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Vol.42 , No.1(1993)075蓮池 利隆「Khotan 本『アパリミターユル陀羅尼経』について (1)」

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Academic year: 2021

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(136) 印度學佛教學 研究第42巻第1号 平成5年12月

Khotan

『ア パ リ ミ タ ー ユ ル 陀 羅 尼 経 』 に つ い て(1)

利 隆

Khotan本 『ア パ リ ミタ ーユ ル陀 羅 尼 経』 の写 本 はSteinの 調 査 の 中 で発 見 さ れ た も ので あ る。 この小 論 で は中 期 東 イ ラ ン語 ・Khotan語 で書 かれ た 阿弥 陀 仏 関 連 の経 典 の一 つ で あ る 同経 典 につ い て検 討 し,さ らに,漢 訳 無 量 寿 経 の 中 で も 初 期 の もの と され る二 十 四 願 系 無 量 寿 経 『仏 説 阿 弥 陀 三 耶 三 仏 薩 楼 仏 檀 過 度 人 道 経』(以 下 『大阿弥陀経』)と の 文 献 上 の関 連 につ い て考 察 す る。 1.『 大 阿弥 陀 経 』 所 説 『二 十 四願 経 』 『六 波i蜜 経 』 との関 連 『大 阿弥 陀 経 』 が 呉 の支 謙(西 紀3世 紀)の 訳 に よ る も ので あ る こ とは,ほ ぼ 確 実 な こ と と され て い る。支 謙 は そ の 名 が示 す よ うに 月 支 国 と関 連 のあ つた 人 で あ る。 この こ とは 『大 阿弥 陀 経 』 が ギ リシ ャや イ ラ ン文 化 の影 響 が あ った と考 え ら れ る西 北 イ ン ドと何 等 か の 関連 を もっ て い た こ とを予 想 させ る。 こ の 『大 阿 弥 陀 経 』 の中 に,『 道 智 大 経 』 と 『六 波 羅 蜜 経 』 とが 既 存 の 経 典 と して引 用 され て い る こ とは,す で に平 川 彰 博 士 に よ つて指 摘 され て い る。 この二 つ の経 典 と並 ん で 『二 十 四願 経 』 とい う経 典 名 も本 文 中 に説 かれ て い る。 この記 述 か ら,『 大 阿 弥 陀経 』 が 成 立 した 当 時,す で に先 行 す る大 乗 経 典 と し て 『二 十 四 願 経 』 が あ つた とい うこ とが 推 定 で きる。Khotan本 『アパ リ ミタ ー ユ ル陀 羅 尼 経』 に は 阿 弥 陀 仏 と浄 土 が 説 か れ てい るが,そ の中 にい わ ば 発 達 段 階 の 『二 十 四 願経 』 お よび 『六 波 羅 蜜 経 』 と見 な され うる教 説 が 並 行 して説 か れ てい る。 2.陀 羅 尼 ・偶 の韻 律)/TVI.rつい て 『アパ リ ミタ ー ユ ル陀 羅 尼 経 』 あ る い は そ の原 典 が な ん らか の 形 で 『大 阿 弥 陀 経 』 所 説 の 『二 十 四 願 経』 『六 波 羅 蜜 経 』 に 関連 が あ った と推 定 す るた め に は, 各 文 献 の 関 係 を検 討 す る必 要 が あ る。 そ こで,梵 本 ・Khotan本 ・漢 訳(r大 乗無 量寿 経』 大正大蔵経第19巻No.936唐 代 ・失訳)に 等 し く収 め られ て い る陀 羅 尼 の部 分,お よび梵 本 ・Khotan本 に 見 られ る六 波羅i蜜に 関 す る偶 の部 分 につ い て 韻 律 の 面 か ら検 討 を進 め て い く こ とに した 。

(a)Khotan本 の 陀i尼 部 分 はtejau,arhite,samyatsabuddhayaが 『大 乗 無 量 寿経 』 の 陀羅 尼)/YV¥...は見 られ な い もの の 比 較 的 正 確 に 対 応 して い る。 梵 本 に は

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Khotan本 『ア パ リ ミ タ ー ユ ル 陀 羅 尼 経 』 に つ い て(1)(蓮 池) (137) そ れ 以 外 に も 対 応 し な い 部 分 が 見 られ る 。 陀 羅 尼 は 各 々 の 文 献 中 で も三 〇 回 程 繰 り返 さ れ,そ の 特 殊 な 表 現 形 式 か ら 考 え て も 何 等 か の 韻 律 を 含 ん で い る 可 能 性 が あ る 。 た だ し,梵 本 及 びKhotan本 の 韻 律 は そ の ま ま で は 規 則 性 を 持 つ て い る よ う7は 思 わ れ な い 。 し か し 興 味 深 い こ と に は,漢 訳 に な い 語 句 を 除 い たKhotan 本 陀 羅 尼 の 韻 律 を 調 べ て み る と 明 ら か に 特 定 の 韻 律 が 認 め ら れ る の で あ る 。 そ れ はErnst&ManuLeumannnの"Dasnordarische(sakische)Lehrg-edichtdesBuddhismus"の 中 で 詳 細 に 述 べ られ て い る韻 律 と一 致 す る。Leum-annは 仏 教 韻 文 の 韻 律 を 細 か く検 討 し,Khotanの 韻 律 の 体 系 に は ギ リ シ ャ の Hexameterと の 関 連 が あ る と して,そ れ が イ ン ド ・ヨ ー ロ ッパ の 韻 律 を 理 解 す る う え で 重 要 な も の で あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 こ のLemannの 説 に 対 し てH. W.BaileyやR.E.Emmerickは 否 定 的 で あ る 。 特 にEmmerickは 再 三 に わ た つ て 反 証 を 挙 げ て お り,"KhotaneseMetrics(again)"(AsiaMajorxiv.1, xviiii.2)の 中 で は そ れ が ア クセ ン トに よ っ て い る こ とを 主 張 し て い る 。 た だ し, 古Khotan語 に つ い て は 若 干 の 音 量 に よ る 韻 律 も あ っ た こ と は 認 め て い る よ うで あ る 。 そ こ で,漢 訳 に は な か つ た 語 句,tejau,arhite,samyatsabuddhayaを 除 い た Khotan本 陀 羅 尼 の 韻 律 をLeumannの 方 法 に 基 づ い て 検 討 し て み る と 特 定 の パ タ ー ン ら し い も の が 認 め ら れ る 。 さ ら に は,Khotan本 中,28回 繰 り返 さ れ る 陀 羅 尼 か ら適 合 す る 部 分 を 抜 き だ し て 合 成 的 に 韻 律 を 得 元 す る こ とが で き る 。

namau bhagavate aparamitayu jnana / U -- U - U - U --- U I 6+6+7 (B) suviniscitara jaya tathagataya / --U U -- U U- U- U I 5+9+7 B tadyatha aum sarvasaskaripasumde = / -U-- I -U- - U U - 715+6 C darmatte gaganesamamdagatta su = --U- I --u - U U - 715+6 C bhavasude mahaniyaparvare -U-- I U-- U- U- 715+6 C

svaha / -- 4 この 中 に はLeumannが 指 摘 す る韻 律型,B・Cが ほ ぼ 完 全 な形 で復 元 可 能 で あ る。 しか も,全 て の7moraの 後 の 意 味 上 の 区切 りも 明 らか に認 あ られ る。 た だ し,最 後 の4moraが 付 け 加 わ つ てい る点 が 若 干 相 違 して い るが,こ れ は ギ リ シ ャの韻 律 に起 因 す る もの と思 わ れ る。 ギ リシ ャ叙 事 詩 の独 吟 歌 の中,紀 元 前8 世 紀 ∼7世 紀 の イ オ ー ニ ア の詩 人 ア ル キ ロ コス の 断 片 に6+7―56+6+67+6+5 とい うパ タ ー ンが 見 られ る。 この韻 律型 で はEmmerickが 反 証 として 挙 げ た 詩 脚 部 の音 節 群 に も比 較 的 自 由 な パ タ ー ンが許 され て い た と見 られ て い る。 これ ら 410

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(138) Khotan本 『ア パ リ ミ タ ー ユ ル 陀 羅 尼 経 』 に つ い て(1)(蓮 池) の こ とか ら,Khotan本 『ア パ リ ミタ ー ユ ル 陀 羅 尼 経 』 の原 典 が 『大乗 無 量:寿 経 』 と して漢 訳 され た 時 に は,Khotan独 自 の韻 律 が 完 全 に守 られ て いた も の と 推 定 され る。 言 い 換}ば,漢 訳 には なか つたtejau,arhite,samyatsabuddhaya の語 句 は漢 訳 が お こな わ れ た 時 点,、すなわち唐代 よ りも後 に付加 された もの と見 な され る。 しか し,こ の 様 な 音量 を 基 に したKhotan独 自 の韻 律 は そ の後 の時 代 の流 れ の中 で次 第 に失 わ れ て い つた もの と考 え られ る。 (b)次 に,偶 の韻 律 を検 討 す る と,(a)と は 逆 の 現 象 を 見 る こ と が で き る。 Khotan本 『ア パ リ ミタ ー ユ ル陀 羅 尼 経 』 テ キ ス トそれ 自体 に梵 語 とKhotan語 の両 者 に よっ て六 波 羅 蜜 の偶 が 説 かれ て い る。 それ ぞれ の波 羅 蜜 に つ い て最 初 の 2行 は 梵 語 で 書 か れ,梵 本 とほ ぼ 一 致 して い る。 韻 律 も明 らか に11音 節 ×4で 長 短 音 節 が 一 定 の規 則 に従 つ て配 列 され て い る。 一 方,同 じ意 味 内容 をKhotan 語 で 述 べ る部 分 は 不 規 則 な配 列 とな つ て い る。 これ を陀 羅 尼 に試 み た方 法 で調 べ る と,厳 密 な 韻 律 型 に は な ら ない も の の,音 量 に よる型 を与}よ うと した形 跡 が 認 め られ る。 例 え ば 布 施 波 羅 蜜 で は616+6+71616+51514616+5L61717!3 とな る。 な お 詩 脚 部 の短 い3,4moraは 陀 羅 尼 で も見 られ た も ので,ギ リシ ャ叙 事 詩 の 独 吟 歌 が 詩 行 末 に 短 い 音 節 を 許 す こ と と関 連 す る もの と考 え られ る。 以 上,Khotan本 の 陀 羅 尼 ・偶 の韻 律 につ い て検 討 した が,両 者 の韻 律 間 に は いわ ば逆 の 方 向 が 見 られ る よ うに 思 わ れ る。 陀 羅 尼 で は 先 ず 独 自 の韻 律 型 が あ つ て,そ れ が 時 代 の 経 過 と と もに 失 わ れ てい った とい う方 向で あ り,偶 で は梵 語 の 韻 律 か らKhotan語 のそ れ へ の翻 訳 とい う方 向 で あ る。 この韻 律 上 の交 差 こ そ Khotan本 の特 徴 を表 す もの で あ り,先 に 述 べ た よ うな 『二 十 四 願 経 』 『六 波 羅 蜜 経 』 とい う異 な つた経 典,す な わ ち そ れ ぞ れ に 異 な つた 経 緯 の中 で 成 立 した 経 典 を 内容 と して い る こ とに 起 因 して い る も の と考 え られ る ので あ る。 (註は省略 しました) 〈キ ー ワ ー ド〉Khotan 語,ギ リシ ャ叙 事 詩,独 吟 歌 (龍谷大学大学院修 了) 409

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