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Vol.14 , No.1(1965)077田中 一男「タゴール作“Cyama”について」

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Academic year: 2021

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(1)

タ ゴ ー ル 作"Cyama"に

つ い て

こ の “Qyama” と い う作 品 は, ベ ン ガ ル 語 タ ゴ ー ル 全 集 〔RaろZndraRacana-ろaZz〕第25巻pp. 188∼205に 牧 め ら れ て い る 歌 劇 で あ り, 先 に 紹 介 した “Na・ tzra puja”(本 誌第10巻1號)並 び に “Candalika”(本 誌 第1捲2號)等 の 作 品 同 様, 素 材 を 佛 典 説 話 に も と め て い る。 (1) この “Cyana” な る作 品 は1938年8月 か ら9月 に か け最 終 的 に成 立 した もの で あ るが, 佛 典 を 素材 と した他 の作 品 同様, 次 の如 き成 立 過 程 を経 てい る。 (2) 1899年10月 タ ゴ ー ル38歳 の と き"Mahavastu"か ら 素 材 を 得 た “Plarico-(3) dha” と題 され る256行 か らな る物 語 詩 が 作 られ た が, これ は そ の翌 年 に 出版 さ (4) れ た “Katha” と い う物 語 詩 集(全24篇)の 中 に 含 ま れ て い る。 さ て “Plaricodha” な る物 語 詩 成 立 の37年 後, 即 ち1936年 タ ゴ ー ル75歳 の と き, そ の 物 語 詩 を も と に 同 名 の 歌 劇"Plaricodha"が つ く ら れ 上 演 さ れ た。 こ れ は, 手 元 に あ る 全 集(1958年 版)で は 第25巻 に, 本 題 “Cyana” の 附 録 と し て 附 加 され て い る。 か く して, 1939年2月 タ ゴ ー ル78歳 の と き, 再 び 書 改 め ら れ, "Cyama"と い う題 名 の 作 品 と し て 定 着 さ れ た の で あ る。 こ の 作 品 の 原 素 材 は"Mahavastu"の'馬 商Vajrasena'本 生 に 基 く も の で (5) あ り, そ れ は, E. Senart編 のText(3巻)の 第2巻PP. l66'》177に 當 る が,

タ ゴ ー ル 自 身 は, 1882年 に 出 版 さ れ たR. Mitraの"The Sanskrit Buddhist

(6) Literature of Nepal のP. 135に 牧 篇 さ れ た 梗 概 を 初 見 し た も の と 思 わ れ る。 次 に そ の 梗 概 と “Cyama” の 梗 概 を 並 列 し て 掲 げ て み る。 (1)Bengali暦1346年Bhadra月 (2)「 大 衆 部((Mahasanghika))中 の 説 出 世 部((Lokottaravadin))の 原 本 に よ れ る律 藏 の 一 本 」 と 構 さ れ, 『大 事 』 と 課 さ れ る が 未 だ 漢 言睾は 獲 見 さ れ て い な い。 (3)「 慮 報 」 と か, 「天 罰 」 と か, あ る い は 「審 判 」 と い う意 味 で 課 さ れ よ う か。 全 集 7巻pp. 31-40 (4)1900年 タ ゴ ー ル40歳 の と き 出 版 さ れ, 佛 教 は じ めGikh派 やMaratha派 の 典 籍 か ら 素 材 を 得 た 物 語 詩 集 で あ る が, 全24篇 の う ち 佛 典 よ り素 材 を 得 た も の は8篇 で あ る。

(5)Mahavastu. Ed. by Senart. 3 Vols. , Paris1891

(6)印 度 人 の タ ゴ ー ル 研 究 に 於 い て も認 め ら れ て い る。

(2)
(3)

(68) タ ゴ ー ル 作"Gyama"に つ い て(田 中)

(4)

-387-タ ゴ ー ル 作"Cyama"に つ い て(田 中) (69)

(5)

-386-(70) タ ゴ ール 作"Cyama"に つ い て(田 中) こ こで, この"Cyama"の 素 材 並 び に そ の取 扱 い 方 につ い て 考 え て み よ う。 "Manavastu"の この 説 活 は, タ ゴ ールが佛典説話 中か ら選んだ素材の うち最 も劇 的要 素 に富 んだ もの で あ る。特 に 歌劇 の素 材 と して は, タ ゴ ール な らず と も, 最 も適 しい もの で あ る こ とが認 め られ る。 これ は, 佛 陀 が 出城 され る際 に 妻 の ヤ シ ョー ダ ラー を何 故 お 棄 て にな つ た か と い うこ とを読 明 す る過 去 の 業物 語 で あ るが, この本 生話 の 部分 の み と りだす と, も は や佛 典 説 話 とい う特 色 か ら遠 去 い て 行 くよ うで あ る。自口ち, 教 理 説 明 の 部分 と 有機 的 關 連性 を敏 く, 一 個 の濁 立 した 説 話 と して充 分 鑑 賞 に耐 え うる もの で あ る。 (7) (8)

この こ とは, “Natzra Puja” や"Candalika"と は大 い に そ の性 格 を異 に す

る もの で あ る。 これ らの二 者 は, そ の他 佛 典 か ら素 材 を得 た作 品 同様, 素 材 が 現 在 物語 で あ る と ころ か ら, それ ら 自身 佛 典 説話 で あ る こと を露 わ に して い る。 そ れ だ け に, それ らが 作 品化 され る場 合, 登 場 人物 や構 成 上 に相 當 の苦 心 が 携 わ れ てい る。 " Natira puja"に 於 い て は副 登 場 人 物 の混 雑 に よ り生 じた劇 的 要 素 の 弱 さを, 最 後 の圭 人 公 の犠 牲 の 舞 い に依 り, 漸 く救 ってい る恰 好 で あ る し, "Candalika" に於 い て は母 と娘 の 封 話 に よ り劇 を盛 り上 げ よ うと努 力 して い るが, それ は決 し (7)全 集 第17巻(本 誌第10巻1號 の拙 論 参 照) (8)全 集註第23雀(本 誌 註第12巻2號 の拙 論 参 照)

(6)

-385-タ ゴ ー ル 作"Gyama"に つ い て(田 中) (71) て成 功 して い る とは 言 え な い。 また 前 二 者 に於 い て は, 作 者 の年 代 を 考慮 しな け れ ば な らな い が, カ ース ト問 題 が テ ー マの 重 要 な 一 部 とな つ て い る。 タ ゴ ール 自身 が告 白 して い る よ うに, 彼 は 夏期 に は詩 作 に熱 中 し, 涼 しい冬 期 (9) に な る と散 文 的 創 作 を試 み た。 そ の場 合, 冬 期 に於 げ る散 文 的 作 品 に は ど うして も文 學 の 中 に哲 學 的 思 惟 が介 入 して くる。 タ ゴ ール 自身 が い く ら排 除 しよ うと し て もの 印度 人 と して の彼 の知 性 が許 さ ない。 しか し, 熱 い 夏期 に は, それ らの 哲 學 的 知 性 は彼 の 心 の 奥底 に影 を漕 め亜 熱 帯 の 情 熱 的 詩 情 が 華 と開 く。 た とえ政 治 的 態 度 を 印度 人 と して 絵儀 な くされ た と して も, それ は 拝 情 を失 うこ との な い詩 の形 を と って表 現 され た。 と ころが, この"Cyama"は, 彼 の敏 感 な 季 節感 を超 え, 韻 文 の 歌劇 と して 成 立 し上 演 され た, 彼 の 晩 年 に於 け る無 色透 明 の文 學 的 制 作 とい うこ とが 出 來 る の で あ る。 また"Natira Paja"や"Candalika"同 様, 作 品定 着 ま での 構 成 上 の 攣 移 は み せ て い るが, 素 材 の性 質 上, 比 較 的 忠 實 に 素 材 の庭 理 が行 われ てい る とい え よ う。 しか し, 最 初 の 物 語 詩"Paricodha"に 於 い て 既 に 素 材 は 相 當 肉附 され て い る こ とが, 256行 の長 詩 の形 か ら判 噺 出 來 よ う。劇 化 に 當 つ て, Vajrasemな る馬 商 人 が 寳石 の行 商 人 に改 め られ て い る他 は, 必要 な狂 言 同 し の 副 登 場 人物 は最 少 限 に整 理 され 殆 ん ど攣 移 は み られ な い が, "Paricodha"か ら"Cyama"に な る と き, 犠牲 とな る金 貸 しの 息 子 のUttiyaの 部 分 が 書 き 足 され て い る こ とは 注 目す べ き で あ る。 これ は, 金 貸 しの息 子Uttlyaの 純 梓 な 犠 牲 的 鰍 身 愛 の 行爲 が晩 年 の タ ゴ ール を 強 くと らえ た爲 と思 わ れ る。 これ は"Gzt-dnjali"の 中 で歌 わ れ て い る よ うに, 中年 の タ ゴー ル に は未 だ 消 去 す る こ とが 出

來 な かつ た, 紳 の 前 の小 さな 自 己, そ して"Natira puja"で も, "Candalika"

で も解 決 出來 なか つ た もの が, 晩 年 の タ ゴール に よ つ て こ の"Cyama"の 中 で 獲 見 され た の で は なか ろ うか。 ま た, 犠 牲 的 鰍 身 愛 の権 化 と して のUttzyaを 媒 介 と して, 主 人 公Vajrasena の 中 に生 れ て くる 自己 へ の媒 悪 感 と, Cyamaな る女性 の無 心 の勝 利 の 封 象 は, タ ゴ ール の一生 を象徴 して い る と言 え な いだ ろ うか。 そ れ は, イ エ ス が オ リブ 山 に 行 つ た際 あ の姦 淫 の 罪 を 犯 した 女 を と りま く群 衆 に 向 つ て 言 つ た キ リ ス トの (9)1892年5月16日 ボ ル プ ー ル 事 て の 「日記 」 の 中 で 作 者 自 身 告 白 し て い る し, 實 際 に そ の 通 り で あ る。 ま た, 詩 集"Kheyd"に 起 源 を 獲 す る"Candazika"の 問 題 に つ い て は 拙 稿(本 誌 第12巻2號)を 参 照

(7)

(72) タ ゴ ー ル 作"Cyama"に つ い て(田 中) (10) 「罪 」 と も一致 し よ うか。 タ ゴ ール は そ れ を 印度 的 寛 容 の 精 神 で 受 け とめ よ う と した の で は な か ろ うか。 そ れ と も, 彼 が 『創 造 的 統 一 』 の 中 で言 つ てい る 「自己 犠 性 は 空 虚 へ 通 じ る も (11) の で な く, 愛 の 成 就 へ 通 ず る も の で あ る」 と い う彼 の 信 念 の 實 践 へ の 夢 で も あ つ た の で あ ろ うか。 最 後 に, こ の"Cydma"初 演 の 際 に タ ゴ ー ル が 語 つ た 微 妙 な 言 葉 を 傳 え よ う。 「こ の 作 品(Cyama)に 於 い て, 物 語 は と る に 足 ら な い も の で あ り, こ の 作 品 全 謄 の 素 直 な 印 象 を 受 入 れ る た め に は, 言 葉 の 表 面 的 な 意 味 に 注 意 を 外 ら さ れ な い よ う に 」 と い う意 味 の こ と を 書 い て い る が, これ は, 音 樂 家 即 詩 人 と し て の タ ゴ ール の 自 負 心 を 示 め し て い る と い う こ と が 出 來 よ う。 くあ とが き)こ れ で, 佛 典 よ り素 材 を得 た タ ゴー ル の作 品 中最 も重 要 な もの を 三 つ 紹 介 す る こ とが 出 來 た。 タ ゴ ール と佛 数 につ い ては, 渡 印 寸 前 の1962年5月 龍 谷 大 學 に於 け る 學 會 に て概 論 を獲 表 させ て もち つ た が, 在 印 中の た め 執 筆 出 來 な か つ た。 幸 か 不 幸 か, そ の 後研 究 もす す ん で來 たの で何 れ 機會 を み て ま とめ る所 存 で あ る。 O RomanizeのBengalは す べ てイ タ リッ ク骨豊事 した。 (10)新 約 聖 書 ヨ ハ ネ 傳8の1∼11.

(11)"Creative Unity" "An Indian Folk Religion'p. 75(1922)

参照

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