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SR 弁と MH 弁の流量統一時における 溶血量の比較試験

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Academic year: 2022

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(1)第4章 東洋紡製人工心臓溶血試験. 4.1. 本章の目的. 4.2. SR 弁と MH 弁の流量統一時における 溶血量の比較試験. 4.3. 高低収縮時間比で流量を統一したときの 溶血量の比較試験. 4.4. 試験結果. 4.5. 考察. 4.6. 本章のまとめ. - 58 -.

(2) 4.1 本章の目的 本章では,第 3 章で得られた水力学的試験の知見より適当な条件を設定し,溶血量の低 減方法に関する検討を in vitro 環境下で行うことを目的とする.評価項目は,a)SR 弁と MH 弁の流量を統一したときの溶血量の比較,b)MH 弁付き VAD において高・低収縮時間比で 流量を同一にしたときの溶血量の比較,の 2 項目である.第3章の水撃値の結果より,と もに最大拍出が可能な条件で駆動すれば,SR 弁の方が溶血が少ないことが想定される.そ こで,MH 弁を使用しても拍出性能および溶血の観点から SR 弁使用時と同等の結果が得 られるか a)の試験で検証する.また,同様の拍出性能が得られるとき,低収縮時間比で駆 動することが望ましいことを b)の試験で検証する.. 4.2 SR 弁と MH 弁の流量統一時における溶血量の比較試験 4.2.1 試験対象 ・従来使用弁(SR 弁)*を取り付けた東洋紡 VAD *. 臨床適用後に東洋紡社が回収したものを用いる.. ・新規採用弁(MH 弁)を取り付けた東洋紡 VAD 4.2.2 使用機器・実験器具 1) 一巡閉鎖拍動回路(Fig.1 参照) 2) 人工心臓駆動装置:VCT-50(TOYOBO) 3) ポリグラフ( (株)日本光電) (1) カラーメモリスコープ,型番:VM-185G (2) 直流アンプ,型番:AD-641G (3) 血圧測定用アンプ,型番:AP-641G (4) サーマルアレイレコーダ,型番:RTA-1200 (5) バッファアンプ,型番:AD-100F 4) インバータ・ヘマトクリット遠心分離機(久保田商事(株),型番:3200) 5) 分光光度計((株)TAITEC,型番:SP20 ジェネシス) 6) 遠心分離機((株)日立工機,型番:himac CF 702) 7) 電磁流量計((株)日本光電,型番 MFV-2100) 8) 流量計プローブ((株)日本光電,型番:FF-180T) 9) 恒温槽(アクリル). - 59 -.

(3) 4.2.3 試験方法 1) 拍動流試験前 (1) 検量線の作成 シアンメトヘモグロビン標準液 15[g/dl](和光純薬工業(株)) を精製水により,0,5.0,10.0, 15.0,30.0[g/dl]に希釈し,吸光度とヘモグロビン濃度の関係をグラフに示し,最小二乗法に よる近似曲線を描く.近似曲線の式を明記し,また,データの信頼性を確保するため精度 の目安として R2≧0.99 とする.. Table 4.1 Allocation sheet for standard curve. Table 4.1 において, ① 発色原液を精製水により 10 倍に希釈する.希釈はメスシリンダー内で行い,全容積が 70[ml](発色原液 7[ml],精製水 63[ml])程度になるようにする. ② シアンメトヘモグロビン標準液と精製水を配合することにより試薬濃度を調整する(黄 色網掛け) . ③ 調整した試薬を所定量採取し,精製水により 10 倍に希釈した発色原液を 5.0[ml]加える ことにより吸光度を測定可能なものとする(水色網掛け). ④ 分光光度計セルの容量 1.5[ml]分を採取し,分光光度計(Fig.4.1)により 540[nm]の吸光 度を測定する(ピンク網掛け) .また,測定は 3 回ずつ行う.なお,540[nm]で測定する 理由は後述する. ⑤ 対応する試薬濃度と吸光度の関係をグラフにプロットし,関係式および R2 を明記する. なお,検量線は毎回実験前に計測を行うため同一ではないが,本研究で実際に計測した 1 例(Fig.4.2)を示す.. Fig.4.1 Spectral photometer. - 60 -.

(4) 35.0. Hemoglobin concentration g/dL. 30.0. y = 42.291x R2 = 0.9992. 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 0.000. 0.100. 0.200. 0.300. 0.400. 0.500. 0.600. 0.700. 0.800. Absorbance ABS. Fig.4.2 Standard curve. (2) 使用血液 作動流体に用いる血液は豚血とした.採取した血液には,抗凝固剤であるクエン酸ナト リウムの 3%水溶液を全容積の 10%加える. (3) 血液調整 採取直後の血液を,ヘパリン処理済ヘマトクリット毛細管(㈱アズワン)の長さの 2/3 程 度まで採取し,遠心分離機(12,000rpm/5min,Fig.4.3)にかける.血液中の細胞成分(赤血球, 白血球,血漿板)において赤血球が占める容積の割合であるヘマトクリット値を測定し (Fig.4.4),ヘマトクリット値が 30±2%となるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて調 整する.加える PBS の量は以下の式(1)により算出する.また細菌の繁殖を抑制することを 目的として,調整後の血液 2L に対して,抗生物質であるゲンタシンを 1ml 加える.また, ACD-A(Acid Citrated Dextrose Adenine)内のブドウ糖を考慮して,グルコースを血液 2.0L に 対して 6.6g 加える.式(1)に濃度調整の式を示す.. V  Ht 0  V ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.1) 0 .3 N :必要なリン酸緩衝生理食塩水(PBS) (L), Ht 0 :初期ヘマトクリット値 N. V :調整する血液量 (L). - 61 -.

(5) Fig.4.3 Centrifugal machine for measurement of hematocrit level. Fig.4.4 Measurement of hematocrit level 2) 拍動流試験時 (1) 回路条件設定 調整した血液を閉鎖回路に充填する前に,リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を回路に 10 分程度 満たしておく.これは回路内の不純物を除去することと,MPC が親水性のポリマーである ことによる. その後血液を充填し,Table 4.2, 4.3 に示した駆動条件でそれぞれの駆動装置を駆動し, Table 4.4 に示した回路条件に試験回路を調整する. 使用する一巡閉鎖回路は Fig.4.5 に示す. (2) サンプリング サンプリングは捨て血として 1ml 採血し,その後サンプリング用の血液として 2.5ml 採血 する.採血は実験開始直後(5 分経過時)と,その後 1 時間毎に計 6 時間分行う.サンプリン グした血液は遠心分離機にかけ(3000rpm/15min/4℃,Fig.4.6),血漿成分 2.5ml を採取する.. - 62 -.

(6) (3) 測定 採取した血漿成分は以下に示したシアンメトヘモグロビン法により血漿遊離ヘモグロビ ン濃度を求める.また採血後,回路条件を再調節し,測定する.測定項目に関しては以下 の通りである. 《血液関係》 ・ヘマトクリット値(実験前およびサンプリングするごと) ・遊離血漿ヘモグロビン濃度 g/dL(開始 5 分後およびサンプリングするごと) 《ポンプ・実験系関係》 ・ポンプ流出量 ・流入圧(左心房圧) ・流出圧(大動脈圧) ・水温(恒温槽) (4) シアンメトヘモグロビン法 ① 測定原理 血液に発色原液を加えるとスルフヘモグロビン以外のヘモグロビンはフェリシアン化カ リウムにより酸化されメトヘモグロビンとなり,さらにシアン化カリウムにより赤褐色の シアンメトヘモグロビンとなる.この吸光度を測定することにより血漿遊離ヘモグロビン 濃度を求めることができる. ② サンプリング サンプリングを行う際には,回路の清潔状態を保持するためにエタノールを湿らせたキ ムタオル等でキャップをよく拭く.サンプリングは捨て血として 1[ml]採血し,その後サン プリング用の血液として 7[ml]程度採血する.採血後は回路を密閉する方向で三方活栓を閉 じ,三方活栓内部を PBS で洗う.採血により回路内容積が減少し,陰圧がかかるため,採 取した血液と同量の空気をコンプライアンス要素(左心房側)の SV ポンプの空気室に注入 し,回路内の圧力・流量を安定させる.採血は実験開始 5 分経過時と,その後 1 時間毎に 計 6 時間分行う.サンプリングした血液は遠心分離機(3,000rpm/15min/4℃)にかけ,血漿成 分 2.5[ml]を採取する. ③ 測定方法 発色原液 7.8[mol/L]を精製水により 10 倍に希釈し,採取した血漿成分 2.5[ml]に対して濃 度調整後の発色原液を 2.5[ml],すなわち容積比が 1:1 となるようにする.よく攪拌した後 5 分後に分光光度計のキャリブレーションを発色原液により調整し(発色原液のみ,すなわ ちヘモグロビン濃度 0 のときに吸光度が 0 となるようにする) ,540[nm]の吸光度(ABS)を 測定する.分光光度計で吸光度を測定するときには,S/N(シグナル/ノイズ)比を大きくし,. - 63 -.

(7) 誤差を極力小さくすることで,高感度な計測が可能となる.ヘモグロビンの場合は,540[nm] の波長で最も精度よく計測することができる.計測した吸光度を検量線の式 ( Hb  aABS ) に代入することにより,血漿遊離ヘモグロビン濃度(PFHb)を求める.ただし,検量線作成 時の濃度と比して 251/2 倍(サンプリング時の濃度 1/2÷検量線作成時の濃度 20/5020)の濃 度で吸光度を測定するため,(3)式のように 2/251 倍することにより検量線作成時の条件に合 わせる.なお,測定は 3 回ずつ行うこととする.. PFHb  aABS  2 / 251 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.2). a :検量線の傾き[g/dL/ABS], PFHb :血漿遊離ヘモグロビン濃度[g/dL] ABS :所定の時間ごとに測定した吸光度,Absorbance [ABS] Table 4.2 Drive condition of SR-VAD in this experiment Parameter. Values. Drive Pressure mmHg. 250. Vacuum Pressure mmHg. -50. Heart rate BPM. 70. Systolic fraction %. 40. Table 4.3 Drive condition of MH-VAD in this experiment Parameter. Values. Drive Pressure mmHg. 250. Vacuum Pressure mmHg. -50. Heart rate BPM. 70. Systolic fraction %. 30. Table 4.4 Test conditions of hemolysis test circuit Parameter. Values. *Mean flow rate L/min. 3.0. *Aortic pressure mmHg. 120/80. Mean pressure mmHg. 100. Atrial pressure mmHg. 10. Temperature ℃. 37. Total volume ml. 600. 実験条件は,Table 4.3 の*項目(Mean flow rate)を基準とする.. - 64 -.

(8) Resistance. Compliance element. Reservoir element. Air. 23 0. 300 (φ19.05). 350. 600( φ12.7). (φ. 12.7 ). Compliance tube Pressure transducer (AoP). Flow probe. Inlet valve Outlet valve Toyobo Pump. Fig.4.5 Schematic drawing of hemolysis test circuit. Fig.4.6 Centrifugal machine for abstraction of blood plasma 3) 溶血評価(試験後) 本試験では溶血量評価として ASTM(American Society for Testing and Materials)の規格に従 い,N.I.H(Normalized Index of Hemolysis;標準化溶血指数)を式(3)から算出する.. - 65 -.

(9) NIH ( g / 100 L)  freeHb  V . 100  Ht 100  ・・・・・・・・・・・・・・・(4.3) 100 Q T. freeHb : サンプリングの時間間隔における血漿遊離ヘモグロビン濃度の差 [g/L] V : 回路内容積 [L], Ht : ヘマトクリット [%], Q : 流量 [L/min]. T : サンプリングの時間間隔 [min]. 4.3 高低収縮時間比で流量を統一したときの溶血量の比較試験 4.3.1 試験対象 ・新規採用弁(MH 弁)を取り付けた東洋紡 VAD 2 個 4.3.2 使用機器・実験器具 4.2.2 と同様 4.3.3 試験方法 1) 拍動流試験前は同様 2) 拍動流試験時 (1) 回路条件設定 調整した血液を閉鎖回路に充填する前に,リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を回路に 10 分程度 満たしておくことおよび使用する回路もポンプ以外は同様である.駆動条件のみ異なるた め,これについて述べる. 本試験の目的は,拍出性能が同一のときに,高低収縮時間比のどちらで駆動することが 望ましいかを検証することである.第 3 章 Fig.3.18 において,流量を統一可能な収縮時間比 の組み合わせはいくつかあるが,4.2 の試験で MH 弁を 30%で駆動させていることより,こ のときと同等の流量が得られる 52%を高収縮時間比の駆動条件とする.Table 4.5 に条件を まとめる.なお,回路条件は Table 4.4 の通りである.. Table 4.5 Drive condition of MH-VAD in this experiment Parameter. Values. Drive Pressure mmHg. 250. Vacuum Pressure mmHg. -50. Heart rate BPM. 70. Systolic fraction %. 30,52. (2) 試験方法 4.2 の試験方法と同様.. - 66 -.

(10) 4.4 試験結果 4.4.1 MH 弁と SR 弁をともに最大拍出流量が得られる条件で駆動したときの溶血量 本章では,第 3 章の結果より MH 弁の方が総じて水撃値が高く,結果として溶血量も多 くなってしまうという前提のもとで溶血量を抑える方法を検討している.ここで,実際に 最大拍出が得られる条件(ともに収縮時間比 40%)での溶血量を Fig.4.7 に示す. 0.05 0.045 0.04. N.I.H. g/100L. 0.035 0.03 0.025 0.02 0.015 0.01 0.005 0 SR (Fs=40%). MH (Fs=40%). Fig.4.7 Comparison of N.I.H. between SR-VAD and MH-VAD at same drive condition. 4.4.2. SR 弁と MH 弁の流量統一時における溶血量の比較試験. Fig.4.8(a)に血漿遊離ヘモグロビン濃度線図(PFHb 線図)を,Fig.4.8(b)に N.I.H のグラフ を示す.生体の個体差を考慮し,N=4 としている. 0.07. SR(Fs=40%). MH(Fs=30%). Plasma free hemoglobin g/dL. 0.06 y = 0.0084x 0.05 0.04 y = 0.0083x 0.03 0.02 0.01 0 0. 1. 2. 3. 4. 5. Time s. (a) Plasma free hemoglobin concentration. - 67 -. 6. 7.

(11) 0.036 0.032 0.028. 0.02 0.016 0.012 0.008 0.004 0 SR. MH. (b) Normalized Index of Hemolysis Fig.4.8 Comparison of N.I.H. between SR-VAD and MH-VAD at same flow rate 4.4.3 高・低収縮時間比で流量を統一したときの溶血量の比較試験 Fig.4.9(a)に血漿遊離ヘモグロビン濃度線図(PFHb 線図)を,Fig.4.9 (b)に N.I.H のグラフ を示す.. 0.08 Fs=30%. Fs=52%. 0.07 Plasma free hemoglobin g/dL. N.I.H. g/100L. 0.024. y = 0.0119x. 0.06 y = 0.0083x. 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0 0. 1. 2. 3. 4. 5. Time s (a) Plasma free hemoglobin concentration - 68 -. 6. 7.

(12) 0.06. N.I.H. g/100L. 0.05. 0.04. 0.03. 0.02. 0.01. 0 Fs=30%. Fs=52%. Systolic fraction (Fs) %. (b) Normalized Index of Hemolysis Fig.4.9 Comparison of N.I.H. between Fs30% and Fs52% (MH-VAD). 4.5 考察 4.5.1 駆動条件を選定する際に inlet 側の水撃に特に注目する根拠 1) 本研究では主に水撃値と溶血性の関連性に着目して条件を選定してきた.弁の水撃には inlet 側と outlet 側があるが,特に inlet 側に着目している.Outlet 側の圧力は,臨床使用が想 定される駆動条件のもとで常に正の値をとるが,inlet 側では正から負の圧力へと大きく変 化する.赤血球は通常血漿と浸透平衡にあって両凹円板形をしているが,膨張して球形に なると膜が破れやすくなる.したがって outlet 側では常に赤血球に対して押す力が作用し, 現状の形状を崩さないため膜が破れるリスクはそれほど大きいとは考えられないが,inlet 側では負の圧力が大きく,赤血球に対して引く力が大きくなるため,球形へと変形させや すい.この知見のもと,本研究では溶血試験において水撃の影響を考慮するにあたっては inlet 側の水撃を主として考える.勿論,実際の溶血量にはこれ以外の要素も絡むことにな るが,inlet 側の水撃による影響が大きいと考えて,また,条件を簡略化するためにも inlet 側に注目する. 4.5.2 駆動条件の変化による SORIN 弁と MH 弁の溶血量の比較 Fig.4.7 は SR,MH の各弁において最大拍出流量が得られる条件(ともに収縮時間比 40%) で駆動した際の溶血量を N.I.H.で表したものである.第 3 章 Fig.3.18 に示す水撃の特性によ り,この条件下では MH 弁が SR 弁と比して溶血が多いことが予想され,実際に 65.5%高い 結果が得られた.なお,本試験は顕著な差が出る事実が重要であり,結果からも明らかに. - 69 -.

(13) MH 弁の方が高いため,N=1 で充分と判断した.この事実からすれば,血球破壊,すなわち 安全性の面から SR 弁の方が優れていると考えることができる.しかし,本研究の目的は, MH 弁への移行を行うに当たって従来使用されてきた SR 弁と性能および安全性において遜 色ないことを示す必要がある.そこで,SR 弁の最大拍出流量と同程度の流量が得られる MH 弁の駆動条件として収縮時間比 30%を選定し,40%駆動時の SR 弁付きポンプと比較を 行った.この結果が,Fig.4.8(b)である.この条件では,拍出性能が SR 弁の最高時と同等な ため,問題はないと考えられる.また,N.I.H の値も 16.0%だけ高い程度にとどまり,最高 時に 65.5%も高かったことを考慮すれば,50%程度低減している.しかも SR 弁 VAD を最大 出力で拍出しなくても,補助効果として 4L/min 以上確保できる条件の範囲が広く,このと きの流量に合わせるのであればさらに低収縮時間比での駆動も可能である.そうすること で溶血量のさらなる低減も図ることができ,安全面において SR 弁と同等であると考えられ る. 4.5.3 高・低それぞれの収縮時間比における MH 弁 VAD の溶血量の比較 本試験では臨床使用を想定して実験を施行し,MH 弁 VAD を臨床でも安全に使用するた めの駆動条件を検討した.ここでは,同一の拍出流量が得られる2つの収縮時間比におけ る溶血性の違いを比較した.本試験では生体環境を模擬するために,後負荷を揃え,収縮 時間比により拍出流量を統一させた.本試験の結果(Fig.4.9(a)(b))を観ると,高収縮期比率 (Fs=52%)の方が低収縮期比率(Fs=30%)よりも溶血量が約 42 %高いことが確認された. これにより,生体環境を模擬した上で,低収縮時間比に設定すると溶血量が抑えられるこ とが確認された. 4.5.4 駆動条件における VAD 内のダイアフラムの運動について 本実験では同一の弁を組み込んだポンプの駆動条件,つまり収縮時間比を変えたことに より流量を統一させたため,弁にかかる水撃だけでなく,ダイアフラムの運動も溶血性に 関係があると考えられる.また,それぞれの条件下ではダイアフラムの運動が異なること が駆動特性評価試験で確認された.そこで,高・低収縮時間比のダイアフラムの運動に着 目する. Fig.4.10 はポンプの断面図を示している.低収縮時間比でのダイアフラムは,拡張期側で 必要な流量を拍出するように上下する.一方,高収縮期比率でのダイアフラムは,ハウジ ング内面近くで上下する.すなわち,低収縮期比率でのダイアフラムは,ポンプ内に血液 が満たされた状態(fulfilled)で,ハウジングとの隙間を残して運動するが,高収縮期比率 では収縮末期には完全にダイアフラムがハウジング内面に押し付けられる形となり,ポン プ内に流入した血液をすべて拍出する(full-empty).ダイアフラムがハウジングに押し付け られると赤血球に余計な応力がかかり,血球破壊が進んでしまうことが考えられる.した がって,ダイアフラムの運動からも低収縮期比率のもとで駆動させることが望ましいと言. - 70 -.

(14) える.. Housing. Blood chamber Diaphragm (a) Diastolic phase. (b) Systolic phase. Fig.4.10 Cross sectional view of Toyobo VAD. 4.6 本章のまとめ 新規採用の MH 弁 VAD について拍出性能・溶血量のふたつの観点から溶血試験を行って 従来の SR 弁 VAD と比較検討した. その結果, 1) 最大流量(MH 弁 VAD が SR 弁 VAD よりも 0.5L/min 程度高値)が得られる収縮時間比 40%では, MH 弁 VAD の溶血量は SR 弁 VAD よりも約 65%多く,血球破壊による溶血 の観点からは SR 弁が優れていると言える。 2) SR 弁 VAD と同流量になる収縮時間比 30%で駆動した場合,MH 弁 VAD の溶血量は SR 弁 VAD と比べ 16%の増加に留まった.したがって,MH 弁 VAD においても適切な駆 動条件を選定することで,溶血量を押さえ SR 弁 VAD と同等の性能を確保できることがわ かった. 3) MH 弁 VAD で同流量を示す収縮時間比①30%と②52%では,収縮期側駆動の②の溶 血量が①よりも 42%高値を示した.溶血量の観点からは拡張期側で駆動する方法が有効で あることがわかった. 以上より,MH 弁 VAD の駆動方法については最大流量手前の収縮時間比 30%程度に設 定することよって,SR 弁 VAD と同等の拍出特性を確保しながら溶血量を押さえることが できることがわかった.. - 71 -.

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