C A N C E R 3 (1993),p .1 - 2
甲殻類学者中沢毅一教授を憶 う
妹 尾 次 郎
中沢教授 は東大動物学科 の先輩, 水産講習所 に
御勤務, 後 に駿河湾水産生物研究所を御創設, 冒
本動物図鑑応用動物図鑑 の共著者 のお一人, 人生
動物学や 「神 ・ 人 ・ 動物
」
等 の著者であ られ ると
理解致 して居 た.
御長男道夫氏が昭和
16
年 に編集発行 された
97
貢 の 「中沢毅- 追憶」 が書庫 よ り見 出され, 父一
周忌 に際 して謹呈 の名刺代 りの物 も挿入 されてい
た. 一読 して優 れた同氏 の明治
16
年 の御誕生 か
ら, 昭和
15
年
58
才での御長逝迄 の略全貌を知 り
得 た様 に思 われ る. 手許 の資料等 も参照 して御紹
介致す次第である.
谷津直秀主任教授 の発行 された理学部動物学科
卒業者氏名録
(1881-1938)
に依れば, 第
1
位 の
飯島魁教授
(1881)
に続 き, 第
47
番 目
(1909:
明
治
42
年) に御出身 の大先輩である. 迂生 は
191
番
冒 (
'35)
に記 されている. 此 の氏名録 の巻末 に卒
論 の題名 が纏 め られてお り, 同氏 の はT
axon0-m y of M ysisである. 尚同期生 として羽原文書
(水産講習所教授) ・ 石井重美 (東京商大予科 ・ 立
教大予科御勤務) ・ 大島 康 (九大教授) ・ 佐 々
木望 (北大教授) ・ 矢野宗幹 (元農林技師 ・ 農大
講師) ・ 小林晴次郎 (京城大教授) の諸氏が居 ら
れ る. 前記 の 「追憶
」
の表紙 と扉 の
6
文字 は, 大
学
1
期先輩 の親友柳直勝氏 の筆 の由.
中沢 氏 の御職 歴 は, 年 譜 の
93 - 94
貢 に基 け
ば, 明治
43
年
3
月水産講習所嘱託, 仝年
10
月技
節, 大正
6
年辞任. 「追憶」 の序 に当 る第
1
貢 に依
れば, 甲府中学 ・ 第- 高等学校 を経て東京帝国大
学 に学 び理科大学 に動物学 を専攻す.
42
年卒業,
直 ちに農 商務省水産講 習所技 師 を拝命云 々 とあ
る.
1
責 ,t
93
貢 の記載 は誤植か も判 らないが一
致 しない. 東京水産大百年史 の資料で は, 明治
42
Jiro S E N O : O n the late earnest carcinologi st,
professor K iichiNA K A Z A W A
1
一大正
6
, 大
13
一昭
3
, 担 当科 目動物学, 職名嘱
託 ・ 技師 とある. 年譜 には後半 の御勤務 の記載 が
無 い.
大
・9
に一高 の講師, 女子医専其 の他 に も教鞭
を とる. 大
・10
, 科学知識 に入社, 同誌 の編韓 に
当 る. 大
・13
,
1
月一高講師を辞 し帰郷. 昭
・3
,
静岡県庵原郡蒲原町字中村海岸 に駿河湾水産生物
研究所 を設立,
3
月開所式 を挙行. 昭
・5
, 沼津御
用邸 にて天皇陛下 に深海動物 に就 き御説明, 種 々
学術上 の御下問に奉答. 昭
・7
, 石井重美氏病気
の為, 東京商大 ・ 立教大南予科等 の生物学 の講義
担 当 とな り蒲原 よ り毎週上京. 昭
・8
,
12
月慈恵
医大予科教授 となる.
水講 で中沢技師の授業 を受 けた学生中に, 養殖
科大 ・
2
卒業 の岡田弥一郎博士等がある. 「追憶
」
に当時東京高師教授 の同博士 は 「先生 の感化力」
の一文 を寄せ られ, 卒論 の指導 を受 け, 更 に中沢
先生が飯島先生や父上 を説得 されたお陰で, 東大
の飯島先生 に弟子入 り出来, 大変幸せだ った と深
く感謝 して居 られる. 且学者 として又入間 として
の中沢先生 を非常 に尊敬 もして居 られ る. 此 の様
な次第で, 先生 の著作一覧を馬渡静夫氏 と共 に
4
貢 に亘 り纏 め られ, 之 に続 いて 「中沢先生 の研究
」
に就 き
5
貢 に及ぶ紹介を されている.
追悼 や追憶 の寄稿 は, 旧友 ・ 知人方 ・ 令息 ・ 令
嬢 ・ 御親戚 の方々の もの併せて
31
篇 に達す るが,
慈恵医大で弟子の関係 にあ られた小 田原利光兄 の
「恩師の前 に」 の一文がある. 師を偲 ばれ堅 い精進
の決意 を述べて居 られ る. 学成 り多大 の貢献 をさ
れ, 現 に御活躍 の姿 を中沢先生 もお喜 びの ことと
存ぜ られ る. 一高同期生で農林技師であ られた内
田清之助農博 は氏 を真 の人格者 と認 めて居 られ,
大学で
5
期先輩 の田子勝弥元農林技師 は, 氏 は至
誠 を似 て世 を終 られ し人 と述べて居 られ る. 弔辞
は日本動物学会 ・ 日本 メソデス ト日下部教会 ・ 慈
2 甲殻類学者中沢毅一教授を憶 う
恵医大予科 自然科学研究部か ら寄せ られている.
写真類 も多数示 され, 扉 に続 き背広姿上半身 の
御遺影, 目次の後 にサクラエ ビ,
4
簡処 に御 自筆
の甲殻類のカ ッ ト, 「慈恵予科研究室 にて」, 「理科
大学生 の頃」 は餅姿の もの, 「研究所前 に於 ける故
人 と御母堂」, 「駿河湾水産生物研究所」, 「蒲原 に
て採集 せ し深海魚 : ユキ プ リソデ ウオ (故人写
坐) ・ ヒメユ リ- ダカ ・ シャチ ブ リ ・ ユ メハ ダ
カ ・ ホティエ ソ ・ ソコイ ワシ (B athylagus nak
-azaw ai
M atsubara)
, 「研究所開所式 の 冒」 テー
ブルを前 に して御挨拶中の もの, 左側
2
列 目の席
に父秀美 も写 ってお り, 「追憶」 には中沢君 の足跡
を寄稿 している. 「慈恵予科 の授業」 : 黒坂 に図示
して御説明申, 「御尊父 と御母堂」, 「故人
(34
-
5
才) と御長男, 「戸外 に於 ける和服姿の故人」, こ
の外 に
3
糞程揚 げ られている. 之等 の写真類 と多
数 の方 々の思 い出の記 に接 し御家庭 ・ 御 出生地 を
含 め様 々の事柄 を存 じ得て, 悉皆大先輩 と親 しく
させて戴 けた. 其 の真筆 な研究者, 学生達 に多大
な感化 を与え られた優れた師, 御子様方 を衷心 よ
り愛 された良 き父 としての中沢先輩 に心か らの敬
意 を表す る次第である.
中沢教授 の御業績 に就 き, 岡田博士 は純動物学
的の もののみ
13
篇 を示 して居 られ る. 題名 と発
表誌 のみ記 して置 く.
1 )
日本産 ア ミの
1
樺 に就
て, 動物学雑誌
22
巻
258
・
260
号, 明治
43
年,
2)
N otes on Japanese Schizopoda
, 動物学棄報
7
巻
4
号,
1911
,
3)
赤潮 に就て, 動推
23
巻
272
早, 明 ・
44
,
4 )
北海道産 タラバ蟹 の研究, 全土
24
巻
279
号, 明 ・
45
,
5 )
重要蝦蟹輯第
1
報, 求
産講習所試験報告第
9
巻第
2
冊, 大
・2
,
6 )
金魚
「てふ」 の研究, 水講試報第
9
巻第
7
冊, 大 ・
3
,
7)
伊勢蝦の変態研究, 付幼虫の生態 に関す る所
見, 動雑
29
巻
347
号, 大
・6
,
8 )
桜蝦の研究,
仝上
27
巻
326
号, 大
・4
,
9 )
船喰虫 に就ての観
察, 仝上
27
巻
319
号, 大
・4
,
1
0) 桜蝦の発生 に
就て, 仝上
28
巻
338
号, 大
・5
,
ll)
桜蝦 の変態
に就て, 仝上
44
巻
519 ・520
号, 昭
7
,
12)
駿河
湾に産す る桜蝦の
3
樺 に就て, 仝上
44
巻,
519
・
520
号, 昭
7
,
13)
深海魚類数種 に就 いて, 全土
44
,
519 ・520
号, 昭
7 .
尚著作一覧 には, 人工的の赤卵 と赤雛, 動雑
20
巻
242
号 明
・41
か ら自然科学序論, 前野一書店発
行, 昭
・15
迄単行本 も含 めて
113
篇 が記 して あ
るO 水産講習所同窓の機関誌水産研究誌や科学知
識等 に発表 された もの も含 まれている。
亡父 も水講の同一職場で過 ごしたので親 しい仲
であ った。 中沢氏 の入所 は, タラバ蟹缶詰 の輸出
試験が始 まった許 りの折だ ったので, 蝦 ・ 蟹類 の
研究者 を と懇望 されての由であ る。 「北海道産 タ
ラバ蟹の研究」 に就 いて も述べ, 瀬戸内に於 ける
重要蝦類 の調査結果が, 「瀬戸内海蝦調査
」
と題 し
て水講試験報告第
11
巻第
2
冊,
1915
年 に登載 さ
れていることに も触れている。 駿河湾産 の桜蝦豊
漁 は富士川 の多雨 に依 る増水 に基 くとの氏の談話
も紹介 している。 河水 によ り運 ばれる有機物 と土
砂, 泥土中に繁殖 した微生物等が栄養 として摂取
され, 上流 の笛 吹川沿岸 は石灰岩盤 よ り成 るの
で, 流入す るカル シウムが甲殻形成 に貢献 してい
るか らであると。
御寄贈戴 いた人生動物学, 裳華房発刊初版大 ・
13
, 改版昭
・10
, 神 ・ 人 ・ 動物 は駿河湾水産生物
研究所発行, 昭
・13
, に関 して も付記 している。
両署 とも書架 にあるので小生 も手 に した。 前者
の改版 は横線, 本文
351
貢,
13
章 より成 り, 索 引
368
頁迄. 慈恵医大予科教授であ られた由係か ら
か術語 の欧語 は独逸語 のみ添記 されてお り, 図 は
207
図認 め られ る。 後者 は四六版縦線
327
貢, (敬
の生物学的人生観) の副題 もある。 氏の御父君が
基智者であ られたので, 中学時代 に氏 も受洗 して
お られ たが, 奇跡等 は信 じない と述 べて居 られ
る. 動物 と人 との類似点 ・ 相違点を数 々説かれ,
人の社会 を高位の有機体 と看徹 された。 社会 は動
物
1
個体が固有の遺伝を有す る様 に固有 の伝統 を
有 し, 個人 は動物
1
個体の如 く統一 され其 の社会
に帰属 し団結 している要がある。 この様 な社会 は
国家社会 に求む可 く, 我が邦 は皇室を中心 に統一
され, 国体精神 に一致団結 している。 著者御 自身
信心深 くあ られ, 仏教 にも理解 を示 され, 仏陀 と
イエスを宗教界 の二聖 と呼び又記 して居 られ る。
短文で著者の意のある処が伝 え得 られていないこ
とを磨 る。
(東京水産大学名誉教授)