Title
組換え体コレクチンの構造と活性に関する研究( 内容の要旨
)
Author(s)
江田, 宗司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第035号
Issue Date
1999-03-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2280
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 冨己 番 号 学位授与年月 日 学位授与 の 要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 江 田 宗 司 (京都府) 博士(農学) 農博乙第35号 平成11年3月15日 学位規則第4条第2項該当 組換え体コレクチンの構造と活性に関する研究 主査 信 州 大 学 教 授 黒 沢 辰 副査 岐 阜 大 学 教 授 中 村 征 副査 信 州 大 学 教 授 寄 藤 高 副査 静 岡 大 学 教 授 杉 山 公 副査 信 州 大 学 助教授 千 菊 一夫 光 男夫 論 文 の 内 容 の 要 旨 レクチンは、現在、植物レクチンと動物レクチンの2つに大別されている.動物レクチ ンのうち、内部にカルシウムイオン要求性の糖鎖認識領域(CRD)とコラーゲン様構造
をもつものは、コレクチンと呼ばれている.近年、血清中に存在するコレクチンであるマ
ンナン結合タンパク質(MBP)欠損症の人が繰り返し重篤な感染症に罷ることが報告さ れ、コレクチンが抗体非依存性の生体防御を担うと提唱されている.コレクチンは、CRD で微生物表面の糖鎖と結合して微生物を凝集させたり、オブソニンとして働くことが報告 されており、その生理的役割の一つとして、表面に糖鎖をもつ細菌、真菌類やウイルスな どの広範囲の微生物の感染防御の基礎免疫に関わっていることが示唆されている.しかし、 コレクチンがどのような作用機作で宿主の防御やアレルギー反応に関わっているのか、詳 しくはわかっていない.本論文は、ウイルスや細菌に対するコレクチンの作用機作を明ら かにするための研究について述べたものである. まず大腸菌での部分組換え体コレクチンの大量発現系を確立し、その系をもちいて、コ レクチンのうち、ウシコングルチニン、ヒト肺サーファクタントタンバク質D(ヒトSP-D)'、ヒトMBPの部分組換え体を大腸菌で調製した.コレクチンの構造は、4つのセグメ ントからなっている.N末端から高システイン領域、コラーゲン領域、ネック領域、糖鎖 認識領域である.部分組換え体はそのうちのコラーゲン様領域をほとんど含まないもので ある.それらの組換え体コレクチンと天然型コレクチンの生化学的、生物学的性質につい て比較検討した. ウシコングルチニン、ヒトSP-D,ヒトMBPの部分組換え体の構造解析を行った.架 橋実験およびゲルろ過クロマトグラフィーの結果から、これらはポリペプチド3本からな る三量体を形成していることが明らかになった.オリゴマー構造の形成はみられなかった. 糖結合活性についてしらべたところ、これら3つの部分組換え体コレクチンは濃度依存的、カルシウム依存的に糖に結合した.また、糖結合阻害試験より、それぞれ天然型コレクチ ンとほぼ同様の糖特異性を示した.コレクチンの細胞凝集活性について検討した.組換え 体コングルチニンは補体感作赤血球凝集活性を示したがその力価は天然型コングルチニン の約1/8-1/16に低下した.組換え体ヒトSP-Dは天然型と同じく大腸菌凝集活性を示した が、その力価は天然型の1/6であった.この細菌凝集活性はレクチン活性によるものであ ることが示された.これらのことから、細胞の凝集には三量体がさらに会合したオリゴマ ー構造が効果的に働くことが示唆された. 天然型のウシコングルチニン、ヒトSP-D、ヒトMBPは、インフルエンザウイルスの 赤血球凝集活性を阻害する.そこで、組換え型コレクチンの赤血球凝集抑制(Ⅲ)活性 を検討した.組換え体コングルチニンは、天然型と同じ程度にインフルエンザA型ウイル スの赤血球凝集能を抑制した.この活性はまた、レクチン活性によるものであることを明 らかにした.ヒトSP-DはHI活性を示さなかった.また、ヒトMBPのHI活性は低く、 ヒト血清におけるMBP平均濃度範囲ではHI活性は見られなかった.組換え体コングル チニンとと卜SP-D、MBPとのHI活性の相違を原因を明らかにするためにインフルエン ザウイルスに対するレクチンプロットを行った.その結果ウシコングルチニンは、インフ ルエンザウイルス表面のへマグルチニン(ttA)にのみ結合し、ヒトSP-D、ヒトMBPは、 へマグルチニンおよびノイラミニダーゼ(NA)に結合した.これらのことから、コング
ルチニンはHA上の特定糖鎖に結合しウイルスと細胞の結合を妨げることによって赤血球
凝集反応を阻害すると推測した.ヒトSP-D、ヒトMBPの天然型は、HAおよびNAの両 方に結合してオリゴマー構造により立体障害を引き起こし、インフルエンザウイルスの赤 血球凝集活性を阻害するが、オリゴマー構造をとれない組換え体は、ウイルスに結合はす るものの立体障害を引き起こせず、インフルエンザウイルスの赤血球凝集反応を阻害でき ないものと推測した. 審 査 結 果 の 要 旨 学位申請者江田宗司氏の学位論文審査が平成11年1月27日、13時より信州 大学農学部11番討議室において実施された.約30分間の公開論文発表会が行 われ、引き続いて質疑応答が行われた.その後学位論文審査委員会が行われた. 本研究の内容及び審査結果は以下のとうりである. 1. 研究成果と審査概要 糖鎖は、細胞どうしの認識や接着、細菌やウイルスなどの微生物が宿主細胞 に感染するときの宿主認識などに関与しており、生体において重要な役割を果 たしている.糖鎖に結合するタンパク質の一つにレクチンと総称されるタンパ ク質群があり、動物、植物、微生物中に広く分布している.最近、動物レクチ ンが感染症に対する基礎免疫に重要な役割を果たしている知見が報告されてい る.本研究は、動物レクチンであるコレクチンの、ウイルスや細菌に対する作用機作を明らかにするために行われた. 本論文は1∼5章で構成されている.◆1章の序論に続く 2,3,4章ではそれぞ れ3種類のコレクチンの部分組換え体の調製およびそれらの構造解析、さらに 糖結合活性、細胞凝集活性、赤血球凝集抑制活性等の生理活性について検討し ている.5章では結論が述べられている.口頭発表では、3種類の部分組換え コレクチンをまとめて、それらの調製及び構造の解析、生理活性の検討の結果
と結論について要額良く話が進められて、たいへん理解がされやすかったと評
価される. 研究成果では、先ず大腸菌での部分組換え体コレクチンの大量発現系を確立 したことが評価される.これにより、本研究のみならずコレクチンの構造と機 能に関する研究の進展が期待できる.コレクチンの構造のうちコラーゲン様構 造がほとんど欠損した部分組換え体コレクチンは、構造解析の結果ポリペプチド3本からなる3量体を形成するが、3量体のオリゴマー構造は形成しないこ
とを明らかにした.ついで、このような構造をした部分組換え体コレクチンの 生理活性をしらべて、天然型コレクチンとの異同を明らかにしている.これら の結果から著者は、コレクチンによる細胞凝集作用には、コラーゲン様領域に よるオリゴマー構造の形成が効果的に働くことを示唆した.また、コレクチン の抗インフルエンザ活性についても、3種の部分組換え体コレクチンの活性の 違いからその作用機作について重要な知見を得ている. 口頭発表後の質疑でも明確な応答がなされ、テーマ周辺の諸事項について充 分の学識を有することが認められた.また、応用面についての質問にたいして、 部分組換え体コレクチンの炎症抑制剤としての可能性について言及があった・ 論文発表後の審査委員会では研究の内容について好評価が与えられた・論文 については、記述ミスの指摘、加筆修正の指導があった・また論文の書き方に っいて注文がだされ、さらに入念な論文の仕上げを期することとした・これら の審査の結果本研究は、コレクチンの構造と機能についての研究分野に貴重な 知見をもたらすもので学術的に価値あるものと評価された・以上のことから、 審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の博士(農学)の 学位論文として合格と判定した・ 2. 学術論文の発表雑誌名 基礎となる学術論文①"Recombinant
bovine conglutinin,lacking the N-terminaland collagenousdomains,haslessconglutinationactivitybutisabletoinhibithaemagglutinationby influenzaAvirus",Biochem.J.,316(1996)43-48