• 検索結果がありません。

保健学習における指導内容・方法に関する一考察 : 学生による模擬授業の実態調査より

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "保健学習における指導内容・方法に関する一考察 : 学生による模擬授業の実態調査より"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

保健学習における指導内容・方法に関する一考察

― 学生による模擬授業の実態調査より ―

三 浦 美知子

Ⅰ.はじめに  新しい学習指導要領は、中央教育審議会(以下、中教審という)による諮問(2014. 11. 20.)論点整理(2015. 8. 26.)審議のまとめ(2016. 8. 26.)答申(2016. 12. 21.)などを経て、改 訂(2017. 3. 31.)された。その後、周知徹底・移行期間を経て幼稚園は、既に平成30年度か ら全面実施されている。小学校は平成32年度、中学校は平成33年度、高等学校は平成30年 度改訂後、34年度からそれぞれ全面実施が予定されていることは周知の通りである。  今回の改訂における、一つの観点として『「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた 授業改善の推進』がある。「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指 導要領の改善及び方策について(答申)」(中教審2016. 12.)1)において「主体的・対話的で 深い学び」の実現(アクティブラーニング)の視点が表記されており、今回の学習指導要領 (2018. 7. 告示)の三本柱の一つとして注目されている。今関2)は「現場の先生にとって「思 考・判断」の観点が難しいという調査(中教審「教育課程部会、児童生徒の学習評価の在り 方に関するワーキンググループ(第7回)配布資料2009. 10. 14.)結果が出ていることにつ いて「現場が困っている「思考・判断」に焦点を当て、その対応策として出て来たのがアク ティブラーニング」だとしている。  もともとアクティブラーニングが政策的に前面に打ち出されたのは「新たな未来を築く ための大学教育の質的転換に向けて∼生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ ∼(答申)」(中教審、2012. 8.)だった。その答申によれば、アクティブラーニングは「教員 による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学修への参加を取り入れ た教授・学習方法の総称」である。「学習者が能動的に学修することによって、認知的、倫 理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解 決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディ ベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの方法である。」3)と定義した。  森は4)「教育実習生や新卒の教師の授業展開は、過去に受けた保健の授業にかなり近い 展開がなされ、未だ知識の詰め込みとその記憶を計り評価するといった授業パターンが根 強く存在している」ことを指摘した。野津ら5)6)は、全国レベルで児童生徒における保健内 容の習得状況の調査をおこなった。その中で、保健の指導意欲の高い教師は、保健を指導

(2)

する際の準備、適切な評価、指導方法の工夫などの実施状況が良好であるとした。また、上 田ら7)は、中学校保健学習の使用指導方法に関する保健体育教員の調査結果から「応急手 当」「喫煙、飲酒、薬物乱用と健康」等の小単元の指導において生徒が高い関心を持っており、 学習内容の理解度も良好な状況としている。また、指導方法については「事例」「グループ ワーク」の使用率が高く「ブレインストーミング」「実験・実習」等の使用率は顕著に低かっ たとしている。さらに山崎ら8)は、大学生による小・中・高等学校時代の保健授業の授業内 容に着目し、保健授業の実態を明らかにすることで保健授業の指導方法についての検討を 行った。しかし、この様な先行研究において保健学習の模擬授業における指導内容・指導 方法に関する調査は見当たらない。  そこで本稿では、保健体育教師を目指す学生による模擬授業における、どのような授業 内容でどのような授業形態を採用してきたのかを整理することで、これからの保健学習の 模擬授業において授業内容が「主体的・対話的で深い学び」につながる可能性を検討する こととした。 Ⅱ.方法 1. 調査の期間・対象授業・対象学生  O大学における2012年度から2018年度までの7年間の春学期において開講された「中等 保健体育科教育法Ⅲ(a)」を受講した中学校、高等学校保健体育教諭免許状取得予定の学 生99名(男74名、女25名)を対象とした。これらの学生は、入学2年次春学期に「中等保健 体育科教育法Ⅰ」を、2年次秋学期に「中等保健体育科教育法Ⅱ」を受講済みの3年次春学 期に当たる学生たちである。 ※「中等保健体育科教育法Ⅲ(a)」における授業実践の概要は、三浦9)を参照されたい。 2. 調査の内容  現行学習指導要領10)11)により学生が作成し最終提出された本時学習指導計画案・ワーク シート・配布資料および模擬授業内においての観察・見取りによる筆者の気づきの記述内 容及び模擬授業の映像から、中学校・高等学校別、単元別に授業形態を整理した。整理内容 から見える、これからの保健授業においての「主体的・対話的で深い学び」の視点から、授 業内容・方法についての課題を解釈した。  指導形態については、中学校学習指導要領「保健分野」内容の取扱いより、事例などを用 いたディスカッション、ブレインストーミング、心肺蘇生法などの実習、実験、課題学習、 コンピューターの活用を参考にした。尚、養護教諭、栄養教諭、学校栄養職員などの参加・ 協力の推進に際しては、模擬授業の範囲では不可能であるため除外した。  さらに、高等学校指導要領「保健(科目)」内容の取扱いよりディスカッション、ブレイ ンストーミング、ロールプレイング(役割演繹法)、心肺蘇生法などの実習や実験、課題学

(3)

習を参考にした。中学校同様に養護教諭、栄養教諭、学校栄養職員などの参加・協力の推進 に際しては、模擬授業の範囲では不可能であるため除外した。 Ⅲ.結果と解釈 1. 中等保健体育科教育法Ⅲ(a)受講生の内訳  2012年∼ 2018年における春学期「中等保健体育科教育法(a))の受講生は、合計で99名(男 子74名 女子25名)であった。そのうち、模擬授業の校種について中学校を希望した学生 は35名(男子26名 女子9名)であった。高等学校を希望した学生は64名(男子48名 女 子16名)であった。 2. 校種別選択単元・授業形態の内訳と解釈 (1)中学校  中学校の単元および選択単元・授業形態の内訳は、表1のとおりである。 ①中学校選択単元における割合  選択が多かった単元は『健康な生活と疾病の予防』57%「イ 生活行動・生活習慣と健康」 で中学校希望学生総数の37.1%(女子5.7%)、次いで同単元「ウ 喫煙、飲酒、薬物乱用と 健康」20%(女子8.6%)、『心身の機能の発達と心の健康』25.7%「エ 欲求やストレスの対 処と心の健康」14.3%(女子8.6%)「ア 身体機能の発達」5.7%(女子0%)「精神機能の発 達と自己形成」5.7%(女子2.9%)『障害の防止』14.3%「エ 応急手当」8.6%(女子0%)「イ  交通事故などによる傷害の防止」5.7%(女子0%)『健康と環境』2.9%「ウ 生活に伴う廃 棄物の衛生的管理」2.9%(女子0%)であった。  「中学校の保健授業の授業内容に対する印象」の調査12)によれば『心身の機能の発達と 心の健康』が最も多く、次いで『健康な生活と疾病の予防』の順であったが両者は拮抗して いるように見受けられた。そのように捉えると模擬授業者自身が過去に受講した授業の印 象の強さが、そのまま模擬授業の選択単元につながっているとも解釈できた。 ②中学校模擬授業における授業形態の割合  授業形態では、ディスカッション48.6%(女子11.4%)、ブレインストーミング11.4%講 義形式のみ22.9%(女子8.6%)、事例20%(女子14.3%)パワーポイントや映像などのコン ピューター 14.3%、データ分析11.4%、ロールプレイング8.6%、実習・実験8.7%その他に は少数ではあるが、現物やポスターを用意しイメージを持たせやすくしたり、自画像を描 かせたり、アンケート取り集計結果を発表したり、テストをしたりと様々な工夫を加える 授業も見られた。  「ディスカッション」「事例」による授業展開が多く見受けられたことは上田ら13)と一致

(4)

表 1 中学校 保健(領域)授業内容と選択単元および授業形態 表Ⅰ 中学校 保健(領域)  授業内容と選択単元および授業形態 人数 授業形態        ア 身体機能の発達 2 ・講義形式のみ(2) イ 生殖に関わる機能の成熟 0 ・プリント学習(記述式)、ディスカッション、音読×2 ・自画像、ジョハリの窓、ウェビング ・コンピューター、実験(テーマをイメージ一人一人一筆の絵)ロールプレイング ・事例1-2ペア・ディスカッション(発表)、チェックシート ・発問~全員回答(教師板書)×2 講義形式 ・プリント学習、事例~ディスカッション(ワーク記述) ・アンケート結果発表、グループ課題別~発表 ア 身体の環境に対する適応能力・至適範囲 0 イ 飲料水や空気の衛生的管理 0 ウ 生活に伴う廃棄物の衛生的管理 1 ・現物用意、ディスカッション(画用紙) ア 交通事故や自然災害 などによる傷害の 発生要因 0 ・事例~ディスカッション×2、課題学習(住んでいる町の危険個所) ・コンピューター、クイズ、事例1-3~ディスカッション、(警視庁H.P) ウ 自然災害による傷害の防止 0 ・演示~実習(けがのシチュエーション有、タオル配布) ・板書説明、実習(包帯)  ・演示~実習(止血法・包帯)グループ実演、ワーク ア 健康の成り立ちと疾病の発生要因 0 ・ワーク、音読、グループ~発表 ・講義形式、プリント説明、語句を覚える ・グループ~発表、(どんな運動をすればいいのか) ・ワーク(問の記述)、ブレインストーミング×2(板書発表)~気づき、ポイント板書、ワーク ・講義形式、ペットボトル・飲み物用意~カロリー表示見つける、回答を知っている生徒が発表~板書~説明 ・コンピューター、講義形式(パワポ~説明、音読~説明)、テスト(プリント10分)回収 ・ディスカッション(画用紙~発表)、データ説明、音読 ・ブレインストーミング(画用紙)、ペア課題学習 ・事例~プリント学習、ペア~グループ・ブレインストーミング ・ディスカッション(生徒が黒板・プリント記入)、ロールプレイング ・コンピューター、事例~ディスカッション、チェックシート ・事例~ディスカッション(画用紙)、資料バランスガイド、問題解決記述 ・発問~ディスカッション×2、テスト(穴埋め) ・ブレインストーミング(イメージ・プリント記述)、データ説明、音読~個人で考える~発表、ほぼ講義形式 ・コンピューター、事例~記述~ロールプレイング ・ディスカッション、事例~プリント学習、チェックシート ・プリント学習(資料)データディスカッション ・空き瓶(全種類)用意、データ有り、グループ~発表 ・宿題~つかみ、講義形式、ポスター用意~発問(個人指名) ・教科書資料~講義形式、ワーク(穴埋め)、事例~教師が回答 エ 感染症の予防 0   オ 保健・医療機関や医薬品の有効利用 0 カ 個人の健康を守る社会の取組 0 35  ※アンダーラインは女子 ウ イ 2 3 応急手当 エ 7 喫煙、飲酒、薬物 乱用と健康 ウ 心 身 と 機 能 の 発 達 と 心 の 健 康 健 康 と 環 境 傷 害 の 防 止 健 康 な 生 活 と 疾 病 の 予 防 交通事故などによる 傷害の防止 精神機能の発達と 自己形成 2 エ 欲求やストレスの 対処と心の健康 5 13 生活行動・生活習慣 と健康 イ

(5)

する結果となった。「体験型の学習方法」や「ディスカッション」や「ロールプレイング」な どの授業形態が印象に強く残る14)ことを考えると、「心肺蘇生法」などで触れたいAEDは、 模擬授業としての導入はハードルが高かったのか見当たらないが、「ディスカッション」「ブ レインストーミング」「ロールプレイング」などは是非とも導入させたい授業形態だったと 解釈できた。これは筆者が『この授業で「何を」「どのよう」に伝えるのか、その方法で本当 に伝わったのか。それは、どのように判断するのか』について、常に模擬授業者である学生 たちに伝えていたことからの結果とも解釈できた。一方で、森15)の指摘する「知識」中心 で「講義形式のみ」の指導形態が2割弱だったことについては今後の課題である。 (2)高等学校  高等学校の単元および選択単元・授業形態の内訳は、表2のとおりである。 ①高等学校選択単元における割合  最も多かった単元は『現代社会と健康』「イ 健康の保持増進と疾病の予防」53%「エ  交通安全」11%「ア 健康の考え方」9.4%「ウ 精神の健康」7.8%「オ 応急手当」4.7%『生 涯を通じる健康』「ア 生涯の各段階における健康」7.8%「イ 保健・医療制度及び地域の 保健・医療機関」1.6%『社会生活と健康』「環境と保健」「環境と食品の保健」「労働と健康」が、 それぞれ1.6%だった。  特に選択単元が集中していた単元は『現代社会と健康』の中単元「イ 健康の保持増進 と疾病」の小単元(イ)喫煙、飲酒と健康23%(ア)生活習慣病と日常の生活と疾病の予防 行動19%だった。これは「印象に残った過去の授業内容の影響」16)とも一致していた。また、 野津ら17)による学習内容の習得状況とも概ね一致していた。さらに、模擬授業を担当する 学生の年齢が20-21歳であることも関心の大きさにつながったと解釈できた。 ②高等学校模擬授業における授業形態の割合  授業形態では、ディスカッション67%で最も多かった。次いで、データ分析25%、事例 12.5%、ロールプレイング12.5%、ブレインストーミング7.8%、実験・実習11%、講義形式 のみ12.5%、パワーポイントなどのコンピューター 4.7%、現物用意3%、その他15.6%では、 マインドマップ、ランキング、フラッシュカード、写真・ポスター・チラシ・紙芝居風など であった。  中学校の授業形態と比較した場合に、特徴的だったのが「ディスカッション」であり、7 割弱の学生が採用していた。次いで「データによる分析」であり4人に一人が採用していた。 逆に「講義形式のみ」は半減していた。これは、「知識を伝達するだけの授業ではなく、実 際に仲間と議論したり、体験すること」が、より高等学校卒業後の生活に生かすことにつ ながるとの判断だったのではないかと解釈できた。加えて、筆者が『この授業で「何を」「ど のよう」に伝えるのか、その方法で本当に伝わったのか。それは、どのように判断するのか』

(6)

表 2 高等学校 保健(科目)授業内容と選択単元および授業形態 人数 授業形態 6 ・ブレインストーミング、連鎖図(模造紙) ・講義形式(教科書) ・ディスカッション(未来に向けて画用紙) ・ディスカッション×2、マインドマップ ・ディスカッション×2、ロールプレイング ・コンピューター(保健教科書全領域~講義形式) グループ(ブレインストーミング~まとめ)ランキング 34 ・コンピューター、事例~ディスカッション ・ディスカッション、個人生活のふり返り ・ディスカッション、広告分析 ・実験、事例~ディスカッション、ロールプレイング ・ペア・ディスカッション ・用語カード、ペアブレインストーミング(発表)~、図説(用意)説明、実習(スト レッチ)、ペアワーク ・ディスカッション、データ、対策考える ・ディスカッション、ロールプレイング、ペア~グループ、データ ・講義形式(プリント学習) ・事例~ディスカッション(画用紙) ・講義形式(プリント学習、思考) ・講義形式(プリント学習、写真~) ・ディスカッション(心理的要因を考える)、~プリント学習(写真、ポスター)フラッシュ カード ・ディスカッション(黒板発表・書く列できた)穴埋め記述 ・ディスカッション(メリット・デメリット、発表は用意されている用語カード使用) ・発問(きっかけ)~ディスカッション×2、ロールプレイング ・テーマ~ディスカッション(メニュー考える発表・記述) ・板書~説明、テーマ~記述、ディスカッション(実践につなげることを考える~ワークに 記述)、データ ・ペア~グループ、ポスター、人体・脳図、ロールプレイング ・講義形式、データから分かること(穴埋め)チェックシート ・データ~穴埋め、事例~ディスカッション、 ・パッチテスト ・ワーク(穴埋め)、ディスカッション(発表) ・ペットボトル、ワーク(穴埋め)、講義形式 ・ロールプレイング、模造紙 ・パッチテスト、ロールプレイング、 ・ディスカッション、ワーク(穴埋め) ・プリント、ディスカッション ・チラシ2人1枚、ディスカッション~板書で発表 ・講義形式、ストローで呼吸(10分模擬) ・コンピューター、ワーク(個人で考え記述)データ~気づき、ブレインストーミング (KJ法・画用紙・付箋~発表)~まとめ~パワポ~ワーク(気づき) ・講義形式、 ・講義形式、プリント学習、事例 ウ 精神の健康 5 ・ディスカッション、事例~ロールプレイング ・ディスカッション、データ ・ディスカッション、講義形式が多い ・.講義形式(発問~記述~グループ内発表~記述) ・ワーク(記述式)実験、ディスカッション エ 交通安全 7 ・ペア・ディスカッション、事例~課題別ディスカッション、用語カード(大量) ・講義形式~ディスカッション(想定~記述・発表) ・事例~ペアで原因を考える~説明、教科書・講義形式 ・図データ~(ワーク記述)、事例1-2-3~ディスカッション(発表) ・ワーク(穴埋め)、ユーチューブ、教科書図~何が潜んでいるか、 ・講義形式、 ・講義形式、事例~ディスカッション オ 応急手当 3 ・ペアでプリント学習(穴埋め記述)、ペアディスカッション(画用紙・発表) ・講義形式、ワーク(穴埋め) ・ディスカッショ(グラフを見て考える)、用語カード~説明、音読、データ(説明のみ) ア 生涯の各段階における健康 5 ・データ~ディスカッション、資料~説明、 ・導入~自作文、ディスカッション、用語カード ・ディスカッション×3(画用紙、発表)、個人考え(ワーク記述) ・講義形式、教師~全員(一人一人) ・講義形式、ブレインストーミング イ 保険・医療制度 1 ・現物用意、ディスカッション(グループ課題別)データ有、用語カード~説明、まとめ (本時の気づき記述) ウ 様々な保健活動や対策 0 ア 環境と保健 1 紙芝居風~自作の絵、ディスカッション、 イ 環境と食品 1 ・ディスカッション ウ 労働と健康 1 ・コンピューター、ディスカッション、 64  ※アンダーラインは女子 健康の保持増進と疾病予防 健康の考え方 社 会 生 活 と 健 康 生 涯 を 通 じ る と 健 康 現 代 社 会 と 健 康 ア イ

(7)

について高等学校を選択した学生たちにも浸透していったと解釈できた。 3. 小括  本授業を履修した、およそ6割半の学生が高等学校の模擬授業を選択し、3割半の学生 は中学校を選択した。教科書を読み、教師が説明を加えるのみの、いわゆる講義形式のみ の授業形態を選択した者は、全体の一割半だった。8割半の者は、アクティブラーニング と呼ばれる授業形態を選択していた。殆どの者は、学習指導要領や教科書を読み込み、選 択単元について教材研究・資料収集・学習材の準備に余念がなかった。しかし、その方法で、 「本当に習得できたのか。活用できているのか」について探究はつづく。 Ⅳ.まとめと課題  本稿では、過去7年間における保健授業の模擬授業において、どの様な単元および授業 形態を採用したのかについて整理することで、これからの保健授業における模擬授業にお いて授業内容が「主体的・対話的で深い学び」につながる可能性を検討することだった。  模擬授業の整理と解釈は以下の通りである。 過去7年間における模擬授業の校種別選択単元の内訳は、中学校では『健康な生活と疾病 の予防』で特に「イ 生活行動・生活習慣と健康」「ウ 喫煙、飲酒、薬物乱用と健康」『心 身の機能の発達と健康』の順で多かった。授業形態では、「ディスカッション」「講義形式の み」「ブレインストーミング」の順で多かった。高等学校の選択単元では『現代社会と健康』 「イ 健康の保持増進と疾病の予防」が最も多く、次いで「エ 交通安全」「ア 健康の考え 方」だった。事業形態では、「ディスカッション」が最も多く、次いで「データ分析」「事例」 「ロールプレイング」の順で「中学校、高等学校の授業内容や授業形態」の調査結果とほぼ 一致した。  このことから模擬授業の内容・方法については、模擬授業を選択制にした場合は、自身 の過去に経験した印象に残っている単元・授業形態を採用する可能性が高いと解釈できた。 また、模擬授業を担当する学生の年齢も関係していると考えられた。  和唐18)は、これまでの保健の授業における「知育偏重」と「はいまわる」授業への批判に ついて「知識の捉え方の問題」を指摘した。「新しい知識を解釈し、意味づける理解行動や、 その知識を具体的場面へと適用し問題解決するために学習者が主体的に知識を構成できる よう教師が支援すること」としている。そのためにも教育内容および教材についての知識・ 理解が不可欠である。この知識が充分身に付いた上で実験・実習・ディスカッション・ロー ルプレイングなどを行っているのか、模擬授業者自らが本当に分かっているのか課題であ る。この命題を探究し続けることこそ「主体的・対話的で深い学び」につながっていくもの と考える。  野津19)は、教員養成において、保健科教育法等の履修状況が良好であることや保健授業

(8)

の指導を経験し、好印象を持つことを挙げている。さらに、保健学習で教える内容につい て「学習指導要領」は骨格、「学習指導要領解説」は肉付け、「教科書」は衣服、「副教材」は アクセサリーとだとし、教科書を教えるのではなく、教科書で教える、もしくは教科書で も教えるとして、先ずは学習指導要領の内容を十分に理解することである20)ことを指摘し た。  森は、学習指導要領を踏まえての指導を行うに当たり、系統性を考えずに指導すると小・ 中・高等学校で、同じ内容の授業が展開されてしまうことを指摘した。それぞれの段階で 適切な指導を行うにあたり「1. 他学校種の学習指導要領を確認すること。2. 一時間の内容 を単元全体の内容をと捉えること。」21)としている。自分に当てはめたり、応用したり、比 較し、共通点を見つけたりする思考力・判断力・表現力を確保できるようなアクティブラー ニングを用いた授業方法の更なる活用を模索・探究していくことが課題である。  児童生徒がこの先、生涯に渡って健康な生活を営むために、健康にかかわる幅広い知識 を獲得できるよう保健体育科教員養成段階から教師を目指すより多くの知識の習得・活用 場面を確保できる環境が整うことを切に願う。 注 1) 中央教育審議会(2016.12.)「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領 の改善及び方策について(答申)」 2) 今関豊一(2017. 4.)「近未来の体育を展望する」(座談会)『体育科教育』pp16-28 3) 中央教育審議会(2012.8.28.)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて∼生涯学び続 け、主体的に考える力を育成する大学∼(答申)」用語集p37 4) 森昭三(2007. 8)「保健の「知」を身につけるために」『体育科教育』p9 5) 野津有司(2010. 08.)「保健科教育の課題の解決に向けて」研究の活性化と保健担当教師の育成 『体 育科教育』pp32-35 6) 野津有司ほか(2007)「全国調査による保健学習の実態と課題̶児童生徒の学習状況と保護者の期 待について̶ 『学校保健研究49』 pp280-295 7) 上田裕司ほか(2015)「中学校保健学習の準備、生徒の反応、使用指導方法等に関する保健体育科 教員の意識̶質問紙調査の小単元別の分析結果から̶『学校保健研究57』  8) 山崎朱音ほか(2018. 2.28.)「小学校・中学校・高等学校における保健授業の指導方法に関する研究 ―大学生を対象とした保健授業の実態調査より―」『静岡大学教育実践総合センター紀要28』  pp173-182. 9) 三浦美知子(2017.1)「中等保健体育科教育法Ⅲにおける保健学習の模擬授業に関する一考察―教 師を目指す学生としての気づきに着目して―」桜美林大学『教職研究』創刊号 10) 文部科学省(2009.12.)「高等学校学習指導要領解説 保健体育編・体育編」 11) 文部科学省(2008.9.)「中学校学習指導要領解説 保健体育編」 12) 山崎朱音ほか(2018)前掲論文 13) 上田裕司ほか(2015)前掲論文 14) 山崎朱音ほか(2018)前掲論文 15) 森昭三(2007. 8.)前掲論文 16) 山崎朱音ほか(2018)前掲論文 17) 野津有司(2007)前掲論文

(9)

18) 和唐正勝(2007. 8.)「保健の「わかる」と「できる」を考える」『体育科教育』 19) 野津有司(2010.08)前掲論文

20) 野津有司(2010)「保健学習と新しい学習指導要領」『保健の科学』(52)12. pp837-842 21) 森良一(2010.8.)前掲論文

表 1 中学校 保健(領域)授業内容と選択単元および授業形態 表Ⅰ 中学校 保健(領域 )   授業内容と選択単元および授業形態 人数 授業形態                      ア 身体機能の発達 2 ・講義形式のみ(2) イ 生殖に関わる機能 の成熟 0 ・プリント学習(記述式)、ディスカッション、音読×2 ・自画像、ジョハリの窓、ウェビング ・コンピューター、実験(テーマをイメージ一人一人一筆の絵)ロールプレイング ・事例1-2ペア・ディスカッション(発表)、チェックシート ・発問~全員回答(
表 2 高等学校 保健(科目)授業内容と選択単元および授業形態 人数 授業形態 6 ・ブレインストーミング、連鎖図(模造紙) ・講義形式(教科書) ・ディスカッション(未来に向けて画用紙) ・ディスカッション×2、マインドマップ ・ディスカッション×2、ロールプレイング ・コンピューター(保健教科書全領域~講義形式)   グループ(ブレインストーミング~まとめ)ランキング 34 ・コンピューター、事例~ディスカッション ・ディスカッション、個人生活のふり返り ・ディスカッション、広告分析 ・実験、事例~ディ

参照

関連したドキュメント

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

また、当会の理事である近畿大学の山口健太郎先生より「新型コロナウイルスに対する感染防止 対策に関する実態調査」 を全国のホームホスピスへ 6 月に実施、 正会員

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

★分割によりその調査手法や評価が全体を対象とした 場合と変わることがないように調査計画を立案する必要 がある。..

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.