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拡張現実感とエンタテインメント

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Academic year: 2021

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(1)Vol.2010-EC-18 No.6 2010/12/11. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 1. は じ め に. 拡張現実感とエンタテインメント 加藤博一. 拡張現実感とは,現実世界に仮想物体などをあたかもそれが実際に存在するかのよ うに提示する技術である.近年,その技術の実用化に向けた取り組みが盛んになり, エンタテインメント応用としても期待されている.新しい技術は,その新しさゆえの 面白さ,人を引きつける力があるために,エンタテインメントに向いていると思われ やすい.しかし,その技術の本質を見極めていなければ,一過性の流行で終わってし まう.著者は,これまで約10年にわたり拡張現実感の研究を行い,要素技術の開発 と同時に,応用システムに関する検討も行ってきた.本論文においては,それらの中 でもエンタテインメント的要素の強い事例をいくつかのタイプに分類して紹介しなが ら,今後の拡張現実感のエンタテインメント応用に関して,その可能性や問題点など を述べる.. †. 拡張現実感とは,現実世界に仮想物体などをあたかもそれが実際に存在するか のように提示する技術である.近年,その技術の実用化に向けた取り組みが盛ん になり,エンタテインメント応用としても期待されている.新しい技術は,その 新しさゆえの面白さ,人を引きつける力があるために,エンタテインメントに向 いていると思われやすい.しかし,その技術の本質を見極めていなければ,一過 性の流行で終わってしまう.本発表では,著者のこれまでの拡張現実感に関する 研究の中でもエンタテインメント的要素の強い事例を紹介しながら,今後の拡張 現実感のエンタテインメント応用に関して,その可能性や問題点などを議論した い.. 2. ゲ ー ム へ の 応 用. Augmented Reality for Entertainment. 2.1 デ ス ク ト ッ プ 型 ゲ ー ム. デスクトップ型のシステムとは,ここでは標準的なパソコンを用いたシステムや家 庭用ゲーム機などを指していて,家庭内で座った状態で楽しむタイプのゲームである. 代表例としては,ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション3 (PS3)用ゲームソフトであるアイ・オブ・ジャッジメントをあげることができる. このタイプのシステムでは,現実のテーブル上の環境をカメラで撮影し,その映像に 3次元CGを重畳表示した映像をユーザに提示するものが多い.筆者が開発した MagicPaddle というシステムでは,テーブル上でミニチュアの家具をパドル形状のデ バイスで操作し,室内での家具のレイアウトを楽しむことができる(図1). このような応用例では,実は拡張現実 感の鍵となる現実世界というものが,あ まり有効には活かされていないと考えら れるかも知れない.ゲーム用のシートと いった日常的現実世界とは異なる,その ゲーム専用の世界がテーブル上に広げら れたり,テーブルは単なる仮想物体を表 示する基準としてのみ存在する.では, AR のどのような特質が利用されている かというと,それは仮想物体の重畳表示 図1 マジックパドル ではなく,使いやすい3次元ユーザイン Figure 1 Magic Paddle. Hirokazu Kato† Augmented Reality (AR) is a technology for displaying 3D virtual objects in the real world as if they really exist there. Recently many practical entertainment applications using AR technologies have been proposed. A new technology is interesting and attractive because of its newness. Then people might easily think that it is suitable for entertainments. But if we cannot find the essence of the technology, the boom will shrink immediately. In this paper, future entertainment applications using AR is discussed based on the past works author has developed.. †. 1. 奈良先端科学技術大学院大学 Nara Institute of Science and Technology. ⓒ2010 Information Processing Society of Japan.

(2) Vol.2010-EC-18 No.6 2010/12/11. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 塾大学の Adrian David Cheok 教授の開発した Human Packman をあげることができる. これらはまさに拡張現実感の特質を使用したものではあるが,実現のための技術的課 題がまだ多く残されており,実用化にはまだ時間を要すると思われる.ただし,携帯 電話のようなモニタを通したシステムだと,現時点でも位置精度を問わないコンテン ツとして実現可能である.このタイプのシステムにおいては,その実用化に向けては, 社会的受容性や安全性などを考えなければならない.どこでも楽しむことができるシ ステムであっても,それはどこでも楽しんでよいシステムとは限らない.また,安全 性対する十分な配慮も必要であり,仮想物体が信号機や前方から向かってくる自動車 を隠したりすることは合ってはならない.. タフェースであると考えられる.仮想空間内での3次元物体の操作や視点移動をマウ スやキー入力で行うのは困難であるが,拡張現実感環境だと,タンジブルユーザイン タフェースのコンセプトに従ってインタラクションを設計することで,非常に使いや すい3次元ユーザインタフェースを構成できる.その直感的で分かりやすいインタラ クションが,例え映像内に現実世界がごくわずかしか映っていなくても,ユーザはそ れを自分自身の存在する現実世界と認識する鍵になっていると思われる.しかし,拡 張現実感だからこその特徴が,エンタテインメント性を高めているかという点では, 疑問が残る.このタイプのシステムに関しては,さらに深い検討が必要と思われる. 例えば,その場にある箱や道具などを即座にゲーム要素として取り込むといった機能 が考えられてもよい. 2.2 体 感 型 ゲ ー ム これは,ニンテンドウの Wii やマイクロソフトのキネクトなどを用いた体感型ゲー ムへの拡張現実感応用を指している.前述のデスクトップ型との明確な境界はないが, それらに比べ少し広い空間を使用する.このタイプのシステムの特徴としては,ユー ザ自身を撮影し,そこに3次元CGを重畳表示することができる.いわゆる魔法の鏡 の実現である.人間は自分自身の姿,特に顔を見るという行為に生得的に興味を持っ ていると思われる.家電量販店のビデオカメラ売り場の前では子供が自分の映る映像 に手を振り微笑む光景は当たり前のように目にする.つまり,ユーザ自身を表示する ということ自体は,人間を引きつける要素を持っているのかもしれない.そのような 仮説の元に開発されたシステムの代表例として,ソニー・コンピュータエンタテイン メントのアイトーイをあげることができる.しかし,そこで実現されているインタラ クションはスクリーン内の2次元的なものである.もちろん,拡張現実感技術を使用 すれば,映像内に映るユーザとアプリケーションとの3次元的なインタラクションを 実現するのは可能である.しかし,ここには非常に重要な問題点がある.ディスプレ イに映し出されたユーザは2次元であり,その2次元表示を観察しながらの3次元的 なインタラクションは非常に困難となる.特に重畳表示された仮想物体の奥行き知覚 を現実のものと一致させるのは難しく,奥行き情報を利用したインタラクションは技 術的には可能であるが,ユーザインタフェースとしては適さない.これを解決するに は,簡単には3Dテレビなどの立体映像を用いる方式が考えられ,そこには新たな応 用が期待できる. 2.3 ユ ビ キ タ ス ゲ ー ム これは,モバイル端末などを利用し,現実世界の至る所に仮想物体などを重畳表示 しながら行うゲームを指している.現実空間を無視した単純な3次元映像の重畳表示 ではなく,現実空間との整合性をとった表示が必要とされる.実現のためには技術的 な課題も多く,現時点で実用化された事例をあげることができないが,南オーストラ リア大学の Bruce Thomas 教授の開発した ARQuake やシンガポール国立大学・慶應義. 3. ま と め この原稿では,ゲームへの応用に関して,3つのタイプに分類して拡張現実感技術 を利用する場合の問題点などを述べてきた.エンタテインメント応用としては,この ほかにもパフォーミングアートへの応用,エディテイメントへの応用,広告への応用 なども考えられる.いずれにせよ,現時点においては,拡張現実感の新しさ故の面白 さ,興味深さからのアプローチが非常に多い.今後,この技術が長くエンタテインメ ントに利用されるためには,拡張現実感のエンタテインメント性に関する堅実な研究 が必要になるであろう.. 2. ⓒ2010 Information Processing Society of Japan.

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