7.競争ポジション
・教科書(
網倉久永,新宅純二郎 『経営戦略入門』)
第7章 「競争ポジション」 P.227~P.255
・概要
本章では、競争ポジションの4つの類型について
述べたうえで、それぞれの競争ポジションにおける
戦略定石を検討する。
7. 競争ポジション
7.1 競争ポジションの類型
7.2 リーダーの戦略定石
7.3 チャレンジャーの戦略定石
7.4 ニッチャーの戦略定石
7.5 フォロワーの戦略定石
競争ポジションの類型
– 4つの類型
• 最大シェア • 中位シェア リーダーに挑む • 市場規模が小さい 他の企業が思いつかないセグメンテーション 小シェア≠ニッチャー • フォロワー リーダーに対する攻撃姿勢はない7.1 競争ポジションの類型
シェア首位? リーダーに 挑戦? ユニーク? フォロワー YES YES YES NO NO NO競争ポジション/経営資源のマトリックス
– 量的経営資源:営業マンの数、投入資金力、生産能力など
– 質的経営資源:企業・ブランドイメージ、マーケティング力、
技術水準、トップのリーダーシップなど
7. 競争ポジション
7.1 競争ポジションの類型
7.2 リーダーの戦略定石
7.3 チャレンジャーの戦略定石
7.4 ニッチャーの戦略定石
7.5 フォロワーの戦略定石
リーダーの戦略目標
– 現在のシェア拡大
• シェア拡大の限界収入を考慮する– 現在のシェア維持
• 直接対決:価格競争、新商品投入、宣伝広告への投資 – 例) 39セット(マクドナルド)、HY戦争 • 「戦わずして勝つ」:妨害、隙を作らない、イノベーション – 妨害 … 部品・関連業者への圧力 ←法的・社会的リスクの存在 – 隙を作らない … 利益幅を抑える、フルライン、同質化 – イノベーション … 業界のあり方を変革していく–
• 新ユーザー獲得 例) 電子手帳 : 女性、若年層 • 新用途開発 例) ナイロン : 軍需から民需へ • 一回当たり使用量増やす 例) 味の素、ミシュラン
7.2 リーダーの戦略定石
リーダーのマーケティング・ミックス
7.2 リーダーの戦略定石
リーダーの4Pの定石 製品(Product) ・複数ターゲット、フルライン ・本質サービス:業界平均よりやや高水準もしくは平均並み 流通(Place) 開放型チャネル政策 プロモーション (Promotion) 積極的 価格(Price) 業界平均よりやや高め 戦略の項目 目標 シェアトップ維持、業界最大の利益確保 戦略の基本方針 シェア拡大もしくは維持、市場全体の拡大 ターゲット市場の選択 フルカバレッジ 4P構築の基本方針 隙を作らない:イノベーション、同質化リーダーの同質化戦略
– 徹底した同質化(模倣)
• 競合他社が何らかの成長製品で成功の兆しを見せたら、すかさず徹 底した模倣を行う。 例) ウオークマン、RV車、ドライビール • 規模の大きなリーダーの勝利 • 速い模倣のための準備(研究開発)–
同質化
戦略
• 競合他社の製品・マーケティングを完全に模倣–
同質化
戦略
• 後発の優位を活かして、先行他社の製品・マーケティングを改善7.2 リーダーの戦略定石
7. 競争ポジション
7.1 競争ポジションの類型
7.2 リーダーの戦略定石
7.3 チャレンジャーの戦略定石
7.4 ニッチャーの戦略定石
7.5 フォロワーの戦略定石
チャレンジャーの戦略目標
– シェアを拡大し、トップになる
• 奪うのは上位企業から?中位・下位企業から? →上位企業から奪うのが得策– 上位企業との対決
• 正面対決?差別化? →定石は– リーダーによる反撃(模倣・同質化)を防ぐ
• リーダーが持っていない経営資源を利用 • リーダーが同質化を行えない差別化7.3 チャレンジャーの戦略定石
– 例:カシオのデジタル・ウォッチ
• 低価格、多機能による差別化 • ディスカウントストアチャレンジャーのマーケティング・ミックス
7.3 チャレンジャーの戦略定石
チャレンジャーの4Pの定石 製品(Product) ・セミ・フルライン ・本質サービス:差別化を志向 流通(Place) いずれか、もしくはすべてで差別化 プロモーション (Promotion) 価格(Price) 戦略の項目 目標 トップシェア奪取 戦略の基本方針 差別化 ターゲット市場の選択 セミ・フルカバレッジ 4P構築の基本方針 模倣されない差別化チャレンジャーの成功の条件
–
されないチャレンジャー
• リーダーの持っていない経宮資源を利用 例) 花王のソフィーナで資生堂に挑戦した際、「皮膚科学研究」の蓄積を利用した • リーダーが同質化行動を行なえない差別化 例) J&J の歯ブラシ「リーチ」 通常の歯ブラシよりもブラシ部分が小さい。 リーダー企業のライオンは歯磨粉でもトップメーカーであるため、追随できない。 例) セシール:下着の訪問販売7.3 チャレンジャーの戦略定石
– リーダー企業にとって資源優位自体が制約になる
• 顧客資産、顧客ネットワーク 例) 一眼レフのレンズマウント、NEC98、ゼロックスの大口顧客・レンタル販売 • 流通チャネル 例) パソコンの直販 Dell、ブック宅急便、 時計店→文具・量販店First-Mover Advantage
■先発の優位(first-mover advantage) 先発企業が正の超過利潤を得る能力 • 形成プロセス (1)先発の機会の獲得 先見性と幸運 (2)長期間維持可能となる条件 ①技術的リーダーシップ ②稀少資源の先取り ③買い手側のスイッチング・コスト要素 ■先発の劣位(first-mover disadvantage) 先発企業に逆にマイナスに働く • 条件 ①free-ride(ただ乗り) ②技術や市場の不確実性の解消 ③技術や消費者ニーズの変化、転換 ④既存企業の慣性の発生 環境変化 先発の機会 先見性 (企業家) 幸運 先発優位が維持可能となる条件 ①技術的リーダーシップ ②稀少資源の先取り ③買い手側:スイッチングコスト 不確実性下での選択 先発劣位が生じる条件 ①free-ride(ただ乗り) ②技術・市場に関する不確実性 の解消 ③技術や消費者ニーズの変化 ④既存企業の慣性 超過利潤の規模と継続性7.3 チャレンジャーの戦略定石
後発企業の成功事例
製品 先発者 後発者 先発企業 米国 後発企業 米国 ライト・ビール ラインゴールド者「ガブリンジャーズ」(1966) メイスター・ブロー社「ライト」(1967) ミラー・ライト(1975) ナチュラル・ライト(1977) クアーズ・ライト(1978) ハド・ライト(1982) メインフレーム コンピューター アナタソフ「ABCコンピュータ」(1939) エッカート・モーチリー「ENIAC/UNIVAC」(1946) IBM(1953) パソコン MITSアルテア8800(1975) アップルⅡ(1977) ラジオシャック(1977) IBM‐PC(1981) コンバック(1982) デル(1984) ゲートウェイ(1985) パソコンのOS CP/M(1974) MS‐DOS(1981) マイクロソフト・ウィンドウズ(1985) パソコン用の 表計算ソフト ビジカルク(1979) ロータス1‐2‐3(1983) パソコン用の ワープロソフト ワードスター(1979) ワードパーフェクト(1982) マイクロソフト・ワード(1983) 先発企業 米国 後発企業 日本 35ミリカメラ ライカ(1925) コントラックス(1932) エグザクタ(1936) キャノン(1934) ニコン(1946) ニコンSLR(1959) ビデオカセット レコーダー(VCR) アンペックス(1956) CBS‐EVR(1970) JVC「VHS」(1976) 松下電器生産によるRCA7.3 チャレンジャーの戦略定石
7. 競争ポジション
7.1 競争ポジションの類型
7.2 リーダーの戦略定石
7.3 チャレンジャーの戦略定石
7.4 ニッチャーの戦略定石
7.5 フォロワーの戦略定石
戦略の項目 目標 高利益率、安定した売り上げ、一定の成長 戦略の基本方針 生存領域全体の差別化 ターゲット市場の選択 ・早すぎない成長セグメントの選択 ・ への集中 4P構築の基本方針 狭いターゲットに向け最適化