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目次 2005/08/28 はじめに 第 1 章現状 1. 少子化とは少子化という言葉人口減少社会の到来 2. 出生数と合計特殊出生率の低下出生数と合計出生率の動向年少人口の減少 3. 少子化への姿勢政府の少子化への姿勢各国の少子化事情 第 2 章原因 1. 少子化の原因晩婚化 未婚化費用負担の増大

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○目次

はじめに 第1章 現状 1.少子化とは 少子化という言葉 人口減少社会の到来 2.出生数と合計特殊出生率の低下 出生数と合計出生率の動向 年少人口の減少 3.少子化への姿勢 政府の少子化への姿勢 各国の少子化事情 第2章 原因 1.少子化の原因 晩婚化・未婚化 費用負担の増大 パラサイトシングル 働く女性の増大 理想の子ども数と実際の子ども数との差 婚外子の割合(シングルマザー) 家庭を築くことや生命の継承の大切さの欠如 2.少子化の原因の背景 仕事と育児両立の困難 経済的に不安定な若者の増大:フリーター・ニート、低い賃金収入、 失業・転職率の上昇etc.. 地域や家庭での子育て協力の低下 価値観の変化 第3章 社会・経済的影響 労働人口の減少 高齢化 経済成長の遅れ

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第4章 施策・目的 若者の自立 子育ての新たな支援 仕事、家族の両立の支援 働き方の見直し 第5 章 総論

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はじめに

今回、少子化問題をなぜ選んだかというと、現日本の最重要問題であり、ニュースや新 聞でも大々的にとりあげられ、年金・高齢化社会問題などとともに世の中の人々の少子化 に対する意識はとても高くなっている。 また、自分が一人っ子であるということで少子化社会に既に関わりをもっている。少子 化問題は、少子化からくる労働人口の減少など雇用・労働問題にも影響を及ぼすものであ る。 今後、少子化社会を乗り越えて経済は成長し続けることができるのか、成長し続けるた めには何ができるのか、私たちは少子化問題からくる社会的ニーズにこたえることができ るのかなどを考えたいと思ったからである。同時に高齢化社会の負担を私たちの世代がき ちんと背負えるようにも少子化問題は考え、解決しなければならない問題である。 私たちの将来がかかっている重要な問題である。 また、論文は第5 章から編成されており、第 1 章では少子化の現状、第 2 章では原因、 第3 章では社会・経済への影響、第 4 章では施策・目的、第 5 章では全てをふまえての総 論となっている。現在、第 2 章の原因まで研究が進んでいるのでこれから、少子化がどの ような影響を社会・経済に及ぼすか考えていきたい。

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第1章 現状 1 章では、少子化とは何か、また今現在、日本はどのような状況にあるのかなど国際比較を 深めつつ、現状把握をはっきりしていきたいとおもう。 1.少子化とは? ・少子化という言葉 少子化とは出生率(birthrate)の低下によって子どもの数が減少することである。すな わち子どもがすくなくなることである。 世界保健機構(WHO)によれば、合計特殊出生率12.08 を下回ると総人口は減少に向 かうとされ、この数字を目安として少子化と呼ばれることになっている。現在の減少傾向 がこのまま続けば、日本の人口は2006 年をピ-クとし、以後は減少すると予想されている。 少子化という言葉は最近になって作られた造語で、1992 年度の国民生活白書で使われた ことで広まった。少子化が進んでしまうと将来、団塊世代2を中心とした人口が高齢化し、 人口構成はいびつになる。将来を担う今の若者は重い税金・医療保険等の国民負担で苦し むことになる。労働人口は減り続け、産業や経済は衰えてゆく。農業や漁業・林業・小売 業などは若い労働力がいなくなり、産業としても成立しなくなる。社会保障体制の維持な どに対しても深刻な人口不足(underpopulation)が懸念される。 ・人口減少社会の到来 我が国の人口は2006 年に 1 億 2,774 万人でピークに達した後、死亡数が出生数を上回り、 人口が減少していくと見込まれている。これは少子化を理由に、単に相対的に高齢者の比 率が増えるという段階を過ぎて、少子化によって人口が減る段階に入るということを示し ている。「将来推計人口」の中位推計によると、将来の人口は2025 年には 1 億 60 万人にな ると予測されている。 人口の年齢構成も少子化によって大きく変わる。年少人口(0~14 歳)が総人口に占める 割合が低下するだけでなく、生産年齢人口(15~64 歳)が総人口に占める割合も低下して いくことが見込まれる。2000 年時点の生産年齢人口は 8,622 万人で、総人口に占める割合 は68.1%となっているが、これが 2050 年にはそれぞれ、5,389 万人、53.6%にまで低下す ることが見込まれている。生産年齢人口の減少は労働投入の減少を通じて経済成長の制約 となると考えられるが、上でも述べたように、総人口に占める生産年齢人口の割合の低下 は、支え手の減少を通じ、社会保障制度の基盤を不安定なものにすることが懸念される。 2.出生数と合計特殊出生率 ・出生数と合計特殊出生率の動向 我が国の出生率の推移をみると、終戦直後の1947 年から 49 年にかけて非常に出生数の 多い年が続き、第1 次ベビーブーム3といわれ、年間の出生数は約270 万人であった。その 1 合計特殊出生率とは、15 歳から 49 歳までの女子の年齢別出生率を合計したものをいう。 2 1 次ベビーブーム期に生まれた世代。 3 ベビーブームとは、赤ちゃんの出生が一時的に急増することをいう。日本では 1947 年から 49 年と 1971 年から74 年の 2 回の時期をベビーブーム期と呼んでいる。

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後50 年代は減少したものの、第 1 次ベビーブーム期に生まれた、いわゆる「団塊の世代」 が結婚、出産期に入った60 年代後半から 70 年代前半に 1 次期出生数が再び、約 200 万人 となり、増加した。(第2 次ベビーブーム)しかし、第 2 次ベビーブームをピークに 1975 年以降に出生数は200 万人台を割り込んで、次第に減少していく。1984 年には 149 万人と、 150 万人を割り込み、その後も減少して 2003 年には 112 万人の出生数と過去最低の数値と なった。出生数は、第1 次ベビーブーム期の 4 割、第 2 次ベビーブーム期の 6 割という低 水準である。 合計特殊出生率の推移をみると、第1 次ベビーブーム期では 4.00 を超える水準であった が、1950 年代前半に急減し、50 年代後半から 70 年代前半の第 2 次ベビーブーム期まで 1996 年の「丙午4」の1.58 という最低の水準を乗り越え、2.1 前後の安定した数値で推移した。 1974 年に 2.05 と、我が国での人口置き換え水準5である2.08 よりも低くなって以来、現在 に至るまで人口置き換え水準よりも低い値が続くこととなった。それでも、第 2 次ベビー ブーム期以降、80 年代半ばまでは、合計特殊出生率が 1.8 台で比較的安定的に推移してい た。しかしオイルショックを経て、高度成長期が終焉を迎えた頃から出生率は徐々に低下 し、1989 年に出生率が 1.57 という戦後最低の数字をだした。1990 年には「1.57 ショック」 という言葉まで生まれたのである。 2005 年 6 月 2 日の日経新聞での厚生労働省の発表した 2004 年の人口動態統計によると、 出生率は過去最低の1.29 まで落ちた。 図:出生数及び合計特殊出生率の推移 4 「丙午」とは、干支の一つで 60 年に 1 回まわってくる。丙午に関する迷信が、出生率に影響を与えたも のと考えられている。 5 人口置き換え水準とは、合計特殊出生率がこの水準(2.08 前後)以下になると人口が減少することにな るという水準のことをいう。

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・年少人口の減少 出生数の減少は、我が国における15 歳未満の年少人口の減少をもたらしている。 第 2 次世界大戦後の我が国の年少人口および総人口に占める割合の変化をみると、1950 年には約3,000 万人と、総人口の 3 分の 1 を超えていたが、第 1 次ベビーブーム期以降の 出生数の減少から、1970 年まで低下を続け、総人口の約 4 分の 1 となった。その後、第 2 次ベビーブーム期の出生児の増加により若干増加したが、70 年代後半から再び減少傾向と なり、1997 年には、65 歳以上人口よりも少なくなった。 図:年少人口と老年人口の動き 3.少子化への姿勢 ・政府の少子化への姿勢 現在政府の少子化への姿勢は、少子化を食い止めようとする「阻止論」と、少子化を受 け入れ、その上で対応していこうとする「対応論」の大きく 2 つに分かれている。たとえ ば、内閣府は後者の姿勢において「人口減少化に関する研究会」を催し、女性・高齢者の 就業率の上昇、生産性の上昇の各要素によって少子化のマイナス面を補うことが可能であ るという試算をしている。現在、日本政府は主に「社会の整備による阻止」を行おうとす る姿勢をとっている。 ・各国の少子化の事情 ○欧米の少子化の状況 1950 年代後半にアメリカでもベビーブームが起こった。ヨーロッパでは人口転換6は戦前 に終了していた。1960 年代には、欧米は日本より合計特殊出生率が高かったが、1970 年代 には日本の緩やかな低下とは対照的に急激な低下が起こり、1980 年代前半には欧米、日本 ともほぼ同水準に達した。1980 年代後半では、南欧や東欧では低下し続けているのに対し、 6 人口転換とは、18 世紀から 20 世紀初期にかけての 200 年くらいの間に、「多産多死」の状況から「少産 少死」の状況へ移行したこと。

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アメリカや北欧では反転して高くなった国が多いが、人口置き換え水準を下回ったままで ある。 ○アジアの少子化の状況 韓国、台湾、香港、シンガポールなど NIES でも、日本以上の急速なペースである少子 化が問題になっている。2003 年の各国の出生率は、韓国が 1.17、台湾が 1.24、香港が 0.94、 シンガポールは1.25 である。韓国のノムヒョン大統領は「子どもか仕事かという女性の悩 みを解決しなければ出生率も上がらず、経済も成長しない」と述べた。女性の高学歴化や 晩婚化、仕事と育児を両立させる環境が整わないことなど、社会的な背景は日本と共通す る。 諸外国における子どもの数の割合(2003 年) 国名 年少人口割合(%) 日本 13.9 イタリア 14.1 スペイン 14.2 ドイツ 14.9 ロシア 15.7 ウクライナ 15.9 ポーランド 17.4 カナダ 18.0 イギリス 18.5 フランス 18.5 韓国 20.0 アメリカ 21.5 中国 23.0 アルゼンチン 27.1 インド 32.8 南アフリカ 32.9 第2 章 原因 2 章では、少子化がおこる原因として何があるのか、またその背景にはどのようなことがあ るのか。それぞれの因果関係を考えていきたいとおもう。 1.少子化の原因 ・晩婚化、未婚化 ○ 未婚化の進展 我が国では、子どもは男女が結婚してから生まれる場合が大半であるので、結婚しない 人達の割合が増加すれば、子どもの出生数に影響を与えることになる。20 代後半から 30 代の未婚率をみると、1970 年代頃まで安定した率で推移していたのが、70 年だい半ば頃か ら上昇傾向が顕著となってきた。出生率低下の原因として、未婚化の進展が主な理由とし て指摘されるようになった。 総務省「国勢調査」によると、2000 年の全国における 20~39 歳の未婚者数は約 18,33 万人(男性が約1,040 万人、女性が約 793 万人)である。20~34 歳の未婚率は 1950 年か

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ら80 年頃では男性が約 50%、女性は約 33%であり、2000 年には男性 68.2%、女性 55.5% となった。 女性の25~49 歳は 1970 年代では「5 人に 1 人が独身」であったが、30 年間に「2 人に 1 人が独身」という状態に変化している。男性の 25~49 歳は 70 年代では「2 人に 1 人が 独身」であったが、現在は「10 人に 7 人が独身」となっている。 図:未婚率の推移(20~34 歳) ○晩婚化の進展 20~30 歳代の未婚率の上昇に伴い、男女とも平均初婚年齢が上昇する晩婚化が進展して いる。日本の平均初婚年齢は1975 年で夫が 27.0 歳、妻が 24.7 歳である。2003 年には、 夫が29.4 歳、妻が 27.6 歳となっており、約 30 年間に、夫は 2.4 歳、妻は 2.9 歳も初婚年 齢が高くなっている。晩婚化の傾向は最近になって、さらに速度が速まっている。 ・費用負担の増大 厚生労働省「21 世紀出生児縦断調査」によると、子どもが 6 ヵ月児のときの調査(第 1 回調査:2001 年度)では、月額で平均 4.1 万円かかっている。ただし、多いのは 1 万円(全 体の33%)及び 2 万円(全体の 28.2%)で、これらで全体の 6 割を占める。子ども 1 人の みの場合には平均5 万円で、2 人(平均 3.2 万円)3 人(平均 3.4 万円)の場合よりも高い。 これは自分の子に自分以上の高学歴を求める傾向があり、1 人に集中して手をかけているこ とがわかる。 子育て費用の中では教育費の占める割合が高い。野村證券「第 8 回家計と子育て調査」 (2003 年)によると、教育費は、子育て費用(教育費、医療費、食費、被服費の他、こづ かい、子どものための保険など子どものための支出全般)の 38%を占めている。母親の年 代別にみると、年齢層が上がるほど教育費の割合が高くなる傾向があり、40 代以上では平 均 46%となり、子育て費用の半分は教育費となっている。具体的な教育費用負担を文部科

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学省の統計からみると、仮に物価水準の変化などを無視して計算すると、幼稚園から高等 学校まですべて公立に通った場合では14 年間で約 511 万円、幼稚園と高等学校で私立に通 った場合は約720 万円、小学校以外すべて私立に通った場合は約 959 万円かかる。 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2003 年)によると、18 歳未満の児童のいる世帯に生 活意識をたずねたところ、「大変苦しい」が26%、「やや苦しい」が 36%、「普通」が 34% となっており、6 割の世帯が生活が苦しいと認識している。理由として、前述した子育てや 子どもの教育にかかる負担が反映していると考えられる。 ・パラサイトシングル 近年、親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している20 代後半から 30 代の未婚者が 増えているといわれる。内閣府(国勢調査)によると、独立しない理由として、全体では 「経済的に楽な生活を送れるから」がもっとも高く 63%、次いで「家事等の身の回りの世 話を親がしてくれているから」が60%、「結婚したくても適当な結婚相手がいないから」が 44%となっている。親にパラサイトすることにより、生計を得ている独身の未婚者(シン グル)の存在も少子化に影響しているといえる。 ・働く女性の増大 日本では女性の年齢別労働力率がM 字型カーブを描くことが特徴的である。80 年代以降、 20 代後半から 30 代の女性の労働力率は徐々に上昇し、また女性の職業意識の高まりなどに より女性雇用者が増加した。男女平等を求める国際的な流れなどを背景に女性の就労環境 の整備も高まった。1985 年には男女雇用機会均等法7が制定された。 年齢階級別に女性の労働力率を見ると、1990 年頃から 25~29 歳の年齢層の労働力率の上 昇が大きくなる。2002 年では 20 代前半と 20 代後半が逆転し、20 代後半の労働力率が 20 代前半を上回った。M 字型カーブのいちばんの谷間も、25~29 歳層から 30~34 歳層に移 行するとともに、労働力率は上昇している。育児は女性が主として担っている現状におい て、働く女性が増大する一方で、仕事と育児の両立を支える環境が整わないことや、機会 費用の上昇などから、女性の結婚年齢や出産年齢が高くなる減少が生じ、出生率に影響を 与えてきたと推測できる。 ・理想の子ども数と実際の子ども数の差 夫婦に対して、理想的な子どもの数と実際に持つつもりの子どもの数を尋ねたところ、 結婚期間が短い夫婦ほど、理想・予定子ども数とも少なくなっている。(国立社会保障・人 口問題研究所「第12 回出生動向基本調査 2002 年」参考) 全体の平均では、 理想子ども数→2.56 人 予定子ども数→2.13 人 結婚持続期間が5~9 年の夫婦では、 理想子ども数→2.48 人 予定子ども数→2.07 人 7 雇用の分野において、男女の均等な機会および待遇の確保を目的として制定された法律のこと。

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0~4 年の夫婦では、 理想子ども数→2.31 人 予定子ども数→1.99 人 となっている。結婚持続期間が0~4 年という結婚後 5 年未満の夫婦の場合、以前の調査で は現在よりも高い数値を示していた。 ・婚外子の割合 我が国では、出生のほとんどが戸籍法に基づき婚姻の届出をした夫婦によるものである。 厚生労働省「人口動態統計」によれば、2003 年の出生数 1,123,610 人のうち、98.07%は嫡 出子であり、非嫡出子821,634 人と、全出生数の 1.93%にすぎない。欧米諸国と比較す ると、南ヨーロッパでは低いものの、いずれの国も日本よりもはるかに高い水準である。 イギリス43.10%、アメリカ 33.96%という状態である。しかし、非嫡出子が多いからとい って、男女関係が乱れているというわけではなく、男女のカップルが結婚に至るまでに同 棲という事実婚9の状態を経ることが多いこと、非嫡出子であっても法的に嫡出子とほぼ同 じ権利を享受できること、結婚形式の多様化に対する社会一般の受け入れなどが背景にあ ると考えられる。 日本では、諸外国と比べなぜ非嫡出子の割合が低いかというと、結婚という過程をきち んと通らなければいけないという意識がいつのまにか日本人の頭の中に常識として定着し てしまっている部分がある。古くからある常識として定着してしまった意識によってシン グルマザーというものに偏見をもっているからでもある。偏見をなくし、受け入れること が今の日本には必要なことである。 ・家庭を築くことや生命の継承の大切さの欠如 現在の日本では核家族10が増えており、代々の家族が集まり夕食をともにしたり、旅行へ 行くなどの昔ながらの行事がだんだんと薄れて消えてきてしまっている。また、家庭内で も食事の時間が親と子どもは別で会話をすることもなくなってきているのが現実である。 結婚して家庭を築くことや、子どもを持つことを積極的に選択していかないという考え 方の背景に、個人が自由や気楽さを望むあまり、家庭を築くことや生命を継承していくこ との大切さへの意識が失われつつあるのではないかと指摘がなされている。たとえば、ニ ュースなどでも駅のロッカーに乳児が入っていたなど生命に対する考えとして軽薄すぎ、 責任を持つことの出来ない親が増えている。 学校教育や地域社会におけるさまざまな関わりの中で、乳幼児と触れ合う機会を充実し、 家庭を築くことの大切さや子育ての意義の理解を深め、また自らの生命の尊さや大切さを 実感し次代に伝えはぐくんでいくことの理解を深めることが求められる。 8 法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のこと。 9 法律上の要件(届出)を欠くが、事実上夫婦としての実態を有する関係のこと。 10 夫婦とその未婚の子女からなる家族のこと。小家族と同義である。

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2.少子化の原因の背景 原因の背景は上の原因の背景となると同時にそれ自体も一つの原因であることを理解して もらいたい。 ・仕事と育児両立の困難 育児は女性が主として担うことが多い現状において、働く女性にとって、出産・育児と 仕事との両立は大きな課題である。厚生労働省「21 世紀出生児縦断調査」によると、初め て子どもを出産した母親の場合、出産1 年前に仕事を持っていた人(有職者)のうち 67% が、出産半年後は無職となっている。(2001 年度結果)。また、常勤であった人が離職して 出産1 年半後に有職となった場合でも、約 6 割はパート11・アルバイト12となっており(2002 年度結果)、育児と仕事の両立の困難性を示している。 結婚前就業していた妻について、現在の就業状態と子どもの有無との関係をしらべた国 立社会保障・人口問題研究所「第12 回出生動向基本調査」(2002 年)によれば、結婚 0~4 年では就業している妻が43.5%、専業主婦が 56.5%いるが、子を持ちながら就業する妻は 全体の16.8%である。また就業者に占める子を持つ割合は 38.7%であり、専業主婦の子を 持つ割合の 74.2%に比べて低く、出産に際して就業を継続せず専業主婦となる就業者が多 いことがわかる。こういった「出産・育児」か「仕事」かという二者択一の状況が、女性 の自立やキャリア形成の障害、子育て世帯の収入低下、結婚に対する消極的な姿勢の原因 となっていることは否めない。働く女性の増大を踏まえ、「出産・育児」と「仕事」の両立 ができるように、子育て期において育児や仕事の負担の軽減を図るため、保育所などの拡 張などの保育支援、育児休業の取得促進、勤務時間の短縮、出産などを理由とした退職後 の再就職の促進等の雇用のシステムをつくりあげていく必要がある。 また理想の子ども数を持たない理由として、夫の家事・育児への協力が得られないから、 と回答する妻も 1 割以上存在する。育児の心理的・肉体的負担軽減にあたっては、夫婦が お互いに育児の負担を分かち合えるように協力しあうことが重要である。 ・経済的に不安定な若者の増大 1990 代以降の経済の長期停滞の中で、企業のリストラや労働費用の削減、パートや派遣 労働等の雇用形態の多様化が進み、若者を取り巻く雇用環境は厳しさを増している。労働 力調査によれば、2003 年の我が国の失業率は 5.3%であるが、15~19 歳では 11.9%、20 ~24 歳では 9.8%と中高年層に比べても高い水準となっている。特に、雇用形態の多様化 は、求人に占めるパートタイム雇用の割合を増加させ、これまでのところ若者が安定した 就業を得る機会を狭めてきている。こういった状況は、若者自身の職業意識の変化等の要 因と相まって、パートやアルバイトなどの不安定就労を繰り返す、いわゆる「フリーター13 の増加をもたらしてきている。厚生労働省「労働経済白書」によれば、フリーター数は2002 11 慣行あるいは標準の労働時間より少ない一定時間を勤務する制度のこと。 12 学生・研究者などが本業のかたわらに行う仕事のこと。仕事、勤労、労働のこと。 13 フリーターとは、定職につかず、アルバイトを続けることで生計を立てる人のこと。

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年には209 万人、2003 年には 8 万人増の 217 万人と推計されていて、15~34 歳の労働力 人口のうち10 人に 1 人はフリーターという計算となる。なお最近では仕事をせず、学生で もなく、職業訓練もしていない「ニート14」と呼ばれる若年者の増加が指摘されている。 ○増大する若者一時就業 こういったフリーターの増加は、若者の結婚に対して、主に経済的な側面からマイナス 要因としてとらえることができる。フリーターの経済状況をみるため、若者の就業形態と 賃金についてみてみる。総務省「国勢調査」(2000 年)の「大学卒における就職者と一時的 な仕事に就いた者の割合」についてみてみると、男性の場合、1990 年では就職者の割合は 99.3%一時的な仕事に就いた者の割合は 0.7%で、女性の場合、就職者では 97.8%、一時的 な仕事に就いた者では 2.2%であったが、2003 年になると男性の場合、就職者の割合は 93.2%、一時的な仕事に就いた者では 6.8%で、女性の場合、就職者では 91.0%、一時的な 仕事に就いた者では 9.0%であり、男女ともに一時的な仕事に就いた者の割合が 6.0%も上 昇していることがわかる。このように一般労働者の割合が以前高いものの、大学卒であっ ても、一時的な仕事に就くものが急激に増加するなど、パートタイム雇用への就業は今後 も一層進むものと思われる。 ○低い賃金収入 就業形態による違いは賃金の差につながる。一般労働者とパートタイム労働者における 賃金比較を行うと、年齢が高くなるにしたがって、差が大きくなる。フリーターの就業形 態の一つとしてパートタイム労働を想定し、若年者による比較として、20 歳代及び 30 歳代 におけるパートタイム労働者と一般労働者との賃金比較を行うと20 歳代における一般労働 者のばあいでは男性で約370 万円、女性で約 310 万円であるのに対し、パートタイム労働 者では男性で約110 万円、女性で約 115 万円とある。30 歳代でみてみると、一般労働者で は、男性で530 万円、女性で 380 万円に対し、パートタイム労働者では男性で約 155 万円、 女性で120 万円と、ほぼ 3 倍程度と差が大きい。児童のいる世帯における 1 人当たりの年 所得をみると、約160 万円程度となっていることから、親子 3 人家族で 500 万円程度の収 入を標準とした場合、フリーターの年収では結婚して家庭を持つことは相当に厳しいとい える。 ○失業率・転職率の上昇 一定以上の収入がなければ、結婚して安定した生活を送ることは難しい。しかし、1990 年 代以降の経済の長期停滞で、10~20 歳代の若者の失業率が最も高い状況にあり、若者の将 来不安を高めている。若年失業者やフリーターの増大など、若者が社会的に自立すること が難しい社会経済になってしまっている。こういった若者の経済的不安定が、結婚や子ど もの出生に影響を与えていると考えられる。 ・地域や家庭での子育て協力の低下 家庭は、子どもが親と家族との愛情による絆を形成し、人に対する信頼感や倫理観、自

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立心などを身につけていく大事な場である。ところが、3 世代同居世帯が多く、子ども自身 も兄弟数も多く、地域社会でも子どもたちの数が多かった時代と比較をすると、家族規模 が縮小し、親と子の核家族世帯が中心で、しかも大都市部のように隣近所に誰が住んでい るのかよくわからないような現代社会では、家庭の子育て力や地域社会の子育て力は、以 前よりも低下していると考えられる。厚生労働省「全国家庭自動調査」(1999 年)において、 家庭養育上の問題について尋ねると、「問題がある」と回答した親のうち、「親類や近所づ きあいが乏しい」(1989 年と 1999 年を比較すると、8.2%から 13.0%)、「子育てと社会参 加の両立が難しい」(同じく11.3%から 15.3%へ)などが増加しているように、子育てに関 する地域内のコミュニケーションが進んでいない傾向がみられる。この傾向は育児ノイロ ーゼなどにもつながると考えられる。家庭よりも職場優先・経済優先の風潮などから、子 どもに対し時間的・精神的に十分向き合うことができない親、無関心や放任といった極端 な養育態度の親などの問題も指摘されている。親が親としての役割を十分担うことができ るように、職場をはじめ社会が応援する風土や意識が求められている。また、出生力の回 復や子育てにおいて祖父母の役割、いわゆるシニア世代の役割も重要となっている。以上 から、育児休業制度はできても現実には取得しづらい職場環境、住居や職場近くの保育施 設の整備状況、育児や家事に対する夫の協力の状況、親との同居の有無など地域・家庭で 協力しあうネットワークが今一番、必要である。 ・価値観の変化 上で述べてきた様々な要因も元はこの「価値観の変化」によるものである。時代や生活の 変化に伴い、いろいろな事に対して人々の価値観(考え方)も変わってきている。 ○結婚に対する価値観 結婚に対する意欲は、未婚者が結婚そのものに対してどのような価値観を有しているか、 あるいは独身生活にどのような魅力を感じているかによっても左右される。未婚者の結婚、 独身それぞれの利点にたいする考え方について国立社会保障・人口問題研究所の「第12 回 出生動向基本調査」でみてみると、 男性 女性 1987 年 2002 年 1987 年 2002 年 結婚するこ 利点があると思う 69.1 62.3 70.8 69.4 とは 利点はないと思う 25.4 33.1 24.7 26.3 不詳 5.5 4.6 4.5 4.3 結婚しない 利点があると思う 83.0 79.8 89.7 86.6 ことは 利点はないと思う 10.7 14.6 5.4 8.6 不詳 6.3 5.6 4.9 4.8 未婚者に対して、「結婚することに利点がある」と答えたのは1987 年では男性 69.1%で 2002 年には62.3%で、女性は 1987 年では 70.8%で 2002 年には 69.4%で男女ともに減少傾向 にあるが男性の方が減少している。「結婚しないことに利点がある」は1987 年と 2002 年で

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「結婚することに利点がある」という割合と比べると男女とも上回っていることがわかる。 結婚の利点としては、精神的な充足や家族を得られるという理由が優位であり、社会的な 規範や実利面に関して利点を感じる人の割合は低下しつつある。また、独身生活の利点を みると、男女ともに「行動や生き方が自由」が割合としては圧倒的に高い。女性では「広 い友人関係を保ちやすい」が高いがやや減少傾向にある。以上から、時代を経るごとにこ んなにも結婚に関する人々の価値観が変わってきていることがわかる。また必ずしも結婚 をしなくてもよいという意識が強くなってきていることもわかる。 前述した「働く女性の増大」により、結婚しなくても豊かで満足のいく生活ができるとい う価値観もでてくる。 ○子どもを持つことの価値観 かつては農業あるいは自営業が主である時代にあっては、子どもは家族にとって家業の 生産を助ける大切な労働力であるとともに、家族の世話をし、また将来親の老後を支える ことが期待された。一方、現在では親の雇用化(サラリーマン化)、家族の規模の縮小など を背景に、子どもを持つ理由が愛情を注ぐ対称であり、家庭を明るく楽しくすることに移 行してきた。国立社会保障・人口問題研究所「第6 次出産力調査」によると、1972 年当時 でも「子どもがいると家庭が明るく楽しい」が最も多く76.6%だが、「子どもは老後のささ え」(42.3%)のように、子どもに関する公共性、実用性に関する価値観を支持する割合が 高くなっていることが特徴的である。現在は、子どもを持つ理由について、親としての精 神的な充足に求める傾向がとりわけ若い世代において高まっている。一方では子どもを持 つことを必然とはしない考え方が増えていることの背景とも考えられる。 参考文献:内閣府 「少子化白書」 厚生労働省 「21 世紀出生児縦断調査」―2001 年 「国民生活基礎調査」―2003 年 総務省 「国勢調査」―2000 年 国立社会保障・人口問題研究所 「第12 回 出生動向基本調査」―2002 年

参照

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