• 検索結果がありません。

”ƒ.pdf

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "”ƒ.pdf"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2.障がい者の福祉的就労支援のあり方に関する研究

-就労継続支援A型事業所の現状分析-

○菅生 周一(社会福祉法人カナンの園/多機能型事業所カナン牧場施設長) 湊 直司(社会福祉法人若竹会/宮古地区チャレンジド就業・生活支援センター所長) 川村 将(社会福祉法人千晶会/盛岡広域障害者就業・生活支援センター就業支援ワーカー) 菅原 隆(社会福祉法人平成会/就労移行支援事業所「ヒットエンドラン」サービス管理責任者) 中村 昌徳(社会福祉法人若竹会/就労移行支援事業所「すきっぷ」サービス管理責任者) Ⅰ 研究の概要 1.背景 (1)働く場の必要性 障がい者の地域生活にあたっては、企業等への一般就労はもとより、福祉的就労の場を確保すること が重要な要件となる。とくに、一般就労に至らない就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所)や授 産施設など、福祉的な支援を受けながら働く場については、障がい者の自立した生活を支援するため、 工賃水準の引き上げが必要とされている。 このため、現在、国や県の工賃倍増支援策として、B型事業所の改善や就労継続支援A型事業所(以 下、A型事業所)への移行が促進されている。しかし、B型事業所とA型事業所との運営状況の差異は 大きく、その移行は容易なものではない。 (2)A型事業所の運営 岩手県内には、9か所のA型事業所(2010 年6月末)があり、それぞれにおいては、豆腐の製造販売、 農産物直売や手打ちうどんの食堂、パンの製造販売、クリーニング業など、運営のノウハウが蓄積され、 特徴ある事業が展開されている。 現場においては、各事業所で事業を継続的に行うための共通の要素と独自の工夫があるものと推察さ れ、それらについては、他のB型事業所の業務改善やA型事業所への移行を検討する際に、有効な知見 となるものと考えられることから、調査研究によって、それらを明らかにすることが喫緊の課題となっ ている。 2.目的と対象 (1)目的 本研究では、岩手県内の事業所のうち、特徴的で県内の優良事例ともいうべき加工食品製造等を業務 とする4つをモデル事業所として選定し、各々の実態調査を行い、比較検討などの分析を通して、A型 事業所の現状と課題、事業継続(事業展開)に必要とされる諸条件等を明らかにすることを目的とする。 (2)調査の対象 本調査の対象としたP事業所・S事業所・T事業所の3つは、それぞれ、食品製造及び販売の業務を 行っており、U事業所においては、小売及び飲食業務を展開している。 また、それぞれの事業所における聞き取り調査の対象と調査内容は、以下のとおりである。 ① 管理者 各事業所の施設長やサービス管理責任者等を対象に、聞き取り調査を実施するものとした。 ② 職員 各事業所における職員(指導員)を対象に、聞き取り調査を行うこととした。 ③ 被雇用者(以下、本調査研究においては、“職員”と区別するため、各事業所で働く障がいを持った

(2)

当事者を“従業員(利用者)”と表記するものとする) 各事業所で働く従業員(利用者)についても、複数人を対象とした聞き取り調査を行うものとした。 3.方法と研究の流れ (1)事業概要の把握 最初に、A型事業所を運営する以前に、各事業所がどのような経緯で事業を起ち上げたか、その背景 や経緯、当初の運営理念や方針、その後の事業展開などの概要を把握することを試みた。 次に、A型事業を始めるに至った経緯や現在の事業状況、そこで働く従業員の現状について、また、 職業訓練やそれを支える職員のあり方(求められる能力)について、現状と考え方を把握するものとし た。その際、把握すべき点として、以下のような事項(視点)に着目するものとした。 ① 経営理念や方針(言い換えれば、社会的に果たす使命(ミッション)) ② A型事業所における主たる業務の背景となっている「技術力」「商品力」「販売(営業)力」の蓄積 (2)事業運営にあたっての課題・方向性の把握 さらに、現在の事業運営上の課題や今後の方向性、展望等についての把握を試みた。 調査にあたっては、以下のような事項(視点)に留意した。 ① 職員に求められる能力(研修、人材育成のあり方) ② コミュニケーションの状況(職員相互、職員と従業員など) ③ 当事者による活動などの実態(従業員のエンパワーメントについて) ④ 職員の過重労働や待遇改善の現状 (3)事業の位置づけやあり方に関する考察 以上の視点に加え、事業所の運営全体を通しての地域との関わりや生活支援のあり方、事業の位置づ け、さらに、背景として、“社会的企業(または事業)”としての側面からの事業のあり方についても、 分析を試みるものとした。 (4)調査研究の実施期間 調査研究の期間は、2009 年 10 月から 2010 年9月までの1年間である。 聞き取り調査については、2009 年 10 月 27 日(S事業所、U事業所)、12 月 22 日(P事業所)、2010 年5月 13 日(T事業所)、5月 25 日(S事業所、U事業所)に実施した。また、研究チームの打合せ及 び検討会を、2009 年 10 月7日、10 月 23 日、11 月 13 日、2010 年1月 12 日、1月 18 日、2月 11 日、 4月 26 日、4月 30 日、5月 18 日、6月 22 日、9月 29 日に行った。 Ⅱ.調査結果の分析 1.事業の経緯 (1)B型事業所からの移行 U事業所及びS事業所においては、B型事業所から一般就労に向かうステップとして、より働くこと が出来る機会を作ることを目的に、法人内に、雇用契約を結ぶ“福祉的就労の場”を確保しているとい う性格がみられる。 (2)福祉工場からの移行 P事業所及びT事業所の2つにおいては、“雇用の場”である福祉工場から、障害者自立支援法の施行 に伴って、A型事業所に移行している。 これらは、いずれの場合でも、雇用契約に基づく“就労の場”の必要性から、A型事業所の起ち上げ に至ったものとなっている。ただし、P事業所の場合は、福祉工場の前が有限会社であり、一般企業の 形態から事業が始まっていることが特徴であり、その時期に培われた、技術力や商品力、営業力等が、 その後の経営の基礎となっているといえるであろう。

(3)

2.経営理念と方針 (1)社会的に果たす使命(ミッション) 経営理念や方針、言い換えれば、社会的に果たす使命(ミッション)は、A型事業所での雇用を通し て、本人の“自立支援”である。当然のことながら、就労による所得保障は共通点となっている。 (2)生活支援の取り組み 取り組みの濃淡はあるものの、その重要性への認識は共通しており、メンタル面を含む健康管理など、 生活支援の取り組みがあることも共通である。安定的に事業を継続するためには必要な条件といえるだ ろう。しかし、今回の実態調査では、その多くは現状の問題に対する対処療法的な生活支援のあり方に 止まっており、障がい当事者の将来像を見据えた成長の視点での支援の関わりに関しては一部の事業所 のみの実践で、生活支援に対する認識に大きな開きがあった。 (3)事業の規模 経営面における共通点として、それぞれに蓄積した技術力や商品力、販売力などを背景に、一定の事 業規模(売上高)を有していることがあげられる。このことから、A型事業所が成り立つ要件として、 ある程度のボリュームをもった事業の規模が必要とされているといえる。また、事業展開にあたっての 経営判断やマネジメントについても重要な要素として挙げておきたい。 (4)エンパワーメント 従業員の職業能力向上(エンパワーメント)については、職員に負うところが大きいが、社員教育の 一環として従業員(利用者)による自治会活動も一部で行われており、共に必要な要素となっている。 3.職員の働き (1)コミュニケーション A型事業所に求められる職員の専門性とは、個々の従業員(利用者)の持つ能力を活かし、業務の中 でさらに引き出していく事であろう。そのためにはコミュニケーションを充分にとって、ストレングス 視点で把握していくと共に、仕事を通じて、日常的な従業員の“能力”向上を図る支援の力が必要とさ れている。 (2)従業員(利用者)の働く場づくり 普段の業務においては、利益と共に、従業員(利用者)の“働く場を守る”ことを同程度に重視する のが、福祉事業所と捉えているという指摘もあり、この点はA型事業所に求められる重要な点といえる。 すなわち、従業員に対して働きやすい環境作り、支援やサポートを行う事を常に念頭に置きながらもそ の反面、製品に対してのこだわりや品質に関しては、一般企業と同じレベルのものが必要であると考え られているところもあり、これらからのバランス感覚が、職員には求められている。 (3)幅広い分野に対応できる知識やスキル A型事業所では経営に直結した福祉以外の分野の知識も求められることから、経営面や技術的な部分 などを含む、幅広い分野に対応できる知識やスキルが必要とされている。 4.従業員の満足 (1)所得の保障 収入の面では、所得の保障という側面(雇用契約に基づく最低賃金が得られる)での満足度が高くな っている。 (2)仕事のしやすさ また、仕事のしやすさでは、一般就労にはない点として、職員や仲間が教えてくれること、分からな いことを繰り返し聞けること、教わったり教えたりと助け合うことが出来ること、自分の目標となる先 輩がいること、仕事を通じた技術アップの点など挙げられており、A型事業所の特徴といえよう。

(4)

(3)本人活動 本調査では、明確な意図を持って実施され、成果をあげている実践は1例だけであった。しかし、メ ンタルヘルス、生活のスキルアップなど、特に歴史を刻み支援対象障がい者の多様性が進んだ事業所に おいては、A型事業所で働き続けるための支援策として、従業員自身が主体となった本人活動が有効と 考えられており、また、明らかに成果を上げていると認識できることから、未実施事業所においても今 後の重要な課題と考えられよう。 5.地域との関係 (1)地域の産業との関わり 食品製造の業務では、加工食品の原料を地元から調達するほか、遊休農地の活用や農産物販売機会の 提供など、業務を通した地域との関わりが見られる。とくに、遊休農地を活用することによって、高齢 化が進む地域農業の維持と関わりをもつこととなり、いわば、地域課題へ対応するものとなりつつあり、 今後、地域との関係づくりが期待される。 また、障がい者の受け皿として事業を行うことと、地域の活性化や発展といった視点を関連づけた取 り組みが重要であるという考えで実践している事業所もあり、事業所の立地及び事業展開によって、地 域経済への波及効果がもたらされている事にも注目すべきであろう。 (2)従業員(利用者)の生活支援等での関わり 毎日健康を維持して従業員(利用者)が働き続けるためには生活面の支援も重要であり、グループホ ームやケアホームとの連携や地域の相談支援事業所、障害者就業・生活支援センター等との連携による 支援も行われている。これらの連携を強化することも、事業継続の上で重要な点であると思われる。な お、従業員(利用者)の地域居住によって、地域における消費が生まれていることも指摘しておきたい。 6.その他 A型事業所の運営は、現代の福祉事業者にとって、異文化ともいえる営利的な新規事業への移行及び 展開であるので、その困難性の克服のためか、強固なリーダーシップのもとに運営を開始する事例が共 通している。いわば、A型事業所としての新たな事業展開にあたっての“火付け役”として、リーダー シップを発揮する人材が必要とされているように思われる。 Ⅲ.まとめ 1.本研究で明らかになった必要とされる条件と運営上の課題 本調査研究を通じて明らかとなった各事業所の実態をふまえ、就労継続支援A型事業所に求められる 条件を試論的に整理すると、以下のような点をあげることができる。 (1)A型事業所に必要とされる条件 ① 適切な労働の対価としての賃金を保障できる事業規模の確立 ② 一般企業に伍した製品の完成度(技術力・商品力・営業力) ③ 利益の追求と障害者の働く場を守るというバランス感覚 ④ 地域との連携(地域の発展が障がい者の受け皿になる) ⑤ 資金調達(福祉以外の様々な補助金の知識) ⑥ 顧客管理・会計に通じた職員の配置 ⑦ 事業運営に対する組織の強い意志・強固なリーダーシップ (2)運営上の共通な課題 ① 職員の過重労働・職員の待遇改善 ② 従業員(利用者)の生活支援・メンタルの支援

(5)

2.A型事業所のモデル 本調査で得られた知見に基づき、現時点で考えられ得る“A型事業所モデル”について検討した結果 から、仮説的なものとして、以下のような“理念型”を示すことができる。すなわち、福祉の理念を有 すると共に、収益の得られる事業をバランス良く展開する事業の形態である。 福祉の理念については、事業所の歴史的背景などに基づき、障がい者支援の姿勢を前面に打ち出し、 障がいの重い人たちへの所得保障も念頭に置く。また、経営面では、一般企業的な感覚に基づき、利益 の確保を前面に打ち出し、就労による所得保障までを事業の中心的役割と認識している。これら、両方 の要素を持つ事業所、つまり、経営感覚に富み、障がい者の就労による所得保障とそれに伴う豊かな生 活への支援まで見据えたバランスのとれた事業所を“理念型”の事業所モデルと呼ぶものとしたい。 Ⅳ.今後の研究課題 本調査研究における職員や従業員を対象とした聞き取り調査については、限定的なものとなっている ことから、今後さらに実態を明らかにしていくため、①職員(指導員)を対象としたアンケートや、② 従業員(利用者)を対象としたアンケートなどを行うことで、A型事業所の職員に求められる“専門性” や、それぞれの意向(満足度など)を明らかにすることが課題である。 また、調査への協力が得られる場合には、③各事業所で働く従業員(利用者)の家族を対象とした聞 き取り調査や、④事業所が立地している地域の住民を対象とした聞き取り調査を実施することで、各事 業所と地域との連携のあり方(及び地域からの“評価”)を探ることが可能と思われ、これらについても、 今後の研究課題として挙げておきたい。 謝 辞 本調査研究の実施にあたって、貴重な機会をご提供下さり、研究費の助成を頂いた財団法人大同生命 厚生事業団、関係各位に、この場をお借りして、あらためて御礼申し上げます。 また、業務御多忙な中、聞き取り調査に対応頂いた岩手県内の各就労継続支援A型事業所の施設長や サービス管理責任者、職員、従業員の皆様、多くの方々のご協力を賜りましたことに、心から厚く御礼 申し上げます。 〈参考文献〉 岩手県(2003)『岩手県授産活動活性化指針』。 熊谷智義他(2009)「福祉工場における従業員の意向を反映した運営のしくみづくりに関する研究」,『第 15 回 「地域保健福祉研究助成」報告集』,(財)大同生命厚生事業団,pp.26-30。 大曽根寛他(2006)「障害者自立支援法における「労働」と権利擁護の在り方:「福祉」と「労働」を架橋する法 理論の形成に向けて」,『放送大学研究年報第 24 号』,pp.1-16。 高橋岳志他(2009)「食品加工事業における知的障害者就労支援の最適モデルの構築に関する研究」,『岩手大学 教育学部附属教育実践総合センター研究紀要8』,pp.143-159。 遠山真世(2008)「障害者の就労問題と就労保障」,『季刊・社会保障研究 Vol.44 No.2』,pp.167-170。 安井秀作(2006)「障害者自立支援法における雇用・就労支援システムの課題」,『近畿福祉大学紀要第7巻第2 号』,pp.199-214。 経費使途明細 区 分 内 訳 金 額 旅 費 管理者、従業員、職員等を対象とした聞き取り調査、打合せなど 155,460 円 会議費 茶菓子代 6,024 円 印刷費 検討資料及び報告書等の作成 72,700 円 賃 金 聞き取り調査の調査員報酬など 125,620 円 合 計 359,804 円

参照

関連したドキュメント

会議名 第1回 低炭素・循環部会 第1回 自然共生部会 第1回 くらし・環境経営部会 第2回 低炭素・循環部会 第2回 自然共生部会 第2回

ダイキングループは、グループ経 営理念「環境社会をリードする」に 則り、従業員一人ひとりが、地球を

むしろ会社経営に密接

重点経営方針は、働く環境づくり 地域福祉 家族支援 財務の安定 を掲げ、社会福

●2014 年度に文部科学省からスーパーグローバル・ハイスクール(SGH)の指 定を受け、GGP(General Global Program 全生徒対象)

回答番号1:強くそう思う 回答番号2:どちらかといえばそう思う 回答番号3:あまりそう思わない

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.