雪氷研究大会(2020・オンライン)2020.11.16-11.18 JSSI & JSSE Joint Conference – 2020 online
1 宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター Earth Observation Research Center, Japan Aerospace Exploration Agency 2 アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター International Arctic Research Center, University of Alaska Fairbanks 3 北海道大学北極域研究センター Arctic Research Center, Hokkaido University
©2020(公社)日本雪氷学会
中央ヤクーチアにおける森林火災跡地での地盤変動の季節・経年変化
-2013 年マイヤの事例-
Seasonal and long-term ground deformation in a post-wildfire area in Central Yakutia
- A case study in Mayya, 2013 - ○阿部隆博1,岩花剛2, 3,田殿武雄1
Takahiro Abe, Go Iwahana and Takeo Tadono
1.はじめに 近年,北極陸域において森林火災が多発している. 森林火災そのものは永久凍土へ直接影響はしないが, 火災による 植生や有機物の消失は凍土荒廃を促進することになる. さらには, 凍土中に閉じ込められていた有機炭素の放出や周 囲の生態系への影響も懸念されている. 永久凍土帯における森林火災後の地盤変動は近年合成開口レーダ (SAR)によ り調べられているものの1,2), 地盤変動の季節・経年変化を詳細に調べた研究はほとんどない. そのため, 森林火災後に 凍土がどのように荒廃していくかをより理解するために, 長期的な観測データが必要である. 東シベリアの中央ヤクーチアは, エドマ層と呼ばれる含氷率の高い永久凍土帯が発達している. 近年, その融解に伴 うサーモカルストが顕著に見られ, その定量化が課題となっている. レナ川右岸の代表的な市街地であるマイヤでは, 最近干渉 SAR (InSAR)によって年間 0.5–2 cm 程度の経年的な地盤沈下が開地で起こっていることが明らかになった3). しかしながら, マイヤ周辺で発生した森林火災について, 火災後の地盤沈下を調べた例は報告されていない. そこで本 研究では, マイヤ近郊で 2013 年に発生した森林火災について, その火災後の地盤変動を調べ, 凍土がどのように荒廃 していくのかを理解するのを目的とした. 2.使用データと解析方法 本研究では地上観測点を必要とせずに昼夜や天候を問わず観測可能な SAR データを使用した. 地盤変動の季節変化 を調べるために, ESA の Sentinel-1 が取得した 2016 年 11 月から 2020 年 8 月までのデータを, 経年変化を調べるために JAXA の ALOS-2 が取得した 2014 年 10 月から 2020 年 7 月までのデータを使った InSAR 解析を行った. さらに地盤変
動の詳細な時系列変化を求めるために, ALOS-2 の InSAR 画像を用いた SBAS 解析4)を行った.
3.結果と考察
Sentinel-1 の InSAR 解析により, 季節的な沈降/隆起が明瞭に検出された. 沈降は 5 月中旬から 8 月中旬の間に, 隆起 は 10 月中旬から 12 月末に見られた. これらの変位は活動層の季節的な融解/凍上によるものだと考えられる. 一方, 8 月中旬から 10 月中旬と 12 月末から 3 月中旬にかけては変位がほとんど見られなかった. また, 3 月中旬から 5 月中旬 の間は, コヒーレンスが悪く変動を検出ができなかった. これは, 融解開始時期の地表面状態の変化によるものだと考 えられる. このため, Sentinel-1 のデータからは経年的な変化を調べることができなかった. 一方, ALOS-2 の SBAS 解析 により, 2014 年から 2020 年までの間に最大で約 7 cm の経年的な沈降が検出された. ただし, その変化は線形ではなく, 2014-2016 年までに約 5 cm 沈下し, 2016-2020 年に約 2 cm 沈下していた. 経年的に最も大きく沈降した場所は, 火災範囲内の北部にある緩やかな斜面域で, 火災強度が大きかった場所と一 致する. この場所が火災により最も多く植生が消失した結果, 日射の影響を受けて活動層が深化し, その下の永久凍土 が融解したと考えられる. また, 同じ場所で季節的な融解沈降と凍上隆起を繰り返しており, 凍上のメカニズムと地形 から考えるとそこはその周囲から土壌水分が集まりやすい場所であると推察される. ただし, その季節変化の振幅は 年々小さくなっており, これは植生の回復によって活動層が徐々に浅くなっているからと考えられる. 参考文献
1) Liu L., et al., 2014: Geophys. Res. Lett., 41, 3906–3913.
2) Yanagiya, K., and M. Furuya, 2020: Journal of Geophysical Research: Earth Surface, 125, e2019JF005473. 3) Abe, T. et al., in press: Earth Planets and Space.