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整備新幹線着工の政治過程

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Academic year: 2021

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(1)Title. 整備新幹線着工の政治過程. Author(s). 角, 一典. Citation. 北海道教育大学紀要, 人文科学・社会科学編, 58(2): 39-56. Issue Date. 2008-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/70. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(HumanitiesandSocialSciences)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. 整備新幹線着工の政治過程 一. 曲. ′ ヽ. 北海道教育大学教育学部旭川枚社会学研究室. ThePoliticalProcessofSeibi−Shinkansen Construction KADO Kazunori. DepartmentofSociology,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本稿では,整備新幹線の本格着工に至るまでの政治過程について,意思決定の場に注目してまとめた。 一連の政治過程においては,いくつかの重要な特徴がみられた。第一に,主体連関が複雑化したことであ る。1985年以降の整備新幹線建設に対する熱意の高まりの中,政府と自民党の議論の場として「財源問題等 検討委員会」・「財源問題等検討委員会小委員会」・「整備新幹線建設促進検討委員会」,さらにその下部 組織として「着工優先順位専門検討委員会」・「財源問題等専門検討委員会」と,次々とアリーナが設定さ れ,建設を推進したい自民党と,それを阻止またや抑制したい政府,さらに,さまざまな思惑を持つ関係各 官庁,それを取り巻く地方自治体やJR各社などのステイクホルダーに至る激しいやり取りが交わされている。 第二に,各主体の獲得した成果に着目すると,短期的・表層的にはそれぞれ相応の利得を得るか,負担の 回避に成功しているが,実質的には,それぞれの主体が負の影響を被る結果となっていることである。. はじめに. 1990年代以降,行財政改革の一環として公共事. 決定と1989年1月17日の財政上の枠組み決定を中 心に,意思決定の場に注目しながらその政治過程 を詳述した。第1章では財源問題検討委員会,第. 業が話題に上る機会が増え,歳出削減の目玉の一. 2章では財源問題検討委員会小委員会,第3章で. つとなってもいる。「聖域なき見直し」のかけ声. は整備新幹線建設促進検討委員会における議論を. の中で,整備新幹線については,1989年に北陸新. 中心にまとめた。. 幹線高崎一軽井沢間,そして,翌1990年12月に長 野までのフル規格による着工が決定して以来, トータルの整備新幹線建設費は大きな変動もな く,建設は漸次進んでいる状況である。 本稿では,整備新幹線建設の基本スキームを決 定した,1988年8月31日の3線5区間の優先着工. 1 財源問題等検討委員会 1.1財源問題検討委員会の設置 自民党内で検討が進められてきた整備新幹線建 設は,大枠として,建設費への地方負担と国費投. 39.

(3) 角. 一 皿. 入・段階的優先着工・並行在来線の経営分離など. れを受ける形で,それまで幹事会を中心に運営さ. について基本合意した。そして,1985年8月22日,. れてきた財源問題等検討委員会を開催する機運が. 政府・与党申し合わせにおいて,着工は事実上見. 高まっていった。そして,1986年12月,財源問題. 送られたものの,東北・北陸新幹線についてアセ. 検討委員会が再開,短期集中的に議論が展開され. スメント終了後に工事実施計画の認可申請が可能. ることとなった。. となり,駅周辺環境整備事業の実施が決定,さら. 再開された財源問題等検討委員会では,整備新. に,財源問題等検討委員会の設置が決まったこと. 幹線建設を積極的に推し進めたい与党自民党と,. により,新たな段階を迎えることとなった。8月. 建設に消極的な政府との間の主張が真っ向から対. 27日,藤波孝生官房長官や細田吉蔵運輸大臣など. 立する形で議論が展開された。5日に開かれた第. の閣僚を含めた8名で構成する整備新幹線財源問. 2回財源問題等検討委員会では,政府が建設費・. 題等検討委員会の初会合が開かれ,幹事会の設置. 輸送需要・収支などの試算結果を提出した。試算. と4項目の検討事項等を決定した。これまで,整. 結果は表1のように示され,新幹線のみならず,. 備新幹線に関する議論の場に閣僚級の政府関係者. 並行在来線の収支への影響も考慮した形になって. が参加したことはなく,特に,内閣の扇の要とも. いる他,減価償却についても触れられている。こ. いうべき官房長官が参加したことは,状況の進展. れによると,開業を昭和68年とした上で,昭和70. を示すものである。. 年度までで,新幹線のみの収支では,減価償却前. しかしながら,財源問題等検討委員会は,翌1986. だと5線すべてが黒字であるが,並行在来線を含. 年12月になるまで開催されず,下部組織として,. めた収支では北陸と九州鹿児島ルートだけとな. 関係省庁の管理職クラスで構成される幹事会が中. り,減価償却後では北海道と九州長崎ルートが赤. 心となって,駅舎整備などの細かい決定がされる. 字に転落し,並行在来線の収支を含めると北陸の. にとどまった。その間には,1985年9月22日,プ. みが黒字となる。なお,建設費用について政府は,. ラザ合意によって円高が急速に進み,外需依存で. 1kmあたり35億円前後2としている。東北新幹. 成長をしてきた日本経済が内需拡大に取り組む必. 線の49.4億円,上越新幹線の70.2億円に比べてか. 要性が出てきたり,1986年7月6日の衆参同時選. なり安くなっているが,駅をなるべく高架で建設. 挙では,自民党が衆議院で300議席を獲得する大. しないことと,トンネル建設の際に新工法を採用. 勝利を収めたりといった1,整備新幹線建設にとっ. し,コンクリートの量を抑制するという二つの前. ての追い風状況がある一方で,第二次臨時行政改. 提に立ったためと説明している。この会合では,. 革審議会および国鉄再建監理委員会における国鉄. 橋本龍太郎運輸相が分割民営化後の新会社への影. 改革という負の要因も大きく,整備新幹線建設は. 響を懸念する発言をしており,整備新幹線建設に. 分水嶺にあったといえる。. 消極的な運輸省の立場を明らかにしている。なお, この試算では,単線化などによって建設費を抑制. 1.2 財源問題等検討委員会の本格始動. 国鉄の分割民営化が決定し,国鉄改革の大枠が 定まったことで,自民党内における整備新幹線着 工を求める声は一段と増していくこととなる。こ. する簡便新幹線についても試算が行われている が,否定的な結果となっている。 12月12日の第3回財源問題等検討委員会では, 「整備新幹線は碗収増などの効果をもたらす」な. 1 この選挙における公約として自民党は,「国鉄改革と整備新幹線の各路線の進捗状況に応じ早期着工」を最重点政策とし て掲げていた。自民党はこの後,1984年以来連立を組んでいた新自由クラブを事実上吸収(8月15日に新自由クラブが解散) し,さらに勢力を拡大した。 2 東北が33.6億円,北陸が35.3億円,九州鹿児島ルートが32.0億円となっている。. 40.

(4) 整備新幹線着工の政治過程 表1 整備新幹線の収支予測(1986年) 足巨離. 減価償去口前(億円). 新幹線み. (km). 東]ヒ. 14. 全額借入. 昭和75年虔. 昭和70年虔 全額助成. 168. 全額借入. 11. 昭和75年虔. 昭和70年虔 全額助成. 25. 594 22900. 全額借入. 昭和75年虔. 昭和75年虔. 昭和70年虔 全額助成. 1213. 島ルート. 全額借入. 199. 5000. 11. 全額借入. 全額助成. 昭和75年虔. −240. −234. −195. −244 −1262. −16 71 2880 −3473 595. −1634. −1. −222 −135. 767. 149 862. 13. 21. −165. −47. −1092. 昭和75年虔. 昭和70年虔. 41. 129 −814. 昭和75年虔. 昭和70年虔 九州長崎 ルート. −113. −1343 −1742. 昭和75年虔. 昭和70年度 全額助成. の. −728 −925. 1307. 昭和75年虔. 昭和70年虔. 12. 九ナト1鹿児. の. 含在来線. −2039. 205. 昭和70年度 ]ヒ陸. 簡便新幹線. −67 −1546. 昭和75年虔. 昭和70年虔. ]ヒ海道 282 10000. 新幹線み. −1088 −1412. 昭和70年虔. 175 6400. 減価償去P後(億円). 含在来線. 43. −55 −40. −243 −230 1582 −1723 −160 240 −900 −1175 −159. −154 −662 −876. −55. −153 −139. −168 −195. 出典:i畢(1994:43),三菱総研(1986:14)より筆者作成. どの報告をまとめた三菱総合研究所の担当者がそ. していた建設国債の発行を断念,新たな措置を検. の概要を説明,これを基礎として自民党が推進論. 討する方針を固めた。その後に行われた,自民党. を展開した。続く16日の第4回財源問題等検討委. 五役を交えた政府・自民党の政治折衝において. 員会は,政府が自民党に反論する場となった。19. は,整備新幹線の工事費として,国鉄に100億円,. 日に行われた第5回財源問題等検討委員会では,. 日本鉄道建設公団に50億円,すでに駅舎工事の予. 前運輸相で,政調会長代理であり整備新幹線建設. 算が認められていた東北・北陸に加えて,九州新. 促進特別委員会顧問の三塚博が党代表として過去. 幹線に初めて工事費が認められた。さらに,北海. の経緯を説明し,同時着工にこだわらない姿勢を. 道・九州長崎ルートの調査費としてそれぞれ14億. 示した上で早期着工を求めた。政府側では,後藤. Hが計上された。この決定は,表面的には,整備. 田正晴官房長官が「整備新幹線建設にともなう並. 新幹線の5線にそれぞれ予算が計上された点で,. 行在来線の廃止は新会社の意見を聞く必要があ. 積極的な着工推進の立場にあった自民党にとって. る」と発言,自民党の推進意見に対して慎重な意. は,状況の進展と評価することができる一方で,. 見を表明している。結局両者の溝は埋まらず,24. 予算は,駅舎工事や調査費などの部分的なものに. 日の第6回財源問題等検討委員会では,政府と自. 限定され,本格着工が引き延ばされたという点か. 民党の指摘事項が整理され,着工の判断は予算折. らは,政府のガードが依然として高いことをもあ. 衝の場に委ねられることとなった。. らわしている。さらに,国鉄改革と関連して整備. 新幹線建設凍結を決めた1982年9月24日の閣議決 1.31987年度予算における整備新幹線の取り扱い. 定のために整備新幹線工事費の執行ができない状. 26日,三塚が竹下登蔵相を訪れ,自民党が決め. 況が続いており,これを覆すことが必要だった。. た復活重点16項目について協議したが,整備新幹. 28日,財源問題等検討委員会は規模を縮小,政. 線など5項目については議論が平行線に終わっ. 府と自民党代表との実務者協議の場とすることが. た。翌27日には,三塚と伊東正義政調会長・小此. 決まった。自民党からは,本格着工に向けての決. 木彦三郎副幹事長が,政治折衝に先立って対応を. 着を図る場として機能することが期待されていた. 協議,東北・北陸・九州鹿児島ルートに絞って来. が,十分に機能を果たすことなく,その役割を事. 年度着工を政府に求めることと,財源は当初予定. 実上終えることとなった。その一方で,同じ日に,. 41.

(5) 角. 自民党総務会において整備新幹線の早期着工を求. 一 皿. ることとなった。. める声が飛び交い3,自民党四役が予算編成につ いて協議し,整備新幹線についてけじめを付ける べきとの認識で一致,前日の決定にさらなる上積. 1.4 四全総をめぐる攻防. 1987年4月1日,国鉄が分割され,JR7社・. みを自民党が期待している姿勢も明確にしてい. 国鉄清算事業団・新幹線保有機構が発足した。こ. る。前日に引き続き28日にも1987年度予算をめぐ. れは,整備新幹線にとっては両義的な意味を持っ. る政治折衝が行われ,自民党側は整備新幹線の予. ていた。一方では,国鉄再建問題にとりあえずの. 算執行の凍結を決めた閣議決定の変更を強く要望. 決着がつき,推進にとってプラスであるという面,. したが,政府側も譲らず,この日の協議はものわ. 他方,分割民営化されたJR各社の経営について. かれに終わった。しかし,再度行われた29日の協. は不透明な部分もあり,整備新幹線着工がマイナ. 議において,建設財源の結論は先送りしたまま着. スの影響を及ぼす恐れも指摘されていた4。. 工凍結の閣議決定を変更し,逐次建設に着手する. この時期,四全総の策定も大詰めを迎えており,. ことで合意,1987年度予算編成にあたっての整備. その中で整備新幹線をどのように取り扱うかとい. 新幹線の取り扱いに関する政府・与党申し合わせ. うことが,一つの問題として浮上していた。5月. として,整備新幹線の逐次建設および東北・北. 28日に発表された国土庁試案では,整備新幹線に. 陸・九州鹿児島ルート新幹線への建設費計上,北. 関しては「財源問題等前碇条件について検討し,. 海道・九州長崎ルートについては,着工準備作業. その結果を踏まえて整備を行う」とされ,ここで. 所を設匿し,引き続き所要の調査を進めることと. も財源問題の解決が指摘されることとなった。こ. することが確認された。. の試案に対しては,推進の立場にある自民党から. 年が明けた1987年1月30日,政府は,整備新幹. の強い反発があり,6月16日,森喜朗総務会長代. 線建設凍結の閣議決定廃止を閣議決定,整備新幹. 理が,四全総国土庁試案の整備新幹線に関する記. 線建設費に関する予算執行の壁が取り除かれた。. 述を修正するよう要請,政府は柔軟な姿勢を示し. 同時に,日本鉄道建設公団の解体を決めた1979年. たものの,運輸省と大蔵省が難色を示したため,. 12月の閣議決定を廃止し,「大規模工事のH滑な. 引き続き協議することとなった。6月23日に行わ. 実施に資するようその存続を図るものとする」こ. れた自民党役員懇談会では,伊東政調会長が調整. とを閣議決定,国鉄が建設することになっていた. を進めてきた四全総の整備新幹線に関する記述に. 東北・九州鹿児島ルート・九州長崎ルートも含. 閲し,「国鉄改革の趣旨を踏まえ,旅客需要の動向,. め,日本鉄道建設公団が整備新幹線の一元的な建. 採算性等を勘案の上逐次,整備を行う」という修. 設主体となった。. 正案を示したが,これに対して安倍晋太郎総務会. 3月26日,最後の財源問題等検討委員会が開か れた。自民党側は本格着工を強く求めたが,大蔵. 長が激しく反発,より積極的な記述を要求した。 同じ日に行われた臨時行政改革推進会議では,. 省が新会社の意向や収支見通しなどを理由に慎重. 自民党の近藤元次農林部会長・中村喜四郎建設部. 姿勢を崩さなかったために,財源問題については. 会長・関谷勝嗣交通部会長らが整備新幹線の着工. 再びものわかれに終わった。この会合では整備新. 促進の「お墨付き」を求めたが,これに対して,. 幹線財源問題等検討委員会小委員会を設置するこ. 瀬島竜三小委員長らは,超伝導の実用化も叶能性. とが決定され,財源問題を中心に検討が継続され. が高まっている今日では,新幹線は陳腐化する恐. 3 この場においては,副幹事長の一人だった浜出幸一のみが反対意見を述べている。 4 この時期は,国内景気が好調である一方で,貿易摩擦もあり,日本の国内外で内需拡大への意識が高まっていた。4月16日に は,鹿児島・富山・青森県知事が,国の総合経済対策要綱の内需拡大の柱として整備新幹線を盛り込むよう要望を行っている。. 42.

(6) 整備新幹線着工の政治過程. れがあるとして慎重な対応が必要との考えを示. 並行在来線廃止に関する考え方を三本柱とし,回. し,財源問題に加えて,当時注目を集めていたリ. 答期限は年度末をめどとして運輸省が意見聴取す. ニアモーターカーとの関連からも,整備新幹線に. るという政府案がまとめられた。7月10日,第2. 疑問を投げかけている。. 回整備新幹線財源問題等検討委員会小委員会が開. 最終的には,6月25日,四全総の整備新幹線に. かれ,整備新幹線問題関係五閣僚会議がまとめた,. 関する記述について,「整備新幹線については国. 整備新幹線問題に対するJR各社からの意見聴取. 鉄改革の趣旨をも尊重して逐次建設に着手する」. に合意,JR各社からの意見が集まるのを待つこ. との表現で決着,30日に四全総は閣議決定された。. ととなった7。 10月になってJR各社からの中間報告が順次集. 2 財源問題等検討委員会小委員会 2.1JR各社に対する意見聴取. まり,これを受けて10月30日に第3回整備新幹線 財源問題等検討委員会小委員会が開かれ,運輸省 からJR各社の意見が報告された。微妙なニュア. 5月22日,自民党役員会で,安倍総務会長が「整. ンスの違いがあるものの,各社とも建設にあたっ. 備新幹線について今国会中に方向を出すべき」と. ては全額公費負担や固定資産碗免除などの必要性. して,前年度末に決定した整備新幹線財源問題等. を主張しており,早期着工には慎重であることが. 検討委員会小委員会の開催を要求,29日に第1回. 判明した。11月16日には,住田正二JR東日本社. の会合が開かれが。メンバーは後藤田官房長官・. 長が,中間報告では消極的なことは言っていない. 橋本運輸相・宮沢喜一蔵相・伊東政調会長など6. と釈明した上で,区間を短くしてもできるだけ早. 名で,JR各社からの意見聴取の形式が問題とな. く開業できることが望ましく,着工の優先順位を. るにとどまり,財源問題については触れられずに. 決めてほしいと発言,さらに,優先着工について. 終わった。この後,しばらくの間,財源問題は棚 上げされ,JR各社からの意見聴取が主要な議題 となる。 6月5日,整備新幹線問題関係五閣僚会議が開. 「部分着工」という新たな考えを表明した。 12月,JR各社が最終意見を運輸省に碇出する こととなり,16日に各社の意見が集まった。ここ での内容は中間報告から大きな意見の変化はな. 催され6,JR各社からの意見聴取の方法が公平. く,翌17日の第4回整備新幹線財源問題等検討委. を欠かないように運輸省など関係各省局長クラス. 員会小委員会でJR4社の最終報告が明らかにさ. でルールづくりをする方針が決定,23日に再び整. れた。4社とも採算性に慎重姿勢を示し,試算結. 備新幹線問題関係五閣僚会議が開かれ,JR各社. 果も政府試算より厳しい数字が報告された8。並. からの意見聴取につき,旅客会社自身の,需要・. 行在来線の廃止は各社とも「やむなし」とし,. 建設費・収支見通しを踏まえた新会社の基本的な. JR東日本は具体的に横川一軽井沢間を示した。. 方針,該当路線の建設にあたっての条件・要望, 5 同じ日に,宮沢蔵相・後藤田官房長官・伊東政調会長・細田自民党整備新幹線建設促進特別委員会委員長からなる四人委. 員会が開催されている。 6 参加閣僚は,宮沢蔵相・橋本運輸相・葉梨信行自治相・後藤田官房長官・山下徳夫総務庁長官。. 7JRの聞き取りは行いたくないというのが自民党の「本音」であったようにも思われる。なぜならば,国鉄経営の破綻原 因の一つは新幹線建設の膨大な費用とそれにともなう金利負担であったし,分割民営化後の新会社が新幹線建設に肯定的な 意見を表明する可能性はきわめて低かったからである。7月1日,細田自民党整備新幹線建設促進特別委員長は,富山市内 での講演で,整備新幹線に関する意見聴取に対してJR各社が否定的な見解を示すことは認めないとの考えを表明している。 8 この中で,JR北海道と九州は一部前向きな姿勢を見せている。JR九州は,鹿児島ルートについては,建設費公費負担・ 固定資産税を本四架橋ヤ青函トンネル並みとして,新幹線と並行在来線の合計で黒字の試算,長崎ルートに関しては,①並 行在来線との収支合計が建設費を全額公費負担しても,昭和68年開業を前提として,昭和75年において年間102億円の赤字. 43.

(7) 角. 一 皿. 2.2 自民党首脳の意見対立 11月6日,中曽根に代わり竹下登が首相に就任,. ては党内の意見もいろいろあるので慎重に検討し. たい」と述べ,全面否定とも取られるような「過. それにともない党三役も,安倍晋太郎幹事長・渡. 激な」発言から一歩後退している9。しかしながら,. 辺美智雄政調会長・伊東正義総務会長という新布. 21日に行われた細田自民党整備新幹線建設促進特. 陣となった。このうち,安倍は,就任以前から整. 別委員長と三塚自民党整備新幹線特別委員会顧問. 備新幹線推進の立場であり,その立場を引き続き. との会合では,一部着工論を収拾案として碇示し. 堅持していたが,新たに政調会長に就任した渡辺. た両者に対して,渡辺政調会長は慎重姿勢を崩さ. は,整備新幹線に対して強い否定的立場を明らか. なかった。. にしていく。. 11月21日,安倍幹事長は,1986年末の整備新幹. このような党首脳の意見対立の中,21日の交通. 部会では,JR各社からの最終報告書について議. 線の逐次着工という政府・自民党の合意を踏ま. 論し,政治決着で本格着工に持ち込むべきとの意. え,「こうした基本的方向の中で協議を続けてい. 見が大勢を占め,今年こそ本格着工にけじめをつ. かなければならない」と発言,推進に意欲を示し. けることを確認・了承した。22日には,財源問題. たが,12月7日,渡辺政調会長は,自民党同志会. 等委員会小委員会のメンバーが集まり再協議,推. の講演の中で,整備新幹線に関して「着工したら. 進派側から一部着工論が碇示された。さらに23日. 赤字たれ流し」と発言,整備新幹線の予算化に慎. には,自民党整備新幹線早期着工促進議員連盟の. 重な姿勢を示した。. 国会議員と沿線関係者約1000人が参加した総決起. JRからの最終意見が集約される12月になり,. 大会が開かれ,来年度予算への整備新幹線の本格. 安倍幹事長は精力的に整備新幹線推進を訴える発. 的建設費計上と即時着工実現を決議した10。25日. 言を行っている。9日には,整備新幹線の本格着. には,整備新幹線財源問題等検討委員会小委員会. 工に前向きの姿勢を示すとともに具体的な予算措. が開かれ,推進派側から着工を望む意見が噴出し,. 置を講じるべきとの考えを述べ,15日には,最終. 整備新幹線の逐次着工という政府・自民党合意を. 報告書の概要の説明に訪れた住田JR東日本社長. 後退させないことを確認した。. に対して不満の意を表明している。しかし16日に. こうした自民党の着工推進の動きに対して,23. は,整備新幹線について講演の中で,JRで積極. 日に,松永光政調会長代理は,「新幹線は30年前. 的に手を挙げるところがあれば是非着工すべきだ. の時代の発想。21世紀はリニアの時代であり,新. が,しかし財源問題や採算性を無視してやるわけ. 幹線は古いものになる」と発言,整備新幹線に対. には行かないし,JRの将来も考えてやる必要が. して否定的な発言を行い,さらに翌24日の整備新. あると述べ,若干意見がトーンダウンしている。. 幹線問題五閣僚会議でも,各閣僚から消極的・慎. 他方,渡辺政調会長の発言も,微妙な変化を見. せるようになる。17日には,「新幹線着工につい. 重な意見が出された。 12月25日,政府と自民党の間で非公式に行われ. を生じ収支改善効果は現われない,②このため,並行在来線の一部区間廃止の他,単線新幹線方式,在来線活用方式などあ らゆる角度からの検討が必要であると回答を行っている。他方,17日には,佐賀県・長崎県が,九州新幹線長崎ルートの収 支予測を独自に行った結果,昭和75年度に黒字となると発表している。 9 同じ12月17日,日経連の鈴木永二会長は渡辺政調会長に対して,国鉄改革の趣旨に鑑み整備新幹線の着工を認めないよう 求めている。自民党推進派の思惑とは異なり,財界首脳は,ようやく問題が「解決」した国鉄問題が再燃化することを恐れ. ていたと思われる。 10 同じ17日の政府予算の大蔵原案内示にあたって,大蔵省の出谷廣明主計官が予算説明の席上,整備新幹線に採算性はなく, 建設すれば国民に多大な負担を与えるという見解を示し,整備新幹線の建設を大蔵省が認めれば昭和の三大バカ査定の一′、 に数えられるだろうと発言,物議をかもしている。. 44.

(8) 整備新幹線着工の政治過程. た調整で,①財源問題等検討委員会を再編し検討. 討委員会を月内に発足させるよう指示,29日,整. 項目を明確化して具体案づくりに入る,(彰5線の. 備新幹線建設促進検討委員会の初会合が開かれ. 着工優先順位の検討とその結論を得る時期を明. た。申し合わせどおり,着工優先順位専門検討委. 示,などを柱とした収拾案が浮上,27日に,正式. 員会と財源問題等専門検討委員会を設置し,前者. に発表された政府・与党申し合わせにより,東. は2月,後者は3月に初会合を開き,月1回のペー. 北・北陸・九州の3線の着工に関して,順次建設. スで協議を重ねるとの方針が決定した。. に着手するために優先順位をつけ,財源問題・並. 2月16日,整備新幹線建設促進検討委員会着工. 行在来線廃止の具体的方法に結論を得ることとす. 優先順位専門委員会の初会合が行われ,沿線各県. ることなどを決定,さらに部分着工案についても. の知事がそれそれ優先着工を訴えた。こうした状. 取り上げられた11。検討機関として整備新幹線建. 況において着工優先順位をつけるために,客観的. 設促進検討委員会を設け,下部組織として着工順. な裏づけが必要とされ,2月20日,運輸省は,そ. 位専門検討委員会と財源問題等専門検討委員会を. のための作業として,整備新幹線の建設着工問題. 設置することを確認,1988年8月までに結論を得. を検討する際の基礎データとなる政府試算の見直. ることとされた。また,同日決定した1988年度予. しを決定した。3月29日に行われた第2回着工優. 算編成で,東北・北陸・九州の3線に対する建設. 先順位専門検討委員会では,部分着工する場合の. 費150億円と北海道・九州長崎ルートに対する調. 建設費や需要予測を精査していくことが決定,意. 査費30億円が日本鉄道建設公団に認められた。. 思決定のための客観指標作成において,部分着工 を前碇とすることが事実上確認されたといえる。. 4月15日に開かれた第3回着工優先順位検討委. 3 整備新幹線建設促進検討委兵舎. 員会では,順位決定の基準を作るため,「整備新. 3.1着工優先順位専門検討委員会. 幹線着工優先順位問題懇談会」設置を決定,同時. 3.1.1基本枠組みの設定 一部分着工案の浮上. に建設費用に関する政府試算と東北・北陸・九州. の3線を建設した場合の新たな収支予測を公表し. まで. た(表2)。この試算では,1986年に行われた試. 年末の政府与党申し合わせで検討機関設置が決 まり,1988年1月8日,竹下首相は,政府・自民. 算と比べ,JR東日本管内の線区とそれ以外の線. 党連絡会議の決定に基づき整備新幹線建設促進検. 区とで対照的な結果となっているn TR東日本の. 表2 整備新幹線の収支改善効果(1988年:借入金0パーセントの場合) 新幹線+在来線. 試算年度 1988年 東]ヒ. 1986年. ]ヒ陸. 1986年. 1988年 1988年 JL・什1. 1986年. 刃叉支改善効果. 新幹線未開業. 昭和70年度− 昭和75年度− 昭和70年度− 昭和75年度− 昭和70年度− 昭和75年度− −80 −152 −23 −9 −16 −11. −23 −132 197 193 47 79. −83 −123 −39 −67 8. 33. −91 −152 −37 −74 10 39. 3. −29 16 58 −24 −44. 68 20 233 267 37 40. 出典:i畢(1994:92). 11この時期,事実上優先着工が決まっていた3線にかかわりのある有力政治家が,興味深い発言を残している。12月25日, 石川1区選出で,竹下派七奉行の一人であった奥田敏和が,自民党総務会の席上,北陸新幹線は採算見通しがついていると して北陸新幹線の着工を主張した。その一方で,28日には,熊本県知事の細川護興が,「九州新幹線の建設推進は疑問」と, 沿線関係者としては異例の発言をしている。この発言は,地元で猛反発を受け,細川は発言を撤回せざるを得なくなった。 他方,1988年1月8日の熊本県議会交通通信対策特別委員会において,地元負担を求める政府自民党案に対する批判が相次 ぎ,着工への強い意志とは裏腹に地元負担に対する強い抵抗感を示している。これに対して,3月10日,細川は県議会にお. いて「着工促進のためには地元負担もやむを待ない」と発言している。. 45.

(9) 角. 一 皿. 管区となる東北および北陸(高崎一上越)で値が. 部分着工の具体的な区間を選定し,運輸省はこれ. 好転し,JR西日本管区内の北陸(上越一小松). と平行して,それぞれの区間について採算性の検. と九州(博多一鹿児島)では値が悪くなっている. 討や建設費の試算をすることとなった。これまで,. のである。運輸省は,この試算について,1986年. 建前の上では全線着工の主張をしつつ,つばせり. に行った試算を基礎としつつも,①開業予定年度. 合いを続けてきた各線の代表者たちは,部分着工. を一年遅らせて昭和69年度としたこと,②JRの. によって「歩み寄る」可能性を見出した。. 経営が良好であり,JR各社が負担している長期 3.1.2 部分着工案の具体化. 債務が縮小すると予測し,路線別に貼り付ける債. 6月13日の第5回整備新幹線着工優先順位専門. 務額を縮小したこと,③新幹線開業による人員合 理化を想定したこと,の3点を変更している12。. 検討委員会で,部分着工に関する政府資料が提出. なお,この会合では,前日4月14日に発足した整. された。運輸省は,部分着工の対象として3線6. 備新幹線着工優先順位問題懇談会が決定すること. 区間を提示,それぞれの区間における時間短縮効. となった着工優先順位の決定方法について,7月. 果についてまとめている(表3)13。ここでは,. 末までに報告を受けることが了承された。. 九州の熊本一鹿児島間について路盤を新幹線規格 で建設し,新幹線開業までは在来線を160kmで. 5月19日の第4回着工優先順位専門検討委員会 で,事実上優先着工が決定していた東北・北陸・. 走らせる在来高速線構想について言及,これは,. 九州鹿児島ルートの3線について,それぞれの線. 後に「スーパー特急方式」と呼ばれるようになる14。. 区の一部を優先着工する部分着工案が浮上,次回. この時点で,議論は完全に,各区間の全線着工. の会合までに小渕恵三官房長官と三塚自民党整備. から部分着工へと変化する。これに関しては「総. 新幹線建設促進特別委員会顧問が3線それぞれの. 論賛成各論反対」のような状況が自民党内に生じ. 表3 部分着工の場合の建設費と時間短縮効果. 東]ヒ. ]ヒ陸. 九州、1. 在来高速線. 区 間 盛岡一青森 盛岡一ノヽ戸 高崎一」、松 高崎一長野 高川奇一上越 高崎一富山  ̄博・多一西鹿児島  ̄ー専多一斉巨木 熊本一西鹿児島 熊本一西鹿児島. 距離(km) 建設費(億円) 175 6400 3300 92. 372 126. 14100. 177. 7000 10900. 287 249 100 159 159. 時間短縮効果(分) 盛岡一青森 76 盛岡一青森 34. 5200 上野一長野 82 上野一富山 3. 8700  ̄博・多一熊本 46 3800  ̄ー専多一斉巨木 46 6000  ̄博・多一熊本 6 5300  ̄博・多一熊本 6. 上野一富山 12 上野一富山 76  ̄博・多一西鹿児島 168  ̄博・多一西鹿児島 119  ̄博・多一西鹿児島 105. 注)北陸については,上越新幹線長岡経由との比較. 出典:i畢(1994:95). 12 こうした試算結果の提示は,運輸省が整備新幹線に対して肯定的になっていることを示しているかもしれない。運輸省は, 国鉄分割民営化にとってよい材料とはいえない整備新幹線に対しては肯定的であったとはいえず,在来線の高速化を積極的 に進めるなどの政策を進めている。1988年に,国鉄改革によって計画が頓挫していた北越北線に対して,高規格在来線を走 らせることを認めていることは,北陸新幹線に対する「牽制」とすら思える。もちろん,政治的圧力の高まりという背景も 見過ごすことはできないが,在来線建設という「資源」を失った運輸省にとっては,新生JRの経営が予想を上回る好調さ をみせたことも相侯って,守勢の立場から積極的な立場へと方向を変わる好機と捉えたともみえる。 13 表3は,その後の決定を考慮すると,いくつか示唆的な内容が含まれている。例えば,北陸新幹線については,上野一長 野間の時間短縮効果が82分に対して,上野一富山間は上越新幹線経由との対比で76分にとどまっており,建設費用も含めて 考えると長野までの優位性が際立つ結果となっている。また,九州新幹線では,熊本一西鹿児島間を整備することによって. 大幅な時間短縮が可能であることが「強調」される結果となっている。 14 これに先立ち,6月1日,日本鉄道建設公団の峰本守審議役が,九州・山口経済連合会主催の九州新幹線講演会で「部分 着工するなら博多一熊本間より先に八代(または熊本)一西鹿児島間に着手すべき」と発言している。なお,熊本一西鹿児 島間の浮上については,「税制改革案の取りまとめにあたった自民党税調会長の山中貞則氏(鹿児島県選出)への配慮によっ て,熊本一西鹿児島間が有力候補として急浮上」したという指摘もある(澤,1994:97)。. 46.

(10) 整備新幹線着工の政治過程. ている。6月19日,安倍幹事長は,「3線同時着. あった。7月15日に行われた第6回着工優先順位. 工は無理なので,同時部分着工も1つの案だろう」. 専門検討委員会では,部分開業時の収支見通しが. と発言,部分着工が同時着工のための妥協策であ. 運輸省から示され(表4),また,整備新幹線優. るとの認識を示す一方,翌20日には政府首脳が「部. 先着工順位問題懇談会がまとめた提言が了承され. 分着工でも順位をつけるのが筋」とし,あくまで. た。ここで示された資料により,さらに優先順位. も優先順位をつけ,それにしたがって順次着工に. は実質的に絞られていく結果となっている。公表. 着手するという方法を強調している。ここでもう. されたデータからは,収支改善効果において,北. ひとつ確認しておかなければならないのは,各線. 陸新幹線の優位が示されるとともに,九州新幹線. 区の部分着工区間は,距離の差こそあれ,既設新. において狭軌高速新線(=スーパー特急)導入に. 幹線と接続する形での単一区間を基本的前碇とし. よる短期的な収支改善効果が大きいことが示され. て考えられていることである(九州は例外である. るとともに,並行在来線の経営分離が収支改善に. が)。6月20日に開かれた整備新幹線建設促進検. 効果的であることが「強調」されている。特に,. 討委員会では,来年度から3線3区間を対象に部. 並行在来線とのかかわりで収支改善効果を公表し. 分着工,着工区間に対して優先順位をつけ,順位. たという点は,後の議論を考えると非常に興味深. 第1位の区間は来年度に用地買収を行うとともに. い。また,借入金の割合について,10%でも大き. 具体的な建設に着手し,順位第2・3位の区間も. な赤字の原因となることが示されたことは,JR. 用地買収だけは進める,との方針を固めている。. の経営を慮ったものであり,財源問題に対する強. この段階では,東北・北陸・九州からそれぞれ1. い牽制であると考えられる。この時点で,運輸省. 区間を選定して,それらに順位付けをする方向性. は借入金ゼロによる着工を目指していたと思われ. で進んでいる。6月25日には,渡辺政調会長も,. る。ちなみに,この会議において,石原慎太郎運. 3線同時の部分着工について否定的な意見を表. 輸相は部分着工支持を表明しているが,運輸省の. 明,優先順位にこだわる姿勢を明らかにしている。. 方向性を示したものでもあろう。. 7月9日,整備新幹線着工優先順位問題懇談会. 7月28日の第7回着工優先順位専門検討委員会. が,4項目からなる着工優先順位決定に関する碇. では,着工優先順位決定のための評価項目等につ. 言をまとめた。碇言は,①鉄道事業の長期収支,. いて検討を進めるとともに,運輸省から新たな資. ②国民経済的投資効果,③JR各社の経営見通し. 料が提示された(表5)。ここでは,新たに関連. と新幹線建設に対する考え方,④沿線地域の新幹. 線区を含めた収支改善効果や投資効果などが示さ. 線建設への合意,を評価基準にするというもので. れたが15,これらの数値は,議論の方向性に大き. 表4 収支改善効果(億円) 距離 km. 建設費. () 東]ヒ 盛岡一ノヽ戸. 高川奇一長野 ]ヒ陸. 高崎一上越. 高崎一富山  ̄博・多一斉旨本 九州、1. (往復千). 92 3300. 13. −20. −2. −52. −44. 128 5200. 23. 12. 80. −37. 14. 177 7000. 20. 51. 144. −17. 52. 287 10900. 18. 31. 164. −74. 21. 100 3800. 11. −44. 7. −81. 9. 19. 熊本一鹿児島 159 6000 熊本一鹿児島*1 159 5300 熊本一鹿児島*2 159 5300. *1 スーパー特急. 借入金10% 借入金0% 昭和70年度− 昭和75年度− 昭和70年度− 昭和75年度−. 輸送需要 人/km. *2 スーパー特急十並行在来線の経営分離. −44 −103 −86. −81 −141 −34. −92 −180 −153. 29. −38. 出典:盲畢(1994:98). 15 ここで,投資効果の試算に使われた方法は,経済的内部収益率法である。これは,割引キャッシュフロー原理にもとづく 投資基準で,投資の現在価値をその費用に等しくせしめる割引率を投資基準として投資間の比重交を行い,割引率の大きい計. 画から投資決定の順位をつける方法である。. 47.

(11) 一 皿. 表5 関連線区を含めた収支改善効果と投資効果. 東]ヒ 盛岡一ノヽ戸. 高崎一長野. ]ヒ陸. 高崎一上越. 高崎一富山.  ̄博・多一熊本. 熊本一鹿児島 九ナト1. 熊本一鹿児島 (特)スーパー急. 借入金 0% 昭和70年虔 1 −31 7.2 昭和75年虔 51 9 昭和90年虔 176 83 昭和70年虔 19 −30 9.9 昭和75年虔 117 51 昭和90年虔 338 199 昭和70年虔 46 −22 7.9 昭和75年虔 163 71 昭和90年度 451 259 昭和70年虔 19 −86 7.3 昭和75年虔 174 31 昭和90年虔 493 194 昭和70年虔 −19 −56 6.6 昭和75年虔 −12 −60 昭和90年度 −57 −163 昭和70年虔 −77 −137 5.8 昭和75年虔 −97 −174 昭和90年虔 −338 −509 昭和70年虔 −56 −109. 6.8. 昭和75年虔 −69 −136. 昭和90年虔 −236 −386. 熊本一鹿児島. 順位付けの問題が残っているものの,着工区間 として,東北では盛岡一人戸間,北陸では高崎一. 長野間,九州では熊本一鹿児島間が具体化しつつ あった。そうした中,運輸省は,予定路線のうち. 在来線と共用できる区間を「まだら着工」し,区 間ごとに開通し次第,当面は在来線と接続して狭 軌最高速度200kmの新型車両を走らせるという 案を固めた。まだら着工案は,事実上,上記3区 間以外を着工の対象とすることを可能にするもの. であった16。 8月11日に,着工優先順位専門検討委員会と財 源問題専門検討委員会の合同会議として整備新幹. 線建設促進検討委員会が開かれ,運輸省試案が説 明されたが,その席上,優先着工の対象として3. (スーパー特急+ 在来線廃止). 3.1.3 まだら着工実の浮上と対象区間の拡大. 昭和90年度 55 −96. *1盛岡一青森7.5 高崎一小松7.4 博多一西鹿児島6.5 出典:運輸省(1988). 線8区間が取り上げられるとともに,すでに鹿児. 島ルートの整備方法として取り沙汰されていた スーパー特急方式(図1)に加えて,在来線に標. な影響を与えたと考えられる。すなわち,北陸新. 準軌の列車を走らせるミニ新幹線方式が提示され. 幹線については,高崎一長野間の投資効果が圧倒. た(図2)17。ここではまた,新たに提示された. 的に高く,最優先で着工されるべき路線としての 位置づけを確かなものにしたこと,そして,九州. 新幹線については,博多一熊本間と熊本一鹿児島 間では,当該区間のみでの比較では前者が勝って いるものの,関連線区を含めた場合には後者が優 位であり,さらに,スーパー特急方式を導入する. 図1 スーパー特急(出典:筑後市HP). ことでさらにその優位性が高まることを示し,熊 本以南の先行着工の流れを形成したことである。 また,九州新幹線については収支のバランスをと るのがきわめて困難であり,並行在来線の経営分 離を検討する必要があることを,暗に示している。. 図2 ミニ新幹線(筑後市HP). 16 まだら着工案の後,運輸省はさらに「幹線鉄道の高規格化案」を碇示している。このような一連の案が浮上してきた背景 について,澤は,「新幹線建設そのものに反対する姿勢を崩さない大蔵省と,新幹線の建設を要望する地元の板挟みにあって, ギリギリの妥協案として」出されたものと解釈している(澤,1994:109)。 17 ミニ新幹線方式は,羽越本線の改良において実用化され,1992年7月1日から営業運転開始(山形新幹線),その後,田. 沢湖線の改良(秋出新幹線:1997年3月22日営業運転開始)や新庄までの延伸(1999年12月4日に営業運転開始)と,実用 が拡大している。ちなみに,ミニ新幹線に関しては,在来線の高速化を進める事業の一環として運輸省が推進していたもの でもあり,整備新幹線着工に関する議論が進められていた1988年8月25日,福島一山形間のミニ新幹線工事が着工している。. 48.

(12) 整備新幹線着工の政治過程. 表6 運輸省の示した建設方式と建設費(億円). 運輸省案に対しては,着工区間について北村青. 区 間 規 格 建設費 盛岡一沼宮内 ミニ新幹線 350 盛岡一青森 東北. 2300. 八戸一青森 ミニ新幹線 高崎一軽井沢 フル規格 軽井沢一長野 ミニ新幹線. 6400. 900. 1950 高崎一長野 600. 5200. 北陸 高岡金沢. 高崎一小松. スーパー特急 300. (北越北線). 14100. 森県知事・鎌田鹿児島県知事が運輸省案を概ね評 価したものの,中神富山県知事は不満の意を表明, また,関係者の一部からは,スーパー特急やミニ. 新幹線などの新たな方式による整備の提案に対し て「ウナギを注文したのにドジョウやアナゴが出 てきた」との不満の声もあがった。しかしながら,. 九州 八代一西鹿児島 スーパー特急 4300 博多一鹿児島 8700. 計. 13800. 29200. 出典:i畢(1994:101). 借入金0% 借入金10% 投資効果 昭和70年虔. 東北. 北陸. 3550. 31. 67. 24. −22. 昭和90年虔. 118. 16. 昭和70年度. −29. −89. 昭和70年虔. 207. 5950. −7. 69 昭和70年虔. 九州. り,事実上,運輸省案を前提とした順位付けの問 題を残すのみとなった。. 表7 運輸省案における収支と投資効果 建設費. 着工区間の議論に関してはおおむね方向性が定ま. 4300 昭和70年虔. 8.7. 運輸省案の提示により,状況は大きく進展する 13.1. 37. −6. −49. 27. −28. 36. −87. 出典:運輸省(1988). 3.1.4 着工優先順位の最終決定. こととなったものの,北陸新幹線沿線関係者から の批判的意見が強かっただけでなく,橋本幹事長. 7.5. 代理から軽井沢一長野間をフル規格で整備すべき. との意見具申があり19,これも無視できない状況 にあった。8月22日,第7回着工優先順位専門検. 区間と方法に基づいた建設費の試算結果が示され. 討委員会が開かれ,運輸省試案に対する意見聴取. た(表6)18。この試算結果は,整備新幹線に関. が行われたが,前回の会議と同様,東北・九州の. する運輸省の考えを鮮明にしたものということが. 沿線各県は条件付き受け入れの姿勢を表明する. できる。東北新幹線については,沼宮内一盛岡間. も,北陸各県は強い反発を示した。また,JR東. のみをフル規格(通常の新幹線規格)で建設,そ. 日本は,橋本幹事長代理の軽井沢一長野間をフル. れ以外の区間をミニ新幹線とする,北陸新幹線に. 規格で整備するという代案に対して反対の追加意. ついては,高崎一長野間は独立の区間とし,北陸. 見を碇出20,橋本案に対しては小里貞利自民党交. 本線を基本的に,上越新幹線の長岡経由で,未開. 通部会長も批判を展開している。しかしながら,. 業の北越北線を活用しつつ,まだら着工による部. この会合で結論を得ることはできず,着工優先順. 分的改良で,在来線の高速化によって対応する,. 位専門検討委員会内に小委員会(六人委員会)を. という方針である。運輸省の試算では,この建設. 設けて協議することを決定した21。. 方法により,建設費用が圧縮されるのみならず, さらに投資効果が上昇するとされている(表7)。. この時点で問題となっていたのは,規格の問題 よりもむしろ「広い意味での」優先順位の方であっ. 18 この試算結果は,事前に関係各所に配布されていたが,大蔵省は8月6日,建設区間を抑えた点は評価するものの,負担. 額の過大性と採算性に対する疑問からこれを批判する検討結果を明らかにしている。. 19 この背景として,長野市に冬季オリンピックを誘致するという構想があり,それを後押しするためという見方とともに, 当時同じ竹下派七奉行の1人であった羽田孜への配慮という見方も可能かもしれない。. 20 内容は,長野までをフル規格で建設する場合,建設費が3000億円追加されるため,無利子融資などの措置を講じたとして も建設費負担はきわめて困難であり,それまで掲げていた「高崎一長野間の着工が望ましい」という意見を撤回せざるを得. ないというものであった。 21メンバーは,小渕官房長官・石原運輸相・梶山静六自治相・渡辺政調会長・細田自民党整備新幹線建設促進特別委員会委. 員長・三塚自民党整備新幹線建設促進特別委員会顧問。. 49.

(13) 角. 一 皿. たと思われる。自民党内には,3線同時着工を望 む声が依然として強く,順位の付け方についても, 厳密に運用する考えと,柔軟馴1頁位付けにとどめ る考えもあった。もちろん,規格の問題も重要な. 課題ではあったが,流れは「どこに予算をつける か」という点に集約されていたといえる。. これに対して,8月25日,自民党は,着工優先 順位について,運輸省案に則って東北・北陸・九 州鹿児島ルートのそれぞれ一部区間を来年度から 同時に着工,特に投資効果などの面で優位である 北陸新幹線に重点投資するという「3線同時部分 着工」の方針を固めた。さらに,8月27日には,. 自民党運輸関係議員の間で,運輸省試案に沿って 北陸新幹線の高崎一長野間を来年度に本格着工す る他,東北・北陸・九州の新線予定区間でも長大. 図3 3線5区間概略図(出典:運輸省HP). トンネルなどの難工事区間に限って着工するとい う「一区間三地点着工案」で党内調整に入る方向. については,冬季オリンピックの開催地問題など. が確認された。自民党は,あくまでも「横並びの」. を考慮し,3年以内に結論を得ることとされた。. 着工を望む姿勢に固執している。. そして,着工優先順位専門検討委員会の廃止が同. 8月30日,第1回着工優先順位専門検討委員会 小委員会(6人委員会)が,自民党四役を加えて 開かれた。この協議でも結論には至らず,整備新. 時に決定した。. ここに,着工優先順位に関する当座の議論はま とまったのである。. 幹線計画は維持すること,順位決定の検討対象を 運輸省案と橋本案(軽井沢一長野間のフル規格着. 3,2 財源問題等専門検討委員会. 工)に絞ること,対象を5区間に絞ることが確認. 3,2,1膠着に陥る財源問題. された。そして,翌31日,第2回整備新幹線建設. 財源問題等専門検討委員会の初会合は3月4日. 促進検討委員会(6人委員会)が再度自民党四役. に開かれた。ここでは,渡辺政調会長が,公共事. を加えて開かれ,3線5区間に関して,高崎一長. 業方式で建設することは確定しているのではと質. 野間を最優先着工,フル規格による建設は高崎一. したのに対し,宮沢蔵相が今後の重要な議題であ. 軽井沢間までとし,軽井沢一長野間については継. り前碇ではないと切り返す場面もあったが,今後. 続協議とするという「自民党原案」が決定した。. の進め方として,建設国債・特定財源・民間資金. 9月1日,整備新幹線建設促進検討委員会と着. 等,財源の特定化と平行して,JRの負担可能性・. 工順位専門検討委員会が開かれ,政府与党申し合. 地方負担の問題点や,国・JR・地方の負担割合. わせとして整備新幹線の取り扱いを決定した。着. などを検討していくことを申し合わせた。4月7. 工優先順位は①北陸新幹線高崎一長野間,②北陸. 日に開かれた第2恒I財源問題党検討委員会では,. 新幹線金沢一高岡間,③東北新幹線盛岡一昔森間,. 宮沢蔵相が「公共事業で建設するにしても50%が. ④九州新幹線八代一西鹿児島間,⑤北陸新幹線魚. 限度」と発言,全額公費負担による建設について. 津一糸魚川間とし(図3),高崎一軽井沢間の昭. 否定的な見解を表明している。. 和64年鹿本格着工,その他区間における難工事部 分の早期着工が決定した。また,軽井沢一長野間. 50. 4月12日に開かれた自民党最高顧問会議の場に おいて,二階堂進副総裁と福田元衆議院議長は,.

(14) 整備新幹線着工の政治過程. 財源問題で議論の進展が見られない整備新幹線問. た。このため,三塚私案は見直しを余儀なくされ,. 題について,東北・北陸・九州新幹線の建設費の. 内閣内政審議室が中心となって関係省庁の考えを. 総額を3兆円とし,建設期間を6年間とした上で,. 取りまとめ,三塚私案に代わる案を作成すること. 建設費の3分の1を,国の無利子公債を地方が引. となった。8月4日に開かれた第7回財源問題等. き受け,残り3分の2を国が負担するという私案. 専門検討委員会では,三塚私案をめぐって議論が. を示した。なお,この碇案に対して竹下首相は曖. 膠着したのを受け,細田自民党整備新幹線建設促. 昧な態度をとって受け流している。. 進特別委員長が,国の財源は建設国債とし,国債. 6月3日の第4回財源問題等専門検討委員会で. 償還にJRグループの納める法人碗などを充当す. は,三塚博自民党整備新幹線建設促進特別委員会. るという私案を碇出した。しかし,これも膠着状. 顧問が,「国6割,民間3割,地方1割」とする. 況を打開する提案とはならなかった。. 私案を提示,これ以降,三塚私案を軸として,財 源問題の議論が展開していくこととなった22。こ. 3.2.2 運輸省実の提示と再度の膠着状況. の碇案に対して,梶山自治相はやむなしとの見解. 8月11日,着工優先順位専門検討委員会と財源. を示したが23,地方関係者の中には,既設新幹線. 問題専門検討委員会の合同会議として整備新幹線. ではなかった地方負担に対して不公平であるとい. 建設促進検討委員会が開かれ,整備新幹線につい. う意識も非常に強かった。また,国の財源として. ての運輸省試案が説明されたが,財源に関しては,. 道路財源の10%,公共事業費の5%が充てられて. JR東日本・西日本に関しては20%。JR九州に. いたため,関係省庁から非難の声もあがった。. 関しては5%の負担とし,残りを国と地元で半額. 7月11日の第5回財源問題等専門検討委員会で. ずつ負担するというものであった。この財源ス. は三塚私案が検討され,大蔵省が国と地方の負担. キームについては,それまで建設費の負担につい. 割合は1対1にすべきで,またJRの負担割合を. て否定し続けていたJR各社は,負担割合が抑制. 引き上げられないか検討すべきと発言,これに対. されたにとどまらず,無利子貸付などの有利な条. して自治省は,地方負担は1剖が上限であると反. 件があったため,運輸省案の受け入れを表明した. 論し,運輸省からも,JRの負担が可能かどうか. が,地方からは不満や慎重意見が続出,会議後の. から検討すべきとの反対意見が述べられた24。7. 記者会見では,梶山自治相は地方負担を撤回する. 月21日に開かれた第6回財源問題等専門検討委員. との強硬発言を行っている。翌12日,大蔵省は,. 会では,三塚私案に対して,道路財源や公共事業. JRへの無利子融資の碇案について拒否,国と地. 費等で関係のある建設・農水・運輸・厚生・通. 方の負担については,運輸省の提案どおり均等と. 産・国土・北海道開発・沖縄開発の関係8省庁が. するとの意を表明した25。また,8月20日には自. 意見を表明,運輸省を除く省庁が反対意見を述べ. 治省が,運輸省案による一人当たり県民負担の試. 22 ここでの民間とは,JRだけにとどまらず,整備新幹線建設によって直接・間凛に恩恵を受ける企業と,広く捉えられて いる。また,地方については,ここでは地方自治体に限定されている。 23 梶山自治相は,これ以前から取り沙汰されていた地方負担について,1割という具体的な数値が浮上していたことに対し. て否定的な見解を取り続けていた。 24 財源問題に関する妥協案として,運輸省は7月8日,財源問題等検討委員会で報告するために,運輸省が工事期間を延長,. 単年度の資金負担を大幅に圧縮するという提案をまとめている。 25 注18でも触れているように,運輸省案は事前に関係省庁に配布されていたが,財源案について大蔵省は,着工区間を圧縮 していることを評価しながらも,依然として建設費が大きすぎ,さらに,運輸省予算の別枠扱いをすることについても批判, JRの負担割合については,20%および5%という低い値になったことは,そもそも採算性に問題があるものと指摘した。 その一方で,比重交的採算性の高い区間があるという点を評価,順次着工という前提の下で,20%を限度として補助を行うこ と,NTT資金活用事業による無利子融資の対照とすることも検討する方針を表明している。. 51.

(15) 角. 一 皿. 表8 東北・上越新幹線の建設費と輸送量. 算結果を公表,平均2.8万円,鹿児島県では6.8万. 円とされたため,特に九州における運輸省案への 抵抗感が増すこととなった。22日に開かれた第7 回着工優先順位専門検討委員会では,各県とも,. 当初計画 実 績. 建設費 (除インフレ). 東北. 8800. 26470. 11610. 環境対 策費等. 760. 91000. 41000. 上越 4800 16250 7320 540 71000 28000 出典:i畢(1994:136). 地方負担については10%が限度であるとの意見を 表明,結果として運輸省案も状況を打開する案と. かれ,財源問題に関して協議が再開された。予算. はならなかった。. 編成に間に合わすためには12月末の結論では遅い. 8月30日に第9回財源問題等専門検討委員会が. との自民党の意見を受け,政府は11月末までに結. 開かれたものの,財源問題に関する最終協議は不. 論を出す方針を決定した。大蔵省はJRの負担に. 調に終わり,翌31日の第10回財源問題等専門検討. 関して,関連線区から発生する受益も含めて「プー. 委員会では,12月末をめどに財源問題に関する結. ル方式」で財源を負担すること,国と地方の負担. 論をまとめることが決定,9月1日の整備新幹線. 割合は,地域開発という視点からも均等とするこ. 建設促進検討委員会でその方針が公式に承認さ. とを改めて主張した。11月28日には,政府が,. れ,財源問題等専門検討委員会は整備新幹線建設. JRの負担比率を引き上げるなど,運輸省案の大. 促進検討委員会に吸収されることとなった。. 幅な見直しを行う方針と,着工方式として大蔵省 が主張したリレー着工方式の採用を表明,ここて. 3.2.3 錯綜する財源問題. 引き続き財源問題が整備新幹線建設促進検討委. は,3線同時着工は否定される形となった。. 12月8日,大蔵省は,来年度着工予定の高崎一. 員会で検討されることが決定されたが,その直後,. 軽井沢間について,在来線の横川一軽井沢間の経. 大蔵省は,財源問題に関して自らの立場を表明し. 営分離を条件に,公営地下鉄や山形新幹線建設の. ている。9月3日,着工優先順位の決定事項に触. 負担割合を考慮して,財源はJR東日本が50%,. れられていた難工事区間への先行着手について,. 国と地方がそれぞれ25%とし,JR東日本の負担. 難工事を理由に次々と着工されては財源的に不可. は有利子で自己調達するという方針を表明した。. 能として,難工事について厳しく査定するにとど. 横川一軽井沢間の廃止はJR東日本が言い続けて. まらず,一路線がほぼ完成しない限り次の着工は. きたことであるが,建設費負担には直接関わらな. 認めない「リレー着工方式」を表明,さらに翌4. い事柄であることに鑑みると,これに触れながら. 日,整備新幹線の財源について,運輸省案をたた. 代案を提示したということは,大蔵省にとっては. き台とせず,着工時期や負担割合を全面的に見直. きわめて大きな「譲歩」であったといえる。大蔵. す方針を表明,国と地方の負担割合を均等にする. 省も,整備新幹線の着工はやむなしというところ. こと,JRの負担割合を高めること,積極的に建. であるが,いかにして「真水」の投入(=一般会. 設を望む自治体は負担割合を高めることなどを検. 計への影響)を抑制するかという点に意識が集中. 討すべきとの考えを明らかにした。9月21日,運. していたことの証しとも受け止めることができる。. 輸省は,優先着工が決定した高崎一軽井沢間につ. 12月19日,非公式の場として整備新幹線建設促. いて大蔵省が建設費高騰の懸念を示したことに対. 進検討委員会の懇談会が開かれ,細田自民党整備. して,東北・上越新幹線の時は準備不足により建. 新幹線建設促進特別委員長が,整備新幹線特別会. 設費が高騰したが,整備新幹線については事前の. 計を設けて建設資金を一元管理する新たな財源案. 準備が充分なので建設費は計画内に収まると反. を提示,国・JR・地方の負担割合を50:30:20. 発,東北・上越新幹線に関する試算データを公表. とし,地方負担のうち半分は自治体が負担,残り. している(表8)。. は開発利益を民間から吸い上げて財源に充てると. 10月31日,整備新幹線建設促進検討委員会が開. 52. いう案を示した。しかし,大蔵省から国の負担が.

(16) 整備新幹線着工の政治過程. 大きすぎるとの反論が出たため,状況の打開には. 集され,JRグループの建設費負担を50%とし,. 至らなかった。また,12月28日,渡辺政調会長は,. 東日本・西日本・九州の3社が新幹線保有機構を. 整備新幹線の財源はJRが40%程度とし,地方は. 通じて一体化して負担,JRが新幹線保有機構に支. 最低10%を負担する必要があるとの考えを表明,. 払っている既設新幹線施設のリース科を一部建設. リレー着工方式の採用については否定的な見解を. 費に充てる他,新幹線保有機構が旧国鉄債務返済. 示し,10年で完成させるために早期かつ段違い的. の際,低金利の資金に借り換えることで発生する. に着手したいとの意見を述べ,リレー着工を硬直. 利益も建設費に充てることが政府案通りに決定26,. 的に運用せず,柔軟に扱う方向性を示している。. 難工事リストが碇示され,37カ所のトンネルと9. また,年の明けた1989年1月4日,政府は,整備. カ所の橋梁がリストアップされた。14日には,政. 新幹線の車両購入費を損金扱いできる「車両費準. 府と自民党の間で,国と地方の負担割合について. 備金制度」を導入することによって,JR負担を,. も,先に大蔵省が示した内容での合意に至った。. 運輸省案の20%から30%へと引き上げる考えを明 らかにしている。. 1月17日,整備新幹線建設促進検討委員会が開 かれ,1989度予算編成における整備新幹線の取り 扱いを決定した。北陸新幹線高崎一軽井沢間の本. 3.2.4 財源問題の「決着」. 格着工,建設費の地方負担額は,線路部分10%,. 1989年1月9日,政府・自民党は,整備新幹線. 駅舎部分25%とし,建設費を負担する地方自治体. の財源の負担割合を,JR50%とすることで合意. に地方債の発行を認めることで合意,高崎一軽井. した。JRが早期に開業する新幹線区間の利益を. 沢間の建設費として国費50億円,難工事区間に関. プールして次期着工区間の財源に充てる「新幹線. して「整備新幹線難工事推進事業費」として18億. 独立採算方式」を採用し,JRの経営への影響を. 円の計上が決定した27。. 排除することによって整備新幹線が第二の国鉄化 するのを回避しようとするものであり,JR各社 を一体化して扱い,1996年の高崎一軽井沢間開業. 3.3 並行在来線問題の帰結 自民党内部においては,総務会決定で整備新幹. 後,JR東日本の収益から運行費を除いた額を日. 線の開業にともなう並行在来線の廃止は決定事項. 本鉄道建設公団に積み立てて次の着工区間である. となっていたが,整備新幹線建設促進検討委員会. JR西日本管内である金沢一高岡間の建設財源と. の議論においては,8月11日の合同会議以降,本. し,以下同じように順次建設していくという方法. 格的な動きが現れはじめている。. である。翌10日には,政府が,新幹線保有機構に. 8月12日,運輸省試案を受けてJR九州が,八. 生まれる剰余金をJR負担分とする方針を内定,. 代一西鹿児島間の並行在来線について,部分的な. JRの実質的な負担を軽減する方策を示した。ま. 廃止を含めた検討に入ることを表明,16日には. た同じ日に,大蔵省が,国と地方の負担割合をこ. JR東日本が,沼宮内一人戸間と横川一軽井沢間. れまでの1対1から2対1とし,地方負担は最低. の廃止の考えを表明,JR各社の動きが活発化し. でも16.6%以上とする方針を固めた。自治省もこ. はじめている。特に,着工優先順位で1位を獲得. の碇案に対して受け入れを表明,財源問題が大き. した高崎一軽井沢間に関係する,横川一軽井沢間. く動き出すこととなった。. の廃止が,焦眉の課題となっていくこととなる28。. 1月11日,整備新幹線建設促進検討委員会が招. 11月24日,JR東日本は,整備新幹線建設促進. 26 こうした仕組みによって,JRの実質的な負担は,運輸省案で示された20%程度に抑制されている。 2718億円の配分も同時に決定され,金沢一高岡間の加越トンネル3.9億円,東北新幹線の岩手トンネル7.7億円,九州新幹線. の第三紫尾山トンネル6.4億円となっている。 28 こうした動きを受けて,沿線においても,自治体が中心となった在来線存続運動が発足している。1988年9月,群馬では,. 53.

(17) ㈀⏲. ᥆㐅ເງ. ⮤Ằඨ㐘㍲᪐. ᆀ᪁⮤἖మ. ᆀ᪁㈀⏲. ཬᑊເງ 㐘㍲┤. ⮤἖┤. JR ྘♣. ኬⶮ┤. පභ஥ᴏ㛭㏻┤ᖿ.

(18) 整備新幹線着工の政治過程. とっては,JRが政治過程を左右する重要な「資 源」となっている。 第三に,自治省は,地方自治体の健全財政の維. 4.2 政治過程の特徴(多 国鉄改革からの視座. 当該政治過程を短期的にみると,先にも記した ように,自民党運輸族は,積年の課題であった整. 持と,地方が求める整備新幹線着工実現という. 備新幹線着工に到達したことで十分な成果を得た. ミッションのもとに行動し,最終的には地方負担. と評価できる。また,運輸省は,国鉄改革直後と. 15%のラインで妥結したが,当初主張していた. いう状況を十分に活かしながら,JRに過剰な負. 10%までは届かないものの,均等負担を主張して. 担を生じさせず,国と地方から財源を引き出した. いた大蔵省から大幅な譲歩を引き出した点で,十. 点で大きな成果を得たといえる。また,自治省も,. 分な成果を得たといえるだろう。さらに,地方負. 着工を熱望する地方の意志を考慮しつつ,地方財. 担については,90%を起債によるものとし,起債. 政への負担を「最小限に」止めたという点で十分. 額の半分を地方交付税の基準財政需要に組み入れ. な成果を得たものと思われる。. ることとなったため,実質的な地方負担はさらに. それでは,大蔵省の「一人負け」かというと,. 小さいものとなっている。このような成果を獲得. 状況はそう単純ではない。宮沢蔵相は,財源問題. できた背景には,先に記した大蔵省の「孤立化」. 等専門検討委員会の冒頭で公共事業費は最大50%. が大きく影響しているだろう。. という防衛ラインを表明しており,その視点から. 最後に,自民党運輸族であるが,かれらにとっ. 評価すれば敗北とはいえないし,JR負担を名目. ては整備新幹線の着工実現が課題であり,極論す. 上50%,地方負担を15%としたことで,ある程度. るならば,着工優先順位や建設費の負担割合と. の面目は保てたともいえる。. いった細かな内容については,それほど大きな問. 他方,マイナスの観点からみると,運輸省は,. 題ではなかったともいえる。猪口/岩井は,整備. JRの経営安定と整備新幹線の着工というふたつ. 新幹線を「放たれた猟犬型」に分類しているが,. の課題を両立させるために,自主財源の中から建. その特徴として「議員集団が自然発生的に生まれ,. 設費の手当てしなければならなくなった。その結. 政策決定権力の所在が不明瞭になり,その統制も. 果が,新幹線保有機構から生じる果実へと向かっ. とれず,これらの議員たちの『ゲリラ』行動のた. たわけであるが,これは,本来国鉄が発生させた. めに,その分野の族議員が目論んだ政策決定が思. 膨大な累積債務の償還に当てられるべきものであ. わぬ方向に流される可能性もある」という言及を. り,それに手をつけるということは,債務償還ス. している(猪口/岩井,1987:263)。しかしながら,. キームの後退を意味する。JRの建設費負担もこ. 本稿における政治過程においては,むしろかれら. れと同様のことがいえよう。. が「ジェネラル」や「マスター」といった表現を. また,地方にとっても,さまざまな措置によっ. する,党内の有力者(具体的には三塚博や細田吉. て直接的な負担は抑制することができたものの,. 蔵など)や中堅(小里貞利など)の活発な動きが. この時点では限定的であったにせよ,並行在来線. 目立ち,単なる大衆動員的示威行動にとどまらず,. の経営分離という新たな負荷が生じてきたことを. むしろ積極的に状況打開のための案を提起する姿. 含め,手放しで喜べる結果であったとはいいがた. が目に付く30。そうした状況に鑑みると,少なく. い。鉄道事業のウェイトは都市間輸送に移り,圏. とも本稿で取り上げた政治過程はむしろ「つなが. 域輸送は衰退の一途をたどっている状況であるに. れた猟犬型」に位置づけるべきものである。. せよ,交通弱者の移動手段確保は重要な課題であ り,特急列車の運行の合間を縫って行われている. 30 もちろん,かれらが分析の対象としているのは1986年以前の政治過程であり,状況が大きく変化していることも忘れては. ならないだろう。. 55.

参照

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