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療養病床を有する一般病院におけるスキン-テアの実態

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Academic year: 2021

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(1)日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 J. Jpn. WOCM., Vol. 25, No. 1, pp37 ~ 45, 2021. 療養病床を有する一般病院におけるスキン - テアの実態 内匠 薫 1) 紺家千津子 2) 遠藤 瑞穂 3) 松井 優子 4) 平松 知子 5). 芳珠記念病院看護局 1) 石川県立看護大学看護学部 2) 公立松任石川中央病院看護部 3) 公立小松大学保健医療学部 4) 金沢医科大学看護学部 5). Epidemiology of skin tears in general hospitals with long-term care beds Kaoru Takumi, MSN, RN1); Chizuko Konya, PhD, RN, WOCN2); Mizuho Endou, MSN, RN, WOCN3); Yuko Matsui, PhD, RN4)and Tomoko Hiramatsu, PhD, RN5). Department of Nursing, Houju Memorial Hospital1) School of Nursing, Ishikawa Prefectural Nursing University2) Department of Nursing, Public Central Hospital of Matto Ishikawa3) Faculty of Health Sciences, Komatsu University4) School of Nursing, Kanazawa Medical University5). Abstract The present study investigated the prevalence of skin tears(tears), their estimated incidence, and the circumstances of patients with tears in general hospitals with long-term care beds. General hospitals with long-term care beds in Prefecture A were surveyed on one, randomly selected day. A nurse responsible for the survey at the institution with knowledge about tears identified the injuries and recorded information about the hospital and patients. The analysis included bed classification and the presence or absence of tears and wound, ostomy, and continence nurses(WOCN). Nine hospitals participated, with 1,626 patients in 390 regular beds and 1,236 long-term care beds. Sixteen patients had tears, making the prevalence of tears 0.98%. Tears were found in three patients in regular beds and ten patients in long-term care beds, for a total, estimated incidence of 0.80%. The prevalence of tears was two of 632 patients in hospitals with a WOCN and 11 of 994 連絡先(Corresponding author):内匠 薫 芳珠記念病院看護局 〒 923-1226 石川県能美市緑が丘 11-71. 内匠 薫(3441-15) 受理日:2020 年 7 月 10 日 採択日:2020 年 12 月 23 日. ― 37 ―.

(2) 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 25 巻 1 号(2021). patients at hospitals without a WOCN, showing a tendency towards a lower incidence at hospitals with a WOCN (p=0.081) . At hospitals with a WOCN, tears resulted from the patients’ own actions while at hospitals without a WOCN, tears resulted from both the patient’s actions and care by medical staff. Our findings showed that the presence of a WOCN with expertise in preventing tears may help reduce their incidence. Key Words:skin tears, long-term care beds, general beds, prevalence, certified wound ostomy continence nurse 要 旨 本研究では療養病床を有する一般病院のスキン - テア(以下、テア)の有病率、推定発生率ならびに保有者の実態を 調査した。 A 県内の療養病床を有する一般病院において、調査日は任意に設定した 1 日とした。テアの知識のある施設の調査 担当者がテアを同定し、施設とテア保有者の情報を調査用紙に記入した。分析は、病床区分別、皮膚・排泄ケア認定 看護師(以下、WOCN)在職の有無別で行った。 9 施設より調査協力が得られ、 全患者数は 1,626 名、一般病床 390 名、療養病床 1,236 名であった。テア保有者は 16 名で、 有病率は 0.98%であった。自施設内発生者は一般病床 3 名と療養病床 10 名の計 13 名で、推定発生率は 0.80%であった。 自施設内発生者は WOCN の在職施設は 632 名中 2 名、不在施設は 994 名中 11 名と、発生者は WOCN 在職施設のほう が少ない傾向を認めた(p = 0.081) 。テアの発生場面は、WOCN 在職施設では患者自身の行動のみであったが、不在 施設では患者自身の行動以外に医療者のケアがあった。 テアの予防ケアに精通した WOCN が在職することは、発生低減に貢献する可能性が示唆された。 キーワード:スキン - テア、療養病床、一般病床、有病率、皮膚・排泄ケア認定看護師 13/1,000 人日で 6)、3 ヵ月間の四肢に生じた累積発生率. はじめに. は 3.8%との報告がある 7)。さらに、1 つの介護老人福祉. 本邦では 2013 年に日本創傷・オストミー・失禁管理. 施設における 1 年間の発生率は 9.7%であったという報. 学会が超高齢社会で増加してきたスキン - テア(以下、. 告もある 8)。これらは、それぞれ 1 施設の報告であるため、. テア)に注目し、その予防と管理の標準化を図る活動が. 施設の特徴が発生率に影響を及ぼす。そのため、有病率. 始められた。その活動の 1 つとして、2014 年にストー. の最も高かった療養病床を有する一般病院の多施設にお. マ療法看護師(以下、ET)と皮膚・排泄ケア認定看護. いて調査を行い、発生率の実態を把握する必要がある。. 師(以下、WOCN)が在職している 257 施設を対象と. 加えて、テアのケアについては、2015 年にテアの予. した実態調査では、有病率は 0.77%で、施設の種類別で. 防と管理に関するベストプラクティスが刊行されたた. 最も有病率が高かったのは療養病床を有する一般病院の. め 9)、予防ケアの実施は標準化されつつあると想定され. 1.26%であった 1)。2018 年には WOCN が在職している. る。しかし、ベストプラクティス刊行後の療養病床を有. 一般病院の 1 施設における有病率は、0.88%であったと. する一般病院のテアの実態については報告されていな. 2). いう報告がある 。一方、国外の有病率は 4.6 ~ 22%と いう報告があり. 3)4). 、本邦の有病率は国外と比較して低. い。さらに、WOCN 在職によるテアの予防効果を検討 した報告はない。. い。しかし、本邦における調査は ET と WOCN という. したがって、ベストプラクティス刊行後の WOCN 在. スキンケアを専門とする看護師が在職していた施設のみ. 職施設にて最もテアの有病率の高かった療養病床を有す. を対象としており、WOCN 不在施設の有病率は不明で. る一般病院のテアの実態と、WOCN 在職の有無との関. ある。. 連を明らかにする必要がある。. テアの発生率については、国外の長期療養施設では、. 目 的. 米国は 2.23%であったと報告されている 5)。本邦では、 療養病床を有する一般病院 1 施設の 8 ヵ月間の発生率は. 本研究の目的は、療養病床を有する一般病院の有病率、. ― 38 ―.

(3) 推定発生率ならびにテア保有者の実態を明らかにするこ. いる方法 10)に準拠して、全体と病床区分別、年齢層別. とである。さらに、病床区分別、WOCN 在職の有無別. で算出した。日本創傷・オストミー・失禁管理学会の実. の特徴を見出すことである。. 態調査の有病率が小数点第 2 位まで提示されていたた め、本研究でも有病率と推定発生率は小数点第 2 位まで. 方 法. 表記した。病床区分別と WOCN 在職の有無別に、テア. 1.対象者. の保有者や自施設内発生者の割合を比較した。これらの. 療養病床を有する一般病院に入院中のテアを有する患. 比較には、χ 2 検定、フィッシャーの正確確率検定を用. 者とした。なお、調査施設の選定は、A 県の療養病床. いた。その後、先の比較にて特徴がみられた場合には、. を有する一般病院に、WOCN 在職の有無によって調査. その分別でテア保有者の情報を分析した。なお、統計ソ. 施設数に隔たりがないよう、非常勤を含む WOCN 在職. フトは SPSS ver.23(IBM)を用い、有意確率が 0.05 未. の有無の情報を得るために機縁法により選出した。. 満を有意差あり、0.1 未満を傾向ありとした。. 2.調査期間. 6.倫理的配慮. 2018 年 2 月~ 3 月までの期間で、調査施設が任意に. 金沢医科大学臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実. 設定した 1 日を調査日とした。. 施した(整理番号 I240) 。さらに、調査施設ごとに、院. 3.調査方法. 長の同意を得た。なお、対象となる患者とその家族には、. 調査施設の看護部長に、本調査担当者として、テアに. オプトアウトにより、当該研究の研究目的や方法などを. 関する知識がある看護師の選出を依頼した。調査担当者. 情報公開文書にて調査病院の掲示板に公開し、情報が利. には、研究者らがテアの同定方法について十分な説明を. 用されることを拒否できる機会を保障した。掲示期間は. 行った。内容は、ベストプラクティス スキン - テア(皮. 調査日を含む 2 ヵ月間とした。. 膚裂傷)の予防と管理. 9). に基づいて行い、 ①テアの定義、. 結 果. ②テアの具体例、③テアの除外例、④テアと判断しない 創傷例、⑤創の評価について(STAR 分類)である。. 1.調査施設の概要(表 1). 調査日は、病棟看護師が入院患者全員の全身の皮膚の. A 県内の療養病床を有する一般病院 11 施設に協力依. 観察を行い、テアの同定はせずに創傷のあるすべての対. 頼を行い、9 施設より研究協力を得た。. 象者を調査担当者に報告した。なお、WOCN 不在施設. 施設の種類は、一般病床と療養病床をもつ施設が 5 施. の皮弁のない創傷については、ほかの創傷と混同する可. 設(55.6%)、療養病床のみが 4 施設(44.4%)であった。. 能性があるため、研究者が調査施設に創の情報を確認し. 病床数は、全体では 101 ~ 200 床が 3 施設(33.3%)で. て同定した。. 最も多く、一般病床では 0 床と 1 ~ 100 床が各 4 施設. なお、1 ヵ所でもテアのある患者をテア保有者とした。 4.調査項目 2014 年のテアの実態調査. (各 44.4%)、療養病床では 1 ~ 100 床が 4 施設(44.4%) で最も多かった。非常勤を含む WOCN が在職している. 1). を参考に、以下の項目を. 施設は、4 施設(44.4%)であった。. 含む調査用紙を作成し、調査担当者が記載した。. 2.テアの有病率と推定発生率. 1)施設の情報. 調査協力施設の全患者数は 1,626 名で、一般病床 390. 施 設 の 種 類、 病 床 数( 一 般 病 床 数、 療 養 病 床 数 ) 、. 名、療養病床 1,236 名であった。年齢は、65 歳未満が. WOCN の在職の有無を項目とした。. 104 名、65 歳以上 75 歳未満が 231 名、75 歳以上が 1,291. 2)テア保有者の情報. 名であった。テア保有者は 16 名であり、そのうち自施. 保有者の概要は、年齢、性別、障害高齢者の日常生活. 設内発生者は一般病床 3 名と療養病床 10 名の計 13 名で. 自立度、麻痺、関節拘縮、ブレーデンスケール、栄養状. あった。. 態、テアの既往の有無、疾患名、治療とした。. 1)全病床および病床区分におけるテアの有病率(表 2). テアについては、テアの発生部位、テアの状態(複数. 有病率は、全病床の全体では 0.98%で、年齢層別では. 部位ある場合は、 サイズが最大のもの) 、 周囲皮膚の状態、. 65 歳未満が 0.00%、65 歳以上 75 歳未満は 0.87%、75. テアの発生状況とした。. 歳以上は 1.08%であった。一般病床の全体では 1.54%. 5.分析方法. で、年齢層別では 75 歳以上が 1.79%で最も高かった。. 全調査項目について、記述統計を行った。テアの有病. 療養病床の全体では 0.81%で、年齢層別では 75 歳以上. 率と推定発生率の算出は、日本褥瘡学会が褥瘡で用いて. が 0.89%で最も高かった。. ― 39 ―.

(4) 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 25 巻 1 号(2021). 表 1 施設の概要(n=9) 分類 施設種類 病床数. 施設数 一般病床と療養病床 療養病床のみ 全体. 1 ~ 100 床 101 ~ 200 床 201 ~ 300 床 301 ~ 400 床 401 ~ 500 床. 一般病床. 0床 1 ~ 100 床 101 ~ 200 床. 療養病床. 1 ~ 100 床 101 ~ 200 床 201 ~ 300 床 301 ~ 400 床 401 ~ 500 床. WOCN 在職の有無(非常勤含む). あり なし. %. 5 55.6 4 44.4 2 22.2 3 33.3 2 22.2 1 11.1 1 11.1 (median 199 床) 4 44.4 4 44.4 1 11.1 (median 99 床) 4 44.4 3 33.3 1 11.1 0 0.0 1 11.1 (median 120 床) 4 44.4 5 55.6. 表 2 年齢層別、全病床・病床区分別のスキン - テア有病率・推定発生率 病床. 対象. 患者数. 保有者数. 全病床. 全体 65 歳未満 65 歳以上 75 歳未満 75 歳以上. 1,626 104 231 1,291. 16 0 2 14. 0.98 0.00 0.87 1.08. 13 0 2 11. 0.80 0.00 0.87 0.85. 一般病床. 一般病床全体 65 歳未満 65 歳以上 75 歳未満 75 歳以上. 390 36 74 280. 6 0 1 5. 1.54 0.00 1.35 1.79. 3 0 1 2. 0.77 0.00 1.35 0.71. 療養病床全体 65 歳未満 65 歳以上 75 歳未満 75 歳以上. 1,236 68 157 1,011. 10 0 1 9. 0.81 0.00 0.64 0.89. 10 0 1 9. 0.81 0.00 0.64 0.89. 療養病床. 有病率(%). p=0.237. 発生者数. 推定発生率(%). p=1.000. フィッシャーの正確確率検定. 一般病床と療養病床のテア保有者の割合には、有意差. 一般病床と療養病床の自施設内発生者の割合には、有. はなかった(p = 0.237) 。. 意差はなかった(p = 1.000)。. 2) 全病床および病床区分におけるテアの推定発生率(表. 3)WOCN 在職の有無別テア保有者数と自施設内発生. 2). 者数の比較(表 3). 推定発生率は、全病床の全体では 0.80%で、年齢層別. テア保有者は、WOCN が在職している施設(以下、. では 65 歳以上 75 歳未満が 0.87%、75 歳以上が 0.85%. WOCN 在職施設)では 5 名(0.79%)で、WOCN が在. であった。一般病床の全体では 0.77%で、年齢層別では. 職していない施設(以下、非 WOCN 在職施設)では 11. 65 歳以上 75 歳未満が 1.35%で最も高かった。療養病床. 名(1.11%)と、WOCN 在職の有無では有意差はなかっ. の全体では 0.81%で、年齢層別では 75 歳以上が 0.89%. た(p = 0.530)。自施設内発生者は、WOCN 在職施設で. で最も高かった。. は 2 名(0.32%)、非 WOCN 在職施設では 11 名(1.11%). ― 40 ―.

(5) 表 3 WOCN 在職の有無別スキン - テアの比較 WOCN 在職(n=632). 患者数. 非 WOCN 在職(n=994). 人数. %. 人数. %. 5 2. 0.79 0.32. 11 11. 1.11 1.11. 保有者数 a) 発生者数 b). p値 0.530 0.081. a):χ 2 検定 b):フィッシャーの正確確率検定. 表 4 スキン - テア保有者の概要(n=16) 患者数 or median. % or range. 87 9/7 10 2 4 7/9 7/9 12 18.0 7 3 1 7 6 12/4. 73-99 56.2/43.8 62.5 12.5 25.0 43.8/56.2 43.8/56.2 7-17 12.7-24.7 43.8 18.8 6.3 43.8 37.5 75.0/25.0. 循環器系の疾患 精神および行動の障害 呼吸器系の疾患 内分泌、栄養および代謝疾患 筋骨格系および結合組織の疾患 感染症および寄生虫症 皮膚および皮下組織の疾患 神経系の疾患 血液および造血器の疾患ならびに免疫機構の障害 腎尿路生殖器系の疾患. 12 5 4 4 4 2 2 1 1 1. 75 31.3 25.0 25.0 25.0 12.5 12.5 6.3 6.3 6.3. 症状、徴候および異常臨床 ・ 検査所見で ほかに分類されないもの. 1. 6.3. 5 4 1 1 0. 31.3 25.0 6.3 6.3 0.0. 年齢(歳) 性別 日常生活自立度. 麻痺あり / なし 関節拘縮あり / なし ブレーデンスケール BMI 最近 3 ~ 6 ヵ月間の体重減少率 (不明はのぞく) 最近 5 日間の栄養摂取状態 (不明はのぞく) スキン - テア既往あり / なし 疾病分類(複数回答). 男性 / 女性 C2 C1 B2. 合計点(点) (kg/m2) 5%未満 5 ~ 10% 10%以上 不十分 十分. 治療状況(複数回答) 抗凝固薬 ステロイド薬 がん薬物療法 人工透析療法 放射線療法. と、WOCN 在職施設は非 WOCN 在職施設より発生者. 排泄、食事、着替において介助を要し、自力で寝返りを. 数が少ない傾向を認めた(p = 0.081) 。. うてない状態」のランク C2 が 10 名(62.5%)で最も多. 3.テア保有者の概要(表 4). かった。麻痺ありと関節拘縮ありは各 7 名(各 43.8%). 全病床のテア保有者の年齢の中央値 は 87 歳で、性別. であった。ブレーデンスケールの合計点の中央値は 12. は男性 9 名(56.2%) 、女性 7 名(43.8%)であった。障. 点、BMI の中央値は 18.0 kg/m2 であった。最近 3 ~ 6 ヵ. 害高齢者の日常生活自立度は、 「日中ベッド上で過ごし、. 月間の体重減少率では 5%未満が 7 名(43.8%)、最近 5. ― 41 ―.

(6) 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 25 巻 1 号(2021). 表 5 スキン - テアの発生部位、状態、周囲皮膚の状態 自施設内発生(n=13) 全体(n=16). WOCN 在職施設 (n=2). 非 WOCN 在職施設 (n=11). 部位数 or median. % or range. 部位数 or median. % or range. 部位数 or median. % or range. 7 2 2 1 1 1 1 1. 43.8 13.7 13.7 6.3 6.3 6.3 6.3 6.3. 1 0 1 0 0 0 0 0. 50.0 0.0 50.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0. 4 1 1 1 1 1 1 1. 36.7 9.1 9.1 9.1 9.1 9.1 9.1 9.1. 左前腕外側 右前腕外側 右肘部外側 右上腕内側 右前腕内側 右手背 左手背 左下腿後面. サイズ 0.6 (長径(cm)×長径と直交する最大径(cm)) STAR 分類 カテゴリー 1a 5 カテゴリー 1b 5 カテゴリー 2a 0 カテゴリー 2b 2 カテゴリー 3 4. 0.02-3.8. 0.2. 0.1-0.3. 1.3. 0.2-3.8. 31.3 31.3 0.0 12.5 25.0. 0 2 0 0 0. 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0. 4 2 0 2 3. 36.7 18.2 0.0 18.2 27.3. 87.5 50.0 43.8 31.3 25.0 12.5 6.3 6.3 6.3. 1 0 2 2 0 0 1 1 0. 50.0 0.0 100.0 100.0 0.0 0.0 50.0 50.0 0.0. 10 6 3 3 4 1 0 0 0. 90.9 54.5 27.3 27.3 36.7 9.1 0.0 0.0 0.0. 周囲の皮膚状態 乾燥 ティッシュペーパー様 浮腫 斑状紫斑 鱗屑 瘢痕 血腫 その他の紫斑 色素脱失. 14 8 7 5 4 2 1 1 1. 日間の栄養摂取状態では不十分が 7 名(43.8%)で最も. 態は、乾燥が 14 部位(87.5%)、ティッシュペーパー様. 多かった。テアの既往ありは 12 名(75.0%)であった。. が 8 部位(50.0%)、浮腫が 7 部位(43.8%)、斑状紫斑. 疾病分類では循環器系の疾患が 12 名(75.0%) 、治療状. が 5 部位(31.3%)、鱗屑が 4 部位(25.0%)であった。. 況では抗凝固薬の使用が 5 名(31.3%)で最も多かった。. WOCN 在職の有無別では、WOCN 在職施設で発生し. 4.テアの状態. た 2 部位の発生部位は左前腕外側と右肘部外側で、サ. テアの発生場所は、自施設内 13 名(81.3%)、在宅 2. イズの中央値は 0.2 であった。STAR 分類では、2 部位. 名(12.5%)と自施設外の病院 1 名(6.3%)であった。. ともカテゴリー 1b で、テアの周囲皮膚の状態は、浮腫. これらの 16 名のテアを、これ以降全テアとする。また、. と斑状紫斑が各 2 部位(100.0%)であった。非 WOCN. テアの発生者割合に WOCN 在職施設と非 WOCN 在職. 在職施設で発生した 11 部位の発生部位と最大サイズ. 施設では特徴がみられた。以後、施設別のテアの発生状. は、左前腕外側が 4 部位(36.7%)と最も多く、サイズ. 況を比較した結果について述べる。. の中央値は 1.3 であった。STAR 分類では、カテゴリー. 1)テアの発生部位と状態(表 5). 1a が 4 部位(36.7%)、カテゴリー 3 が 3 部位(27.3%). 全テアの発生部位は、16 部位中、左前腕外側が 7 部. と多かった。テアの周囲皮膚の状態は、乾燥が 10 部位. 位(43.8%)で最も多かった。算出したサイズの中央値. (90.9%) 、ティッシュペーパー様が 6 部位(54.5%)、鱗. は、0.6 であった。STAR 分類では、カテゴリー 1a、1b. 屑が 4 部位(36.7%)であった。. が各 5 部位(各 31.3%)であった。テア周囲の皮膚の状. ― 42 ―.

(7) 表 6 スキン - テアの外力発生状況 自施設内発生(n=13) 全体(n=16). WOCN 在職施設 (n=2). 非 WOCN 在職施設 (n=11). 患者数. %. 患者数. %. 患者数. %. 5 0. 31.3 0.0. 2 0. 100.0 0.0. 1 0. 9.1 0.0. 体位変換・移動介助 4 入浴・清拭等の清潔ケア介助 2 更衣の介助 2 不明 3 発生の起因にかかわった人(複数回答) 患者 5 看護師 4 看護補助者・介護職員 4 作業療法士 1 不明 4. 25.0 12.5 12.5 18.8. 0 0 0 0. 0.0 0.0 0.0 0.0. 4 2 1 3. 36.4 18.2 9.1 27.3. 31.3 25.0 25.0 6.3 25.0. 2 0 0 0 0. 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0. 1 4 4 1 3. 9.1 36.4 36.4 9.1 27.3. 外力発生状況 患者行動 物にぶつかる 痙攣・不随意運動 管理状況. 2)外力の発生状況(表 6). 既往)が加わった 11)。本調査はこの診療報酬改定前の. 全テアの外力の発生状況を患者行動と管理状況に分け. 実態である。そのため、本調査は入院患者全員がテアに. てみると、物にぶつかるが 5 部位(31.3%)であった。. 関してアセスメントされる前の実態であるため、診療報. 管理状況で発生したテアは、体位変換・移動介助が 4 部. 酬改定後の実態と比較する資料となりうる。以下に、調. 位(25.0%) 、清潔ケア介助と更衣の介助が各 2 部位(各. 査結果について考察する。. 12.5%)で、不明が 3 部位(18.8%)であった。テア発. 1.テアの有病率と推定発生率. 生の起因にかかわった人は、患者が 5 名(31.3%) 、看. テアの有病率については、年齢層別では、全病床、一. 護師と看護補助者・介護者と不明が各 4 名(各 25.0%). 般病床、療養病床において、65 歳以上 75 歳未満より、. の順で多かった。. 75 歳以上の数値が高く、2014 年に ET、WOCN が在職. WOCN 在職の有無別では、WOCN 在職施設で発生し. している施設における全国規模の実態調査(以下、全国. た 2 部位は、患者行動の物にぶつかるのみであった。非. 調査)においても、全施設では 65 歳以上 75 歳未満の. WOCN 在職施設の 11 部位は、患者行動の物にぶつか. 0.55%より 75 歳以上の 1.65%のほうが高かった 1)。した. るが 1 部位(9.1%) 、管理状況では、体位変換・移動介. がって、加齢は国外でも発生要因として報告されている. 助が 4 部位(36.4%) 、清潔ケア介助が 2 部位(18.2%)、. が 12)、療養病床を有する一般病院でもリスクとなりう. 更衣の介助が 1 部位(8.1%)で、不明が 3 部位(27.3%). るため、患者の年齢に留意してテア予防を図る必要があ. であった。発生の起因にかかわった人は、WOCN 在職. るといえる。. 施設では患者が 2 名(100.0%)で、非 WOCN 在職施設. テアの推定発生率は、年齢層別では、65 歳以上 75 歳. では看護師と看護補助者・介護者が各 4 名(各 36.4%). 未満は 0.87%、75 歳以上は 0.85%であったことより、. と最も多かった。. 0.02%の差しかなかった。 病床別と WOCN 在職の有無別で、一般病床と療養病. 考 察. 床のテア保有者数、自施設内発生者の割合を比較すると、. 2014 年に WOCN 在職施設を対象にした全国調査が行. WOCN 在職施設と非在職施設におけるテア保有者の割. われて以来、多施設におけるテアの実態は報告されてい. 合を比較しても有意な差はなかった。ただし、発生者の. ない。特に療養病床を有する一般病院にて WOCN の不. 割合では、WOCN 在職施設は非 WOCN 在職施設より. 在施設を含めたテアの実態は、本調査が本邦初の報告で. 自施設外発生者が少ない傾向を認めた。また WOCN 在. ある。また、2018 年 4 月の診療報酬改定で、褥瘡に関. 職の療養病床においては自施設内発生者、保有者ともに. する危険因子の評価指標に皮膚の脆弱性(テアの保有、. 0 名であった。WOCN の在職することによるテアに対. ― 43 ―.

(8) 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 25 巻 1 号(2021). するケア効果として、テアが普及する前の 2014 年の調. 生状況となっていた。本来、清潔ケア介助や体位変換・. 査にて WOCN 在職施設の 87.1%にテア指導がなされて. 移動介助というケアは、患者の療養生活を整えるために. 1). いたという報告がある 。このことより、WOCN が施. 行われるケアである。したがって、ケアによってテアと. 設に在職することは、テアの予防によい効果を及ぼして. いう創傷を医療者が発生させることは避ける必要があ. いる可能性がある。. る。管理状況下で発生に関与した人は、看護師だけでは. 2.テア保有者の特徴. なく、介護補助者・介護職員、作業療法士であった。た. 療養病床を有する一般病院のテア保有者は、年齢の中. だし、WOCN 在職施設の外力の発生状況については、. 央値が 87 歳の高齢者で、日常生活自立度は、 「1 日中ベッ. すべて患者行動によるものであったため、多職種にもテ. ド上で過ごし、排泄、食事、更衣において介助を要し、. ア予防が浸透していると考えられる。. 自力で寝返りをうてない状態」のランク C2 が 62.5%を. 4.本研究の限界と今後の課題. 占め、ブレーデンスケールの合計点の中央値は 12 点で. 本研究の限界は、機縁法にて A 県内 9 施設を調査施. あった。ブレーデンスケールのカットオフポイントは、. 設に選出したことである。療養病床を有する一般病院の. 13). 。これらより、テア保有者. WOCN 在職施設は、A 県内全 4 施設の調査協力を得ら. の特徴としては、加齢による身体変化があり、寝たきり. れた。しかし、WOCN 不在の施設は 5 施設と限られて. で褥瘡が発生しやすい患者といえる。なお、本邦の調査. いるため、データに偏りが生じている可能性がある。そ. 研究でも、ブレーデンスケールの合計点の低い患者はテ. のため、結果を一般化するにはさらに対象者を増やして. 国内では 14 点以下である. 7). アの発生リスクが高いという報告があり 、同様の結果. 調査を行う必要がある。. である。さらに、テアの既往ありが 75.0%を占めていた。. 今回の調査により、テア保有者の特徴を述べたが、テ. また、全国調査でも、発生要因としてテアの既往ありの. アを保有していない患者、発生していない患者とは比較. 報告があるが、全国調査の 42.8%と比較しても高い。し. していない。そのため、導き出された特徴は、発生要因. たがって、療養病床を有する一般病院では、テアの既往. とはいえない。したがって、今後は発生要因を抽出する. ありと判断した場合には、再発予防に向けて入念な予防. 課題が残されている。. ケアを講じる必要があるといえる。. 結 論. 3.テアの状態 テアの発生の外力の状況で先行研究と異なるのは、. 療養病床を有する一般病院 9 施設にて、WOCN の在. テープの剝離時であった。全国調査ではテープ剝離時が. 職の施設に限定せずにテアの実態を明らかにした。. 最も多く、そのテープ固定をした目的は点滴固定が最多. 1.テアの有病率は 0.98%で、推定発生率は 0.80%であっ. であった. 14). 。しかし、本結果には、テア発生の外力の. た。. 状況にテープの剝離時は含まれていなかった。全国調査. 2.WOCN 在職の施設ではテア発生者が 0.3%で、非. の対象施設は、療養病床を有しない一般病院、大学病院、. WOCN 在職施設より発生者が少ない傾向があった。. 国立病院が 83.2%を占めており、これらの施設は急性期. 3.テアの発生状況は、WOCN 在職施設では、患者自. 医療が主である。一方、療養病床を有する一般病院は、. 身の行動によってのみ発生していたが、非 WOCN 在職. 急性期医療より慢性期医療が主となり、必然的に点滴療. 施設では医療者のケアによっても発生していた。. 法の実施も少ないためと考えられる。. これらより、テアの予防ケアに精通した WOCN が施. テア周囲皮膚については、WOCN 在職施設では、非. 設内に存在することは、発生低減に貢献する可能性が示. WOCN 在職施設と同様に、乾燥の割合は 80.0%以上で. 唆された。. あった。さらに、非 WOCN 在職施設では、テアの周囲 皮膚がティッシュペーパー様を 50%以上の部位に認め. 利益相反:なし. ていた。したがって、療養病床を有する一般病院では高. 文 献. 齢な患者という特性もあるが、保湿ケアの不足や、栄養. 1)紺家千津子,溝上祐子,上出良一,他.ET/WOCN. 状態の管理が不十分である可能性がある。 外力の発生状況については、WOCN 在職施設では患. の所属施設におけるスキン - テアの実態調査.日創. 者行動によるもので、自らの行動がテア発生となってい. 傷オストミー失禁管理会誌 19:351-363, 2015.. た。一方、非 WOCN 在職施設では患者行動のほかに、. 2)里岡由希,木村健作.当院のスキン - テアの実態調. 清潔ケア介助や体位変換・移動介助というケアがテア発. ― 44 ―. 査と予防ケアへの取り組みと課題.三菱神戸病院誌.

(9) 8:39-46, 2018.. 禁管理会誌 20:43-48, 2016.. 3) Skiveren J, Wahlers B, Bermark S. Prevalence of skin tears in the extremities among elderly residents at a nursing home in Denmark. J Wound Care 26:S32-S36, 2017. 4) LeBlanc K, Christensen D, Cook J, et al. Prevalence of skin tears in a long-term care facility. J Wound Ostomy Continence Nurs 40:580-584, 2013. 5) Payne RL, Martin ML. The epidemiology and management of skin tears in older adults. Ostomy/ Wound Management 26:26-37, 1990. 6) Koyano Y, Nakagami G, Iizaka S, et al. Skin property can predict the development of skin tears among elderly patiaents: a prospective cohort study. Int Wound J 14:691-697, 2017. 7)Sanada H, Nakagami G, Koyano Y, et al. Incidence of skin tears in the extremities among elderly patients at a long-term medical facility in Japan: a prospective cohort study. Geriatr Gerontol Int 15: 1058-1063, 2015. 8)古川智恵.介護老人保健施設におけるスキンテア 発生の関連要因の検討.癌と化学療法 46:154-156, 2019. 9)紺家千津子,溝上祐子,上出良一,他.スキン - テ アの概要.ベストプラクティス スキン - テア(皮 膚裂傷)の予防と管理(一般社団法人日本創傷・オ ストミー・失禁管理学会 編) ,6-8,照林社,東京, 2015. 10) 日 本 褥 瘡 学 会. (2012 年 9 月 ) .日本褥瘡学会で 使 用 す る 用 語 の 定 義 ・ 解 説.2019 年 2 月 20 日, http://www.jspu.org/jpn/journal/yougo.html#30. 11) 厚 生 労 働 省. (2018 年 2 月 ) . 平 成 30 年 度 診 療 報 酬 改 定 に つ い て.2019 年 2 月 10 日,https:// www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf 12) LeBlanc K, Baranoski S, Tear Consensus Panel Members. Skin tears: state of the science: consensus statements for the prevention, prediction, assessment, and treatment of skin Ⓒ tears . Adv Skin Wound Care 24:2-15, 2011.. 13)真田弘美,金川克子,稲垣美智子,他.日本語版 Braden Scale の信頼性と妥当性の検討.金沢大医 療技短大紀 15:101-105, 1991. 14)紺家千津子,溝上祐子,上出良一,他.医療用テー プによるスキン - テアの実態.日創傷オストミー失. ― 45 ―.

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参照

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