-43- Ⅰ はじめに 看護基礎教育における臨地実習の展開方法は, 各看護師養成機関で工夫され一律ではないが,実 習カンファレンスは概ね実施されている。臨地実 習におけるカンファレンスは,学生が自己の行動 を振り返り,看護の対象者である人の理解や必要 な看護について考えを深め,学生同士で共有しあ う機会となる教育的な場である。また,学生同士 が共感しあい,実習での不安を表出することで臨 地実習で日常にはないストレスを抱える学生の助 け合いの場ともなりグループ形成にも影響する場 でもあると考える。「看護基礎教育における臨地 実習カンファレンス」「学生カンファレンス」等 をキーワードにして医学中央雑誌(2013~2015 年)並びにweb検索した結果ヒットする先行研究 では「学生の学びからカンファレンスの意義を論 じたもの」1)2)3)や,「学生の学び獲得の要因」4)5)6) にカンファレンスが挙げられているなどその必要 性を述べている。 また,「教員のカンファレンスの工夫」11)12)13) をはじめ教員行動を対象にした研究として,「実 習カンファレンスの運営」8)9)10)に関する文献や, 「教員の役割を評価する尺度開発」17)など教員の 役割の工夫に重要性を示唆している。このよう に,実習カンファレンスの必要性や重要性,緊張 度の高い実習カンファレンス場面での教員のファ シリテータとしての役割や教育活動評価は取り上 げられている。しかし,カンファレンスの目的や 運用方法についての説明は,実習のオリエンテー ションでの実施が散見される程度で実習前にカン ファンレンスについての準備教育を実施している という報告はない。主に実際のカンファレンスの 連絡先 竹村 眞理 〒402-8580 山梨県都留市四日市場909-2 健康科学大学 看護学部 看護学科 Tel:0554-46-6600 E-mail:[email protected] 総 説
看護学実習における
学生カンファレンス準備教育について
竹村眞理
健康科学大学 看護学部 看護学科Preparatory Education for Conference in
the Clinical Nursing Practice
TAKEMURA Mari
要 旨 臨地実習におけるカンファレンスは,学生が自己の行動を振り返り,看護の対象者である人の理 解や必要な看護について考えを深め,学生同士で共有しあう機会となる教育的な場である。先行研 究では,カンファレンスの指導および実習前教育について報告したものはない。カンファレンスは 学習効果があると報告されている一方で,学生はカンファレンス開催に対してストレスを感じてい る。大学のカリキュラムは,知識の積み上げとともに論理的思考の育成に効果があるように構成さ れている。 これらを活かしたカンファレンスに対する事前教育を行う必要について考察したことを報告する。 キーワード:看護基礎教育臨地実習,臨地実習学生カンファンレンス健康科学大学 紀要 第 15 号(2019) -44- 場での体験型の指導が行われているという実態が ある。 カンファレンスによる学びの効果が大きいとい う報告の一方で,学生の苦手意識についての報告 がある。筆者は数箇所の大学教育で,様々な臨地 実習における学生カンファレンスを体験した。学 生の積極的な取り組みで行われるカンファンレン ス,学生がテーマの選択などで教員の指示を待つ カンファレンス,カンファレンステーマの絞込み に神経質になる学生の集団などカンファンレンス に対する学生の姿とカンファレンスの場面があっ た。 臨地実習を効果的に学ぶためにも,学生にとっ てカンファレンスがストレスの高いものではな く,学習の手段として理解され意欲的に取り組め るものとして認識してほしいと期待している。そ のためには,事前になんらかの準備学修が必要な のではないかと考えている。カンファレンスの要 素から準備教育について検討した内容を報告す る。 Ⅱ カリキュラム構成にみるカンファレンスの要 素 実習カンファレンスの目的は,学生が体験した 看護場面を学生・実習指導者・実習指導教員間の 意見交換を通して「看護であること」の経験とし て定着させることであると考える。 そのためには,現象から本質を抽出する論理的 思考を必要とする。さらに看護としての支援が必 要か否かを判断する看護学の視点を必要とする。 言い換えれば,人体の構造・機能学および疾病治 療学等の知識とともに看護の実践に必要な能力で あるといえる。 本学部においても,実習前にカンファレンスに ついて学生にその意義や運営方法を教授する機会 は特別に設けていない。しかし,本学はもとより 各大学のカリキュラム構成は,カンファレンスの 事前準備の視点で見るとカンファレンスに必要な 要素を1年次から積み上げている内容になってい るといえる。また,学習効果を上げるためにアク ティブラーニングの有効性が論じられる今日,各 科目の授業展開では,グループワークが取り入れ られ討論の基本やあるいはグループダイナミック スの体験を獲得できるように授業を展開してい る。 Ⅲ 臨地実習における学生カンファレンスの種類 臨地実習におけるカンファレンスの種類とし て,事例検討を通して知識の共有,情緒的な支援, 看護過程(問題解決過程)の検討がある。これらは, 卒業後の看護職者になった場合に,職場で行われ るカンファレンスに類似する内容である。そのた め,学生にはカンファレンスを看護実践にとって 必要なものとして学ぶことを期待している。また, 教員には,カンファレンス場面でファシリテータ の役割を取りながら一方では学生評価の場面でも ある。 Ⅳ 臨地実習において効果的だと考えるカンファ レンスのあり方 教員が,学生に対して実習カンファレンスを改 めて教育しているわけではないが,学生からよく 聞くカンファレンスの低い評価になる点は,着地 点がはっきりしなかった,意見交換が十分に出来 なかったというものである。学生の意見交換のイ メージは,「メンバーの意見に突っ込めない」と いうものでもあり,表層的な意見交換で自分と違 う意見を聞けても達成感を感じていないというも のである。筆者は,沈黙の続くカンファレンスに おける教員の使用するコミュニケーションスキル について調査報告をした。大沢ら7)教員の指導方 法について焦点をあて教員のファシリテータとし ての役割を抽出している。 Ⅴ 結論 実習前になんらかの準備学修が必要なのではな いかと考えている。そのために,今後以下を調査 し検討する必要がある。 1.学生カンファレンスを構成する要素 2.学生のカンファレンスに対する認識と実態 3.教員のファシリテータとしての認識と実態 臨地実習におけるカンファレンスを充実させ,
看護学実習における学生カンファレンス準備教育について -45- 学生が看護を追究する興味関心をもてる機会とし たい。 引用・参考文献 1) 高崎麗華,細谷ゆかり他:老年看護学実習における カンファレンスの学び.中国四国地区国立病院付属看 護学校紀要.9巻.2013 2) 伊藤朗子,新井祐恵他:成人看護学実習における学 生の看護実践能力への自信度と関連要因の分析 ― 学年,実習過程評価,実習環境の検討―.千里金襴 大学紀要10号.2013 3) 飯野京子,小山友里江他:看護学実習におけるがん 患者とのコミュニケーションの体験.国立看護大学 校研究紀要.2014 4) 布川藤枝,鈴木珠美他:プロセスレコードを用い, 共通の視点を意識して助言・指導することの学習効 果.日本精神科看護学術集会誌56巻2号.2013 5) 増山智子:基礎看護学実習で看護学生が看護を学ぶ 過程の分析.神奈川県立保健医療大学実践教育セン ター看護教育研究集録38号.2013 6) 大薄知美:臨地実習における看護学生の経験に関す る研究の動向2007年から2011年の成人看護学実習の 文献を中心に.神奈川県立保健医療大学実践教育セ ンター看護教育研究集録38号.2013 7) 和泉明子,大沢たか子他:臨地実習におけるカンファ レンスの実態―教員のカンファレンス実施記録の分 析を通して―.高知学園短期大学紀要第43号.2013 8) 松井剛太,七木田敦:総合保育カンファレンスの方 法とその効果―グループインタビュー法を用いた障 害児の個別支援計画作成に関して―.小児保健研究. 2005 9) 長友美穂子,松田安弘他:カンファレンスを運営す るチームリーダーの行動に関する研究.群馬県立県 民健康科学大学紀要第9巻.2014 10) 柄澤清美,中村圭子他:カンファレンスの教材化に 関する一研究―老年看護学実習でのカンファレンス 記録の分析を通して―.新潟青陵大学紀要第5号, 2005 11) 島田三鈴:成人急性期看護実習におけるカンファレ ンステーマ提示の有無による学びの検討.川崎医療 福祉学会誌vol.17 No.1. 2007 12) 坂本保子,羽入雪子:母性看護学実習におけるカン ファレンスの内容と学び.八戸学院短期大学研究紀 要第41巻.2015 13) 中西純子,岡田ルリ子他:学生にとって意味のある カンファレンスとその関連要因.愛媛県立医療技術 大学紀要第2巻 第1号.2005 14) 富川孝子,俊成春奈:実習カンファレンスのあり方 に関する研究―カンファレンステーマと病棟看護と のつながりに焦点をあてて.新潟県立大学学長特別 研究費研究報告書.2004 15) 白木裕子,松澤明美他:小児看護学実習における倫 理カンファレンスについての学生の主観的評価.日 本小児看護学会誌Vol.24 No.2.2015 16) 河内直美,松田安弘他:実習指導者からの支援を獲 得するために看護学教員が実践している教授行動― 実習目標達成に向けて―.群馬県立県民健康科学大 学紀要第11巻.2016 17) 舟島なをみ監修:看護実践教育のための測定用具ファ イル.第3版.医学書院.2016