• 検索結果がありません。

存在スキーマを基本とした日本語の自他交替の分析 ―場所の焦点化はどのような構文と意味を創り出すか―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "存在スキーマを基本とした日本語の自他交替の分析 ―場所の焦点化はどのような構文と意味を創り出すか―"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

存在スキーマを基本とした

日本語の自他交替の分析

―場所の焦点化はどのような構文と意味を創り出すか―

小柳昇(Oyanagi noboru)

東京外国語大学

国際日本研究センター特任研究員

[email protected]

第14回 日本認知言語学会(於京都外国語大学) 2013/09/21

ワークショップ「場の理論と文法現象」

1. 本発表の構成と主張点

■発表構成 (レジュメの節番号、※スライドで補足)

従来のアプローチではうまく説明できない自他交替を紹介(2節) それに対する先行研究の分析を紹介し、その問題点を指摘(※) 本研究が考える存在スキーマに基づいた事態認知モデル(3節) このモデルに基づいて冒頭の自他交替現象を説明(4節)

■主張点

モノ同士の因果連鎖: 主客分離を前提とした事態認知モデル + モノと場所の関係 : 主客一体の「存在スキーマ」と 「所有スキーマ」を組み込んだ 事態認知モデル

(2)

2. 従来の自他交替現象の見方

暗黙の了解

行為連鎖/因果連鎖の事態認知モデル

スル

ナル

アル

動作主

対象

(1) a.グラスが割れた。

b.太郎がグラスを割った。

行為連鎖モデルの限界

比較

スル

ナル

アル

動作主

対象

(1) b. 太郎がグラスを割った。

a. グラスが割れた。

(3) a. 桃の木に実が結ぶ。

b. 桃の木が実を結ぶ。

(3)

認知言語学の観点からの解決案と課題

解決案:全体と部分のトラジェクターの交替

スル

ナル

アル

動作主

対象

cf. 中村芳久(2000)「認知文法から見た語彙と 構文―自他交替と受動態の文法化―」

(3) a. 桃の木に実が結ぶ。

b. 桃の木が実を結ぶ。

Setting Subject Construction /Langacker(1990)

(ⅰ)

斜格名詞句が主語

になる場合

a. Tuesday saw yet another startling development.

b. This arena has witnessed many thrilling contests.

(ⅱ)

自動詞文「対象が主語」(a)/自動詞文「場所が主語」(b)

a. Fleas are crawling all over my cat.

b. My cat is crawling with fleas.

→分析:‘be the

setting

for crawling activity’

(ⅲ)

自動詞文「対象が主語」 (a)/他動詞文「場所が主語」 (b)

a. Brygida Rudzka stars in Fellini's new film.

(4)

外界の認知:図と地

背景

=地

前景

=図

背景

=地

前景

=図

言語形式 A

言語形式 B

BE

で所有表す言語と

HAVE

で表す言語

(池上1981)

②世界の言語を見ると、

HAVE

言語は少数派

(バンヴェニスト1983[1966])(Lyons1968)

③非対称性:

HAVE-possessiveをもつ言語にはBE-possessiveが

あるがその反対はない (Clark1978)

④歴史的発展

(山口2003)

HAVE

をもたない言語 ⇒

HAVE

をもつ言語

(活格型言語・能格型言語) (対格型言語)

★基本:BE存在

→ 拡張:BE所有

3. 存在と所有のつながり

(5)

3.1 本研究が考える<BE存在>と<BE所有>

z

y

存在

対象

y

に際立ち

所有

場所zは背景

z

z

y

y

場所

z

にも際立ち

← y と zの

二者の基本的な関係

実空間 所有空間

対象[y]の存在が

場所[z]を特徴付ける

ものとして把握

場所の焦点化(=際立ちを与える)の意義

所有

z

y

z

y

(ア)分離不可能所有

1. 全体⇔部分

2. 主体⇔側面・状態

3. 血縁関係:親⇔子

(イ)分離可能所有

4. 所有主体⇔所有対象

(6)

3.2 BE存在 から BE所有 への拡張 (図2)

z

y

①zにy

BE

②z(に)はy

BE

④人のy[

BE]

③zはy

BE

⑥z(に)はy

BE

⑦zはy

BE

⑤人の所/近くに

y

BE

主客一体化した 分離不可能所有 他動詞文 自動詞文 ある/いる ある/いる ある/いる ある/いる

3.3 拡張したBE所有 を組み込んだモデル(図3)

y

(i)使役

x

(iv)存在/状態

(iii)発生

(ii)移動/変化

y

y

z

z

z

z

z

z

拡張 BE存在①② 自動詞文 BE所有⑥ 自動詞文 BE所有③⑦ 他動詞文

下段

中段

上段

原因事象の読み込み 実空間・所有空間

(7)

4. 自他交替を引き起こす2つの事態認知

y

(i)使役

x

(iv)存在/状態

(iii)発生

(ii)移動/変化

y

y

z

z

z

z

z

z

BE存在①② 自動詞文 BE所有⑥ 自動詞文 BE所有③⑦ 他動詞文

下段

中段

上段

実空間・所有空間

自他交替の説明> 4.1 (iii)+(iv) 自他同形

(i)使役 (ii)移動/変化 (iii)発生 消滅 (iv)存在 非存在

y

x

y

y

z

z

z

z

z

z

実空間・所有空間 (3a)桃の木に実が結ぶ (7a)柳の木に芽が吹く (8a)汚泥からガスが発生する (7b)柳の木が芽を吹く (3b)桃の木が実を結ぶ (8b)汚泥がガスを発生する (2b)その仕事は危険を伴う (2a)その仕事に危険が伴う 自他両用動詞

(8)

自他交替の説明> 4.2 (iii)+(iv)自他異形

(i)使役 (ii)移動/変化 (iii)発生 消滅 (iv)存在 非存在

y

x

y

y

z

z

z

z

z

z

実空間・所有空間 (4a)山に地滑りが起こる (9a)街に昔の面影が残る (10a)太郎(に)は熱が出た (9b)街は昔の面影を残す (4b)山が地滑りを起こす (10b)太郎は熱を出した (11a)太郎は協調性を欠く (11a)太郎(に)は協調性が 欠ける

自他交替の説明> 4.3 (ii)+(iv)自他同形・異形(変化)

(i)使役 (ii)変化 (iv)状態

y

x

y

y

p

p

p

p

p

p

実空間・所有空間 (5a)川の水かさが増した (12a)台風の勢力が強まり~ (13a)太郎の心臓の鼓動が 速まり~ (12b)台風が勢力を強め~ (5b)川が水かさを増した (13b)太郎は心臓の鼓動を 速め~

x

y

y

y

p

p

p

p

p

p

p

y

p

y

(9)

自他交替の説明> 4.4 有対自動詞の両用動詞化

a. 他動詞文 :形態=他動詞 b. 自動詞文: 形態=自動詞 太郎が口を あける。 ・太郎の口が あく。 太郎が地面に手をつける。 ・太郎の手が地面につく。 太郎が席を かえる。 ・太郎の席が かわる。 太郎が仕事を 終える。 ・太郎の仕事が 終わる。 太郎が計算を 間違える。 ・太郎の計算が 間違う。 c. 他動詞文 :形態=自動詞 ・太郎が口を あく。 / あいて寝ていた。 ・太郎が手を 地面につく。 ・太郎が席を かわる。 ・太郎が仕事を 終わる。 ・太郎が計算を 間違う。

4.4 有対自動詞の両用動詞化

(i)使役 (ii)変化 (iv)状態

y

x

y

y

x

x

x

x

x

x

実空間・所有空間 (14a)太郎は席をかえた (14b)太郎の席がかわった (14c)太郎は席をかわった

x

y

y

y

x

x

x

x

x

x

地点A 地点B 主客分離

x

y

主客一体

(10)

主張点のまとめ

これだけでは自他交替現象を十分に説明できない

モノ同士の行為・因果連鎖

主客分離を前提とした事態認知モデル

モノと場所の関係

主客一体の

「存在スキーマ」と「所有スキーマ」を

組み込んだ事態認知モデル

ご清聴ありがとうございました。

 スライドで引用した文献(レジュメ参考文献リストにないもの) Clark, Eve V. (1978) “Locationals: Existential, locative, and Possessive Constructions,” in Miriam Butt & Wilhelm

Geuder. Universals of Human Language. 4: Syntax, 85-126. Stanford University Press.

Lyons, J (1968) Introduction To Theoretical Linguistics. Cambridge University Press.

中村芳久(2000)「認知文法から見た語彙と構文―自他交替と受動 態の文法化―」『金沢大学文学部論集言語・文学篇』20:75-103 山口巌(2003)「「もつ」の言語・「ある」の言語」『言語』32(11), 30-37.

(11)

BE所有 ④⑤の例(日本語以外)

■ヒンディー語:

(1)raam=kaa ek beta hai.

ラーム+属格後置詞+1+息子+BE

(2)rames=ke pass do kaare hai.

ラメーシュ+属格後置詞+そば+2+車 + BE

■ロシア語:

(3)У меня (есть) машина.

AT+私[生格]+BE+car

※生格の中に、所有格の意味関係もある

自他交替の説明> 4.2 (iii)+(iv)自他異形②

(i)使役 (ii)移動/変化 (iii)発生 消滅 (iv)存在/状態 非存在

y

x

y

y

z

z

z

z

z

z

実空間・所有空間 ・(その果物にビタミンがある) ・太郎に自信がなくなる ・(*太郎に)醤油が切れる ・太郎が自信をなくす/失う ・その果物はビタミンを含む ・太郎は醤油を切らした BE所有の拡張の意味のみ

(12)

自他交替の説明> 4.2 (ii)+(iv)自他異形(移動)

(i)使役 (ii)移動 (iv)存在

y

x

y

y

z

z

z

z

z

z

実空間・所有空間 ・人がトラックに危険物を積んだ ・トラックに危険物が*自動詞 (cf.積まれている) ・人が教室にAV機器を備えた ・その教室はAV機器を 備えている ・そのトラックは危険物を 積んでいる ・教室にAV機器が備わって いる

参照

関連したドキュメント

テキストマイニング は,大量の構 造化されていないテキスト情報を様々な観点から

不変量 意味論 何らかの構造を保存する関手を与えること..

2813 論文の潜在意味解析とトピック分析により、 8 つの異なったトピックスが得られ

日本語で書かれた解説がほとんどないので , 専門用 語の訳出を独自に試みた ( たとえば variety を「多様クラス」と訳したり , subdirect

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

これら諸々の構造的制約というフィルターを通して析出された行為を分析対象とする点で︑構

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので