( 東 女 医 大 誌 第54巻 第11
号
)
頁 1188-1202昭和59年11月〔 原 著 〕
外科栄養と非特異的細胞性免疫能
東京女子医科大学 第二外科学教室(主任織畑秀夫教授〉 H滝
作 口進
(受付昭和59年7月19日〉Surgical Nutrition and Nonspecific Cell Immunity Susumu TAKIGUCHI
,
M.D.Department of Surgery(Director: Prof. Hideo ORIHAT A)
Tokyo Women's Medical College
A total of 46 patients with gastric cancer have been reviewed on the nutritional state and nonspecific cell immunity in surgery, and the following findings were obtained.
1) Each stage of cancer was correlated with the nutritional state
,
and the nutritional state was distinctly improved by hyperalimentation.2) Nutritional state was general1y correlated with the parameters on cell immunity, and c10ser relation was suggested between nutritional state and cell-immunological function.
3) In acute immunoactivation within a short period
,
NK cell activity and PHA blastformation index showed the elevation of activity value, whereas, total peripheral lymphocyte count and T cell sub -population were slight1y reduced.4) By immunoactivation, NK cel1activity is activated regard-less of nutritional state, while PHA blast-formation index was rather inhibit巴dunder the malnutritional state, and it might be due to the difference in energy demand of NK system and T cell system.
5) By the correlation was observed between nutritinal state and immunity before hyperalimentation,
but after hyperalimentation, such cases showed the lower correlation, and also, by the di妊erencebetween
the improving rate of nutrition and immunity at the second week after hyperalimentation, the im -provement of immunity might be obtained not in parallel, but in an earlier stage as compared with the improvement of nutritional state. 6) Hypoimmunoactivation under the malnutrition is not in an immunological suppressive state, but it might simply be due to the low energy store. As in the above, nutritional state is directly related to cell immunoactivity in vivo, specifically, the T cell system needs enough energy for its activity; And
,
as the hypoimmunoactivivation in patients with malignant tumor might be mainly due to hypoalimentation, then, aggressive hyperalimentation will be essential not only for the surgical patient with malignant tumors in general, but also in performing im -munotherapy as surgical auxiliary therapy. 目 次 2.栄養評価指数の決定 3. 免疫能の指標 4.免疫賦活の方法とサンプリングスケジュール 結果 緒言 研究方法 1.対象 一11881. 癌の各 Stageと栄養状態との相関
2
.
免疫パラメ ターと栄養状態との相関 3.免疫賦活前後での免疫パラメーターの変動 4. NIとNK活性及び PHA-SIとの相関 5.栄養改善によるStaticImmunityとDynamic Immunityの変化 6.高カロリー投与前後での NIと各免疫ノミラ メーターの相関7
.
高カロリー投与期間と NI及び PHA-SIの改 善 8. OKT 4/0KT 8比の免疫賦活・栄養改善による 変化 考察 1.栄養状態の評価について 2. 免疫学的パラメーターについて 3. 免疫賦活剤及び免疫賦活の方法について 4. 1"結果」に関する考察 総括と結語 文献 緒 言 近年の,中心静脈高カロリー輸液CIntravenous hyperalimentation: IVH),成分栄養 CElementalD
i
et: ED)等を中心とした臨床栄養学の新たな展 開とI),免疫学のめざましい進歩に伴う基礎免疫 の臨床へのアプローチは,必然,栄養と免疫との 関係への興味を惹起するところとなった.臨床栄 養,免疫ともに深いかかわりをもっ外科領域にお いて, この方面への接近は早く, ことに最近悪性 腫蕩と免疫の関係が注目を受け,悪性腫虜の免疫 療法が一般化しつつある昨今, この二つの領域の 関係は, より理論的な検討を必要とする段階にき ている. 爾来,栄養と免疫のかかわりを議論した報告は 比較的多く, Cannonら幻は生体の抵抗力とタンパ ク代謝について, Studlyら 体 重 減 少 率 と 生 体 の 抵 抗 性 に つ い て 言 及 し て い る.最近でで、は, Law, Dudrickら4)が外科患者の Protein Calorie Malnutrition CPCM) と免疫抵 抗性について検討を行ない,相互に関係のある点 を強調している. 免疫能は,体液性免疫と細胞性免疫に大別され るが,栄養障害によって大きな影響を受けるのは 主として細胞性免疫能であるとされておりかへ 体液性免疫能はさほど変化を受けないとの報告が 多い4)5)7) 一方,今日まで議論の対象となってきた 免疫能は,遅延型皮膚反応を除いていずれも免疫 学的に静止状態にある免疫能 CStaticImmunity) であり,実際の免疫能を表象すると思われる賦活 状態にある免疫能 CDynamicImmunity) での検 討は,少なくとも現在まであまり意識されていな いように思われる.栄養と免疫のかかわりを論ず る時,このDynamicImmunityを重要視すべきで あろうことは論を待たない.さらに,現在,極度 のPCMが直接問題となるのは,悪性腫虜疾患が ほとんどであり,悪性腫療と生体の非特異的免疫 能の関係がクローズアップされ8)9),免疫療法が癌 治療の一つの大きな柱になりつつある事実等か ら,著者は,悪性腫虜患者の栄養状態と,主とし て賦活状態での細胞性免疫能に注目し,各種の免 疫学的パラメーターを用いて検討を行なった. 研究方法 1.対象 1982年 9月より 1983年 12月まで、に当科で、扱った 間癌症例のうちで,サンプリング及び免疫賦活剤 投与可能であった46症例を対象とした.そのうち わけは表 lの如くである. 2. 栄養評価指数 (NutritionalIndex: NI)の 決定 本研究施行にあたって,いかに個々の症例の栄 養状態を客観的にあらわすかがまず問題となる. そこで,栄養評価に用いられる種々のパラメー タ一川11)を臨床例においてあらかじめ測定し,術 前栄養摂取状態及び予後との相闘を検討した上 で, Albumine, Prealbumine, Transferrin,上腕 1189ー 表1 対 象 1)Total: 46cases CSept.1982 -Dec. 1983, Gastric Cancer) 2) Male; 28casesC58.1:t9.7y.) Female; 18casesC57.9:t14.2y.) 3) Stage IIIII IV Case 8 9 10 19 4) Operative; 35cases N onoperative or Simple lapa.;l1cases三頭筋皮下脂肪厚(TSF),24時間尿Creatinineの 5要素を選出し,栄養状態にかかわる重みを評価 した上で,予後及び術前栄養摂取状態との間でコ ンビュータを用いて多変量解析を行ない,重回帰 式として栄養指数 (Nutritional Index : NI)を決 定した(表2入 こ のNIは,栄養状態の悪いもの から良好なものまで0から100までのscoreで示 され,概ね, Group IV (-30) ;高度低栄養状態, Group III(30-50) ;中等度低栄養状態,Group II (50-70);軽度低栄養状態, Group 1 (70-) ;正 常として評価される. 本研究では全症例について,上述の栄養学的パ ラメーターを測定した上で,回帰式に代入してそ れぞれのNIを決定した. 3.免 疫 能 の 指 標 ( Immunological Para-metors) 緒言に述べた如く,栄養との相関を議論する目 的から,細胞性免疫を中心に検討を行なうことと し,殊に悪性腫虜患者を対象とし,非特異的免疫 賦活剤による免疫賦活を行なうことから,パラ メーターを, (1) N atural Killer細胞活性, (2) PHAリンパ球幼若化率, (3)末梢血総リンパ球 数, (4) Tcell Subpopulation • Subsets,および, (5) Delayed hypersensitive skin reactionとし 表2 栄養評価指数 Nutritional Index; NI NI=÷(162川 附 (1462c +0.16d十O.Oleー71.2 0.91♀c a; Albumin g/dl b; Prealbumin mg/dl C; Tricepus Skin Fold m m d; Transferrin mg/dl e; Urine creatinin/24h. mg 表3 免疫能の指数 Immunological Parametors 1.N atural Killer Cell Activity(NK) 2. PHA Blastformation Stimulation Index(PHA-SI) 3. Peripheral Total Lymphocyte Counts(PLC) 4. T cell Subpopulation & Subsets(OKT3, 4 & B)
5. Delayed Hypersensitivity(SU.PS) た(表3). 1)N atural Killer細胞活性 (NK活性) Ficoll-Conrayによる比重遠心法にて分離した リンパ球粗分画を 51Crで 標 識 し たTargetcell (穎粒球系白血病由来培養株 ;K・562)に, E/T 比=20/1で反応させ, N K cellによる標的細胞障 害活性を算出した.なお,活性値は以下の式によ り求め,採血より分離までの時聞を
2
時間,反応 時聞は3.5時間とした. NK(%)=
Experimental ReleaseCCPM) -Spontaneous ReleaseCCPM) X100 Maximum Release(CPM) -Spontaneous Release (CPM) 2) PHAリンパ球幼若化検査 (PHA-SI) 分離・洗浄したリンパ球をPHAと64時間反応 させ,3H-TdRを添加し, 8時間再培養を行なった 後,シンチレータにて3H-TdRのとり込み量をカ ウントし,幼若化の程度を定量的に測定,対照と して PHA無添加のものをカウントし, Standard に対する幼若化率 (StimulationIndex ; PHA添 加3H-TdR up take/PHA無 添 加3H司TdR up take)をもって評価を行なった. 3)末梢血総リンパ球数 (PLC) 末梢血白血球数をMicrocounterCC 120で測定 後 , 同 血 液 塗 沫 標 本 を ラ イ ト ギ ム ザ 染 色 に て 1,000Xで鏡検し,リンパ球数の百分率を求め両者 を乗じて1mm3中のリンパ球数を算定した. 4) OKT 3 (T cell subpopulation) OKT 4/8 (Helper T cell subset/Supressor T cell subset) 採取した全血100μlに10μlのリン酸緩衝食塩水 及びオーソミューン FITC標 識 抗 体 を 加 え て イ ンキュベートし, Lysing reagentを加えて溶血せ しめた後,スペクトラム凹にて測定を行なった. 5) Delayed Hypersensitive Skin Reaction (SU ・PS) 今回皮内反応に用いた試薬は, Streptococus Pyogenes Su株からSladeの方法により分離し たPolysaccarideで, 100μg/0.5mlの 製 剤 で あ る.これを前腕屈側皮下にO.lml注入し,24時間後 の発赤の長径と短径の平均値をとってデータとし表4 サンプリングスケジューノレ Admission N utritional assessment lmmunological parametors や~O.5KEI I Immunological <?l.OKEト activation(OK432) 炉2.0KEJ Immunological parametors
(
←
町
山
ltい r4 weeks ↓ (50cal/kg/d., C!N : 165, Lipid 2g/kg/w) N utritional assessment Immunological parametors←
O.5KE I I Immunological <?l.OKEト activationCuK432)←
2.0KE J Immunological parametors た.4
.
免疫賦活の方法とサンプリングスケジュー Jレ 生体の非特異的免疫賦活を行ない得る薬剤のう ち,我々は今回特に,N
a
t
u
r
a
l
k
i
l
l
e
r
のa
c
t
i
v
a
t
e
に すぐれ,広く臨床一般で用いられつつある免疫賦 活剤としてOK
・4
3
2
(ピシパエール〉を採用し,初日
0.5KE
,2
日目1.0KE
,3日目2.0KE
を皮内投 与 4日目の朝にサンプリングを行なうこととし た.免疫賦活方法を含めて,一連のサンプリング スケジュールは表 4の如くである. 結 果 1.癌の各Stage
と栄養状態との相関 癌の各S
t
a
g
e
(I~I
V
)
とNI
との相闘をみると,S
t
a
g
e
が高くなるに従って栄養状態は悪化してお り ,S
t
a
g
e
I
I
とI
I
I
,I
I
I
とIV
の聞には有意に差が 認められる(図1入また,これらの症例に高カロ リー投与を 4週 間 行 な っ た 後 のNI
をみると,S
t
a
g
e
1
,I
I
,I
I
I
の群では4
週間の高カロリー投 与により,有意に改善をみるが,S
t
a
g
e
IV
はその 傾向がある程度でしか改善がみられず,全く改善 をみなかった例もS
t
a
g
eIV
で3
例,S
t
a
g
e
I
I
I
で I例認められる(図2).全体として高カロリー投 x o 官 E一
- m w E o z τ H コ Z 75 50 25。
*
P<0.05 t P<O.1•
•
•
.
.
r
t ー士* ー .•
•
•
II III IV Stage 図l 癌の StageとNIの相関 NI 100 50。
。
•
すP<O.1*
P <0.05*
*
P <0.01。
PreNutritIon・
PostNutrition . . Noimprovement。
-•
*
。
* * 。.
.
。
•
。
。
I I III IV 図2 高カロリー投与による NIの改善 Stage 与により栄養状態は改善するが,S
t
a
g
e
の高い例 は低い例に比べてその程度は低い傾向にある.2
.
免疫ノfラメーターと栄養状態との相関 上記のNI
を用いて,全症例を1
正常群(70<
NO
,I
I
;
軽度栄養障害群(50<NI<70)
III;中1191-N K cell activity % 0 5 0 5 0 5 0 5 0 5 0 5 1 e O E 3 e a a a 守 a a T 句 。 内 S 内 4 内 4
・ , . ,
4
ω
お PHAblastformation (51) Total T cell count (OKT3)
350
*
P <0.05 十P<O.1 300 250 200 150 十Pく0.1*
P <0.05 *水P<O.OI 1800 1500 1200 9006
ω
300l
l
L
I E E W 50 I Im
IV 図3 栄養状態と各免疫パラメーターの関係 等度栄養障害群(
3
0
<
N
I
<
5
0
)I
V
;高度栄養障害 群(
N
I<
3
0
)
の4
グループに分け,各群ごとの免 疫パラメーターを比較検討した(図3),すべての 免疫パラメーターが栄養状態の低下に伴なって抑 制される傾向は,はっきりしている.各群聞での 差をみると1
群と1
1
群の聞ではいずれのノミラDelayed hypersensitivity (SU-PSl
E E m
•
十P<O.1•
15•
•
10•
•
•
十 5 E E IV 図4 栄養状態と遅延型皮膚反応 メーターも有意の差を認めず,1
1
群とI
I
I
群との間 ではNK
活性及びOKT3
が,IlI群とI
V
群の間で はOKT3
のみに統計上の有意差が認められた.皮 内反応も同様に栄養状態の低下に伴って低下をみ るが,有意、差はみとめられなかったく図4),3
.
免疫賦活前後で・の免疫ノ〈ラメーターの変動 各免疫パラメーターが,免疫賦活によりどのよ うに変動するかを検討した(表5),全症例をN
I
が5
0
以上の群(栄養状態良好群〕と5
0
以下の群(栄 養状態不良群〉の2群に分け,それぞれの群に免 疫賦活を行なった,NK
活性,P
H
A
-
S
I
は栄養状態 良好群でいずれも改善をみるが,PLC
,OKT 3
の 如きs
t
a
t
i
c
な免疫パラメーター(絶対数のカウン ト等)は,今回採用した免疫賦活方法で、は,若干 ではあるが,かえってその絶対数の減少をきたし た4
.
NI
とNK
活性及びPHA.SI
の相関(免疫 賦活による一次回帰直線の変化)N
I
とNK
活性及びP
H
A
-
S
I
との関係を求めた ところ,NK
活性,P
H
A
-
S
I
ともにN
I
と有意の相 関(
p
<
O
.
O
l)を認め, これらのパラメーターの活 性が,栄養状態に比例していることを示している (図5入 免疫賦活後のN
I
とNK
活性,P
H
A
-
S
I
も同様 によく相関を示すが(図6),ここで免疫賦活前の表5 免疫パラメータの免疫賦活による変化
¥ ¥
N K activity PHA.SI PLC OKT3 OKT4/8 SU.PSPre Post Pre Post Pre Post Pre Post Pre Post Pre Post
X 18.12 24.84 101.51 80.15 1837.73 1687.73 59.73 53.93 1.36 1.01 2.43 2.57 NIく50 S.D. 6.23 8.95 57.59 51.84 600.06 692.66 9.97 8.71 0.60 0.37 5.59 4.91 Cn=22)
t value to= -5.43** to二2.49* to=1.64 toニ6.40** to二4.81事* to= -0.20 X 32.11 37.67 169.62 180.76 2865.83 2796.25 75.05 71. 91 1.61 1.38 6.81 7.56 NI>50 S.D. 12.98 12.99 92.70 121. 31 638.07 623.41 8.42 9.22 0.64 0.50 7.35 6.09 Cn=24)
t value to= -3.56** toニ 0.76 toニ0.78 to=3.37** to=4.57** to= -0.60 *p<0.05 **p<O.Ol z NK cell activity z PHA blastforn祖tion(51) 100 100 60 。。 。 01 。。 80 。。 40。 。。 y ~3.390x -33.675 00 0 口 r =0.542 Pく0.01 20 。 。 80 40 60 NK% y ~0.611 x -31.299 r =0.442 P<O.Ol 20 20 40 200 300 400 51 図 5 NIとN K活性・PHA幼若化率との相関 z NK cell activity 王
ω
PHA blastformation (51) 100.
.
80 80 60 60~・. '.-.
.・'・.
.
40.
.
EL-
•
••
E n u m u マ.
20 y ~3.289 x -51.35 r =0.537 P<O.OI.宇/:
.
y二0.448x -7.030 r =0.477 P<O.OI-.
20 20 40 60 NK% 100 200 300 40051 図 6 免疫賦活後のNIとN K活性・PHA幼若化率との相関-1193-。Pre 1m、庁unoactivation • Post Immunoactivation ①Y =0.611 x -31.299 r =0.442 P<O.OI ②Y=0.448x-7.030 r =0.477 P<O.OI PHA blastformation (51) ① J② 0
・
d♂
i
"
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・
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J
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1
・,。 00 ' 手 Z 100.
・
0 0 80 60 20 N K cell activity ① 。 f・
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0・・。f ω . : 0 I・
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-
.
.
①Y=3.390X-33.675 r =0.542 P<O.OI ②Y =3.289 x -51目35 r =0.537 P<O.OI.
.
80 60 40 20 4ω51 300 200 100 NK% 60 40 免疫斌活に対するNK
活性・PHA
幼若化率の反応5
.
栄 養 改 善 に よ るS
t
a
t
i
c Immunity
とDynamic Immunity
の変化(図8
及び表6)
NK
活性とPHA-SI
について,栄養改善前後で のS
t
a
t
i
cImmunity
とDynamicImmunity
をみ てみると,高カロリー投与を行なう前と,行なっ た後とで免疫賦活前及び賦活後の活性をそれぞれ 比較するに,いずれも有意に改善をみているが,NK
は高カロリー投与前の免疫賦活で有意に改善 をみるのに対し,PHA
・S
I
はかえって値の低下を 図7 相関図とオーバーラップさせると,興味深いこと に,NK
活性は回帰式がほぼ平行にシフトし,PHA-SI
は回帰式の傾きが減少して結果として賦 活前の回帰式と交差する(図7).これは,免疫賦 活を行なった場合,NK
活性は栄養状態のいかん にかかわらず同じようにa
c
t
i
v
a
t
e
されるのに対 し,PHA-SI
は栄養状態の良好な場合はa
c
t
i
v
a
t
e
されるが,低栄養状態においては,かえって抑制 を受ける事実を示している. T PHA blastformation (51) ぷ ¥zm
本* ∞ 200 150 100 NK cell activity * 40 30 * 20 50 本P<0.05 **P<O.Ol 10Pre NutritionI Post Nutrition o Pre Immunoactivation
・
PostImmunoactivation 高カロリー投与前後の免疫賦活によるNK
活性・PHA
幼若化率の変化 -1194-Pre NutritionI Post Nutrition 図8表6 高カロリー投与前後の免疫斌活に対する N K 活性・PHA幼若化率の反応 NK Cell activity Pre Post Nutrition Nutrition t value Pre 22. 66:t12.56 Stimulation 27.81:tl0.32 to=-3.71'噂 Post 28. 96:t18.19 Stimulation 35.94士11.41 toニ 4.24'事 t value to=-5.75" to= -7.53" 'p<0.05 吻'p<O.OI PHA BlastformationCSD Pre Post Nutrition Nutrition t value Pre 104.79士59.31 Stimulation 127.08:t66.51 to= -2.24噂 Post 86.76士66.21 Stimulation 157.18:t69.60 to= -6.95叫 t value to=2目21' to二 4.15" 'p<0.05 "p<O.OI きたしている.一方,高カロリー投与後は, NK活 性,
P
H
A
-
S
I
ともにactivateされており,高カロ リー投与による免疫反応活性の向上が明らかであ る.6
.
高カロリー投与前後でのNI
と各免疫ノ〈ラ メーターの相関 高カ口リー投与前後でのN
I
と各パラメーター の相関を検討すると, N K活性, PLC, OKT 3は いずれも高カロリー投与の前後にかかわらず有意 の相関を示すが,高カロリー投与後にはいずれも 相関係数は低くなる(表7).P
H
A
-
S
I
は,栄養改 善前には有意に相関のあったものが,栄養改善後 には相関を示さなくなっており,全体として 4 週間の高カロリー投与直後は,栄養状態と免疫能 のアンバランスが生じていると推察される.7
.
高カロリー投与期間とN
I
及 びPHA-SI
の 改善 高カロリー投与の期聞を追って栄養の改善と, 免疫能の改善を比較検討した〔図9).免疫能の指 標は,高カロリー投与によって,もっともはっき り改善がみられると思われるP
H
A
-
S
I
を用い,両 指標とも高カロリー投与前を1
0
0
としたときの,投 与後の比較値をもって評価を行なった.高カロ リー投与2
週間で,免疫パラメーターC
P
H
A
-
S
I
︾ 内 @ 明 M E -a E -o PHA Blastformation(81)・
NI 200 176.3土84.3 + 一 * ﹁ 同 150*
146.1 "'44.6 100 十Pく0.1 本P<0.05 n =11 108.8"'26.8 Pre Nutrition 2 weeks 4weeks 図9 高カロリー投与期間と NI及び PHA幼若化率 の変化 表7 高カロリー投与前後でのNIと免疫パラメータの相関 NI v.s NK activity PHA・SI PLC OKT3 r=0.542 rニ0.442 r=0.643 r=0.794 Pre Nutrition r2=0.294 r2=0.195 r2=0.413 r2=0.630 Cn ; 29) to=4.278" toニ3.268" to=5.567" to=8.659串*y=0.295x y=1.637x y=22.700x y=0.416x
十9.934 +51.236 + 1184.575 士45.909 r=0.382 r= -0.121 r=0.614 r=0.457 Post Nutrition r2ニ0.146 r2ニ0.015 r2=0.377 r2二0.209
Cn ; 29) to=2.148' to=0.634NS to=4.042" to=2.620' yニ0.163x y= -0.333x y=15.034x yニ0.148x
+16.919 十149.316 + 1641.671 +58.598
事pく0.05
・
'p<O.OI表8 Tcell Subsetsの免疫賦活及び高カロリー投与 による変化 uKT4/uKT8 ratio Pre Post t value Stimulation Stimulation Pre 文 1.420 1.056 Nutrition S.D 0.626 to=5.748** Cn=28) 0.395 Post 文 1.427 1.317 Nutrition S.D 0.445 0.328 to=2.802** (n=28) t value to二 0.117 to = -4.303** **p<O.Ol は〉有意に改善をみるが栄養状態 (NI)はほとん ど改善がみられず 4週間でやっと有意に改善を みた.一方,免疫能は
2
週以降さほど変化をみせ ず,ほぼ2週間までの間に改善がなされる印象が 強い. 8. OKT 4/0KT 8比の免疫賦活・栄養改善によ る変化OKT 4 CInducer /Helper T cell)とOKT 8 (Supressor/Citotoxic T cell) の比を栄養改善, 免疫賦活の前後でそれぞれ検討した結果,少なく とも免疫賦活を行なわない状態では栄養改善前後 でOKT4/0KT8比に変化は認められず,一方, 免疫賦活により,栄養改善前・後をとわずOKT4/ OKT8比は低下をみている(表 8).なお,この低 下は主としてOKT8の増加によるものであった が, OKT4か低下する例もあり,必ずしもその傾 向は一定していない. 考 察 1.栄養状態の評価について 本研究にあたって,いかに個々の症例の栄養状 態 を 客 観 的 に あ ら わ す か が ま ず 問 題 と な る . Blackburnらl的は栄養状態の評価に関する研究 を広汎に行ない,栄養状態を総合的にとらえる評 価 法 (Comprehensive nutritional assesment procedure) を提唱している.阪大の金・岡田ら同 は, 日本人に適した栄養ノミラメーターの検討と標 準値を自験例から集計し,報告している.しかし, これらの値は,全体としての序数尺度 Cordinal scale)を欠くため,今回の検討には若干不向きで ある.Buzbyら13)は,アルブミン, トランスフェ リン,上腕三頭筋皮下脂肪厚等と予後との関係か ら,一次多変数式を算出し, Prognostic N utritio -nal lndex (PND を設定している.このように栄 養状態を一つのscoreで表わそうとし、う試みは, 最近本邦でも試みられ,佐藤l叫主,胃癌患者を対象 に術後合併症発生を予測する栄養学的危険指数 CN utritional risk index: NRI)を,岩佐15)は, 食道癌患者を対象に栄養評価指数 (Nutritional Assessment lndex : N AI)をそれぞれ発表してい
る.我々も独自に,消化器癌患者の栄養評価を, 術前栄養摂取状態及び予後と,各種の栄養学的パ ラメーターとの相関から,重回帰分析を行ない, 栄養指数 (Nutritional lndex : Nむを求めた.既 存のlndexを用いなかった唯一の理由は,これら のlndexがし、ずれもそのノξラメータに免疫学的 指標として皮内反応を採用しているため,栄養と 免疫とを論ずる本研究の栄養評価としては不適当 と考えたためで、ある.
2
.
免疫学的ノ〈ラメーターについて 現在,すでに各種の免疫学的パラメーターが測 定可能となっており,実際の臨床で広く用いられ るものも増えてきている. 我々が今回の研究で,免疫パラメーターを選択 するにあたって留意した点は, (1)非特異的細胞 性免疫を正確に表象すること, (2) 再現性が高い こと, (3) 免疫賦活剤に OK-432を用いた関係か ら,OK-432によって induceを受けるもの, (4) 測 定から結果判定までの期聞が短いこと, (5)検体 の扱い・操作が簡単で手軽で、あること,等を主眼 に決定した.特にNatural Ki
1
1
er activityと PHA Blastformationは activeな 免 疫 学 的 指 標として重要視した. N atural K
i
1
1
er (NK)細胞活性は,最近,免疫 学の分野で注目を集めているもので, ヒト,マウ ス, ラットなどの末梢血,牌, リンパ節等に存在 し,抗原やMitogenの刺激なしに, naturalに Ki
1
1
er活性を有するリンパ球であり16),特に腫蕩 免疫に深いかかわりをもった免疫学的監視機構の 一員として重要な役割を担っていると考えられて いる17) ただ,現在ではまだサンフ。ルの取扱い,測 定条件,年齢,性,その他の影響がかなり強く, 結果にある程度のばらつきが出る点は否定できな -1196い.我々は,サンプリングから分離,
I
n
c
u
b
a
t
e
,測 定までの時聞を厳密に規定し,測定誤差を極力低 くすべく努力した.PHA
幼若化反応はすでにかなり一般化した免 疫 機 能 の パ ラ メ ー タ で あ る .Phytohemoagg-l
u
t
i
n
i
n
CPHA)
はインゲン豆からの抽出物で, リ ンパ球の中でもT細胞系を非特異的に刺激して幼 若化を起こさせる.PHA
反応における幼若化率 は末梢血T c
e
l
l
一特にH
e
l
p
e
r
及びK
i
l
l
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rT c
e
l
l
のs
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b
p
o
p
u
l
a
t
i
o
n
ーの動きとよく相関しており, 乳癌患者の進行度と幼若化率18)をはじめとして癌 との関係を論じた報告も散見する19) 末血りンパ球総数が,栄養状態の低下に比例し て減少することはすでに知られた事実で、ある.問 題は末血リンパ球数がどの程度免疫能を表象し得 るかという点にあるが,末梢リンパ球数は患者の 一般状態や疾患によってかなり変動をみるため, これをもって生体免疫応答能力を推し測ることは 困難であるとの意見が多い2へヒト末梢血リンパ 球は,免疫機能の面より二つの細胞集団に分けら れ , 一 つ が 胸 腺 由 来 細 胞 ;Thymus d
e
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l
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からT c
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, 他が骨髄由来細胞;Bone marrow d
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m
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t
e
からBc
e
l
l
と 呼ばれる.Chand
世r
a
2 中のT c
e
l
l
比率及びび、絶対数に著しい減少が起こ る事を指摘している.橘ら叫 t工,この両細胞がマイ クロプレートの上できわめて定量的に測定できる ことを報告し,それ以来,両細胞の比率がより正 確な免疫応答力を示す指標として用いられてきて いる さらに最近では,免疫学の進歩によるリンパ球 表面抗原の解析が進み,表面分化抗原に対するモ ノクローナル抗体を用いて,各リンパ球のサブ セットが解析されるようになってきている.OKT
3
,OKT
4
,及びOKT8
は,P3X63 Ag AU
1
ミエ ローマ細胞とヒト末梢Tリンパ球もしくは胸腺細 胞で免疫したBALB/cJ
マウスもしくはCAF
1マ ウス牌臓細胞のハイブリドーマから産生されるモ ノクローナル抗体で、あり23),このOKT
シリーズ を用いてT c
e
l
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,H
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,S
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T c
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s
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e
t
をそれぞれ測定 した.そのうえで,末血総リンパ球数にOKT3%
を乗じてT
リンパ球総数を,OKT 4/0KT 8
にてH
e
l
p
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T c
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l
l
/
S
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s
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T c
e
l
l
比をそれぞれ求 め,免疫システムに関わる細胞聞のバランスを検 討した. 免疫学的皮膚反応は,生体がある種の外来刺激 に対してどの程度反応するかを皮膚局所の炎症反 応の程度で判定し,その生体の免疫応答能の指標 に す る も の で あ る . 用 い る 抗 原 は , 回 帰 抗 原(
R
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l
l
A
g
.
)
と処女抗原CNe
w
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e
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A
g
.
)
とに分けられ,回帰抗原としてはツベルクリ ンC
P
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D)等が,処 女抗原としてはD
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n CDNCB)
, Din
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b
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e
n
CDNFB)
等がある.一般に非 特異的細胞免疫能をみる場合,特に日本では日本 人のほとんどが感作を受けている関係から,PPD
が好んで用いられる.生体の免疫能を臨床的に評 価する場合,皮内反応は最も手軽でかつ有効な方 法として広く普及しており,栄養状態と皮内反応 を論じたレポートも多L、山 4) 今回,我々は免疫賦 活剤にO
K
-4
3
2
を用いた関係から,O
K
-4
3
2
製造に 用いられるS
t
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sP
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SU
株から分 離したP
o
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s
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c
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d
eCSU-PS)
を皮膚反応の抗 原とした.3
.
免疫賦活剤及び免疫賦活の方法について 免疫賦活剤として現在まで、に,細菌,植物,多 糖体,化学合成品,等種々のものが知られ,それ ぞれその作用機序の解析が進められている.一部 はすでに免疫療法剤として実際の臨床に用いら れ,特に代表的なものとしてBCG
生菌がある.1
9
6
0
年代,H
a
l
p
e
r
n
ら25)や, Old
ら26)のBCG
の網 内系機能充進作用と,腫虜増殖の抑制に関する報 告以来,BCG
は免疫賦活剤として,様々な研究が 重ねられてきている.生体免疫応答への機序とし ては,網内系の活性化26),T c
e
l
l
の活性化, リン フォカインの産生27),マクロファージの活性化28),N
a
t
u
r
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l
K
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l
l
e
r
の活性化29),サプレッサーT c
e
l
l
の抑制30)等が報告されている.一方,OK-432
は,1
8
6
8
年Bush
3リが丹毒に権患した悪性腫蕩患者の 腫蕩が退縮した症例を報告して以来注目されてい-1197-た溶連菌の制癌作用に対し,
1
9
6
6
年岡本,越村ら32) がA群溶連菌SU株菌体のBernheimer's basal medium懸濁液にペニシリンを加え,熱処理を行 なって,ストレプトリジンS
産生能を欠きながら 制癌作用をもたぜるべく開発した製剤で、ある.本 剤の免疫賦活能は,網内系の活性化紛,マクロ ファージの活性化34),Helper T cellの機能賦 活35),インターフエロン誘起作用36),NK活性の増 強37)等 が 考 え ら れ , 現 在 い わ ゆ る Biological response modifine (BRM)の中で最も強力な作用 をもっ物質として注目を集めている38) 特にO
K-432によって有意に改善をみる免疫パラメーター としては,末梢リンパ球数とそのサブセット39)及 びMitogen反応性40) NK活性37)等が報告されて いる. 免疫賦活剤 CImmunopotenciator)の最も効果 的な投与法に関しては未だ定説がない.若杉4)や 内田ら42)は,比較的大量(1-5KE)を漸増して投 与した際 3日自にNK活性が最高値を示し,そ れ以降は継続して投与を行なっても活性値は低下 する事 1週の間をおいて投与を行なうと再度活 性値は増加するが 2度目の投与は初回の活性増 加作用に及ばないこと,等を報告している.一方, SU-PS等の皮内反応の改善は,数週間以上の継続 投与で陽性化する場合も多いが43),今回の我々の 研究は,主として PHA幼若化反応に代表される T細胞系の活性と, NK細胞活性の比較検討に あったため, NK活性を最もよく activateすると 考えられる方法を採用した. 4.r
結果j に関する考察 まず癌のStageと栄養状態の相関についてで あるが,この種の報告はすでに数多くみられ,い ずれも Stageが高くなるほど栄養状態が低下す る旨を論じている.我々の結果でもこの傾向は はっきりしており,癌の進行に伴って栄養状態の 低下をみるのは事実である.ただ,癌が独自に栄 養障害を生じせしめるなんらかのToxinを産生 するものか,それとも進行に伴って経口摂取が不 十分になってくるために必然的に栄養低下をきた すものなのかについては結論がでない.西平ら8)44) は, BuzbyのPNP3)を用いて乳癌と食道癌を比較 検討し,食道癌が著しく PNIが高いことから,癌 患者の低栄養は,経口摂取不十分に伴なう2
次的 なものであろうと推察している.そこで 4週間 に わ た り 強 力 に 栄 養 改 善 を 行 な っ て み る と (47. 8:
t
11.2Cal
!
kg/day),全てのStageにおい て有意に改善が認められる.ただしStageの低い 方が改善率はよく, Stage III, IVでは全く改善を みない例も存在する点を考えると,0)癌が独自 に栄養を障害している.(ii)Stageの高い例は必 然的にEnergyのStoreが低く4
週間の高カロ リ一治療では未だ不十分である,等が推察される. しかし,いずれにしても,高カロリーの投与で, まがりなりにも有意差をもって栄養状態が改善す る事実は,癌患者の低栄養は,癌が直接栄養を障 害するというよりは,むしろ癌に擢患した結果, 栄養摂取が十分に行なわれなくなり,結果として 低栄養状態を呈すると考えるほうが妥当と思われ る. つぎに栄養状態と各種免疫パラメーターとの関 係に着目すると,i
結果」で明らかな如く,全ての 免疫パラメーターはし、ずれも栄養状態と相関を示 す.各免疫パラメーターの内容を検討すると, NK 活性, PHA-SI,及びSU-PSは免疫担当細胞の“機能"を, PLC, OKT 3, OKT 4, OKT 8は,免疫の “器質"を表わしているとも考えられる.今回,栄 養状態と最もよく相関したノミラメーターは, OKT
3
(Total T cell subpopulation)であったが, こ れは,“T細胞の数"がstaticな状態では“栄養" に最も左右される事実を示している.しかし,“生 体の免疫能"を論じる場合,単に担当細胞の数の 多少をもって,免疫能の activityの高低を論じる ことにはいささか無理がある(もっとも,極度に 数の低下をみる場合は,それなりに意味はあろう が).さらに1
群とI
I
群の聞ではいずれのパラ メーターも有意差がなかった事実は,ある程度以 上に栄養状態が悪化しなければ,生体の免疫能は ある程度維持されるであろうことも示唆してお り,興味深い. 免疫賦活前後でのパラメーターの動きは,少な くとも今回採用した賦活方法では, NK活 性 PHA-SIを除いていずれも低下する結果となっ-1198-た.今回は,
NK
及びPHA
~こ着目し,NK
活性,PHA-SI
を賦活するのに最も有効な方法を採用し たためで、あるが,このような短期間の集中賦活で, 末血リンパ球数,T c
e
l1等が減少する理由はさだ かではない.あえて推察すれば,NK
活性,PHA-S
1
は前述の如く免疫担当細胞の活性をみている ので,短期の刺激に対してもレスポンスを示すの に対し, リンパ球数は,単に末血中に存在する絶 対数のカウントにすぎないため,免疫賦活により 一時的に生体内で不均等分布を呈し,末血中の数 が減少する可能性は否定できない.一定期間免疫 賦活を継続した際に,末血リンパ球数, Tc
e
l1/Bc
e
l1比等が増加する旨のレポートはいくつかみら れる45) そこで,今回の免疫賦活で明らかな反応を示し たNK
活性とPHA-SI
について,栄養状態との関 係をさらに詳しく検討した.NK
活性と,PHA-SI
が,免疫賦活を行なった際,栄養状態によってか なり異なる反応を示したことは「結果」の如くで ある.なぜ、低栄養状態で,NK
活性はそれなりにレ スポンスを示すのに対して,PHA
はかえって抑 制を受けるのであろうか.内田ら刊も, OK
-
432に よるNK
活性の増加は,i
n
v
i
t
r
o
では,正常者も 癌恵者もかわりない旨の報告をしているが,NK
活性と,PHA-S1
が栄養状態によって差がみられ る以上,両系のEnergy
要求量の違い,アミノ酸量 にかかわる蛋白合成系の違い, ビタミン,微量元 素に関するEnzyme
,Coenzyme
系の違い,等が基 本的には反応の差の原因であろう.J
.R.O
r
t
a
l
d
o
ら46)47)はNK
細胞の長期培養に成功しているが, 培養の過程で表面抗原が変化をみせ,最終的には, 成熟した活性化Tリンパ球に特異的な抗原を発現 することから,NK
細胞がT
リンパ球の前駆細胞 である可能性を示唆している.すなわちNKc
e
l1 は発生系統からみてTc
e
l1よりp
r
i
m
i
t
i
v
e
な細胞 であり,そのため細胞のEnergydemand
が低い ことが栄養状態にかかわらず免疫賦活に対しレス ポンスを保つ原因であろうか.いずれにしても, 低栄養状態における免疫賦活がPHA
幼若化反応 をかえって低下させる事実は,免疫療法施行の際, 個々の症例の栄養状態が十分に考慮されねばなら -1199 ないことを示している. そこで, さらに栄養改善の前後でそれぞれ免疫 賦活を行なった場合について検討した結果, この 傾向はいっそう明確であり,栄養改善前に,NK
活 性はそれなりにa
c
t
i
v
a
t
e
されるのに対し,PHA-S
1
は栄養改善前には免疫賦活により明らかに抑 制を受け,一方,栄養改善後には有意にa
c
t
i
v
a
t
e
されており,外来に投与されたE
n
e
r
g
y
がPHA-S
1
を改善したと考えられる.これは,上述したE
n
e
r
g
y
demand
の違いにその原因を求めるのが 最も妥当と思われる.ちなみに免疫賦活前値は,NK
活性,PHA-S1
ともに栄養改善により有意に 値の増加をみており, 4週間の高カロリー投与が, 免疫能の改善に明らかに効果のあった事を示すも のである. 高カロリー投与前後でのNI
と免疫ノ4ラメー ターの相関を検討したものが結果7
.
であるが,高 カロリー投与前に,栄養状態と免疫能に一応の相 関があったものが,高カロリ)投与後に相関が低 下したり,なくなったりしている事実は,高カロ リー投与による栄養状態の改善と,免疫パラメー ターの改善が必ずしもパラレルに行なわれないこ とを示している. 高カロリー投与による栄養改善と免疫能の改善 を,主としてカロリー投与期間で比較検討してみ たものが結果の8
.
である.これにより,免疫能の 改善は栄養状態の改善に比してはるかに先がけて なされることがはっきりしており,投与された栄 養・カロリーが,免疫能の改善に優先的に配分さ れる可能性,もしくは,免疫系は,かなり低い準 位のEnergy
で十分に活性化されうる可能性を示 唆している.OKT4
は,T
c
e
l1S
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中の1
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と,OKT8
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とそれぞれ反応し,H
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,S
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l1を直接カウントできる.H
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T
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l
とS
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-p
r
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s
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T c
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l1との比(OKT4/0KT 8
)
は,細 胞性免疫調節機構のバランスを示すとされてお り48),OKT 4/0KT 8
比の低下は,機能的に免疫 抑制状態にあることを意味する.今回,このOKT
4/0KT 8
比を栄養改善の前後で比較した場合,有意、の差を認めておらず,低栄養状態におけるT cell系の機能低下は,免疫学的抑制状態にあるの ではなく,単にエネルギーの減少によるものと考 えられる.また,免疫賦活によってOKT4/0KT 8比 の 低 下 を み た 原 因 に つ い て は さ だ か で は な い が,伝染性単核球症等ではOKT4/0KT8比が低 下し,その理由は, OKT 8 (Supressor/Cytotoxic T cell) が増加するためであり,増加した OKT8 細 胞 の 多 く がOKlal+で、あり,生理的に活性化の状 態にあると考えられている48) これより,免疫賦活 により,一時的にでも OKT8の増加をみる可能性 は十分に考えられよう.一方,内田ら49)は,O K432 による PHA,ConA反 応 性 改 善 の 理 由 に Supres-sor T cellの減少をあげており,見解の一致をみ ないところではある. 総 括 と 結 語 我々は今回,免疫賦活剤O
K
-
432を用いて, 46例 の胃癌患者を対象として栄養状態と非特異性細胞 性免疫能について検討し,次の結果を得た. 1)悪性腫療の各Stageと 栄 養 状 態 は よ く 相 関 し,高カロリー投与によって各栄養状態は明らか に改善をみるが,Stageの高い群は, Stageの低い 群に比べて改善の程度はかんばしくない. 2)栄養状態と免疫パラメーターは相関を示す. 3)短期急性免疫賦活を行なった場合, NK活 性 , 及 びPHA幼若化反応は活性値の増加をみる が,末血リンパ球総数, OKT3等はかえって減少 をみる. 4)免疫賦活により,N K活性は栄養状態にかか わらず活性化されるのに対し, PHA幼 若 化 反 応 は,低栄養状態ではかえって抑制を受け,これは おそらく両系のエネルギー需要の違いによると思 われる. 5)高カロリー投与前,栄養状態と免疫能に相関 のみられたものが,高カロリー投与後には栢闘が なくなっており,栄養と免疫の改善がパラレルに 行なわれないことを示している. 6)高カロリー投与による免疫能の改善は,栄養 状態の改善に比べてはるかに早期に行なわれる. 7)低栄養状態における低免疫能は,免疫学的抑 制状態にあるのではなく,単にエネルギーの容量 が低いためで、あると思われる. 以 上 よ り , 低 栄 養 状 態 は , 直 接 に 生 体 の 細 胞 性 免疫活性にかかわっており,特にT cell系 は そ の 活 動 に 十 分 な エ ネ ル ギ ー を 必 要 と し て い る . 悪 性 腫 蕩 患 者 の 低 免 疫 能 は , そ の 原 因 が 主 と し て 低 栄 養 状 態 に あ る と 思 わ れ る こ と か ら , 外 科 治 療 の 対 象 と な る 悪 性 腫 虜 患 者 一 般 は も ち ろ ん , 外 科 補 助 療 法 と し て の 免 疫 療 法 施 行 時 に も , 高 カ ロ リ ー の 積極的投与は不可欠であると考えられる. 稿を終るにあたり,親身なる御指導,御校聞を賜わ りました東京女子医科大学第2外科学教室主任,織畑 秀夫教授に謹んで感謝の意を表します.また,終始御 助言をくださった教室の諸先生,及び直接御指導を賜 わった馬測原吾講師に心より御礼申し上げます. 検体のサンプりング,測定に快く協力してくださっ た,西新井病院消化器センターのスタッフ及びSpe -cial Reference Laboratoryの方々にもこの場を借り て御礼申し上げます. 本論文の要旨は,昭和58年 1月21日第25回完全静脈 栄養研究会,昭和58年 7月 7日第20回日本外科代謝栄 養学会,昭和59年3月30日第84回日本外科学会総会に おいて発表した. 文 献 1)林四郎:外科的代謝・栄養の現況と将来.外科 治療 45(5) 549---557 (1981)2) Cannon, P.R.: Protein metabolism and resis tence to infection. ] Mich Med Soc 43 323---325 (1944)
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