非接触ICカード技術とその展開 : 3.非接触ICカードを利用したサービス 3)小売分野における非接触ICカードサービス
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(2) 特集 非接触 IC カード技術とその展開 ❸非接触 IC カードを利用したサービス 電子クーポン. 携帯会員証・ポイントカード 「ピッ」と かざすだけ. いつでも 持ち歩ける. ネットからの クーポン獲得. 店舗でのクーポン利用. 新規顧客の来店誘導. 優良顧客の囲い込み. 情報配信. スタンプカード スタンプカード. おトクな を 取得しました!. 購入時プロモーションによる再来店の促進. 楽しさあふれるサービスの提供 ●図 -1 小売業における非接触 IC サービスの分類. が始められるという利点や,携帯電話の画面上に IC チ. ●情報配信サービス. ップから読み取ったポイント情報を表示させることが可. 情報配信サービスとは,小売店に来店した利用者に対. 能であるという利点がある.一方で,IC カードを紛失・. して,特定の情報を配信するものである.本サービスは,. 破損するとポイントも失われてしまうという問題がある.. 情報表示能力を持つ非接触 IC 搭載携帯電話を対象とす. このタイプのポイントサービスは,比較的小規模な小売. ることが多い.逆に,カード型の非接触 IC の場合,情. 事業者 (飲食店,商店街) で利用される傾向が強い.. 報表示能力がないため,情報配信サービスの対象となら. また,ポイントサービスの派生サービスとして「スタ. ないことが多い.. ンプカード」と呼ばれるタイプのものも存在する.これ. 情報配信サービスは,新製品発売や割引キャンペーン. は,1 回来店・購買を行うたびにスタンプが増えていき,. 等の情報を利用者に告知することを目的として行われる.. 一定数に達するとなんらかの商品と引き換えが可能にな るというものである.. 小売系サービス実現への課題. ポイントサービス (含むスタンプカード) は,主として 顧客を小売店舗に囲いこむ,あるいはリピート来店を促 進する目的で行われる.. ●クーポンサービス. 本章では,これまでに紹介したような小売向け非接触 IC サービスを実現する上での課題について述べる.. クーポンサービスとは割引券・無料券を IC カードで. ●決済との連動. 実現するものである.特定の商品に限って利用可能で,. 小売分野の非接触 IC サービス導入において重要な要. 対象商品が割引・無料になるタイプと,商品の種類に依. 素の 1 つが,決済との連動である.非接触 IC サービス. らず代金が引かれるタイプが存在する.. の利点の 1 つは決済のスムーズさにあり,クーポン,ポ. 現状では,ほとんどのクーポンが紙にクーポンの種類. イント等のサービスは,決済と連動していることが望ま. を示すバーコードや値引き額等のクーポン情報を印刷す. しい.すなわち,決済のための一連の操作を行うだけで,. ることで実現されている.これを IC カードに保存する. すべてのサービスが完了することが期待される.. ことによって非接触 IC サービスとして実現されている.. こうした決済との連動性を実現するには,以下の 2 点. クーポンサービスは,特定商品の販売促進や,リピー. が重要となる.. ト来店を促進する目的で行われる.. 要件(1) 利用者の持つ IC カードに,関連するサービスがすべ て入っていること.すなわち,決済用カード,ポイント. 584. 48 巻 6 号 情報処理 2007 年 6 月.
(3) ❸小売分野における非接触 IC カードサービス 電子マネー用端末 クレジット用端末 決済用 カード. 会員証用端末. 会員証. ポイント用 カード. ポイント用端末. 1 枚の IC カード/ 携帯電話に 集約することが望ましい. 決済用 エリア. ポイント用 エリア. 会員証用 エリア. 1台の端末への集約が 望ましい. ASP 用エリア. マルチサービスリーダライタ端末. A社ポイント B 社クーポン ・ ・ ・. 電子マネーAP. クレジットAP. ポイントAP. 会員証 AP. ●図 -2 利用者の持つカードを集約. ●図 -3 店舗設置端末を集約. 用カード,クーポン用カード等の複数のカードを利用者. 実行可能なマルチサービスリーダライタシステムが登場. が持つのではなく,1 つの IC カードにすべて入ってい. してきており,この問題は解決されつつある(図 -3).. ることが望ましい. 対応策(1). ●事業者間連携. 流通分野で多く使われている非接触 IC 技術である. 今日,小売関連の付加価値サービスは,一事業者だけ. FeliCa には,1 つの物理的なカードに複数のサービスを. で完結することは少ない.他社とポイントの交換がで. 同居できるという機能があり,上記要件を満たすことが. きたり,複数事業者が連携してクーポンを発行したりと,. できる.また,非接触 IC 搭載携帯電話では,携帯電話. 事業者間連携が必須となっている.. の通信機能を利用してサービスを後から追加・削除する. 事業者間連携を実現する方法としては,. ことが可能である.. (1)連携する事業者間が,個別に連携の仕組みをシステ ☆2. 別の方策としては,ASP サービス. 等を用いることで,. 複数事業者のサービスを 1 枚の IC カードに同居させる. ム・ビジネス双方で作り上げる (2)連携の仕組みを備えた ASP サービスなどを利用する. ことも可能となっている (図 -2).. 等が存在する(図 -4) .今後は,非接触 IC 技術の特徴を. 要件(2). 活かした新しい仕組みの登場が期待される.. 小売店舗に設置する 1 台の IC カードリーダライタに, 関連するサービスがすべて入っていること.. ●既存サービスとの連続性および店舗での運用. たとえば,IC カードリーダライタが複数台設置され. 非接触 IC 技術を用いた小売業向けサービスの多くは,. ていて,利用者が,まず決済用端末に IC カードをかざ. 非接触 IC 技術登場前から行われていたサービスを継承. し,次にポイント用端末に IC カードをかざし,という. しているものが多い.このため,IC 技術の導入によっ. 煩雑な操作は望ましくない.また,小売店舗の観点から. て既存のサービスの利用者が不便を被らないようなサー. も,レジ付近に複数の端末を置くことは場所の圧迫につ. ビスとしての連続性が求められる.. ながるため,1 つの端末にかざすだけですべてのサービ. たとえば,ポイントカードをプラスチック磁気カード. スが完了することが望ましい.. から IC カードに変更する場合は,数年間の移行期間の. 対応策(2). 間,磁気カードと IC カードの両方のリーダライタを用. 従来,IC カードリーダライタは,サービスと 1 対 1 に. 意する,などの配慮が求められる.. 紐づいた専用リーダライタが大半であった.特に,決済を. また,新しい技術を用いたサービスを実施する際には,. 行うような高セキュリティ端末ではその傾向が強かった.. 店舗の現場での運用オペレーションにも留意する必要が. しかし最近になって複数のサービスを 1 つの端末で. ある.次々と登場する新しい技術を導入するだけではな. ☆2. く,それらの技術・機能に対応した店舗オペレーション アプリケーションサービスプロバイダの略.各小売事業者がサー ビスを行うためのシステムやサーバをそれぞれ用意するのでは なく,サービス請負業者が共通のシステムを用意し,小売業者は そのシステムを借りるサービスの形態を指す.. の高度化や習熟が望まれる.. IPSJ Magazine Vol.48 No.6 June 2007. 585.
(4) 特集 非接触 IC カード技術とその展開 ❸非接触 IC カードを利用したサービス (1) 事業者間が個別に連携 連携のための契約. 事業者A. 事業者B 連携のための契約. ☆新着クーポン ■ Myクーポン. 連携のための契約. 事業者C. ∼おトク情報・お知らせ∼. 事業者D (2) 連携サービスを利用 事業者B 事業者C 事業者A. ⇒Myカード一覧 ⇒ カード追加 ◆ Myクーポン ◆ Myスタンプカード. 事業者D 事業者連携用 ASP サービス. ●図 -4 事業者連携の仕組み. ●図 -5 複数事業者のサービスが並んだトクトクポケットの携帯電話 画面. 小売業向け ASP サービス 「トクトクポケット」. これにより,利用者は 1 つの ASP に複数の小売事業 者のサービスをまとめることができるというメリットが ある.また,小売事業者には,ASP を利用する事業者同. 以上述べたように,小売業向け非接触 IC サービスに は,決済系・交通系サービスとは異なる特徴がある.本 章では,実在する小売業を中心とした事業者向け ASP 1). サービス「トクトクポケット」. を事例に,小売業向け. 士での連携が可能というメリットが生じる.. ●カスタマイズ性 トクトクポケットでは,小売業向けの基本サービスであ. サービスの紹介を行う.. る,ポイント,スタンプカード,クーポン,情報配信など. トクトクポケットは,非接触 IC 規格の 1 つである. のサービスをメニューとして用意している.小売事業者. FeliCa を対象としたアプリケーションサービスである.. はここから自分に必要な機能を選択することが可能であり,. トクトクポケットは,以下のように,小売業向け非接触. 自社にあったサービスに合わせていくことが可能である.. IC サービスに適した機能を提供するものである.. おわりに. ● ASP 形態のサービス トクトクポケットは ASP 形態のサービスであり,小 売事業者が新規に非接触 IC サービスを開始する時のコ. 本稿では,小売業向け非接触 IC サービスの特徴と事. ストが低い.たとえば,IC 搭載携帯電話(おサイフケー. 例を概観した.小売業向けサービスは,店舗での決済サ. タイ ® )向けサービスでは,携帯電話キャリア 3 社がそ. ービスの拡がりとともに,従来から小売事業者が行っ. れぞれ別々のプラットフォームを提供しているため,小. てきたポイントカード・クーポン等のサービスを非接触. 売事業者がサービスを構築する際には 3 社分のアプリ. IC に移植するかたちでサービスが開始されつつある.. ケーションを開発する必要がある.. 今後は,本稿に述べた運用面などの課題を 1 つ 1 つ. これに対し,トクトクポケットでは運営側でアプリケ. 解決することで,小売業における非接触 IC サービスが. ーションを提供するため小売事業者はサービスを容易に. より身近に生活・文化として定着していくことが考えら. 開始することができる.これにより,システム構築の初. れる.. 期コストを抑えることが可能となる.. 参考 URL 1)トクトクポケット http://www.tokutokupocket.jp/ (平成 19 年 5 月 7 日受付). ●複数事業者が利用可能 トクトクポケットでは,複数の小売事業者が 1 つの ASP サービスに入ることができる.図 -5 は,トクトク ポケットの携帯アプリケーションにおいて複数の事業者 を追加した画面の例である.. 586. 48 巻 6 号 情報処理 2007 年 6 月. 奥山 祐一 [email protected] ---------------------------------------------------------------------------------------------1990 年日本電気(株)に入社.一貫して流通サービス業界における新 規ソリューションの企画開発業務に従事.現在「トクトクポケット」と して FeliCa 領域のサービス事業開発,プロモーション業務全般を推進..
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