• 検索結果がありません。

は容器側面のヒーターおよび底面のヒーター (MISUMI: MCHS16-5-V2-W25-F5, 側面 4 本, 底面 3 本 ) を用いて調整した. また, 容器側面に取り付けられた攪拌機を回すことにより容器内温度の均一化を図った. 燃料の加熱については, 定容容器上面に取り付けられたインジェク

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "は容器側面のヒーターおよび底面のヒーター (MISUMI: MCHS16-5-V2-W25-F5, 側面 4 本, 底面 3 本 ) を用いて調整した. また, 容器側面に取り付けられた攪拌機を回すことにより容器内温度の均一化を図った. 燃料の加熱については, 定容容器上面に取り付けられたインジェク"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

燃料加熱がガソリン噴霧および燃焼特性に及ぼす影響

* -急速圧縮膨張機関を用いた燃焼特性の解明-

酒井 雄大 )井森 恵太郎 1)  松本 直樹 1) 松村 恵理子 2  千田 二郎 2

Effects of Fuel Heating on Gasoline Spray and Combustion

Analysis of Combustion Characteristics with RCEM-

Yudai Sakai Keitaro Imori Naoki Matsumoto Eriko Matsumura Jiro Senda Direct fuel injection gasoline engine has higher thermal efficiency and lower emission than port fuel injection gasoline engine. On the other hand, extremely precise control of air-fuel mixture distribution is indispensable. The purpose of this study is to control air-fuel mixture distribution by fuel heating. In this report, effects of fuel heating on spray and combustion characteristics are observed by using RCEM  (Rapid compression expansion machine).

KEY WORDS: Heat engine, Spark ignition engine, Measurement, Fuel heating (A1)

.緒  言 近年,段階的に厳しくなる自動車の燃費規制に対応するた め,ガソリンエンジンにおいては筒内直接噴射技術が導入さ れ始めている(1).筒内直接噴射型ガソリンエンジン(直噴ガソ リンエンジン)は従来のポート内噴射型ガソリンエンジン (PFI ガソリンエンジン)とは異なり,燃料をシリンダ内に直接 噴射し,燃焼室内にて混合気の形成を行う.この技術により, 燃料の気化熱による筒内冷却効果や混合気を層状にして少量 の燃料で燃焼させる成層希薄燃焼によって高効率化が可能と なる.しかしながら,直噴ガソリンエンジンにおいては混合 気分布の制御が必要となり,非常に緻密な制御が求められる. 成層混合気の形成手法として,冷間始動時に触媒暖気のた めにピストン冠面を利用するウォールガイド制御が行なわれ ているが,ピストンへの燃料付着およびそれに伴うPM の排 出が問題視されている  .そこで,噴霧自身の運動のみを利 用したスプレーガイド手法による混合気の分布制御が着目さ れており,燃料加熱による噴霧性状の変化を用いた噴霧制御 に関する研究がなされている.Min Xu らは減圧沸騰噴霧を利 用することでピストン冠面への燃料付着を抑制しTHC,CO および PN の低減を確認している  .佐々木らは超臨界状態 まで加圧および加熱された噴霧を利用することで、着火遅れ 期間の短縮および燃焼率の改善を確認している  .本研究に おいては,直噴ガソリンエンジンを対象とした混合気の時空 間的な制御の実現を目的とし,燃料加熱を利用した制御手法 が空間成層混合気の形成に適用可能かを評価する. 本報においてはその第一段階として,吸気行程噴射を想定 し燃料加熱噴霧を用いて均質混合気が形成可能かを評価する. 多孔ノズルを用い,加熱噴霧の粒径分布を観察するために超 高解像度撮影を行ない,さらに急速圧縮膨張機関(Rapid compression expansion machine)を用いて燃料加熱が燃焼特性に およぼす影響を把握した. .実験方法 超高解像度撮影  図1 に実験装置の概略図を示す.インジェクタには 6 孔ノ ズルを用い,正面より噴霧を観察した.定容容器の対面する2 側面の観察窓は100 である.実験における雰囲気圧力は容器 内に窒素を充填することにより調整し,雰囲気温度について *2017 年 6 月 6 日受理.2017 年 5 月 25 日自動車技術会春季学 術講演会において発表. 1) 同志社大学大学院 (610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3) 2) 同志社大学 (610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3) Delivery Heater (40W×8) Injector Injector holder Cooling pipe T Specialized lens system

Large size black - white film Film(8×10inch)

Constant volume vessel Speckle reduction device

Nd:YAG laser L= 532 nm, FWHM = 8 ns) Beam splitter Line resolution=200[line/mm] Plano-convex lens (f =1000,200mm) Symmetric-convex lens (f =300mm) Spatial resolution Magnification Depth of field [µm] [µm] 2.7 100 (at 10μm) 1.85 (9.8) Spray pattern Front view Side view

Fig.1 Experimental set up of super high spatial resolution photography

(2)

Intake Air Tank IN EX Vacuum Pump Injector Spark plug Mirror Rotary encoder (720pulse/round)

Quartz glass in the piston (Φ58mm/Φ78mm) Quartz glass(Φ20mm) Side view Scope coder Charge Amplifier Pressure sensor In/Ex valve Heater T T T Injector In/Ex Valve bottom view Spark plug Spark plug

Fig.2 Experimental set up of Rapid Compression Expansion Machine は容器側面のヒーターおよび底面のヒーター(MISUMI: MCHS16-50-V200-W250-F500,側面 4 本,底面 3 本)を用い て調整した.また,容器側面に取り付けられた攪拌機を回す ことにより容器内温度の均一化を図った. 燃料の加熱については,定容容器上面に取り付けられたイ ン ジ ェ ク タ ホ ル ダ に 挿 入 さ れ た ヒ ー タ ー(MISUMI : MCHK5-30-V100-W40×8 本)を用いて行なった.ヒーターは インジェクタを取り囲むように同一円周上に設置した.温度 制御については,熱電対を用いてヒーターと温度調節器 (MISUMI:MTCS)とを接続し,インジェクタホルダの温度を フィードバックすることにより,制御を行なった.そのため, 本実験においては,インジェクタホルダの温度を燃料温度と 定義した.また,ヒーターによるインジェクタへの熱害が予 想されたため,インジェクタのソレノイド部分の温度上昇を 防ぐために,銅管をソレノイド部分に巻き付け,銅管内に水 を循環させることにより冷却を行なった.燃料の噴射圧力は 手動ポンプ(HYPREX;PH-10)を用いて加圧し,アキュムレー(NACOL:HB-J25MP-LL2-AAC)を介することにより噴射に よる燃料圧力の低下を防いだ. 噴霧の粒径の詳細な観察を行なうために超高解像度撮影を 用いた.図 1 に超高解像度撮影法で用いた撮影光学系の概略 図を示す.光源には,Nd : YAG レーザー(Spectra Physics : PRO200,発光半値幅 : 8 ns/pulse)の第 2 高調波(L = 532nm) を用いた.発振されたレーザー光はピンホールを介して,干 渉縞を低減するスペックル低減装置(nano photon : Speckle Reducer SK-11,= 10mm)に入射される.スペックル低減装 置より出射されたレーザー光は,平凸レンズ(f = 200mm), 両凸レンズ(f = 300mm)および平凸レンズ(f = 1000mm)の 順に通過し集光されながら噴霧に照射される.噴霧を透過し たレーザー光は超高解像度レンズ系により捉えられ,受光面 上に拡大結像される.本撮影系では受光面に 8×10inch の大 判フィルム(FUJI FILM:ACROS100,Line resolution:200 Line/mm)を用いた.拡大倍率は 2.7 倍とした.なお,本光学 系の空間分解能は解像力チャートを用いて検定した結果, 9.8m であった. また,超高解像度撮影によって撮影された画像を用いて, 粒径頻度分布について解析を行なった.粒径頻度分布につい ては,t/tinj = 1.0 のときの噴霧先端到達距離の 0.7 倍の位置にお ける噴霧幅方向全域に着目し,縦2mm×噴霧幅の代表領域を 抽出し,その領域内に存在する液滴の粒径を画像処理により 算出した. 表 1 に実験条件を示す.  RCEM を用いた燃焼実験 本研究の燃焼実験に用いた供試機関は,直噴ガソリン機関 における1 回の燃焼を模擬することが可能である急速圧縮膨 張装置(RCEM: Rapid Compression Expansion Machine)を用いた.2 に装置の概要図を示す.本機関の燃焼室形状はパンケー キ型であり,ボア×ストロークは78mm×67mm である.シリ ンダヘッドには燃焼圧センサ(KISTLER:6052C)が埋め込まれ ており,センサで得られた信号をチャージアンプ(KISTLER: 5018A)により増幅しスコープコーダ(YOKOGAWA:DL850E) に取り込んだ.クランク角度は,分解能0.5deg./pulse のロータ リーエンコーダ(OMRON:E6C2-CWZ3E 720P/R 2M)を用いて 検出し,スコープコーダにタイムベースとして取り込んだ. 実験前にはシリンダ外壁面および吸気タンクに巻きつけたヒ ーターと,ヘッドに埋め込まれたヒーターを用いて吸気タン ク内の空気温度およびシリンダ壁面の温度が 353K になるま で加熱を行なった.燃料加熱はヘッドのヒーターによりヘッ ド全体を加熱することにより行なった.また本実験では,ヘ ッドに取り付けた,インジェクタホルダに埋め込まれた熱電 対より得られた温度を燃料温度と定義した. ピストンヘッドには可視化用の石英ガラスが埋め込まれて おり,ボトムビュー方式での燃焼の可視化が可能である.ボ トムビューでの可視化範囲は,ボア直径78mm に対して可視 化直径58mm である.また,シリンダヘッドの側面に可視化 窓があり,これより点火プラグ周辺の燃焼観察が可能である. 側面の可視化範囲は直径20mm である.撮影にはハイスピー ドカメラ(Vision Research Inc.:Phantom v2011)を用い,カメラ レ ン ズ に紫 外 域ま で 可視 化可 能 な UV レンズ(Nikon: UV-105mmF4.5)を用いた.底面撮影における撮影速度は

Table 1 Experimental conditions of super high spatial resolution photography

Multi hole nozzle(6 holes)

20.0 353, 393, 433, 453 iso-Octane -19, +21, +61,+81 Test fuel Test nozzle Injection pressure Fuel temperature ΔPinj[MPa] Tf[K]

Degree of superheat ΔTsat[deg.]

Ambient pressure Pa[MPa] 0.101(1.15 [kg/m3])

Ambient temperature Ta[K] 293

Ambient gas N2

Injection quantity Qinj[mm3]

1.15 12.5 Injection duration tinj[ms]

(3)

Table 2 Experimental Conditions Combustion Analysis Multi hole nozzle(6 holes)

20.0 353, 393, 433, 453 iso-Octane 2.39, 2.34, 2.30, 2.25 24.9, 24.2, 23.3, 23.0 (λ =1.0) Test fuel Test nozzle Injection pressure Fuel temperature Pinj[MPa] Tf[K] Injection duration Injection quantity tinj[ms] Qinj[mg] Displacement volume [cc] 320 Compression ratio [-] 6.68 Initial ambient pressure P1[MPa] 0.101 Initial ambient temperature Ta[K] 353

78 × 67 Bore × Stroke [mm]

Engine speed [rpm] 600

Injection timing [CAD ATDC] -270 Spark timing [CAD ATDC] -15.0 Valve close timing [CAD ATDC] -180

Tf= 353[K] Tf= 393[K] Tf= 433[K] Tf= 453[K]

t/tinj=1.0

Fig.3 Super high spatial resolution photography

20~30 30~ [μm] ~10 20~30 Tf= 353[K] Tf= 393[K] Tf= 433[K] Tf= 453[K] X 0.7 X 2mm

Fig.4 Images of droplets size distribution

Tf=353[K] Droplet diameter [μm]10 20 30 40 0 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Droplets Size Distributio n [-] Σn=20346 D10=12.5[μm] D32=14.5[μm] Tf=393[K] Droplet diameter [μm]10 20 30 40 0 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Droplets Size Distribution [-] Σn=32898 D10=12.0[μm] D32=13.1[μm] Tf=433[K] 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Droplets Size Distribution [-] Droplet diameter [μm]10 20 30 40 0 Σn=9682 D10=11.7[μm] D32=12.7[μm] Tf=453[K] Droplet diameter [μm]10 20 30 40 0 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Droplets Size Distribution [-] Σn=10742 D10=11.7[μm] D32=12.0[μm]

Fig.5 Droplets size distribution analyzed from super high spatial resolution photography 7200fps,画素数は 768×768(撮影倍率 0.338 倍,空間分解能 0.0863mm/pixel)とした.側面撮影における撮影速度は 7200fps, 画 素 数 は 768×768 ( 撮 影 倍 率 1.06 倍 , 空 間 分 解 能 0.0274mm/pixel)とした. 表2 に RCEM の諸元および燃焼実験における実験条件を示 す.筒内における初期温度は先述のヒーターを用いて機関を 加熱することにより353K とした.燃料温度を上げるためにヘ ッド全体が加熱されているため,各燃料温度条件において空 気の充填効率が異なる.したがって,各条件において空気過 剰率が1 となるよう噴射量を調整した.噴射時期および点火 時期を固定して燃料温度のみを変化させた.表3 に燃料とし て用いたイソオクタンの物性値を示す.  3.実験結果および考察 燃料温度が噴霧特性に及ぼす影響ついて 図3に超高解像度撮影系によって撮影した噴霧画像を示す. なお,撮影タイミングはt/tinj = 1.0 とした.図 3 より,燃料温 度が高い条件ほど噴霧の形状が大きく変化し,分かれていた6 本の噴霧が合体して1 本の噴霧となる傾向にあることが確認 できる.ここで,本実験条件においては,燃料温度が393K 以 上の条件においては,減圧沸騰が生じる条件である.減圧沸 騰とは,燃料がその燃料の飽和蒸気圧以上の状態から飽和蒸 気圧以下の雰囲気場に噴射されることにより生じる,液相か ら蒸気相への急激な相変化を起こす現象である(6).実験で使用 した燃料であるイソオクタンの大気圧場における沸点は表 3 より372K であるため,本実験条件内では,燃料温度 393K 以 上の条件が減圧沸騰領域である.減圧沸騰は,飽和蒸気圧と 雰囲気圧力との差である減圧度が大きいほど影響が大きくな り,蒸気化が活発化される.本実験においては燃料温度を変 化させたため,燃料温度と飽和温度との差である過熱度が変 化し,すなわち減圧度も大きくなる.この影響により,高燃 料温度条件においては,蒸発潜熱の影響により噴霧間の温度 が低下し,圧力が低下したため6 本の噴霧が 1 本の噴霧に合 体すると考えられる. 図4 に超高解像度撮影結果を用いて解析した噴霧の粒径分 布を示す.図4 における噴霧の中心に見られる白い部分は噴 霧液滴が過度に集中することによって液滴の判別が困難な領 域である.また,図5 に図 4 の赤枠で囲まれた代表領域にお ける粒径分布のデータより算出した粒径頻度分布,算術平均 粒径D10およびザウタ平均粒径D32を示す. 図4 より,飽和温度以下の条件である Tf=353,および過熱度 の低い393K の条件においては,20-30μm の比較的大きな粒径

Table 3 Properties of Fuel

Critical Temperature 544 Critical Pressure 372 Saturate Temperature iso-octane(iC8) ρa[kg/m3] Tcr [K] Kinetic Viscosity Surface Tension σ [N/mm] vf[mm2/s] 0.722 18.8 Density Test fuel Tsat[K] Pcr [MPa] 2.57 695 47.7 Lower heating value QL[kJ/kg]

(4)

-15.0 -7.5 0.00 7.50 15.0 22.5 353[K] 393[K] 433[K] 453[K] Fuel Temperature Crank angle [deg. ATDC] Field of view Φ58mm

Fig.7 Combustion images taken from the bottom view 353[K] 393[K] 433[K] 453[K] Fuel Temperature Crank angle [deg. ATDC] -15.0 -7.5 0.00 7.50 15.0 22.5

Fig.6 Combustion images taken from the side view

Rate of heat releas e[J /deg.] -40 -20 20 -60

Crank angle [CAD ATDC] 60 40 0 20 60 40 0 Tf= 353[K] Tf= 393[K] Tf= 433[K] Tf= 453[K] Ignition

Fig.8 Temporal changes in rate of heat release

Total heat rel eas e [J ] -20 20 -40

Crank angle [CAD ATDC] 60 0 300 400 500 100 600 200 0 40 -60 Tf= 353[K] Tf= 393[K] Tf= 433[K] Tf= 453[K] Ignition

Fig.9 Temporal changes in total heat release

Combus tion peri od [ ms ] 450 350 Fuel temperature [K] 0 20 30 10 40 400 500 300

Main combustion period 10-90%

Initial combustion period 0-10%

Fig.10 Relation between fuel temperature and Combustion period が噴霧下流部において多く観測された.また,粒子が密集し た計測不可能な領域が噴霧の上流域から下流域にかけて存在 する.一方,Tf=433, 453K の条件においては,特に噴霧の下流 部における粗大粒径の数が減少している.また,燃料温度が 高い条件ほど粗大粒径の数は減少し,均一な分布となり,計 測不可能な領域も減少した.ここで,図5 の粒径頻度分布に 着目すると,燃料温度が高い条件ほど小粒径側にピークを持 つ分布となる.また,平均粒径については燃料温度が高い条 件ほどわずかに平均粒径は小さくなる傾向が見られた.これ は,減圧沸騰領域においては過熱度が大きくなるほど気泡の 崩壊エネルギが大きくなることにより,噴霧の微粒化が活発 に行われたためと考えられる. 燃料温度が燃焼特性に及ぼす影響ついて  図6 および 7 に燃焼実験における火炎の直接撮影画像を示 す.図6 は側面窓から撮影した画像を示し,図 7 は底面から 撮影した画像を示す.図6 より燃料温度が 353K および 393K においてピストン冠面において輝炎を伴う燃焼が行われてい る様子が確認できる.これはピストンに衝突した液体燃料が ピストン面で液膜状となり,蒸発しないまま燃焼が開始され ることによりプール燃焼となり,激しい輝炎が生じたためで あると考えられる.しかしながら,燃料温度が高い433K 以上 の条件ではピストン壁面における輝炎は発生していないこと から,噴霧の蒸気化の促進により,衝突面積の低下および衝 突後もすでにガス化していたため,燃料の壁面付着が生じな かったと考えられる.図7 より,燃料温度が高い条件ほど輝 炎と推測される白く光る領域が減少する傾向が見られた.こ れは燃料温度が高いほど減圧沸騰効果により噴霧の蒸気化が 促進され,均質な混合気が形成されたからであると考えられ る. しかしながら,燃料温度 453K の条件では逆に輝炎の面 積が433K の条件よりも増えていることがわかる.これは 3.1 燃料加熱がガソリン噴霧および燃焼特性に及ぼす影響

(5)

Total heat rel eas e / Input energy [-] 450 350 Fuel temperature [K] 0 0.3 0.4 0.5 0.1 0.6 0.2 400 500 300 0.497 0.498 0.504 0.489

Fig.11 Relation between fuel temperature and Total heat release / Input energy

節で考察した噴霧の干渉に伴い,局所的に当量比が増加した ためであると考えられる. 図8に燃焼実験により得られた各燃料温度における熱発生 率の時間変化をまとめたグラフを,図9に各燃料温度における 累積発熱量の時間変化を示す.図8, 9より燃料温度353Kと比 較すると393K以上においては,熱発生率のピークが進角化し, 等容度の向上とともに燃焼期間が短縮していることがわかる. これは燃料の加熱により,燃料の蒸気化が促進され空気と速 やかに混合したためであると考えられる.  図 10 に燃焼実験より得られた燃料温度と燃焼期間の関 係をまとめたグラフを示す.初期燃焼期間は熱発生率の傾き が正に転じてから発熱量が累積熱発生率の10%に達するまで の時間とした.主燃焼期間は発熱量が累積発熱量の10%に達 してから,90%に達するまでの時間とした.図 10 より累積発 熱量が最大である 393K において主燃焼期間が最も短い傾向 が得られた.また,453K において燃焼期間が最も長期化した. これは燃料の蒸気化に伴い噴霧が希薄化したためであると考 えられる. 本実験においては,燃料温度によって噴射量が異なるため 図 11 に燃料温度と投入熱量に対する累積発熱量の関係を示 す.図11 より燃料温度 393K,433K においては 353K と比 較して投入熱量に対する累積発熱量が高い値を示し, 433K において最大となった.これは前述の通り,燃料の蒸気化に 伴い空気との混合が促進されためであると考えられる.しか しながら,453K においては効率が低下した.本実験では多孔 インジェクタを用いており,3.1 節の通り燃料温度が高い条件 では,多孔インジェクタより噴射された噴霧が干渉し一本化 する傾向が確認されている.そのため,本実験においても 453K において噴霧間干渉が生じた可能性が高い.したがって, 噴霧間干渉が生じ噴霧体積が減少したため,周囲との運動量 交換が減少し,誘引空気量が低下したと考えられる.よって 453K においては誘引空気量が減少により発熱量が低下した と考えられる.  結 言  本報では,燃料加熱による噴霧形状および燃焼特性への影 響を把握するため,超高解像度撮影を用いた粒径計測および RCEM を用いた燃焼解析を行なった.以下に得られた知見を 示す. (1) 過熱度が高い領域においては減圧沸騰が生じ,噴霧間の 圧力が低下するため,噴霧が一本に合体する傾向が見ら れる. (2) 過熱度が高い領域においては,気泡の崩壊エネルギが大 きくなることにより,噴霧の微粒化が活発に行われたた め,均一かつ小粒径な噴霧が形成される. (3) 燃料温度が高い条件においては,燃料の蒸気化および空 気との混合が促進されるため,燃焼のピーク化が進角化 し燃焼速度が速まる. (4) 噴霧間干渉が起こらない燃料温度433Kにおいて投入熱 量に対する累積発熱量が最も高い値を示した.それ以上 の条件においては,噴霧間干渉により誘引空気量が減少 したため発熱量が低下したと考えられる.  参 考 文 献 (1) 小池誠:直噴ガソリンエンジンにおける混合気形成と燃焼, R&D Review of Toyota CRDL, Vol.33, No.4, p.3-14(1998) (2) 中山容子, 白石拓也, 野木利治, 藤枝護:ガソリン筒内噴射 エンジン用燃料噴射システムとその混合気形成方法:噴射制御 によるエアガイド筒内噴射ガソリンエンジンの燃焼改善,日本 機械学会論文集B 編,Vol.69,No.686, p.2376-2381(2003) (3) Min Xu, David L.S Hung, Jie Yang, Shengqi We:Flash-boiling Spray Behavior and Combustion in a Direct Injection Gasoline Engine, 7th ERF(2016)

(4) S. Sasaki, C. D. de Boer, J. Qui, S.Shetty:A Study of Knock-Free Gasoline Engine with Compression Ignition and Diffusive Combustion by Super Critical Fuel Injection (1st Report),Proceedings of 2013 JSAE Annual Congress (Spring), No.15-13, p.1-8, JSAE 20135286 (2013)

(5) 鎌田修次, 勝田圭一, 堀司, 千田二郎, 藤本元:高解像度 撮影法によるディーゼル噴霧構造の可視化,微粒化, Vol.17, No.58,p.59-66(2008) (6) 千田二郎, 錦織環, 北條義之, 塚本時弘, 藤本元:減圧沸騰 噴霧の微粒化・蒸発過程のモデリング(第 1 報,噴霧特性の背 圧による変化),日本機械学会論文集(B 編),Vol.60,No.578, p.329-333(1994)      燃料加熱がガソリン噴霧および燃焼特性に及ぼす影響

Table 1 Experimental conditions of super high spatial resolution  photography
Table 2 Experimental Conditions Combustion Analysis

参照

関連したドキュメント

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

③ドライウェル圧力 原子炉圧力容器内あるいは原子炉格 納容器内にある熱源の冷却が不足し

A.原子炉圧力容器底 部温度又は格納容器内 温度が運転上の制限を 満足していないと判断 した場合.

なお、保育所についてはもう一つの視点として、横軸を「園児一人あたりの芝生

事象発生から 7 時間後の崩壊熱,ポロシティ及び格納容器圧力への依存性を考慮し た上面熱流束を用いた評価を行う。上面熱流束は,図 4-4 の

事象発生から 7 時間後の崩壊熱,ポロシティ及び格納容器圧力への依存性を考慮し た上面熱流束を用いた評価を行う。上面熱流束は,図 4-4 の

事象発生から 7 時間後の崩壊熱,ポロシティ及び格納容器圧力への依存性を考慮し た上面熱流束を用いた評価を行う。上面熱流束は,図 4-4 の

11 2007/11/19 原子炉圧力容器漏えい検査の準備作業において、原子炉格納容