125
香川大学農学部学術報告第30巻 欝64号125∼132,1979
購買行動と野菜の価格安定
久 保 利 文
PURCHASING BEHAVIOR AND VEGETABLE PRISE STABILIZATION
ToshifumiKuBOInJapan,Stabilizationmeasuresofveg6table prise are mainly basedon thestablesupply
ofvegetablesand the adjustment of marketing structure,butthe rationalizationofconsu−
mers・purchasingbehavioris not emphasizedinthisregard・Thepurpose ofthispaperis
to note theconsumers,purchasingbehaviorforfresh fruitsand vegetablesandtoexamine
the rationalization measures of this behavior.The followlngWere COnCludedfrom the analysis:
(1)Theconsumers,purchasing behavior was characterized by(i)inactivityofaconsumer
choicemechanismforstores,(ii)a high?r rateSOf purchasingfrequency,(iii)indifference
toretailingprise,(iv)inelasticityof purchasing patterns,(V)pooruseofinformations,and
soon.However,these result$didnot show that the consumers,purchasingbehaviorwas
irrational,Sincethisbehavior wa亭dependentonthe propertiesoffreshfruitsandvegetables
per se and of consumption.
(2)The consumers,purchasing behavior could be rationalized by(i)the education of
consumers,(ii)the popularization oflar・ge−Size horpe equipment to store and(iii)the
provision of preciseinformations.
要 約 わが国における野菜の価格安定対策は,安定供給をほかることと流通機構の整備に重点が置かれており,消費者の購 買行動の合理.化にはあまり重点がおかれていない. 本稿は,消費者の購買行動の合理化対策を検討する目的で,青果物の購買行動の分析をおこなった.その結果は次の とうりである.(1),青果物の購買行動の特徴には,(i)店舗選択行動の不活発性,(ii)購買頻度の高さ,(iii)価格に 対する無関心さ,(iv)購買バク−ンの硬直性,(Ⅴ)情報利用のまずさ等があり,この諸特徴が消費者の購買行動を不合 理なものにしているのであるが,青果物の商品特性や消費特性も考慮すると,必ずしも不合理だとはいいきれない面が ある. (2),消費者の購買行動をより合理的にする対策としては,(i)消費者教育や(ii)家庭における大型貯蔵施設の普及,お よび(iii)情報の充実が考えられる. 1.は じ め に 農産物,特に野菜の価格は乱高下が激しく,その価格安定をはかることが価格政策の主要な目的の1つになっている. ところで,野菜の価格変動を問題にする場合,次の2点に留意する必要がある.節1は,どのような価格変動系列 (価格変動の種類)を問題にしているのかという点であり,第2は,どの流通段階の価格を問題にしているのかという 卑である. 第1の問題となる野菜価格の変動系列は,少なくとも①時間的変動,④日次変動,⑨過次変動(または旬次変動),④月次変動(または季節変動),⑨年次変動,⑥趨勢変動に区分することができる.
第2の問題となる流通段階の価格であるが,青果物は卸売市場で基本価格が形成され,卸売段階以外の各流通段階の
価格ほ,この基本価格(卸売価格)に各流通段階のマー・ジンないし費用が加静または滅罪されたかたちで形成される・
たとえば,集荷段階ではこの基本価格である卸売価格から卸売段階と各集荷段階問の流通マ・−ジンを差し引いたものと
なり,分荷段階では卸売価格に各分荷段階までの分荷マ−ジンを付加したものとなる.いずれに・しても,卸売価格が基
準となって各流通段階の価格が事後的に形成されるので,各流通段階間の価格は相互に密接に関連しあって変動するこ
とになる.しかし各流通段階市場には,価格形成上独自の要因が多少とも作用するため,各流通段階の価格は短期的に
は異なった動きを示す場合がある.特に,′J\売価格(消費者価格)は,短期的には小売商の仕入・販売行動・および小
売市場の競争構造に規定され,卸売価格(したが・つて仲卸業者からの仕入価格)が変動するにもかかわらず,価格変更
頻度が少なく比較的安定的に推移することが知られて−いる.一般的に青果物の場合,生産者価格(Pa),卸売価格(Pw),消資者価格(PI)の3つの段階価格の間には・次のよう
な関係が認められる.①時間的変動および日次変動に関しては,Pa(個人出荷の場合,または出荷団体による出荷についてはプール計算
が糖算過程で採用されていない場合)はPwとパラレルに変動するが,PIはPwに対して硬直的である・ただ野
菜の場合,PI・は商品価値の時間的推移に伴う低下に対して変化する場合がある(軟弱野菜の値引き行為)0
㊥過次変動以上の期間単位の価格変動系列に関しては,PaとPIはいずれもPwにパラレルに変動する・
これらのことから野菜の価格変動を問題にする場合,時間的変動と日次変動に関しては,生産者価格と卸売価格に対
し消費者価格の相対的独自性を峻別する必要がある.しかし週次変動,月次変動,年次変動,趨勢変動に関しては,こ
れら3つの価格はほぼパラレルな関係にあるため価格変動の特徴を卸売価格で代表させることができる.すなわち,時
間的変動と日次変動を除酬ま,価格変動の問題は卸売価格の変動をいかに抑制するかという問題としてとらえることが
できる.一・方,価格変動を引き起す要因であるが,すでに述べたように各段階市場の価格は卸売格格が基準となって形成され
ている.この基準となる卸売価格は生産者の供給事情に集荷過程の諸事情が付加されて派生した卸売段階での供給実勢
と,最終需要者の需要事情に分荷過程の諸事情が付加されて派生した卸売段階での需要実勢に基づいて形成されてい
る.このことから野菜の価格変動は,主として生産供給事情と最終需要事庇および流通事憫庭規定されているといえ
る.もちろんこれらの諸事情には,それぞれ野菜の商品特性が重要な影響を与えていることばいう■までもない・
そこで野菜の価格変動のうち特に問題視されている卸売価格の日次変動,月次変軌年次変動の主要因を,生産供給
事情,最終需要事情,および流通事情別に示すと表1のようになる.また,これら諸事情が価格変動に及ぼす影響は,
罪1表 野 菜 の 価 格 変 動 要 因 変 動 要 因 価格変動の 種 類 最終需要事情 流 通 事 情 生産供給事情および商品特性 制度的特性lそ の 他 ○災害・交通スト による運送手段 の途絶 ○卸売市場の制度 則的要因 ・即日上場の原
・卸売市場間の 転送の規制 ・強制受純の原 則 0天候・行事による消 費の変化 0代替農産物の相対価 格 0収穫作菓の慈恵性 ●その日の天候や行事によって収穫作業が 影響を受ける 0生産の技術的要因 ・収穫期の調節が困難 ・鮮度が落ちやすい軟弱野菜は出荷を延期 できない 0供給産地の出荷行動 ・個別産埠の慈恵的な出荷行動 ・出荷主体の主体性のなさ(荷受会社の言 葉にまどわされる程出荷を荷受会社に依 存している) 日次変動0情報伝達の不備(需給・価格予測 等) 0流通施設の未整備 0情報柵の未整備 0道路網の未整備 。当該農産物の消費が 季節感の変化に左右 される 0当該農産物の味覚の 季節的変化 0代替農産物の相対価 格 0生産の技術的要因 ・生産の季節性 ・−・部の根菜類を除き貯蔵能性が低く,出 荷調整が困難 。生産恩の調整が因難 ○供給産地の移動 ・収穫時期が気象条件に左右されるため, 供給産地の交替がスム・−・ズにおこなわれ にくい
()
0人口の増加と所得水 準の上昇 0噌好の変化 0消費時期の気候 0生産の技術的要因 ・生産は気象条件に左右される ・貯蔵能性が低く,出荷諸整が困難 。生産者の行動的特質 。作付面積は,くもの巣定理塾行動で決定 される ・結合生産.である場合が多く,生産物の価格対応が困難 。生産濱の経済的要因
・−・定所得を獲保するため価格が下落して も販売 年次変動 価格変動の種類によって異っている.そこで価格変動の種類どとにその価格変動の仕組を,表1に基づいてみてみる. 日次変動 生産供給事情では,収穫愚の日次的変化および供給産地の市場間分荷の不適正とその是正行動の失敗が,最終需要事 情では,消費国の天候・行事等による日次的変化が,流通事情では,卸売市場における取引を規制する諸制度,および 災害・交通ストによる運送手段の途絶が主な要因となっている. したがって,生産供給事情と最終需要事情の日次的変化が価格変動を引き起し,流通事情がこれをさらに増大すると 考えられる. 月次変動 最終需要事情では,季節によって需要が異なる一部の品目を除削ぎ,野菜は日常必需品であるため需要ほ比較的安定 している.−・方流通事情では,時間的経過につれて供給産L地の市場間分荷の不適正が是正されるとともに市場間の転送 もおこなわれており,これら諸事情が価格変動に及ぼす影響は小さいといえる.しかし生産俵給事情では,気象条件の 変動による生産愚の変動や季節毎の供給産地の交替が円滑におこなわれない等の理由から価格変動に及ぼす影響は大き い. したがって月次変動ほ,主として生産供給事情によって引き起されていると考えられる. 年次変動 1年程度では,人口の増加や所得水準の向上による影響,あるいは嗜好の変化による影響は無視できる程度であり価 格変動に及ぼす影響は小さい.また,流通事情も月次変動と同様,価格変動に及ぼす影響は小さい.ところが生産供給 事情では,生産者が作付蘭磯を「くもの巣定理」に基づいて決定する候向にあることや,生産が気象条件によって規定 されている等の理由から,価格変動に及ぼす影響は大きい. したがって年次変動は,月次変動と同様,主として生藍供給事情によって引き起されていると考えられる. このように生産供給事情,最終需要封乱流通番惜が野菜の価格変動に及ぼす影響が異なっているため,価格変動の 種類によって異なった対策が必要となる. しかしいずれにしても,野菜の価格安定化の基本は,気象条件による供給の波動を最小にすることと,その波動を調 整して需要に合致させること,および需要の方を供給の波動に合致させることの3点に要約できる.そのためには,安 定供給と流通機構の整備,および消費者行動の合理化をはかることが蟄要となる.(1)ところで,従来わが国で行なわれてきた野菜の価格安定対策をみると(2),卸売価格の安定を主な目的として,趨勢 変動に対しては,産地の育成と集団化,生産出荷の近代化,流通機構の合理化等の対策が講じられている.また年次変 動に対しては,価格低落時の価格補てんによって生産者の生産意欲が減退しないようにする対策が,月次変動およびそ れ以下の短期的変動に対しては,価格の低落時における価格補てん対策,および価格高騰時における需給調整機能の強 化とその一時的な高騰をならして行く対策が講じられている.このように,わが国での価格安定対策は安定供給と流通 機構の整備に重点が置かれており,消費者行動の合理化対策についてははとんど講じられていない. ところが近年における消費者の所得水準向上による消費の平準化・周年化および兼務需要の増九あるいは消費者の 青果物価格差に対する反応の鈍さ等のため需要の硬直化が生じてきている.そのため一度価格変動が起こると,消費者 の購買行動がそれをより増幅するようになっており,消費者の購買行動の合理化をはかることが,従来以上に重要とな ってくる. したがって本稿では,消費者の青果物購買行動の実態分析を通じて,消費者の購買行動の合理.化をはかるにほどのよ うな対策が必要であるかについて検討する. 分析に用いたデータは,香川大学農学部農発経営学研究室が昭和47年に実施した「香川県における青果物等県内流通 体系調査」の一環として,聾者が担当した「青果物の消費動向と購買行動に関する調査」く8)の結果を活用した.なお, 調査は香川県の消費者モニタ−100名について郵送調査法でおこなった(回収率89%)。 2.消費者の青果物購買行動の分析 消費者の青果物購買行動は,①購入方法選択行劫,④店舗選択行動,⑨購入品目選択行勤,④商品選択行動(品質判 断行動),⑤購入鼠決定行動の5つの側面に区分できる〈4).本稿でもこれらの諸側面を念頭に置いて分析をすすめる. ただ,購入方法選択行動に関しては,一一・般常識とんて認められている「主婦(世帯主の妻)が店舗へ出向いて購入する 方法」が,本調査においても大半を占めているので特に取り上げない(5) (1)青果物小売店舗選好基準 表2は,消費者がある青果物小売店をいつも決まって利用する理由について示したものである.滞1に重視している 表2 店 舗 選 択 基 準 単位:% いつもきまって買う理.由 重 視 度 酒撫である 店員のサ−ビスや感じが良い 店の人と顔見知りである 配達をしてくれる 掛売をしてくれる (小 計) (27.9) 品揃えがよく便利である 鮮度がよい 家計に適した品質のものがある (小 計) 他の店より価格が割り安である 近 い 他の店をみて回る暇がない (小 計) そ の 他 合 計 l lOO 注)調査方法および集計方法:3位までの順位選択法によ り調査をおこない第1位だけを集計
のは「近い.」(37.5%)であり,次いで「鮮度が良い」(20.8%)といった理由である.一斉,「他の店より価格が割安で ある」(2.8%)といったせ価格,についてはほとんど重視されていない. このように,憫距離,と幣鮮度”が重視され,“価格”が重視されていないのは次のような理由による.“距離”が 重視されるのは,青果物の購買行動が少最多数回購買であるため,買い出しに要する時間や労働の節約という理由があ げられる.さらに¶価格”との関係からみると,1回の購入金額が少額であるため価格を店舗間で比較しようとする意 欲が低いことがあげられる.また,q鮮度サが重視されるのは,青果物の商品特性からみて,鮮度の高い品物は相対的 に割安だと考えられやすいためといえる.(¢)こ.のように周一届眉間での価格差を鮮度の差としてとらえようとするこ とは問題があるが,消費者の店舗選択行勒にはそれなりの理由が認められ,必ずしも不合理だとはいえない面がある. (2)青果物の週間買い出し回数 表3は,1週間の間に青果物を買いに出る回数を示したものである.買い出し回数は,最低1固から最高7固まであ 表3 青果物の週間買い出し回数 単位:% 回 数 l 構成比率 l 累積値 合 計 1 100 平均回数 l 4.7 り,平均4.7回と3日のうち2日まで買い出しに出ている.この理由としては,毎日買物をするといった長年の習慣, あるいは家が狭く貯蔵施設も小さくしかも鮮度保持が困難なことや;たとえストック買いをしても持ち帰える運搬手段 がないことなどがあげられる. このように買い出し回数が多いということは,毎日安いものを見つけて買えるという合理的な面を持つ反面,安い時 にまとめ買いが出来ないという不合理.な面がある. (3)野菜の週間購入頻度と利用回数 表4は,野菜の品目別購入回数と利用回数について示してある.ただ,青果物は季節によって購入回数,利用回数が 表4 野菜の透間購入頻度と利用回数 単位:回 ノi品訂事キ言斉71て1晶子】琴去月㌻lバ∼蒜;ヨI昔抒情追付遥)卜 注)品員の下に示してある月は香川県で当該品目が最も出廻る月である.
大きく異なるので,調査の均一・性を高めるため調査に先立って月を指定した.この指定した月は香川県で当該品目が最 も出廻る時期であり,その月ほ表に記入してあるとうりである.購入回数は,キ.ユウリ,トマトといった果菜類は2.3 回∼2.5回,ダイコン2.0回,ハクサイ,ヰ・ヤベツ,レタス等の果菜類は1.6回,バレイショ,タマネギでは1.1回とな っている.このように品目によって回数が異なるのは,購入者の噌好にもよるが,品目によって鮮度保持の難易に羞が あるからである. 週間利用回数(購入頻度×利用回数)は,ハクサイ,キャベツが比較的多くなっている.また,消費者の当該品員に 対する週間利用回数は,ハクサイ,キャベツ等の比較的貯蔵能性の高い品目では利用回数に,キュウリ,トマト等貯蔵 能性の低い品目では購入回数に依存している.このように消費者は,品目の商品特性によって購入回数か利用回数のい ずれかによって当該品目の週間利用回数を維持していることがわかる. (4)野菜の購買パターン 表5ほ,消費者が野菜の購入に当ってどのようなパターンをとっているか見たものである.なお,購買バク−ンの種 表5 野菜の購買パターン 単位:% 購 入 品 目選 択 基 準 構成比率 イ.予算を決めてその範錆内で選択し購入する(予算先行型) ロ.料理やデザ・−トをあらかじめ決めておいて購入する(購入品目先行型) ハ.その場で品物や価格をみて選択し購入する(臨機応変塾) ニ.特に決まった買い方をしていない(不定型) ホ.その他 8 9 0 3 5 0 1 2 6 3 注)調査方法および集計方法ほ衷2に同じ 類については藤谷氏の分類に従った(7).最も多いバク−ンは「購入品目先行型」(60.9%)であり,次いで「臨機応変 塑」(31・0%),「予鈴先行型」(5・8%)の順になっている.このように購買ノてク」−ンは比較的硬直的な「購入品目先行 塑」が多いことから,消費者は野菜の購入を衝動的に行っていないといえる.しかし,購買パターンが比較的硬直的で あることが,価格変動を増幅させているとも考えられる. (5)商品選択基準 表6は,消費者が野菜を購入する際に雷祝する基準についてみたものである.貯蔵能性が低い品目ほど「鮮度」を畳 表6 商 品 選 択 基 準 単位:%
合 計l lOOl lOOJ lOO
注)調査方法およ甲集計方法は表2に同じ 祝する割合が高くなっている.一方,貯蔵能性が比較的高い品目では,「外観」,「料理眉的」,「価格」を重視する割合 が高くなっている.また,野菜全体としては,「鮮度」(66.7%)が最も重視されており,次いで「価格」(17.3%)と なっている. このように,「鮮度」を重視する割合が高いのは,鮮度が野菜の商品価値を構成する雷要な要因であるばかりでなく, 野菜の出廻りが豊富で鮮度雷視の選択が可能であるためといえる.
購買行動と野菜の価格安定 131 (6)情報の集収 表7は,消費者が青果物の購入に際して利用する情報とその集収状況を示している.全体の%以上の主婦がなんらか 表7 情 報 の 集 収 状 況 単位:% 情 報 の 種 類 】構成比率 集 め る(A) (世常) 】 62 新聞のちらしをよくみる ラジオ・・テレビ・新聞等の市況に注意する いくつもの店をまわって比較する 店の人の意見を参考にする テレビ・新聞・雑誌等の料理献立をみて その他 4 9 9 6 3 9 5 ︵0 5 8 9 1 3 1 1 1 訳 合 計 集めない(B) (健帯) ll、 \:− 調査方法および集計方法は表2に同じ の情報を集めている.情報源としては,「新聞のチラシ」や「店の人の意見」といった小売商のセ−ルス・プロモーシ ョンをそのまま利用している主婦が半数以上を占めており,「ラジオ■,テレビ,新聞等の市況」や「いくつかの店を■ま わって比較する」といった客観的情報の利用を大きく上廻っている. 客観的情報の利用が少ない理由としては,「あまり参考にならない」,「忙しくて見ていられない」,「放送時間が不適 当」等がいわれている(8). 以上でみてきたように,消費者の青果物購買行動は,①店舗選択行動の不活発性,⑧購買頻度の高さ,⑨価格に対す る無関心さ,④購入品目選択行動の硬直性,⑤情報利用のまずさ等から山見不合理にみえるが,青果物の商品特性と消 費特性を考慮すると必ずしも不合理であるとはいいきれない点がみられる. $.消費者に対する対策 ここでは,以上において明らかにした消費者の購買行動の実態とさらに新たな調査結果にもとづいて,野菜の価格安 定化の基本の1つである,消費者の青果物購買行動の合致化対策のあり方について若干の検討をしてみる. まず,消費者が流通問題や価格問題に対してどのような意見を持っているのかを本調査の結果から要約してみる.最 も多かった意見は,「流通経路を簡略化し,中間マL−ジンを削減することによって安価な商品を供給すべきだ」といっ た,流通機構に対する不信や不理解から生じたと思われる意見であった.J■また,価格安定に関する意見も多く,「作付 調整や出荷を通じて需給を調節すべきである」,「生産者に対しては生産者価格の保障をおこない,消費者に対しては標 準価格や基準価格を設置すべきである」という意見が出されている. このように消費者は,自己の購買行動が持つ不合理性を問題にするよりも,流通機構への不信や行政の資任を問題に しようとする傾向がみられる. もちろん,藤谷氏のいわれるように(○〉,青果物購買行動の合致性,不合理他の程度を社会的に計りうる尺度はあり 得ないのであるが,消費者が合理.的な購買行動をおこなうには,少なくとも次のような意識と行動様式を持つ必要があ るといわれている(10).まず,消費者が持つべき意識としては,購買行動をおこすに先立ち,①主体的判断を確立する こと,⑧白からの行動バク・−ンをはっきり認識すること,⑨白からの食生活バク・−ンを確立することがあげられる.ま た,行動様式としては,①これらの確立した意識に従って購買行動をおこなうとともに,㊤正確な商品知識を身につけ る努力や,⑨店舗選択行劫を活発化(小売店の比較検討)することがあげられる.
これらのことから消費者の騰売行動を合理的にするには,消費者に流通機構の機能を認識させるとともに,ノ合理的な 購買行動を行う上で必要な意識や行動様式を消費者がもつように教育や誘導をすることが必要となる. 一方,価格変動は需給のアンバランスから生じるのであるが,野菜の場合供給は主に天候によって変動するため,あ まり長期間のものでなく,短期間で通常の状態にもどるものである.そのため安い時にまとめ買いをしたり,供給の一 時的不足による価格高騰時には,高騰した野菜の購入をやめ他の野菜で代替するなどの対策をおこなネば価格高騰をあ る程度抑制することができる.しかし現実には,消費者の価格に対する額関心さや,購入バク・−ンの硬直性,あるいぼ 情報の利用のまずさ等の理由で,価格高騰を抑えるような購買行動がなされていない.もちろん,たとえ消費者が合理 的な購買行動をおこなったとしても,家庭における貯蔵施設の狭少性や情報が不完全なため,価格高騰を抑えるような 購買行動をすることが困難であ寧. したがって,消費者の購買行動を合理的にするには,家庭における大型貯蔵施設の普及や消費者が有効に利用■できる ようなきめこまやかな情報の充実(たとえば,品目どとの生産流通状況や小売価格の状況など)が必要となる. 以上のことから,消費者の購買行動の合理化対策としては,大きく分けて2つ考えられる.1つは,消費者が自己の 購買行動をより合理的にしようとする努力を助成したり,あるいは消費者が合理的な購買行動を行なうように啓蒙する 対策である.具体的には消費者に野菜の流通機能を認識させたり,あるいはどのような購買行動をとるのが最も合理的 であるかを啓蒙するような消費者教育と誘導対策である.他の1つは,消費者の努力だけでは合理理的な購買行動の達 成が困難な場合の対実であり,具体的には家庭における大型貯蔵施設の普及対策や充実した情報の提供が考えられる. 4.む す び サンプル数が少なく,しかも調査対象者が比較的消費者意識の高い県のモニタ−であるという難点を有するが,購買 行動の合理化対策の一・輯を明らかにできたと考える.しかし,より充実した対策を購じるには,消費者の購買行動原理 の貫徹を阻害して−いる諸要因の解明の他,小売商の販売行動などの検討も必要と考えられる. 「付 記」 なお,本報告の勧校閲をしてくださった森和男教授に感謝の意を表します. 参 考 (り 日本経済調査協議会編:「生鮮食料品流通近代化 の課題」第Ⅱ部2 日本経済調査協議会(1973). (2)束 久雄:「野菜の価格安定」戯林省広報aff 8 (1973). (3)森 和男,久保利文:「膏果物等県内流通休系調 査報告書」香川県112−136(1973). (4)藤谷築次:消費者の背果物購買行動,農政調査委 員会19(1971). (5)森 和男,久保利文:「背果物県内流通体系調査 報告書」香川県117(1973). 文 献 (6)藤谷築次編:農産物流通の基本問題,家の光協会 190(1969). (7)山本 修編:農産物流通の近代化と消費者,家の 光協会 259(1970). (8)日本経済調査協議会編:「生鮮食料品流通近代化 の課題」算Ⅱ部44日本経済調査協議会(1973). (9)藤谷築次:消費者の青果物購買行動,農政調査委 員会 96(1971). (10)山本 修編:農産物流通甲近代化と消費私家の 光協会 285−287(1970). (1978年10月16日 受理)