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多発性嚢胞腎に対するエタノールを用いた腎動脈塞栓術

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Academic year: 2021

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(1)

 腫大した多発性 *胞腎に対する縮小療法として,Ubara らがコイルを用いた経カテーテル的動脈塞栓術(以下, TAE)の有効性を報告した。当院でも TAE を行ったが,大量 のコイルが必要であること,血流再開通による再発症例の 経験から,エタノールによる TAE を行っている。  腎疾患に対するエタノールによる TAE は,過去に腎細 胞癌,腎機能廃絶,腎血管筋脂肪腫などでの有用性が報告 されている。本稿では,多発性 *胞腎に対してエタノール で TAE を施行した症例の治療成績を報告する。  対象は 2006 年 1 月から 2011 年 12 月に多発性 *胞腎に 対してエタノール注入による TAE を施行した 15 例 30 腎 〔男性 7 例,女性 8 例,年齢中央値 58 歳(48∼67 歳)〕。適 応基準は,1)臨床症状を有する,2)尿量が 500 mL/day 以下,3)活動性炎症・ *胞感染がない,4)Performance status≦3,5)補正不能な凝固能異常がない,とした。主訴 は,腹部膨満,腹痛・背部痛,摂食障害で,治療歴はコイ ルによる近位塞栓を行ったが無効だった患者が 2 例(2 腎), *胞穿刺吸引(硬化療法なし)が 2 例(2 腎)だった。  方法は,選択的腎動脈造影を施行後,鎮痛薬(フェンタニ ル 50∼100μg)を静注し,temporary balloon occlusion cathe-ter(3.3 Fr または 5 Fr)を腎動脈に挿入,バルーン閉塞下で エタノールを注入した。temporary balloon occlusion catheter

はじめに 対象・方法 が挿入できない細径の血管では,microcatheter(1.8∼2.1 Fr) を挿入してエタノールを注入した。一度のセッションで両 腎動脈の TAE を施行した。  本研究では,腎縮小率,腹囲変化,dry weight 変化,合 併症について検討した。腎容積測定は,治療前,治療後 3, 6,12,18,24 カ月目の CT 画像を使用して行い,腎縮小 率(治療後腎容積/治療前腎容積)を算出した。  経過観察期間は平均 19.0±7.7 カ月だった。1 例は TAE 後 7 カ月目の腎移植施行時に 1 腎を摘除された。1 例は 5 カ月目に痙攣発作を発症し 3 カ月で経過観察を終了,10 カ 月目に肺炎で死亡した。1 例は TAE 後 6 カ月目に原因不明 の腹膜炎を発症し 3 カ月で経過観察を終了,7 カ月目に死 亡した。TAE 治療による死亡例はなかった。エタノールの 平均注入量は 1 腎当たり 8.1±4.0 mL,1 患者当たり 16.3± 6.0 mL だった。  治療前の平均腎容積は 3,380±1,840 mL で,腎縮小率の 平均値は治療後 3 カ月目(30 腎):60.9±16.7 %,6 カ月目 (28 腎):47.3±20.0 %,12 カ月目(23 腎):39.8±18.6 %, 24 カ月目(17 腎):29.2±13.4 %だった。腹囲変化は TAE 前と比較し TAE 後 3 カ月目(15 例)で−5.2±3.4 cm,6 カ 月目(13 例)で−8.3±3.4 cm,12 カ月目(12 例)で−6.9± 3.9 cm だった。Dry weight 変化は,TAE 前と比較し TAE 後 3 カ月目(15 例)で−2.2±1.7 kg,6 カ月目(13 例)で−3.9± 2.4 cm,12 カ月目(12 例)で−3.0±2.7 cm だった。  TAE 後には塞栓後症候群(発熱・炎症反応,疼痛,嘔気), 貧血増悪,血圧低下などを認めたが,1 例(1 腎)で膿瘍形 結  果 日腎会誌 2013;55(4):549−550. 北海道大学病院放射線診断科

多発性 

*胞腎に対するエタノールを用いた腎動脈

塞栓術       

Transcatheter arterial embolization with ethanol for symptomatic polycystic kidney disease

作 

原 

祐 

Yusuke SAKUHARA

(2)

成に対するドレナージを要したほか,重篤な合併症は生じ なかった。全例で 3 カ月以内に臨床症状の軽減が得られ, 経過観察中に腎の再増大や臨床症状の再発を生じた症例は なかった。  エタノールは最も強力な永久塞栓物質の一つである。そ の作用機序は接触による直接的な組織障害で,赤血球の sludging(沈殿物形成),血管内皮障害による血栓形成,血管 周囲組織の障害が主である。最大の利点は,強力な塞栓効 果と末 W血管まで塞栓効果が及ぶことである。また,晩期 の側副血行路発達による血流の再開通を防ぐ効果もある。 塞栓効果はエタノール注入後速やかに得られ,X 線透視時 間は短く,患者・術者の被曝も少ない。  欠点は,X 線透視下で見えない液状塞栓物質であるため に,異所性塞栓を生じる可能性があることで,きわめて稀 ではあるが重篤な合併症も報告されている。しかし,血管 解剖を仔細に確認し,過剰な注入をしなければ安全に治療 考  察 可能である。また,ethiodized oil(リピオドール)を混合す ると,塞栓効果を維持しつつ視認性が得られるので,より 安全性が向上する。注入時の疼痛も欠点の一つだが,当科 ではフェンタニルをエタノール注入前に静注して対処して いる。疼痛は比較的速やかに軽減し,治療終了後にはほぼ 消失するため,硬膜外麻酔や経静脈的な鎮痛薬の持続投与 は行っていない。TAE 後 2∼3 日目以降に発熱とともに疼 痛を生じる傾向があるが,NSAIDs 投与で対処可能である。  なお,塞栓物質としては off label use のため,病院の倫理 委員会などの承認を得る必要がある。かつ,患者にも説明 し理解を得たうえで使用しなければならない。  エタノールによる TAE は多発性 *胞腎に対する治療と して有効であると考えるが,症例が少なく,今後安全性な ど検討が必要である。   利益相反自己申告:申告すべきものなし 結  論 550 多発性 *胞腎に対するエタノールを用いた腎動脈塞栓術

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