北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステムの構築に関する研究
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 5巻. 第1号. 平成6年10月. lo f Hokka i do Un i i fEduca i i l Journa tyo t t ver s on(Sec onIC)Vo ‐45 ‐l , No. oc tobe r ,1994. 北海道南西沖地震被災者の 心理的サポー トシス テ ム の構築に関する研究. 藤. 森. 立. 男 ・林. 春. 男 ・藤. 森. 和. 美. 1. 災害の特質 99 3年7月1 1 2日に発生した北海道南西沖地震は, 我々がこれまでに調査してきた地震災害現場とは質的に違ったもの であるという印象を受けた‐ 特に, 地震に加えて津波と火災の被害を受け一つの集落が廃蛭と化してしまった奥尻島の 青苗地区の光景は, 言葉を失ってしまうほどのものであった‐ 気象庁によると, 震源地は槍山管内奥尻町の北方沖 (北 緯4 2 3 94度) であり, マグニチュウー ド7 ‐8度, 東経1 ‐8という巨大な地震であった (図1). これにより, 奥尻島で震度 6 (烈震), 江差・小樽等で同5 (強震) を記録したのをはじめとして, 北海道南西部の各地で激しい振動があった‐ こ の地震は, ほぼ同時に大規模な津波や山崩れを引き起こし, さらに大火災を発生させ, 死者2 01人, 行方不明者2 9人にの ぼる多くの犠牲者をだした (日本赤十字社北海道支部,1 99 ). これは, 戦後わが国を襲った地震による災害の中で最大 4 の惨事と言えるだろう‐ d i 災害 ( t ) とは, 広辞苑によると 「異常な自然現象や人為的原因によって, 人間の社会生活や人命の受ける 被 s a s e r 害」 となっている‐ 専門用語としての災害は,「個人や社会の対応能力を越えた不可抗力的な出来事や状況 さらに少な , くとも一時的には, 個人や社会の機能の重大な崩壊状態をもたらすものという意味で使われている. 概して突発的 劇 , 的な出来事と思われがちだが, 飢僅のような延々と続く災害もある‐ と定義されている R h l ( 1 9 8 6 ) a a e 」 p , ‐ 0 4 0 1. o 1 4 エ. 0 4 3 震源地. . 奥尻島. . 成お 〆尻大. 0 . 5 0 k m. 図1 北海道南西沖地震の震源地と被災地 139.
(3) . 藤森立男・林 春男・藤森和美 災害時の人間行動を研究するものにとって, 今回の災害事例は非常に多くの教訓を含んでいる‐ それは, 被災者が家 t r auma:心的外傷) を受けていると 屋や財産等の喪失といった物理的な被害を受けただけではなく, 同時にトラウマ ( いう基本的な事実を強く 再認識させたことである‐ 自分や家族が生命の危険にさらされた人, 自宅が破壊された人, ま た災害によって傷ついた人や亡くなった人を見た人の心には, 持続的なストレスが作用することがある‐ これらの人々 l )‐ 1986 には, 次のような問題の発生が Holen ら (1983) に よ っ て 指 摘 さ れ て い る (Raphae ,. ) 死と生存 ( 1 死の脅威, または重傷や死を招きかねない肉体の損傷は, たいていの災害に内在している‐ ある個人またはその個人 の身内の者が実際に負傷したり, 死の脅威にさらされる場合もある し, たとえこのような直接的な脅威をまぬがれたと しても, 他者の死傷に直面する場合もありうる. そこでは, 死の脅威と裏側に生存という問題 (自分以外の人間の死の なかで, 自分は生き残ったという複雑な意味を持った問題) が関係し, さまざまに異なる脅威やストレスが認められる であろ う.. ( 2 ) 喪失と悲嘆 たいていの災害は喪失の脅威と実際の喪失, さらにそれにともなう悲嘆をもたらす. 喪失には, 家族や親しい友人の 死のような人命の喪失の場合があるのは当然であるが, 負傷による身体の部分と機能の喪失, 記録物など貴重な私有物 の喪失, 近隣・土地・地域社会の喪失等がある‐ 災害には, 実際の喪失と喪失の脅威とさらにそれによる怒りと絶望的 な悲嘆の意味が伴うのである‐ ( 3 ) 立ち退きと再定着 災害のなかには, 家族の別離だけでなく, 地域ぐるみの避難な どの大きな変動をもたらすことが多い‐ 時間的には ご く短い一時的なこともあれ ば, 半永久的に続き, 時には既存の地域社会の崩壊にま でいたることも あろう. 被災者に とって新しい地域社会, 新しい生活環境への再定着の問題は, うまくゆく場合もあれ ば, 同化できなくて失敗に終わる こともあるかもしれない‐ 被災後には, これらの心理的な問題に加えて, 被災者援助のため補償問題をめぐって, さまざまな社会的葛藤が生起 しやすい. 例え ば, 義援金や救援物資の配分問題, 被災地域からの集団移転問題, 保険金をめ ぐる訴訟問題等 が生 じ る. このため, 被災者が苦難の時期を乗り越え, 社会的に立ち直っていく過程では, トラウマによる苦痛 に悩まされな がら, 同時に対人的・社会的葛藤が複雑に絡み合い, 緊急に解決 しなければならない社会的問題が展開されることにな る‐. したがって, それらの問題が解決できない場合には, 災害後にそれまでには感じたことのないようなおか しな気分や 行動があらわれ, 心理的な苦痛を受ける ことになる‐ 具体的には, 災害の光景が心に焼ついてはなれない (フラッシュ バック), 何事に対しても心を閉 ざしてしまう, よく眠れない, すぐイライラする等の心理的な問題である. アメリカ精 i t t Tr sorder)」 と 定 義 して い auma cSt r essDi 神 医学会 はこ のよ う な 症 状 を, 「 」心的 外 傷 後ス ト レス 障 害 (P T SD :Pos i k る‐ Fr t 9 ) は, 大旋風やその他の天災 1 54 z& Ma 、によって被害を被った人々に関する研究において 「被害の程度が r s(. 大きければ大きいほど, そのため に情動障害をうける可能性が高い」 ことを示唆している‐ PTSDは, 欧米を中心に第2次世界対戦後から, 災害心理学の研究者によって研究されており, 被災直後から被災 地で専門家の援助を必要とする人たちに対するサー ビスの提供を行う体制が整えられている‐ しかし残念ながら, 我が 国では防災の先進国でありながら, こうした被災者に対する精神面での支援体制が整えられてきていない‐ 今回の災害 を契機として, 被災者の心の傷を癒 しうるソフト面での支援体制をわが国の災害復興対策の中に位置づけるべきである と考える‐. 2. 子供と災害 子どもの災害体験は, 親や家族との体験と密接に絡み合っている. 子どもは親の反応を識別 したり, それに呼応する ことによって直接的にまたは間接的に脅威や恐怖を体験する. 被災後, 子 どもを 「保護する」 意味で被災現場から遠 ざ 140.
(4) . 北海道南西沖地震被災者の心理的サポー トシステムの構築に関する研究 l(1986 ける こと が ある が, そ れ は 苦 痛 の 緩和 よ り む しろ 親 と の 分 離 に よ る 不 安 を 与 える 場 合 も あ る‐ Raphae ) は, 災害. に関する多数の調査研究や事例研究を整理し, 子 どもの災害体験がおとなのそれと同じとは限らないということを報告 して いる-. . . . 1) 子どもの災害体験 災 害に 対す る 子 ども の 反 応 パ タ ー ン は, どの よ う な も の な の だ ろ う か‐ 子 ども の 災 害 に よ る トラ ウ マ は, お と な と 異 なる 形 で表 出 され る こ と を 知 っ て お か な け れ ばな ら な い‐ 例 え ば, 1972年 に アメ リ カ の ウ ェ ス ト・ ヴァ ー ジ ニ ア州 で発 生 した バ ッ フ ァ ロ ー ・ ク リ ー ク の ダム 決 壊 事 故 は, 死 者 約120名 に も お よ ぶ 大 き な 災 害 で あ っ た‐ Newman (1976 ) の研. 究によると, 被災から2年後の調査で, 当時まだ2歳2カ月だった子どもでさえトラウマを受けていることが実証され ている‐ その中のピーターは, 入浴時には必ず泣くし, 夜泣き, 夜尿症になっていた. この水害でピーターは, 父親が かろうじて家族を誘導しやっと脱出したあとに, 自分 らの家が目の前で押し流されてしまたのを見ており, さらに他の 子どもが 「助けて」 と叫びながら流されていくのに何もできない父親の姿も見ていた‐ これは, 今まで自分を守ってく れる強く頼りがいのある父親が, 災害の前では無力でどうすることもできないということを体験したことになる‐ この よう に 子 ども に と っ て は, 災 害そ の も の の 怖 さ と, 親 自 身 が 恐 怖 に お の のく 姿を 見る こ と に よ っ て, そ れ ま で信 じて い. た 「強いおとな」 を喪失したという, 2つの恐怖に直面することになる. 2) 子どもの発達段階と喪失体験 子 どもの悲嘆は, 年齢や発達段階さらに悲嘆を解除できる程度によって大きく異なる‐ 一口に子どもといっても乳児 期, 幼児期, 児童期, 思春期と分けられ, ひとまとめにできるものではない‐ これま でに報告されている主要な研究 by 1980 l 1986) を 参 考 に して, 親 と の死 別 と い う 喪 失 体 験を持つ子どもたちが発達段階によってどのよう (Bowl ;Raphae , , な情緒的・行動的反応を示しやすいかを整理すると次のようになる. ①わずか生後3カ月の乳児でも自分の第一次的保護者の喪失に対しては, たいていは泣き叫ぶなど, 苦痛の表現を 示すことで反応する‐ ②半年から1歳半の幼児になると, 母親との分離や母親の苦痛や悲嘆の反応にきわめて敏感になる‐ この発達期 に, もし母親との分離が長引いたり母親が深く嘆きかなしん でいたりすると, 幼児ははっ きりとした動揺を見せる と いわ れ て い る‐. ③1歳半から2歳の幼児は, 正常な条件下では情緒的な愛着が深かった人の喪失に対 して, 悲嘆と思慕を表現す る‐. ④2歳から5歳になると, 失った人を求めて泣き叫ぶだけでなく, 死に対する怒り, 否認, 思慕, 抗議, 絶望まで 表す‐ しかしこの時期では, 死のもつ終末性の概念を完全に理解することは難しいが, 以前よりはずっと理解でき るようになる‐ 自分の大切な人がいなくなったことを自分が拒絶されたと解釈したり, 自分自身の怒りの気持ちが 実際に現れたと考えたりする‐ 死んだ人は理想化される傾向が強く, どこかで生きていてそこから帰れない また , は 帰ろ う と して い な い と 理 解 して い る.. ⑤5歳から8歳になると, 死の終末性とその肉体的な現実感への理解は強まるのだが, さまざまな激しい感情を処 理する自我の諸技術はまだ身につけていない. この年齢になると自分の大切な人に持つアンビヴァ レソス (両価的 感情) が顕著になるので, その人への死に対して強い罪責感を持ちやすい‐ また, 自分にとっても死が無縁なこと で はな い こと が わ か っ て きて, 恐 怖 を も つ だ ろ う‐ こ の こ ろ か ら死 を 嘆 き 哀 しむ 作 業 を で き る よ う に な る ‐. ⑥10歳から12歳ぐらいになると, 未来についての意識やさらに死別によって自分の今後の生活が変化するだろ うという認識が強まる‐ この時, 悲嘆と死者への哀悼を表明すべき機会が与えられれば, それを適切に表すことが 多 い‐. ⑦思春期の死別反応は, さらに成人の反応に近づく‐ けれども発達上の思春期における発達課題や自我同一性の危 機によって複雑化する可能性を含んでいる.. 141.
(5) . 藤森立男・林 春男・藤森和美 3. 被災者の支援計画 北海道南西沖地震がもたらした深刻な災害に対して, 我々は被災者の心の傷を癒しうるソフト面での支援体制の整備 99 3 ). 以下では, 被災者への精神的ケアを実施するための具体的な支援計画を述べる‐ が必要であると考えた (林ら,1 1) 地域社会に対する情報の提供 ( 1 ) 災害の心理に関するパ ンフ レットの配布 災害を体験した人々がどのような心理状態になりやすいか, どのような行動をとりがちかを説明したパ ンフレットを 作成し, 住民に対して配布する. パ ンフレッ トでは 「心理状態・行動傾向」 「この時期に注意すべきこと」 「いつ専門家 への相談が必要か」「どこで専門家への相談が可能か」 の4点が説明されている. パ ンフレッ トの配布方法は, 関心のあ る人が自由に手に入れられるようにする. 具体的には, 役場, 保健所, 診療所, 避難所等に常備して, 緊急時にも対応 できるよう準備する. 2 ( ) 住民向けの講演会の実施 被災地の集会場を利用 して, 被災者たちを対象とした講演会を開催 し, 専門家が災害後のストレスの問題について概 略を説明する‐ 必要とする人には上記のパ ンフレッ トを配布し, その後に住民からの質疑応答を受け付けることで基本 的な理解を得る機会を提供する. ( 3 ) 各種の組織・団体向けの講演会・懇談会の実施 被災者が自発的に形成している集団の集まりに専門家が参加し, 災害後のストレスの問題について講演 し質問を受け る‐ 同じような悩みを持つ被災者の存在を知ると同時に, 専門家への質疑応答を通して, 被災者が必要とする知識をさ りげない形で手に入れる機会を提供する‐ ( ) 家庭訪問による巡回相談の実施 4 各地域の保健婦や福祉担当者などによる巡回を行い, その機会を通じて被災者の災害後のスト レスの問題について質 問する機会を設ける. 5 ) 長期にわたる相談所の開設 ( 診療所あるいは保健所な どに恒常的な相談場所を設置し, ローカル ゲートキーパーが常時対応できる体制を設ける‐ 同時に専門家は定期的に被災地を訪れる際の拠点としてこの相談所を利用する. 6 ( ) ニ ュ ース レタ ー の 刊 行. 被災者自身が編集者となって, 自分たちが関心を持つ事柄についてニュースレターを作り, 被災者に配布する‐ ( 7 ) 相談電話 (フリー ダイヤル) の設置 ローカルゲートキーパーの, あるいはボランティ アによる電話相談ができるような体制を設立する‐ 電話料金による 差別 を生ま な い た め に, こ の 電 話 は フ リ ー ダイ ヤ ル とす る こ と が望 ま しい.. 2) ローカルゲートキーパーの育成 専門家の絶体数が不足しており, 各地域に専門家を常時派遣 しておくことは困難である‐ そこで, 重要になるの が ローカル ゲートキーパーの育成である‐ ローカルゲートキーパーとは町の福祉担当職員, 保健婦, 学校の先生等, 地域 内にいてその地域の人々の様子を理解しており, その人たちの悩みやストレスの問題解決に対して関心のある人々をさ す‐ こうしたローカルゲートキーパーがそれぞれの地域において悩みを持つ人と常時接し, 重大な問題があれ ば地域外 の専門家との間の連絡役を果たす人々を育成することが, この計画を推進する上で不可欠である. またこうしたローカル ゲートキーパーを育成し, 必要な援助を提供できるような体制を整えることが必要であり, そ のためには, 以下のような準備を しなければならないと考える. ( 1 ) 相談記録 (チェクリスト) の設計 ローカルゲートキーパーが被災者から相談をうける際に, 相談の基本的な状況を記録 し, それ以降の相談の際の基礎 資料および専門家とのコミュニケーショ ンを正確にするための基礎資料となる相談記録用紙を作成する‐ 記載すべき事 項は, 「地震災害による被害状況」 「家庭環境 (家族構成, 職業等) 」 「相談内容」 「観察所見」 などである. 142.
(6) . 北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステムの構築に関する研究 2 ( ) データ ベ ー ス の 作 成. 相談記録をもとに個々の犠牲者に関するデータベースを作成し, 相談を実り多いものにするとともに, 今後の災害の 際に再び発生する同様な問題に対する教訓とする‐ データベースをどのような形態でつくるか, コンピュータを利用す るなら使用するハー ドとソフト, 文書を利用するならその管理システムを検討する. ( 3 ) 情報へのアクセス権の設定 データ ベースを設置する場所, これらの情報へのアクセス権を持つ人を設定する‐ 4 ( ) データ ベ ー ス の 利 用 規 定. 行政面での利用, 研究面での利用に関する規定, マスコミや部外者の利用希望に対する対応を決める‐ ( ) ローカルゲートキーパーを対象とした講習の実施 5 講習内容の決定, 講習会用テキストを作成する‐ 6 ( ) エ キ ス パ ー ト シス テ ム の 開 発. 現地で犠牲者の対応に当たる人のためのコンピュータ支援システム (カウンセリング用エキスパートシステム) の開 発を行う. 7 ( ) 事業の効果測定用のアンケートの作成 被災者向けおよびローカルゲートキーパー向けに実施する各種の相談形式の有効性を評価するための調査票を作成す る‐ それを通してこの事業の評価を行い, 不都合を改善する際の資料とする‐. 4‐ 我々の支援活動 1) 災害の心理に関する情報の提供 (サイコロジカル・ディ ブリーフィ ング) 我々は上記の計画案を持って平成5年8月1 6日に奥尻町の災害対策本部を訪れ, 被災者の精神的な支援が必要である こ と を 説 明 した‐. また我々は, 保護者や学校関係者が災害を体験した子どもたちの苦しみや悲しみを理解するためのパ ンフレットを独 目に作成した (図2). 表紙. 裏. 【 情 報 選 僕 の 窓 □】. 災 害 を 体 験 した 子 ども た ち 一一一こ こ う の 理 解 とケ ア--一 . . . 、 ー ー ‐ 、 ‐ ◆ 、 ・ .. このパンフレットを読んで 、さらにお知りになりたいことかこ ぎいましたら、卿猷ぼくご逗捲くださし 、 ‐次のとこうで僑報を 提供しております . ・個人のフライバシーは国<守られます ‐. ・鰯の搬 臨料です , 北海遭教育大学函館校 人間科学教室 住所 函館市八幡町1‐2 電脂 0 1男4 1 1 1 2 1(内線 9 2 8 ) ‐ ′ 午前 9暗から午 狛時まで□ ; ) ・日曜8を除く このパンフレットは 、下記のものによつて作成されています . 圃交立男( コ園適教育大掌助教授・人間行動科学 ). . 一杯和英( I P 定 職 日本臨床心理士 緑 協会・カワンセラー ) イラストは 北酒逗牧膏大学函餌役愛翫科 )の協力を 、鰍沢彩子さん( 得ています . 発行:1 9 E B年n月. 図2. 災 害 の 心 理 に 関 す る パ ンフ レ ッ ト 143.
(7) . 藤森立男・林 春男‐藤森和美 この パ ンフ レッ ト は, 「こ れだ け は知 っ て お き た い 災 害 を 体 験 した 子 ども た ち. 一 こ ころ の 理 解 と ケ ア -〕 と 題 して,. 2月中旬に被害が深刻だった奥尻町や大成町・北棺山町・島牧村などの教育委員会を通して, 小学校および中 平成5年1 00部). 内容としては, 「災害が子どもたちの心や体調に どのような影響を与 学校の教職員や保護者に配布された (約20 えるか」「災害後の生活では, どのようなことに注意して子どもたちに接したらよいか」 などを具体的に説明し, ア ドバ イスしている‐ 災害を体験した子どもたちにこのつらい時期を乗り越えてもらうためには, 子ども自身の力だけでなく 保護者や周囲のおとなたちが正しい知識を持ち, 子どもたちの傷ついたこころを理解し, 愛情のこもったケアをしてい くことが大切であると考えたからである‐ パ ンフ レッ トの 内 容 は, Hodgk i ) や Parけ ( 1990) 等 を 参 考 に して 新 た に 作 成 し た も の で あ t (1991 r nson & Stewa. る‐ 災害の心理に関する情報をこのようなかたちで提供するのは 我々が知る限り日本で初めての試みである‐ これま での災害報告や事例から, 被災者に対して充分な状況説明がないことへの不満が多かったことを考えあわせると, 被災 者自身やその子どもたちのおかれた状況の意味をできるだけ把握できるようにすることが大切であると考えた. 2) 災害を体験 した子どもたちを理解するためのパンフレッ トの作成と配布 子どもの被災後の情緒・行動面での反応はともすると見過 ごされることがあり, 一見元気に頑張っていると思われが ちである. しかし悲しみが,「見えないこと」 と 「存在しないこと」 とは区別しておかなけれ ばならない. 我々が作成し たパ ンフレットは, 災害体験を持つ子どもたちがどのような反応を示しやすいか, また親や周囲のおとながどのような 対処をしなければならないかをわかりやすく紹介した. 以下にその具体的な内容を記述する‐ ( 1 ) 保護者の皆様への案内 保護者の方々に, 災害後の子どもたちのこころを理解して頂く ことの意義をここで案内している‐ 保護者自身が災害 ら子どもたちへの気配りの重要性を強調した‐ 災害心理学 を体験して, 混乱したり不安を感 じていることも考慮 しなが・ の研究に基づいた正確な情報を得ることは, まず保護者の方々の理解が進み精神的に安定し, それに伴い子どもたちの 安定が促進される. 【この冊子をお読みになる保護者の皆様へ】 災害は, 子どもたちから家族や友人などの大切な人, 家, ペットやお気にいりのおもちゃなど, 多くのものを奪っていきま した‐ そして子どもたちの小さな胸の中では, まだあの ときの恐ろ し さを忘れられずにいることでしょう‐ 災害のあと, 保護者の多くの方は災害を体験 した人しかわからないような感情や行動がでてき こと が ある て, とま どわ れ て い る か も しれ ま せ ん‐ と き に は, イ ライ ラ した り, 不 安 で 眠 れな い・. と思います‐ このようなつらい体験は, 子どもたちにも見られる ことがあるのです‐ けれども, 子 どもたち の変化は, おとなたちの変化と異なることがありますので気をつけなければなりません‐ また, 災 害の あ と の し ば らく の 間, 子 どもた ち は一 見 「お と な しく て, よい 子」 の よ う に 見 え る こと が. あります‐ そのため, つい子どもたちの心の悲 しみや苦しみに気づかないことがあるかもしれま せ ん‐. このような恐ろしい体験や不安は, 一度にそのすべてを受け入れることはできないものです‐ 子どもたちのさまざまな反応は, 災害によるこころの傷を少しずつ受けいれようとしている途中 でおこる, 子 どもたちのけなげな努力のあらわれでもあるのです. その手助けをするために, こ の冊子が少しでも参考になれ ばと考えています‐ (パ ンフ レット, この冊子をお読みになる保護者の皆様へ). ( 2 ) 子どもの心と体調の変化 災害後の生活の変化や心理的な緊張が, 子どものこころや身体にさまざまな影響を与えることがある‐ 基本的な健康 管理のチェックポイ ントを示した. 気になる心身の変調が, 改善しなかったり長引くときには専門家 (保健婦, 養護教 諭, カ ウ ンセ ラ ー, 医 師 な ど)-に相 談 す る こと を 勧 め て い る. …. -. さらに子どものこころのよりどころである家族が, どんなに安心をもたらすかを説明し, 援助のあり方について触れ 144.
(8) . 北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステムの構築に関する研究. た こころや体調の変化はありませんか? 子 ども た ち は 災 害 の 恐 怖や シ ョ ッ ク か ら, こ ころ や か ら だ の バ ラ ンス を く ず す こ と が あ りま す‐. 毎日の健康管理が大切です. また健康に対するやさしい気づかいは, 子どもたちに安心とやすらぎ を与えます‐ ト》 - 《健 康 の チ ェ ッ ク ポイ ソ、. ・元気はありますか ・機嫌はいいですか ・イ ライ ラ して い ま せ ん か. ・食欲は以前と変わりないですか ・いつもとかわらない顔色ですか ・皮膚の色つや・張り具合いなどは変わりないですか ・ 目 は い き い き と輝 い て い ま す か. ・病気を思わせるような症状はないですか 気になる状態が長引くようなときには, お医者さんや保健婦さんに相談してみま しょう (パ ンフ レッ ト, 1 ペ ー ジ) ←. 子どもたちにとって, 家族はこころのよりどころです‐ 特に災害のあとには, 避難生活などによ が変わったり, 生活のリ ズムが乱れたりすることが続きます‐ ふだんと違う て家庭生活のしかた っ 生活をおくることは, 小さな赤ちゃんや幼児でさえも不安にさせます‐ 災害による保護者の方の不安や悲しみを子どもたちが敏感に感 じとり, 動揺することもあります‐ おとなたちの悲しみが長引くことは, 子どもたちのこころに大きな影響を与えるのです‐ 毎日の生活の中で, わずかでもいいですから, 家族がゆっくり話ができる時間を持つことが緊張 をほぐしてくれます‐ ゲームをしたり, 家族が一緒にお料理をつくるなど, 家族そろって共同の仕 事 を楽 しむ の も 良 い で しょ う.. 災害によって, 大切な家族をなくした子どもたちもいます‐ その苦しみや悲しみは, はかりしれ ないものがあります‐ 大切な家族を失った子どもたちに対して, 精神的に支えてくれる身近な人が親しさをこめて接す る必要があります‐ その子と一緒にすごしたり, 話し相手になったりすることは, 大きな助けとな り ま す‐. 、. ー. 子どもたちは, 家族の一員であると同時に, 社会の一員でもあります‐ ひとりの人格をもった人 間と して, 大 切 に 育 て ま しょ う‐ (パ ンフ レ ッ ト, 2 ~3 ペ ー ジ). ( 3 ) 退行 災害の時, 子どもたちはおとなと一緒にいることが多い‐ 親や教師などとともに災害を体験し, おとなの興奮状態が 、 子 どもたちに影響し, 子どもたちも同様の感情が喚起されやすい. そのため, おとなたちの興奮や恐怖が強いほど子ど もたちのそれも大きくなる. したがって, 子どもたちは親のそばにいたがり, 離れることに抵抗を示す‐ また子どもた ちはあれこれわがまま言ったり, 一人で寝ることを拒んだり, 今までなかったような反応を示すようになる‐ これは, 退行 (以前の発達段階に戻ること) と呼ばれる現象である. このような場合, 親や周囲のおとなが子どもたちを温かく 支え, 保護することによって, 子どもたちはそれぞれの年齢にふさわしい行動や対応を次第に示せるようになる‐ どもがえり 以 前 に は一 人 で で きて いた こ と が で きなく な っ た り, あま え た り しま せ ん か‐ ま た ち ょ っ と , した こと で泣 い た り, わ が ま ま が 多 く な っ た よ う な 気 が しま せ ん か. 災 害 の あ と, 子 ども たち の こ こ ろ の な か に は, 「なぜ こ ん な こ と に な っ た の だ ろ う‐ 一 「前 の. ほうが良かった‐ 」 という気持ちが生まれます‐ これは, 災害をきっかけとするおとな た ち へ の 不満のあらわれです. 145.
(9) . 藤森立男・林 春男・藤森和美. こうした不満を少しずつ行動にあらわしているのが 「子 どもがえり」 です. もし 「子どもがえ でみ て や っ て く だ さ い‐ り」 が あ っ て も, 叱 っ た り, 突 き 放 した り しな い で, 長 い 、目. 「子どもがえり」 の行動は 子どもたちのこころの どこか に恐れや不安が残っていて, 「保護」 , を求めるSOSのサイ ンなのです. 自分が優しく保護されていることがわかると, 徐々にひとり 立ちしていけるものです‐ めんどうがらず, あせらず, 温かく対応してあげましょう‐ (パ ンフ レ ッ ト, 4 ~ 5 ペ ー ジ). ( ) 生活の不規則さ 4 災害による避難生活では, それまでのルールや規則が崩れ, 興奮や緊張が持続しやすい‐ そうした状況の中で, 子ど もたちの行動に不規則で高揚した行動が出てくることに, 気づくかもしれない‐ 災害の前には見られなかったような行 動, 例えばゴミを道に投げ捨てたり, 駐車してある車に石を投げたりと, 子 どもたちは苛立ちや不安を行動化すること がある‐ この時点では, 学校生活, しつけ, 宿題などの規則正しい習慣がむしろ子どもたちに安心を与えるのである. この場合, 家族以外では学校の教師の役割が大きい‐ また学校では友人との交流もでき, 自分と同じような恐怖を体験 した友人同士の話し合いができる. 学校という場は教育や規律という面で, 子 どもたちにとって安心できる場になるのである. 災害後はなるべく早く学 校を再開する必要があり, そのための体制を普段から準備しておく べきであろう.. 学校に行きたがらなかったり, 欠席が増えていませんか‐ また, 勉強が思うように進んでいな いなどの変化も, 子どもたちにみられませんか‐ ささいなことでも何か気がつくことがあれば, 学校の先生に相談しましょう. 保護者の方と先 生がよく話し合って, 子どもがおかれている状況を正確に知ることが重要です‐ 夏休みや冬休みのように学校がお休みのときも, 学校にかわって子どもたちがいきいき生活で きるような行事をつくることを心がけてあげま しょう. (パ ンフ レッ ト, 6 ペ ー ジ). ともだ 子 どもたちにとって, ともだちとのつきあいはとても大切です‐ おとなの世界では, 復興をめ ぐってのさまざまな問題や人間関係の変化が起きることがしばしばあります. 子どもたちはおとなたちの様子に敏感になっています‐ おとなたちの深刻な問題が, 子どもた ちのともだち関係に悪い影響を与えることがないように配慮してあげてください‐ (ノミソフ レ ッ ト, 7 ペ ー ジ). 5 ) 遊び ( 「津波 ごっ こ」 「火事 ごっ こ」 災害の後に子どもたちが, 災害をテーマとした遊 びをすることがある‐ 遊びと しては- 「生き埋めごっこ」 などである‐ 怖く思いだしたくない災害体験を子 どもたちが遊びとして再現していることは, 親や おとなは容認しがたい気持ちになる‐ しかし子どもたちにとってこのような災害の遊びは, 災害体験を同化・統合するための重要な努力なのである. また 「お絵描き」 も遊びに含まれる. 子どもたちの絵には, トラウマによる退行, 願望の成就, 人体の非人間化, 身体につ いてのイメージの阻害, 現実否認, グロテスクな意識下の心象などが表現される‐ 感情や意志を言葉で表現することが 怖と無力感の一部なりとも解消するのに役立ち, 事態により良く対処 むずかしい子どもは遊戯化することによって, 恐」 する機会を与えることになる. 特に幼児期や児童期の子どもたちは災害の絵をしばしば描くことがある‐ 思春期の子どもたちには, 作文や回顧として文章化することは同様に有効である‐ さらにその絵や作文について話し 合うことは克服の手助けになる. 自分の体験を話すことが苦手な子どもたちは, その場にいて友人たちの話を聞く こと だけでも意味のあることである. ただし災害の遊びが遊ぶ楽しさを伴わないで, 演劇的に災害体験を繰り返す行動 (再演) がみられる‐ これは, トラ 146.
(10) . 北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステムの構築に関する研究. ウマをもった子どもの病的な反応の表れと推察できるため, 注意が必要である. その明確な意味あいや形態は, まだ解 明されていないが, 特に母親が被災に関連して思い悩んでいる場合などに強く反映しやすいといわれている. 一見遊び のように思われる反応なので, 気をつけていないと見逃される恐れがある‐ 重要な観点は, 子どもがそのことを遊びと して 楽 しん で いる か どうか であ る‐. 子どもたちが災害の様子を絵に描いたり, 遊びに取り入れたりしていませんか. 子どもたちは, 絵や遊びを通して不安や怖さを表現し, 災害の体験を少しずつ自分のなかで整理し, 理解しよう と して いま す‐. おとなたちは何をわざわざ 「災害ごっこ」 や 「津波遊 び」 と思いがちですが, 子どもたちは絵 や遊びを通して災害を克服し, 乗り越えようとしているのです‐ ですから禁止しないで, 子ども たちを見守ってあげてください‐ 子どもたちが自分の気持ちや願いを表現するのは, 絵や遊びに限りません‐ むちゅうになって 災害の話をする子どももいます‐ なかには, きょうだいや他の子どもたちの話を通して, 自分の 体験を乗り越える子どもたちもいます‐ 子どもたちの話に耳を傾けてください‐ 子どもたちの話を聞いたあとで, 事実にそくして災害を説明し, 子 どもたちの恐怖の原因を筋 道をたてて話してあげることが精神的な支えとなります‐ (パ ンフ レ ッ ト, 8 ペ ー ジ). ( 6 ) 安全に対する注意 災害の後は, 精神的なストレスや緊張の持続から集中力が低下し, 怪我や事故の心配がある‐ 普段通い慣れた道や遊 び慣れた場所などでも, 注意が必要である‐ 対 す る チ ェ ッ ク ポイ ン. 災害のあとには, ケガや事故が増えることがあります‐ 十分に注意しましょう‐ (水の事故) ・家のまわりの海や川は安全ですか ・工事現場の水たまりは安全ですか ・お風呂のふたはしてありますか (車の事故) ・道路で遊んでいませんか ・ シ ー ト ベ ル トや チ ャ イ ル ドシ ー トを 使 っ て い ま す か ・ 大 き な トラ ッ ク や ク レー ンに 気 を つ け て い ま す か. ・洋服や靴に蛍光テープをはっていますか ・子どもたちに安全指導をしていますか (やけど) ・ストーブは安全ですか ・アイロンの使用や保管の安全に気をつけていますか ・ポットは使用時以外は 「止」 になっていますか. (外傷) ・公園や遊び場は安全ですか ・階段やすべり台の階段に気をつけていますか (ノミソフ レ ッ ト, 9 ~ 1 0 ペ ー ジ). 147.
(11) . ′藤森和美 藤森立男・林 春男・. ( 7 ) 相談所の案内 このパ ンフ レッ トは単に情報提供にとどまらず相談 の機関を紹介することで, より実際的な効果をもたせようと配慮 をした‐ 幸いなことに, 「北海道函館児童相談所」 「南北海道教育センター」 「函館・婦人テ レホン相談」 「いのちの電話 ・札幌」 「いのちの電話・旭川」 等の協力を得ることができ, 相談窓口を提供することが可能となった‐ 2) 災害を体験したおとな向けパンフレッ トの作成と配布 また同時に我々は, 今回の地震直後から北海道庁の企画振興部・保健環境部等を訪問 し, 「被災者のス ト レス低減に )‐ 具体的には被災者のストレス対策の一貫として, おとな向けのパ ンフ 9 93 関する計画」 について提言した (藤森ら,1 2月末にそのパ ンフレッ トが印刷され, 江差・今金町保健所等に配布さ レッ トの原案を提案した. その結果,、平成5年1 れている どもについての相談は, 次のところで実施していま 名. 称. 電話番号. 相談時間. 5分 3 午前9時~午後5時1 3 8‐ 52 ‐ 2 52 北海道函館児童相談所 01 (月 ~ 金 曜 日 実 施). 5分 82 38 ‐57 ‐ 51・午前9時~午後5時1 南北海道教育センター 01 (月 ~金 曜 日実 施) 婦 人 テ レホ ン相 談. 0138‐23‐4188 午 前10時 ~ 午 後 3 時 (月 ・ 木 曜 日 実 施). い のち の 電 話 ・ 札 幌. 011‐231‐4343 24時 間 い つ で も 実 施. し・の ち の 電 話 ‐ 旭 川. 0166‐23一4343 2嫌 爺冒し・っ で も 実 施. お子さんについて, 心身ともに健やかに成長するようにご相談にのります‐ 保護者の方, 学校・幼稚園・保育所の先生など, どなたでも結構です‐ 個人の秘密は固く守られます. 相談は一切無料です‐ (パ ンフ レッ ト, 1 1 ペ ー ジ). 5. 今後の課題 1) 専門的な精神的ケアを必要とする人への支援体制の確立 パ ンフ レットによって被災者たちの状況を明確化することは, 彼らのストレスを低減する効果が期待できる. しかし 被災した人の中には, こうしたパ ンフ レットだけでは解決されない人もいる. そのためパ ンフレッ トは住民の中から専 門的な精神的ケアを必要とする人を見つけ出す働き, いわ ばスクリーニング効果を持つといえる. 専門的なケアを必要 とする人々に対しては, 必要とするケアを提供しなければならない‐ そこで, こうした専門的ケアを提供するシステム を棺山支庁管内に設立することが課題である‐ 被災者のストレスは, 災害後数年間続くといわれている‐ こうした状況 に対応するには, 個人の熱意だけでは不可能である. そのため専門的なケアを提供するためのシステムが必要となる‐. 148.
(12) . 北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステムの構築に関する研究. 2) 支援体制を作る上での問題点 災害後の心の支援体制を制度化し, 運営するためには, 検討すべきいくつかの課題が考えられる. 最後に, 支援体制 を作る上での諸問題について検討する‐ 1 ( ) 専門家が面談する場所の確保 精神的ケアの提供の中心は, 被災者とローカル ゲートキーパーの間の面談という形式をとる‐ そのためには, 被災者 が訪ねやすい場所に面談可能な場が設営される必要がある. 具体的には, 市町村の保健所, 診療所, 婦人センター等の 既存の公衆衛生・福祉施設の機能を利用する必要がでてくる‐ 特に, そのなかで市町村が果たすべき役割は大きいと考 えられる. 市町村が中心となることで, 被災者と直接接し, 専門家とのパイ プを24時間維持する連絡係を, 各市町村の 公衆衛生・福祉担当の職員 がはたしうることが重要な要素である‐ 2 ( ) ボ ラ ンティ ア の 確 保. 被災者のストレスに対処する場合, 心理学者と医師との共同体制の確立が必要である‐ 身体症状を訴えた被災者を直 接処置できるのは医師である‐ したがって, カウンセリングにあたる心理学者と医師が同席できるような状況を設営す ることが望ましい‐ それが物理的に不可能な場合であっても, 心理学者と医師との間のコミュニケーションの確保は不 可欠な要素である‐ 心理学者および医師に関してはそれぞれ, 日本心理学会あるいは日本医師会のように専門家が所属 する学術組織が存在している. こうした組織のなかで, 今後の災害に対する対策も含めて, 恒常的なボランティ ア確保 制度の整備が必要になるといえる‐ 3 ( ) 次の災害への備え 北海道南西沖地震による災害が, 最後の災害ではない. 今後の大災害にはより効率的な対応が可能なように, 制度の 整備が必要である‐ わが国では災害対策基本法によって災害後の復興活動が規定されており, 国土や財産の保全・生命 の安全・都市機能の維持等のハー ド面での対策が取られている‐ しかし, 災害が人々を襲った後, 数年間ほどの間に, 被災の際の心の傷が生活上のさまざまな側面に深刻な影響を及ぼすことが知られている‐ 特に, 子どもたちの心の問題 は予防が大切であり, 問題が表面化し, 傷口が深くなってからでは手遅れとなる‐ 人間の心の問題をもっと重視すべき であり, 災害復興対策の最重要課題とすべきである‐ 以上, 災害が人々に及ぼす影響とそれへの対策について論じてきたが, 災害の心理について情報を提供する今回の 我々の取り組みは, 被災者の心の傷を癒しうるソフト面での支援体制をわが国の災害復興対策のなかに位置づけるため の第一歩であると考えている‐. 引用文献 Bowl by l i i i l i tachmentand Los tockl t tuteof Human Re t s :Sadnes sand Depress on s ns a ons .3 Loss ‐ The Tav .1980 At - ,1 , Vo Fr i fSoc t f紙 studiesofhuman behaviorin di lo i ll ter z rks sas a s sues ‐Jouna ‐ , C‐ , & Ma , E.1954 The No ,10 ,26-41. 藤森和美・藤森立男・林 林. 春男 19 93 北海道南西沖地震被災者の心理的サポートシステム構築に関する試案. 回大会発表資料‐ 春男・藤森立男・藤森和美 1993 北海道南西沖地震の被災者のストレス低減. 北海道心理学会第40. 第12回日本自然災害学会学術講演会発表資料. Hodgk i i t fDi [ l th Ca tas t d te nson ewa r ng wi 「 ophe-A Handbook o sas rM anagement IRout edge ,P‐E‐ , & St , M.1991 Cop ,London 鑓l New York . Ho l i i i d i th tor te ty i t the sy en sae ed c s Di sas r ~l o rb ter r pr esent ed a um on Di sas ゴ ロ npos ‐ Pape , A- , Aund , A‐ , L‐ 1983 Pr , & v▽e S Psych i N t v at a a n e r o r w a f γ g y ‐ , , Newman l dr i i i lobse i fa l i te lo fPs i t t Buf t en ofd sas r :C1 n ca rva onsa o Creek r ca じ nJourna a ych 1 γ ‐ Ame , C.J .1976 Chi ‐ ,133 ,306‐316. 9 9 日本赤十字社北海道支部編 1 4 平成五年北海道南西沖地震 救護・救援活動記録集 Pa i i i i l i ISoc i l th Cr t ty and Rout r r ng wi s es sh Phycho og ca edge e y ‐ The Br , G.199O Cop . Raphae l hen Di i kes- How lnd i i dua l i i t t i th Ca tas t sas er St r v sand Commun es Cope wi r ophe- c Books ,B.1986 W’ .Bas . , New York. 藤 森 立 男 (本 学助 教授 林. 函 館 校). 春 男 (京 都 大学 防 災 研 究 所. 藤 森 和 美 (本 学非 常 勤 講 師. 助 教 授). 函 館 校). 149.
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