経済政策の哲学
ネオリベラリズムのフーコーによる分析
県民コミュニティーカレッジ 哲学するとかは何か 第3回 2017/10/25 内藤敦之(大月短期大学)1.はじめに
• ネオリベラリズムとは何か • 議論が拡散傾向にあり、必ずしも明確ではない • 一応の定義:市場原理主義、市場自由主義とそれに基づく政策 (具体的には、規制緩和、構造改革、民営化、小さい政府等) • 市場原理主義:市場メカニズムに任せる、あるいは導入すれば、 経済的な厚生が改善される • 思想と政策のセットとしてのネオリベラリズム • 実際に行われている政策はその通りになっているのか? • 例:タクシーの規制緩和、格差の拡大ネオリベラリズム批判の難しさ
• 自由放任:本当にそうなのか? • 思想と政策のずれの存在 • 思想だけを批判しても、政策だけを批判しても、それ自体、意 味のある批判であっても、全体の批判になるとは限らない • 思想と政策のずれの検討が必要:困難 • フーコーの分析を用いて、やや遠回りであるが、検討していくミシェル・フーコー
• ミシェル・フーコー(1926-1984) • フランスの哲学者 • 『狂気の歴史』(1961)、『臨床医 学の誕生』(1963) • 『言葉と物』(1966)、『知の考古 学』(1969) • 『監獄の誕生』(1975) • 『性の歴史Ⅰ 知への意志』 (1976) • 『性の歴史Ⅱ 快楽の活用』『性 の歴史Ⅲ 自己への配慮』(1984)フーコー
• 『監獄の誕生』(1975):規律権力 • 『性の歴史Ⅰ 知への意志』(1976):生権力 • 『生政治の誕生 コレージュ・ド・フランス講義1978-1979年 度』(2004):ネオリベラリズムの分析 • 経済政策の哲学? • フーコー自身は哲学を行っていると考えていた • 「私のやっていることはさまざまな意味あいからして・・・、哲 学と関わりのある何かなのです。その哲学とは真理の政治学で2. 規律権力
• 『狂気の歴史』:狂人がどのように扱われるかを歴史的に検討、 正常と異常を巡る言説の分析 • 『監獄の誕生』:刑罰制度が主題 • 目的:「権力の技術論を、刑罰制度の人間化の、並びに人間認識 の原理に位置付けること」(フーコー、1975、訳28頁) • 権力のミクロ的分析:国家権力(マクロ的)とは異なる種類の権力 の分析君主権力
• 残酷な刑罰、処刑の公開、処刑の場でのお祭り騒ぎ • 傷つけられた国王の身体と国家の秩序を回復するための儀式と しての残虐な身体刑 • 君主権力:生殺与奪権 • 「死なせるか、それとも生きるままにしておくかの権利」(フー コー、1976、訳172頁)刑罰改革と監獄
• 残酷な刑罰への批判:処刑の場での騒ぎへの不安、盗みや詐欺な どの犯罪の多発、司法制度の複雑さと非効率性など • 啓蒙主義的な刑罰改革:近代的で合理的な刑罰体系の整備 • 実際には監獄を中心としたシステムが出現 • 監獄:法システムとは異なる規律訓練、規律権力に基づく規律権力
• 規律権力:身体を対象とし、身体に働きかける権力 • 「処罰は強制権の技術である。その処罰は、身体の訓育によっ て行為の中に習慣という形で残される痕跡とともに、そうした 訓育の方法を用いるのである」(フーコー、1975、訳133頁) • 「規律・訓練は、服従させられ訓練される身体を、<<従順な >>身体を造り出す」(フーコー、1975、訳143頁) • フーコーが挙げている例:監獄以外では学校、施療院、軍隊、工 場など • 学校における例:学校における「起立、礼、着席」と言う号令、 軍隊の訓練、飲食チェーン店の詳細なマニュアル規律訓練の技術
• 規律権力の具体的な技術、方法 ①空間における配置 (ⅰ)一定の空間への閉鎖、閉じ込め、(ⅱ)碁盤割り、格子化、グリッド化:個 人を空間において特定化、出欠の確認、独房など(ⅲ)機能的な位置決定:病 院内部の配置など、工場の分業、(ⅳ)序列:軍隊、学校など ②時間における配置 (ⅰ)時間割の規定、(ⅱ)「時間面での行為の磨き上げ」:例:軍隊における行 進の方法の詳細な規定、(ⅲ)「身体と身振りの相関化」、(ⅳ)「身体=客体 の有機的配置」:例:武器の操作方法の詳細な規定、(ⅴ)「尽きざる活用」:時 間の徹底的な活用 ③階層的な配置と試験:「段階的形成の編成」 (ⅰ)段階毎への分解、(ⅱ)分析的な図式に基づく編成:基本的な諸要素の訓練、 (ⅲ)試験:試験によって次の段階に進むかどうかを判定規律訓練の技術(2)
• 規律訓練の結果:「力の組み立て」:要素としての身体、時間の 組み合わせ、精確な命令組織 • 規律権力:身体を独房的(空間配分の作用)に扱い、有機的(活動 の記号体系化)になるように訓練し、その訓練は段階的形成(時 間の累積)によって行われ、最後に組み合わせ(力の組み立て)ら れて、成果を発揮 • 規律訓練の技術:一覧表の作成、操練の規定、訓練の強制、力の 組み合わせを確保するための戦術規律訓練の方法としての監視
• 規律訓練の方法、手段:監視 • 階層秩序的な監視:「視線の作用によって強制を加える仕組みを 前提としている」(フーコー、1975、訳175頁) • 監視される場としての監視施設:具体的には軍隊の野営地、病院、 学校と監獄 • フーコーの例:ガラス張りの寄宿舎の個室 • 規律訓練における処罰、制裁:「規格化」(フーコー、1975、訳 186頁)を目指す • 法体系の刑罰とは異なる • 例:学校や軍隊における罰パノプティコン
• パノプティコン(一 望監視方式) • 「権力の自動的な作 用を確保する可視性 への永続的な自覚状 態を、閉じ込められ る者にうえつけるこ と」(フーコー、 1975、訳203頁)を目 的とする規律訓練の一般化、拡張
• 封鎖としての規律訓練から機構としての規律訓練への変化 • 規律訓練の一般化、拡張: ①「規律・訓練の機能面の逆転」(フーコー、1975、訳211頁):「危険 の消去」ではなく、「個々人の効用の可能性を増加させることが求め られるようになる」(フーコー、1975、訳211頁) • 例:規律訓練の導入による工場における生産性の増大 ②「規律・訓練の諸機構の分散移転」(フーコー、1975、訳212頁 • 例:学校、病院、さらには宗教団体や慈善協会による「住民の<<規 律・訓練化>>」(フーコー、1975、訳213頁) ③「規律・訓練の諸機構の国家管理」(フーコー、1975、訳213頁)へ と発展規律訓練的な社会の成立
• 規律訓練的な社会の形成 ①「規律・訓練は人間の多様性の秩序化を確保するための技術である」(フーコー、1975、 訳218頁) • 三つの基準が存在:(ⅰ)「権力の行使をできるだけ経費のかからぬようにすること」、 (ⅱ)「この社会的権力の効果が最大限の強烈さをともなって達し、失敗もなく隙間も作ら ずに可能な限り遠くまで広がるように、措置すること」、(ⅲ)「権力の<<経済策による >>増大と、権力がそこで行使される装置の成果とを結び付けること」(フーコー、1975、 訳218頁) • 規律訓練社会の背景:(ⅰ)流浪人口の増大、(ⅱ)産業の発展による生産装置の増大、資本 蓄積 • 規律訓練:「人々の蓄積を管理するための・・・方法」:工場において、労働者を労働させる 方法 ②パノプティコンが<<反=法律>>としての規律訓練となっている、③臨床医学、精神医学、 児童心理学などの規律訓練の構成要素の発展 • 「今日の刑罰制度の理想点とは無限の規律・訓練であろう」(フーコー、1975、訳226頁)規律権力における監獄
• 規律権力における監獄:自由の剥奪だけでなく、矯正のための規律・訓練装置 • 「完全な<<矯正施設>>」としての監獄(フーコー、1975、訳235頁) • 監獄の特徴:①孤立化、②労働、③「刑罰の軽重を調整する一つの手段」(フーコー、1975、訳242 頁) • 犯罪者の扱いの変化:非行者の登場 • 非行者であるかどうか:刑罰の軽重を監獄内で判断する方法:犯罪傾向による判定 • 監獄外でも犯罪傾向のあるものは非行者として判定され、監視される • 監獄への批判:犯罪発生率が減少するわけではなく、再犯率も高い • フーコー:その点は織り込み済み: • 「いわゆる監獄の<<失敗>>は、・・・その運用の一部分であるのではないか」(フーコー、1975、訳 269頁) • 「監獄は、しかも一般的には多分、懲罰というものは法律違反を除去する役目ではなく、むしろそ れらを区別し配分し活用する役目を与えられている」(フーコー、1975、訳270頁) • その結果、「監獄は・・・病理学的に扱われる主体として非行者を生み出すことに成功した」(フー コー、1975、訳275頁)。3.生権力、生政治
• 『性の歴史Ⅰ 知への意志』(1976):「生権力」の登場 • 君主権力との対比 • 君主権力:生殺与奪権、「死なせるか、それとも生きるままにしてお くかの権利」(フーコー、1976、訳172頁) • 生権力:生命を経営・管理する権力、「生きさせるか死の中に廃棄す るという権力」(フーコー、1976、訳175頁) • 生権力の例:規律権力(人間の身体の解剖-政治学)、人口の生-政治学 • 生政治:人口の管理やそのための統計学の発達など • 生政治に関する説明は少ない。 • 生権力や生政治:『性の歴史』の2,3巻においては触れられず生政治と経済
• 生政治:経済の重要な役割 • 「統治理性の自己制限を可能にするその知的道具、計算のタイプ、合理性 の形式、それは繰り返して言うなら、法権利ではありません。18世紀の半 ば以来・・・それはもちろん、政治経済学です」(フーコー、2004、訳17頁) • 「経済理論・・・の重要性、価格と価値との関係に関する理論の重要性は、 今や根本的なものとなる何かがその理論によって示されるという事実に由 来します。その根本的な何かとはすなわち、市場が一つの真理のようなも のを明らかにすべきものとなるということです」(フーコー、2004、訳40 頁):市場が中心の議論 • 市場メカニズムによって決定される価格や生産量が基準となる • 市場メカニズムが重視される理由:「重農主義者やアダム・スミスなどに よって語られる自由とは、個々人に認められる法的自由であるよりもはる かに、自然発生的であること、つまり経済プロセスに内的で本質的なメカ ニズムのことであるからです」(フーコー、2004、訳75頁) • 自由、あるいは自由放任と市場メカニズムが結び付く:市場メカニズムの自由主義的統治
• 自由主義的統治:経済的な自由を軸にした統治 • 「新たな統治理性は自由を必要とし、新たな統治術は自由を消費す るのです。自由を消費するということはつまり、自由を生産しなけ ればならないということでもあります。・・・したがって新たな統 治術は、自由を運営するものとして自らを提示することになりま す。・・・一方では自由を生産しなければなりません。しかし他方 では、自由を生産するというこの身振りそのものが、制限、管理、 強制、脅迫に基づいた義務などが打ち立てられることを含意してい るのです」(フーコー、2004、訳78頁) • 単に自由にすると言うだけでなく、自由にさせるために様々なもの自由主義的統治の特徴
• 自由主義的統治の特徴: ①「危険の陶冶なくして自由主義はない」(フーコー、2004、訳82頁) • 「自由製造のコストを計算する原理は、・・・もちろん、安全と呼ばれるものです」(フー コー、2004、訳80頁) • 安全を保証するために危険を考慮する必要:貯蓄、公衆衛生、社会保障、保険など • 自由な空間、自由な場、あるいは市場の設定のための費用の存在 ②「管理、制約、強制の手続きの途方もない拡張、・・・あの大いなる規律の技術」(フー コー、2004、訳82頁) • 実際には規律権力的な技術が必要になっている ③「自由を生産し、自由を吹き込み、自由を増加させること、より多くの自由を導入する ことを、より多くの管理と介入によって行おうとするメカニズムが出現するということ」 (フーコー、2004、訳83頁) • 自由な空間、場を設定するためには介入が実際には必要とされる • そのため、「自由主義的統治術は結局、統治性の危機と呼びうるものを自ら導入する」統治性の危機と自由主義の危機
• 統治性の危機: ①「自由の行使の経済的コストの増大に起因しうるような危機」(フーコー、 2004、訳84頁): • 自由な場、空間を設定するための介入のコストが大きすぎる場合には、非 効率だとして批判の対象となっていく。 ②「自由の埋め合わせをするメカニズムのインフレーションによって引き 起こされることになる危機の形態」(フーコー、2004、訳84頁) • 例:独占禁止法などによる規制、介入への反発 • 「自由主義の危機」(フーコー、2004、訳84頁)の出現 • 「自由主義の危機は、ただ単に、政治の圏内における資本主義の危機の純 然たる投影、直接的な投影ではありません。・・・それは統治の一般的装置 の危機です」(フーコー、2004、訳85頁)オルド自由主義の分析
• 1970年代以降のいわゆるネオリベラリズムの分析ではなく、ド イツのオルド自由主義の分析から開始 • フーコー:ネオリベラリズムは、実質的には第二次世界大戦直後 から始まっていたと考えている • オルド自由主義:オイケン、レプケ、政治家としてはエアハルト • 内容:価格メカニズムの重視、価格の自由化 • ただし、実際に西ドイツで行われた政策は管理、規制、介入を 重視するいわゆるケインズ政策寄りオルド自由主義の背景
• オルド自由主義の背景:西ドイツ特有の文脈 • 「経済的自由の行使を保証することによって国家を正当なものとして創設しよう」(フー コー、2004、訳100頁)という考え • ナチズムの反省と冷戦体制によって規定される • 「現代ドイツにおいて、経済、経済的発展、経済成長は、実際には、何がしかの主権、 何がしかの政治的主権を、まさにその経済を機能させる制度及び制度的作用によって生 産しています。経済は、自らを保証するものとしての国家のために、何がしかの正当性 を生産しているのです」(フーコー、2004、訳101頁) • 「この自由主義システムの支持が、法的正当化以外に、過剰生産物として、恒久的コン センサスを生産するということです。そして、経済制度から国家へと至る系譜と対をな し、経済制度から体制およびシステムの包括的支持へと至る回路を生産することになる もの、それが、経済成長であり、その経済成長による安寧の生産です」(フーコー、2004、 訳102頁) • 西ドイツの政策目標:経済成長オルド自由主義における国家
• オルド自由主義における国家: • 「市場経済がそれ自体として、国家を制限するための原理では なく、国家の存在およびその行動を端から端まで内的に調整す るための原理となることを要求しよう」(フーコー、2004、訳 143頁) • 国家の調整原理としての市場 • ネオリベラリズムの市場原理主義の意味 • 「市場の監視下にある国家」(フーコー、2004、訳143頁)、ラ ディカルな経済国家経済国家の特徴
• 経済国家の特徴:それまでの国家との違い ①「市場の原理が交換から競争へとずらされる」(フーコー、2004、訳145頁)こと、 「競争は、価格の形成によって経済的合理性を保証します」(フーコー、2004、訳 146頁) • 競争の過程としての市場 • 競争によって形成される価格が合理的と見なされる • 独占ではなく、自由な競争状態が望ましいとされることになる。 ②単なる自由放任ではない • 「本質的な経済的論理としての競争は、注意深く人為的に整備されたいくつかの 条件のもとでしか出現しないし、その諸効果を産出しないでしょう」(フーコー、 2004、訳148頁) • 競争状態を実現するための条件の整備オルド自由主義における政策
• オルド自由主義的政策の特徴: ①独占は、必ずしも競争の結果ではなく、むしろ規制などの産物:反独占の介入は必要ない • コンテスタブル・マーケット論:独占企業が存在しても、参入が可能であれば、独占価格よりも低 い価格を設定するため、独占価格は必ずしも実現しない ②適合的行動: (ⅰ)調整的行動:「市場の諸条件に介入する」(フーコー、2004、訳171頁)行動であり、その結果、コ スト削減、利潤の減少や増大が生じる。 • オルド自由主義:「価格の安定と国際収支の均衡を第一の目標として掲げていました」(フーコー、 2004、訳214頁)。 • 完全雇用は目標ではない:戦後のケインズ政策とは異なる、現在のネオリベラリズム的経済政策の 原型、国際収支の均衡を目標とするための輸出主導型の経済成長 (ⅱ)秩序創設的行動:枠組政策:例:農業政策:人口、技術、学習と教育、土地の使用権、気候への介入と 手段により、「市場の秩序の組織化、競争秩序の組織化」(フーコー、2004、訳175頁)を図る (ⅲ)社会政策:平等化は目標ではなく、最低限の所得移転と民営化 • 「真の根本的な社会政策はただ一つ、経済成長のみである」(フーコー、2004、訳178頁)ネオリベラリズムの特徴
• ネオ・リベラリズムの特徴: • 「新自由主義的統治は、・・・社会に介入し、競争のメカニズムが、いかなる瞬間 においてもそして社会の厚みのいかなる地点においても、調整の役割を果たすこ とができるようにしなければなりません」(フーコー、2004、訳180,181頁) • 市場競争メカニズムが社会における調整メカニズムとなる統治 • 「獲得が目指されるのは、商品効果に従属した社会ではなく、競争のダイナミズ ムに従属した社会であるということです」(フーコー、2004、訳181頁) • 競争が最も重要なものとされる社会 • 「再構成されようとしているホモ・エコノミクス、それは、・・・企業と生産の人 間です」(フーコー、2004、訳181頁) • 企業という形式の重要性: • 「社会体の内部において、・・・「企業」形式を普及させること。これこそが、新法と経済の関係
• 法と経済の関係: • 「法的なものが経済的なものに対して形式をあたえる」(フー コー、2004、訳201頁) • 「最小限の経済介入主義と、最大限の法的介入主義」(フーコー、 2004、訳206頁) • 「法の支配と法治国家によって、統治の行動が、経済ゲームに 規則を与えるものとして形式化される」(フーコー、2004、訳 213頁) • 法律が市場競争のルールとして機能する統治性
• 統治性: • 「人間の行いを統率するやり方」(フーコー、2004、訳230頁) • 権力の技術、装置 • 「ミクロ権力の分析、あるいは統治性の手続きの分析」(フー コー、2004、訳230頁) • 国家権力とは異なるよりミクロな権力を対象にしているアメリカのネオリベラリズム
• アメリカのネオリベラリズムについての検討 • 「新自由主義は、右派においても左派においても活用され、再 活性化されているということです」(フーコー、2004、訳268 頁) • アメリカ新自由主義の特徴:人的資本理論人的資本理論
• 人的資本理論:人間を徹底的に経済的な主体として、非経済的な 領域も含めて、分析を行う理論 • 労働は人的な資本、一種の機械として見なされる • 人的資本への投資の特徴: ①「経済分析の前進」(フーコー、2004、訳270頁) ②非経済的な領域の分析、再解釈: • 特に労働の分析 • 非経済的な領域の例:人間が結婚するかしないかを経済的な行動人的資本理論(2)
• 新古典派経済学:「人間の行動様式についての分析であり、人間の行 動様式の内的合理性についての分析」(フーコー、2004、訳274頁) • 人的資本理論:「労働者を経済主体とすること」(フーコー、2004、 訳275頁) • 労働者:「機械とフローからなる総体」、あるいは「能力資本」 (フーコー、2004、訳277頁) • 企業としての労働者: • 「労働者自身が、自分自身にとっての一種の企業として現れます」 (フーコー、2004、訳277頁) • 「企業という単位からなる経済。企業という単位からなる社会」 (フーコー、2004、訳277頁)自分自身としての企業家
• 人的資本理論の分析例: ①教育投資: • 「経済成長政策は、・・・人的資本への投資のレヴェルおよび形 態を変容させようとするものとなります」(フーコー、2004、 訳286頁) • 経済成長において、一国の国民の教育水準が重要であるため、 人的資本の水準を上昇させる教育投資によって経済成長を図る ②移住:これはある国に留まるか、あるいは移住するかは、将来 どのくらいの収益=稼得が見込まれるかで決定されるネオリベラリズムと経済学
• ネオリベラリズム的な経済理論:
• 「経済学的格子によって、統治行動をテストすることが可能に なる」(フーコー、2004、訳303頁)
4.規律権力と生政治の位置付け
• フーコー自身の位置付け: • マクロな国家権力vsミクロな権力の技術、装置、統治性 • ミクロな権力の技術:生権力 • 生権力:様々なものが存在、規律権力と生政治が代表的 • ただし、必ずしも明確ではない、様々な解釈が存在 • 規律権力と生政治:歴史的には規律権力が先行 • ドゥルーズ:規律社会から管理社会への移行 • ただし、フーコー自身も述べているように、規律権力と生政治は共 存環境管理型権力
• 東浩紀:アーキテクチャーの権力、環境管理型権力vs規律権力 • 環境管理型権力:環境を整備することによって、人間を誘導 • 例:ファーストフード店の固い椅子、公園の寝そべることの出来 ないベンチ、最近の電車のシート(バーやシートの形状によって はみ出して座れない) • 新自由主義的統治と類似 • 二層構造:規律権力(国民国家)vs環境管理型権力(グローバル)生権力の位置付け
君主権力 生権力 ( マクロな権力 ) 国家権力 規律権力 生政治 ミクロな権力 二層構造 環境管理型権力 規律権力 グローバルな世界 国民国家ネオリベラリズムの意味
• 規律権力と生政治の共存 • ネオ・リベラリズム: • 単なる自由放任主義ではない、文字通りの市場原理主義 • 市場及び、競争のメカニズムが国家における主要な調整原理と なる • 市場に適合した企業家としての主体へと変化 • 残された課題:どのように評価するか、あるいは別のものを考え ることはできないのか参考文献
• 東浩紀、2007. 『情報環境論集』、講談社。 • 東浩紀、2017. 『観光客の哲学』、ゲンロン。 • 重田園江、2011. 『ミシェル・フーコー』、筑摩書房。 • ドゥルーズ、ジル、2007. 『記号と事件』、宮林寛訳、河出書房新社。 • 中山元、2010. 『フーコー 生権力と統治性』、河出書房新社。 • 檜垣達哉編著、2011. 『生権力論の現在』、勁草書房。• フーコー、ミシェル、1975. Surveiller et punir: Naissance de la prison, Gallimard. 『監獄の誕 生』田村俶訳、新潮社、1977年。
• フーコー、ミシェル、1976. Histoire de la sexulaite, Vol.1, La volonte de savoir, Gallimard. 『性 の歴史Ⅰ 知への意志』渡辺守章訳、新潮社、1986年。
• フーコー、ミシェル、2004. Naissance de la biopolitique: Cours au College de France
1978-1979, Seuil. 『生政治の誕生 ミシェル・ルーコー講義集成8』愼改康之訳、筑摩書房、2008年。 • フーコー、ミシェル、2004. Sécurité, territoire, population: Cours au College de France