鳥 し た 。 捕 獲 個 体 は 、 タ コ ノ キ の 低 木 林 と オ ガ サ ワ ラ ス

4⁻1402-viii ス キ の 草 地 で 発 見 さ れ た 。 ま た 、 タ コ ノ キ の 低 木 林 に 隣 接 し た オ ガ サ ワ ラ ス ス キ の 草 地 の 地 面 に 掘 っ た 穴 の 中 で 、 抱 卵 中 の 巣 が1箇 所 発 見 さ れ た 。 音 声 の 録 音 頻 度 と 植 生 の 関 係 を 分 析 し た 結 果 か ら 、 本 種 は タ コ ノ キ の 低 木 林 と 草 地 が 混 在 す る 環 境 で 密 度 が 高 い こ と が 明 ら か に な っ た 。 一 方 、 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 音 声 は 、 既 知 の 営 巣 確 認 地 で あ る 父 島 列 島 の 東 島 の み で 記 録 さ れ た 。 ま た 、 母 島 列 島 の 鰹 鳥 島 、 中 鰹 鳥 島 、 小 鰹 鳥 島 で は 、 既 知 の オ ー ス ト ン ウ ミ ツ バ メ の 音 声 は 記 録 さ れ た が 、 オ ガ サ ワ ラ ヒ メ ミ ズ ナ ギ ド リ お よ び セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 音 声 は 確 認 さ れ な か っ た 。 3年 間 に 渡 る 録 音 装 置 に よ る 海 鳥 類 の 営 巣 環 境 の 探 索 調 査 よ り 、 小 笠 原 諸 島 に お け る 絶 滅 危 惧 の 小 型 海 鳥 類 の 生 存 環 境 が 明 ら か に な っ た 。 第 一 に 、 小 型 海 鳥 類 の 捕 食 者 と な る 外 来 ネ ズ ミ 類 が 不 在 な 生 息 環 境 を 整 え る こ と 、 第 二 に 、 営 巣 環 境 と し て 在 来 植 生 の 海 岸 植 生 （ タ コ ノ キ 群 落 、 オ ガ サ ワ ラ ス ス キ 群 落 ） の 維 持 が 必 要 で あ る で あ る 。 こ れ ら の 環 境 条 件 を 満 た す に は 、 現 在 、 着 手 さ れ て い る 外 来 ネ ズ ミ 類 の 駆 除 と 、 海 岸 林 か ら の ギ ン ネ ム や ト ク サ バ モ ク マ オ ウ 等 の 植 生 管 理 は 、 小 笠 原 諸 島 の 絶 滅 危 惧 の 海 鳥 の 域 内 保 全 対 策 と し て 重 要 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 本 調 査 で 開 発 さ れ た 録 音 装 置 を 用 い た 海 鳥 類 の 営 巣 環 境 特 性 の 把 握 手 法 は 、 ア ク セ ス の 困 難 な 無 人 島 等 に お い て 適 用 性 の 高 い も の と 言 え る 。 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ は こ れ ま で 広 域 に 分 布 す るAudubon’s Shearwaterの 亜 種 と さ れ て い た が 、 DNA 分 析 の 結 果 異 な る 系 統 に 属 す こ と が 明 ら か に な り 、 小 笠 原 の み で 繁 殖 す る 独 立 し た 集 団 と 考 え る 必 要 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 種 の 保 全 価 値 は こ れ ま で 考 え ら れ て い た よ り 高 い と 言 え る 。 ２ ） 食 性 解 析 の た め の 糞DNA解 析 手 法 の 開 発 オ ナ ガ ミ ズ ナ ギ ド リ の 分 析 で は31の 魚 類 の 分 類 群 が 検 出 さ れ 、 産 卵 期 は 中 深 層 性 遊 泳 魚 で あ る Scopelarchoides（ デ メ エ ソ 科 ） が 、 育 雛 期 中 は 同 じ く 中 深 層 性 遊 泳 魚 で あ る Benthosema（ ハ ダ カ イ ワ シ 科 ） が 最 も 大 き な 割 合 を 占 め て い た 。 ま た 、 軟 体 動 物 に お い て は 、 産 卵 期 はOmmastrephes（ ア カ イ カ 科 ア カ イ カ 属 ） が ほ と ん ど の 割 合 を 占 め 、Sthenoteuthis（ ア カ イ カ 科 ト ビ イ カ 属 ） が ほ と ん ど の 割 合 を 占 め て い た 。 食 物 の 構 成 が 時 期 に よ っ て 異 な る こ と が 明 ら か に な っ た 。 父 島 列 島 東 島 の セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 糞 か ら は 、 産 卵 期 中 と 巣 立 ち 期 で 検 出 さ れ た 魚 類 は15分 類 群 で あ っ た 。 ト ビ ウ オ 科 が 両 時 期 共 に 高 い 割 合 で 検 出 さ れ た 。 オ ナ ガ ミ ズ ナ ギ ド リ と 比 較 す る と 、 中 深 層 性 遊 泳 魚 は ほ と ん ど 検 出 さ れ ず 、 同 じ ミ ズ ナ ギ ド リ 科 で も 利 用 魚 種 が 大 幅 に 異 な り 、 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ に お い て は 表 層 遊 泳 種 が 重 要 な 食 物 資 源 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ に お い て は 、 軟 体 動 物 は 主 な 食 物 資 源 で は な い と 推 測 さ れ た 。 絶 滅 危 惧 種 の 飼 育 技 術 を 確 立 す る 際 に 、 小 笠 原 諸 島 に 生 息 す る セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 場 合 で は 、 そ の 最 多 に 検 出 し た ト ビ ウ オ 類 が 主 要 な 餌 料 と し て 挙 げ ら れ る 。 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 試 験 餌 料 の 候 補 と し て は 、 ト ビ ウ オ 類 で 示 さ れ る 高 タ ン パ ク で 低 脂 質 な 栄 養 特 性 の 魚 種 が 適 し て い る と 考 え ら れ た 。 ５ ． 本 研 究 に よ り 得 ら れ た 主 な 成 果 （ １ ） 科 学 的 意 義 １ ） 生 物 進 化 に 配 慮 し た ハ ビ タ ッ ト の 持 続 的 管 理 手 法 の 開 発 外 来 植 物 駆 除 後 の 生 態 系 変 化 に は 地 形 要 因 が 関 与 し て い る 可 能 性 が 明 ら か に な り 、 植 栽 範 囲 を 最 小 限 に 留 め る た め の 科 学 的 根 拠 が 得 ら れ た 。 ま た 、 植 栽 候 補 種 に な っ て い る 小 笠 原 の 在 来 樹 種8種 の 遺 伝 的 背 景 が 明 ら か に な り 、 島 嶼 に お け る 植 物 の 進 化 に お け る 科 学 的 理 解 に 寄 与 し た 。 複 数 の 外 来 種 が 存 在 す る 生 態 系 に お け る 効 果 の 予 測 は 保 全 生 態 学 上 重 要 な 知 見 で あ る 。 ２ ） 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 成 功 に 配 慮 し た 域 内 保 全 手 法 の 開 発 二 型 花 柱 性 を 示 す オ ガ サ ワ ラ ボ チ ョ ウ ジ の 個 体 群 構 造 や 繁 殖 生 態 が 明 ら か に な り 、 海 洋 島 に お け る 特 殊 な 性 表 現 の 進 化 に 関 す る 新 た な 知 見 が 得 ら れ た 。 外 来 樹 駆 除 後 の 植 生 遷 移 プ ロ セ ス や 外 来 樹 種 と 在 来 樹 種 の 競 争 関 係 が 明 ら か に な り 、 今 後 の 外 来 樹 駆 除 手 法 に 関 し て 重 要 な 科 学 的 知 見 を 与 え た 。 ま た 、 外 来 樹 駆 除 後 の 在 来 木 本 種 の 更 新 の 可 否 を 予 測 す る 科 学 的 根 拠 が 得 ら れ た ３ ） 絶 滅 危 惧 昆 虫 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 国 内 で は こ れ ま で ほ と ん ど 実 践 事 例 の な い 昆 虫 類 の 野 外 へ の 導 入 に 向 け て 、 域 外 で の 人 工 飼 育 技 術 の 確 立 と 域 内 で の 再 導 入 を 実 際 に 進 行 さ せ た 。 今 回 の 実 践 手 法 は 、 他 地 域 の 他 の 種 に お い て も 応 用 で き る と 考 え ら れ 、 保 全 生 態 学 上 の 価 値 が 高 い 。 ４ ） 絶 滅 危 惧 陸 産 貝 類 の 域 内 ・ 域 外 保 全 お よ び 再 導 入 手 法 の 開 発 野 外 で の 生 態 情 報 や 餌 情 報 、 系 統 推 定 に よ り 、 小 笠 原 の 陸 産 貝 類 に 関 す る 知 見 が 補 強 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 人 工 飼 育 技 術 の 向 上 し 、 保 全 単 位 や 保 全 優 先 順 位 の 設 定 が 可 能 に な っ た 。 ５ ） 絶 滅 危 惧 海 鳥 の 域 内 保 全 手 法 の 開 発 と 飼 育 技 術 確 立 の た め の 食 性 の 解 明 音 声 録 音 機 を 使 用 し た 探 索 手 法 に よ り 、 絶 滅 危 惧 の 小 型 海 鳥 種 の 営 巣 地 を 明 ら か に す る こ と が で き

4⁻1402-ix た 。 糞 サ ン プ ル のDNAメ タ バ ー コ ー デ ィ ン グ に よ り 、 絶 滅 危 惧 種 セ グ ロ ミ ズ ナ ギ ド リ の 食 性 が 明 ら か に な っ た 。 こ れ ら の 方 法 は 個 体 数 の 少 な い 海 鳥 か ら 生 態 情 報 を 得 る 手 法 と し て 他 種 に も 適 用 可 能 で あ り 、 今 後 の 生 態 研 究 の 発 展 に 資 す る 。 （ ２ ） 環 境 政 策 へ の 貢 献 ＜ 行 政 が 既 に 活 用 し た 成 果 ＞ 環 境 省 に よ る 世 界 自 然 遺 産 科 学 委 員 会 や 、 そ の 下 部 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ 、 林 野 庁 に よ る 小 笠 原 諸 島 固 有 森 林 生 態 系 修 復 事 業 検 討 委 員 会 等 に お い て 、 本 研 究 の 各 成 果 （ モ ク マ オ ウ の 効 果 的 な 管 理 手 法 、 植 物 の 遺 伝 構 造 か ら 考 え ら れ る 植 栽 候 補 樹 種 、 ネ ズ ミ に よ る 影 響 と そ の 緩 和 、 訪 花 昆 虫 の 減 少 に よ る 絶 滅 危 惧 植 物 の 繁 殖 低 下 、 希 少 昆 虫 の 保 全 の た め の 生 活 史 情 報 、 希 少 海 鳥 類 の 生 息 分 布 情 報 等 ） に 関 す る 提 言 を 行 い 、 生 態 系 管 理 事 業 へ の 成 果 還 元 を 行 っ た 。 ま た 、 本 研 究 で 開 発 さ れ た 陸 産 貝 類 や 昆 虫 の 人 工 飼 育 技 術 等 は 環 境 省 事 業 へ 技 術 移 転 さ れ た 。 本 研 究 の 絶 滅 危 惧 昆 虫 の 再 導 入 の 成 果 に 基 づ い て 、 静 岡 県 浜 松 市 の カ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ 生 息 地 の 保 全 対 策 、 南 西 諸 島 と 本 州 に お け る 絶 滅 危 惧 種 の ゲ ン ゴ ロ ウ 類 で の 域 内 環 境 再 生 に お い て 、 域 外 の 系 統 保 存 技 術 開 発 や 域 内 で の 環 境 再 生 を 含 む 再 導 入 計 画 が 策 定 、 実 施 さ れ た 。 ＜ 行 政 が 活 用 す る こ と が 見 込 ま れ る 成 果 ＞ 植 栽 候 補 樹 の 遺 伝 解 析 の 結 果 を ま と め た パ ン フ レ ッ ト 「 小 笠 原 諸 島 に お け る 植 栽 木 の 種 苗 移 動 に 関 す る 遺 伝 的 ガ イ ド ラ イ ン2」 が 、 今 後 の 生 態 系 修 復 事 業 に お い て 活 用 さ れ 、 樹 木 の 進 化 性 を 妨 げ る こ と の な い 植 栽 が 進 め ら れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 モ ク マ オ ウ の 駆 除 と 在 来 種 の 植 栽 に よ る 生 態 系 修 復 事 業 に お い て 、 在 来 樹 の 植 栽 を 先 行 し て 行 い 、 そ の 後 モ ク マ オ ウ を 駆 除 す る と い う 新 た な 手 法 が 実 践 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 本 研 究 で 提 案 さ れ た 手 続 き や 技 術 に 則 っ た 陸 産 貝 類 お よ び 昆 虫 の 野 外 へ の 導 入 の 実 施 が 見 込 ま れ る 。 さ ら に 、 本 研 究 で 開 発 さ れ た 各 種 の 人 工 飼 育 技 術 や 域 内 へ の 再 導 入 の 手 法 、 非 侵 襲 的 な 食 性 解 析 等 が 、 他 地 域 ・ 他 種 で 活 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 ６ ． 研 究 成 果 の 主 な 発 表 状 況 （ １ ） 主 な 誌 上 発 表 ＜ 査 読 付 き 論 文 ＞

1) K. WATANABE and T. SUGAWARA: AoB Plants, 7, plv087 (2015) Is heterostyly rare on oceanic islands?

2) K. HATA, K. KAWAKAMI and N. KACHI: Pac. Sci., 69, 4 (vol, issue), 445-460 (2015)

Higher soil water availability after removal of a dominant, non-native tree (Casuarina equisetifolia Forst.) from a subtropical forest

3) K. KIMURA, T. HIRANO and S. CHIBA: Acta Ethol., 18, 3 (vol, issue), 265-268 (2015)

Assortative mating with respect to size in the simultaneously hermaphroditic land snail Bradybaena

pellucida

4) K. KIMURA and S. CHIBA: Proc. R. Soc. London, Ser. B, 282, 1804 (vol, issue), 20143063 (2015) The direct cost of traumatic secretion transfer in hermaphroditic land snails: individuals stabbed with a love dart decrease lifetime fecundity

5) K. HATA, K. KAWAKAMI, and N. KACHI: Sci. Total Environ., 545-546, 372-380 (2016)

Increases in soil water content after the mortality of non-native trees in oceanic island forest ecosystems are due to reduced water loss during dry periods

6) K. SUGAI, K. WATANABE, H. KATO and T. SUGAWARA: Appl. Plant Sci., 4, 5 (vol, issue), 1500133 (2016)

Development of SSR markers for Psychotria homalosperma (Rubiaceae) and cross-amplification in four other species

7) S. UCHIDA, H. MORI, T. KOJIMA, K. HAYAMA, Y. SAKAIRI and S. CHIBA: Conserv. Biol., 30, 6 (vol, issue), 1330-1337 (2016)

Effects of an invasive ant on land snails in the Ogasawara Islands 8) K. SUGAI and S. SETAUKO: BMC Res. Notes, 9, 332 (2016)

Novel microsatellite markers for Distylium lepidotum (Hamamelidaceae) endemic to the Ogasawara Islands

4⁻1402-x Evolution and extinction of land snails on oceanic islands

10) K. SUGAI, H. KATO and T. SUGAWARA: J. For. Res., 21, 6 (vol, issue), 314-318 (2016)

Development and evaluation of microsatellite loci for Gynochthodes boninensis (Rubiaceae), a woody climbing plant endemic to the Bonin (Ogasawara) Islands, Japan

11) 苅 部 治 紀 ： Tombo、 57, 73-74（ 2016）

小 笠 原 諸 島 兄 島 に お け る オ ガ サ ワ ラ ア オ イ ト ト ン ボ の 幼 虫 初 確 認

12) T. GALLAHER, M. W. CALLMANDER, S. BUERKI, S. SETSUKO and S. C. KEELEY: J. Biogeogr., DOI: 10.1111/jbi.12933 (2016)

Navigating the ‘broad freeway’: ocean currents and inland isolation drive diversification in the

Pandanus tectorius complex (Pandanaceae)

13) S. SETSUKO, M. OHTANI, K. SUGAI, T. NAGAMITSU, H. KATO and H. YOSHIMARU: Plant Species Biol., 32, 1 (vol, issue), 13-24 (2017)

Genetic variation of pantropical Terminalia catappa plants with sea-drifted seeds in the Bonin Islands: Suggestions for transplantation guidelines

14) K. SUGAI and S. SETSUKO: Plant Species Biol., 32, 1 (vol, issue), 87-91 (2017)

Isolation and characterization of Ligustrum micranthum (Oleaceae) microsatellite loci using paired-end Illumina reads

15) K. HATA, and N. KACHI: J. For. Res., 22, 2 (vol, issue), 135-140 (2017)

Establishment of early-stage planted seedlings of a native woody species under a closed canopy of invasive Casuarina equisetifolia in the subtropical oceanic Ogasawara Islands

（ ２ ） 主 な 口 頭 発 表 （ 学 会 等 ） 1) 鈴 木 節 子 ， 須 貝 杏 子 ， 加 藤 英 寿 ， 山 本 良 介 ， 井 鷺 裕 司 ， 川 上 和 人 ： 日 本 生 態 学 会 第 64 回 全 国 大 会 （2017）「 小 笠 原 諸 島 に お け る 絶 滅 危 惧 種 の 生 息 に 重 要 な 樹 木 種 の 種 苗 移 動 に 関 す る 遺 伝 的 ガ イ ド ラ イ ン の 策 定 」 2) 畑 憲 治 ，平 舘 俊 太 郎 ，可 知 直 毅：日 本 生 態 学 会 64 回 大 会（ 2017）「 土 壌 流 出 に 伴 い 化 学 特 性 が 変 化 し た 土 壌 は 、草 本 植 物 の 初 期 成 長 を 種 特 異 的 に 制 限 す る：野 生 化 ヤ ギ の 撹 乱 を 受 け た 小 笠 原 諸 島 の 事 例 」 3) 小 村 健 人 ，安 藤 温 子 ，堀 越 和 夫 ，鈴 木 創 ，井 鷺 裕 司：日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会（ 2017）「 小 笠 原 の 海 鳥 は 何 を 食 べ て い る ？ － 糞 の DNA バ ー コ ー デ ィ ン グ で 探 る そ の 素 顔 － 」 4) 苅 部 治 紀 ，森 英 章：日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会（ 2017）「 絶 滅 危 惧 種 オ ガ サ ワ ラ ハ ン ミ ョ ウ 生 息 地 に お け る 外 来 樹 と そ の リ タ ー 除 去 に よ る 環 境 再 生 の 効 果 と 再 導 入 試 験 の 成 果 」 5) 川 上 和 人 ： 日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会 （ 2017）「 風 が 吹 い て も 桶 屋 が 儲 か る と は 限 ら な い 」 6) 可 知 直 毅 ： 日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会 （ 2017）「 ノ ヤ ギ 駆 除 の 誤 算 ： 駆 除 後 の 外 来 植 物 の 拡 散 」 7) 千 葉 聡 ： 日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会 （ 2017）「 ネ ズ ミ 駆 除 事 業 は 陸 産 貝 類 を 救 え た か ？ 」 8) 苅 部 治 紀 ： 日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会 （ 2017）「 グ リ ー ン ア ノ ー ル は 人 知 れ ず 海 を 越 え る 」 9) 堀 越 和 夫 ： 日 本 生 態 学 会 第 63 回 大 会 （ 2017）「 想 定 外 は 想 定 外 か ？ 」 ７ ． 研 究 者 略 歴 課 題 代 表 者 ： 川 上 和 人 東 京 大 学 農 学 部 卒 業 、 博 士 （ 農 学 ） 、 現 在 、 森 林 総 合 研 究 所 主 任 研 究 員 研 究 分 担 者 1) 可 知 直 毅 東 京 大 学 理 学 部 卒 業 、 博 士 （ 理 学 ） 、 現 在 、 首 都 大 学 東 京 理 工 学 研 究 科 教 授 2) 苅 部 治 紀 東 京 農 業 大 学 農 学 部 卒 業 、 農 学 修 士 、 現 在 、 神 奈 川 県 立 生 命 の 星 ・ 地 球 博 物 館 主 任 学 芸 員 3) 千 葉 聡 東 京 大 学 理 学 部 卒 業 、 博 士 （ 理 学 ） 、 現 在 、 東 北 大 学 東 北 ア ジ ア 研 究 セ ン タ ー 教 授 4) 堀 越 和 夫 University of Florida 動 物 学 部 卒 業 、 Ph.D. 、 現 在 、 特 定 非 営 利 活 動 法 人 小 笠 原 自 然 文 化 研 究 所 理 事 長