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鉄酸化細菌による硫化ニッケルのリーチング

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Academic year: 2021

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(1)

鉄酸化細菌による硫化ニッケルのリーチング

著者

甲斐 敬美, 西 誠, 西山 典洋, 高橋 武重

雑誌名

鹿児島大学工学部研究報告

34

ページ

69-72

別言語のタイトル

Leaching of Nickel Sulfide by Iron Oxidizing

Bacterium

(2)

鉄酸化細菌による硫化ニッケルのリーチング

著者

甲斐 敬美, 西 誠, 西山 典洋, 高橋 武重

雑誌名

鹿児島大学工学部研究報告

34

ページ

69-72

別言語のタイトル

Leaching of Nickel Sulfide by Iron Oxidizing

Bacterium

(3)

鉄酸化細菌による硫化ニッケルのリーチング

甲 斐 敬 美 ・ 西 誠 ・ 西 山 典 洋 ・ 高 橋 武 重

(受理平成4年5月31日)

LeachingofNickelSulfidebyIronOxidizingBacterium

TakamiKAI,MakotoNISHI,NorihiroNISHIYAMA, andTakeshigeTAKAHASHI Theleachingofnickelsulfidewascarriedoutusinganironoxidizingbacterium・Itwasfound thattheextractionofnickelsulfidewasenhancedbythebacterium・Adaptedandnon−adaptedstrains wereusedintheleachingexperiments・Theformerwasrepeatedlyculturedtoincreaseitsresistance tonickelion・Theadaptedstraingainedenergyfromnickelsulfideratherthanfromferrousionin thepresenceofthesetwosubstrates・Reversely,thenon−adaptedstrainmainlyoxidizedferrousion underthesamecondition. 緒 言 鉄酸化細菌は銅鉱山の坑内水のような酸性の環境で 成育しているバクテリアである。鉄酸化細菌の一種で あるThjo6acj伽sたrroo”dα"sは第一鉄イオンを 第二鉄イオンに酸化することによってエネルギーを得 ている。またこのバクテリアは元素硫黄や銅,ニッケ ル,亜鉛,コバルトなどの金属の硫化物を酸化する ことによってエネルギーを得ることも報告されてい る2,4,6-8)。これらの‘性質を利用すると硫化金属鉱物か ら効率的に金属を回収することが可能となる。本研究 においては,鉄酸化細菌T・たrrooxjdansによる硫 化ニッケルの浸出を行い,ニッケルイオンに対して馴 養した場合の浸出率と基質利用の選択'性について調べ た。 1 . 実 験 1 . 1 バ ク テ リ ア と 培 地 本実験で使用したバクテリアは岡山県柵原鉱山の坑 内水から採取して分離培養した鉄酸化細菌であり,T、 た7.7ooxidansがその主成分と思われる。使用した培 地は無機塩の水溶液である9K培地5)と同様の培地で あり,基質である第一鉄イオンを89/2の濃度にな るように加えた。培地のpHは10Nの硫酸を用いて 2.0に調整した。バクテリアの濃度測定はTormaの 血球計算盤を用いて光学顕微鏡により600倍の倍率で 行った。 実験には二種類の菌体を使用した。一種は通常の培 地で繰り返し培養したもので,他の種はその培地にニッ ケルイオンを添加した培地で繰り返し培養したもので ある。このときのニッケルイオン濃度は1.09/βであ る。 1 . 2 硫 化 ニ ッ ケ ル の 浸 出 実験に使用した硫化ニッケルは市販の試薬(ナカラ イテスク)である。浸出は所定濃度の第一鉄イオンお よび硫酸濃度の9K培地300Mに硫化ニッケル0.659 を加え,初発菌体濃度が5×lO6cells/2になるよう にバクテリアを加えた500m'の褐色三角フラスコで行っ た。フラスコは密栓をせずに,ガーゼを八重に折っ たもので封をし,30℃に設定した振鐙恒温槽内に設置 して浸出を行った。これは培地に酸素を供給するため である。浸出を行っている期間も硫酸によってpHを 2.0になるように調整した。浸出液のニッケルイオン の濃度および鉄イオンの濃度は溶液をサンプリングし, 原子吸光分析によって求めた。第一鉄イオンの濃度は o-フェナントロリン法によって測定し,原子吸光分 析で求めた全鉄イオン濃度との差から第二鉄イオンの 濃度を求めた。菌体を接種しない無菌対照試料には混

(4)

70 入したバクテリアの増殖を抑制するために2%チモー ル/メタノール溶液を5m'加えた。 2.結果と考察 鉄酸化細菌をニッケルイオン濃度Log/2の培地に おいて培養を行い,この濃度レベルでの順応性につい て調べた。Fig.1には7日の間隔で移しかえつつ培 養を行った場合の菌体濃度と経過時間との関係を示す。 1回目には菌体数は一度低下した後,20h後から増 加し始めている。しかし,その増殖速度は低い。移し かえを重ねるにしたがって,初期の菌体数の低下は観 察されなくなり,増殖速度も高くなった。移しかえを 20回行った試料では標準的な増殖曲線に近くなってい る。この後は増殖曲線は変化しなかったので,この濃 度のニッケルイオンについては耐性を得たと考えられ る。またFig.2には20回目において基質である第一 鉄イオンの濃度変化と酸化されて生成する第二鉄イオ ンの濃度の変化を示す。l50hで第一鉄イオンはほぼ 完全に消費され,第二鉄イオンを生成していることが わかる。 硫化ニッケルを浸出液に添加すると液相の菌体濃度 は低下する。これは硫化ニッケル表面への菌体の吸着 によるものと考えられる。吸着平衡に達するには約30 minかかった。Fig.3には初発菌体濃度と吸着した 菌体濃度との関係を示す。縦軸は吸着したとみられる 菌体数を液相の濃度に換算した値である。この図に示 すように初発菌体の約40%が硫化ニッケルに吸着して いるが,本実験の菌体濃度の範囲では飽和に達してい ないことがわかる。固相に吸着した鉄酸化細菌の活性 については不明な点が多く1.3),本研究においても液 相の菌体と固相の菌体の活性については分離した評価 は行っていない。 Fig.4はニッケルイオンで馴養した菌体を使用し て硫化ニッケルの浸出を行った場合の時間と浸出率と の関係を示す。まず,接種試料の浸出率は無菌対照試

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[戸へ、]+の①﹂函十国①﹂一○ 2 ○仁○○ 0 5 0 1 0 0 1 5 0

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Fig.2Changeinferrouandferricionconcent-ration 25 O1 blO ← 2 0

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2 [戸への戸↑の。] ▽/ZU 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 3 4 号 ( 1 9 9 2 ) △‐

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Fig.3Adsorptionofcellsonthesurfaceof nickelsulfide

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0 5 0 1 0 0 1 5 0 TimeIhl FiglRepetitionofsubculturingtoadaptto nickel

(5)

■ 71 Fig.5からわかるようにバクテリアは始めのlOOh はほとんど第一鉄を利用していない。またFig.4の 始めのlOOhにおいては接種試料の第一鉄を含む試料 も鉄を含まない試料も浸出率はほぼ等しい。このこと からも,直接作用で硫化ニッケルの溶出が進んだもの と思われる。また,以上のことからニッケルイオンに 順応させた菌体ではそのエネルギーを第一鉄イオンの 酸化よりも硫化ニッケルの酸化によって得ていると考 えられる。 Fig.6は通常の菌体を用いて硫化ニッケルの浸出 を行った結果を示す。接種試料においては第一鉄イオ ンを添加することによって浸出率が低下して,無菌対 照試料の浸出率と同等になっている。このときの第一 鉄イオンの濃度変化もFig.5に示されているが,バ クテリアは優先的に第一鉄イオンを利用して,硫化ニッ ケルはほとんど利用してない。一方,馴養を行ってい ない菌体でも第一鉄イオンが存在しなければ,硫化ニッ ケルを基質として利用し,浸出率は高くなることが Fig.6からわかる。しかし,この場合のl60hでの浸 出率は33%であり,馴養した場合の38%よりも弱冠低 い。浸出率が33%のときのニッケルイオンの濃度は 0.389/2であり,馴養を行ってない菌体でも活動に 対する抑制は大きくないためと思われる。 浸出時間と液相の菌体濃度変化との関係をFig.7 に示す。第一鉄イオンがない場合には馴養を行った場 合も行ってない場合も菌体の増加速度は低い。一方, 第一鉄イオンが存在した場合にはl60hには始めに観 0 5 0 1 0 0 1 5 0

TimeIhl

Fig、4Nickelextractionbyadaptedstrain 料の浸出率よりも高いことがわかる。l60hでの浸出 率は無菌対照試料では約28%であるのに対し,接種し た場合には38%になった。 無菌対照試料においては,鉄を含まないものと第一 鉄を含むものの浸出率はほぼ同じであり,酸による浸 出がこれらの場合では支配的と考えられる。一方,第 二鉄イオンを含む無菌対照試料では浸出初期において, 浸出速度が非常に大きい。これは第二鉄イオンによる 酸化の促進効果と考えられるが,浸出速度は急激に低 下している。これは次式のような反応で生成する元素 硫黄によって硫化ニッケルの表面が覆われたためと考 えられる。 Nis+Fe2(SO4)3→NiSO4+2FeSO‘+S(1) もしも鉄酸化細菌T、たrroo瓦dansが存在するなら ば,元素硫黄を酸化することもできるため,元素硫黄 は硫酸や亜硫酸イオンに酸化されるであろう。

Fig.5に示すように,ニッケルに順応させた菌体

の場合に第一鉄イオンを加えてもその消費量は小さく, l60h後でも69/2の濃度である。図中の曲線は通 常の培地での第一鉄イオンの消費を示し,l60h後に はほぼ完全に消費している。第一鉄イオンが酸化され てないので,Fig.4における接種試料での浸出率の 向上はおもにバクテリアの直接作用によるものと考え られる。つまりバクテリアによって次式の反応が起こっ ていると考えられる。 N i S + 2 0 2 → N i S O 4 ( 2 ) 10 0 5 0 1 0 0 1 5 0 TimeIhl Fig5ChangeinferrousionConcentration lnocuIQted ▲ ▲ferrousion ▲ ● ●ironfree

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△ □ Sterilecontrol □ 40 一一、⑦︸尚砕﹂ちCO一一O﹄↑Cの。こ○。

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■ 甲斐・西・西山・高橋:鉄酸化細菌による硫化ニッケルのリーチング ■ ▲▲

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0 5 0 1 0 0 1 5 0 Time[hl Fig6Nickelextractionbynon-adaptedstrain 72 Nomenclature 40

1

結 巨 鉄酸化細菌を用いて硫化ニッケルの浸出を行った。 硫化ニッケルの浸出率はバクテリアによって高められ ることがわかった。実験にはニッケルイオンに順応さ せた菌体と通常の菌体を使用した。基質として硫化ニッ ケルと第一鉄イオンが存在する場合には,通常のバク テリアは第一鉄を優先的に酸化利用したが,ニッケル イオンに順応させたバクテリアは硫化ニッケルを主に 酸化して利用することがわかった。 [ 謝 辞 ] 本研究の一部は平成3年度責吉奨学会の援助のもと で行われた。ここに付記して謝意を表します。また鉄 酸化細菌を提供して下さった同和工業(株)柵原鉱業 所に感謝いたします。 ● ●

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0 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 3 4 号 ( 1 9 9 2 ) 1

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0 5 0 1 0 0 1 5 0 Time[hl Fig、7Changeincellconcentrationforadapted andnon−adaptedstrains 察された菌体濃度の約10倍になっている。これらのこ とは,硫化ニッケルと第一鉄イオンを酸化するさいの 速度,反応で得られるエネルギーのどれだけを増殖の エネルギーとして利用できるかという効率などの要素 が関与してくる。 n o n -QdQpted ● ▲ CA=Equivalentcellconcentrationofadsorbed cells [g/2] C・=Initialcellconcentration [g/2]

f

1)DiSpirito,A、A、,P.R・DuganandO・H Tuovinen,Bjotec加Cl,Bjoe7zg.,23,2761(1981).

2)Donati,E、R、,P.H、Tedesco,Bjo7ecoue肌

1,303(1990). 3)Kai,T、,T、Takahashi,Y、Shirakawaand Y・Kawabata,BjothecノmoZ,Bjoe"9.,36,1105 (1990). 4)Konishi,Y、,HKuboandSAsai,Biotecノz‐ 刀oZ,Bjoeng.,39,66(1992).

5)Silverman,M.P・andLundgren,,.C、,J

BaCterjoZ.,77,642(1959). 6)Torma,A、E,,C、C、WaldenandR.M、R Branion,Biotec肋oZ,Bioe刀9.,12,501(1970). 7)Torma,AE.,G、Legault,D、Kougioumoutzakis andR・Ouellet,Ca刀.JCノzem,E729.,52,515 (1974). 8)Torma,AE・andK・Bosecker,Pro9.肋d・ McアobjoZ.,16,77(1982). △▲・○●

八五○●

A]○● LiteratureCited ▲△○●

参照

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