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明海大学歯学雑誌 37‐2/1.秦泉寺

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(1)

試作レジンセメントの透明度がサーマルサイクル試験後の

レジン修復材料の色調へ及ぼす影響

長谷川義朗

§

高橋 洋子

日比野 靖

長沢 悠子

尾松

山賀谷一郎

粟田

島野偉礎轄

中嶌

明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科生体材料学分野 要旨:試作レジンセメントの透明度と支台歯材料の色調がサーマルサイクル後のレジン修復材料の色調に及ぼす影響を 調べた.実験には酸化チタンの配合量を変化させた 5 種類のレジンセメントを用いた.支台歯材料にはダイカラーチェッ カーを使用し,レジン修復材料には 2 つの色調のセラマージュを使用した.サーマルサイクルにて負荷をかけた試料をレ ジンセメント,支台歯材料と重ね合わせ分光測色器を使用し測定した.コントロールはサーマルサイクル試験前の試料と し,得られた結果から色差を算出した.サーマルサイクル試験後で酸化チタンの配合量が増加すると,∆L*,∆a*値に有 意差が認められたが,∆b*,∆E*ab値に有意差は認められなかった.このことから,セメント中への酸化チタンの配合 は,コンポジットレジンのサーマルサイクル試験に伴う色調変化を抑えることが示唆された. 索引用語:色差,透明度,コンポジットレジン,酸化チタン,サーマルサイクル

Effect of Transparency of Experimental Cements on the Color

of Indirect Resin Composite after Thermal Cycling

Yoshiaki HASEGAWA

§

, Yoko TAKAHASHI, Yasushi HIBINO,

Yuko NAGASAWA, Jun OMATSU, Taniichiro YAMAGA,

Satoru AWATA, Isokatsu SHIMANO and Hiroshi NAKAJIMA

Division of Dental Biomaterials Science, Department of Restorative & Biomaterials Sciences, Meikai University School of Dentistry

Abstract : This study examined the effect of transparency of experimental cements on the color of indirect resin

com-posite after thermal cycling. Experimental UDMA-based resin cements with five different transparencies were fabricated by adding 0.05,0.1,0.15 and 0.2 mass% TiO2powder. Experimental cement without TiO2 powder(0%)was also prepared.

Disk specimens(10 mm diameter and 1 mm thick)were prepared from bilayered indirect resin composite[CERAMAGE, Shofu,CM-59(incisal color,0.8 mm thick)and CM-A 3 B(body color,0.2 mm thick)].Disk-shaped abutment(10 mm diameter and 2 mm thick)was made from resin abutment material[Die Color Checker,Shofu,DC-1].A layer of the set cement(100µmthick)was placed between the indirect resin composite and the abutment discs. Both the color differences (∆ E*ab,n=5)between the specimens with and without the cement layer and the TP value of disc specimens were deter-mined using a spectrocolorimeter(PR 650 Photo Research)before(control)and after thermal cycling(5℃/55℃,1,000, 5,000,10,000 cycles).The results were statistically compared using ANOVA/Scheffè’s test.∆ L* value of the specimen af-ter thermal cycling was significantly decrease than the specimen before thermal cycling(p>0.05).∆ a* value of the speci-men after thermal cycling was significantly increase than before thermal cycling(p>0.05).There were no significant dif-ferences in∆ b* and ∆ E*ab values among all the specimens(p>0.05).Adding more 0.1 mass% TiO2powder in

experi-mental cement was effect of constraining to change in color of indirect resin composite after thermal cycling.

(2)

審美歯冠修復において歯冠色の再現だけでなく,審美 歯冠修復物を口腔内に装着した後もその色調が安定して 維持できることは重要である.審美修復材料であるコン ポジットレジンは半透明で天然歯に近い色調を再現でき ることが特徴である.しかしながら半透明性であるた め,その背景色である支台歯の色調やセメントの色調に 影響を受けるといわれている1, 2).また,コンポジット レジンは長期間口腔内で使用すると,食物摂取による pH の変化や温度変化,咬合による繰り返し荷重など, さまざまな影響3)を受ける.それによりコンポジットレ ジン表面から浸透した水分によりシランカップリング剤 の加水分解がおこり,フィラーの脱落やマトリックスレ ジンの吸水,亀裂などにより表面粗さが増加するといわ れている4).その結果,透明度が低下し,色調が変化す ることが報告されている5) . 近年,コンポジットレジンに配合されるフィラーの種 類,サイズも多岐にわたり,物性の向上からコンポジッ トレジン材料の寿命ものびてきたとの報告もある6, 7) その反面,前述の口腔内環境での使用を考慮するとコン ポジットレジン材料自体が劣化し色調が変化することは 避けられない.そのため,コンポジットレジンの色調に 関する研究として劣化試験による色調変化8)や物性に関 する研究として温度変化の影響による試験9, 10)などが行 われてきた.過去にコンポジットレジンの色調に関する 報告は多数みられ,その多くはコンポジットレジン単体 の色調に関する研究である11, 12).臨床的には天然歯の色 調を再現するために 2 種類以上の色調の異なるコンポジ ットレジンを使用することもあるが13),これまでに色調 の異なるコンポジットレジンを積層充頡したものや,そ れらを支台歯材料あるいはセメント層と重ね合わせた場 合の色調への影響を報告したものは少ない14, 15) そこで本研究は実際の修復物を想定し,ボディ色とイ ンサイザル色を積層充頡した試料についてサーマルサイ クル試験を行い,透明度の異なるレジンセメントがレジ ン修復物の色調に及ぼす影響について検討を行った.

材料と方法

1.実験材料 本実験ではセメントの透明度を変化させるために,ウ レタンジメタクリレートモノマー(UDMA)をベース モノマーとし,酸化チタンを配合した 5 種類の透明度の 異なる試作レジンセメントを用いた.試作セメントにつ いては松風(京都)により供給を受けた.なお透明度を 変化させるために配合した酸化チタンの配合量は,0, 0.05, 0.10, 0.15, 0.20 mass%とした. 上部レジン材料として歯冠用硬質レジンのセラマージ ュ [ イ ン サ イ ザ ル 色 ( CM-59 ), ボ デ ィ 色 ( CM-A 3 B),松風]の 2 種類を使用し,支台歯模型材料として ダイカラーチェッカー(DC-1,松風)を使用した.使 用した材料のロット番号を Table 1 に示す. ───────────────────────────── §別刷請求先:長谷川義朗,〒350-0283 埼玉県坂戸市けやき台 1-1 明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科生体材料学分野 Table 1 Materials used in this study.

Materials Manufacturer Lot No

Resin cement Experimental cement Shofu EPR 7 TiO2powder(mass%)

0, 0.05, 0.10, 0.15, 0.20 Indirect resin composite Ceramage Shofu 120311 120307 Color CM-59(Incisal color) CM-A 3 B(Body color)

Abutment materials Die Color Checker Shofu 070416 Color

(DC-1) Light-curing

modeling Liquid

Modeling Liquid Shofu 110606

Silane coupling system

Impava Porcelain Primer

(3)

Incisal color (0.8mm) Body color (0.2mm) Polished with #600 SiC sanding paper

Polished with alumina

Height 1.0mm

Width 10mm

Butyl tape Bilayerd indirect resin composite Coating with polyurethane resin

Height 20mm Width 25mm Width 10mm Width 25mm 2.実験方法 1)上部材料のサーマルサイクル試験前後の Translu-cency Parameter値(TP 値)の変化 (1)試料の作製 上部材料については実際の上顎中切歯唇側面における 修復物の作製方法を参考にメーカーの指示に従い作製し た. 試料は内径 10 mm,厚さ 1.0 mm のステンレス製金型 をスライドガラスの上に置き,はじめにボディ色を約 0.3 mm頡入した.頡入した試料を光重合器(ツイン重 合器,松風)で 3 分間重合し,金型より取り出した.そ の後,両面を SiC 耐水研磨紙#600 にて研磨し,試料厚 さを 0.2 mm に調整した.調整後,再び直径 10 mm,厚 さ 1.0 mm のステンレス製金型に置きその上から,光重 合型追加築盛液(モデリングリキッド,松風)を一層塗 布した.その後,ボディ色の上からインサイザル色を頡 入し,光重合器にて 3 分間重合させた.硬化後,インサ イザル色築盛面を SiC 耐水研磨紙#600, 800, 1000, 1200 の順で使用し削合し最終的に γ -アルミナ粒子懸濁液 (Micro polish, BUEHLER, Lake Bluff, IL, USA)を用いて 1.0µm, 0.3 µm, 0.05 µm の順でバフ研磨を行った.な お,試料の厚さは 1.0±0.05 mm となるように調整した (Fig 1). 作製した上部材料の研磨面のみをサーマルサイクル試 験機にて劣化するため専用モールドを作製した(Fig 2).試料をモールド内に挿入・固定し,研磨面以外への 水による影響を防ぐため,試料辺縁に防水処理を施し た. 試料をサーマルサイクル試験機(サーマルサイクリン グ K 178.東京技研,東京)を用いて繰り返しの温度変 化の負荷を加えた16, 17).温度変化の条件としては,55℃ のイオン交換水に 60 秒間浸漬,室温大気中に 30 秒間, 5℃ イオン交換水に 60 秒間浸漬,室温大気中に 30 秒間 の合計 3 分間を 1 サイクルとし,このサイクルを 1000 回(以下 TC 1000 と略す),5000 回(以下 TC 5000 と略 す),10000 回(以下 TC 10000 と略す)繰り返した. なお,サーマルサイクル試験前の試料をコントロール とし,試料数は 5 個とした. (2)TP 値の算出 TP値1, 18)の算出は,黒色板(L*=22.6, a*=−0.2, b*= 1.6)と白色板(L*=100.3, a*=−1.3, b*=1.2)を背景 色とし,光源 D 55, 2°視野,0°受光,−45°照明,波 長幅 4 nm にて,測定範囲を 20 nm ずつに区分し19),測

色は分光測色器(PR 650, SpectraScan!Colorimeter, Photo

Research, Chatswroth, CA, USA)を用いてサーマルサイ クル試験前後の試料の L*, a*, b*値を測定した.なお, L*, a*, b*表色系は物体の色を数値化する際に用いられ る表色系である.L*を明度,a*, b*を色度とし,+a*は 赤方向の色を示し,+b*は黄色方向の色を示す. 測定後,以下の式より TP 値を求めた. TP値=!(∆ L)2 +(∆ a)2 +(∆ b)2 "1/2 ∆ L=Lb−Lw,∆ a=ab−aw,∆ b=bb−bw b=黒色板,w=白色板 得 ら れ た 結 果 は 統 計 学 的 有 意 差 の 検 定 ( ANOVA / Scheffè,危険率 5%)を行い比較した. 2)セメント層を介在させたときのサーマルサイクルに よる色差の変化 (1)試料の作製 分離剤を塗布したステンレス製金型(内径 10 mm, 厚さ 2.0 mm)をスライドガラスの上に置き,支台歯模 型材料を頡入し,スライドガラスを置き圧接した. その後,光重合器で試料の上下面を各 3 分間重合し た.金型より取り出した試料を SiC 耐水研磨紙#600 を 使用して研磨を行った.研磨を行った片面にシラン処理 (インパーバーポーセレンプライマー,松風)を施し, 試作セメントを約 0.5 mm 盛り光照射器(グリップライ ト蠡,松風)を使用し出力 500 mW/cm2 の条件で 30 秒 Fig 1 Bilayerd indirect resin composite.

Fig 2 Schematic diagram of thermal cycling mold. The mold was made with epoxy based resin(Epofix Resin. Struers).

(4)

Cement layer (0.1mm)

White plate Abutment (2.0mm)

Bilayerd indirect resin composite (1.0mm) DC-1 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 TP v alu e Thermal cycling Control Thermal cycling Control TC1000 TC5000 TC10000 * * Control TC1000 TC5000 TC10000 E* 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 ⊿ E* ab 0 0.05 0.1 0.15 0.2

TiO 2 powder content (mass%) * * 間,光照射を行い硬化させた. 硬化後,SiC 耐水研磨紙#600 を使用し,セメントを 築盛した面を研削,研磨し,最終的に試料の厚さが 2.1 mmになるように調整した,また,同様に試作セメント を築盛させない試料も作製した(厚さ 2.0 mm). (2)測色 a.重ね合わせた試料の測色 セメント層を築盛した試料の上にイオン交換水をピペ ットにて 1 滴(約 0.02 g)を滴下し,その上から TP 値 測定時と同様に作製した上部材料の試料を重ねて測色し た1).その後,上部材料のみサーマルサイクル試験を行 い,同様にサーマルサイクル試験後に測色した.測色は 背景に白色板を用い,分光測色器にて JIS Z 872220),JIS Z 872921)に準拠し各試料の L*, a*, b*値を測定した.1 試 料毎のデータは,3 回測定の平均値とした.セメント層 を築盛していない試料についても同様に測定した.な お,サーマルサイクル試験前の試料を重ね合わせたもの をコントロールとし,試料数は 5 個とした(Fig 3). b.色差の算出 セメント層有りと無しの試料の L*, a*, b*値から色差 (∆ E*ab)を下記の計算式にて求め1, 18−21),レジンセメン ト層介在によるサーマルサイクル試験前と試験後の上部 材料の色調変化を求めた. 色差(∆ E*ab)=!(∆ L*)2 +(∆ a*)2 +(∆ b*)2 "1/2 ∆ L*=L*n−L*c, ∆ a*=a*n−a*c,∆ b*=b*n−b*c n=セメント層無しの値,c=セメント層有りの値 それぞれから得られた結 果 は 統 計 学 的 有 意 差 の 検 定 (ANOVA/Scheffè,危険率 5%)を行い比較した.

1.TP 値の測定 サーマルサイクル試験後の TP 値を Fig 4 に示す. TC 5000以上において TP 値はコントロールと比較し 有意に低い値を示した(p<0.05)2.色差の測定 サーマルサイクル後の上部材料を支台歯材料に重ね合 わせたときの∆ E*ab を Fig 5 に,∆ L*, ∆ a*, ∆ b*を

Ta-ble 2に示す. 1)∆ L*値について 酸化チタンの配合量が 0, 0.15, 0.2 mass%において, サーマルサイクル試験後にコントロールと比較して有意 に低い値を示した(p<0.05). 酸化チタンの配合量が 0.05 mass%において,サーマ ルサイクル試験数を変化させてもコントロールと比較し て有意差は認められなかった(p>0.05). 酸化チタンの配合量が 0.1 mass%において,TC 1,000 と TC 10,000 はコントロールと比較して有意に低い値を 示した(p<0.05). 2)∆ a*値について 酸化チタンの配合量が 0 mass%と 0.05 mass%におい Fig 4 TP value of the specimens after thermal cycling . *Significant difference(p<0.05)

Fig 3 Schematic diagram of test specimen for ∆ E * ab measurement.

Fig 5 ∆ E * ab values of specimen after thermal cycling . *Significant difference(p<0.05)

(5)

て,サーマルサイクル試験数を変化させてもコントロー ルと比較して有意差はみとめられなかった(p>0.05). 酸化チタンの配合量が 0.1 mass%以上の時,サーマル サイクル試験後にコントロールと比較して有意に高い値 を示した(p<0.05). 3)∆ b*値について 酸化チタンの配合量が 0 mass%において,サーマルサ イクル試験後にコントロールと比較して有意に低い値を 示した(p<0.05). 酸化チタンの配合量が 0.05 mass%以上の条件におい て,サーマルサイクル試験数を変化させてもコントロー ルと比較し有意差は認められなかった(p>0.05). 4)∆ E*ab 値について 酸化チタンの配合量が 0 mass%において,TC 10,000 の時,コントロールと比較して有意に高い値を示した (p<0.05). 酸化チタンの配合量が 0.05 mass%において,TC 1,000 の時,コントロールと比較して有意に高い値を示した (p<0.05). 酸化チタンの配合量が 0.1 mass%以上の条件におい て,サーマルサイクル試験数を変化させてもコントロー ルと比較し有意差は認められなかった(p>0.05)

近年,コンポジットレジンは配合されるフィラーの量 が増加し,機械的強さと高い審美性を持つ22)ものが開発 されてきたが,物性の劣化は避けて通ることができな い.特に口腔内での環境変化は厳しく,食物摂取による pH や飲料による温度変化は,充頡または装着されたコ ンポジットレジン修復物の劣化因子23)であるといわれて いる.今回,その劣化因子の 1 つである温度変化をサー マルサイクル試験にて行い,試作レジンセメントの色調 と支台歯材料の色調が劣化したコンポジットレジンの色 調に与える影響を検討した. サーマルサイクル試験は冷水と温水の温度変化を繰り 返し与えられる加速劣化試験である16, 17, 24).実際の口腔 内での温度変化範囲を想定して,冷水を 5℃,温水を 55 ℃とした.浸漬時間を各 1 分とし,最高 10000 回行っ た10).この条件は 1 日 10 回の温度変化があるとして約 3 年間に相当するという報告がある16).したがって,今回 の実験においては十分な劣化試験が行われていると考え ている. 一般にコンポジットレジンは,水中浸漬することでフ ィラー表面に処理されているシランカップリング剤の加 水分解が生じるという報告4)がある.また劣化にともな い表面のレジンマトリックスが崩壊し微小な亀裂やフィ ラーの脱落などがおこるため表面粗さが上昇し透明性を 失うという報告もある5, 24).今回の TP 値の結果におい ても,コントロールとの比較で TC 5000 以上の時,TP 値が有意に低下したのはコンポジットレジンの吸水によ り,シランカップリング剤の加水分解や,マトリックス への吸水,溶出により試料の表層から劣化が起きたため TP値が低下したと推察される4, 5, 24) 今までに,サーマルサイクル試験により物性は低下す Table 2 ∆ L*, ∆ a*, ∆ b* values of specimens after thermal cycling.

TiO2powder content(mass%)

0 0.05 0.1 0.15 0.2

Thermal cycling Mean(SD) Mean(SD) Mean(SD) Mean(SD) Mean(SD)

∆ L* Control TC 1000 TC 5000 TC 10000 0.0(0.3) −0.7(0.3) −0.6(0.2) −1.0(0.4) 0.1(0.3) −0.9(0.9) −0.2(0.4) −0.2(0.3) 0.5(0.3) −0.7(0.5) 0.0(0.5) −0.5(0.2) 0.7(0.2) −0.7(0.5) 0.0(0.3) −0.4(0.3) 0.9(0.3) −0.6(0.5) 0.1(0.2) −0.5(0.4) ∆ a* Control TC 1000 TC 5000 TC 10000 −0.1(0.2) −0.2(0.0) −0.1(0.0) −0.1(0.1) −0.3(0.1) −0.2(0.2) −0.1(0.0) −0.2(0.2) −0.6(0.2) −0.1(0.1) −0.1(0.1) −0.1(0.1) −0.7(0.2) −0.2(0.1) −0.2(0.1) −0.1(0.1) −0.8(0.1) −0.2(0.1) −0.2(0.1) −0.2(0.1) ∆ b* Control TC 1000 TC 5000 TC 10000 0.0(0.3) −0.6(0.1) −0.4(0.1) −0.6(0.2) −0.3(0.2) −0.7(0.5) −0.3(0.2) −0.7(0.4) −0.7(0.3) −0.5(0.7) −0.3(0.1) −0.5(0.5) −0.8(0.3) −0.6(0.4) −0.5(0.2) −0.6(0.4) −1.0(0.2) −0.8(0.5) −0.7(0.1) −0.9(0.3)

(6)

ることが過去に報告されている10, 25, 26).これは材料自体 に劣化が生じたため,物性が低下したと考えられてい る.今回のサーマルサイクル試験の回数はこれらの報告 をもとに設定した.従って,本研究で用いたコンポジッ トレジンの試料についても材料自体の劣化が十分考えら れる.従って,∆ L*, ∆ a*, ∆ b*, ∆ E*ab 値に影響が考え られる因子としてはコンポジットレジン自体の劣化,特 にコンポジットレジンの吸水とフィラーの脱落,さらに 酸化チタンの添加量の差があげられる. L*値は試料の明るさを意味している.本研究ではサ ーマルサイクル試験後のコンポジットレジンを透明度を 変化させたレジンセメントと支台歯材料に重ね合わせた 時,∆ L*値が低下していた.これはサーマルサイクル試 験によりコンポジットレジンの表面が劣化し,フィラー の脱落に伴う屈折率の変化や,吸水に伴うマトリックス レジン自体の色調変化が原因となり,サーマルサイクル 試験前後で∆ L*値が低下したものと考えられた. 本研究における ∆ a*値の結果は,酸化チタンの配合 量が 0.1 mass%未満の場合サーマルサイクル試験前後で 有意差がみとめられなかった. 今回の実験条件の厚さ 1 mm は実際の補綴物を参考に 決定したが,この厚さは背景色の影響を受けることが報 告されている27, 28)ことから,コンポジットレジンは透明 性が高いことを示している.本研究結果ではサーマルサ イクル試験後の TP 値が低下していたが,極端に低下し ているとは考えにくい.従って,サーマルサイクル試験 を行うことによる色調変化より,背景色の影響が強く現 れ,∆ a*値に差が生じたのではないかと考えられる.一 方,酸化チタンの配合量が 0.1 mass%以上の場合,サー マルサイクル試験前後で有意差が認められた.これは酸 化チタンの配合量が増加したことで,レジンセメント自 体の白色が増加し,コンポジットレジンの背景色が明る くなったことが要因としてあげられる.今回の実験結果 より,酸化チタンの配合量が 0.1 mass%程度では,酸化 チタンの配合の影響(酸化チタン自体が白色であるた め,その遮蔽効果)は少ないことが明らかになった. ∆ b*値に関しては,酸化チタンを配合しない場合では サーマルサイクル試験前後で差が生じた.これは上部材 料のコンポジットレジンの劣化(例えばコンポジットレ ジンの吸水など)によるものと考えられる.一方,酸化 チタンを配合すると,サーマルサイクル試験前後では有 意差は認められなかった.本来はサーマルサイクル試験 によりコンポジットレジンの劣化に伴う色調の影響が大 きいはずであるが,本試験では上部構造物としてのコン ポジットレジンのみにサーマルサイクル試験を行ってい る.このコンポジットレジンに対して酸化チタンの配合 量を変化したセメントを築盛した試料をかさねあわせて 測定していることから,配合している酸化チタンの影響 が懸念される.酸化チタンは白色を呈する酸化物であ る.従って,本研究の測定条件では白色の影響が十分考 えられる.重ね合わせの試料では上部構造物のコンポジ ットレジンの色調変化の影響が考えられるものの,測定 条件に加えて酸化チタンの配合による影響が強く生じ, 重ね合わせの試料に関してはサーマルサイクル試験前後 から得られる ∆ b*値に差が生じなかったのではないか と考えられる. 酸化チタンの配合量を変化させた場合,サーマルサイ クル試験前後の ∆ E*ab 値に有意差は認められなかっ た. 酸化チタンは色調遮蔽性があるため,重ね合わせの試 料の場合,支台歯材料の色調が上部構造物のコンポジッ トレジンの色調に与える影響を抑えることが考えられ る.また,先に述べたようにコンポジットレジンは透明 性を有する材料である.サーマルサイクル試験で劣化さ せても,重ね合わせた試料の背景色に影響を受けること が考えられる.また,酸化チタンの配合量が増加する と,酸化チタン自体の白色の色調が影響することも考え られる.いずれにせよ,背景色と酸化チタン自体の白色 の色調の個々の影響,あるいは双方の影響が生じ,∆ E* ab値に差が認められなかったのではないかと考えられ る. 本実験結果より,サーマルサイクル試験を行うことに より,上部構造物のコンポジットレジンの TP 値は低下 する結果が得られ,サーマルサイクル試験により,コン ポジットレジンの色調変化が認められることが明らかに なった.酸化チタンの配合量を変化させた場合では,そ の効果は 0.1 mass%以上の添加が必要であることが明ら かとなった.しかしながら,実際の臨床では支台歯の色 調が症例により十分に異なることが予想される.従って 支台歯色を変化させた条件に関してもサーマルサイクル 試験,ならびに酸化チタン配合量の影響について検討す る必要性があることが示唆された.

酸化チタンの配合量を変化させた試作レジンセメント が,サーマルサイクル試験後の上部材料の色調に及ぼす 影響について検討を行ったところ,以下の知見を得た. 1.コンポジットレジンにサーマルサイクル試験を行う

(7)

と,TP 値は低下した. 2.今回の実験条件において,セメント中の酸化チタン の配合量が 0.1 mass%以上の場合,コンポジットレジ ンを重ね合わせた時の,∆ L*, ∆ a*値はサーマルサイ クル試験の影響を受けたが,∆ b*, ∆ E*ab 値に変化は なかった. 以上のことから,今回の実験条件において,レジンセ メント中への酸化チタンの配合量が 0.1 mass%以上であ れば上部材料のコンポジットレジンのサーマルサイクル 試験に伴う色調変化を抑えることが示唆された. 本研究を行うにあたり,実験機器を使用させていただい た明海大学歯学部機能保存回復学講座保存修復学分野 片 山 直教授に感謝いたします.また,実験材料のご提供を いただいた(株)松風研究開発部の関係各位に感謝いたし ます.

引用文献

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15)Hata U, Kawauchi D, Yamamura O and Fujiwara S : Chro-matic study of all-ceramic restorations−influence of the color of the abutment tooth and cement on the color tone of copings−. 岐阜歯会誌 32, 13−20, 2006 16)宮崎 隆,鈴木 暎,宮治俊幸:サーマルサイクルが臼歯 用コンポジットレジンの機械的性質に及ぼす影響.歯科材料 ・器械 5, 187−195, 1986 17)稲用隆史,宮崎 隆,大峰由美子,鈴木 暎,宮治俊幸: サーマルサイクルが臼歯用コンポジットレジンの表面性状に 及ぼす影響.歯科材料・器械 5, 644−652, 1986

18) Paravina RD , Kimura M and Powers JM : Evaluation of polymerization-dependent changes in color and translucency of resin composites using two formulae . Odontology 93, 46 − 51, 2005 19)市村 葉:歯科用陶材におけるコンピューターカラーマッ チング法についての検討.日歯保存誌 40, 336−351, 1997 20)JIS Z 8722−2000.色の測定法.日本規格協会 21)JIS Z 8729−1994.色の表示法.日本規格協会 22)池田正臣,土平和秀,二階堂 徹,佐野滋信,安江 透, 矢作光昭,石綿 勝,田上順次:各種硬質レジンのハイブリ ッドセラミックスに対するせん断接着強さ.日歯技工会誌 24, 117−120, 2003 23)川口 稔,福島忠男,宮崎光治:歯科用コンポジットレジ ンの劣化関与因子 1.試作コンポジットレジンの加速劣化 試験.歯科材料・器械 12, 29−33, 1993 24)川口 稔,福島忠男,宮崎光治:歯科用コンポジットレジ ンの劣化関与因子 2 劣化コンポジットレジンの SEM 観 察.歯科材料・器械 13, 116−121, 1994 25)平林 茂,野本理恵,原嶋郁郎,平澤 忠:熱サイクルに よる各種光重合コンポジットレジンの耐久性評価.歯科材料 ・器械 9, 53−64, 1990 26)野本理恵,平澤 忠:沸騰水浸漬および熱サイクルによる 各種インレー用コンポジットレジンの耐久性評価.歯科材料 ・器械 11, 647−655, 1992 27)藤崎宜子:エステックスTM オペークの背景色の遮蔽効果と 色差の偏移.日歯保存誌 46, 332−342, 2003

28)Powers JM, Dennison JB and Lepeak PJ : Parameters that af-fect the color of direct restorative resins. J Dent Res 57, 876 − 880, 1978

Table 1 Materials used in this study.
Fig 2 Schematic diagram of thermal cycling mold. The mold was made with epoxy based resin(Epofix Resin
Fig 3 Schematic diagram of test specimen for ∆ E * ab measurement.

参照

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