理学療法と産業保健
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(2) 理学療法と産業保健. 715. リア人(45 ~ 64 歳)は約 663,000 人に上り,これは年間 120. 対策基本法において担癌患者の就労支援が強調されているの. 億$の損失に相当することを示したうえで,特に腰痛や関節疾. も,そうした問題意識に基づくものであろう。また,高度高齢. 患といった金骨格系疾患が重要であることを明らかにしてい. 社会において社会の活力を維持するためには,少なくとも前期. る 5)。. 高齢者が生き生きと活躍できる Active aged 社会を実現するこ. 我が国の国民生活基礎調査においても肩こりと腰痛の有症. とが不可欠である。前期高齢者の就業確率が高くなることは,. 率は回答者のそれぞれ 37.0%と 35.1%でもっとも高くなってい. 医療保険や介護保険の収支を直接的に改善するだけでなく,年. る. 6). 。腰痛や関節痛が休業に至るまで悪化することはそれほど. 金財政についてもその健全化のための効果をもたらす。. 多くないことから,逆にこれらの傷病が presenteeism の原因. しかしながら,我が国では働くことをサポートする医療の役. として重要である可能性が示唆される。. 割に関する認識はまだ不十分である。すべての労働者を支援す. 近年,こうした問題意識から就業できることおよび傷病に. るためにはイギリスの Fit for work プログラムのように,かか. よる労働生産性の低下を防止することを臨床的なアウトカム. りつけ医が傷病をもった患者の職場復帰を支援する仕組みが望. とする医療の重要性が認識されるようになり,WPAI などの. ましいと筆者は考えている。制度的にどのような仕組みにする. 標準的な調査票を用いた研究が多く行われるようになってき. かについては,まだ明確ではないが,嘱託産業医の多くが地域. た。しかしながら,これらの調査票は必ずしも我が国の労働環. の開業医である我が国では,プライマリケアの枠組みの中でそ. 境に適さない場合も少なくないことから Fujino らは我が国独. うした仕組みを構築することが可能であると考えられる。もち. 自の標準的な調査票(産業医科大学版労働生産性調査票 Work. ろんこうした仕組みを医療保険の枠組みの中で構築するのか,. functioning improving scale:Wfun)の開発を行っている. 7). 。. あるいは労働安全衛生法や労災保険の枠組みの中で構築するの. 1,296 名の製造業労働者を 18 ヵ月追跡した予備調査では,スコ. かは今後の検討課題である。. アが高いほど休業日数が長くなり,また休職・退職する確率が. 加えて理学療法士が職域において腰痛など筋骨格系疾患の予. 有意に高くなることが示されている。. 防を行う仕組みが産業保健制度の中に組みこまれることが必要. 産業保健と理学療法士. であると筆者は考えている。腰痛や肩こりは一般的な病態であ るがゆえに,その影響が十分には評価されてこなかった。しか. 上述のように近年産業保健の現場では労働生産性の維持向上. しながら,労働生産性に直結する presenteeism という視点か. を医学的に支援することへの関心が高まっており,特に筋骨格. ら見たとき,その経済的損失は非常に大きなものであると予想. 系疾患とメンタルヘルスでの支援が求められている。諸外国で. される。こうした視点からの研究が我が国でも今後行われてい. はこのような問題に対処するために臨床心理士や理学療法士・. く必要がある。関係者の積極的な関与を期待したい。. 作業療法士が産業保健の現場で活躍している。我が国でも,今 回のストレスチェックの法制化により臨床心理士等によるメン タルヘルス面での対策は進むと予想されるが,腰痛や関節痛, 肩こりを対象とした理学療法士の関与はどうであろうか。イギ リスやフランス,オランダでは開業理学療法士が個別に企業と 契約を結び,職域における筋骨格系疾患の予防対策(悪化予防 も含む)を行っているが,労働者の高齢化が進む我が国でこそ そのような活動は活発であるべきであろう。このような理学療 法士の役割を制度化するためには,単に諸外国で行われている ということだけでは不十分である。職域における実証的な研究 が必要である。現在,産業医科大学では職場復帰のための診療 情報提供書を開発し,その有効性評価のための実証研究を行っ ている。このような研究に理学療法士の方々が関心をもってい ただければ幸いである。. ま と め 人はただ単に生きていくために働くのではない。働くことは 自己実現や仲間との交流といった生きがいにもつながる。がん. 文 献 1) Department for Work and Pensions: Statement of fitness for work. Guide to the new ‘fit note’. Department for Work and Pensions, London, 2010, p. 4. 2) Black CM: Working for a healthier tomorrow. Stationery Office, London, 2008, p. 125. 3) Department for Work and Pensions: Improving health and work: changing lives: the Government’s response to Dame Carol Black’s review of the health of Britain’s working age population. Stationery Office, Norwich, 2008, p. 118. 4) Mattke S, Balakrishnan A, et al.: A review of methods to measure health-related productivity loss. Am J Manag Care. 2007; 13(4): 211–217. 5) Schofield DJ, Shrestha RN, et al.: Chronic disease and labour force participation among older Australians. Med J Aust. 2008; 189: 447–450. 6) 厚生労働省:平成 22 年国民生活基礎調査,2010 年. 7) Fujino Y, Uehara M, et al.: Development and validity of a work functioning impairment scale based on the Rasch model among Japanese workers. Journal of Occupational Health(掲載予定)..
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