大人の学習と乳幼児の発達を保障する地域づくり —共同の保育をつくりだす— [ PDF
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(2) かりが注目されている。そのことで保育の市場化・商品. 次にこの生活認識の共有化を重視した子育て支援の学. 化の動向を助長し、子どもの発達が親自身の自己の評価. 習実践を評価しつつ、親の多様な地域生活課題とそれに. として捉えられ、逆に育児困難や子どもの発達の問題を. 対する子育て支援実践、さらに保育所の運営形態による. さらに硬直化させている現状があるのではないか。 また、. 違いについて明らかにするために、地域の生活文化・運. 乳幼児の基本的生活習慣を含めた生活時間や生活様式は、. 営形態において異なった 2 つの保育実践を聞き取り調. 年々大人のそれに同調しており、さらに大人自身に、乳. 査・参与観察を行った。調査対象は、①福岡県・川崎町、. 幼児の発達を「できる・できない」の評価ではなく、そ. 私立認可保育所「すみれ保育園」、②沖縄県・読谷村、. の子ども自身の発達段階に沿った視点で捉える力量にも. 私立認可外保育所「こひつじ園」である。①の地域は、. 問題がある。90 年代以降のエンゼルプランに代表され. 地域産業である炭鉱の衰退によって、福岡県内で生活保. る保育政策や子育てサークルの動向は、多様な大人の生. 護世帯が最も多く、市町村民所得も最下位である。全国. 活自体を画一的に捉え、地域の生活文化を軽視し、機能. 的にも経済的に貧しい地域にあり、失業した親の子育て. 的・効率的な生活、わずらわしい人間関係を重視しない. を多く支援している。②の地域は、伝統文化継承によっ. 子育てを助長している。加えて、行政や公民館、子育て. て地域住民の関係性が豊かに育まれている、共同体意識. サークル、家庭教育支援事業などで実施されている親や. の強い地域にある。字ごとの自治活動によって、子ども. 地域住民を対象とした子育ての学習が、大人の地域生活. を地域の子どもとして、地域住民全体で育もうとする意. を大人自身がどのように創り出すかの学習まではいたっ. 識も高い。iiその中で共同体の煩わし関係を避け、地域. ていない。. において孤立化した親に対する、子育て支援を行ってい る。. Ⅱ.研究方法 本研究は、保育所が展開している「地域子育て支援. Ⅲ.研究結果. 活動」を対象とし実践分析を行った。1999 年改訂保育. 本研究で明らかになったことは、①子育て支援の学. 指針は、保育所を「地域の子育て支援センター」として. 習は、子育ての方法・技術だけではなく、親の地域生活. 位置づけ、子育て支援を保育実践に結びつけ、親と保育. 課題を内容とする必要があること②子育て支援の学習の. 者が保育実践をつくりあげる筋道を見出したところに着. ねらいは、特に若い親世代が感じる子育てにおける主体. 目したためである。さらに実践分析の視点として、大人. 性を拒む他者評価を、生活認識の共有化によって克服す. 同士の学習によって、発達を捉える視点としての保育内. るものであること③このような大人の学習は、乳幼児が. 容に対する、保育の「生活的価値」への認識をどのよう. 自分の思いを表現しやすい発達環境をつくり、乳幼児の. に深めているかに着目した。. 言葉による自己表現や自己認識の発達を保障することに. まず、保育実践プロセスの認識の共有化から、生活 認識の共有化をねらいとした親と保育者の学習によって、. つながる、という 3 点である。 まず①子育て支援の学習の内容についてであるが、. 保育実践を創り上げている共同保育所、大阪・熊取町「ア. 保育実践が生活の中でよりリアルに乳幼児の発達を捉え、. トム共同保育所」の保育実践(以下、アトム実践)を分. 乳幼児一人一人の生活の中での発達にそって展開される. 析した。調査期間は、1998 年 2 月∼2001 年 11 月まで. ためには、保育者が親の生活を画一的に捉えるのではな. 様々な活動に関わり、聞き取り調査・参与観察を行った。. く、親と保育者が生活現実を伝え合い、互いの生活認識. 特に 2001 年 2 月から 11 月まで職員会議や懇談会にお. を学習することが必要である。よって、子育て支援にお. ける学習活動の参与観察、またはビデオ撮影による観察. ける学習内容は、地域生活課題に向けたものであり、地. を継続的に実施した。. 域生活の主体に根ざすこと=親の生活に根ざすことから.
(3) 展開することが必要なのである。そのことによって、保. ながるからである。. 育内容は、地域の生活文化に根づくものとなり、乳幼児 の発達も、生活文化の中で育まれるものとなる。 次に②子育て支援の学習のねらいについて、特に、 今日の若い親世代(20-40 歳)に限定すると、1960-1980. i. 年代のマスコミやマスメディアの普及、学校的価値の肥. 達課題とその保障―」 『教育学研究』 第 56 巻第 3 号 1989. 大化、いじめの増加などの影響を生育過程で受けている. 年 9 月 241−250 頁等参照。. ことから、他者に対する評価が、「できる・できない」. ii. と一元化された価値意識に偏っていると思われる。その 指標が子どもの発達を捉える視点へも反映されている。 さらに画一化された生活認識の中で、同時代の子育て世 代同士が同様の問題を抱えても、それを個人的な問題と して共有化されにくい。共同の保育実践は、それを克服 するものであり、 実践分析によって明らかになったのは、 親の他者評価への不安を払拭し、大人同士の相互の関係 性をつくるため、学習を通して深めた生活認識の共有化 の重要性である。なぜならその学習過程の中で、親はわ ずらわしい関係性を大切にしてこなかったこと、子ども に影響を与えていた大人中心の生活事体を見直し、地域 を子どもの発達環境として再構築する主体となる力を獲 得するからである。その学習は、地域生活課題克服を通 した、大人の生活体験の取り戻しであり、広く行われて いるような事業としての自然体験や遊び体験等ではない。 大人が生活現実の困難さを生活課題として受け止め、そ れを克服する学習を通した生活体験なのである。 最後に③乳幼児の言葉による自己表現や自己認識の 発達については、乳幼児の発達を捉える主体である大人 自身が「できる・できない」を脱却した発達概念を、大 人自身の生活現実や生活認識からリアルに捉え、乳幼児 の発達を捉える力量を学習によって獲得することである。 そのことによって、日常生活の中に子どもが自分の思い を声に出して、相手にぶつけられる安心感のある保育環 境・発達環境の創出が可能である。乳幼児は安心した関 係性の中で自分の思いを言葉によって自覚化し、またそ の関わりの中で他者と自己の違いを確認し、自己認識や 認識能力を形成する過程が発達上重要なのである。なぜ なら学力の基盤となる言葉、そして認識能力の獲得につ. 岸井勇雄「生涯学習における幼稚園教育―幼児期の発. 南里悦史『地域生涯学習研究 第 3 号』参照。.
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