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子どもの育ちを支える環境構成の在り方 : A市の保育士研修の振り返りを通して

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児の教育111(2)』pp.62-66。 今井和子(編著)(2016)『主任保育士・副園長・リーダーに求められる役割と実践的スキル』ミネルヴ ァ書房 上田淑子(2004)「幼稚園保育者の力量に対する園長等の評価と力量向上をうながすリーダーシップ- 転勤経験をもつ保育者の前・現任園の園長等の比較分析」『乳幼児教育学研究13』pp.27-36。 ――(2013)「園内研修と園長のリーダーシップ:園内研修を行った保育士のインタヴュー調査から」『甲 南女子大学研究紀要 人間科学編50』pp.7-13。 ――(2014)「保育所・幼稚園の園長が保育の質の向上のために最重要視しているリーダーシップ役割: 予備的アンケート調査から」『甲南女子大学研究紀要 人間科学編51』pp.29-37。 亀谷美代子・信田和子(2006)「主任(中間管理職)保育士に対する研修の取り組みについて」『横浜女 子短期大学研究紀要21』pp.65-84。 厚生労働省(2008)「保育所における質の向上のためのアクションプログラム(「保育所保育指針等の施 行等について」雇児発第0328001 号:別添4)」URL: http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1116-7m.pdf (閲覧日 2017 年 10 月8日) ――(2017)「保育所保育指針」URL: http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000160000 .pdf (閲覧日 2017 年 10 月8日) ――(2017)「 保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について 平成 2 9 年 3 月 7 日 厚 生 労 働 省 雇 用 均 等 ・ 児 童 家 庭 局 保 育 課 」 URL: http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000155996 .pdf (閲覧日 2017 年 10 月8日) 関川芳孝(2001)「保育園パワーアップのための改造計画-苦情は宝(8)苦情解決と園長のリーダーシッ プ」『保育の友49(14)』pp.30-33。 全国保育問題研究会(2016)「特集1 主任保育者の役割と職員集団」『季刊 保育問題研究282』pp.6-113。 高橋哲郎(2006)「時代のニーズに対応した新しい幼稚園づくりと園長のリーダーシップ」『精華女子短 期大学研究紀要32』pp.65-72。 内 閣 府 「 よ く わ か る 「 子 ど も ・ 子 育 て 支 援 新 制 度 」 URL: http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/sukusuku.html (閲覧日 2017 年 10 月8日) 林悠子(2016)「保育の質を生み出すリーダーシップ 主任保育者への期待」前掲『季刊保育問題研究 282』所収,pp.8-23。 村田美穂(2006)「ノディングズのケアリング論」中野啓明・伊藤博美・立山善康(編著)『ケアリング の現在』晃洋書房所収,pp.90-102。 矢藤誠慈郎(2012)「インタビュー 園のリーダーが大事にしたい4つの行動」『これからの幼児教育』 pp.2-4。 ――(2015)「保育リーダーの研修による保育の質の向上へ――マネジメントが求められる時代の保育 リーダーの研修とは」『発達142』pp.50-56。 渡辺桜(2000)「保育者としての園長のリーダーシップに関する研究(1):PM 理論による分析から」『日 本保育学会大会研究論文集(53)』pp.628-629。 ――(2001)「園内での保育実践力向上のための基礎的研究:保育者としての園長のリーダーシップの 視点から」『愛知教育大学幼児教育研究10』pp.33-40。

子どもの育ちを支える環境構成の在り方

-A 市の保育士研修の振り返りを通して- 長江美津子,人間生活科学部特任教授 伊藤博美,非常勤講師 要約:平成30 年4月から実施される幼稚園教育要領,保育所保育指針および幼保連携型認定こど も園教育・保育要領においては,これら3施設が共通した幼児教育の施設であることが明示されて いる。幼児教育において保育者の重要な役割の一つである環境構成に焦点をあて,幼児教育の質向 上を図るA 市における現職保育士研修の実践事例をとりあげる。この研修では,遊びの楽しさを踏 まえつつ,研究保育で展開が見られなかった傾斜あそびの環境の再構成をグループで検討した。そ の上で,子どもと保育者が共に環境をつくることの意義を確認し,幼児が主体的にかかわりたくな るような魅力ある環境構成のあり方を確認した。 はじめに 平成30 年 4 月から,平成 29 年3月告示の幼稚園教育要領をはじめ,同時に改定(訂)された保 育所保育指針,認定こども園教育保育要領が実施されようとしている。平成28 年 8 月に社会保障 審議会児童部会専門委員会から出された「保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ」(以下「 中間とりまとめ」)では,「保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ」がなされ,幼稚園や 認定こども園同様 3 歳以上の幼児期の教育を「幼児教育」と呼び,「いずれの施設に通う子どもに ついても,同等の内容での教育活動が確保される」よう,新保育所保育指針で「明確に示すことが 適当」としている(「中間とりまとめ」pp.4-5)。 このように「中間とりまとめ」では,保育所の「教育の質の向上」が「保育士の専門性の向上や 保育実践の改善」と共に求められている(p.5)。保育者の専門性を高めていくことと,子どもの最 善の利益を目指すことはセットである。研修での学びが子どもの学びに繋がっていく。「職員の資質 ・専門性の向上」が謳われる新保育所保育指針では,研修機会の確保やキャリアパス制度が確立さ れ1,保育の質の向上につながっていくことが期待される。 これまで,幼稚園教諭には新任採用研修として,数十時間の職場での研修や園外研修のほか,個 別で指導を受ける時間が保障されるなど研修制度が確立されてきた。他方,保育所保育士は市町で の研修計画に委ねられているのが現状である2。幼稚園はじめ,認定こども園,保育所,地域型保 育などの教育・保育施設で教育・保育に携わっている全ての職員に,同時間数の研修を確保するこ とが「同等の内容での教育活動」を確保するために必須であろう。今回,新保育所保育指針に「職 員の資質・専門性の向上」が謳われることで,教育・保育に携わる者全てにその権利が保障される ことが期待される。 しかし,現場では今も保育が営まれており,新指針の実施を待つまでもなく,保育職の専門性向 上は待ったなしである。現状の数少ない研修の機会を効果的なものにするためには,研修をする側 が研修のねらいを明確にし,効果的なプログラムを計画し,実施することが求められる。 そこで本稿では,幼児教育において保育者の重要な役割の一つである環境構成3に焦点をあてたA 市の保育士研修の実践を報告し考察することで,保育所の「教育の質の向上」と「保育士の専門性 の向上や保育実践の改善」への第一歩としたい。環境構成とは,幼児教育や保育における「具体的 な指導のねらいや内容を設定し,それらが達成できて,しかも幼児が主体的にかかわりたくなるよ

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うな魅力ある環境を構成する」ことであり,「幼児の活動の展開にともなって力動的に変化し」,「幼 児の発想を生かしながら,幼児と一緒に作っていく」4保育者の重要な職務の一つである。 (長江,伊藤) 1 A 市の保育士研修会(保育研究)とその考察 (1) A 市の保育士研修会(保育研究) A 市では半年前から環境構成について園内で研究を重ねて きた。3年間で3~5歳児を対象とした保育研究を行ってい る。ここで取り上げる保育士研修は,そのうち5歳児を対象 としたものである。 ◎研究テーマ:『5歳児の姿を通し,子どもの育ちや環境構 成の在り方と保育者の関わりについて考え る』 ◎方 法:研究保育およびグループ討議 ◎日 時:2016 年 11 月 1 日(火) 晴れ 午前9時~午後3時半 ◎場 所:A 市立保育園 ◎実施年齢:5 歳児 男児9 名 女児 14 名 計 28 名 ◎参 加 者:市内5歳児担当保育者25 名 ◎当日の流れ 【午前】 1)保育観察(戸外) 9 時~10 時 2)保育観察(室内) 10 時~11 時 3)グループ討議Ⅰ 11 時~12 時 【午後】 4)グループ討議Ⅱ 13 時~14 時 30 分 ◎事後研修:11 月 15 日(火)市役所会議室 1) 戸外の環境構成の様子 K園では,前日の子どもの様子を踏まえ図1のような環境構成が園庭に設定されていた。傾斜あ そびコーナー,木の実や廃材を使って遊べる場所,石鹸クリーム作りコーナーなど,一定の場所で じっくり遊ぶ内容のものと,鬼ごっこやドッジボール等,体を動かして遊ぶあそびが交わらない様 に設けてあった。 テント下には,木の実や木枝などの自然物が種別に分けられ 並べてあった。他にも毛糸やラップの芯,飲料水の空き容器な ど,様々な材料や素材が豊富に準備されていた。 2 段式ワゴンの固形石鹸,おろし器,泡立て器,計量カップ, ボール,玉じゃくし,溶き絵具の入ったしょうゆさしなどの器 具は,ラベル表示がされたカゴに並べてあった。 また,材料や素材,器具などの近くには,机・いすなどが置 いてあった。そこには,前日年長児が作った石鹸クリームケーキが飾ってあった。置いておくこと も遊びが始まるきっかけや興味や関心を引く役割になるのだろう。 砂場 車の形の遊具 傾斜あそび 【テント】 廃材製作コーナー 石鹸クリーム ブランコ 玄関 鉄棒・雲梯 総合遊具 園舎 ●縄跳びが入ったカゴ テラス ドッジボール コート 図1 A 市立保育園 平面図 園舎 写真:公開保育の様子

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うな魅力ある環境を構成する」ことであり,「幼児の活動の展開にともなって力動的に変化し」,「幼 児の発想を生かしながら,幼児と一緒に作っていく」4保育者の重要な職務の一つである。 (長江,伊藤) 1 A 市の保育士研修会(保育研究)とその考察 (1) A 市の保育士研修会(保育研究) A 市では半年前から環境構成について園内で研究を重ねて きた。3年間で3~5歳児を対象とした保育研究を行ってい る。ここで取り上げる保育士研修は,そのうち5歳児を対象 としたものである。 ◎研究テーマ:『5歳児の姿を通し,子どもの育ちや環境構 成の在り方と保育者の関わりについて考え る』 ◎方 法:研究保育およびグループ討議 ◎日 時:2016 年 11 月 1 日(火) 晴れ 午前9時~午後3時半 ◎場 所:A 市立保育園 ◎実施年齢:5 歳児 男児9 名 女児 14 名 計 28 名 ◎参 加 者:市内5歳児担当保育者25 名 ◎当日の流れ 【午前】 1)保育観察(戸外) 9 時~10 時 2)保育観察(室内) 10 時~11 時 3)グループ討議Ⅰ 11 時~12 時 【午後】 4)グループ討議Ⅱ 13 時~14 時 30 分 ◎事後研修:11 月 15 日(火)市役所会議室 1) 戸外の環境構成の様子 K園では,前日の子どもの様子を踏まえ図1のような環境構成が園庭に設定されていた。傾斜あ そびコーナー,木の実や廃材を使って遊べる場所,石鹸クリーム作りコーナーなど,一定の場所で じっくり遊ぶ内容のものと,鬼ごっこやドッジボール等,体を動かして遊ぶあそびが交わらない様 に設けてあった。 テント下には,木の実や木枝などの自然物が種別に分けられ 並べてあった。他にも毛糸やラップの芯,飲料水の空き容器な ど,様々な材料や素材が豊富に準備されていた。 2 段式ワゴンの固形石鹸,おろし器,泡立て器,計量カップ, ボール,玉じゃくし,溶き絵具の入ったしょうゆさしなどの器 具は,ラベル表示がされたカゴに並べてあった。 また,材料や素材,器具などの近くには,机・いすなどが置 いてあった。そこには,前日年長児が作った石鹸クリームケーキが飾ってあった。置いておくこと も遊びが始まるきっかけや興味や関心を引く役割になるのだろう。 砂場 車の形の遊具 傾斜あそび 【テント】 廃材製作コーナー 石鹸クリーム ブランコ 玄関 鉄棒・雲梯 総合遊具 園舎 ●縄跳びが入ったカゴ テラス ドッジボール コート 図1 A 市立保育園 平面図 園舎 写真:公開保育の様子 ちなみに,石鹸クリームケーキは次のようにつくる。固形石鹸を削り器で削り,粉にしたものに少 しずつ水を足し,泡立て器でホイップクリーム状にする。その クリームをビニール袋に入れ三角や四角に切ったスポンジの上 に押し出して飾っていくとスポンジケーキの出来上がりである。 2) 保育室の環境構成 保育室では戸外あそびを終えた幼児らが順次入室し,各グル ープに分かれ翌週に迫ったお店屋さんごっこに向け取り掛かっ ていた。グループは『①おどろかすチーム(お化け屋敷)』『②カード(ゲームや)』『③レストラン』 『④お菓子や』の4つであった(図2)。 棚の上⑤には『レストラングループ』が作ったケーキやオムライスなどの食品が置かれ,お店屋 さんで着用するビニール製の衣装⑥はハンガーにかけて吊り下げられてあった。また,窓側には『 おどろかすチーム』が描いたおばけの絵⑦が貼ってあった。 ワゴンの中には,木の実や,毛糸,カラービニール袋,紙粘土など様々な素材,紙類もケント紙, 画用紙,折り紙など,子どもが選択して使えるようになっていた。 また,⑧黒板側にはお店屋さんを開くまでの日程や,作る物,作った物などがグループごとに書き 出してあり,子ども達が見通しをもって活動を進めていける環境が作られていた。 (図2 保育室内環境構成 写真:ごはん屋さんが作った食べ物 3) グループ討議Ⅰ-環境に関わりながら子どもたちは,どう遊びを進めていたのか- 保育観察のあと引き続き行われたグループ討議Ⅰは次のとおりである。 教材ワゴン 写真:カードを作っている様子 出入口 出入口 ③ 机 ボンド ② ① ④ ⑥ 教材ワゴン 木の実類 棚 ⑤ 黒板 ⑧ 写真:保育室でお店屋さんごっこの準備 を進める様子 ⑦

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保育研究は保育を担当する保育者の力量向上が第一の目的となるが,複数の保育者が同じ保育(指 導),または子どものようすを見ることにより,子どもたちの状況の分析,保育の題材の吟味などを おこなうことも可能になる。こうした利点を活かし,子どもたちが戸外あそびやお店屋さんごっこ に向け,どう周りの環境と関わりながら遊びを進めていたかについてグループ1から4に分かれて 話し合った(表1)。 1 (戸外)自然物が豊富に置いてあり,材料を選択して遊べる環境になっていた。 材料が細かく分けてあり,子ども達が選びやすく,分かりやすかった。 保育者は子ども同士教え合いながら作っていけるような声掛けをしていた。 (保育室)子どもが見通しを持って進めていけるように予定表が,グループごとに 貼ってあった。 教材や素材の置いてある位置や場所が,わかるように提示してあった。 子どもの気づきを大事にしようとする保育者の関わりが,感じられた。 2 (戸外)物が沢山あり,取り出しやすい,選びやすい,使いやすいなどの環境にな っており,子どもたちは試したり工夫したりしながら,じっくり遊び込んでいた。 自然と友達同士伝えあう,教え合う姿がみられた。 (室内)園庭で遊んだ友達同士のつながりがおばけレストランのおもちゃ作りに活 かされていた。自然な流れの中で子どもたちが片づけはじめ,入室後は直ぐに活動 を開始していた。子どもたちの意欲や気づき,グループごとの仲間意識が感じられ た。 3 (戸外)環境設定されていた材料や素材が子どもたちの想像を豊かにしたり試して みたくなったり,ワクワクするものだった。作りたいものを最後まで諦めずに根気 よく作る姿が見られた。 松ぼっくりに毛糸を上手く巻き付けられず困っている幼児に対して,保育者がやっ てしまうのではなく,巻き方などの具体的な方法を知らせる関わりをしていた。 4 (戸外)ドッジボールでチームを決めるのに,10 分位かかっていた。自分たち がやりたい遊びだからこそ相談したり折り合いをつけたりすることができるのでは ないか。強いボールが当たり泣いていた幼児に「大丈夫だよ。痛かったね」と,相 手の立場に立った考え方ができていた。 表1 子どもたちが環境に関わりながらどう遊びを進めていたか この討議を受けて,受講生のまとめは次のとおりとなった。 まとめ―環境構成と環境に関わる子どもの姿― ・ワクワクと湧き上がってくる感情が,遊びへの意欲や興味・関心につながっていた。 ・材料や素材が豊富にあり,子どもたちが自ら選択して遊べる環境になっていた。 ・各々の用具や材料に表示…分かりやすい・取り出しやすい・使いやすい。 ・試す,工夫する姿や,根気よく遊ぶ姿が見られた。 ・最後まで諦めずに根気よく作る姿が見られた。

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保育研究は保育を担当する保育者の力量向上が第一の目的となるが,複数の保育者が同じ保育(指 導),または子どものようすを見ることにより,子どもたちの状況の分析,保育の題材の吟味などを おこなうことも可能になる。こうした利点を活かし,子どもたちが戸外あそびやお店屋さんごっこ に向け,どう周りの環境と関わりながら遊びを進めていたかについてグループ1から4に分かれて 話し合った(表1)。 1 (戸外)自然物が豊富に置いてあり,材料を選択して遊べる環境になっていた。 材料が細かく分けてあり,子ども達が選びやすく,分かりやすかった。 保育者は子ども同士教え合いながら作っていけるような声掛けをしていた。 (保育室)子どもが見通しを持って進めていけるように予定表が,グループごとに 貼ってあった。 教材や素材の置いてある位置や場所が,わかるように提示してあった。 子どもの気づきを大事にしようとする保育者の関わりが,感じられた。 2 (戸外)物が沢山あり,取り出しやすい,選びやすい,使いやすいなどの環境にな っており,子どもたちは試したり工夫したりしながら,じっくり遊び込んでいた。 自然と友達同士伝えあう,教え合う姿がみられた。 (室内)園庭で遊んだ友達同士のつながりがおばけレストランのおもちゃ作りに活 かされていた。自然な流れの中で子どもたちが片づけはじめ,入室後は直ぐに活動 を開始していた。子どもたちの意欲や気づき,グループごとの仲間意識が感じられ た。 3 (戸外)環境設定されていた材料や素材が子どもたちの想像を豊かにしたり試して みたくなったり,ワクワクするものだった。作りたいものを最後まで諦めずに根気 よく作る姿が見られた。 松ぼっくりに毛糸を上手く巻き付けられず困っている幼児に対して,保育者がやっ てしまうのではなく,巻き方などの具体的な方法を知らせる関わりをしていた。 4 (戸外)ドッジボールでチームを決めるのに,10 分位かかっていた。自分たち がやりたい遊びだからこそ相談したり折り合いをつけたりすることができるのでは ないか。強いボールが当たり泣いていた幼児に「大丈夫だよ。痛かったね」と,相 手の立場に立った考え方ができていた。 表1 子どもたちが環境に関わりながらどう遊びを進めていたか この討議を受けて,受講生のまとめは次のとおりとなった。 まとめ―環境構成と環境に関わる子どもの姿― ・ワクワクと湧き上がってくる感情が,遊びへの意欲や興味・関心につながっていた。 ・材料や素材が豊富にあり,子どもたちが自ら選択して遊べる環境になっていた。 ・各々の用具や材料に表示…分かりやすい・取り出しやすい・使いやすい。 ・試す,工夫する姿や,根気よく遊ぶ姿が見られた。 ・最後まで諦めずに根気よく作る姿が見られた。 ・子どもたちが見通しを持ち主体的に遊びが進められるような環境になっていた。 ・作った物を並べたり飾ったりしておくことが可視化であり,期待感,成果の確認,他のグルー プへの関心,状況把握などにつながっているのではないか。 (友達関係の育ち) ・友だちと相談する,伝えあう,教え合う,折り合いをつけようとする姿が見られた。 ・ボールに当たった相手を思いやる姿があった。 ・グループ活動を進める中で仲間意識の育ちが感じられた。 (保育者の関わり) ・保育者は友達関係の気づきを大事にしていた。 ・子ども達同士で考えたり相談したり教え合ったりする関係を大事にしていた。 ・子どもが出来ない所をやってしまうのではなく,具体的な方法を知らせていた。 4) グループ討議Ⅱ-傾斜あそびを通して環境構成を考える- 午後に行われたグループ討議Ⅱの概要は次の通りである。 午前の保育観察では,ドッジボールや廃物を利用したけん玉作りなど,それぞれのコーナーで体 を動かし遊んだり,試したり考えたりしながら作ったりする姿がみられた。それとは対照的に子ど もたちが頻繁に出入りする玄関口の近くに設定され,目の留まりやすい場所にあった傾斜あそびコ ーナーには子どもの姿はなく閑散としていた。前日は盛り上がっていたというが,何が原因で子ど もが集まってこなかったのか。前日と当日の違いを話し合いながら子ども理解,環境構成の在り方 について考えていくことにした。 傾斜あそびの環境構成 前週に園児たちが散歩に出かけ,ドングリや松ぼっくりを拾ってきた。保育者は子どもたちが木 の実などを使って年長児なりに遊びを考えたり工夫したりして遊ぶ経験をして欲しいと考え,大・ 小様々な木の実のほか,木の板や木片,トイレットペーパーの芯などの材料や素材を置いておいた。 前日の傾斜あそび 前日は年長児が興味や関心を持ち集まってきた。用意し てあった板を椅子の上に置き傾斜を作ると,早速その 上から転がすなどの遊びが始まったが,その中の一人が そばに置いてあったトイレットペーパーの芯をトンネルに して通過させて遊びかけた。このことがきっかけとなり, 「紙コップの中に入れてみたらどう・・・」「点数決めよう 」「ゴールはここ」など,遊び方の相談をしたり,木片や廃 材の配置を考えたり工夫しながら接着剤で固定させていっ た。 当日の傾斜あそび 前日,5 歳児が集まり盛り上がっていたので,保育者はその遊びが続くことを予測し,前の日と 同じ状態にして,傾斜あそびのコーナーを設けておいた。 最初,数人の幼児が集まり傍にあったドングリを無造作に握って転がしていたが,2~3回やると その場から他の遊びに移っていった。それ以降,その場に子どもは来なかった。 遊びの面白さや楽しさについての検討 子どもたちが遊びに夢中になったり繰り返したりする遊びには,その遊びの中に子どもを夢中に 写真:前日作った傾斜あそび のパネル

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させる魅力や要素が含まれているはずである。それが何であるかを明確にさせ,それらの要素を今 後の環境構成に取り入れていくことが子どもらの遊びの充実,保育者が計画したねらいの達成につ ながると考えた。 5) 事後研修 執筆者自身は子どもの遊びや子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿をイメージした時,近所の子どもた ちが集まってメンコやビー玉を路地裏でする昭和初期の頃の懐かしい光景や,近所の友達らと群を なして遊ぶ姿が目に浮かぶ。秘密基地づくりのようなことも子どもが成長していく過程の中で一度 は興味や関心を持つ遊びの一つではないだろうか (念のため伝えておくが執筆者が経験した訳では ない。あくまでもイメージの話である) 。女児だと人形を布で包んだり背負ったりしてままごと遊 びに興じる姿が浮かんでくる。 執筆者が保育者になった 40 年前から現在に至るまで,保育園の庭先でプランターや石の下にい る虫を探したり,砂場で山や川,ダムなどを作ったりして遊ぶ姿,色鬼や氷鬼などの鬼ごっこなど 変わらない遊びもある。きっと執筆者が保育に従事する,そのずっと以前から続いてきたであろう。 時代が変わろうとも変わらない遊びには,遊びの面白さ楽しさを感じる点に共通して言えることが ある。そうした思いもあり,後日,市役所会議室にて,事後研修として2時間,傾斜あそびの検討 に入る前に,子どもが好きな遊びや楽しいと感じさせる要素を初回と同じグループで話し合うこと にした。下表は“子どもたちがよく遊んでいる遊びや,楽しさの要素”について話し合いを通して 参加者から出てきたものである(表2)。 子どもがよく遊んだり繰り返したりするあそびには,形の無い物から形のある物への創造,挑戦, ゲーム性,イマジネーション,理想や憧れに近づくといった遊びに向かう魅力が含まれているとい える。また,遊びの中にある「楽しさ」の要素から次のような共通点が考えられる。 ・遊び自体に動き・変化の要素が含まれている。 ・自分のイメージしたようにできる ・壊れても,壊してもまた作ることができる。 ・決まった答えが無い。繰り返し遊ぶ。 表2 遊びと楽しさの要素 子どもがよく遊んだり繰り返したりする遊び 遊びの中にある「楽しさ」の要素 1 グ ル ー プ ブロック ままごと 絵をかく 縄跳び 鬼ごっこ 廃材製作 変化がある 勝敗がない 決まった答えがない ワクワク感がある 年齢に応じた遊び方ができる 2 グ ル ー プ ブロック 廃材製作 ドミノ ビー玉転がし 積み木 鬼ごっこ 壊して,また作れる 遊びに変化がある 繰り返し楽しめる 捕まえる,捕まえられるといったスリル感

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させる魅力や要素が含まれているはずである。それが何であるかを明確にさせ,それらの要素を今 後の環境構成に取り入れていくことが子どもらの遊びの充実,保育者が計画したねらいの達成につ ながると考えた。 5) 事後研修 執筆者自身は子どもの遊びや子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿をイメージした時,近所の子どもた ちが集まってメンコやビー玉を路地裏でする昭和初期の頃の懐かしい光景や,近所の友達らと群を なして遊ぶ姿が目に浮かぶ。秘密基地づくりのようなことも子どもが成長していく過程の中で一度 は興味や関心を持つ遊びの一つではないだろうか (念のため伝えておくが執筆者が経験した訳では ない。あくまでもイメージの話である) 。女児だと人形を布で包んだり背負ったりしてままごと遊 びに興じる姿が浮かんでくる。 執筆者が保育者になった 40 年前から現在に至るまで,保育園の庭先でプランターや石の下にい る虫を探したり,砂場で山や川,ダムなどを作ったりして遊ぶ姿,色鬼や氷鬼などの鬼ごっこなど 変わらない遊びもある。きっと執筆者が保育に従事する,そのずっと以前から続いてきたであろう。 時代が変わろうとも変わらない遊びには,遊びの面白さ楽しさを感じる点に共通して言えることが ある。そうした思いもあり,後日,市役所会議室にて,事後研修として2時間,傾斜あそびの検討 に入る前に,子どもが好きな遊びや楽しいと感じさせる要素を初回と同じグループで話し合うこと にした。下表は“子どもたちがよく遊んでいる遊びや,楽しさの要素”について話し合いを通して 参加者から出てきたものである(表2)。 子どもがよく遊んだり繰り返したりするあそびには,形の無い物から形のある物への創造,挑戦, ゲーム性,イマジネーション,理想や憧れに近づくといった遊びに向かう魅力が含まれているとい える。また,遊びの中にある「楽しさ」の要素から次のような共通点が考えられる。 ・遊び自体に動き・変化の要素が含まれている。 ・自分のイメージしたようにできる ・壊れても,壊してもまた作ることができる。 ・決まった答えが無い。繰り返し遊ぶ。 表2 遊びと楽しさの要素 子どもがよく遊んだり繰り返したりする遊び 遊びの中にある「楽しさ」の要素 1 グ ル ー プ ブロック ままごと 絵をかく 縄跳び 鬼ごっこ 廃材製作 変化がある 勝敗がない 決まった答えがない ワクワク感がある 年齢に応じた遊び方ができる 2 グ ル ー プ ブロック 廃材製作 ドミノ ビー玉転がし 積み木 鬼ごっこ 壊して,また作れる 遊びに変化がある 繰り返し楽しめる 捕まえる,捕まえられるといったスリル感 3 グ ル ー プ 砂場 ままごと 縄跳び 石鹸クリーム 雲梯 ドッジボール トランプ ビー玉転がし 鉄棒 鬼ごっこ 毎日できる 変化が楽しめる 楽しいことが違う 4 グ ル ー プ ブロック ドッジボール 鬼ごっこ 砂場 変化がある 友達との関わり ルールがある 自分のイメージしたようにできる 魅力的な遊びには,自由で制限のなさや創造的なものを感じる。物や遊びに関わる側の子どもは その対象となる遊びを通して期待感やワクワク感を味わったり,スリル感のようなものを味わった りしている。遊びを楽しくさせる要素の一つにそういった感覚的なものも含まれているのではない か。これらの要素を傾斜あそびに取り入れた環境構成を考えていくことにした(表3)。 傾斜あそびの環境の再構成 表3 友達と一緒に試したり工夫したりしながら楽しく遊べる傾斜あそびの環境構成 1 グ ル ー プ ① 高さを変えることができる(ビールケース,段ボール箱等) ② コースを作り変えられる素材を用意する(水道ホース) ③ 一人で作ったものを友達と組み合わせることができる 2 グ ル ー プ ① 障がい物になるような木片等はボンドのように接着で固定させない工夫 (ビニールテープやフロアーテープ) ② 傾斜を変えて(高さの調整)遊ぶことができる ③ ベース板は組み合わせ式にして,幾通りかの組み合わせが可能なもの ④ 板の大きさを変え,道をつなげることができる スリル感が味わえる様に板に落とし穴を作っておく 木の実の他,転がす材料を選んで遊べるようにする 3 グ ル ー プ ① 2 枚板,4 枚板を組みあわ遊ぶ。 ② 2 台ある傾斜あそびを組ませ違った高さにする, はめ込み式(段ボール)にして板の模様を変えることが可能。 段ボールを用意する変えられる トンネル,カップなどの空き容器でポイントに変化をつけられる 4 グ ル ー プ ① 接着の工夫(ビニールテープやフロアーテープ) ② 高さが変えられるようにする ③ ペットボトル,ホースで木の実が転がる道や障害物を作る。

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参加者の学び 研究保育後アンケート調査をした結果,参加者から主な内容の声が聞かれた。 ・環境を用意するだけでなく保育者が仕掛けていく必要があることが分かった。 ・傾斜あそびの環境構成について,どうやってやるのかイメージが湧いてきた。早速ある物でやっ てみたい。 ・子どもが遊ばなくなったコーナーをすぐに別のコーナーに変えるのではなく,掘り下げたり工夫 したりして子どもたちにとって魅力的な環境構成を作っていけるようになりたい。 ・今の年長の姿からどのように遊びを仕掛け,環境を構成していくことが大切かを考えることが出 来た。 ・明日の楽しさにつながる環境設定が子ども達の夢中になって遊べる遊びに繋がっていくことが理 解できた。 ・一つの環境構成にどれほど保育者の思いが詰まっているのか確認することができた。 図 執筆者のイメージ (長江) 執 筆 者 の 発 想 ① 木の実が転がっていく板やパネルの工夫・・・無地の板,道路を描いた板,森 の中などの絵を描いておき遊びにストーリー性が持てるようにしたり,組み合 わせたりして遊べるなど,選択可能なもの。板には落とし穴など空けておき, 慎重に木の実を転がしたりスリル感を感じたりできるようにする。 ② 障害物の置き方を自由自在に変えることができる。

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参加者の学び 研究保育後アンケート調査をした結果,参加者から主な内容の声が聞かれた。 ・環境を用意するだけでなく保育者が仕掛けていく必要があることが分かった。 ・傾斜あそびの環境構成について,どうやってやるのかイメージが湧いてきた。早速ある物でやっ てみたい。 ・子どもが遊ばなくなったコーナーをすぐに別のコーナーに変えるのではなく,掘り下げたり工夫 したりして子どもたちにとって魅力的な環境構成を作っていけるようになりたい。 ・今の年長の姿からどのように遊びを仕掛け,環境を構成していくことが大切かを考えることが出 来た。 ・明日の楽しさにつながる環境設定が子ども達の夢中になって遊べる遊びに繋がっていくことが理 解できた。 ・一つの環境構成にどれほど保育者の思いが詰まっているのか確認することができた。 図 執筆者のイメージ (長江) 執 筆 者 の 発 想 ① 木の実が転がっていく板やパネルの工夫・・・無地の板,道路を描いた板,森 の中などの絵を描いておき遊びにストーリー性が持てるようにしたり,組み合 わせたりして遊べるなど,選択可能なもの。板には落とし穴など空けておき, 慎重に木の実を転がしたりスリル感を感じたりできるようにする。 ② 障害物の置き方を自由自在に変えることができる。 2 事例を通して保育者の役割を考える (1) 遊びの楽しさとモノの精選 ここまで,A 市の現職保育士研修の実践事例を見てきた。この研修は事後研修を含むと2日に わたって行われ, 1)戸外および 2)室内の保育観察とそれに続く 3)グループ討議Ⅰ(環境構成 と環境に関わる子どもの姿),4)グループ討議Ⅱおよび 5)事後研修におけるグループ討議(傾 斜あそびの環境構成)から成るものであった。3)では,物的環境と人的(友達・保育者)環境 への子どもの関わりがまとめられている。観察した保育においては,本稿「はじめに」で定義 したように「幼児が主体的にかかわりたくなるような魅力ある環境」が構成されていたことを, 参加者が見取っていたことが明らかになっている。また4)グループ討議Ⅱと 5)事後研修では, 遊びの楽しさをあげさせることを通して,研究保育では展開が見られなかった傾斜あそびの楽 しさの要素を参加者が確認し,その要素をもたらす環境の再構成を検討した。 上述の「参加者の学び」にあるように,保育者は物を用意するだけではなく子どもたちへの 働きかけが求められること,遊びの楽しさの要素を踏まえることで「幼児が主体的にかかわり たくなるような魅力ある環境」構成につなげられることを,参加者がこの研修で学んだことが明ら かである。 ここで少し,モノに焦点をあてた環境構成について検討してみたい。後に言及する佐伯(2001) や,本稿「はじめに」であげた環境構成の定義をした森上は,倉橋惣三の保育思想を参照して,幼 児教育・保育が環境を通して行うものであることを重視している5。佐伯(2001)も引用している 倉橋の文章を引いてみよう。 環境は物の興味によって,その方面に幼児の生活を誘発し,物の配置によって,その形態に幼 児の生活を誘導する。理由によらず,物によるが故に自発性を害われない。しかして,その物の 後には教育者の意図があり,意図を直接に行わざる意味において,間接教育ということもできる, 不用意なる教育者はことばと力との直接による外,教育の方法を知らない。周到なる教育者は, まず環境-場所と物とを予め支配することによって,幼児を,その自発を失わせずして,意のま まに支配する6 この倉橋の文章を観点とすると,傾斜あそびにおいて子どもが自由に使えるよう何でもいいから 素材を出しておくことは,幼児教育や保育における環境構成とはいえないだろう。当初の傾斜あそ びでは,保育観察の前日に子どもが木の実をトイレットペーパーの芯をトンネルにして転がしたこ とを契機に,木片などの素材を接着剤で固定して障害物にし,最終的にはピンボールのようにして 楽しんだようである。これは物によるが故の自発性が見られた遊びであったといえよう。しかし観 察当日には,障害物が固定されていたことで,前日のように,木の実の転がり方を予測し試し障害 物をどこに置くか決め予想通りに転がるかどうかを確認し,また置き直して固定するというプロセ スを楽しめなかったことが,数回木の実を転がして終わっていたことの原因ではないだろうか。前 日の盛り上がりから保育者は当日遊びが続くと予測したようであるが,そこにどのような意図が込 められていたかが重要だろう。すなわち保育者は,意図あるいはねらいをもって環境構成を行う必 要があり,素材を自由に使えるよう置いておけば子どもは必ず主体的・自発的に遊ぶというもので はない。そこには,遊び(の展開)の楽しさに込めた意図・ねらいと,それに基づくモノの精選が 行われる必要があるといえる。 (伊藤) (2) 保育者の存在 とはいえ,保育者はモノによって環境構成をすれば役割が終わるわけではない。保育者の存在も 子どもにとって環境の大きな一部である。

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ここからは,上記の研究保育を通して研修担当であった長江が感じたことに少し触れてみる。 少し難しい,出来ないと感じると「できない」と直ぐに諦めたり保育者を頼ったり,放り出し他 の遊びに移っていく幼児の姿を見かけることがあるが,A 児は何回も松ぼっくりに紐を巻いて結ぼ うとする。適当な長さに切った紐も,松ぼっくりに数回巻き付けると短くなってしまい,結ぼうと するが容易には結べない。それでもA 児は諦めなかった。簡単に諦めない気持ちや繰り返し試みる 態度はどこからきているのか。それは,興味のある遊びと,A 児の“作りたい!作るんだ!”とい う意志の強さ,何かあれば助けてくれる頼りになる先生が傍にいるといった安心感がA 児の遊びを 支え,粘り強さにつながったのではないか。 保育者は子どものやりたい気持ちを尊重し受容する。“できた!”“やった!”と喜びを一緒に共感 すると共に,子どもの心に最後までやれた,頑張ったといった満足感や成功体験が得られる関わり を大事にしたい。 3 考察 表3で,子どもがよく遊んだり繰り返したりするあそびや遊びの中にある「楽しさ」の要素につ いて検討を行ったが,もう少し子どもの遊びと楽しさやその関係について考えてみることにする。 岸井(2003)は「楽しさ」はきわめて教育的な事と述べ,幼児が生活の中で楽しんでいる場面を 分類整理したところ10 項目の質が得られた7。楽しい経験が子どもの充実・発達にどれほど必要か を示しているかを述べている(表4)。 写真:5歳児 けん玉作りの様子

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ここからは,上記の研究保育を通して研修担当であった長江が感じたことに少し触れてみる。 少し難しい,出来ないと感じると「できない」と直ぐに諦めたり保育者を頼ったり,放り出し他 の遊びに移っていく幼児の姿を見かけることがあるが,A 児は何回も松ぼっくりに紐を巻いて結ぼ うとする。適当な長さに切った紐も,松ぼっくりに数回巻き付けると短くなってしまい,結ぼうと するが容易には結べない。それでもA 児は諦めなかった。簡単に諦めない気持ちや繰り返し試みる 態度はどこからきているのか。それは,興味のある遊びと,A 児の“作りたい!作るんだ!”とい う意志の強さ,何かあれば助けてくれる頼りになる先生が傍にいるといった安心感がA 児の遊びを 支え,粘り強さにつながったのではないか。 保育者は子どものやりたい気持ちを尊重し受容する。“できた!”“やった!”と喜びを一緒に共感 すると共に,子どもの心に最後までやれた,頑張ったといった満足感や成功体験が得られる関わり を大事にしたい。 3 考察 表3で,子どもがよく遊んだり繰り返したりするあそびや遊びの中にある「楽しさ」の要素につ いて検討を行ったが,もう少し子どもの遊びと楽しさやその関係について考えてみることにする。 岸井(2003)は「楽しさ」はきわめて教育的な事と述べ,幼児が生活の中で楽しんでいる場面を 分類整理したところ10 項目の質が得られた7。楽しい経験が子どもの充実・発達にどれほど必要か を示しているかを述べている(表4)。 写真:5歳児 けん玉作りの様子 表4 子どもが生活の中で楽しんでいる場面を分類整理した【楽しさの質】 1 したいことをする楽しさ(自発・主体性の発揮) 2 全力を出して活動する楽しさ(全力の活動) 3 出来なかったことが出来るようになる楽しさ(能力の伸長) 4 知らなかったことを知る楽しさ(知識の獲得) 5 考え出し,工夫し,つくり出す楽しさ(創造) 6 人の役に立つ,よいことをする楽しさ(有用・善行) 7 存在を人に認められる楽しさ(人格の承認) 8 共感する楽しさ (共感) 9 より良い物に出会う楽しさ(出会いと認識) 10 好きな人とともにあることの楽しさ(愛・友好) 岸井の整理した楽しさの質は子どもが生活の中で楽しんでいる場面であるが,研究保育では子ど もが環境と関わる中での楽しさの検討を行った。比較してみると,考え出し,工夫し,つくり出す 楽しさ(創造)といった共通点と,『可塑性』『自由に操作』など,岸井が述べている楽しさとは違 った楽しさがあがってきた。『可塑性』や『自由に操作』で浮かび上がってくる遊びとして,土・砂 や水を使った遊び,ブロックなどの構成遊び等が考えられるが,例えば土や砂で考えてみると,穴 を掘る,山を作る,ダムを作る,川を通す,トンネルを掘る,団子を作る,型押しをする等々,遊び 手の自由な思いでそのモノを好きなように操ることができる。上手くいかず壊れたとしても再生可 能である。水の加減によって湿り具合も違う,砂を掘り起こせば冷やりとした感触がする。表面の 色と深く掘った時の砂の色が違うなど,遊びを通してそのモノが持つ性質や面白さを砂や土,水は 応えてくれる。そこに遊びを通したモノとの対話がある。手指を使ったりイメージを表現したりす る中で,イメージそのものになったり,期待外れに終わったりと,そこにモノとの対話的で応答的 な関わりが存在する。子どもたちが,夢中になったり,繰り返し遊んだりする遊びには,モノとの関 わりにより対話が生まれるといった関係性が存在し,遊びを楽しくさせているようだ。 佐伯(2001)は,保育環境について次のように述べている。保育環境はできるかぎり「自然な環 境」がのぞましい。デザイン可能なような資源を提供。保育の実践の中で子どもと共に「そこらに あるモノ」を新しい観点で「見立て直し」「寄せ集め」「組み立てる」ことができるように,材料を 用意し,道具を用意しそして多様なイマジネーションをかき立てる「物語」を用意しておくことで ある8 4 まとめと今後の課題 研究保育を通し,環境構成のあり方や保育者の関わり,学びにつながる環境構成などについて検 討を行ってきた。子どもたちが環境に関わりながら豊かに経験を重ねていくには,まずは安心して 過ごせる環境と自由に様々な物に触れたり選択したりできる環境を整えておくことや,時間や空間, 仲間などの状況を構成していくことが必要である。 また,遊びには,体を動かす遊び,挑戦する遊び,試したり工夫したりする遊びなど,其々の面 白さやその遊びの魅力を環境の中に意図的に構成していく力や,遊びを支える保育者の資質が子ど もの遊びの充実,学びに大きく影響を与えてしまう。遊びを中心とした園生活の中で,その遊びが

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質の高いものであらねばならない。 子どもたちが主体的に遊びや生活を展開し,未来に向かって力強く生きていく力,学びに向かう 力が育まれる環境を構成していくには,今後もますます保育者の専門性と質の高い保育が求められ ることだろう。 (長江) おわりに 子どもの育ちを支える環境構成の在り方と保育の質向上 本稿で取り上げた現職の保育士研修の講師を務めた長江は,本稿3節で岸井(2003)を参照し, 遊びの楽しさは教育的であり,子どもの充実感や発達に求められるものであることを確認している。 その上で「子どもたちが夢中になったり,繰り返し遊んだりする遊びには,モノとの関わりにより 対話が生まれるといった関係性が存在」すると述べている。子どもが関わり対話するようなモノに よって環境を構成するということは,「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」等に示されているとお り,環境を通して教育することにつながる。幼稚園や保育所における「教育の質の向上」をもたら すには,子どもに寄り添うだけでなく,幼児教育や保育の目標・ねらいに基づいて,遊びの楽しさ をもたらし,子どもの育ちを支える環境構成が保育者に求められる。 (伊藤) 【参考文献】(長江分) (1)全国保育研究所2016 保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめの概要 社会保障審議会児童部会保育専門委員会 (2)教育変革への展望 変容する子どもの関係2016 遠藤利彦 岩波書店 (3)保育用語 森上史郎 (4)あそび中心の保育 川邉貴子 1 一般社団法人愛知県現任保育士研修運営協議会『「保育分野における中核的専門人材育成」事業 報告 現任保育士研修開土ライン』2016 年 2 月,同協議会『「保育分野における中核的専門人材養 成カリキュラム開発」事業報告 モデルカリキュラムのシラバス』2017 年2月等参照。

2 Hiromi ITO, Mitsuko NAGAE, Fumito SATO, “Study on Training Programs and In-Service

Training of Kindergarten Teachers, Child-Carers and Nursery Teachers (Provisional Name),” The 12th AASVET International Conference 2016 Abstracts and FullPapers of the Parallel Session Presenters(全 13 頁)参照。 3一般社団法人愛知県現任保育士研修運営協議会(2017)においては5年目現任保育士研修のモデ ルカリキュラムに「環境構成」の時間が割かれている。註1参照。 4 森上史朗「環境構成」森上史朗・大場幸夫・秋山和夫・高野陽(編)『最新保育用語辞典(三版)』 ミネルヴァ書房(1998)pp.84-85。 5 佐伯胖『幼児教育へのいざない』東京大学出版会(2001)pp.114-115 6 倉橋惣三「就学前の教育」『倉橋惣三選集 第三巻』フレーベル館(1965)p.432。 7 岸井勇雄『子育て小事典』エイデル研究所 (2003) pp.135-141 8 佐伯胖『幼児教育へのいざない』東京大学出版会(2001)pp.133-134

参照

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