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リフレーミングとリラクセーションを中核とした心理教育的援助プログラムの作成とその効果の検討

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Academic year: 2021

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リフレーミングとリラクセーションを中核とした

心理教育的援助プログラムの作成とその効果の検討

鎌田 美由紀 藤原 忠雄 秋光 恵子

1 研究目的 子どもたちの様々な問題行動や情緒的不安定さの背景には、自尊感情や自己肯定感の 低さが指摘されている(古荘,2009)。そこで、自己否定を自己肯定に置きかえるリフレー ミングを中心としたワークとともに、情緒的安定感を高めるリラクセーションを中核と した心理教育的援助プログラムを作成しその心理的効果を検討する。 2 研究方法 (1)調査対象者及び実施日時 ⅰ)A小学校 6年生 19 名 2015 年 1 月 16 日、23 日 各 45 分授業 ⅱ)B小学校 5・6年生 24 名 2016 年 6 月 11 日 60 分授業 ⅲ)A小学校 3年生 17 名 2016 年9月 16 日 45 分授業 ⅳ)C小学校教職員研修会 14 名 2016 年 8 月 26 日 2 時間半研修 ⅴ)D町教職員健康部会研修会 10 名 2016 年 12 月 2 日 2 時間半研修 (2)プログラムの構成の視点 ⅰ)生体は外界刺激に反応して「危険」という感覚を起こし、その危険を回避するためにさ まざまな「行動」を起こす(大野,2002)。しかし我々は、危険回避のためにわきあがるネ ガティブな感覚や、危険回避の行動を否定的にとらえがちである。そこでわきあがる ネガ ティブ感情や危険回避行動は、困難を乗り越え、身を守るための「本能」であると位置づ けた。 ⅱ)わきあがる怒りや悲しみなどの感情変化は、生体防御のために発生する内面的変化であ り、感情には良いも悪いもなく、ポジティブ感情だけでなくネガティブ感情も 大切である。 しかし行動には、社会生活を営むための一定のルールがあり、良い悪いという評価が伴う ことに気づかせた。 ⅲ)「叱られる」「怒られる」などの行為の裏側に ある気持ちについて考えさせ、その背後に は「他者を大切に思う気持ち」もあることにも気づかせ、叱られることによって「自分は 大 切 に され て いな い 」と い う 自己 否 定感 を もつ 枠 組 みを 変 化さ せ るこ と を ねら い と し た 。 ⅳ)短所である点が、視点をかえると長所としてとらえられることに気づくとともに 、自分 自身が自己否定的な枠組みを持っていることへの気づきを促し、その枠組みを変えていく ことをねらいとした。

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2 ⅴ)上記の視点を通して自分自身との関係性への気づきをあたえ 、その後リラクセーション 体験を通して「からだ」と「気持ち」の変化を実際に味わうことで、より自分の「からだ」 と「気持ち」の変化を体感できるようにプログラムを構成した。 (3)プログラムの構成 子 ども 教 師 目 的 ・い やな こと があ った 時の「 ここ ろ」と「 か ら だ 」 と 「 行 動」 の 変 化に 気 づ き 、 これ ら は い の ち を 守る 大 切 な仕 組 み で あ るこ と を理 解す る。 ・ 自 分 の 持 っ てい る 能 力を は っ き す る ため の 方 法 、 リ ラ クセ ー シ ョン の 技 術 を 身に つ ける 。 ・ ス ト レ ス の プロ セ ス を理 解 し 、 子 ど もと 適 切 に か か わ るた め に は、 ま ず は 教 師自 身 が 自 己 の こ ころ を 満 たす こ と 、 つ まり 自 己 を あ り の まま 肯 定 する 必 要 が あ るこ と への 理解 を深 める 。 ・ 自 己 を 満 た すた め の 方法 を 理 解 し 、 その 技 術を 身に つけ る 。 時 間 ・ A小 学校 6年 ・・・ 45 分授 業 2 回 ・ B小 学校 5, 6年 ・・・ 60 分授 業 ・ A 小 学 校 3 年 ・ ・・ 4 5 分 授 業 (研 究 授業 ) ・ C小 学校 教職 員研 修・・ ・2 時間 半 ・ D町 教職 員健 康部 会 研修 会・ ・2 時間 半 リ フ レ ー ミ ン グ ・気持 ちと 身体 の関 係を 体 感す る 「ニ コ 、 ム カ、 シュ ン」 ゲー ム を実 施す る 。 ・ 気持 ちと 身体 に力 を入れ て、 いや なこ と を 乗 り 越 え よう と す るい の ち を 守 る すば ら し い し く み があ っ た から こ そ 、 こ うし て い の ち を つ なげ て 、 みん な 生 き て いる こ とが でき てい る こ とを理 解す る。 ・ 自己 否定 の 気 持ち がある と、 身体 が緊 張 し能 力が 発揮 でき ないこ とを 理解 する 。 ・ 親 や 先 生 が 叱っ た り 、怒 っ た り す る のは な ぜ か 考 え 、 その 行 為 の裏 側 に は 親 や教 師 の 、 自 分 を 大切 に 思 う気 持 ち が あ るこ と に気 づか せる 。 ・ ス ト レ ス の プロ セ ス から 人 間 の 行 動 を理 解 する 。 ・ 自 己 と の 否 定的 な 関 係 が ス ト レ ス を 高め て い る こ と に 気づ く と とも に 、 こ う して 生 き て い る の は、 身 体 の素 晴 ら し い 仕組 み が あ っ た か らで あ り 、ま た 多 く の 人と の ふ れ あ い に よっ て 、 存在 で き て い るこ と に気 づく 。 ・ 自分 との 良い 関係 が 、他 者と の良 い関 係 を 生む こと を理 解し 、現在 の自 己と の関 係 性を 意識 化す る 。 ・ 自己 との 良い 関係 を生む ため の方 法と 技 術 を理 解す る ⅰ )自 他と の 良 好な 関係性 を築 くた めに 、 気 持ち と言 葉の 適切 な使い 方を 学ぶ ⅱ )自 己を ほめ る意 味と 、 その 方法 と実 践 リ ラ ク セ ー シ ョ ン 《 A小 学校 6年 生 》 気 持ち と身 体の 関係 を体感 した 後、呼吸 法 、 動 作 法 、 筋 弛 緩法 、 ペ アリ ラ ク セ ー シ ョン を 体感 する 。 《 B小 学校 5・ 6年 生 、A 小学 校 3 年生 》 ス ト レ ス と リ ラク セ ー ショ ン へ の 理 解 を深 め る た め に 、 紙芝 居 「 イラ イ ラ し た ら どう す る ? 」 を 活 用し な が ら、 呼 吸 法 と 動 作法 を 体 験 し た 後 、再 度 、 呼吸 法 と 動 作 法 のト レ ーニ ング を行 う。 《 C小 学校 教職 員研 修会 》 ・ 自 己 と の 良 い関 係 を 生む 方 法 と 技 術 の一 つ とし て「 リラ クセ ーショ ン」を体 感す る 。 ⅰ )呼 吸法 ⅱ )動 作法 《 D町 教職 員健 康部 会 研修 会》 ・ リ ラ ク セ ー ショ ン 音 楽を か け な が ら 指導 者 の 誘 導 に 従 って 、 母 親の 胎 内 で 自 らの か ら だ を 創 造 し、 母 親 と協 力 し な が ら自 ら の 力 で 生 ま れ出 て き た自 分 を イ メ ージ し た 。 そ し て 手足 、 肩 や背 中 な ど か らだ の 各 部 位 に 意 識を 向 け 、力 を 入 れ て 緩め る と い う 動 作 をく り か えす と と も に 、か ら だ の 各 部 位 の 機 能 に 思 い を 馳 せ な が ら 、 そ の 部 位 に感 謝 を 伝え る と い う イメ ー ジワ ーク を お こな った。

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3 (4)質問紙の構成 ⅰ) リラクセーション実施前後の気持ちの変化を測定するために、気分チェック尺度 (冨 永,2014)を用いて測定した。ネガティブ項目 10 項目、ポジティブ項目が 2 項目合計 12 項目について、「あてはまらない:0点」~「とてもあてはまる:3点」までの 4段階 で回答した。(C小学校教職員研修会では時間の関係で未実施) ⅱ)教職員のストレスとバイタルサインの変化については、研修前に簡易ストレスチェ ックリスト(桂・村上版)を用いて心身のストレスを問う30の質問に対して、該当 する項目に◯をつけて回答した。バイタルサインについては研修前後に赤外線放射温 度計と手首式デジタル血圧計を用いて測定した。 3 結果と考察 結果と考察については、紙面の都合上、子どもへの結果について 報告する。 リラクセーションの実施前後に小学3年生17名、小学5年、6年生39名に対し て気分チェック12項目について調査を行ったところ図1、2の結果であった。調査 項目の中の「ストレス反応」とは質問項目のネガティブストレスである「緊張する」 から「集中できない」までの 10項目の平均得点である。また活性度とは、「元気いっぱ い」と「気分すっきり」の二項目の平均得点である。 これらの結果から、ネガティブストレスは小学3年生では疲れ、5、6年生では緊 張が一番高く、小学3年生が強い疲労感を感じているという状況であった。(図1) リラクセーションを実施した後の気分変化について、小学校3年生においては、「緊 張している」がt(16)=2.21,p<.05、「疲れている」 がt(16)=2.50,p<.05で、 有意に得点が減少し、「考えられない」は、減少 傾向にあった。小学3年生において高 い疲れ感が有意に減少し、緊張感も緩んだという結果であった。 図1

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4 また小学5,6年生においては、「緊張している」がt(38)=5.98,p<.01、「心配 している」がt(38)=3.56,p<.01、「疲れている」がt(38)=3.45,p<.01、「ネ ガティブストレス反応」がt(38)=4.32,p<.01であり、有意に減少した。「考えら れない」「元気いっぱい」は減少傾向にあった。小学校5,6年生においては、緊張得 点が大きく減少し、心配や疲れも改善したという結果であったことから 心身のリラッ クスがもたらされたと考えられた。この結果は、藤原(2006)、小川(2001)が述べる リラクセーション効果と一致している。 4 まとめ この心理教育的プログラム は、リフレーミングによって自己肯定感を高め、リラクセ ーションによって情緒的安定感を高めることをねらいとして作成した。その結果、小学 生も教職員もストレス反応が軽減したという結果であった。しかし、こうした効果はリ ラクセーションのみのプログラムでも確かめられていることから、今回のように気分チ ェックのみの調査だけではリフレーミングが自尊感情を高める効果があったとはいうこ とができない。 しかし、プログラム実施後の教職員の 感想には、ありのままの気持ちを認めることや また自己をほめることなど自分との関係性を良好に保つことへの肯定的な 記述が多くみ られた。L.マイケル・ホール/ボビー・G・ボーデンハマー (2009)は、私たちは考え方 や感じ方や人とのかかわり方を決める枠組みを持ち、この枠組みのフレームをチェンジ させることによって現実への見方を変化させ、人生の方向性を切り替え、過去を変え、 気持ちを建てなおすことができると述べている。つまり今回のリフレーミングが自己に 対する気づきを生み、それが「自己否定」という枠組みに気づくきっかけとなり、その 枠組みを「自己肯定」という方向性にきりかえようとする意欲が高まったとも考えられ よう。 図2

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5 この取り組みがきっかけとなり、A 小学校ではこれらの内容が教職員の研修内容とし て掲げられ、翌年度には3年生で模擬授業を行うこととなった。またB小学校では朝活 タイムとして学校全体で呼吸法と動作法を取り入れている。その結果、姿勢がとても良 くなった(B校)。からだの緊張を自分で緩めることができるようになった (B校)。声が 小さかった子が大きな声で発表するようになった(A校)。教師のリラクセーションにな った(A校・B校)。職員の子どもに対する意識がかわった(A校)。など取組後の変化 を報告している。 しかし本研究の課題としては、気分チェックのみの調査で終わり、自尊感情が 測定で きていないためリフレーミングの効果が検証できていないこと。また統制群を設けてい なかったことがあげられる。またプログラムの実効性を高めるには3時間程度の時間確 保が必要であるが、こうした時間をどのように生み出し 、位置づけるかなどがあげられ る。今後は、これらの課題をふまえて、リフレーミングとリラクセーションを中核に置 いた心理教育的プログラムを子ども、教師、保護者を対象として今後も実践し、その効 果や課題を検証しながら本プログラムに改善工夫を加えたいと考えている。 【引用・参考文献】 藤原忠雄(2006).学校で使える5つのリラクセーション技法 ほんの森出版株式会社 古荘純一(2009).日本の子どもの自尊感情はなぜ低い 光文社新書 L・マイケル・ホール/ボビー・G・ボーデンハマー(2009).NLPフレーム・チェ ンジ 視点が変わる<リフレーミング>7つの技術 春秋社 小川恵子(2001).ストレス教室の開き方 保健同人社 大野太郎 他(2002).ストレスマネジメントテキスト 東山書房 冨永良喜(2014).ストレスマネジメント理論による心とからだの健康観察と教育相談 ツール集 あいり出版

参照

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