一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否
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(2) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). (3)平成12年5月頃,Xは,知人を通じてYを紹介された。 Yは, Xから,同 人が中国で農産物を栽培,生産し,日本に輸入販売する事業を行っていると. の話を聞き,同年7月頃,Yは, XをMD大肉まんの担当者に紹介し, MD大. 肉まんの製造をXに委託することを提案して,Xと取引する方向で話を進め ることになった。なお,同年8月頃,XYF間で, Xの製造する肉まんがYの要. 求する品質等を備えるに至った暁には,Xに月100万個のMD大肉まんの製 造を委託する旨の話がなされていた。そして,同月頃から,Xは, Yの指示. により,肉まんの試作品製造を行った。MD大肉まんのレシピは,皇宮が所. 持していたが,XがMD大肉まんの試作に当たり,上記レシピとは異なる MD大肉まんの配分表(以下,「本件配分表」という。)を開示した。 Xは,. Yに対し,同年9月7日,10月10日,11月30日,本件配分表に従って製造し た肉まんの試作品を提出したが,いずれも不合格となった。. (4)Xは,調理師学校の非常勤講師で中国の工場の顧問をしていたAに肉まん. の試作品製造を依頼していた。平成12年11月23日頃以降,Aは,皇宮に, ハチバンがMD大肉まんに使用しているショートニングのメーカーを問い合 わせ,同じものをメーカーに注文しようとしたところ,同ショートニングに 日本で使用,販売が禁止されている添加物が含まれていること,さらに調べ て,同添加物が食品衛生法6条(平成11年法律第160号による改正前のもの) に基づき,人の健康を損なうおそれのない場合として厚生大臣(当時)が定 めていない添加物であって,これを含む食品等の販売等が禁止されているタ ーシャリブチルヒドロキノン(以下,「TBHQ」という。)であることを知っ. た。Aから報告を受けたXは,皇宮に, TBHQ混入の事実(以下「本件混入 事実」という。)を報告した。Xは,平成12年11月30日,3回目の試作品を. 提出した際,Yに対し,ハチバンが供給するMD大肉まんに, TBHQが使用 されていることを指摘した。そして,Xは, MD大肉まんにTBHQが混入し ていたのは,皇宮の管理責任である,正確なレシピをもらわなければまた同. じようなことが起きるおそれがある旨を述べて,Yに対し, MD大肉まんの 96.
(3) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. レシピの開示を要求し,平成12年12月4日,レシピめ開示を受けた。同日, Xは,Yに, TBHQ混入の事実を報告したところ, Yは, Xに対する感謝とハ. チバンに対するペナルティとして,ハチバンの製造量を100万個減らし,そ の分をXにお願いする旨を述べた。. (5)Xは,発注書がないと作業が進められないとして,Yに対し本件肉まん製. 造依頼書の発行を要求し,平成12年12月5日越 期間1年,月産200万個を 目処とする「MD肉まん製造依頼書(以下,「本件肉まん製造依頼書」とい う。)」の交付を受けた。. (6)平成12年12月7日,Xは,皇宮に対し,皇宮が適切な指導をしなかったた. めに,きちんとした商品ができなかった,今まで及び今後の費用は7000万 円くらいになり,皇宮にも責任がある旨を述べ,皇宮で払えなければサント リーと相談の上いくらか賠償するよう要求した。皇宮は,Yを訪れ相談した。. Yは相談を聞き,Xと皇宮の問の問題にYが関与し, XをYに取り込むことに. よってTBHQ混入の事実についてXの口封じをしょうと考えた。 Yは,皇宮 に,対策として,Xの口封じをしなければならない。 Xをビジネスに巻き込. む方向で対応する旨を述べた。同月8日,Xは, Yを訪れて,「TBHQが入っ ていた。しかも,それを販売したとなるとこれは大変なことですよ。」等と. 言った。TBHQ混入の事実が公になる可能性があること,また, Yにとって サントリーが重要な取引先であること等にかんがみ,Yが7000万円の支払を. 肩代わりすることにした。その後,YはXと交渉の上,支払金額を6300万円 と決定した。そして,最初の3300万円は業務委託手数料名目で支出するた. め,Xとの間で,平成12年12月13日付けでMD大肉まんについて業務委託 契約書(以下,「本件業務委託契約書」という。なお,この契約を「本件業. 務委託契約」という。)を作成した。本件業務委託契約書には,Yの品質基. 準に基づいたMD大肉まんの安定供給,月産200万個,契約期間1年で期間 満了2か月前までに書面で更新しない旨の意思表示がない場合には,本契約 は自動的に1年更新されること,委託手数料は,年額3300万円とすることな 97.
(4) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). どを内容とした。. (7)平成12年12月13日から平成13年1月18日にかけて,Yは, Xに対し,合 計6300万円を現金交付あるいは振込送金の方法により支払った。他方で,X. は,中国の工場からMD大肉まんのYへの供給が可能になってから(平成13 年10月10日),Yに対し,平成13年10月31日から同年12月26日までの間に 合計262万個の肉まんを納入した。(以上の経過でXとYとの間に締結された 肉まん供給契約を「本件肉まん契約」という。). (8)一方,Y社内では, MD大肉まんにTBHQが混入していたごと, YからX に対し6300万円の支払がなされていること等が問題となり,平成13年9月. 27日,取締役,監査役等で構成するミスタードーナツ調査委員会(以下 「MD調査委員会」という。)を立ち上げた。. (9)平成13年10月15日,Xは, Yの呼び出しを受けてYの所に赴いた。そし. て,Yから,本件肉まん契約を平成13年12月末日をもって合意解約したい 旨の申入れがあった。. (10)同年11月6日,MD調査委員会は,「MDに関する調査報告書」と題する 報告書をYに提出した。同報告書には,MD調査委員会の見解として, Xに 対する今後の対応について,恐喝まがいの行為によってYとの取引を締結継 続しているものであり,速やかに取引関係を解消しなければならないとの点 で一致した旨の記載があった。. (11)Xは,Yに対し,平成14年1月,48万個のMD大肉まんを提供したが,受 領を拒否された。そこで,Xは,本件肉まん契約の更新拒絶には正当な事由 が必要であるにもかかわらず,本件の更新拒絶には正当な事由がないので,. 本件の更新拒絶は無効である等主張して,Yに対して, Yの本件肉まん契約. の債務不履行によってXに生じた損害等4億2641万円余の損害賠償を求め た。. 98.
(5) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. 【判 旨】. 一部認容 1.本件肉まん契約の更新拒絶について「正当な事由」が必要かについて 本件肉まん契約の更新拒絶に「正当な事由」が必要であるかについて,’まず,. 本件解約通知の意味について,「本件業務委託契約書は,XY間の合意内容を記 載した書面とは認められず,本件肉まん製造依頼書は,本件肉まん契約の枠組 みとして基本的な内容を規定するものではあるが,前記認定に係る発注期間に. ついての記載は,個別の発注期間が1年間を目処にしてなされるとの合意があ ったことを示すにすぎず,本件肉まん製造依頼書にそのような記載があること. をもって,本件肉まん契約の契約期間が1年間と定められたと認めることはで きない。」「よって,本件肉まん契約は,基本的合意の段階においては,期間の. 定めのないものであったと解すべきである。」「以上によれば,平成13年10月. 31日にYからXに対してなされた本件肉まん契約を解約する旨の通知は,本件 肉まん契約の解約申入れであると解すべきである。」と判示した。. 本件肉まん契約の解約申し入れ(更新拒絶)における正当な事由の必要性に ついては,「一般に,期間の定めのない契約は,一方当事者からの解約申入れ によって終了するのが原則である。」「しかしながら,契約の実現に一定の資本. の投下が必要で,継続されることを前提に当該契約が締結された場合,当事者 はその契約から投下した資本を回収することを期待しているから,このような 場合には,一方当事者の解約申入れによって契約を終了させるのは妥当ではな く,契約を解約するために「正当な事由」が存在することが必要であるという べきである。そして,「正当な事由」が必要であるか否かは,契約の目的物の 性質,当事者の性質等事案の特質を考慮して判断するのが相当である。」「これ. を本件についてみるに,本件肉まん契約の目的物は,MD大肉まんであり, MD大肉まんは, Y,皇宮等が共同で開発したYのミスタードーナツの各店舗. で販売される商品であったこと,XがMD大肉まんを製造するに当たり,Xに 99.
(6) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). はMD大肉まんの商品情報,製造のノウハウ等がすべて開示されることとなっ ていたこと,Xには月100万個の発注が約束されていたこと,また, Xの工場 施設の改善等についてY側から指導がされることとなっていたことの各事実に 照らせば,本件肉まん契約は一定期間継続されることが当事者間において前提. となっていたというべきである。」として,本件肉まん契約を解約するには 「正当な事由」が必要であると判示した。. 2.「正当な事由」が必要である場合,本件における「正当な事由の有無」に ついて. まず,Yが本件肉まん契約は不法・不当な目的達成のため締結されたもので あるから,本件肉まん契約の解消には「正当な事由」があると主張している点. について,「本件肉まん契約は,その基本的な合意部分において,XがTBHQ 混入の事実を指摘する以前の平成12年8月に既に成立していたものであるか ら,本件肉まん契約締結段階において,何らかの不法,不当な目的が存在して. いたとは認められない。」として,また,XのTBHQ混入の事実をYに報告し た後,「本件混入事実指摘後,皇宮を含むY側が,口封じをしょうという意図 のもと,Xの参入に積極的に協力したこと,また, Xも殊更本件混入事実を公 表しようとはしなかったことは否定できないが,Xが,本件混入事実を外部に 漏らさないことと引換えに本件肉まん契約を獲得し,あるいは維持したとまで. 認めることはできず,本件肉まん契約が,XY双方の不法,不当な目的が合致 した結果の産物,あるいはその結果により維持されたものであるとまでいうこ とはできない。」「したがって,本件肉まん契約の解約に「正当な事由」が必要. でないということはできないし,また,平成13年秋ころ,Y社内において,. MD大肉まんにTBHQが混入していたこと, YからXに対し6300万円の支払が なされていることが問題となり,ミスタードーナツ調査委員会の調査の結果,. 最終的に本件肉まん契約を解消すべきであるとの結論に至ったが,不適切な契 約であるとの解約事由は,Y側からみた一方的な見方にすぎないというべきで. あって,本件肉まん契約の一方的解約を正当化する事由とみることもできな 100.
(7) 一定期問継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. い。」と判示した。. また,XのMD大肉まんの供給の遅滞について,「本件肉まん製造依頼書に 定められた期日は供給の目処にすぎないこと,前述のように,Yは,平成12年 12月中旬以降,大連食品工場の立上げに協力していたこと,また,Xが製造を. 新工場に変更したことは,遅くとも平成13年3月ころには,Y側において明確 に認識されていたにもかかわらず,… Y側から,工場はいつできるのか, 肉まんはいつ供給できるのかといった問い合わせを何度かしたものの,供給が 遅れていることについて,早く供給するよう催告したことはなかったこと,Y. がXに対し,平成13年9月,大連食晶工場の供給体制の進捗状況についての報. 告を求め,平成13年10月,過去1年の月別出荷数量を報告していることから すれば,Yは, XがMD大肉まんの製造を新しく立ち上げる大連食品工場で行 うことについて,承諾を与えていたというべきである。」「よって,Xの供給が 遅れたことをもって,本件肉まん契約の解約に「正当な事由」があったという ことはできない。」として「本件肉まん契約の解約に「正当な事由」が必要で ないとはいえず,また,解約に「正当な事由」があったとも認められない。」 と判示した。. 以上から,「Yによる本件肉まん契約の解約に「正当な事由」は認められな. いから,平成13年12月以降本件肉まん契約を解約する旨通知し,MD大肉ま んの受領を拒否したことは,本件肉まん契約の債務不履行に当たる。」と判示 して,Yに対して,1億7633万円余の賠償の支払いを命じた。. 【参照条文】. 民法415条. 101.
(8) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). 【研 究】. 1.本判決の意義 本判決の肉まん供給業務委託契約1)(以下,「肉まん契約」という。)は,一. 年ごとの更新の方法について定められている。これは,個別の発注期間が1年 間を目処にしてなされるとの合意があったことを示すにすぎず,期間の定めの ない契約とした上で,「契約の実現に一定の資本の投下が必要で,継続される ことを前提に当該契約が締結された場合,当事者はその契約から投下した資本 を回収することを期待しているから,このような場合には,一方当事者の解約. 申入れによって契約を終了させるのは妥当ではなく,契約を解約するために 「正当な事由」が存在することが必要であるというべきである。「正当な事由」. が必要であるか否かは,契約の目的物の性質,当事者の性質等事案の特質を考 慮して判断するのが相当である。」として,肉まん契約は,一定期間継続され ることが当事者間で前提となっているので,肉まん契約を解約するには,「正. 当な事由」が必要であると判示した。そして,Y主張の肉まん契約の不法性・ 不当性とXの供給の遅滞の主張はいずれも「正当な事由」2)に当たらないと判 示した。本判決の肉まん契約のような継続的取引3>において,後述する判例の 動向に依拠しつつ,「正当な事由」の必要性及びその有無を詳細な事実認定に より判断したことは,実務上同種の継続的取引の解約について参考になるもの と思われる4)。. 2.判例および学説 (1)判 例. 本判決では,肉まん契約は,期間の定めのない契約であり,その解消の際 には「正当な事由」が必要であるとしている。. まず,期間の定めのない契約の解約は,期間の定めがないからといって, 解約を望む者を永遠に拘束させるものではないので,原則として,相当の期 102.
(9) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. 問を定めて予告することによって,解約ができると考えられる。民法上の継. 続的契約の典型である賃貸借では617条,雇用では627条で期間の定めのな い場合の解約方法について定めている。. 判例では,①期間の定めのない継続的取引の解約では,原則として,いつ. でも契約を将来に向かって解約の申し入れを行うことができるが,契約締結 前後の状況に鑑みて,相当の予告期間を設けるとか,相手方に不利ではない. 時期に解約すべきであるが,やむを得ない事由がある場合,予告期間は不要 であり,また,相手方にとって不利な時期に解約しても,その相手方に対し て損害賠償の責任を負うことはないと判示したもの5),②およそ期間の定め のない継続的売買契約では,被供給者に著しい不信行為,あるいは,販売成. 績の不良等,取引関係の継続を期待しがたい重大な事由がある場合,供給者 は,一方的に解約をすることができると判示したもの6),③期間の定めのな い継続的な契約の解約において,当事者の合意がない場合であっても,原則 として,いつでも契約を将来に向かって解約の申し入れを行うことができる が,契約締結前後の状況に鑑みて,解約の申し入れをするには相当の予告期 間を設けるか,設けなかった場合は解約申し入れ後の相当の期間の経過によ って契約が終了するものと解すべきであるが,相手方に著しい不信行為など 契約を継続しがたい特段の事情がある場合,直ちに解約の申し入れができる と判示したもの・)などがある。. 次に,期間の定めのある契約である。本判決のような継続的に取引がなさ れる契約には,1年を単位として更新されるものが多い8)。本件業務委託契. 約書の第3条9)でも,契約期間は1年で,両当事者いずれかにより期間満了2 か月前までに書面で更新しない旨の意思表示がない場合には,本契約は自動 的に1年更新されること(1項),両当事者は契約期間中といえども相手方に. 書面による2か月前の予告により本契約を解除できること(2項),Yは, X に契約義務違反や差押えを受けた場合,ただちにこの契約を解除することが できる(3項),と定めている。. 103.
(10) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). このような期間の定めのある契約の場合は,期間の途中での解約と期間満 了における終了がある。前者においては,化粧品の製造業者販売部門と代理 店の取引(取引期間4年)において,被供給者が,契約違反をして第三者に 取引条件を告げ,代金の支払いを遅滞し,傘下の特約店に対して,供給者及 び供給者の商品について中傷したことなどの事実認定した上で,「取引を継 続し難いやむを得ない事由があった」として,供給者からの解除を認めたも のがある10>。後者においては当事者の一方が更新を拒絶した場合に特に問題. となる。判例では,①農機具の販売(取引期間16年)において,供給者が 被供給者に対して,契約の更新を拒絶した事案で,契約締結時の事情,契約 の性質,当事者の利害得失等に照らせば,「たとえ基本契約書に本件契約の 有効期間一年間とする。期間満了三ヶ月前に当事者の申し出のない限り更に. 一ヶ年延長する旨の定めがあったにしても,それが期間満了三ヶ月前の当事 者の一方的終了の意思表示によって契約を終了させ得るものと解することは. 妥当でなく,債務不履行又はこれに準ずる事由には限られないが契約を存続 させることが当事者にとって酷であり,契約を終了させてもやむを得ないと いう事情がある場合には契約を告知しうる旨を定めたものと解するのが相当 である。」と判示したもの11),②25年以上継続したカミソリ製品等の販売契. 約について,1年間の期間の定めがあり,供給者がこの契約の更新を拒絶し た事案で,「継続的な取引契約が長期間にわたって更新が繰り返されて継続 し,それに基づき,製品の供給関係も相当長期間続いていたような場合にお いて,製品の供給を受ける者が,契約の存在を前提として製品の販売のため の人的・物的な投資をしているときには,その者の投資等を保護するため契 約の継続性が要請されるから,公平の原則ないし信義誠実の原則に照らして,. 製品を供給する者の契約の更新拒絶について一定の制限を加え,継続的取引 を期間満了によって解消させることについて合理的な理由を必要とする。」 と判示12)したものなどがある13)。. 一般的に,判例は,継続的取引を解約するには,たとえ契約で期間や解約 104.
(11) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. の予告(更新拒絶)について定めてあっても,契約の諸事情や当事者の利益. 損失等を考慮して,解約を正当化できる事由を必要としている。本判決では 「正当な事由」としている。期間の定めの有無の箇所で前述した判例も,「取. 引を継続し難いやむを得ない事由」「公平の原則ないし信義誠実の原則」に 照らした合理的な理由など文言自体は異なるものも契約内容に記載されてい ない解約の「正当な事由」を解約者に要求している。そうすると,具体的に. 何が解約の「正当な事由」に足り得るかが問題となるが,この点については 3で後述する。 (2)学説. 本判決で問題となった肉まん契約のような継続的取引の法的性質につい て,学説は以下のようなものがある14)。伝統的契約法を前提として,①契約 の解釈によって解決しようとするもの15>,②公序を理由として,一定の場合. に国家が契約に介入することを認め,それがどのような場合か検討するもの (独占禁止法等),③フランチャイズ契約等の個別・具体的な契約に関する検. 討を行うもの,④継続的取引には,基本契約と個別の契約の二重構造がある ことに着目して,その構造を解明しようするもの,などがある。伝統的契約 法の適用領域を制限して,それと並ぶもう一つの法体系を構築して,適切な 解決を図ろうとするものには,⑤関係的契約法理論16>によって解決を図るも. の,⑥例えば,医師と患者のように,一定の権限を持った他人に委ね,信頼 し依存する・「信認関係」を,別個なものとして認めるべきとして,契約法と は別に「信認法」の構築を図るものがある17)。. 本判決の委託契約の他に,継続的取引の種類として典型的なものとして, フランチャイズ契約,代理店・特約店契約,サブリース契約等がある18)。. 継続的取引の解約をするためには,期間の定めがある契約では,期間満了 後の更新拒絶において,「正当な事由」が必要か,期間の定めがない契約で は,自由に解約することができるのか,「正当な事由」を必要とするのか,. 解約できるが,解約する者は賠償責任を負うのか,が問題となる。この問題 105.
(12) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). については,3で論じる。. 3.検 討、 (1)継続的取引における契約期間の拘束力. 本判決では,「本件業務委託契約書は,XY間の合意内容を記載した書面と は認められず,本件肉まん製造依頼書は,本件肉まん契約の枠組みとして基 本的な内容を規定するものではあるが,前記認定に係る発注期間についての. 記載は,個別の発注期間が1年間を目処にしてなされるとの合意があったこ とを示すにすぎ」ないとして,本件業務委託書では,期間の定めがあるのに. かかわらず,本件肉まん契約を期間の定めのないものと判示した。この1年 の契約期間は目処に過ぎないとした本判決の判断は妥当であろうか。. 継続的取引の契約書では,前述したように期間を1年として,その1年ご とに更新をする形式が多い。本来長期間にわたっての契約関係を前提として 契約を結ぶのであるから,当事者の意図と契約書の内容とは矛盾するように も思われる。しかし,当事者に契約関係を長期間維持したいという意図とと もに,相手方が継続的取引関係の維持の上で,例えば,①相手方が信頼関係 を破壊する行為を行ったこと,②相手方の経営状況の悪化,③解約者の合理 的経営判断や,④相手方に明白な契約違反がないにかかわらず,解約者が継. 続的取引関係の維持を望まなくなったなどの場合に,特に解約の理由を示す ことなく継続的取引関係を終了でき,表面上は契約期間満了ということにな る。. しかしながら,この方法で契約を終了させることはほとんどない。という のは,まず,契約違反が重大であれば,期間の満了を待たずして解約ができ るからである。次に判例の多くは,契約書に期間の定めがあったとしても,. それだけでは解約(更新拒絶)をする理由として充分ではなく,「正当な事 由」が必要であるとしている。本判決では,肉まん契約を期間の定めのない ものとして,解約するには「正当な事由」が必要であるとしている。 106.
(13) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. そうすると,継続的取引における期間の定めというのは,契約書の期間の 定めの記載それ自体だけでは例文程度の意味を有する1こ過ぎず,次の(2),. (3)で論じる「正当な事由」と相侯って考慮されるものと思われる。したが って,本判決が肉まん業務委託契約を期間の定めのない契約としたことは一 応妥当といえる19)。. (2)解約(更新拒絶)における「正当な事由」の必要性. 本判決の肉まん契約は,期間の定めのないものとされた。期間の定めのな い契約の場合は,前述したように自由に解約することができるとするもの, 「正当な事由」を必要とするもの,解約できるが,解約する者は賠償責任を. 負う,ということが問題となる。しかし,実際の判例においては,自由に解 約できるとするものは基本的にはない。したがって,判例では,何らかの形 で「正当な事由」を必要としているといえる。. 本判決では,原則的には当事者からの解約申し入れによって終了するが, 「契約の実現に一定の資本の投下が必要で,継続されることを前提に当該契 約が締結された場合,当事者はその契約から投下した資本を回収することを. 期待しているから,このような場合には,一方当事者の解約申入れによって 契約を終了させるのは妥当ではな」いから,契約を解約するために「正当な. 事由」が存在することが必要であるとした。その基準として,「契約の目的 物の性質,当事者の性質等事案の特質を考慮して判断するのが相当である。」. と判示した。そして,①本件肉まん契約の目的物は,MD大肉まんであるこ と,②MD大肉まんは, Yの各店舗で販売される商品であったこと,③Xが. MD大肉まんを製造するに当たり,XにはMD大肉まんの商品情報,製造の ノウハウ等がすべて開示されることとなっていたこと,④Xには月100万個 の発注が約束されていたこと,⑤Xの工場施設の改善等についてY側から指 導がされることとなっていたこと,を考慮して,本件肉まん契約は一定期聞 継続されることが当事者間において前提となっていたから,本件肉まん契約 の解約には「正当な事由」が必要であるとした20)。. 107.
(14) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). 2で前述した判例においても(期間の定めがある場合であっても),「正当 な事由」が必要であるとしているのがほとんどである。しかし,最高裁の判. 決である資生堂販売事件(最高裁平成10年12月18日判決21)は,第一審,第 二審がやむを得ない事由が必要であるとしたにもかかわらず,「本件事実関 係の下においては,本件解約が信義則に違反せず,倫理の濫用に当たらない」 としてやむを得ない事由について直接には言及していない。この点について, やむを得ない事由と信義則違反・権利の濫用とでは,証明責任の違いがあり,. また,後者では解約者側の主観的態様の悪性が要件となる可能性があり,解 消制限がなされにくくなるとの指摘がある22)。. 前述した東京地裁平成11年2月5日判決では,「公平の原則ないし信義誠 実の原則に照らして,製品を供給する者の契約の更新拒絶について一定の制 限を加え,継続的取引を期間満了によって解消させることについて合理的な 理由を必要とする。」と判示している。この判例は,「正当な事由」がなけれ. ば解約できないというのでなく,期間が満了したということを考慮して,合. 理的な理由が必要であればよいとして,当事者の利害状況を具体的に比較考 量して,問題の状況に応じたきめの細かい検討をしているd本判決において も「契約の目的物の性質,当事者の性質等事案の特質」を前述の①から⑤ま での詳細な検:討を行っている。. 裁判実務としては,契約締結まで,また,その後の状況も含めて一連の状. 況をいろいろ認定しながら裁判所が事後的評価しなくてはならない場面で は,やむを得ない事情等を一般条項的な要件として,諸事情の評価の根拠と している判例が比較的多いとの指摘がある23)。そして,実質的には,やむを. 得ない事情にしろ,信義則違反・権利の濫用にしろ,理論的に後者の方が解 消制限されにくくなるが,結論においてはそれほどの違いがない。資生堂販 売事件以後は,必ずしもやむを得ない事由にこだわる必要はないのではない かと空気を感じている,と述べるものがある24)。. 以上を考慮すると,継続的取引の解消に当たっては,必ずしも「正当な事 108.
(15) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. 由」(やむを得ない事由)まで必要というわけではないと考えられる。むし ろ,契約に至った経緯,契約後の状況,取引年数,予告期間,当事者の力関 係・依存度等をきめ細かく考慮して,解約者が解約する利益と,解消される. 者の不利益を比較考量して,個別・具体的な事案において求められるべき解 約事由(難易)を集積していくことによって,類型化していく必要があると. 思われる。最終的には,具体的な事例において当事者の状況を考えて,「正 当な事由」(やむを得ない事由)が必要される限界を判断していくことが今 後必要になると思われる。 く3)「正当な事由」の有無. 本判決では,Yの肉まん契約の不法性・不当性とXのMD大肉まんの供給 の遅滞の主張はいずれも解約の「正当な事由」に当たらないと判示した。で は,どのような理由があれば,解約の「正当な事由」となるのだろうか。. 本判決のように,①XのYへのTBHQ事実指摘後, Yが,口封じをしょう という意図のもと,Xの参入に積極的に協力したこと,また, Xもその混入. 事実を公表しようとはしなかったことは否定できないが,Xが,本件混入事 実を外部に漏らさないことと引換えに本件肉まん契約を獲得し,あるいは維. 持したとまで認めることはできず,本件肉まん契約が,XY双方の不法,不 当な目的が合致した結果の産物,あるいはその結果により維持されたもので. あるとまでいうことはできないこと,②XのMD大肉まんの供給の遅滞につ いて,本件肉まん製造依頼書に定められた期日は供給の目処にすぎないこと,. Yは,工場はいつできるのか,肉まんはいつ供給できるのかといった問い合 わせを何度かしたが,供給が遅れていることについて,早く供給するよう催. 告したことはなかったこと,などを理由としてYの解約には「正当な事由」 がないと判示したことは肯定できる。というのは,①では,本件肉まん契約. が公序良俗に反するものまではいえないこと,②では,Xの遅滞によって, XY問の取引が継続されないほどの信頼関係の破壊は無いからである25)。. 109.
(16) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). この点,解約の「正当な事由」として,被解消者の受ける損害を考慮して, 解消者は,被解消者に補償を与えるべきであるとの見解がある26)。この見解. は,取引の終了に伴う事後処理をするに足りる相当な時間的余裕を被解消者 に与え,また,取引を終了させる時期についても,被解消者にもっとも損害 が少ない時期を選ぶ時期にすべきである。そして,予告や予告期間が適切で はなかった場合は,その代償として,相当な補償をすべきで,また,場合に ’よっては,事前の予告に加えて,補償を併用すべきあるという27)。. 継続的取引は,賃貸借契約の解約における信頼関係の破壊するほどの「正 当な事由」(やむを得ない事由)までは必要でないと考えるので,経済的合 理性からの解約は一般に認められてよいが,相手方の損害についても何らか の考慮が必要であると考える。その意味で,被解消者に補償をすることで,. 解消者が不相当な予告期間により解約を行い,必ずしも「正当な事由」が具 備されていなかったとしても,実際の解決方法としては穏便であると考えら れる。しかしながら,補償をすれば解約はできる,補償をしなければ解約は できない,とすると解約者の便宜が図れることになろうが,相当な補償額を 何を基準として算定するかなど克服すべき問題が残される28)。また,実務に おいても影響が大きく,その点も考慮しなくてはならないであろう。. 結局のところ,事案において解約の理由とされたものを個別・具体的に判 断して,解消者の解約前後の行動が,被解消者に配慮したものであったどう. かを判断するほかないと考えられる。本判決でも,Yの肉まん契約の不法 性・不当性とXのMD大肉まんの供給の遅滞の主張が,解約の「正当な事由」 であるか否かを,前者については,Yの一方的な見方に過ぎないとして,後. 者については,XのMD大肉まんの中国の新工場での製造をYが承諾したと 認められるとして,そのような事由はなかったと判示している。. 110.
(17) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. 4.おわりに 本判決の肉まん契約は,期間の定めのないものであり,その解約をするには, 「正当な事由」が存在することが必要であるとした。そして,「正当な事由」が. 必要であるか否かは,契約の目的物の性質,当事者の性質等事案の特質を考慮 して判断するのが相当であであり,本件肉まん契約を解約するには,「正当な. 事由」が必要であると判示した。そして,Y主張の本件肉まん契約の不法性・ 不当性とXの供給の遅滞の主張はいずれも「正当な事由」に当たらないとして,. Yの損害賠償責任を認めた。「正当な事由」の必要性及びその有無を契約の諸 事情を詳細に分析して結論を導き出したことは妥当である。しかし,継続的取 引には,その契約の類型・性質,損害賠償の範囲の問題など,依然として,学 説・判例ともに解決の困難な問題に直面しているといえる。. 1) 委託(販売)契約とは,法律上の定義規定はないが,委託者と受託者の問で,受託者は委託 者の供給する商品を,受託者の名をもって,しかし委託者の計算で第三者に販売し,これに 対して委託者は受託者に報酬(手数料)を支払うことを約する契約をいう。委任契約(民法 643条)の類型に属する。他人のために自己の名をもって法律行為をなすことを取次といい, 受託者は委託に応じて取次をなすもので,委託販売契約の締結は受託者にとって取次に関す. る行為であり(商法502条11号),それを業とする受託者は商品であり(商法4条1項),取 次の目的は「物品ノ販売」であるから問屋である(商法551条)(大塚龍児「委託販売契約」 『現代契約法体系 第4巻』(有斐閣,1985年)25頁)。 ,. 2)本研究では,「正当な事由」の中身自体が問題となり,その意味するところは多義的である が,以下では,解約を何らかの理由で正当化するものとして,本判決の「正当な事由」とい う言葉で統一して用いることにする。. 3) 継続的取引には,例えば,賃貸借契約にように,一個の契約が長期間継続するものと,商品. の売買が反復・継続的に行われるものの2つがある。本研究においては,後者の性質(現象 としては,単発の契約が繰り返し行われる)を有するものとして用いることとする。. 4)なお,YのTBHQが混入した肉まんを販売したことや, Xにロ止め料を支払ったことが,マ スコミに報道され,Yの売り上げが低下した。 Yの加盟店へ売り上げ低ギに対する補償とし て,Yは,加盟店に多額の出費をした。 Yの株主は,この出費は取締役及び監査役の善管注. 意義務違反に起因するものとして株主代表訴訟を提起している(第一審(大阪地裁平成16 年12月22日判決(判例タイムズ1172号271頁))は株主敗訴,第二審(大阪高裁平成18年6 月9日判決(判例タイムズ1214号115頁))は株主一部勝訴・上告)。. 111.
(18) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月) 5). 東京地裁昭和49年9月12日判決(判例時報772号)92頁。. 6). 東京高裁昭和57年8月25日判決(判例時報1054号)72頁。. 7). 大阪高裁昭和59年2月14日判決(判例タイムズ525号)118頁。同旨の判例として東京高裁 昭和59年12月24日判決(判例時報1144号)88頁がある。. 8). 柚木馨・高木多喜男〔編〕『新版 注釈民法(14)』(有斐閣,1993年)99頁(「継続的商品 売買」岩城謙二・執筆)。. 9). 以下のような規定である。. 第3条 (1)契約期間は,平成13年1月1日から同年12月31日までとし,Y及びXのいずれかにより 期間満了2か月前までに書面で更新しない旨の意思表示がない場合には,本契約は自動 的に1か年更新され,以後も同様とする。. (2)Y及びXは,契約期間中といえども相手方に書面による2か月前の予告により本契約を 解除できる。. (3)Yは,Xに,次の各号の一つに該当する場合は,ただちにこの契約を解除する、ことがで きる。. ①Xがこの契約に定める義務を履行しない場合。 ②Xが手形,小切手の不渡りを出し,銀行取引停止処分を受けた場合。 ③Xが他の債権者から差押えを受け,又は競売の申立て,破産の申立て等を受けた場合。 ④Xが会社更生法に基づく申立てをした場合。・. 10)〆東京地裁昭和58年9月8日判決(判例時報1105号)70頁。他に期間途中での解除を認めたも. のに,大阪地裁昭和52年1月27日判決(判例時報862号)87頁,東京地裁59年3月29日判 決(判例タイムズ525号)305頁がある。. 11)札幌高裁昭和62年9月30日決定(判例タイムズ667号)145頁。 12)東京地裁平成11年2月5日判決(判例タイムズ1073号)171頁。 13)他に継続契約の更新拒絶にやむを得ない事由が必要であると判示したものとして,大阪高裁. 平成8年10月25日判決(判例時報1595号)70頁等がある。 14)以下の分類は,中田裕康『継続的取引の研究』(有斐閣,2000年)10頁以下に拠った。 15)このうち,①の立場で,継続的取引理論の解明について代表的な平井宜雄教授の説を紹介す る(平井宜雄「いわゆる継続的取引に関する一考察一『市場』と『組織』の法理論の観点か ら一」『日本民法学の形成と課題 下』(有斐閣,1996年)706頁以下)。市場と組織の法理 論を手掛かりとして,市場で分業化・専門化が進むと,他の用途に転用できない特殊な非代 替的な財の需要が生じる。このような取引特殊性の財であるとき,合理的取引当事者は,L合 理的計算の結果,継続的取引を選択する。その基礎をなす社会関係は,市場(一回的・単発 的な取引の場)と組織(両当事者が取引を止めた上で作る,一方が他方に対して指揮命令関 係に立つ組織)の中間に位置する『中間組織』であると述べられている。 16)関係的契約法理論とは,アメリカのイアン・マクニールが主張したもので「意思を中核とす る古典的な契約像に対して,社会関係そのものが契約の拘束力を生み出し,また様々な契約 上の義務を生み出すという契約像を「関係的契約」というモデルとして提示し,現実の契約 112.
(19) 一定期間継続されることが前提となっている期間の定めのない肉まん供給業務委託契約の解約における正当な事由の要否. は,古典的な契約と関係的契約という二つの極で,双方の要素を様々な度合に併せ持つ形で 存在していると見る・。そして,両極の契約モデルは,それぞれ異なった契約原理を持ってお り,ある種の契約は,関係的契約の原理に大きく支配されているのだと論じる。」ものであ る(内田貴『契約の時代一日本社会と契約法』(岩波書店,20qo年)30頁)。そして,「解釈 論的な見地から捉えると,「関係的契約」モデルとは,現実の社会事実の中にあるものとい. うより,法の世界において解釈学的に構成されたものと理解すべきようであるように思われ る。すなわち,実定法規範や裁判例に,伝統的な契約モデルでは説明しにくい新たな性質の 規範が現れており,それらの規範の背後にある契約モデルとして,解釈学的に構成された契 約モデルが,関係的契約なのである。」と説明するものがある(内田・同66頁)。 17)樋口範雄『フィデュシャリー「信認」の時代一信託と契約』(有斐閣,1999年)。. 18)このうち,サブリース契約においては,特に,賃料の増減額請求の場面で問題となる。賃料. 自動増額特約が問題となった著名な判決として,最高裁平成15年10月21日判決(民集57巻 9号1213頁)がある。詳細については,拙稿「サブリース契約と借地借家法32条1項」本誌 14巻1号63頁を参回隔れたい。 19)判例では,更新拒絶(契約期間約半年)の事例で,「一般に,継続的取引契約関係では,勿 論賃貸借などの場合と異なって更新拒絶の意思表示がなされなければ当然に更新される(法. 定更新)というものではない・一。」(福岡地裁昭和39年3月19日判決(下民集15巻3号 563頁))と判示したものがあるが,結論としては,契約終了後も当事者が異議なく取引を継 点していることを根拠に,同一条件(契約期間を除く)で更新がなされたとして更新拒絶を 否定した。つまり,この判例でも,必ずしも契約期間の終了だけでは解約の事由とならず, 「正当な事由」と二二って解約の是非を判断したのである。. 20)判旨では直接の言及はないが,XのYへの肉まんの供給が可能となってから(平成13年10月 10日),わずか5日(同年10月15日)でYから解約の申し入れがなされたことも考慮されて いると思われる(XのYの求める品質の肉まんの開発・工場設立などの投下資本の回収の必 要塩冶から)。. 21)民集52巻9号1866頁。事案はおよそ次の通りである。メーカー側の卸売販売業者が,中途 解約条項に基づいて30日間の予告期間を置いて解約して,小売業者が提訴した。やむを得 ない事情,信義則違反や権利の濫用があるかが問題となった。そのような事情として,小売 業者が,対面販売やカウンセリング販売をするという契約上の義務に違反したことが問題と なり,この契約条項の解約は独占禁止法違反になるのではないかが争われた。 22)中田裕康「特約店の義務履行と特約店契約の解約」『商法(総則・商行為)判例百選』[第四 版](有斐閣,2002年)131頁。. 23)「〈座談会〉継続的契約とその解消」判例タイムズ1058号10頁(馬場発言)。 24)前掲(脚注23)幻頁∼24頁(加藤発言)。. 25)いわゆる賃貸借契約における信頼関係破壊の法理である。しかし,賃貸借契約では,この法 理が賃借人の保護のために機能する(専門家対素人)。これに対して,本判決のような継続 的取引の解約では,むしろ解約を肯定するための理由として機能する解約を肯定するための 理由として機能する(専門家々専門家(力関係の違いがある場合が多い))。したがって,両 113.
(20) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月) 契約類型の信頼関係の破壊には,属人性の観点から,ニュアンスの違いがあると考えられ る。. 26)行澤一人「継続的取引関係の終了に関する法的考察(一)∼(六・完)」神戸法学雑誌41巻. 1号,2号,3号,42巻1号,3号,43巻1号,注釈民法・前掲(脚注8)89頁「継続的商品売 買」岩城謙二・執筆)。. 27)注釈民法・前掲(脚注8)111頁。 28)補償による解決を図る見解においても,算定の基準が困難な問題になると指摘している(注 釈民法・前掲(脚注8)111頁)。. ※・本判決の評釈として,升田純「発注期間・契約期間を1年間とする肉まん供給委託契約に つき期間の定めのない契約であると認定した上,この契約の解約に正当事由がないと認 め,発注者の債務不履行責任を肯定した事例」(Le)ds判例速報2巻1号52頁)がある。. 本稿は,横浜国立大学民事法研究会(2007年2月27日開催)での報告を踏まえて執筆 されたものである。. 114.
(21)
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記)辻朗「不貞慰謝料請求事件をめぐる裁判例の軌跡」判夕一○四一号二九頁(二○○○年)において、この判決の評価として、「いまだ破棄差
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3 治療を継続することの正当性 されないことが重要な出発点である︒