順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座 Manami KIMURA, Hiroo WADA, Takeshi TANIGAWA
木村真奈美, 和田裕雄, 谷川 武
Department of Public Health, Graduate School of Medicine, Juntendo University
Sleep Disordered Breathing in Children
小児の睡眠時無呼吸
[ 総 説 ]
成人の睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing: SDB)は、心血管疾患やうつ病などのリスクとなる他、仕 事中のミスや交通事故の増加と関連する。小児においても、SDBは成長・発達不全、認知機能低下、学業成績不良などの原因と なる。SDB罹患児が落ち着きのなさなどを呈し、注意欠如・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder: ADHD) として診断される場合もある。SDBの疾患概念や診断基準については様々な議論がある。例えば、小児SDBを「いびき-上気道 抵抗症候群(Upper Airway Resistance Syndrome: UARS)-睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea: OSA)」と連続す るスペクトラムで捉える概念が提唱されている一方、UARSはOSAとは別の独立疾患であるという主張もある。また近年、いびき症 状と認知・行動面の問題との関連が報告されており、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index: AHI)の値に関わらず、い びき症状の中に治療対象となる「病的いびき」が存在する可能性が示唆されている。小児SDBの発症には複数の要因が関与する。 扁桃肥大や肥満など、上気道狭窄の原因となる病態の他、上気道を構成する筋の緊張や、遺伝的素因も重要な病態因子である。 最近の見解では、潜在する上気道の筋の運動制御や緊張の異常に扁桃肥大やアデノイドが加わった場合に、睡眠中の機能的な気 道閉塞に至ると考えられている。小児のSDBの有病率は、数%程度と推定される。小児のOSAの発症率は2歳から6歳にピークが あり、それは、気道のサイズとも関連して、扁桃やアデノイドが相対的に最も大きくなる時期である。また、体型や体質、頭蓋顔面 形態の発達に伴い、思春期に2回目のピークが存在する。肥満とアデノイド・扁桃肥大は、いずれも小児SDBの重要な発症要因で ある。現在、低年齢の小児ではアデノイド・扁桃肥大がSDBの主要な発症要因であり、年齢を経るにつれ、体重がより大きな影響 を及ぼすようになると考えられている。SDBの夜間の症状には、いびき、無呼吸、頻回の覚醒、奇異呼吸、遺尿などがある。SDB の日中の症状には、扁桃肥大による口呼吸や、慢性鼻炎、鼻閉、眠気、注意力低下、などが含まれる。また、成長不全、神経認 知機能の異常、行動異常、学習障害、心血管疾患などが合併する可能性もある。小児のSDBの診断基準は現在、専門家らにより 慎重に検討されている。本文中では、the Classification of Sleep Disorders-Third Edition (ICSD-3)によるOSAの診断基準 と、複数の医療機関で暫定的に提案されているUARSの診断手順を紹介する。小児SDBに対する治療の選択肢には、アデノイド 口蓋扁桃摘出術、持続陽圧換気療法(Continuous Positive Airway Pressure: CPAP)、上顎拡大(Maxillary Expansion)、 減量、局所的ステロイド治療、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術 (Uvulopalatopharyngoplasty: UPPP)などが含まれる。SDBに起因 する眠気や注意力低下などの症状は、学校や社会生活への適応、学業での障害となり得る。適切な治療介入により、様々な合併 症の予防や改善が可能であり、眠気、集中困難、問題行動などの症状を有する小児がいた場合、SDBの可能性を検討するべきで ある。 要約 睡眠呼吸障害(SDB)、睡眠時無呼吸(OSA)、いびき、アデノイド、扁桃肥大、認知機能低下、学業成績 キーワード 行動医学研究 Vol.23, No.2, 70-75, 2018 (受付日:2017年11月27日/受理日:2017年12月19日) *東京都文京区本郷2−1−1(〒113−8421)
Department of Public Health, Graduate School of Medicine, Juntendo University, 2−1−1, Hongo, Bunkyo−ku, Tokyo 113−8421, Japan ©2018 Japanese Journal of Behavioral Medicine
いものと考えられていた(著者注:Primary Snoring は日本語文献中で、「単純性いびき症」や「原発性い びき」などと示されることがあるが、本文中では「単 純いびき」の訳語を用いる)。しかし近年、無呼吸や 低呼吸を伴わないが、上気道抵抗の上昇を有し、い びき、努力呼吸、奇異呼吸などを呈する、上気道抵抗 症 候 群(Upper Airway Resistance Syndrome: UARS)の概念が提唱された(図1, C)。UARSの小 児にも古典的なOSA罹患児と同様の臨床症状が存在 し、また、治療後に上記の症状が改善することが示さ れている。 上述のように、いびき-UARS-OSAを連続するス ペクトラムとする概念が提唱されている一方、UARS はOSAとは別の独立した疾患であり、UARSを単純い びきとOSAの間に位置づけるべきではないとする主張 もある。UARSを最初に報告したGuilleminaultらは、 UARSとOSAが異なる病態である理由として、UARS 罹患者の平均年齢は38歳(±14歳)とより若年であ ること、56%が女性であること、32%が東アジアの人 種であったことなどを挙げている。また、覚醒に至る 吸気圧の閾値がOSAでは-40から-80cmH2Oで あったのに比べ、UARSでは-6cmH2Oであったこと から、UARS患者とOSA患者には、両者を隔てる根本 的な違いとして、末梢の機械的刺激に対する受容体の 感受性の違いが存在すると予測している。すなわち、 同受容体の感受性が過度に高まっている状態がUARS 発症に、同受容体の機能不全がOSA発症に影響を与 えると推測している2)。一方、Douglasらは、UARSの 患者はOSAの患者と同じ症状を呈することや、① UARSに特異的な診断基準がないこと、②基準とされて いる眠気(Epworth sleepiness Scale: ESS>8点)、
はじめに
成 人 の 睡 眠 呼 吸 障 害(Sleep Disordered Breathing: SDB)は、心血管疾患やうつ病などの疾 患のリスクとなる他、仕事中のミスや交通事故の増加 と関連する。小児においても、SDBは成長・発達不全 の他、認知機能低下、学業成績不良や集中力低下の 原因となる。SDB罹患児が落ち着きのなさなどの問 題行動を呈する場合もあり、その要因としてSDBの 可能性が考慮されないまま、注意欠如・多動症 (Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)と診断されることもある。このように、SDB は小児の将来にまで影響を及ぼし得ると考えられる ため、症状のある小児を早期に発見し、適切な治療 介入を行うことが必要である。
SDBとは
小児SDBを理解する際に、上気道抵抗の増大に注 目した「SDBスペクトラム」という概念がある。スペ クトラムの一端には、上気道の部分的閉塞によりいび き(snoring)が生じる状態があり、もう一端には、 気道が部分的、或いは完全に閉塞し、低換気や低呼 吸、無呼吸が繰り返し生じる状態がある(図1)1)。小児 の 睡 眠 時 無 呼 吸(Obstructive Sleep Apnea: OSA)は、古典的に、睡眠中の部分的、或いは完全 な上気道の閉塞を認める疾患と定義される。通常、 それに関連して、夜間睡眠の分断、低酸素血症、高 二酸化炭素血症、日中の症状などを伴う(図1, Dと F)。いびき症状を有し、検査基準を満たさず日中の 症 状 も 伴 わ な い 場 合 は、 単 純 い び き(Primary Snoring: PS)と判断され(図1, B)、臨床的意義はな
In children, sleep disordered breathing (SDB) causes impairment in growth, cognitive function, attention and school performance. Definition, diagnostic criteria and treatment of pediatric SDB are not established, although the concepts of SDB spectrum or upper airway syndrome (UARS) may help us understand it. The prevalence of SDB in children is reported to be about 5%. Pediatric SDB is caused by combined multiple factors, such as upper airway (UAW) narrowing factors, UAW muscle tone factors. Obesity and adenotonsillar hypertrophy are important risk factor for pediatric SDB. Some studies suggest that obesity is more influential in older children, while adenotonsillar hypertrophy is relatively more important in younger children. Clinically, SDB leads to various symptoms in nighttime (e.g. snoring, apnea), those in daytime (e.g. rhinorrhea, sleepiness and inattention), and other future consequences (e.g. poor growth, poor school performance and cardiovascular diseases). Currently, there are several treatments for SDB available. We should aware that children who have daytime symptoms in school are possible SDB patients and that they should be appropriately screened for diagnosis and treatment.
Summary
Sleep Disordered Breathing (SDB), Obstructive Sleep Apnea (OSA), snoring, enlarged adenoids, enlarged tonsils, cognitive impairment, school performance
要な病態因子である(図2)1)。これらの様々な因子の
うち、どれか一つの因子ですべての症例を説明するこ とは困難である。例えば、扁桃肥大やアデノイドと OSAの発症とが関連することが明らかにされている 無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index: AHI
>5回/h)、覚醒回数(>10回/h)、食道内陰圧の増 大などは必ずしも異常値ではないこと、③基準とされ ている眠気、AHI、覚醒回数などは疾患特異的な指標 ではないこと、④疫学調査やランダム化比較試験によ る十分なエビデンスが得られていないこと、などから、 UARSは独立した疾患ではないと主張している3)。 以上のように、SDBの疾患概念については様々な議 論が交わされているが、近年、4歳から10歳の小児を 対象にした調査で、いびき症状を有することが、AHI の値に関わらず、認知機能や行動面の問題と関連し ていたことが報告された4)。いびき症状の中に治療対 象となる「病的いびき」の存在が示唆されている。
小児SDBの病態、発症要因
小児のSDB発症には複数の要因が影響を与えてい る。扁桃肥大やアデノイド、肥満など、上気道狭窄の 原因となる病態の他、上気道を構成する筋が気道狭 窄を補正する能力や、遺伝的素因(肥満、頭蓋顔面 の構造、上気道の筋の発達などに関わる素因)も重 Fig.1 小児のSDBスペクトラム(概念図) B:PS(Primary Snoring) いびきをかくがOSAの診断基準を満たさない場合。C:UARS(Upper Airway Resistance Syndrome) 上気道抵抗が上昇しており、いびき、 努力呼吸、奇異呼吸を認めるが、古典的な無呼吸や低呼吸の診断基準を満たさない場合。 D, E:閉塞性低換気、閉塞性低呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) 上気道抵抗の上昇 により、睡眠中に部分的、あるいは完全な上気道の閉塞を認める場合。通常、夜間睡眠の 分断、低酸素血症、高二酸化炭素血症、日中の症状を伴う。 文献1)より引用改変。 A E 閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) D 閉塞性低換気 閉塞性低呼吸 B 日中の症状を 伴わないいびき C 上気道抵抗症候群 (UARS) ※ 食道圧モニターで陰圧の 増大を伴う。 Fig. 2 小児SDBの病態 上気道の部分的/完全閉塞 睡眠中血液ガス変化の異常 努力呼吸、奇異呼吸、日中の症状 いびき 上気道抵抗増大あり 上気道抵抗 その他の因子 炎症 遺伝因子 SDB SDB SDB 上気道の狭窄 扁桃肥大 アデノイド 肥満 咽頭の構造 頭蓋顔面形態の特徴 上気道の筋緊張 覚醒反応 神経刺激 筋の緊張や運動の制御 気道狭窄時の調整機能
動面の問題との間に関連が認められているが7)、その 機序は未だ解明されていない。SDBに伴う睡眠の分 断、間歇的低酸素血症、高二酸化炭素血症、脳内の 神経化学作用の変化、脳の炎症、ホルモンの変化、 脳血流の変化、脳還流圧の変化などが認知機能に影 響を及ぼす可能性が考えられている。夜間睡眠中の 脳波上の覚醒回数あるいは血液酸素飽和度の低下 (nadir SpO2)が、それぞれ独立して認知機能の低 下と関連を認めたという報告もある8)。小児のSDBで は、他に、心機能低下、血圧調整機能の不全、成長 不全などが問題となるが、これらにも同様の機序が推 測されている。
小児SDBの疫学
小児のSDBの有病率は、我々が実施した日本の小 学校児童を対象に実施した悉皆調査の結果も踏まえ、 数%程度ではないかと推定されている9)。また、同調 査で、いびき症状と、落ち着きのなさ等の行動面での 問題に、関連が認められた10)。 小児のOSAの発症率は2歳から6歳にピークがあ り、それは、気道のサイズとも関連して、扁桃やアデ ノイドが相対的に最も大きくなる時期である。また、 体型や体質、頭蓋顔面形態の発達に伴い、思春期に2 回目のピークが存在する5)。SDBの臨床症状
SDBの夜間の症状として、いびきは最も一般的な 症状であり、いびき症状が認められない小児にOSA が生じることは極めて稀である。その他に、表1のよ うに様々な症状が生じるが、小児のOSAは主にREM 睡眠期に生じるため、夜間睡眠中のある時間帯におい てはこれらの症状が認められない場合もある。SDBと 関連する日中の症状として、扁桃肥大による口呼吸 や、鼻閉、眠気、注意力低下、などを生じることがあ る。また、成長不全、神経認知機能の異常、行動異 常、学習障害、心血管疾患などが合併する可能性に も注意すべきである。診断
小児のSDBの診断基準は現在、専門家らにより慎 重に検討されている。ここでは、The Classification of Sleep Disorders-Third Edition(ICSD-3)によ るOSAの診断基準と、複数の医療機関で暫定的に提 案されているUARSの診断手順を示す。 一方で、扁桃肥大やアデノイドの存在のみではSDB に至らないことも示されている。最近の見解では、 OSAを有する小児は、潜在的に上気道の筋の運動制 御や緊張の異常を有し、そこに扁桃肥大やアデノイド が加わった場合に、睡眠中の機能的な気道閉塞に至 ると考えられている5)。 肥満は、咽頭周辺の脂肪織の増加による上気道の 断面積の減少や、頸部皮下に蓄積した脂肪が気道を 圧迫することにより、SDB発症に関与する。肥満児に おけるSDBの有病率は25%から40%である。一方、 SDB罹患児の多くは非肥満児であり、個々の症例の 症状やPSGでの異常所見は、肥満の程度と関連が認 められない5)。いくつかの調査報告では、肥満とSDB の関連には年齢による違いがあることも示唆されてい る6)。現在、小児の成長・発達と関連して、低年齢の 小児ではアデノイド・扁桃肥大がSDBの主要な発症 要因であり、年を経るにつれ、体重がより大きな影響 を及ぼすようになると考えられている。 また、扁桃肥大や肥満以外にも、表2に示すよう に、SDBと関連する様々な因子が報告されている。 小児のSDBと、認知機能低下やADHD症状等の行 Table 1 小児SDBの臨床症状 〈夜間の症状〉 いびき、無呼吸、あえぎ呼吸、不眠、頻回の覚醒、頸部 伸展、睡眠時の姿勢異常、発汗、胸壁運動の異常、遺尿 など 〈日中の症状〉 口呼吸、低鼻音、慢性鼻炎、発語障害、行動面の問題、 神経認知機能の低下、学業成績不良、日中の眠気など 〈全般的な症状〉 成長・発達不全、高血圧、肺高血圧、肺性心、心室機 能不全など Table 2 アデノイド、扁桃肥大、肥満以外の小児SDBの素因 ・ダウン症 ・Klippel-Feil 症候群 ・Craniofacial syndromes ・Prader-Willi 症候群 ・ムコ多糖症 ・Arnold-Chiari 奇形・軟骨無形成症 ・鎌状赤血球症
・神経筋疾患 ・咽頭形成術後 など
・脳性麻痺
(RDI)<5回/h、中途覚醒の頻発、SaO2>90%の 条件を全て満たす必要があるとされている12)。
治療
小児のSDBに対しては、臨床所見や検査所見によ る診断を行い、個々の症例ごとに、治療に伴う利益と 不利益を慎重に評価し、治療法を選択する。その際、 小児の年齢、PSGの異常所見、SDBに関連する合併 症、SDB以外の併存症、などを考慮する。 (1)アデノイド口蓋扁桃摘出術(Adenotonsillectomy) 症状の顕著なSDBやOSAと診断された小児で、 SDB以外に健康面の問題を有しない場合、治療の第 一 選 択 はAdenotonsillectomyで あ る5)。 小 児 の OSAの暫定的な重症度分類として、AHIが1回/h以 上5回/h未満を軽症OSA、5回/h以上10回/h未満を 中等度OSA、10回/h以上を重度OSAとする基準があ る。この基準を用いて、AHI≧5回/h、あるいはAHI ≧10回/hを手術適応とする施設が多い13)。これまで 複数の研究で、SDB罹患児に対しアデノイド・扁桃摘 出術を施行後、夜間の睡眠呼吸症状や日中の眠気だ けでなく、学業成績やQuality of Life、多動などの問 題行動も有意に改善したことが報告されている7, 14, 15)。(2) 持続陽圧換気療法(Continuous Positive Airway Pressure: CPAP) 頭蓋顔面形態の異常、神経・筋の脆弱性、肥満な どの因子を有し、アデノイド扁桃摘出術が効果的で ない、あるいは手術適応でないと判断された症例や、 アデノイド扁桃摘出術後にもOSAが残存する症例、 手術の前に症状を緩和する必要がある症例などで、 CPAPが選択される場合がある。 (3)上顎拡大(Maxillary Expansion) 上顎のアーチの短縮があり、鼻腔の気道が狭い症 例では、歯列矯正装置(orthodontic appliance: OA)を用いた maxillary expansion により改善が 期待される。 (4)減量 肥満がSDBに影響している症例では、SDBを改善 するために減量が重要である。SDBや肥満に関連し た、心血管疾患のリスクを減らす効果も期待できる。 ただし、小児の場合、過度の減量は発育に支障を来 すことに留意する。 (1)OSA
ISCD-3では、Sleep-related breathing disorder をOSA、Central Sleep Apnea Syndromes(CSA)、 Sleep-related hypoventilation disorders、Sleep-related hypoxemia disorderに分類し、OSAに関し ては成人の基準と小児の基準を示している。ICSD-3 の小児のOSAの診断基準には、臨床症状と終夜ポリソ ムノグラフィ(Polysomnography: PSG)検査所見が 含まれる(表3)11)。 (2)UARS UARSでは睡眠中に、上気道の狭小化、上気道抵 抗増大、食道内の陰圧増大が生じるが、無呼吸には 至らない。そのため、睡眠中の動脈血酸素飽和度の 有意な低下を認めず、PSG検査でAHIによるOSAの 診断基準を満たさない。しかし、睡眠中の呼吸努力 が増大しており、OSAと同様に脳波上の覚醒を認め、 日中の眠気症状を呈する。UARSの診断には、PSG と、呼吸努力増大を示す食道内圧の測定、また、日中 の過度の眠気を起こす疾患の鑑別として、ナルコレプ シーの除外が必要である。眠気症状があり、AHI<5 回/hで、かつ頻回の脳波上の中途覚醒が認められた 場合、UARSの可能性が高い。同時に食道内の陰圧 増大が認められれば、UARSの診断に至る。しかし、 ナルコレプシーの検査である反復睡眠潜時検査 (Multiple Sleep Latency Test: MSLT)や、食道内 圧の測定ができる施設は限られており、これらの検査 なしでUARSを診断するためには、ESS>10点、AHI 臨床的基準とPSG基準の両方を満たす場合、OSAと診 断する。 〈臨床的基準〉以下の1つ以上の臨床症状を認めること: ①いびき ②睡眠中の努力呼吸、奇異呼吸、閉塞性の呼吸障害 ③日中の眠気、多動、行動面での問題、学習面での問題 〈PSG基準〉PSG検査所見で下記の1つ以上を認めること: ① 睡眠1時間当たり1回以上の閉塞性無呼吸、混合性無 呼吸、低呼吸 ② 閉塞性低換気を示す所見:総睡眠時間の25%以上で、 下記a, b, cの1つ以上と関連した高二酸化炭素血症 (PaCO2>50mmHg)を認めること a. いびき b. 鼻圧センサーの波形の平定化 c. 胸壁腹壁運動異常 Table 3 小児OSAの診断基準(ICSD-3)
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おわりに
SDBに起因する眠気や注意力低下などの症状が、 学校や社会生活への適応、学業での障害となり得る 一方、家庭や学校において、それらの症状とSDBと の関連は見逃されている場合が多い。しかし、適切 な治療介入により、それらの様々な合併症の予防や 改善が可能である。日中の眠気、集中困難、問題行 動などの症状を有する小児に対しては、治療可能な SDBの存在の可能性も考え、SDBの有無を検討する べきである。文献
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