6
3
(
4)
北投石 を水 に浸
し
た場 合 の ラ ドンの 出 か た
京 都大 学 理 学 部地質 学 鉱 物学 教 室初 田 甚 一 郎 ・西
村
進
放射能鉱物か ら直接水中へ ラ ドンの溶出す る仕方 については, これ までに研究 された例 をあま り聞かない.天然 の湧泉 には ラ ドン含 有率 の著 しい ものがあ るが その ラ ドン が何処か ら供給 された ものかに就 いて の疑問が あ る.非 常に深所 か ら供給 さ れた もの とすれば,地表 に達す る迄 に ラ ドンの寿命 か ら考 えて相 当減衰 す る 筈で,従 って三朝温泉 の様 な ラ ドン含 有率 の高 い ものでは地 下に莫 大な親元 素 を仮定 しない と説明出来 ない.* この難点 の解決策 として比較的浅い所 に ラジウムの二次的沈澱物の存在 を仮 定す る考 え方 もあ る. この様 な問題 と も関達 し,又一方 ラジウム鉱物 を浴槽 中に浸 して 自然 に恵 まれ ない都会で人工 ラジ ウム泉 を造 るこ とが行 われてい るが, この場 合果 して どれ程実際に ラ ドンの潜 出が あ るか とい う点 を明 らかにす るために標題 にかかげ た様 な研究 を行 った.末だ研究途 中なので不 完全であ るが一応 報告す る. 浴槽 に於ける溶 出の しかた 実際の浴槽 について測定 した結果 は次の通 りである.京都市内某公 T乾浴場 :浴槽 の構造 は第1
図の通 りであ る.中央の仕切 りで東西 両浴槽 間の湯の交流 はその ままでは殆ん どな い と考 えてよい. 第 1図 浴 槽 見 取 図B
'
.2
4∫
6
2*23
C:之
aA
3
Iズ41
実験 を行 った湯槽 の容量 は約8
0
8
立である. この浴槽 の中央底 に沈 め られ た木箱Aの中に 北投石 約3
9
.
0
kg
, この他,木箱 B
,金屑節C
に計4
4
.
5
kg
が入れてあ る.6
月
11日は平常通 り営業 して翌1
2
日年前3
時 に新 しい井戸水 を張 り,1
2
時 よ り加熱 しは じ めた.測定試 料 は1
4
時3
6
分,3
8o
C
の湯 を 中 央底 よ り約2
0
c
m
附近 の部分 を大型 注射器 で *今例えば三朝温泉の温度を7
0
〇
C
とし,
11
中のラドン量を0
.
5
2×1
0
Tcurieとし,極端な場合 として p :地下水中のRn濃度 pe:岩石申 Raに平衡のRn濃度とせばp-αpe α :Rnの水に対 す る分配 係 数としても地下水の流れる通路C)壁全体が少なくとも
0
・
4
3×1
0-
9gRa/gのRacontentを必要とす る.こ64 初 田 甚 一郎 ・西 村 進
4
0
0
∝.採集 した.測定 にはHS
泉効 計 を用 い, ラ ドン濃度1
.
4
6
マ ッヘを得 た. この浴槽 に用 い た井戸水 を タンク内 よ り採集 し, ラ ドン量 を測定 して0
.
54
マ ッヘを得 た.従 って両者 の 差0.
9
2
マ ッヘに相 当す る ラ ドンは少 な くと も 北投石 か ら出 た もの と見散せ る. 第二 回の実験 は7
月6
日午前8
時注水,l
l
時 よ り1
-2
時間間隔で測定 した.今 回の測定 で は中央底 の木箱A
中 よ り採水 した. これ ら の結果 を図2
に示 す.最 初l
.
6
7
マ ッヘか ら次 第 に少 し増加 の傾 向 を示 し,最 高約2
マ ッヘ に達 し,1
6
時 よ り熟 した所 ラ ドン量 は急激 な 減少 を示 した. 尚表面近 くで も同 じ傾 向 を示 してい る.実験 中採水以外 な るべ く湯 を撹 乱 しない様 に したが表面 と底 とで ラ ドン量 の相 違 は案列少 ない. 実験室 に於 け る実 験 北 投石 を平均直径約6
.
5
mm
に砕 いた もの 第2
図 浴槽 中 に於 ける ラ ドンの溶 出令
10
1之
7
4
76
1
8
久.Lr 第1
表 水 温 と溶 出 ラ ドン濃度 との関係 汁勿論全時間を恒温状等削こ保つのが実験 としては望ましいが,室温より低い温度に長時間保 つことは困 難であるので,各温度で条件を一定にするため恒温に保つ時間を4時間とした・ ラドンの溶出に実 際 的 に関係するのは最后の数時間と考えて差支なかろう・尚室温より低い温度に保つためには時々温度計 を 見なが ら氷片を加えた・北投 石 を水 に浸 した場 合の ラ ドンの 出かた 648gを分液漏斗に入 れ, これ に蒸潜水200
c
c
.
を入れて一定時間放置 し,後 この水 を と り出 しラ ドン量 を測定 した. ラ ドンの溶出 は当然温度 と関係す る と思 わ れ るので先 づ温度 との関係 を調べ た.北投石 を21-24時間蒸滑水 に浸 した状態 にお き,そ の内最后の約4時間を恒温槽 の中に入 れて所 定の温度 に保 った.* また浸漬時間中の ラ ド ンの生成 に応 じて溶出量 も異 る と思 われ るの 第3
図 水温 と溶 出 ラ ドン濃度 との関係 10 20 30 40M.
E
. 2.0r
∴
g
i
l.0 05s
o
t
Temp 65 で一定時間(
21
.
8
時間)の浸演の場合に換算 した結 果は第
1表 ,第3
図の様 になる. この 結果 は温度の上昇 とゝもに著 しく潜出率 は低 下す る事 を示 し,前述の浴槽 に於 ける結果 と 傾向 が一致す る. 次 に浸涜時間 と溶 出量 との関係 を し らべ た.第4図にその結果 を示 す.1の曲線 は 恒 温槽 に入れて40oC,2の曲線 は25oCを保っ て浸漬時間を変 えて測定 した ものであ る.浴 出量 は時間 とともに徐 々に増加す るが時間の 経過 とともに増 し万 はゆ るやかにな る. 結 び 用 いた北投石 は秋 田県玉川温泉 の もので, ここの北投石 は Ra1.22×10 9g/gを含 むこ とが嘗 て報告 されてい る.1-** 浴用 に供 して い る ものは直径約2-7cmの 円 くな った疎 で あ る.比較的 きめが粗 いが それで も内部 に生 成 した ラ ドンが表面 まで出て くるには相 当の 時間 を要す る と考 え られ る.実験室で用 いた もので も同 じであ る. ラ ドンの溶出にあづか る部分 の表面 か らの厚 さを推定す るために次 第 4図 浸漬時間 とラ ドン濃壕 との関係 Ol
乙
2436
1)吉村惰 (1の29):北 投石並 に本邦産裾 簾石 及 びゼ ノタイ ムの放 射性成 分 につい て, 理 研桑報第8輯第3号223・ 相 木講 演会 に於 て斉藤信房氏 に よれ ば玉川 温泉*JI卜底 の北投 石 は1220×10J12gRa/g;608×10-12gRa/g と発表 され た・66 初 m 甚 一郎 ・西 村 進 の様 な試 み を した. と夫 々
5
6
.
3,3
3
.
8,1
6
.
9,5
.
6
3g
とな る.今 北 実 験 に用 いた棟 を平均 直径61
5
mm
,北 投 投石 の ラジウムの含有量 を1
.
5
×10
-9
gRa/
g
, 石 の密度 を4
・
3
3
とと り,表面 か ら0
,2,0
.
1
,1
.
0×1
09
gRa/
g,0
.
5
×10
--9
gRa/
g
ととって0・
0
5,0・
01
mm
迄 の部分 の全 質量 を計算 す る 21.8時間 に発生す る ラ ドン量 を求 め る と夫 々 第2
表 ラ ド ン 濃 度 第3
表 試 料Ra
含有量1
.
5
×10
-9
gRa/
g
とした場合 実 験 結 果 試 料の表面 か ら一定の深 さまでのRn
濃度 * と溶 出濃度 の比 第4
表 試 料Ra
含有 量1
.
0
×109
gRa/
g
とした場合 実 験 結 果 試料の表面 か ら一定 の深 さまでのRn
濃 度* と帯 出濃度 の比北投石 を水 に浸 した場合の ラ ドンの出か た 第
2
表 の如 くな る.又それ らを実験結果 とく らべ ると第3-5
表 の如 くな る.今種 々の条件 を考えて ラ ドンの水 に対す る平衡分配係数 の6
7
1
0
分の1
程度 が溶 出す る もの とす ると約0
.
0
7
-0
.
05
mm
位 まで関係 あ る もの とみ られ る. この こ とか ら温度 を一定 とす る とラ ドンが 第5
表 試 料Ra
含有量0.
5×1
0 9gRa/
g
とした場合 実 験 結 果 試 料の表面 か ら一定 の深 さまでのRn
濃度* と溶 出濃度 しっ比 Rn濃度の計算方 法 北投石密度 ×表面か ら一定 の深 さまでの体積 (cc)×試料簡数 ×試料Ra含有量(
g/
g
)
1
0
0
0
×Ra壊変常数× 膏 画面面責 水 中に溶出す る仕方 は極 めて表面 に近 い部分 の ラ ドン濃度 とその分布 に大部分支 配 され る もの と思 われ る.それ よ り内部 に於 ては ラ ド ンは壊変 を伴 いつつ列の方 に拡散 して くる訳 であ るが,拡散 は温度 と正の関係 に あ る の で,温度 が高い程速かに表面 の方へ ラ ドンは 移動す る苦であ る. この こ とは観測結果 を詳 しく吟味す る と多少現 われてい る よ うで あ る.す なわ ち,各温度 に於 ける溶 出 ラ ドン濃 度 の測定値 お よび ラ ドンの水 に対す る分配 旅 数 の20o
C
に於 ける値 を夫々1
.
0
0
として他 の 温度 にお ける値 を求 めると第6
表 の 如 く な り,2
00
.
C
よ り高温 に於 ては測定値 の方 が 大 であ る. これ は温度 が高い程 内部か らラ ドン 貸6
表 温度実
験 結 果 の2
0o
C
の値 に対す る比 Rf}n の 藷 に 窟 す 姦 l同 じ く2
0o
C
の値 に対 す る比68 初 田甚 一郎 ・西 村 進 =北投 石 を水 に浸 した場合 の ラ ドンの出かた の拡散が大 となるため と思われ る. しか し温 度 その他 の条件 を一定に してお くと,ある程 度 の時間がたつ とラ ドンの拡散は定常的にな る もの と思われ る.それ故 に浸漬時間 とラ ド ン量 との関係 を求 めるこ とは,実 は伺時間後 にこの拡散が定常的になるものか呑みてい る のか もしれない. これ らの解折的研究,粒度 との関係等は今 後の問題 として残 さ れ て い る. 質 疑 応 答 斉藤 (東 大)北投石 は産 地 に よ りRa含 量 が違 うか ら,実 際 につ いて測 定 され た方 が よい・ 又北投石 の emanatingpowerの彫 饗 は小 さい と思 うが実 験 的 な結 果 をはかつて い た ゞきたい・ 北投 石 は沈澱直後 の もの と古 い もの とは違 うと思 う・ 時 間的 な問題 をや って もらう と よ い. 岡部 (鳥取 大) 水 につ けず に空 気 中で温度 を上 げた ときもや ってい た ゞくとよい・ 拡散 係数 は推 定 の ための仮 定 で あ ろ うが, 水 中の Rnの拡散 がお そい とす れ ば 途 中 の decayも考慮 :,こ入 れ る心要 あ りと思 う・