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はじめに ラズベリーは 欧米では主要な多年生の小果樹の一つで 東北地方のような寒冷な気候の土地で広く栽培されています しかし 国内供給のほぼ全量を輸入に依存している状況にあり ラズベリー果実の輸入量は 最近の 15 年間で3 倍以上に増加しています これまで わが国に適合した栽培技術体系が確立してい

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国産ラズベリーの栽培・流通のてびき

平成 24 年 3 月

農林水産省 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業

「国産ラズベリーの市場創出および定着のための生産・流通技術の開発」

研究グループ 編

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はじめに ラズベリーは、欧米では主要な多年生の小果樹の一つで、東北地方のような寒冷な気候の土地で広く 栽培されています。しかし、国内供給のほぼ全量を輸入に依存している状況にあり、ラズベリー果実の 輸入量は、最近の 15 年間で3倍以上に増加しています。これまで、わが国に適合した栽培技術体系が確 立していないため、商業栽培といえる規模での生産は未だ行われていません。また、ラズベリー果実は、 柔らかく日持ちが短い特性をもっており、輸送中にドリップが出てしまうため、実需者が求める品質で 果実を届けることが困難な果実です。このため、国内においてラズベリーの生産・流通がほとんど行わ れてきていません。 このことから、生産現場および流通現場が解決すべき課題に取り組み、国産のラズベリーの市場を創 り出し、生産の振興と生産地域周辺における新しい産業クラスターの形成による自給率の向上を図るた め、農林水産省の「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業」を活用し、秋田県立大 学が中核機関となって、宮城県農業・園芸総合研究所、秋田県農林水産技術センター果樹試験場、山形 県最上総合支庁産業経済部農業技術普及課産地研究室、(独)農研機構果樹研究所、東京農業大学農学部 の共同機関とともにプロジェクト研究「国産ラズベリーの市場創出および定着のための生産・流通技術 の開発」(2009~2011 年度)に取り組んできました。本マニュアルは、その成果をまとめて公開したもの です。 本マニュアルの公表に当たり、とりまとめに尽力された共同研究機関の研究者各位、ご協力いただい た生産者・指導機関各位に心から感謝申し上げます。今後、このマニュアルが現場の指導者や多くの生 産者・流通業者に活用され、国産のラズベリー生産・関連産業の発展の一翼を担うことを期待していま す。 平成 24 年 3 月 研究総括者:今西 弘幸(秋田県立大学)

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目次 はじめに 1.ラズベリーの需要動向と国産果実の需要可能性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 (1)市場規模 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 (2)生鮮果実の需要動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (3)冷凍果実の需要動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (4)国産果実の生産振興と需要拡大のための課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ①生鮮果実について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ②冷凍果実について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2.栽培 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (1)品種 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (2)栽植方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 1)根域制限を行う栽植方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2)雨除け被覆 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 3)多雪地での栽植方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 4)水田転換園(排水不良土壌)への栽植方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 ①排水不良土壌では生育できない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 ②排水不良土壌での植え付け方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (3)栽培管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 1)土壌管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 ①施肥 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 ②土壌物理性の改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 2)潅水 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 3)仕立て方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ①誘引方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ②整枝・せん定方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ③夏季せん定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 ④多雪地での仕立て方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 4)主要害虫に対する防除技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 ①アザミウマ類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 ②ハダニ類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 ③ショウジョウバエ類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

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④その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 5)収穫 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 ①収穫方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 ②収穫労力の分散方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 ③多雪地における秋果のみの収穫 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 3.流通 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 (1)生鮮果実の収穫後の取り扱い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 (2)生鮮果実の出荷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 (3)冷凍果実の出荷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 4.事例によるモデルの提示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 (1)事例の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 (2)「専用ハウス・地植え栽培方式」の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 (3)「水稲育苗ハウス利用・ポット栽培方式」の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 (4)「露地栽培方式」の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 (5)組織化して産地づくりに取り組む必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

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1 1.ラズベリーの需要動向と国産果実の需要可能性 (1)市場規模 ラズベリーは、消費の変化に伴う果実需要の多様化や、健康志向の高まりのなかで機能性に優れてい ることが注目され需要が拡大してきた。しかし現状では、国内での果実生産は極めて尐なく、その多く は一般流通に乗ることはなく、輸入果実によって需要の大半が満たされている状況にある。従って、輸 入果実の出回り量が現在のラズベリーの市場規模を示しているといえる。 図1に示されるとおり、ラズベリー類(大半はレッドラズベリー)の輸入は 1990 年代後半まで冷凍果 実がほとんどで、数量も 1,000 トン弱で推移してきた。それが 2000 年以降、洋菓子店等の需要増加に合 わせて急速に増加してきた。 冷凍果実は、加糖も含め 2000 年代中頃には 3,000 トン近くに増加したが、現在は約 2,000 トンが輸入 されている。生鮮果実(図2)については、空輸により一定量が周年供給されるようになり 450 トン前 後の輸入量となっている。 図2 輸入生鮮ラズベリーの荷姿(大田市場で撮影) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 19 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 20 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 (t)

図1 ラズベリー類の輸入数量の推移

資料:財務省「貿易統計」より作成 注)生鮮果実においては、ラズベリーのほか、ブラックベリー、桑の実、ローガンベリーが含まれてい る。冷凍果実には、さらにローガンベリー、カシス、カーランツ、グースベリーが含まれている。 生鮮果実 冷凍果実(加糖) 冷凍果実

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2 (2)生鮮果実の需要動向 生鮮果実の輸入量は先述のとおり年間 450 トン前後で推移しているが、その大半は米国カリフォルニ ア産(W 社)により占められている(表1)。そのため国内市場においては、カリフォルニア産ラズベリ ーの出荷規格や荷姿(1パック 170g×12 パックで1ケース2㎏)が定着しており、品質面や量的な安 定性において流通業者や実需者の評価も高い。 カリフォルニア産のシェア拡大の要因は、①日本向けの出荷に合わせて早期収穫を実施していること、 ②端境期をなくして安定供給を実現したこと、③日本向けに小粒品種を導入したことである。 つまり、現在のラズベリー需要においては、果実の柔らかいラズベリーに対して、流通適性を向上す ることでドリップやカビの発生を抑えることが何よりも求められており、実需者が年間通じて何時でも 使用できるように、周年供給を実現することで生鮮果実の需要が拡大されてきたということができる。 図3でも、生鮮ラズベリー類の輸入量は各月とも数量を増加させ、周年供給を意識しながら拡大してき たことが分かる。 また、ラズベリーは海外では主要品目として古くから消費されており、品種改良も進められて大粒品 種が主流になっている。他方で、主にケーキ等の飾りとして使用される日本においては、小粒の方が 1 パック当たりで多くの商品を製造できることから小粒品種が求められてきた傾向がある。ただし、需要 (割合%) アメリカ 415.2 (93.6) 100,077 2,410 メキシコ 27.2 (6.1) 3,676 1,350 カナダ 0.6 (0.1) 111 1,797 イラン 0.5 (0.1) 55 1,090 合 計 443.5 (100.0) 103,919 2,343 冷凍果実 (加糖) アメリカ 98.0 (100.0) 4,133 422 チリ 373.2 (21.4) 16,896 453 ニュージーランド 343.1 (19.7) 8,018 234 セルビア 315.1 (18.1) 19,344 614 アメリカ 267.1 (15.3) 10,953 410 フランス 228.7 (13.1) 15,043 658 ポーランド 82.7 (4.7) 3,689 446 デンマーク 73.9 (4.2) 1,459 197 カナダ 35.1 (2.0) 1,062 302 ハンガリー 20.0 (1.1) 1,024 512 オランダ 3.0 (0.2) 73 243 イタリア 1.8 (0.1) 153 845 合 計 1,743.6 (100.0) 77,714 446 表1 ラズベリー類の国別輸入状況[2009年] 生鮮果実 冷凍果実 資料:図1に同じ 国  名 数 量 (トン) 金 額 (万円) 単 価 (円/㎏)

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3 の広がりや需要の定着次第によって、今後は海外と同様に大粒品種も求められることも想定される。 生鮮ラズベリーの主な需要先は洋菓子店やホテルで、ケーキやデザート(ミックスベリー)の材料と して使用されている。小規模零細な洋菓子店が最大の需要先であることから、尐量による分荷・販売が 必要となることから卸売市場流通を介して多くが実需者に届けられている。 地域的にみれば首都圏や関西圏の大都市に傾斜しており、地方の場合は首都圏卸売市場から地方市場 への転送に頼らなければならず、地方の実需者には生産輸入果実の入手が困難な状態である。 輸入生鮮果実の価格状況は、首都圏の卸売市場における聞き取り調査では、1 パック(170 グラム)当 たり 650 円前後で納品されており、㎏換算にすると 4,000 円/㎏前後となっていた。これが現在の価格水 準においては一つの目安となるであろう。しかし今後、国産果実の生産拡大とそれに合わせた供給量の 拡大が進めば、当然、価格の低下も想定される。産地戦略や経営計画もそれを念頭に検討することが望 ましい。 図3 生鮮ラズベリー類の月別輸入数量の推移 資料:図1に同じ (3)冷凍果実の需要動向 輸入冷凍果実においては、生鮮果実と異なり多数の国から輸入されている。また、果実品質や荷姿、 単価水準においても違いが見られる。国別シェアは年ごとの変動もあるが、2009 年においては表1に示 されるように、チリやニュージーランド、セルビア、アメリカがそれぞれ約2割を占め、その他、フラ ンス、ポーランド、デンマーク等の EU 諸国からの輸入が存在する。 チリ産およびフランス産の果実を取り扱う輸入業者から聞き取りを行った結果からは、冷凍果実の主 要形態については、「ホール」、「ブリゼ(砕け)」に大きく大別されることが分かった。また、洋菓子店 等では手軽にソース等に使用できる「ピューレ」が広範に使用されている。種が除かれ使用し易いピュ ーレは洋菓子店等での需要も大きく、このような一次加工を導入していくことも国産果実の需要拡大に は重要である。 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (トン)

図2 生鮮ラズベリー類の月別輸入数量の推移

資料:図1に同じ 2009年 2005年 2000年 1995年 1990年

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4 図4 輸入冷凍ホール果実(左:チリ産、右:フランス産) 図5 冷凍輸入果実(ブリゼ形態)とピューレ(1㎏パック) ホールについては、チリ産・フランス産ともに実崩れの尐ない‘ミーカー’、‘ヘリテージ’といった 品種が主流となっている(図4)。形状が崩れても問題ないブリゼ(砕け)、ピューレについては、フラ ンス産において完熟時に味と色の濃い‘ウィラメット’が用いられていた(図5)。このように、用途に よって使用品種が分別されている。 冷凍果実は、国別・形態別に価格帯が異なり、また、需要先も様々である。例えば、ホールにおいて は、チリ産で実需者への納品価格帯は 700~1,000 円/㎏であり、フランス産では 2,000 円/㎏、また秋田 県の洋菓子店では 500gで 1,600 円の果実を使用していた。このように価格の開きが大きいが、それに合 わせて、低価格帯の冷凍果実はジャム・ソース加工業者を中心とする大ロット需要に対応しており、近 年ではフレッシュジュースの原料としても供給されている。他方で、果実形状や色の良い高価格果実は 洋菓子店へと供給されている。その他、フランス産の聞き取り調査からは、ブリゼで 1,000 円/㎏前後、 ピューレは 1,500 円/㎏といった価格水準であった。 品質面において、EU 産であっても石・枝・プラスチックなどの異物混入が多いということである。こ の点でも市場評価の高い生鮮果実と異なり、これら異物混入を抑えることが国産の優位性に繋がるとい える。 (4)国産果実の生産振興と需要拡大のための課題 ①生鮮果実について 現在、輸入生鮮果実の流通に関しては、小規模零細な洋菓子店が最大の需要先であることから、尐量 による分荷・販売が必要となる。地方の実需者は首都圏卸売市場から地方市場への転送に頼らなければ ならず、コスト・鮮度の量面で課題を有している。以上のことより、特に産地形成初期段階においては、

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5 安定的に生鮮輸入果実が供給される首都圏より、地方都市の消費地域で市場を開拓することが重要であ ると言える。 また、今後、国内生産で周年供給を実現できる可能性は低く、その点ではカリフォルニア産果実より 不利である。そのため、長期安定出荷を目指すとしても、国産ラズベリーについては特定の時期を「旬」 として実需者に認知してもらうように働きかけ、生鮮果実だけで考えるのではなく、冷凍果実を含めて 安定供給していくことが必要であろう。 生鮮果実の価格については、実需者への納入価格から 4,000 円/㎏前後で取引されており、輸入品と競 争していく上で一つの目安となる。秋田県五城目町の生産者組織による洋菓子店への販売においても実 際に 4,000 円/㎏で取引されている。ここでは品質保持の面で一定の要望はみられたものの、価格面での 評価は良好であった。ただし、国産果実の供給が増え、輸入品との競合や、国内産地間での競争が出て きた場合には他の品目と同様に価格の低下が進むことが想定される。 生鮮果実は高単価が望めるが、求められる品質基準面では、輸入果実を使用している実需者ニーズか らは、独占状態にあるカリフォルニア産と同等の品質基準への要望が強い。具体的には、形状において 「小粒品種」が求められており、ドリップやカビが出にくく、果実の硬さが問題とされており、食味と いった内的品質よりも流通特性に対する関心が高い。他方で、国産に対する評価は輸入品より低く、流 通特性を高めて、輸入品と同等の品質に近づける必要がある。そのため品種的には「硬め」のものが求 められているといえる。また、秋田県での実態調査からは、「つや」や「色」で鮮度が測られており、輸 入品との明確な差を出すためにはこの点にも留意が必要である。 以上のような要望に応えるためにも、早期収穫をしつつ、カラーチャートなどによる収穫基準の確立 が求められる。さらに、予冷も含めた流通技術の向上の必要性がある。 荷姿については、まず輸入品については果托が抜かれた状態であるが、宮城県の先進農家および秋田 県五城目町では果托を抜かないで出荷しており、実需者の評価としても日持ちの面から果托付きを受容 している。このような新たな出荷規格を提案するためにも、すでに既存の輸入果実を利用している実需 者の多い大都市よりも、生産現場に近い地方都市に所在する実需者への需要開拓が当面の目標となるで あろう。 ②冷凍果実について 近年の輸入冷凍果実の市場規模は、為替レートや不況の影響などで一時期の 3,000 トンレベルよりは 縮小傾向にある。しかし、長期的にみれば、ラズベリー果実の国内需要は定着しており、価格的にも実 需者の使用し易い冷凍果実の需要が大きく落ち込むことは無いと考えられる。そのため、国産需要の可 能性も量的に大きく、輸入量の 5%~10%程度を国産に置き換えるとしても、100~300 トン程度の需要 可能性が想定できる。 先述のとおり、冷凍果実においては多様な形態と価格帯により実需先も分かれており、それを踏まえ た規格基準の提案が産地側には求められる。尐なくとも冷凍状態で果実形状がしっかりしているもの(ホ ール)と、ある程度実崩れが生じているもの(ブリゼ)の2段階に分け、それぞれについて価格を設定 することになるであろう。 生鮮果実と異なり、輸入冷凍果実の品質面については、輸入業者、実需者ともに必ずしも評価は高く ない。輸入品の最大の問題は、石・枝・プラスチックなどの異物混入が多いということである。出荷面

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6 で最低限、このような雑物等のコンタミを抑えることによって国産品の評価は上がることが期待される。 しかし、他方で、同じ冷凍果実であっても、需要が異なる冷凍果実においては、輸入品において品種を 分けている事例が確認された。その点から、実需者の要望に合わせて加工専用品種の導入も長期的に視 野に入れておく必要がある。 また、メッシュ(綿布等)で種が除かれて実需者の使用し易いピューレの需要も大きい。従って、単 に果実のまま供給するだけではなく、このような一次加工を導入していくことも国産果実の需要拡大に は重要であるといえる。 秋田県および山形県では、生産者と醸造業者との連携で冷凍果実を使用したリキュール製造など、新 たな需要も創出されている。このような特産品向けの供給により市場規模が拡大されていくことも想定 され、農商工連携により、実需者とともに新たな商品を開発していく取り組みも重要である。それが実 現されれば、ラズベリーの生産振興は地域活性化の一助ともなることが期待される。

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7 2.栽培 (1)品種 品種の選択には、加工業者などの実需者の意見を取り入れながら、夏季および秋季の収穫期と品種の 早晩性を考慮し、各生産者の経営・作業体系に適した品種を導入する必要がある。 ‘ヒンボートップ’、‘オータムブリス’など近年になって入手可能になった品種がある。いずれも二 季成り性で、秋に1年目の吸枝の先端部分に着果し、越冬した2年目の吸枝が結果母枝となり夏に着果 する(p. 23;「収穫労力の分散方法」の図 57 を参照)。‘ジョイゴールド’、‘ファールゴールド’および ‘ワインダーイエロー’は黄色ラズベリー、‘ハノーバー’は黒色ラズベリーで、その他の品種は赤色ラ ズベリーである。 秋田県(大潟村および横手市)、宮城県(名取市)および山形県(新庄市)の各地における生育特性や 果実特性などの品種特性の結果を示す。 秋田県大潟村では、夏果において‘オータムブリス’および‘レオン’の収量が多く、秋果において は、‘ジョンスクエア’および‘ヘリテージ’の収量が多い(表2、3)。夏季と秋季のいずれにおいて も‘オータムブリス’の果実が大きい。 表2 秋田県大潟村における夏季結実果実の特性(2011 年) 表3 秋田県大潟村における秋季結実果実の特性(2011 年) 品種 収量/吸枝 吸枝の刺 (g) の多尐 前期 後期 初期 後期 初期 後期 オータムブリス 361.9 2.5 - 7.6 - 3.36 - 尐 ヘリテージ 794.9 -z 1.6 - 9.2 - 2.77 中 ジョンスクエア 798.0 - 1.3 - 9.7 - 2.94 無 マリージェーン 356.1 (1.5)y 1.2 (7.4)y 8.4 (3.31)y 2.84 尐 レッドジュエル 37.5 - - - - - - 尐 レオン 0 - - - - - - 尐 ジョイゴールド 0 - - - - - - 尐 zデータ得られず. y8個からの参考値. 1果実重 糖度 酸度 (g) (Brix%) (pH) 品種 収量/吸枝 1果実重 糖度 酸度 (g) (g) (Brix%) (pH) 初期 中期 後期 初期 中期 後期 初期 中期 後期 オータムブリス 905.7 4.2 3.2 3.6 9.1 10.6 9.4 2.75 2.89 3.10 ヘリテージ -z ジョンスクエア 339.9 4.0 2.7 - 7.4 8.8 - 3.07 3.09 - マリージェーン 25.0 1.1 - - 11.1 - - 2.77 - - レッドジュエル 165.1 (1.4)y 1.8 - (9.6)y 9.8 - (2.69)y 2.79 - レオン 578.6 - 2.3 2.4 - 8.8 8.9 n/a 2.96 3.10 ジョイゴールド 341.3 1.9 1.9 - 11.1 11.7 - 2.98 2.91 - zデータ得られず. y7個からの参考値.

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8 秋田県横手市では、夏果において‘スキーナトップ’の収量が多く、秋果においては、‘オータムブリ ス’の収量が多い(表4、5)。 表4 秋田県横手市における夏季結実果実の特性(2011 年) 表5 秋田県横手市における秋季結実果実の特性(2011 年) 宮城県名取市では、夏果において‘ヒンボートップ’および‘オータムブリス’の収量は‘サマーフ ェスティバル’の 1/3 程度であるが、秋果において‘ヒンボートップ’が‘サマーフェスティバル’と 同程度である(表6、7)。果実重は‘ヒンボートップ’および‘オータムブリス’が大きい。 表6 宮城県名取市における夏季結実果実の特性(2011 年) 品種 収穫始 収穫終 商品果率 糖度 酸度 (月/日) (月/日) (%) (Brix%) (pH) ヒンボートップ 6/24 7/14 93.7 (82.7)z 85 2.0 (2.0)z 8.3 3.08 ファールゴールド 6/24 7/11 95.9 (94.4) 98 2.2 (2.3) 8.5 3.06 サマーフェスティバル 6/24 7/22 316.9 (291.6) 84 1.7 (1.9) 8.2 3.00 z( )内の数値は商品果の収量を示す. 収量/吸枝 (g) 1果実重 (g) 品種 収穫始 収穫盛 収穫終 1果実重 糖度 酸度 (月/日) (月/日) (月/日) (g) (Brix%) (pH) ヒンボートップ 9/22 10/13 11/17 258.4 3.5 11.0 2.88 オータムブリス 8/23 8/23 11/11 1179.2 3.0 9.1 2.83 スキーナトップ 9/22 9/22 9/22 1.7 1.7 z サマーフェスティバル 8/23 10/11 11/17 635.7 1.9 11.4 2.83 ヘリテージ 8/23 9/15 11/11 839.0 1.7 9.0 2.83 zデータ得られず. 収量/樹 (g) 品種 収穫始 収穫盛 収穫終 1果実重 糖度 酸度 (月/日) (月/日) (月/日) (g) (Brix%) (pH) ヒンボートップ 7/8 7/24 7/24 43.2 2.7 10.4 2.94 ファールゴールド 7/11 7/15 7/24 115.9 1.6 12.6 3.04 スキーナトップ 7/11 7/21 7/21 1269.0 3.5 10.4 2.95 サマーフェスティバル 7/8 7/19 7/21 169.5 1.8 13.3 3.01 ヘリテージ 7/4 7/25 7/29 694.0 1.5 11.5 3.01 チルコチン 7/8 7/29 7/29 334.0 2.2 12.6 3.1 ハノーバー 7/4 7/8 7/21 652.0 1.7 13.9 3.21 ワインダーイエロー 7/13 7/21 7/29 430.0 1.3 14.4 3.05 収量/樹 (g)

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9 表7 宮城県名取市における秋季結実果実の特性(2011 年) 山形県新庄市では、‘ヒンボートップ’の収量が多い(表8)。‘ヒンボートップ’は果形がきれいな円 錐形をしており、概観が優れ、果托を抜く際に果実が崩れにくい特徴を持っている。なお、積雪による 結果母枝の損傷が多く、夏果の調査はできなかった(p. 24;「多雪地での仕立て方」参照)。 表8 山形県新庄市における秋季結実果実の特性(2011 年) 品種 収穫始 収穫終 商品果率 酸度 (月/日) (月/日) (%) (pH) ヒンボートップ 8/19 10/28 85.3 (82.9)z 97 2.2 (2.2)z 9.8 3.08 ファールゴールド 7/18 10/19 42.1 (39.3) 86 1.9 (2.1) 10.1 3.06 サマーフェスティバル 9/2 11/17 90.4 (81.5) 77 1.7 (1.9) 10.3 3.00 z( )内の数値は商品果の値を示す. 収量/吸枝 (g) 1果実重 (g) 糖度 (Brix%) 品種 収穫始 収穫終z 収量/吸枝 1果実重 糖度 酸度 果実外観y 果托の抜き (月/日) (月/日) (g) (g) (Brix%) (pH) やすさx ヒンボートップ 8/15 11/16 279.5 2.6 9.0 2.6 ◎ ○ ファールゴールド 8/17 11/16 167.7 2.4 8.6 2.9 ○ × サマーフェスティバル(対照) 8/29 11/16 139.9 2.3 8.4 2.9 ○ × z降雪のため結実中だが終了とした. y :◎対照より優れる,○対照と同等,△対照よりやや劣る,×対照より劣る. x:○果実が崩れにくい,△果実がやや崩れる,×果実が崩れやすい.

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10 (2)栽植方法 1)根域制限を行う植栽方法 ラズベリーの植え付け時期は落葉後の秋、発芽前の春に可能である。土壌適応性は広く、適応土壌酸 度は pH5.5~7.0、極端な排水不良園地や乾燥地でなければ良く生育する。植栽前の苗木は根を水に浸け て、十分吸水させておく。苗木は根を広げて植えつけ、充実した茎の太い部分(約 40cm)まで切り詰める。 植え付け後は十分に灌水し、その後も定期的に灌水する。 ラズベリーは地下茎で増えていく特性があり、管理のし易さを考慮すると根域制限を行って定植する ことが望ましい。灌水が定期的に行われる条件であれば、その根域は地表面から地下 10 ㎝程度に集中し、 伸長しても地下 30 ㎝程度までなので(図6、7)、根域制限の際には深さ 30cm 程度、幅 40cm 程度の根 域が確保できれば良い。 図6 二季成り赤色ラズベリー‘サマーフェスティバル’の根域制限方法の違いによる根域分布(2009 年) ※数値は区画内の根の占める面積を 5 段階で判断したもの(0:無,1:尐,2:中,3:多,4:極多) 図7 二季成り赤色ラズベリー‘サウスランド’の根域制限方法の違いによる根域分布(2009 年) ※数値は区画内の根の占める面積を 5 段階で判断したもの(0:無,1:尐,2:中,3:多,4:極多) 地表面 10㎝ 2 1 2 3 2 3 3 2 2 10㎝ 1 1 2 1 0 1 2 2 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 植え溝の深さ:50㎝ 植え溝の深さ:30㎝ 植え溝の深さ:30㎝ 遮根資材:不織布 植え溝の側面および底面を遮根 遮根資材:あぜシート 植え溝の側面のみ遮根 遮根資材:あぜシート 植え溝の側面のみ遮根 地表面 10㎝ 2 1 2 2 2 3 10㎝ 1 0 1 1 1 1 0 0 1 0 0 0 植え溝の深さ:30㎝ 遮根資材:あぜシート 植え溝の側面のみ遮根 植え溝の深さ:50㎝ 遮根資材:あぜシート 植え溝の側面のみ遮根

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11 具体的には、植栽予定地に余裕を持って深さ 50 ㎝程度、幅 50 ㎝程度の溝を掘り、その側面に畦畔板 等の遮根的資材を入れ、掘り上げた土にその量の2割程度の完熟堆肥土を混合して植栽する(図8)。植 栽間隔は、列間 1.5m 程度とし、株間は 50 ㎝程度とする。なお、根域制限の方法には2通りあるので、 圃場条件に応じて選択する。1つは地面に植栽する埋没方法、2つは地上部に資材を設置して根域制限 を行う方法である(図9)。根域制限栽培の注意点として、土壌が乾燥しやすいため定期的な灌水が必要 となることである。そのため、植栽予定地周辺の水源を事前にチェックし、灌水方法(後述)を検討し ておく。 図8 根域制限方法(埋没法) 図9 根域制限方法(栽植箱利用法) 植栽予定地に杉板で幅40㎝,深さ 30㎝程度の枞を作る。鉄パイプな どで枞を固定する。 枞の上に不織布(透水性のあるもの) を覆い被せるように敷く できあがった“箱”の中に,植栽に使 用する土壌を入れる。土壌はその2割 程度の量の完熟堆肥とよく混合してお く。 植栽後に雑草抑制および土壌水分の急 激な変化を抑制するために,杉樹皮な どの有機物を厚さ5㎝程度となるよう 敷く。 幅50㎝程度,深さ50㎝程度の溝 を掘る 側面に畦畔板などを設置。 なお,水はけを良くするた め,畦畔板等の透水性の無 いものを使用する場合は, 底面部分には何も設置しな い。

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12 2)雤除け被覆 東北地方では夏季の収穫(夏果)が6月下旬から7月下旬までと梅雤時期に重なるため、果実が腐敗 しやすい。そのため、生育期間中に雤よけ被覆を行うと、腐敗果の発生率が抑制される(図 10、表9)。 また、天候に左右されることなく収穫作業を行うことが可能となるなど、メリットは多い。 図 10 雤除け被覆栽培の例 表9 栽培条件が‘サウスランド’の腐敗果率及び商品化率に及ぼす影響(菅原ら、2005 年) なお、雤よけ被覆を行って栽培管理をする際の注意点は2つある。1つは雤よけ施設の形状により受 粉環境が劣る場合は、奇形果(図 11)の発生がやや多くなることである。対策としては夏果の花が開花 する5月下旬頃までにミツバチなどの放花昆虫を導入する(図 12)。 図 11 商品果(左)と奇形果(右) 図 12 ミツバチ導入の例 ○全面雤よけは,天候に左右さ れず作業できる。全面設置が難 しい場合は植栽列のみを雤よけ 被覆し,果実に雤滴が当たらな いようにして,果実腐敗を抑制 する。 腐敗果率 商品果率 (%) (%) 雨よけ被覆 1.0 90.9 露地 22.6 76.8 栽培条件

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13 また、問題点の2つ目は、露地栽培に比べてハダニ類の発生が多くなる傾向があることである。ハダ ニ類の被害は葉色がかすり状に退色し(図 13)、葉の光合成能力が著しく低下する。対策としては、通路 に防草シートを設置するとともに株もとに有機物マルチを 15 ㎝以上施用し、園内の雑草を抑制するとと もに、登録のある殺ダニ剤(現在、気門封鎖型の薬剤で数種類ある)を散布する。 図 13 ハダニ類による葉の著しい被害状況 3)多雪地での栽植方法 ここでは、露地での簡易雤よけ栽培を前提とし、土壌水分をなるべく有効に使えるように根域制限を 行わない場合の定植方法について説明する。積雪の多い地域では、秋定植は根付く前に雪が堆積し、土 壌が固められたり、春先の融雪に伴う過湿により根腐れを起こしたりするので春定植を推奨する。春定 植では、消雪後耕うんが行える程度に土壌が乾いた時期に行う(図 14)。 苗の定植は前述の根域制限を行う植栽方法と同様に列状に行うことで、収穫時の動線が良くなり、収 穫作業がしやすくなる。土壌条件や苗の植え付け方法は前述のとおりであるが、定植前に堆肥等を投入 し土壌の物理性を良くし、排水性と保湿性に優れた土づくりを行うことが根張りを良くするうえで重要 である。植え幅を 40 ㎝、株間 40 ㎝の2条千鳥植えとし、ダブルI字仕立てとする(p. 25;「多雪地で の仕立て方」の図 35 を参照)。この場合、翌年の春には株間を新たな吸枝が埋め尽くし1年で成園化が 可能となる(図 15)。しかし、苗の導入コストが大きくなるため、地下茎で自家増殖する性質を利用し、 3年程度かけて成園化を目指すのであれば、株間を 3m 程度の粗植にし、計画的に増殖した苗を補植する (注意 1)とよい。 注意 1:増殖に際しては種苗業者との契約に従うこと。 被害が進むと,このよ うに葉に焼けたような 症状がみられるように なる。

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14 図 14 定植時の様子 図 15 定植翌年春の様子

・定植前に堆肥を散布して植栽列を耕うんし、土

壌と混和する。

・植え幅 40 ㎝、株間 40 ㎝の 2 条千鳥植え

・定植後は根付くまでかん水をしっかりと行う。

・根域制限は行っていない。

植幅 40 ㎝

・通路部は土がある程度固まり次第、防草シート

(透水性)を設置し、吸枝の発生を 40 ㎝幅の列

状に制限して管理する。

・吸枝が列を埋めるように発生している。

・防草シートをはがすと、列の脇の通路部分にも

吸枝が多く発生しているが、防草シートで抑制

されている。

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15 4)水田転換園(排水不良土壌)への植え付け方法 ラズベリーは他の果樹と比較して土壌適応性が広いとされているが、水田休耕地などの排水不良土壌 で栽培する際には注意が必要である。本項では排水不良土壌に対するラズベリーの植え付け方法ついて 紹介する。 ①排水不良土壌では生育できない 水田転換園は一般に地下水位が高く、中には暗渠の破損などにより降雤が地面に滞水するような場所 も尐なくない(図 16)。このような土壌にラズベリーを植え付けた場合、生育できず枯死してしまう(図 17)。 ②排水不良土壌での植え付け方法 排水不良の改良手段としては、①暗渠を整備、②心土破砕(再び水田に戻す予定がない場合)、③排水 路(明渠)の設置、④盛り土(高畝)で植え付ける、などがあげられる。これらの中で①と②は大規模 な作業が必要になるが、③と④は簡便でかつ効果が高い。 なお、排水路(明渠)は、雤除けハウスの外周や樹列間に設置する(図 18)。 図 18 雤除けハウス周囲に排水路(明渠)を設置 図 16 降雤後の滞水 図 17 植え付け後2か月で枯死した苗 木(水田転換園)

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16 また、盛り土(高畝)して植え付ける際は畝の高さを 30 ㎝以上にする(図 19、20)。特に積雪の多い 地域では、雪の重みにより土が沈降するため注意が必要である。 このようにして植え付けることで、降雤による根域の滞水が回避され(図 21)、順調な生育が可能にな る。 ただし、盛り土では吸枝の長さが短くなりやすく、収量も畑地土壌に比べてやや劣るため(表 10)、前 述した①~③の方法も併用し、園地全体の排水性を改善し生育を促すことが重要である。 表 10 栽植方法の違いがラズベリー3年生樹の収量および吸枝の生育に与える影響(2011 年、秋田果試) 図 21 盛り土定植した時の降雤後の状態(水田転換園) 図 20 盛り土して植え付けた直後の様子 図 19 盛り土で植え付ける際の模式図 30cm 以上 防草シート を敷設 50cm 30cm 処理区 収量/樹z 吸枝数 吸枝長 (g) (本) (cm) 水田盛り土区 44.8 42.2±5.0 82.6±3.5 水田水平植え区 -y - - 畑地土壌区 62 13.2±2.4 155.3±8.3 z夏果の総収量. y2009年(植え付け年)に枯死.

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17 (3)栽培管理 1)土壌管理 ①施肥 植栽1年目のラズベリーへの施肥については、植栽列1m当たり窒素成分で5g/年程度とし、3月 下旬頃に全量を化成肥料などで株もとに施用する(図 22)。2年目以降は6g/年程度を基本とし、基肥 で全量施用する。しかし、植栽地の土壌条件によって肥料成分の発現が異なるので、生育期の葉色をよ く観察し、下図の葉色より全体的に色が抜けている(黄色に近い葉色)ようであれば、植栽列1mに対 して1回当たり窒素成分で2g程度を追肥する。追肥資材には尿素など速効性のあるものを使用する。 図 22 施肥により旺盛に生育する様子 ②土壌物理性の改善 ラズベリーは地下茎で増殖するため、根の伸長が悪くなると途端に地上部の生育に影響が出る(図 23)。 具体的には、当年発生する吸枝の発生数が減尐したり、伸長が短くなる等の症状で、栽培年数を経るに つれ出やすくなる。このような場合は、植栽列内で吸枝発生数の極端に尐ない箇所を列幅で深さ 30 ㎝以 上掘り上げ、その同量程度の完熟堆肥を埋め戻す方法を試みるとよい(図 24)。 図 23 根の伸長不良による地上部の生育への影響 ※連年栽培していると,このような症状が出てくることがある。前年までのような吸枝の 発生数や伸長を維持できない場合は,根域土壌の物理性が低下している可能性が高い。

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18 図 24 ラズベリー栽培土壌の物理性改善の方法 掘り上げた土と同量程度 の完熟堆肥を埋め戻す。 植栽列内で,吸枝の発生数や伸長が極端に 悪い箇所を深さ30㎝以上掘り上げる。 前図のような症状がみられた場合は・・・ 左図は植栽1年後に掘り起こした‘サマーフェステバル’の根である。土壌条件が良いと 根は1年でこの程度は伸長する。また,右図は地下で形成されている吸枝である。これら が地上部まで伸びて結果枝となっていくので,根域の維持管理には注意を払う必要がある。 完熟堆肥

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19 2)灌水 土壌の過湿や過乾燥が繰り返される条件下では、ラズベリーの生育は思わしくない。特に、根域制限 や雤よけ被覆などを行うと、外部からの水の供給が制限されるため定期的な灌水が必要となる。灌水は 電磁弁とタイマーを組み合わせて自動灌水にすると便利である(図 25)。 図 25 自動潅水装置設置の一例 株もとに杉樹皮などで有機物マルチを厚 さ5㎝以上となるよう施用すると,土壌 水分の急激な変化を和らげることができ る。植栽列全面に敷くことで,雑草抑制 効果も期待できる。 図 自動灌水装置設置の一例 電磁弁にはタイマー付きのものや,電池で 動くものなど様々なタイプが市販されてい るので,各園地に合ったものを選ぶとよい。 土壌水分を計測するpFメーターを設置 すると,ほ場内の灌水のタイミングが分 かりやすい。

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20 以下に、二季成り赤色ラズベリー品種である‘サマーフェステバル’を用いて、夏果収穫開始予定日 の2週間前から秋果収穫終までの期間の灌水開始を、様々なpF値を灌水開始の目安として行った結果 を示す(表 11~13)。なお、pF値が大きくなるほど土壌水分が尐ない(乾燥している)ことを示してい る。 表 11 灌水開始点の違いが二季成り赤色ラズベリー‘サマーフェスティバル’夏果に及ぼす影響(2010 ~2011 年) 表 12 灌水開始点の違いが二季成り赤色ラズベリー‘サマーフェスティバル’秋果に及ぼす影響(2010 年) 表 13 灌水開始点の違いが2季なり赤色ラズベリー‘サマーフェスティバル’の吸枝生育に及ぼす影響 夏果については灌水開始のpF値を上げることで糖度を上げることができるが、秋果についてはその 差はみられない。また、pF値を 2.5 以上で管理すると、吸枝の発生本数が減尐し、次年度以降の栽培 に影響が出る可能性がある。そのため、灌水開始のタイミングについてはpF値が 2.3 を示したら行う こととする。 調査年 商品果率 1果重 1商品果重 うち商品果収量(g)y (%) (g) (g) 2010年 pF2.1 328.2nsz 321.2ns 95 2.2ns 2.3ns 9.0a 2.89ns pF2.3 339.5 334.9 98 2.1 2.1 9.4b 2.90 pF2.5 347.6 335.0 92 2.1 2.1 9.6b 2.89

2011年 pF2.1 316.9az 291.6a 84 1.7a 1.9ab 8.2a 3.00ns

pF2.3 423.6b 369.5b 80 1.7a 1.9a 8.5b 3.01

pF2.5 314.1a 284.9a 81 1.5b 1.7b 8.4ab 3.02

z:チューキーの多重検定で同一英小文字間には5%水準で有意差が認められない(nsは有意差なし) y:果実重が1.1g以上で,奇形果などではない果実を商品果とした x:10果について測定した平均値 灌水開始点 1結果母枝当たりの収量(g) 糖度(brix)x 酸度(pH)x 商品果率 1果重 1商品果重 うち商品果収量(g)y (%) (g) (g) pF2.1 118.8az 113.7a 90 1.9ns 2.1ns 10.3ns 2.93ns pF2.3 99.0a 87.3a 76 1.6 1.9 10.5 2.95 pF2.5 35.5b 29.2b 68 1.6 1.7 10.3 2.93 y:果実重が1.1g以上で,奇形果などではない果実を商品果とした x:10果について測定した平均値 z:チューキーの多重検定で同一英小文字間には5%水準で有意差が認められない(nsは有意差なし) 灌水開始点 1結果枝当たりの収量(g) 糖度(brix)x 酸度(pH)x 調査年 樹高z 吸枝基部径 総新梢長x (cm) (cm) (cm) 2010年 pF2.1 200nsy 1.4ns       69ns 45 pF2.3 207 1.3 99 40 pF2.5 206 1.5 144 34 2011年 pF2.1 176ay 1.3ns 7a 60 pF2.3 168b 1.1 28a 54 pF2.5 160c 1.2 96b 40 z:1吸枝の地際からの高さ x:1吸枝から発生した新梢長の合計 w:各試験区内に発生した吸枝の総本数 試験区 発生吸枝本数w y:チューキーの多重検定で同一英小文字間には5%水準で有意差が認められない(nsは有意差なし)

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21 3)仕立て方 ①誘引方法 ラズベリーの枝(以下「吸枝」)は樹勢が良いと1年で2m以上伸長するが、ある程度の長さになると 自立できず地面を這うようになってしまう。そのため、これらを誘引する支柱や番線が必要となる。今 後の管理作業のしやすさから、垣根仕立てを推奨したい。これは5m間隔に支柱を設置し地上 70cm、 120cm、170cmの高さに番線を張り、結果枝を番線に誘引するものである(図 26、27)。 図 26 垣根仕立てのほ場の様子 図 27 垣根仕立ての例 ②整枝・せん定方法 ラズベリーのせん定は年2回行う。 1回目は秋の落葉後から春の発芽前までに、生育の弱い前シーズンに伸長した吸枝や混みあっている 部分の結果母枝を根元からせん除する。残す結果母枝の本数は、‘サマーフェステバル’のように1本の 結果母枝の収量が多いものについては、垣根仕立てで畝長1m当たり3本程度、‘サウスランド’のよう に1本の結果母枝の収量が尐ないものは6本程度残すことを目安にする(表 14、15、図 28、29)。なお、 残した結果母枝は先端の枯死部分(前年秋季に着果した部分は自然に枯死する)を剪除し番線に誘引する。 2回目は夏季の収穫終了後に結果母枝が自然に枯死するため、収穫が終わり次第それらを根元から剪 除する。また、初夏の頃に地面から発生した吸枝(図 30)が混み合うようであれば、細く勢いの弱いも のを中心に間引くようにする。 表 14 ‘サマーフェスティバル’における冬季せん定時に残す結果母枝長が次年度夏果収量・果実品質 に及ぼす影響(2009 年) 試験区 結果母枝1本当たりの収量 商品果率y 1商品果重 目標収量(1t/10a)を達成する 商品果のみで目標収量(1t/10a)を (g) (%)  (g) Brix pH m当たりの結果母枝本数w 達成するm当たりの結果母枝本数w 秋果着生部のみせん除 752.5*z 72 2.3ns 8.5ns 2.93ns 2 3 150㎝せん定(対照) 455.1 77 2.5 8.2 2.98 3 4 y:果実重が1.1g以上で,奇形果などではない果実を商品果とした x:10果について測定した平均値 w:列間1.5mで計算 z:t検定で*は5%水準で有意差あり,nsは有意差なし 果実品質x

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22 表 15 ‘サウスランド’における冬季せん定時に残す結果母枝長が次年度夏果収量・果実品質に及ぼす 影響(2011 年) 調査年度試験区 1結果母枝あたりの収量 目標収量(1t/10a)を達成する 商品果のみで目標収量(1t/10a)を (g) Brix pH mあたりの結果母枝本数w 達成するm当たりの結果母枝本数w 2010年 秋果着生部のみせん除 242.2*z 96 3.2ns 10.4ns 3.15ns 6 6 150㎝せん定 205.5 98 3.2 10.1 3.15 7 8 2011年 秋果着生部のみせん除 251.2* 84 2.7ns 9.7ns 3.29ns 6 7 150㎝せん定 172.4 87 2.9 9.0 3.18 9 9 z:t検定で*は5%水準で有意差あり,nsは有意差なし y:果実重が1.1g以上で,奇形果などではない果実を商品果とした x:10果について測定した平均値 w:列間1.5mで計算 1商品果重(g) 果実品質 x 商品果率(%) 先 端 枯 死 部 分 の み せ ん 除

結果母枝配置数

3本/m

図 28 ‘サマーフェスティバル’の冬 季せん定の方法 図 29 ‘サウスランド’の冬季せん定 の方法 図 30 地面から発生した新しい枝 (吸枝.翌年の夏果の結果母枝となる)

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23 ③夏季せん定 図 31 夏季せん定の方法 夏季のせん定前の様子 このように樹勢が強く,吸枝の発生数が多 いと,列間内の光環境は悪化する。また, 風通しが悪くなり,病害虫の発生を助長し かねない状態となる。 列間内部の様子 光環境が悪くなると,葉が黄変 し,甚だしい場合は落葉する。 また,初夏以降に地面から発生 してくる吸枝の生長にも悪影響 が出る。 夏季せん定後の様子 列間内の全ての枝に,まんべんなく光が当 たるよう吸枝を整理する。ただし,吸枝は 秋季の果実(秋果)の結果枝でもあるので, 間引きし過ぎないよう気をつける。

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24 ④多雪地での仕立て方 【越冬対策:結果母枝切り戻し法】 ラズベリーは寒冷地に適した落葉果樹であり、東北での栽培に向いた品目であるが、東北の日本海側 では多雪地域が多く、これらの地域では越冬方法など栽培に注意が必要である。ラズベリーは夏季のみ 結実する一季成り性品種と、夏季と秋季に結実する二季成り性品種があり、いずれにおいても夏果は 2 年生の結果母枝に着生し、秋果は春先から伸びてくる 1 年生の吸枝(結果枝)に着生する。夏果をなら せるためには、秋果がなった結果枝を越冬させる必要があるが、従来の縄で結束させた雪囲い(図 32) では雪による枝折れ(図 33)から完全に防ぐことが難しく、雪囲いの労力の割に夏果の収量が上がらず、 メリットが尐ない。そこで、結果母枝を冬季に地際まで切り戻し(図 34)、夏果の収穫をあきらめ、二季 成り性品種の秋果のみ収穫を行う体系が積雪の多い地域では適している。二季成り性品種でも品種によ っては秋果の着生が悪く、収量の低い品種もあるため、この体系に取り組むためには導入する品種の選 定が重要となる。山形県新庄市における気象条件下では、(表 16)に示した品種の中には秋果の結実が良 く、多収が見込めるためこの体系に適した品種もあるが、導入に際しては各地域における秋果の結実性 や収量性を事前に検討することが望ましい。 図 32 慣行的な越冬法 図 33 雪害の様子 図 34 結果母枝の切り戻し法 中 央 に 支 柱 を立て、結果 母 枝 を 束 ね て縄で 2、3 ヵ 所 結 束 す る。 積雪量が多 い年は雪の 重みでつぶ されてしま うこともあ る。 結 果 母 枝 を 冬 季 に 地 際部まで切り戻す。

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25 表 16 吸枝の発生本数と結実割合 ‘サマーフェスティバル’や ‘マリングデュライトレッ ド’、‘オータムブリス’は発 生した吸枝の8割以上が結 実したが、その他3品種は結 実した吸枝の割合が低く切 り戻しには向かない。 【仕立て方と結果枝の管理について】 山形県最上地域では雪が完全に消えるのが例年では4月上旬ころであり、そのころより吸枝の萌芽が 始まる。吸枝はその後生育を続けるが、ラズベリーは伸長に伴い自立できなくなり、そのままでは倒伏 したり、強風等で折れたりするのでダブルI字仕立てのような施設(図 35、36)を用いた誘引が必要で ある。‘サマーフェスティバル’の場合、6月上旬頃には 50~60 ㎝に達するが、このころに1回目の誘 引を行い強風に備える。また、植え付け後数年で吸枝は植栽列内に繁茂するようになり、そのまま全て の吸枝を成育させると、前述のとおり葉が黄変したり生育が劣ったりすることがあるため、吸枝の間引 きが必要である。吸枝の間引きは作業を効率的に行う上でも、6月上旬に吸枝の誘引を行う際に行うと よい。収穫時の作業性や収量の観点から、最終的に残す本数は植栽列 1m当り 10~15 本程度が望ましい が、結実期までに枝幹害虫等により欠損する場合があるので、5本程度多めに残しておくとよい(表 17)。 図 35 ダブルI字仕立て模式図

正面図

  150㎝

80㎝

40㎝

40cm

側面図

3m

3m

防草シート 230cm

発生吸枝数 結実した吸枝数

割合

(本/3m)

(本/3m)

(%)

サマーフェスティバル

52

42

80.8

マリングデュライトレッド

30

28

93.3

オータムブリス

72

67

93.1

サウスランド

49

11

22.4

マリージェーン

45

8

17.8

スタンザ

35

1

2.9

品種

2 本の支柱(直管パイプ 22 ㎜使用)で吸枝を挟む ように管理 雤よけビニール 列方向に平行に番線を張り、 随時吸枝の誘引を行う

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26 小規模での導入やかん水設備の整わない園 地での導入に適した露地栽培施設である。か ん水装置は不要であるが、苗の定植時や干ば つが続くときはかん水が必要である。 2本のI字の支柱をまたぐようにアーチパ イプを設置し、アーチの肩の部分まで簡易的 にビニールを被覆する。この簡易雤よけで腐 敗果等の割合が減尐し、商品果率は高くなる。 また、台風時などは突風で施設ごと飛ばされ る可能性があるので、ビニールを事前にはず しておくことが望ましい。 図 36 ダブルI字仕立ての実際の様子 表 17 植栽列 1m当りの結果枝本数が収穫作業性に及ぼす影響(2011 年) 植栽列 1m当りの吸枝の本数が多いほど全体としての収量は高くなるものの、着果部位や側枝の重なり が多くなり、果実が隠れて見づらくなることにより明らかに収穫作業性は低下し、混み過ぎると吸枝の 生育も抑制され吸枝あたりの収量も低下する。 【吸枝の選定方法】 多雪地における栽培体系では、春先から伸長してくる吸枝(結果枝)に着果する秋果のみを収穫する が、吸枝によっては結実しないものや収量が高いものなど様々存在するため、全体の収量を上げるため には、間引きの際に収量性の高い吸枝を選ぶことが重要となる。以下では、‘サマーフェスティバル’に おける吸枝と収量の関係や吸枝の選定の基準についてもう尐し詳細に説明する。 吸枝の伸長が停止した 9 月における吸枝の長さや地際部における太さと、吸枝あたりの秋果収量の関 係についてみると、吸枝の長さが 100 ㎝程度以下では全く結実しない吸枝が多く、120 ㎝程度以上では長 いほど収量が高い傾向がみられる(図 37)。太さについても同様に細いものでは収量が尐なく、太いもの ほど収量が高い傾向がみられる(図 38)。植栽列 1m当りに吸枝を 15 本配置した場合、10a 当り 1tの収 量をあげるためには、吸枝あたりの収量が 133g程度必要であり、おおよそ、吸枝長が 150 ㎝程度以上、 吸枝径が 13 ㎜程度以上の吸枝を選定することで達成可能である。

1果あたり

100果あたり

1tあたり

(sec)

(min)

(hr)

10本

3.6

6.0

512

15本

3.5

5.8

505

20本

4.2

7.0

565

z:作業者による評価(○:収穫しやすい △:収穫に支障を感じる ×:収穫しにくい)

植栽列1m当りの

結果枝本数

収穫時間

作業性

z

(31)

27 図 37 伸長停止後の吸枝長と収量の関係(2011 年) 図 38 伸長停止後の吸枝径と収量の関係(2011 年) 吸枝を誘引する 6 月頃でも、吸枝の長さや太さを基準にすることで収量の高い吸枝を判別することが 可能である。5 月の時点では吸枝の長さや太さと伸長が止まった後の吸枝の長さや太さとの間の相関はま だ低く、収量の高い吸枝を判別することは難しいが、6 月上旬になると一定の相関がみられ、この時点で 長く、太い吸枝は伸長停止後も長く、太いといえる(図 39、40)。従って、6 月上旬ころにおおよその目 安として吸枝長が 60 ㎝程度以上、吸枝径が 10 ㎜程度以上のものを選定することで、収量の高い吸枝を 残すことが可能である。これらの吸枝が十分数確保できない場合は、長くて太い吸枝を優先して残すよ うにする。また、6 月の時点で 60 ㎝となる吸枝がみられないときは、かん水や肥料の項目を参考にしな がら樹勢の回復を図るとよい。 図 39 6 月上旬の吸枝長と伸長停止後 図 40 6 月上旬の吸枝径と伸長停止後の吸枝 の吸枝長の関係 径の関係

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28 4)主要害虫に対する防除技術 ラズベリー栽培では、果実や葉などに被害を及ぼす病害虫が多く存在するが、防除体系が確立されて いないため、被害の発生に対して対処療法的に対応しているのが現状である。 本項では、チャノキイロアザミウマ、ハダニ類、ショウジョウバエ類をはじめとし、虫害全般に対す る耕種的防除を中心とした防除方法について紹介する。 ①アザミウマ類 生果を出荷する上で問題となる害虫がチャノキイロアザミウマをはじめとしたアザミウマ類である。 これらの寄生により果実の変形やサビの発生などの直接的な被害は見られないが、収穫後の果実の表面 を成虫が動き回るため、果実をそのまま口にしたり、そのままの形でディスプレイに使うことが難しく なる。 なお、ラズベリー園で主に見られるのはチャノキイロアザミウマ(図 41)であるが、他の種(ヒラズ ハナアザミウマ、ダイズアザミウマなど)も寄生が認められる。 一般にチャノキイロアザミウマは園内で越冬し翌春に発生するものと、園地の周囲から飛来してくる ものがあり、6月前半から秋果の収穫が終了する 10 月後半まで期間を通して発生する。秋田県内におい ても同様の発生状況を示し、発生のピークは8月となることが多い(図 42)。 (五城目の発生状況) 本虫に対する薬剤防除は、登録のある殺虫剤が1剤のみで、年間に使用できる回数も2回と尐ないた め、二季成りでかつそれぞれの収穫期間が長いラズベリーでは使用時期の判断が難しい。 しかし、アザミウマ類に対する耕種的防除として、白色反尃資材(商品名:タイベック(以下タイベ ック))の効果が認められており、カンキツ等で実用化されている。この資材は光を乱反尃させることに より、園地外からのアザミウマ類成虫の侵入を阻害する効果を持つ(図 43)。 ラズベリーにおいても、タイベックの敷設により園地内で粘着トラップに誘殺されるチャノキイロア ザミウマが減尐し(図 44)、同じ処理区内で収穫した果実でのチャノキイロアザミウマの寄生率も明らか に減尐している(表 18)。他のアザミウマ類においても同様の傾向が見られているため、アザミウマ類に 図 41 果実の内側で見つかったチ ャノキイロアザミウマ(円内) 図 42 チャノキイロアザミウマの誘殺消長 (2011 年、秋田県五城目町現地)

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29 対してはタイベックの敷設が最も実用的な防除方法と考えられる。 なお、タイベックの設置は5月下旬(開花期)から 11 月上旬(収穫終了)まで行い、土や落果で汚れ たときは水で洗い落とす。なお、タイベックは5年程度継続使用できる。 表 18 ラズベリー夏果へのチャノキイロアザミウマの寄生率(2011 年) ②ハダニ類 ラズベリー樹に寄生するハダニ類は、秋田県内ではカンザワハダニ(図 45)が優占種となることが多 く、ナミハダニがまれに見られる。どちらも多発生時は葉が脱色し、落葉に至ることもある(図 46)。 これらのハダニ類は成虫で越冬後樹体に移動し、発生を繰り返す。高温乾燥状態を好むため、雤除け ハウス内では急激に増加することがある(図 47)。 図 43 白色反尃資材敷設後(写真右側) (左側は防草シートを敷設) 図 44 白色反尃資材敷設によるチャノキイロアザ ミウマ誘殺数への影響(2011 年) 処理区 調査 寄生率 調査 寄生率 調査 寄生率 調査 寄生率 果数 (%) 果数 (%) 果数 (%) 果数 (%) タイベック 210 0.5 353 2.8 169 2.4 355 0.3 防草シート 79 3.8 192 4.2 169 11.2 267 3.0 7月2半旬 7月3半旬 7月4半旬 7月5半旬 図 45 カンザワハダニ成虫(円内) 図 46 ハダニ類の寄生による葉の脱色

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30 ハダニ類の薬剤による防除は、気門封鎖型殺虫剤(商品名:アカリタッチ乳剤、粘着くん水和剤)の 登録があり、これらは他の昆虫や人体に悪影響がなく、使用回数にも制限がないため使いやすい。 また、ハダニ類の繁殖に適した環境(高温乾燥)を作らないために、特に雤除け被覆を行った後はか ん水や換気の効果も高い。 ③ショウジョウバエ類 ショウジョウバエ類は果実に産卵し、羽化した幼虫が果実内に侵入する(図 48)。東北地方では現時点で これらによる被害はほとんど見られていないが、今後栽培面積が増えるに従って問題となる可能性が高い。 秋田県内のラズベリー園では、7月から 11 月まで年5~6回の発生が見られている。しかし、ラズベ リーでは本虫に登録のある殺虫剤はないため、現時点では耕種的防除が中心となる。園内へのショウジ ョウバエ類成虫の侵入を防ぐには、雤除け被覆栽培を行っている園地ではビニールハウスの骨格を利用 した防虫ネット(目合い 0.8mm 目程度)の設置が有効である(図 49)。 図 47 ラズベリー葉へのカンザワハダニ寄生頭数の推移 (2011 年、秋田県五城目町現地) 図 48 オウトウショウジョウ バエ幼虫(円内) 図 49 光反尃資材と防虫ネット併設による誘引トラップ に対するショウジョウバエ類誘殺数への影響(2011 年)

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31 ④その他 葉に寄生する害虫として、アメリカシロヒトリ、ハマキムシ類、シャクトリムシ類、モントガリバ、 マイマイガなどがある(図 50~53)。 これらにはBT系殺虫剤の登録があり、薬剤防除が可能であるが、局所的な発生が多く園地全体に被 害を及ぼすことはないため、見つけ次第樹から落として踏みつける程度で充分防除可能である。 ただし、コウモリガやコガネムシ幼虫など枝幹や根を食害する害虫に関しては、現時点では周囲の雑 草の刈り取りや食入部位から針金を通して刺殺(コウモリガ)、土壌の清耕後幼虫を除去(コガネムシ) などの対処療法的のみであるのが現状であるため、食害を防ぐための防除方法の確立が急がれる。 図 50 アメリカシロヒトリ 幼虫 図 53 シャクトリムシ 図 52 ハマキムシ類被害葉 図 51 モントガリバ幼虫

(36)

32 5)収穫 ①収穫方法 ラズベリーは二季成りの品種が多く、宮城県の気候下では夏果の収穫が6月下旬から約1ヶ月、秋果 の収穫が9月から約3ヶ月となる。収穫期に入ると次々に成熟する果実を2、3日に1回は収穫する必 要があり、その際に果托をつけたまま収穫すると果実の傷みを軽減できる(図 54)。また、収穫は高温時 を避け朝など気温の低い時間帯に行い、その後はすぐに果実は冷蔵し、収穫・調整後の傷みの軽減を図 る。収穫後の日持ちは品種や熟度によっても異なるが、完熟の場合は冷蔵でも 2 日~3 日が限界である。 赤色ラズベリーの収穫適期は果実全体が色づき、果実を構成している小核果の透明度が増した頃である (図 55、56)。 ‘サマーフェスティバル’などの品種は、年間収量の約7割は夏果となるため、収穫果の管理方法に ついてはきちんと計画する必要がある。特にラズベリーは収穫・調整作業に他の果樹よりも労力がかか るため、導入する際には栽培規模をよく検討することが肝要である。特に、生果を出荷する場合は、収 穫後に販売先を捜している余裕はないので、販売先をきちんと見据えた上で出荷できる体制づくりが必 要不可欠となる。 図 54 収穫時の果托の有無の影響 図 55 二季成り赤色ラズベリー‘サウスランド’の果実熟度の推移 (左端は未熟,右端は過熟。左端より4~5番目の時期に収穫したい) 図 56 二季成り赤色ラズベリー‘サマーフェスティバル’の果実熟度の推移 (左端は未熟,右端は過熟。左端から3~5番目の時期に収穫したい) ※収穫の際には果托を抜くと,日持ちが悪くなってしまう

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33 ②収穫労力の分散方法 ラズベリーの収穫には多大な労力を要する。そのため、収穫労力の分散方法として、二季成り赤色ラ ズベリーを秋果の1季のみしか収穫しない方法がある。本来、二季成りラズベリーは図 57 のような生育 となり、二季(夏秋)とも収穫する。 図 57 二季成りラズベリーの生育 図 58 秋果のみ収穫の作型 図 58 のように、秋(秋果)のみしか収穫しないという方法で、秋果収穫後は吸枝を地際部からせん除 する。この方法では、二季とも収穫した場合よりも年間収量は減収となるが、1果重や糖度、酸度など は二季とも収穫した時と変わらないので、労力分散の方法として期待できる(表 19)。

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34 表 19 作型の違いが樹齢3年生「サマーフェスティバル」の秋果1結果枝当たりの収量、果実品質に与 える影響(2010~2011 年) ③多雪地における秋果のみの収穫 秋果のみを収穫する体系における年間作業の流れは図 59 のようになるが、吸枝の間引きや誘引作業は ほとんど時間がかからないため、収穫が年間作業時間の大半を占めることになる。収穫期は品種により 多尐異なるが約 3 か月続き、9 月中下旬から 10 月上旬ころにピークを迎える。結果枝の切り戻しは秋果 が終了し次第、12 月の降雪前に行う。また、山形県最上地域のような豪雪地帯では、3 月までは雪が残 っていることが多く、日照条件などの気象条件が太平洋側と違うこともあり、同一品種であっても春先 の萌芽時期や開花、結実期といった生態や生育が異なることがあるので注意が必要である。 図 59 年間の作業体系 腰をかがめるといった労働負荷もなく、立ったま まの姿勢で収穫が可能で、女性や高齢者にも収穫 しやすい(図 60)。 図 60 収穫の様子 商品果率 1果重 1商品果重 うち商品果収量(g)Z うち商品果収量(g) (%) (g) (g) Brix pH 夏季(夏果) 328.2 321.2 - - 95 2.2 2.3 9.0 2.89 2010年 秋季(秋果) - - 118.8nsy 113.7ns 90 1.9 2.1 10.3 2.93 秋のみ 秋季(秋果) 116.0 105.9 83 1.9 2.1 10.5 2.95 夏季(夏果) 316.9 291.6 84 1.7 1.9 8.2 3.00 2011年 秋季(秋果)  90.4a 81.5a 77 1.7 1.9 10.3 2.84 秋のみ 秋季(秋果) - -  72.5b 65.8b 77 1.5 1.8 10.1 2.89 z:果実重が1.1g以上で,奇形果などではない果実を商品果とした y:t検定で同一英小文字間には5%水準で有意差が認められない(nsは有意差なし) x:10果について測定した平均値 夏秋 夏秋 調査年 作型 秋果1結果枝当たりの収量(g) 果実品質 x 夏果1結果母枝当たりの収量(g) 収穫期 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下

年 間

作 業

7月 5月 4月 6月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 吸枝の間引きと 1回目の誘引 2回目以降の誘引 (随時行う) 秋果収穫期 結果枝の 切り戻し

参照

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