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ワイルドフラワーの種子発芽に及ぼすスモーキング処理の影響-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報告第49巻 第2号199∼205,1997

ワイルドフラワーの種子発芽に及ぼすスモーキング処理の影響

長谷川暗・松阪充紀・深井誠一・三木政数・中津敏治

Effbctofsmokingtreatmentontheseedgerminationofwildflowers・

HASEGAWA,Atsushi,Mitsum0riMATSUZAKA,SeiichiFuKAI,MasakazuMIKIandToshiharuNAKATSU

Seed germination of36native Australian,South A丘ican and SopthAmerican species

uslngSmOkewasinvestlgated.SmokingtreatmentstimulatedgerminationofAnigozanlhos

舶用祓鮎,」.椚α〃gJがjg,助〃ゐjαクrわ〃0お,助c(フ/汐血5∽αC′OCα甲α,物ocαか肌用αrPム助椚,

PYOtea COmPaCla,Tnysanotus multifloTuS,柁YilcoYdia nitens・On the other hand the smoking suppressed seed germination ofNi(yLgiajloribundb,劫3ithea coerulea,Protea

neYiyblia,Ph Yq)enS,Schizanthusgrahamii.Se$dlingfromsmokedseedsofActinostYObus pyramidblis andTlac々ymenecaeYulea showedhighersurvivalcomparedwiththoes fi−Om

non−treatedseedsaftertransplantlngtOSOilcohtainlng蝕tilizer. キーワード:スモ・−・キング処理,ワイルドフラワー・,種子発芽促進,木酢,竹酢 緒 オーストラリアや南アフリカの乾燥地帯では山火事が頻発するが,そこには長期間乾燥に耐えた 非常に堅い果実の殻が,山火事に遭遇して燃えることによりロを開き,種英を地上に落として初め て発芽にいたるある種のユ1−カリやバンクシア,プロテアなどの植物が自生することが知られてい る.あるいは煉に燻されると種子発芽が促進される植物も知られている.またそれらの種子発芽は, 燻を通したスモー・クウオ一夕{−・(smokedwater)でも促進される(ユ2).しかし,原因の詳細は不明で ある.日本では,山火事に遭遇したあとの植物の種子発芽や種子発芽に及ぼナスモー・キング処理の 影響についてほとんど研究されていない.本研究は,南半球の乾燥地帯に自生するワイルドフラワ ーの種子発芽に及ぼすスモ−キング処理の影響についての確認と,さらに木酢(3)および竹酢がスモ −クウオ・一夕1一と同様の効果を持つか否かについて1検討した.

材料および方法

実験1.種子発芽に及ぼすスモ−キング処理の影響 現地購入および種苗業者から購入したオ・−ストラリアと南アフリカ原産の24種(26種類)の種子 を,20×14×5cmのプラスチックパックにパ・−ライト単用で播種したのち十分に湛水し,枯れ葉を 燻して20分間スモ・−・キング処理(以下S処理)した.

S処理は,横135×奥行き68×高さ160cmの軟弱野菜の発芽用金属製棚に播種したプラスチックパ

ックを戟せ,ビニールで金属製棚を覆ったのち,ドラム缶を半分の高さに切って作成した燃焼缶か らダクトを通して燵を導入して行った(第1図).燃料には農場内で集めた広葉樹の落葉を,20リ ットル使用した.処理後は15∼18℃以上に加温したガラス室内で発芽させた.調査は毎週行い,発 芽率に変化が認められなくなった時点で終了した.

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k 200 香川大学農学部学術報告 第49号第2号(1997) 第1図.簡易装置によるワイルドフラワー種子のスモーキング処理 種子数は各処理区50ないし100粒を基本としたが,種子数の少ない種では各区ほぼ等数になるよ うに配分した.また覆土は,原則として種子の大きさの1∼2倍の厚さとしたが,毛で覆われた Protea属の種子では,種子の本体が用土中に埋没する深さになるよう縦にさし込んだ. 実験2.種子発芽に及ぼすスモーキング処理および木酢,竹酢の影響 S処理効果の再確認に加え,木酢および竹酢がスモークウオーターと同様な効果を持つか確認す るために,それらの1,000倍液を,播種後プラスチックパックの底面から流れ出る程度の充分量を 処理した.材料には,前実験で使用したいくつかの種と南米原産の数種の合計20種を用いた.なお, 本実験ではS処理時間を30分間に延長した.

結果 と 考察

実験1で供試した種名および播種数と8週間後の発芽率を第1表に示した.無処理と比較し発芽 促進効果が認められたのは」J吻αα〃′厄∫ mα〃gJ甜J∫,g以Cα(岬加 ∽αCrOCα甲α,タro血 COJ呼αC娩 7み∫8〃助∫ m“頻伽用∫であった.また,播種数あるいは発芽数が少なかったd〃如Zα〃J力0∫ ゐ〃椚〟れ βα〃kね占〟′滋〟れ坤pocゆ′I王′〃α和鮎加!,柁デ庇ordα〃鹿′J∫もS処理効果があると考えられた.一方, 州ヴ蕗iα ガor血ナ!血,P′℃加 ′?er∫押JれProJe〟 ′甲e〃∫はS処理で発芽率が低下した.」cJg〃0∫Jroム“∫ 〝′Ⅵ椚んね/ね,」′!画調′‡血∫メαVんね∫,肋Jgc力りび〟〝7CJ〃∫α乃〟椚‘Gabriel’,月ゐ0血′∫才力e′”α喝/α∫g‘Rose’は S処理の効果がほとんどなく,対照区と同様な発芽率となった.以上のように,S処理が種子発芽 に及ぼす影響を分類すると,対照区と同様な発芽を示した種(第2図−A,C)とS処理により発 芽が促進された種(第2図−B),逆に抑圧された種(第2図−D)に三大別できた. 実験2で供試した種名および播種数と6週間後の発芽率を表2に示した全体に発芽率が低く,S 処理および木酢あるいは竹酢の効果は明瞭でなかった.S処理の効果が認められたのはβα〃血∫α 甲eCわ∫α(第3図−A)と低い発芽率ではあったがぶc力たα′‡血∫Cα〃血∫の2種類であった.播種数お よび発芽率が低かったPro/eα叩/㍑〃・0ねk∫もS処理の効果があるように考えられた.一方,Pα∫油eα coerulea(第3図−B),Protearepens,Sthizanlhusgrahami′ではS処理により発芽率が低下した. 肋Iich′yTum Cinianum‘Gabriel’(第3図−C)は実験1と同様に,どの区でも播種後1週間以内 にほぼ80%以上の発芽率となったが,6週間後の結果ではS処理区および竹酢区,木酢区,対照区 の順となり,各順位間に有意差が認められた(LSDTest,p=0.05). 本実験で用いた種子は来歴が不明であることや種によっては供試種子数が少なく,厳密な結果を 得るには問題があった.二つの実験を比較すると,S処理時間が10分延長することによりProJeα co′坪αJαでは発芽率が低下し,−一方Pro′eα 〃erg的J′αでは向上した.このように種によって反応が一

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201 長谷川:ワイルドフラワ・−の種子発芽に及ぼすスモ−キング処理の影響 表1.実験1で使用したワイルドフラワ−および種子数と8週間後における発芽率 対照y S処理y 種 名 原産地Z 種子数 発芽率(%) 種子数 発芽率(%) 07429070700803298024648172 85165060 10701001756 117341 1 1 1 1 アアアア オオオオオオオオオオオオオオオオオオ南南南南オオオオ 20000 400003340058200694000000029 04 1 002 55550251 1 1 11 1111 96097775800005487082281446 75 667 85518 604 31715 1 50000235005820069400000939 20000 04 1 002 55550251 dc血05か0∂〃ぷPγrα椚肋鮎 .jJ〃gO=dJJJ毎∫/ねlゾ血∫ .4′】せ0ニ〟Jけ巌)∫血〝〃〟は ‥ βα乃ゐgdゐ〝′(ねgJ∫i CbJ肋Je椚0乃岬eCわぶ〟5 CJJα刑eJのJC山肌!J両面Ⅷ血〝J g〟Cα(岬ぬ∼CαJ呼射ね 助cα如,加椚αC′OCd岬α 助鹿α0′Jゐor′卸〃C(一 助Jねぁり凋緑川α〟′−eα 助IichrysumcinianumlGabriel● 伽oc(Zか椚椚αrOおf〟椚 〟身αrr由岬. 叫γわjαβ0′一泊〟乃ゐ P′OJeαCO〝甲αCJα P′Pおαり朋α′P∼ゐ P和おα〝g′ゆノブα ProJeαr甲e〃ぶ Rゐ0ゐ〃Jカe椚α〃gお出’Rose− 撒印刷伽Ⅷ融解椚 乃αCわ′椚e〃eC(‡e′以地α IセJ・J∫coHガα扇Je/15 如区を示す・ 表2.実験2で使用したワイルドフラワーおよび種子数と6週間後における発芽率 種 名 原生地Z 種子数/区y対照(%)S処理(%)木酢(%)竹酢(%) 68600280248080020000 559 15 32 2 1

オオオ酢酢醐酢酢即断醐醐献献腎オオオオ

55515522225555551352 00050066550000006000 4600 25 421 3 2 864024800000462200000 479 14141112 2 86070022022620440000 469 23 41 3 1

2820025082ごUOOO2040000

山鹿飽肌血軋伽祓加−Red’ 助〃恕∫α軍gぐ∼のα HdichrysumcinianumlGabriel一 エe〟Cαde〝加〝d∫COわ′ エe〟CO平er椚〃椚COrゆ肋椚 劫ぷf才力edCOer〟Jeα 乃■0′eαCO/J甲αCぬ ルりJeαα乃αrOjぬ ルーOgeα〝er∼的J∫α 乃ofeα′(pβ〃5 jk肋甲eぬ血椚gq叩〃〟椚 及戒払∽頭胱Cα乃dg〟∫ 企んたd′J〟M∫g川舟川血 ゐ J 陀′ggCOr威α 陀r′jcor成α 陀′∫jco′成α 陀′′メCO′成α 00鹿rメg ′jcoわ′ Cカり岱α〃′力αVαrクre由∫j βr′−e5Jjf ;;:;;ご/し†′‘∫ 陀′′jc(肌九=痛朗㌦ Zオ:オ1−ストラリア,南ア:南アフリカ,南米:主にチリを指す. y実験区:対照区(対照),スモ−キング処理区(s処理),木酢区(木酢),竹酢区(竹酢)の4区. 木酢,竹節処理は1000倍液を播種容器の底穴から滴る程度の畳を処理. X同一・種ではあるが,入手先が異なる.

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202 香川大学農学部学術報告 集49号第2骨(1997)

00鋤m〓〃餌50棚卸20柑〇

一1 ︵鱒︶ 掛轍麗

60 50 棚 卸 卸

︵訳︶ 掛軸釈 0 0 1

00鱒抑70餌50亜Ⅵ〓仙川00

■.一■t ︵訳︶掛鰍沢

1 2 3 4 5 6 了 8

週 (D)

1 2 3 4 5 6 7 8

週 (C) 第2図.スモーキング処理後におけるワイルドフラワー種子の発芽率変化 走でなかったが,オ一ストラリアでは60分間処理しており(1),本研究での処理時間が短かったと判 断される.10%のスモ・−クウオータ・−で12∼36時間種子を浸潰する方法(1)や,種によって異なるが 1∼20%のスモ・−クウオ・−・夕・−溶液施与で発芽が促進される(2)が,スモ−クウオーターと同様な効 果が期待された木酢や竹酢では明確な効果は認められなかった.スモ・−クウオ1一夕・−は20リットル の水に連続的に60分間煙を通して作製するが,一方,木酢や竹酢は乾留して生ずる気化成分を冷却 して液化したもの(3)であり,当然成分が異なると考えられろ.スモークウオ・一夕・−中には71の活性 物質が検出されたが,それらは邦co血〃ααJ毎月〟dぉの発芽に射し促進効果を示さなかったり).球根の休 眠打破や萌芽がエチレンで促進され‘56〉,マメ科のq忙毎由加お′椚dねやCJ〟∂ね〝Zαぬでは煙中のエチ レンが発芽を促し,スモ・−クウオ1一夕1−中のoctanoic acidが種皮の吸水に関与するとしている(7).ま た,山火事が発生しやすい場所と発生しにくい場所に別個に分布する多肉植物肋e椚ムrγα〝娩e那Ceαg

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203 長谷川:ワイルドフラワ・−の種子発芽に及ぼすスモ1−ヰング処理の影響

のそれぞれの種に射し,煙が発芽を促進したことから,煙中の発芽促進成分は,山火事が発生しや

すい環境に自生する植物に対してのみ効果的に作用するのではない($〉ことも明らかとなっている・ スモーキング処理やスモークウオー・ター・の直接的な発芽促進作用が何によるものか解明が待たれる・

本実験では南半球に自生する植物を材料としたが,スモーキング処理により種子発芽が促進され

る植物が日本に自生するとの情報はない.しかし,同じ北半球のアメリカ大陸北部のタイガ地域に

80

70

60

(訳

40

︶ 掛釈 0 0 0 2 1 0 5 9 8 ︵訳︶ 掛柵釈

第3図.スモーキング,木酢および竹酢処理後におけるワイルドフラワー種子の発芽率変化

(6)

香川大学農学部学術報告 第49号第2号(1997) 204

自生するマツ科のジャクパインは,山火事に遭遇してから乾燥した松砥が開き,他の植物の焼け跡

に優先的に発芽して純林を形成する.またセコイヤは火事のストレスで充実した種子が生産され,

そ・れが樹皮が薄いために山火事で枯死した広葉樹の跡地に若木を生長させる(9).Great Basin砂漠に

自生する野生種のタバコ邦co血〃α αJお乃〝αぬの種子発芽は,樹木の煙中のイオン化成分により促進

され(4),焼け跡の土でも促進される(10).このように北半球にも,山火事で種子形成あるいは発芽が

促進される種もあり,さらに多くの植物での検証が期待される.

本研究で使用したいくつかの植物では,発芽常を肥料分を含み排水良好な用土に移植すると枯死

するものが多かったが,S処理効果の高かった種やS処理で発芽した苗の生存率が高かった(第3

表).この結果は,S処理の効果はただ単に種子発芽ばかりでなく,幼苗の肥料耐性との関係で検

討する必要があることを示唆するものと考えられる.

表3.スモ」キング処理がワイルドフラワ・一実生宙の生存に及ぼす影響

苗数(本) 生存数(本) 生存率(%) .Jc血05JJ・0占IJり?)・用′雨‘ねJf5 対照区 S処理区 乃αC妙椚e〃eCαer〟〟e(才 対照区 S処理区 摘 要 スモーキング処理(S処理)で種子発芽が促進される植物が自生するか−ストラリア, 南アフリカのワイルドフラワ、一に加え,南アメリカ原産の数種を材料七し,種子発芽に及 ぼすS処理の影響について検討した 1日20分間のS処理の結果,オ−ストラリア,南アフリカ原産の24種のうち発芽促進効果 が認められたのは血なαα〝虎05 椚α喝J郎j∫,助cdJ汐加 椚αC′α叫叩,βⅦ伽= 00′坪αeれ 叩押伽加齢〝血相肋Ⅶと,播種数あるいは発芽数が少なかったd〃なのα乃血β如‘椚〟ね,βα〝血ね ∂〟′血〟れ物OCαか朋椚α ′りゐ封お椚,陀rJ加′血 〃如那であった・−・方,叫γおjα 陶′肋〝血, 伽Jeα〃e′ゆ肋,伽寝d呼e乃5は発芽率が低下し,dc伽“抽∂∽βγ′α用地払血な〝α乃血ぶ 脚v励5,肋Jjcカー叩〃m Cf血刀〟椚‘GabIiel’,尺ゐ0血血椚α乃gJe5fよ‘Rose’では効果が認めう れなかった. 2.S処理を30分間に延長した結果,発芽促進効果が認められたのは助成血騨読Mと低 い発芽率ではあったが&戯お血血ば(矧適加の2種であり,播種数および発芽率が低かった 脅pおdぐγ〝α′OjゐもS処理の効果があるように考えられた・・−・方,蝕肋eαCOe用Jeα,丹0加 ′甲e那,立地α乃血5g相済のmjでは発芽率が低下した一・β独力r叩〟mC血α乃〟椚‘GabTiel’は前実 験と同様に,1週間以内に80%の発芽率となったが,6週間彼の結果で鱒S処理区および 竹酢区,木酢区,対照区の順となり,対■照区に比べそれぞれの処理の効果が認めちれた. 3..発芽常を肥料分を含み排水良好な用土に移植すると枯死するものが多かったが,S処 理効果が高かった種やS処理で発芽した首の生存率が高かったことから,S処理の効果は 種子発芽ばかりでなく,幼首の肥料耐性とも関与することが示唆された.

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長谷川ニワイルドフラワーの種子発芽に及ぼすスモ・−キング処理の影響 205

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