Title
B16メラノーマのメラニン生成における各種生理活性物質
の作用機構に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
佐藤, 一臣
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第504号
Issue Date
2009-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33645
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氏
名(本(国)籍)
学位
の 種類
学位
記 番 号学位授与年月
日学位授与の要件
研究科及び専攻
研究指導を受けた大学
学 位
論
文 題 目審
査委
貞
会
佐藤
一 臣(静岡県)
博士(農学)
農博甲第504号
平成21年3月13日
学位規則第3条第1項該当
連合農学研究科
生物生産科学専攻
静岡大学
B16メラノーマのメラニン生成における各種生理活
性物質の作用機構に関する研究
主査静岡大学
教
授鳥
山副査
静岡大学
教
授
森
副査岐阜大学
教
授吉
崎
副査信州大学
教
授佐々木
優
誠
夫一
範
晋 論 文 の内
容
の要
旨 メラニンは種々の動植物に存在し,体色の構成成分として重要である。特にヒトにおい ては日焼けの際に生成し,有害な紫外線を吸収することで皮庸の細胞を保護する役割を有 する。メラニンは色調の違うユーメラニンとフェオメラニンとに分類される。褐色から黒 色を呈するユーメラニンと赤色から黄色を呈するフェオメラニンを保有する割合によって 肌の色が決まる。 メラニン生成はアミノ酸の一種,テロシンを出発物質とする一連の化学反応によって進 行する。チロシンはチロシナーゼによる2段階の変化を受け,システインなどのSH化合 物の非存在下において,非酵素的酸化経路あるいは2種類のチロシナーゼ関連タンパク質 (TRP-1及び2)による酵素反応でインドール類を生成したのち,それらが重合して ユーメラニンとなる。非酵素的経路と酵素による経路で生成するメラニンの色調が違うた め,TRP-1及び2はメラニンの色調を調節する働きをもつとされる。 細胞におけるメラニン生成は,色素胞刺激ホルモン(α-MSH)がメラノソームに作 用することで起こる。α一MSHを受け取ったメラノソーム細胞内ではcAMP濃度が上 昇し,その結果,小眼球症関連転写因子(MITF)が発現する。MITFはチロシナー ゼおよびTRP-1,2の転写因子として働き,その結果,これらの3酵素の発現が起こ り,メラニン生成が克進する。 人体におけるメラニン生成の制御は,色素異常を引き起こす病気の治療ならびに化粧品 開発において重要なテーマである。現在,化粧品に配合されているメラニン生成阻害物質 は,ビタミンCなど,チロシナーゼ活性阻害剤であるため,その効果が一過的である。そ のため,持続的効果を有する生理活性物質の探索が必要とされる。 本論文では,新規のメラニン生成阻害物質として,ビタミンA類2種,ピロロキノリン-38-キノン(PQQ),5種の非ステロイド系抗炎症薬について報告し,それらの作用機構を明 らかにしている。α-MSHによりメラニン生成を誘発する実験系を用いた調査から,8 種類の生理活性物質はいずれもチロシナーゼ活性の阻害作用はないか,あるとしても,そ れ以外の作用点を有する物質であることが明らかとなった。 ビタミンA類はレチノイン酸とレチノールの効果を調べた。2種の薬剤で効果の違いは あるものの,いずれもチロシナーゼ活性には影響を与えず,チロシナーゼの発現抑制を引 き起こした。PQQも同様にチロシナーゼ活性を抑えることなく,チロシナーゼ発現を抑 えた。5種の非ステロイド系抗炎症薬として,アセチルサリチル酸,メフェナム酸,ニメ スリド,ジクロフェナク,ピロキシカムを用いて実験を行った。メフェナム酸,ニメスリ ド,ジクロフェナクにはチロシナーゼ活性阻害作用が見られたが,ピロキシカムを除く4 種の薬剤でチロシナーゼの発現阻害も見られた。これらのことから,以上の8種類の生理 活性物質は,今後,新規の持続型メラニン生成阻害剤として,製薬ならびに化粧品開発へ の応用が見込まれる。 本論文においては,8種類の生理活性物質がチロシナーゼ以外の関連タンパク質の発現 に及ぼす影響についても調査した。TRP-1の発現はチロシナーゼと同調することが多 いが,TRP-2についてはα-MSHによる刺激を受けても,その発現量があまり変動 せず,調査に用いた生理活性物質の影響もあまり受けなかった。ビタミンA類を除く6種 の生理活性物質においては,MITFの発現量の変化についても調査した。α-MSHに よりMITFの発現の一過的な上昇が見られ,それから遅れてチロシナーゼとTRP-1 の発現増加が見られたものの,TRP-2の発現はあまり増加しなかった。また,生理活 性物質添加後の変化についても,MITF,チロシナーゼ,TRP-1,2の間で,その 発現量の増減について一致する傾向が見られなかった。 以上のことから,チロシナーゼおよび関連タンパク質について提唱されてきた発現制御 機構について再検討する必要があると考えられる。α-MSH刺激によりスタートするシ グナル伝達経路がMITFの発現を引き起こし,その結果,チロシナーゼ関連3酵素の発 現を増加させる結果,メラニン生成が起こるというこれまでの機構に加え,チロシナーゼ 関連3酵素それぞれの発現について,MITF以外の転写調節因子が存在し,3酵素は別々 に制御されていると考える必要があると言える。 本論文では使用した5種の非ステロイド系抗炎症薬すべてにメラニン生成阻害効果があ ることがわかったが,非ステロイド系抗炎症薬の本来の働きであるプロスタグランジン生 成阻害とメラニン生成阻害との関係など,さらに研究を進めなければならない面もある。 しかし本論文は,医薬品並びに化粧品開発へ応用できる新規物質を提示し,さらに,メラ ニン生成におけるシグナル伝達および転写制御機構に新たな探求課題を提示したことで, 基礎科学および応用科学の両面において今後の発展的な研究につながっていくものと言え る。 審