博物館がつなぐ人、文化、社会 −異なるものへのまなざし/CEL【大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所】
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(2) し て い ま す。 「テンプルとしての. [*]によ. 俗学者でもあった渋沢敬三 定まった至宝を人びとが拝みに来る、. ミュージアム」とは、すでに価値の. 年. る私設博物館「アチック・ミューゼ アム」の収集資料です。これに ラ ム と し て の ミ ュ ー ジ ア ム 」 と は、. 神殿のような場所。対して「フォー. 塔内部での展示のために世界各地か 人びとがそこに集まり、未知なるも. 年 以 上 経 過 し た 現 在、. 私がこのキャメロンの説を引用し ながら、「これからの博物館はフォー ラムとしての性格をより強く求めら. はコレクションや世界全体をカバー. す」と言っておられましたが、今で. か ら「 世 界 第 一 級 の 博 物 館 を 目 指. す。初代館長の梅棹忠夫先生は当初. 側、展示される側が情報や意見を交. ム、つまり展示する側、展示を見る. て、フォーラムとしてのミュージア. 以降、数々の展覧会の企画を通し. の当館創設二十周年のことでした。. れる」と発言したのは、1994年. する研究者の陣容などでは世界の. 文化人類学・民族学の研究機関であ ラムとしての性格を色濃く帯びるよ. また、世界の博物館全体も、フォー. 践を重ねて今日に至ります。. る こ と が 前 提 に あ り ま す。 つ ま り、 うになってきていると思います。. 究の成果を展示するという位置付け です。たとえば新聞社主催の展覧会. キャメロンの「ミュージアムにはテ. う え で、 私 は 美 術 史 家 ダ ン カ ン・. 博物館が求められる役割を考える. 成果を発表する場となっています。. 究者と大学の研究者との共同研究の. ちろん、特別展も博物館の内部の研. ションにさぐる」展と2008年の. の ま な ざ し ―― 大 英 博 物 館 コ レ ク. 開館二十周年記念特別展「異文化へ. なっているのが、1997年の当館. きましたが、そのなかでエポックに. これまで数々の展覧会を企画して. などは一切受け付けず、常設展はも. ンプルとフォーラムというふたつの. そ の 後 の 新 た な 展 開 も あ り ま し た。. この展覧会にはさまざまな試みや. 見つめ直そうという展示でした。. がら、私たち自身の「異文化」観を. レクション、写真を通じてたどりな. たのか、博物館の展示のあり方やコ. いにそれぞれをどのように捉えてき. オセアニア、日本が近代を通じて互. 博 物 館 と の 共 同 企 画 で、 ア フ リ カ、. 「異文化へのまなざし」展は、大英. の は 厄 介 な こ と だ と 思 っ て い ま す。. いった本来関係ない区別にまで及ぶ. 術館へ、異文化のものは博物館へと. せんが、自分たちの文化のものは美. 割の区別をなくすべきだとは思いま. 感じたからです。それぞれがもつ役. 要以上に強くなってしまっていると. られたことで、その役割の区別が必. 館 」「 博 物 館 」 と 区 別 し て 訳 し 分 け. と つ の 言 葉 を、 日 本 語 で は「 美 術. 英語では「ミュージアム」というひ. いう試みも行いました。というのは、. 見がありました。たとえば当時はま. 実際にやってみるといろいろな発. と考えたのです。. 界がすべて見えてくるのではないか. 行うことでその壁が取り払われ、世. の展示を、博物館と美術館の両方で. 思っています。そのため同じテーマ. ノに対するアプローチの違いだと. 合う場が美術館”というように、モ. 会を背景に生まれた作品と直接向き. す る 博 物 館 ” と、 “特定の時代や社. の背後にある歴史や文化を語ろうと. 私 が 考 え る 両 者 の 違 い は、 “モノ. 展示内容は各館ごとに自由という形. 展覧会にはアジアとヨーロッパの. のなかにたどったものです。実際の. 人体表現をともなうさまざまな造形. 自画像や彫刻、生活用具、写真など、. きたのか。その認識の移り変わりを、. え、お互いをどのように受け入れて. パの人びとが、自らをどのように捉. た国際巡回展で、アジアとヨーロッ. と美術館の共同プロジェクトで行っ. 選択肢がある」という主張を参考に. たとえばこの展示が民博の常設展示 これでは、美術館と博物館、それぞ. 賞の邪魔になる」というクレームが. だったのが、世田谷美術館では「鑑. 聞くことで理解が深まるという反応. が、民博では大変好評で、トークを. 展を行ったことで、美術館と博物館. ルで同時開催としました。この巡回. 近代美術館で、それぞれ同一タイト. 神奈川県立歴史博物館と神奈川県立. 中之島の国立国際美術館、首都圏は. の区別をあらためて考え直す機会と. 世界中の記憶の貯蔵庫に. ということがありました。それで気 博物館に行く時と美術館に行く時で. ――フォーラム型 情報ミュージアムの構築. も の を 見 て 勉 強 し よ う と す る の に、 美術館では学ぼうという意識で行く. で は こ の 壁 を 取 り 払 え な い と 考 え、. じ展示を博物館と美術館で開くだけ. だけ構えの違いがあるとすれば、同. 同じひとりの人間のなかでもこれ. の問題です。現在、データベースの. 信をどうしていくか。ひとつは言語. 実情です。世界に向けて第一級の発. まだ十分にできていないというのが. ましたが、それに見合う発信がまだ. 世界第一級の博物館になったと話し. 次 に 企 画 し た の が「 ア ジ ア と ヨ ー. ことはないのではないか。. 先に、コレクションなどで民博は. は構えが違う。博物館では初めての. なったのではないかと思います。. 1. 付いたのですが、ひとりの人間でも. きて結局. 回 で 終 わ っ て し ま っ た、. たが、共通しているのはテーマだけ、. カ国の美術館、博物館で実施しまし. 18. い気がします。. の あ り 方 を 再 考 す る も の と も な り、 れのなかでは、ひとつのカテゴリー. 式としました。日本では5館が参加. カ国の博物館. 開館以来となる全面改修の議論がこ. だ珍しい取り組みだったギャラ. 3. ジア・ヨーロッパの. こから始まったのです。. のモノを見る時でも、世界の半分し. ロッパの肖像」展でした。これはア. 「 SELF and OTHER アジアとヨー ロッパの肖像」展です。. 壁を取り払い、 新たなつながりをつくる. その研究に必要な資料を収集し、研. 民博は一般的な博物館とは異なり、. 換して議論を行う場となるよう、実. 万5000点にのぼりま. ていく場所という意味です。. ら 収 集 さ れ た、 仮 面 や 彫 像 ( 神 像 ). 万 5000 点 の 収 蔵 品. つを. のに出会い、そこから議論が始まっ. 核とした. の ち に 寄 贈 )が 加 わ り、 こ の. を中心とした民族資料 (当初は寄託、. 大阪万博のテーマ館であった太陽の. 70. 3. トップに立ったと言えると思います。. 収蔵品は. 開館から. でオープンしました。. 4 40. 34. また、民博での開催のあと、東京. できる。そのほか音楽展示や言語展示など、テーマに特化したユニークな展示も見ることができる。. しましたが、そのうち大阪は民博と. 展を開催。博物館. 4 CEL March 2020 CEL March 2020. 5. 常設されている地域展示では、世界を9 地域に分け、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、南アジア、 東南アジア、中央・北アジア、東アジア展示(朝鮮半島の文化、中国地域の文化、日本の文化)を巡る世界一周の旅が と美術館のあり方 の違いが随所に見 受けられた。. リー・トークを両館で行ったのです. 大英博物館コレク ションにさぐる」展 のあと、東 京・世 田谷美術館でも同. か見えないということになりかねな. へ のまなざし――. の世田谷美術館で同じ展示をすると. 民博での「異文化.
(3) などで実現していま. これまで台湾や韓国. ります。里帰り展は、 ないことがその文化を守ることにな. などもありますから、それは公開し. ていく予定です。一方で秘密の儀礼. 後もずっと続けていきたいと思いま. ができていく。この取り組みは、今. 知識のやり取りができ、知識の集積. 体が変わっていくのです。双方向に. まってもらい、画面. ミュニティの人に集. り ま す。 現 地 で コ. たちをとることもあ. ワークショップのか. くことで、自分たちの子孫にこの知. に自分たちの経験や知識を残してい. 情報を豊かにするだけでなく、ここ. 参加してくださる方は、単に資料の. います。それぞれのプロジェクトに. り、研究対象は世界各地にわたって. 世界中とつながっていく、プラット. 記憶の貯蔵庫となり、ここを通して. ることで、民博が世界中の人たちの. より多くの資料をデータベース化す. かなか終わらないのですが(笑) 、. いえ何しろ. ていくべきだと考えています。とは. フォーラム型のデータベース化をし. すし、民博の資料は基本的にすべて. に資料を映しながら 識や経験を伝えたいという願いを フォームになればと願っています。. のプロジェクトが進んでお. 議論してもらったな もって参加してくださる方もおられ. 現在. ると考えています。. かで出てきた情報を ちの村に伝わるテキスタイルの復興. ます。また、台湾や中国から自分た. ターネットを通した. す。 ほ か に も イ ン. 全部データベースに. 万点以上あるので、な. 入れていくわけです。. 29. アムの構築です。これは民博の資料. るのが、フォーラム型情報ミュージ. また、2014年より着手してい. 実現を進めています。. 多言語化による国際的な情報発信の. いったような“記憶”まですべて入. これを使ってこんなことをしたと. ている知識や、自分が子どもの頃に. れぞれの人がそのモノについてもっ. 方法といったものだけではなく、そ. いっても、単純に資料の名前や使用. データベースと. すが、お互い隣の集落ではどんなこ. 時期に集落ごとにお祭りを行うので. ほかにも、奄美群島の徳之島では同. 流 し て 喜 ば れ た こ と も あ り ま し た。. よくぞ残しておいてくれた」と涙を. ちの祖先がつくったものに出会えた。. に 来 ら れ て、 「ここで初めて自分た. をしようとする方々が自費でこちら. を農具と交換して回収し、その武器. 終結後、民間に大量に残された武器. 独立後1992年まで続いた内戦の. これは、アフリカ・モザンビークで. ち』という作品が展示されています。. コ ー ナ ー の 一 角 に、 『いのちの輪だ. ちょうどその折、南スーダンの文. もお呼びしました。. 事前にシンポジウムをひらき、司教. で情報を付け加えてもらうこともあ. で現地にもっていって展示し、そこ. あるいは資料を里帰り展示のかたち. てもらい新たな情報を教えてもらう。. 物館にお越しいただいて、資料を見. こうというものです。. れた知見をデータベースに加えてい. の人たちとも共有し、そこから得ら. 氏も日本にお呼びし、おふたりを引. から聞き、それならばとマドゥット. でもある大英博物館のキュレーター. 明されたのです。その話を私の友人. 一般公開できるものから順次公開し. すので、まずコミュニティで公開し、. の人たちの同意を得ることが必要で. いません。それぞれのコミュニティ. 現在のところ完全な公開にはなって. ります。また公開の範囲についても、. 媒体に落として現地に配ることもあ. クセスできない地域などの場合、紙. けでなく、まだインターネットにア. これらの成果はデジタル化するだ. く、来館者の興味に合わせて展示場. 展示資料の情報を提供するだけでな. でも見ることが可能です。ほかにも. す。スマホの情報は自宅のパソコン. 報を見ることができるようになりま. 次に現地で行うフィールドワーク自. らフィードバックしてもらうことで、. 点を現地のコミュニティの人たちか. 我々としても、研究者にはない視. たということもあります。. 集落の芸能を見直すきっかけになっ. ているかを知ることで、自分たちの. 他集落でどんな歌や踊りが伝承され. それが映像のデータベースを通して. 世界中の人たちの文化の多様性を敬. し て い ま す。 民 博 の ミ ッ シ ョ ン は、. います。. なくしてこのテーマは語れないと思. 化的な多様性を保障すること、それ. ビークにおける平和構築」にむけて. 企画展「武器をアートに――モザン. 品が民博におさめられた際に行った. という司教で、2013年、この作. チャーチのディニス・セングラーネ. す。 運 動 の 創 始 者 は ア ン グ リ カ ン. という運動のなかで生まれたもので. を つ く り 平 和 を 訴 え る「 銃 を 鍬 に 」. を使って現地のアーティストが作品. 現在、本館常設展示室のアフリカ. の情報を、国内外の研究者や利用者 と を や っ て い る か は 知 ら な か っ た。. 化次官ジョク・マドゥット氏が、大 き合わせようということになりまし. における最適なコースを設定し、誘 しました。情報の高度化は、今後ま. い る 人 類 と し て の 共 感 を 育 む こ と、. また2025年には「いのち輝く. 民博ができることは、まだまだたく. そのための場をつくること。「フォー. 未来社会のデザイン」をテーマに大. さんあります。今後も新しい挑戦を. すます必要になると思います。. こそ可能となった平和構築の展開の. 阪・関西万博が開催されますが、か. 発信していきたいと考えています。. れていて、それを見た人がいたから かたちでしょう。博物館が展示物を. 年万博のテーマ展示プロ. * 若 くして 祖 父 渋 沢 栄一からその後 継 者に 懇 請 さ. 見方を説いた。. ミュージアムまで﹄ ︵岩波書店、第 回サントリー学. ﹃文化の﹁発見﹂︱︱驚異の部屋からヴァーチャル・. ト ワ ー ク 型 ミ ュー ジ オ ロ ジ ー の 試 み ﹄ ︵岩波書店︶ 、. カ学 会 研 究 奨 励 賞 受 賞 ︶ 、 ﹃文化の﹁肖像﹂︱︱ネッ. 面結社、憑霊、邪術 ﹄ ︵講談社、第5回日本アフリ. は﹃ 仮 面の森 ︱︱アフリカ・チェワ社 会における仮. 助手、国立民族学博物館助手などを経て現職。著書. 了、 学 術 博 士。 大 阪 大 学 文 学 部. 学院文学研究科博士後期課程修. 都 大 学 文 学 部 卒 業、 大 阪 大 学 大. 1 9 5 5 年、 京 都 市 生 ま れ。 京. よしだ・けんじ. 吉田憲司. 族 )連 合 会 会 長 を 務 め、文 化の実 地 的・総 合 的. 民俗・地理・宗教・考古・心理・言語・社会・民. 宮本常一といった研究者も輩出。九学会(人類・. ミューゼアム」には多くの同人が集まり、岡正雄、. 責を担う。また、自邸で立ち上げた「アチック・. 大 蔵 大臣 を 務 め、転 換 期の日 本 経 済において 重. 経て、第二次世界大戦終了前後に日本銀行総裁、. れ、 実 業 界 に 入 る。 横 浜 正 金 銀 行、 第一銀 行 を. そもそも遺伝的有効個体数がほか. ラムとしてのミュージアム」として、. 通じて次の行動を起こさせる力を. つて. デューサーであった岡本太郎が言っ. ロードすることで、自分のスマート. の動物より極めて少ない人類が、な. 注. もっている――「フォーラムとして のミュージアム」が社会貢献にまで. たように、万博は人類の祭典だと思 います。技術進歩が急速な現代では、 この時のような未来予想型の万博は 難しいと思いますが、祭りという性 るという意義は大きいと思います。. 格は残ります。世界中から人が集ま. 2020年は、これまで何年もか. フォンをかざすだけで展示資料の情. ぜ地球全体を覆うようになったのか. たちが主張したいテーマの展示をそ. 報を閲覧できるうえ、そのデータが. というと、生物的多様性の少なさを. 電子ガイドについては、これまで. スマホに記録されるようになります。. 文化的多様性で補っているからです。. こで行うといった仕組みをつくって. さらにそれをもってビデオテークの. 人類の「いのちが輝く」ためには文. 館内でPSPを貸出していたシステ. ブースに行くと、関連映像や研究情. はどうでしょうか。. を基地にして、それぞれの国が自分. 館と協力するのが一番です。博物館. 使うわけですから、世界各国の博物. 実際の会場では展示という手段を. する年となります。ちょうどこの. けて準備してきたことが一気に実現. ――博物館のミッションと可能性. 多様性の尊重と共感を育む場. す。. つながった事例ではないかと思いま. 70. ムを進化させます。アプリをダウン. 新されるのもそのひとつです。. 月に電子ガイドやビデオテークが一. 3. 具体的には、実際に現地の方に博. 英博物館で展示されていた同運動の た。その後、南スーダンでも同じよ. 意をもって尊重し、同時代を生きて. きる。. これは民博のミッションにも共通. 作品を見て感激し、自分たちも武器. 導してくれるようなシステムも開発. はもちろん、自宅に情報を持ち帰ることもで. これは大英博物館で作品が展示さ. うな活動が始まっています。. コミュニティの人びと、つまり現地. れていくのです。. 博物館が担う 平和構築の新しいかたち. 34. ばかりでなく、その資料をつくった. 企画展「武器をアートに――モザンビークにおける平和構築」が開催さ れた折、日本に住む人びとへのメッセージを込めて、 『いのちの輪だち』 など4点の作品が制作され、民博におさめられた。. を回収してモニュメントをつくりた. イドは、スマートフォンのアプリを使用する ため館内のビデオテーク(右)などでの閲覧. 芸賞受賞、第1回木村重信民族藝術学会賞受賞︶な ど多数。. 6 CEL March 2020 CEL March 2020. 7. 22. い、司教に会いたいという意向を表. 3月5日から導入される新システムの電子ガ.
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