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〈医学教育シリーズ〉第41回日本医学教育学会大会の内容と成果

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Academic year: 2021

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(1)近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第34巻4号. 265∼269 2009. 265. 第41回日本医学教育学会大会の内容と成果 尾. 理. 第41回日本医学教育学会大会実行委員長 近畿大学医学部第2生理学教室. Ⅰ はじめに. Creating and Assessing Curricular Change at. 去る7月24日・25日大阪国際 流センターで第41 回日本医学教育学会大会を主管 として開催した. 大会の基調テーマとして, 「良き医療人の育成に向け て―その理想と現実の狭間―」を掲げた.背景に, 各大学で行われている医学教育改革の是非をめぐる 多くの議論があることを踏まえ,当該大学が歩むべ き理想像と現実の実態との乖離を埋め,改革の方向 性を示唆するような有益な大会にしたいという念願 があった.プログラムの内容は特別講演3題,教育 講演3題,シンポジウム8題,プレコングレスワー クショップ4題,日韓医学教育学会 流招請講演1 題,市民. 図. 高久 麿先生. 開講座1題, 募一般演題として口演213. 題,ポスター130題,計343題と非常に多彩な内容で あった.大会参加者は約800名であった. Ⅱ プログラム関係 本大会では近畿大学医学部の FD を兼ねて多くの 教員に発表のみならず, 座長や運営に参加して頂き, 全国の教育関係者が最新の情報を基に意見 換する 場を体験するという機会にした.特にプログラム関 係では,国内の先端的な内容のみならず世界の先端 を理解できるプログラム構成とした.この事により 本学の医学教育の位置づけができよう.従って特別. 図. Edward Krupat 教授. 講演,教育講演およびシンポジウムを網羅的に把握 して頂くと全貌が明らかになる. A 特別講演 Ⅰ:高久 麿先生 わが国の医学教育の現状と問題点」 わが国の医学教育が近年大きな進歩を遂げた事を 踏まえ,同時に改善すべき点として臨床推論能力の 弱さを指摘された.臨床実習においても,診療参加 型といえどもその内容は欧米に比べて不十 である 事を指摘された(図1A). Ⅱ:Edward Krupat 教授. 図. Dennis H. Novack 教授.

(2) 266. 尾. Harvard M edical School」 ハーバード大学で進行中のカリキュラム改革につ. 理. 問題点を幅広く取り上げた. (Ⅰ). 医学部定員増をめぐって」. いて紹介された.前回の大きな教育改革であったい. 平成21年度からほとんどの大学で定員増が行われ. わゆる New pathwayと言われる医学教育改革の経. た.この際学生増に対する教員の負担やハード面で. 験を踏まえ,今回の新たな改革では,改革の2年前. の整備などについて,裏付けになるものが担保され. から学生のデータを取り,新カリキュラム導入後の. ているかどうか問題である.具体的には基礎医学教. 2年間と比較する方法を紹介された.同時にケンブ リッジ統合臨床実習というユニークな取り組みを紹. 育,PBL テュートリアル,臨床実習などに様々な影 響が出ると思われる.これらの点について岐阜大学. 介された.これは患者中心の臨床実習で,特定の科. および和歌山医科大学の取り組みが紹介され,また. を回るというものではなく,患者が必要としている. 基礎医学研究者を養成する九州大学の取り組みが紹. 受診先の診療科を実習するというものである(図1. 介された.最後に文部科学省から卒前・卒後を一貫. B).. する医学教育を行い,医学部とその附属病院が一体. Ⅲ:Dennis. H Novack 教授 Creating physician healers: Seven Challenges of M edical Education」 良き臨床医育成のための新たな7つの挑戦につい てご講演いただいた.特に心理的なサポート体制が 重要であると指摘された.最近臨床研修医の間でメ ンタルな問題が多い理由について日米を比較された が,米国にも発生頻度が多い事に驚いた(図1C) . B 教育講演 Ⅰ:神津忠彦先生 応用 PBL(Applied PBL)―すべての学びの場 に PBL を」. 図. 神津忠彦先生. 図. 大谷 尚先生. 図. 髙階經和先生. 指摘されたのは,PBL という学習スタイルが多く の大学で導入されているものの,教育課程の一技法 として認識されているだけで,PBL の本来持つべき 要素が認識されていないという点である.学部教育 のみならず,卒後研修でも,また生涯学習にも通じ る素晴しいものである事を強調された.これにより 自律型の学生や研修医,医師,研究者などが育って いくものと思われる(図2A) . Ⅱ:大谷尚先生 質的研究とは何か―医学教育研究におけるその 可能性―」 多くの大学人が行っている量的研究とは別の,質 的研究についてその手法や意義について紹介され, 今後の医学教育研究に導入される可能性が高い事を 指摘された(図2B) . Ⅲ:髙階經和先生 どう学習するか,どう学習しないか」 学習段階として表層的,深層的および認知的とい う3つがあり,それぞれの特徴を踏まえ生涯学習に どう対応するかを示された(図2C). C シンポジウム 医学教育学会にとって最も関心の高いと思われる.

(3) 第41回日本医学教育学会大会の内容と成果. 267. となって自治体や地域医療機関と連携して医師養成. 剖体実習体験,研究室配属,MD-PhD コースあるい. を行っていく事が話された.. は COE 学生制度など色々な取り組みが行われてい. (Ⅱ). る事が紹介され,次世代の基礎研究者を養成する熱. 医師臨床研修制度をめぐる諸問題」. 上記Ⅰの定員増と関連して,卒後の医師養成の最 初のステップである臨床研修制度について厚生労働. 意一端が伺い知れた. (Ⅷ). 医学教育関連学術集会の特徴と利用法」. 省から制度の見直しの話があった.またその見直し. 最近医学教育に対する関心が非常に高くなり,同. の内容についてさらに深く検証すべきという提案が. 時に医学教育改革も多方面的に進行しているせいも. あるものの,中長期的な評価を得るには時期尚早と. あって, 医学教育関連学術集会の数が増加している.. いう意見も話された.. 本シンポジウムではそれぞれの学術集会の持つ意. (Ⅲ). 義,活動およびその成果などについて比較検討でき. 臨床倫理教育」. 臨床倫理の定義から始め,臨床倫理教育をどの段. る機会となった.聴衆はそれぞれのニーズに応じて. 階で誰がどのように教育しいかに評価するか,また. 適切な研究学術集会に参加できるきっかけを摑む事. 教育効果を判定する方法など現在直面している医療. ができた.. 倫理教育について幅広く討論された.臨床倫理教育 は単に学部内にとどまる問題ではなく,卒後も生涯. D プレコングレスワークショップ. 教育として取り組むべき課題である.. Ⅰ:「チーム基盤型学習法(TBL)を体験する」. (Ⅳ). 最近注目されている教育技法で,学生が一つのチ. Education of oriental medicine for medical students in Asian countries ―present and future―」. ームとして機能する事を指標としてクラス全体を運. 日本では東洋医学教育が静かに広く浸透し始めて. 日米の学生の大きな差は日本の学生は予習をしてこ. いるが,学部教育段階では西洋医学が圧倒的に多い. ない事にある.その欠点を認識しつつも,上手に運. 現状を踏まえ,アジア諸国における東洋医学教育へ. 営すれば魅力的な教育技法になる.64名の参加者が. の取り組みの現状と将来像について本シンポジウム. あって,大成功であった.. で討議された.香港,台湾およびマレーシアから5. Ⅱ:「初診患者に対するH&Pのポイント」. 人の演者がそれぞれの国の事情を踏まえ有益な講演. 営するものである.アメリカで導入されているが,. 初めて患者さんをみる時の基本的なH&Pの仕方. があった.. について熱心なワークショップが行われた.学生の. (Ⅴ). 臨床実習に非常に役立つ良いワークショップであっ. 地域医療教育―その後」. 本学会の第39回大会で地域医療に関する講演やシ ンポジウムを 合的に踏まえて「盛岡アピール」が. た. Ⅲ:「臨床研修指導医講習会のあり方」. 表された.そのアピールを踏まえて各大学でどの. 最近問題になっている臨床研修制度と連動してい. ように地域医療教育が取り組まれているか,につい. る臨床研修指導医の養成のための講習会をどのよう. て大学や日本医師会から報告があった.特に医師会. に運営するかを学会の FD 委員会が中心となって行. が医学教育に力を入れ, 「指導医のための教育ワーク. った.特に指導医講習会の修了証書が指導医資格と. ショップ」を行って研修医教育のみならず,医学生. して厚生労働省から認定されるようになったため,. の教育に地域の医師が取り組んでいく姿勢を示され. その質の担保をどうするかなどが参加者と一緒にな. た.. って検討された.. (Ⅵ). PBL テュートリアルの新たな可能性」. Ⅳ:「デルファイ法を質的医学教育研究に導入」. PBL テュートリアルは日本国内の約9割の大学 で導入されているが,通常の PBL テュートリアル. く われていたが,それとは別な方法でデルファイ. だけではなく新たな取り組みの中で PBL テュート. 法という合意形成を得る方法を約40名の参加者が体. リアルが果たす可能性について,教員だけではなく. 験した.当日までに参加者はメールにより意見集約. 4人の学生からも発表があった.PBL テュートリア ルの持つ意義を踏まえて今後さらに発展する可能性. を行ったが,ここには匿名性があり対面性がないの. が示唆された.. 利点がある.この方法は教育の様々な領域で応用が. (Ⅶ). 可能であり,本ワークショップの成果が出版される. 実験医学としての基礎医学教育」. 最近の医学部卒業生の進路選択状況は基礎医学系. 従来多数の意見をまとめる方法として KJ 法がよ. で周囲の参加者から影響を受けるという事が少ない. 予定である.. を無視して行われているといっても過言ではない. このような状況を打破するために基礎統合実習,解. E 一般口演,ポスター.

(4) 268. 尾. 理. 前回と同様,1演者あたり2演題までの演題応募 という制限をつけたが, 登録演題数は343題にもなっ た.口演は5会場,ポスターは3会場にわかれて行 ったが,どの会場も多数の参加者で熱気があふれ, 熱心な討論が行われた.ポスター発表には参加者が 優秀ポスターに投票して優秀ポスター賞を選ぶとい う表彰制度を導入した.その結果4名が選ばれ,表 彰状と賞品を贈呈した. F インターナショナルセッション インターナショナルセッションを学会の国際関係 委員会が中心になって行われた.評価者に医学教育. 図. 日野原重明先生. のエキスパートや海外の著名人に依頼して選 が行 われ,懇親会で表彰された.. 報が披露された.また朝の時間を利用したモーニン グセミナーとして. G 日韓医学教育学会 流招請講演. Ⅰ: 小児専門病院における専門医教育」. 高麗大学の Ahn 教授が韓国における臨床実習に ついて歴 的な側面から話し出され,現在の状況が. Ⅱ: eラーニングによる仮想模擬患者を. アメリカ型になっている事を紹介された.診療参加. Ⅲ: デジタルエイドによる基礎医学実習」. 型の臨床実習が患者さんと対話をして患者さんの情. の3つを行った.. 報を集め 析し必要な検査をオーダーして鑑別診断. Ⅲ 市民 開講座. を り込むような え方の道筋がある.そのような 事を国家試験に OSCE を導入して評価している事 が紹介された.. 用した. 臨床推論教育への試み」. 市民 開講座として,本学会の名誉会長であられ る日野原重明先生から「医師と患者との会話」と題 する講演をして頂いた (図3) .事前の参加申し込み. H ランチョンセミナー,モーニングセミナー. をした一般市民約500名の他に,本大会参加者も日野. 会場の地理的な環境から周辺に適切な飲食店がな. 原先生の素晴しい講演を堪能した.講演内容は,一. いため,参加者にランチョンセミナーに参加して頂. 般市民が医療機関に受診する前に自 の状態を振り. き昼食をとってもらう事にした.テーマとして. 返り,医師に伝えておきたい事を予めまとめておく. Ⅰ: 医の原点―日本の医学教育の現状とこれから」. ような事は,医療者にも役に立ち結果的に患者さん. Ⅱ: 3次元・4次元画像が医学教育に与えるインパ. が質の高い医療を受けやすい事になると指摘され. クト」. た.. Ⅲ: クリニカル・クラークシップとクラークシッ プ・ディレクターの役割」 Ⅳ: 臨床栄養管理における医師の役割と卒前卒後. Ⅳ 運営関係 大会終了後理事および評議員に御礼を兼ねて学会. 教育の重要性について」. 運営に関するアンケート調査を行った.大会運営に. Ⅴ: 漢方医学教育の現況と提言」. あたっては,コンベンション企業に依頼するのを. Ⅵ: チーム医療における薬剤師の役割―がん化学. PC 関係にとどめ,その他の業務の大半を本学の教 員のみならず学生や秘書さんに手伝って頂いた(図. 療法において―」 Ⅶ: Advanced OSCE による病院・地域を越えた 流 と 臨 床 能 力 評 価 の 試 み in Terumo M edical. 4) .これが学会運営にどのように影響するか気にな. Pranex」 Ⅷ: シミュレータを った技術評価・教育プログラ. きたので,これらの点に関して参加者がどのように. ムについて」. 第である.アンケート項目それぞれは 「良い」 「普通」. Ⅸ: 良き医療人とは,その妄想と現実の狭間」. っていたが,大きな問題もなく無事終了する事がで 評価しているかをアンケート調査する気になった次 「悪い」 のどれかを選び,その理由を書いて頂くとい. Ⅹ: 患者満足の医療:ケアマインドとコーチング」. う少し手間のかかるものであったが,得られた回答. の計10のランチョンセミナーを行い,それぞれの専. を 析すると次のようになった(図5).. 門家から通常のセッションでは得る事のできない情. プログラム関係では「良い」という回答が最も多.

(5) 第41回日本医学教育学会大会の内容と成果. 269. 図. 図. 大会運営に協力して頂いた皆さん. アンケート結果. かったのは,特別講演,教育講演,シンポジウム,. ンツーマンで対応するようにした.学生たちは団体. ランチョンセミナーなどで,プログラム全体の構成. で動く場合もあれば個人で動く場合(ゲストの意向. についても「良い」とする回答が最も多かった.プ. に基づいて)もあったが,非常に好感を持たれた.. ログラムのセッションの間に Intermission を入れ. ゲストが帰国後学部長宛に,学生がいかに優秀で親. たが,この事も「良い」という評価が一番多かった.. 切で手際よく通訳や案内(観光含む)を行ったか,. 運営に関して「良い」という回答が最も多かった. など様々な点で感謝するメールが多数届けられた.. のは,受付関係,スタッフの働きぶり,会場関係 (照. 換学生制度を導入しても良いという提案もみられ. 明,音声など)であった.この事は手作りの学会運. たほどである.今後が楽しみな学生たちである.. 営を目指した趣旨が参加会員諸先生方にも通じたと. 謝. 理解して喜んでいる.参加者の IT 環境を確保する ため無線 LAN を一階に張ったが,利用者には好評 であった.. 辞. 大会開催にあたり,近畿大学医学部から御支援賜った事に 厚く御礼申し上げます.また本学の多くの先生方や学生,秘書 さんにご参加して頂き誠にありがとうございました.プレコ. 会員懇親会を大会第1日目の夜,シェラトン都ホ. ングレスワークショップを含めて3日間の全行事が無事進行. テル大阪で行った.近畿大学が世界に先駆けて初め. できたのも,皆様方のご支援とご協力の賜物であり厚く御礼. て卵から養殖に成功したマグロの解体ショーも行. 申し上げる次第です.本大会が近畿大学の教員のみならず学. い,会員が情報. 生や教室運営を支える秘書さん達の FD になった事は間違い. 換する場として非常に和やかで良. い 囲気の場が持てた. Ⅴ English Support Team 海外のゲスト7名に対して,本学の学生7名をマ. なく,この点もあわせて感謝する次第です. 最後に大会運営に御協力頂いた企業に厚く御礼申し上げま す..

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