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組織変革と組織変化 : 変革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役割について

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Academic year: 2021

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(1)論  説. 組織変革と組織変化 一一 マ革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役割についで一一. 山  岡. 徹. はじめに.  あらゆる変革の試みにとって変革への抵抗は避けることのできないリアクションである.そ. れだけに抵抗への対処は,組織変革において最も重要な課題のひとつであろう.なぜならば, 抵抗に代表される変革の制約要因への対処によって,変革の成果が規定されるからである.変 革の制約要因に対処するためには,まず多様な制約要因を把握し,それらの性質を理解する必 要がある.変革にはどのような制約要因が存在し,いかに作用するのか,特に変革の実施段階 で作用する制約要因について,個人レベルおよび組織レベルから明らかにすることが本論の第 一の課題である..  また組織変革に関する多くの先行研究では,変革の実施段階で作用する制約要因に注目して きたが,変革の立案段階には必ずしも十分な関心が払われてこなかった.しかしながら,変革. の成果は実施段階だけではなく,立案段階にも依存することは明らかである.したがって,本 論では立案段階にも注目する.すなわち,変革の立案段階ではどのような制約要因が作用して いるのだろうか?これが本論の扱う第二の課題である..  そして本論の第三の課題とは,変革の制約要因の位置づけに関する問題である.以下で詳述 するように,従来の組織論では組織変革の制約要因が多岐にわたり指摘されてきた.これらの 議論の前提には,「組織は容易には変わらない」,「変化を頑なに拒絶する現状維持志向が組織. には存在する」といった組織観が存在している.しかしながら,現実の世界に目を向ければ明 らかなように,昔からずっとそのままで変わらない組織など存在しない.多くの組織では,構 造やプロセス,人事制度,組織文化などの変化を繰り返し経験している.この事実認識を前提 とするならば,変化を頑なに拒絶するほどの現状維持志向が組織に果たして存在するのだろう. かという疑問が湧いてくる.指摘されている多くの制約要因にもかかわらず,なぜ組織は実際 に変化できたのだろうか?それは経営陣や変革リーダーによる変革努力の賜物であるとする議 論もあるかもしれない.しかし果たしてそうだろうか.視野を組織に限らず広げてみると,多 くの事象にとっては「変化する」ことよりも,むしろ「変化しない」ことのほうがはるかに難 しいのではないか.もしそうならば,変革の制約要因の議論はどのように位置づけるべきだろ うか.これが本論で扱う第三の課題である..  結論を先取りすると,組織変革の難しさとは,組織が容易に変化しないことではなく,むし.

(2) 14(80). 横浜経営研究  第27巻  第2号 (2006). ろ常に変化する組織を捕らえられないことに由来すると本論では考えている.というのも,組. 織は多岐にわたる変革の制約要因にもかかわらず常に変化しているからである.その変化の原 動力となるのが組織における矛盾や葛藤の存在である.組織変革においては.変革を制約する 要因とそれとは矛盾する論理とが同時に作用しており,組織は常に葛藤状態におかれる・その. 意味で,組織変革とは矛盾や葛藤を介して組織を変化させるプロセスであると言えるだろう. 以上が本論における主な主張である.以下では,組織変革に付随する制約要因について詳述し,. それらが組織にもたらす矛盾や葛藤について検討し,組織を変化させる原動力について考察す る.. 膠着状態としての組織. 1.組織は容易には変わらない  組織において日常的に作用する変革抵抗力をモデル化した議論として,Lewin(1951)を指 摘することができる.Lewin(1951)は,組織にとっての安定状態を,変革を推進する力と変 革に抵抗する力がバランスする膠着状態としてモデル化した.すなわち,組織にとっての安定 状態とは,変革を推進する力や変革に抵抗する力が存在しないということではなく,それらの 諸力がバランスすることによってもたらされることをこのモデルでは想定する.また別の観点 から言うならば,変革に向けた活動が実際に展開されるためには,変革への抵抗力を克服する 必要があることをこのモデルでは示唆している.またLさwin(195ユ)は,組織に変化をもたら. すプロセスとして,[解凍→移行→再凍結]からなる変革プロセスを提示した.解凍プロセス とは変革活動の前段階として,現状と満たすべき水準とのギャップを組織成員に認識させる段 階であり,移行プロセスとは変革に向けた活動プランを実行する段階,また再凍結プロセスと は変革活動の事後段階として,新たに導入された望ましい行動を定着させるための段階である.. この変革に関する規範的プロセスでは特に解凍および再凍結の段階が強調される.その背景に は,組織においては変革に抵抗する力が日常的に働いているため,組織変革のプロセスでは変 革への抵抗力に対して入念に対処する必要があるとの基本認識がある..  このように組織を諸力の相互作用の場として捉え,組織変革への抵抗力に主な焦点を合わせ つつ規範的な変革プロセスを提示した点でLewin(1951)のモデルは意義深い.しかしながら, このモデルは組織の変動状態に焦点を合わせた理論というよりも,むしろ組織の均衡状態を説 明する理論という側面が強い.なぜならば,このモデルでは組織における変化は一時的な不安 定さとして捉えられ,安定した均衡状態を乱すものと考えられているからである.たとえば, 解凍プロセスとは旧来の均衡状態を解くことを意味しており,また再凍結プロセスとは新たな 均衡状態を固定化することを意味している.このことからも組織にとっては均衡状態がむしろ 常態であり,変化は一時的な不均衡状態として位置づけられていることがわかる.すなわち, 組織にとって変化とは一時的なものであり,組織にとっての常態とは諸力のバランスに基づい た膠着状態であるとの基本認識がこのモデルの前提として存在すると言えるだろう・. 2.むしろ変わらないことの方が難しい  上記のとおり,Lewin(ユ951)による組織モデルは,日常の組織が「1東結」された状態,す なわち安定した状態にあるとの前提に依拠している.またその安定状態を構成する要素として,.

(3) 組織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役割について一(山岡 徹). (81)15. 変革への推進力と抵抗力とのバランスを想定している..  しかしながら,一般論として,バランスを取って均衡状態を維持することは容易ではない. なぜならば,均衡状態を構成している要素間のバランスが崩れるや否や,均衡状態は解かれシ ステムの状態が変化してしまうからである.このように考えると,組織に変化をもたらすより も,組織の状態を安定させるためにバランスを取ることのほうが,はるかに難しいのではない かという疑問が生じる.逆に言うならば,組織にとっては変化しないことよりも変化すること ほうが遙:かに容易ではないかという論点である..  またバランス概念を別の視点で捉えるならば,バランスには安定状態を保つ側面だけではな く,動くことでバランスをとる側面がある.たとえば,人間にとって目をつむって片足で長時 間バランスを取ることは容易ではない.静止のバランスが崩れると,前のめりに動いてしまう. このとき入閥はバランスを失って倒れないように前に一歩足を踏み出す.すなわち,状態を変 化させることで新たなバランスを維持している.このようにシステムの構成要素潤のバランス を取ることと,システム自体が静止バランスを保つこととは必ずしも同じではない..  以上の指摘をLewin(1951)のモデルに即して言うならば,以下の通りとなる.すなわち, 仮に組織の常態が安定状態ならば,変革の推進力と抵抗力が拮抗した均衡状態を維持する必要 がある.しかしながら,そのような均衡状態を保つことは一般に容易ではない.むしろ変革推 進力と抵抗力とはバランスせず,その結果として,組織は常にアンバランスな状態におかれて いる.このような状況下で組織は新たなバランス状態を模索して常に変動しているのではない か.すなわち,アンバランスな状態でバランスを追求するからこそ,組織は常に変動している のではないかという視点である..  本論では組織を常に変動するシステムとして捉える.またその変動の原動力とは,Lewin (1951)のモデルで言えぱ諸力のアンバランスであり,一般化して言えぱ,組織の構成要素問. のアンバランスである.すなわち,変革推進力と抵抗力という矛盾する力こそが,組織を変化 させる推進力であり,構成要素間に矛盾が存在するからこそ,組織は新たな統合状態を模索し て常に変化すると本論では想定する..  以下では,組織変革を制約する個人的要因と組織的要因について詳述し,それらと矛盾する 組織要因を提起することで,組織における葛藤状態を明らかにしていこう.. ll組織変革の実施を制約する個人的要因と組織における矛盾  組織変革を推進するにあたっては,多様な障害要因が指摘されている.Gersick(1991)は 組織に関する断続平衡説の観点から,組織の変化に立ちはだかる強力な障壁として,認知,モ チベーション,義務感を指摘している.第一の障壁である認知枠組みは,我々がいかに現実を 解釈するかを規定する.そのため現実を理解するうえで有益であるが,現実を他の視点で捉え ることを難しくする側面をもっている.したがって,仮に経営者が特定の認識枠組みに強く縛 られるならば,組織にとっての現実認識は固定化されることになる.その結果として,組織に 変化を導入することは困難となる.モチベーションに関しては,変化に対する組織成員の抵抗 と閲係している.すなわち,変化とは組織成員にある種の喪失と不確実性をもたらす.したが って,変革に伴う喪失と不確実性を減らすべく組織成員が動機づけられるならば,組織の変化 にとって強力な障壁となる.また義務感であるが,これは組織に対する利害関係者の期待や前.

(4) 16(82). 横浜経営研究 第27巻 第2号(2006). 提に関係している.組織の内外に存在する利害関係者は,いかに組織が運営されることになっ. ているかに関して何らかの期待や前提を抱いている.このため,仮に組織の均衡状態が乱され るならば,利害関係者たちはそれを元の状態に戻そうと規範的な観点から圧力をかける傾向が ある..  このように組織に変化をもたらそうとする試みは,個人の認知や心理的要因によって強く制 約されると考えられている.したがって,以下では組織変革を推進するにあたって制約要因と なる個人の認知および心理的要因について検討し,それらの制約要因とは矛盾する要因につい ても併せて検討することにする.. 1.知覚・認知的要因.  Beckhard&Harris(1977)は,変革を起こすために必要な個人の認知要因として,現状に 対する不満足のレベル,変革案もしくは目標とされる状態の望ましさ,変革の実行可能性を挙 げた.逆に言うと,現状に対する不満足レベルがそれほど高くなく,また変革ビジョンの描く. 青写真に魅力を感じられず,さらに変革の実行可能性に確信がもてない場合,変革のためのコ ストが非常に高く感じられるため,個人は変革に対して抵抗するとこのモデルでは想定する. したがって,変革マネジャーに必要な行動としては,抵抗のタイプを分析することで,抵抗に 対処しそれを減少させることが指摘されている..  仮にこのモデルに従うならば,組織において変革を広く推進するためには,現状に対する組 織成員の不満足の認知を刺激し,また変革ビジョンの望ましさや変革案の実行可能性の認知を 刺激することが重要な意味を持つ..  しかしながら,同時に,このモデルは変革を推進することの困難さを暗示している.組織に は現状満足の助長や危機感の欠如,変革プランに対する疑心暗鬼といった認知パターンに組織 成員を陥らせる側面が数多くある.変革にとって障害となるそのような認知的側面を軽視し, 安易に危機意識の強化や変革プランへの賛同を追求したところで,実質的な組織変革の成果は 望めないだろう..  以下では,特に組織変革の障害となるいくつかの知覚・認知的要因に焦点を定め議論を展開 する.そのうえで,にもかかわらず,なぜ組織が変化するのかについても検討しよう. (1)選択的知覚による認識の歪み ’①変革の制約要因.  組織変革に対する必要性の認知は,外部環境の変化を契機とする場合が多い.すなわち,外 部環境が変化したことを契機として,その変化に適合する組織構造やプロセスの再構築が試み られる.逆に言うならば,環境上の変化が多くの組織成員に認知されなければ,組織における. 変革の必要性もまた認知されないことになる.変革の必要性を認めない組織成員は,変革の実 質的な推進者や協力者になり得ないことを考慮に入れるならば,環境変化を認知できないこと は,変革を組織レベルで導入したり推進したりするうえでの大きな障害要因となる..  ここで特に問題となるのは,自己変革や新たな学習を自らに要求する環境変化ほど,人間に は認識が困難な傾向がある点である.たとえば,自社のシェア低下を契機として営業部門で顧 客への営業スタイルを見直すことになったとする.そこで導入された新たなスタイルとは,従 来の人間関係中心型から解決策提案型のセールスであったとしよう.この場合,従来の営業ス.

(5) 組織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役割について一(山岡 徹). (83)17. タイルで長く経験を積み高い業績を上げてきた営業マンや,従来の営業スタイルに自らの信念 を重ねて仕事に取り組んできた営業マンほど,新たな営業スタイルを導入する必要性が認識で きない傾向がある.すなわち,そのような営業マンほど近年の顧客ニーズが人間関係中心型か ら解決策提案型の営業に移行しつつあるという環境変化を認識できないため,変革の取り組み に対して抵抗する可能性が高い..  Dearborn&Simon(1958)はこのような認知上の防衛機構を選択的知覚の問題として議論 している.ここで選択的知覚とは,自らの信念や価値観,志向性などに基づいて情報を選択し 解釈する傾向を指す.上記のケースに即して説明するならば,変革の取り組みに直面した人間 関係中心型の営業マンは,自らの営業スタイルを支持する情報ばかりを偏って選択し,その情. 報に対し自らの信念に沿う解釈を与える傾向がある.したがって,顧客ニーズの変化という環 境変化をこの営業マンは認知することが困難となる.その結果として,変革の必要性も認知さ れない.このように選択的知覚は自らの信念や価値観などに基づくがゆえに,選択的知覚を通 じて自らの信念や価値観が一層強化されるという循環プロセスをもつ..  また故意に情報を取捨選択しているわけではなく,無意識のうちに自己の信念や価値観を防 衛すべく働く機構であるために,環境変化や変革の必要性を当人に認識させるには何らかの工 夫が必要となる.たとえば上記のケースならば,新たなセールス手法の問題点を検討するプロ セスに変革抵抗者を参加させたり,試しに短期間だけでも新しい手法で営業活動を実践させて. 短期的な成果を出させるなど,変革の取り組みに何らかのかたちでコミットさせることが必要 となるだろう..  また組織の規模が大きい場合,分業体制の下で働く個々の組織成員にとって,組織全体が陥 りつつある危機は認識しづらい状況にある.そのほかにも,外部からのフィードバックが不足 していたり,業績目標基準の設定が低すぎる場合も,組織成員は現状満足に陥りやすい.組織. 変革に着手するにあたっては,これらの知覚・認知的要因に対処し変革の必要性を訴えるプロ セスが不可欠である.. ②それでも組織は変化する.  変化の必要性を認知するに際して,上記のように選択的知覚が制約要因として作用すること は確かであろう.しかしながら,自分にとって都合のよい解釈をしがちな傾向が人間の認知パ ターンにあることと,そのような都合のよい解釈を当人が持ち続けることができるか否かとい うことは別問題である.上記のケースに即して説明すると,仮に顧客ニーズの変化が事実だと. するならば,従来の営業スタイルに固執する営業マンは自らの成績を徐々に落とす事態に直面 することになる.それでも「自分の営業スタイルは閥違っていない」と辻棲を合わせようとす るかもしれないが,ここで強調したいのは,辻棲を合わせたところで営業成績が改善すること. はないということである.この場合,遅かれ早かれ,営業スタイルに対する自分の信念と従来 の営業スタイルの有効性との間に認知的不協和が生じることになる.この不協和によって生じ. た緊張状態を解消するために,営業マンは自らの営業スタイルを変化させる可能性がある (Festinger,1957).このケースのように,矛盾や葛藤が契機となって変化が促される側面を本 論では特に強調したい..  また組織において協働するケースを想定するならば,自分にとって都合のよすぎる解釈は周 囲とのコンフリクトを起こす恐れがある.この場合,上司や同僚からの忠告や警告によって,.

(6) 18(84). 横浜経営研究 第27巻 第2号(2006). 選択的知覚が修正される場合もあるだろう.組織内に限らず,たとえば自社の不祥事に際して. 都合のよい正当化をする経営者は,マスコミや社会,顧客や取引先からの強い批判にさらされ るだろう.このように選択的知覚の問題は,自身の認知的不協和や周囲とのコンフリクトを誘 起しやすい.これらの葛藤に基づく緊張状態が契機となり,選択的知覚が修正される可能性に ついても詳しく検討する必要がある.. (2)投射によるコンフリクトの激化 ①変革の制約要因  組織変革は既存の分業体制や意思決定フローの変革,さらに部門聞での既得権益構造の変革. を伴うことが一般的であるため,ある部門にとっては組織内での相対的な地位の上昇を招き, 逆にある部門にとっては相対的な地位の低下を招くことがある.ここで,変革推進者が前者の 部門関係者である場合,後者の部門関係者にとって変革とは自部門に対するある種の攻撃性を 意昧するものとして認知される可能性が高い..  その場合,変革を巡る両者の対立が生まれ,その溝は投射の循環プロセスを通じてますます 深まる傾向がある.ここで投射とは,対象を認知する場合に自分と同じ性質や態度をもつもの として捉える傾向を指す.具体的に考えよう.たとえば,変革によって自らの既得権益が損な. われる立場にある者は変革推進者を「(自分と同様に)相手には攻撃性がある」と認知しがち である.そのためその認知に従って,攻撃性で相手に負けないように実際に行動するようにな る.具体的には変革に対する抵抗の態度を明らかにし,変革を妨害する行動に出るかもしれな い.そのような妨害行動を受けて,変革推進者は「(自分と同様に)相手には攻撃性がある」 と認知することになる.そしてその認知に従って,攻撃性で相手に負けないように実際に行動 するようになるt具体的には,相手の既得権益を強制的に剥奪する変革行動に出るかもしれな い.そのような変革の強硬手段に対して,さらに抵抗活動は激化する可能性があるだろう..  ここで注意が必要なのは,組織変革の取り組みは,それがいかなる取り組みであれ,ある種 の攻撃性の意味合いを持って認知される可能性が高いということである.すなわち,たとえ変 革推進者が特定の部門利益を追求する立場ではなく,真に組織全体の立場から変革を追求して いたとしても,やはり変革の試みは,ある立場からは攻撃の意味合いを含むものとして捉えら れがちである.仮にそうだとするならば,上記の投射の循環プロセスを生む条件が組織変革に は常に備わっていることになる.それゆえ,変革推進者と変革抵抗者の対立は激化しやすいと 言えるだろう.. ②だからこそ組織は変化する  確かに,投射の循環的な強化プロセスによって,変革推進者と抵抗者との対立は激化しやす い.Lewin(1951)のモデルに即して言うならば,両者が一進一一退の綱引き状態にあり,その 激しさが徐々にエスカレートしていくプロセスが上記では描かれている..  このようなコンフリクトは,変革推進者によって計画された変革を推進するには確かに困難 な状況であるが,しかしながら,適度なレベルのコンフリクトならば組織を変化させる原動力 となる.なぜならば互いの立場から視点の異なる意見や主張が展開され,それらを結合する機 会がコンフリクトによって提供されるからである(Pondy.1967,1969).すなわち,組織コン. フリクトとは必ずしも解決や解消されるべきものではなく,むしろ組織にとっては新たな解決.

(7) 組織変革と粗織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾iの主導的役割について一(山岡 徹). (85)19. 策の発見や変化を促す機能的な側面がある..  このような見地から近年の組織論では,組織コンフリクトに関するコンティンジェンシーモ. デルが提起されている.このモデルでは,コンフリクトの程度と組織のパフt一マンスの水準 との問に曲線的な関係があることを想定する.すなわち,コンフリクトの程度が高すぎても低. すぎても組織のパフォーマンスは低水準となり,中間レベルのコンフリクトが組織のパフt一 マンスを最も大きくすると考えられている.. 2.心理的要因 (1)未知な状態に対する不安感 ①変革の制約要因.  一般的に言って,我々は未知な状態への移行に対して不安感を抱く傾向がある.変革には, 慣れ親しんだ現状から未知の状態への移行が含まれるため,多くの組織成員にとって不安感が 喚起される契機となる.この不安感には,変革によって自らの存在価値が下がるのではないか という自己利害に関する危惧や,変革によってもたらされる新たなタスク環境にうまく適応で きるだろうかという適応上の不安が含まれる.変革に伴うこの種の不安が組織において支配的 であるほど,組織変革を推進するにあたっては障害要因として作用する..  未知の状態への不安を克服し変革を推進する手段として,多くの組織変革論では組織の現状 に対する危機意識を喚起することを重視している(1〈otter.1996).すなわち,もし現状のまま. であれば組織にどのような悲劇的な将来が待ちかまえているかを組織成員に説得的に明示する ことで,現状への危機意識を醸成し,組織変革のプロセスを始動させるテコとする考え方であ る..  しかしながら,このような考え方には問題もある.未知の将来に対する漠然とした不安に対 して,さらに深刻な現状に対する不安をかぶせることで,現状満足の艦から組織成員をあぶり 出す方法だからである.このような不安心理を増幅させることで変革へと組織成員を駆り立て る手法は,強迫観念的に変革を追求する組織文化を形成しやすいのではないかと本論では考え ている.. ②だからこそ組織は変化する.  上記の議論と関連して,Schein(1999)は変革に直面する個人に作用する2種類の不安を概 念化している.ひとつは何か新たなことを学習することに関連した不安である.どんなことを 新たに学習しなければならないのか?うまく学習できないのではないか?自分の能力のなさが 露呈するのではないか?といった不安である.もうひとつの不安は,生き残りに関する不安で ある.もし自分が変わらなければこの先どうなるのだろう?自分は組織からもはや不要とされ てしまうのではないか?といった不安である.前者の不安は,組織成員を現状にとどまらせる べく作用する不安であり,後者の不安は組織成員を変革へと駆り立てる不安であるといえる.. Schein(1999)によると,組織変革を機能させるためには2つの要件が有効である.第一に, 学習に対する不安よりも生き残りに対する不安のほうが大きくなければならない.そして第二 に,生き残りに対する不安を増大させるよりも,むしろ学習に対する不安を軽減させなければ ならない.そして学習に対する不安を軽減させるための方策として,説得力のある将来ビジョ ンを提示することや,公式のトレーニングを充実させることなどを指摘している..

(8) 20(86). 横浜経営研究 第27巻 第2号(2006).  このようにSchein(1999)は,組織に変化をもたらす要因として,学習に対する不安と生き 残りに対する不安のせめぎ合いを想定したわけだが,この種のモデル化は上記のLewin(1951) による変革推進力と変革抵抗力の議論を想起させる.学習に対する不安が変革抵抗力に相当し, 生き残りへの不安が変革推進力に対応する.  このように考えると,変革推進力や変革抵抗力を組織内め集団勢力として捉えるだけではな. く,個人の心理状態においても,変革を推進する要素と抵抗する要素が常にせめぎ合っている ことが理解できる.本論では,既に述べているとおり,このような矛盾する要素聞でのせめぎ 合いや葛藤こそが,組織や個人を変化させる契機になると考えている. (2)自己を否定することの難しさ. ①変革の制約要因  組織変革とは,今まで従事してきた仕事の内容や進め方を変えることを意味しており,さら. に言えば仕事に対する従来の考え方や価値観からの脱却が組織成員に要求される場合もある. このように考えると,仕事に対する従来の考え方や価値観を受け入れていた自己を否定する意 味合いが変革には付随する..  しかしながら,自己を否定したり転換したりすることは一一般に容易なことではない.なぜな. らば,人間には自尊感情があり,また自分の決定や行動における一貫性を保ちたいという欲求 を持っているからである(Festinger,1957).たとえば,、言葉と行動が常に一致している人物. や,判断基準が常にぶれない人物,接する相手によって態度が変わらない人物などに対して, 我々は高い評価を与える傾向がある(Allgeier et al.1979).それとは逆に,一貫性を欠いた. 行動や態度に対しては,言行不一致や優柔不断,八方美人などの言葉に象徴されるように否定 的な評価を与えがちである.このように一貫性とは優れた人格の証として,また論理性や信頼 性,安定性の象徴として,一般に高い価値がおかれている.それゆえ,そのような優れた自己 イメージを対外的にも対内的にも獲得維持するために,我々は一貫性を志向する傾向がある. また人聞にとって一貫性を追求することは,自らが直面する状況に応じてその都度自分の対応 を検討する必要性から解放してくれる意味合いがあるため,日常生活を送るうえで有益かつ簡 便な手段としての側面も持っている..  しかしながら,このような一貫性を重視するスタンスは,変革にとって障害要因となる可能 性が高い.なぜならば,一貫性を追求することは自らの過去の態度や行動,決定に自らを縛る こと,すなわちコミットメントを意昧するからである.この場合,外部環境が変化したからと いって,組織成員は臨機応変に対処することが困難となる.すなわち,一貫性の追求が組織に おける判断や行動の硬直性を助長するように作用するのである.したがって,一貫性を追求す る考え方と,変化への適応を追求する考え方とは矛盾しやすい..  過去にとった行動や決定へのコミットメントは以下の条件を満たす場合,さらに強化される と社会心理学の分野では考えられている.その条件とは,それらの行為が実際の行動を伴い, 他者に対して公にされ,努力を要するものであり,自発的なものであると認知される場合であ る(Salancik,1977;Cialdini,1988).第一に,過去に自らがとった行動は現在の決定や行動を. 規定する力を持つ.なぜならば,行動は自分の目にも他者の目にも具体的なかたちとして残る からである.この場合,過去に自らがとった行動と現在の自己との一貫性を保つことは,自己 イメージに対する自他からの評価を良好なものとするうえで有効な手だてとなる.さらに自ら.

(9) 粗織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主揖的役割について一(山岡 徹). (87)21. の行動や決定が多くの人々に対して公にされる場合,コミットメントは強化される (Tedeschi et al.,197ユ).これは一貫性のない人間として周囲から評価されることが人間にと. って大きな脅威となりうるからである.したがって,過去に自らがとった行動や決定が公にさ れている以上,それを修正,撤回することには大きな勇気が要求される.また過去にとった行 動や決定が多大な努力を費やした結果として実現されたものであるならば,人間はそれらの行 動や決定に高い価値をおく傾向がある(Aronson&Mills,1959).すなわち,自らにとって多 大な努力を要した決定や行動が,実は無駄であり価値のないものであるという事実は,人間に とって受け入れがたいものである.したがって,過去にとられた決定や行動の価値は,それら が現在において有効であるか否かではなく,その決定や行動に自らが要した努力の大きさによ って規定される.また過去にとった決定や行動が他からの強制ではなく自発的になされたもの. であるとの認知がある場合,その決定や行動へのコミットメントが強化される側面がある (Deci,1975).これは自分が自発的にとった行動や決定に対しては自己責任が要求されること と関係している.この自己責任の概念が,過去の行動や決定に人間を縛る要因となる..  ここでコミットメントを強化する上記の条件について概観すると,組織のなかで特に管理的 な立場にいる人間にとって,コミットメント問題への対処がいかに重要かを理解することがで きる.なぜならば,彼らが組織において日常的にとる行為とは,実際の行動を伴い,周囲から は公式的なものと認知され,努力や困難を伴うものであり,下位メンバーと比較して自発的な. 性格を伴うことが一般的だからである.別の観点から言うならば,「優秀である」と一般的に 評価される管理者や経営者とは,行動力があり,常に公式的な立場で物事に対処し,多大な努 力や困難を厭わず,受け身ではなく自発的な態度で仕事に取り組める人材ではないだろうか. このように考えると,周囲から高く評価される「優秀な経営管理者」ほど自らが過去にとった 行動や決定に強く縛られてしまうというコミットメントの罠にはまりやすい.そしてコミット メントの罠にはまった「優秀な経営管理者」が組織変革の大きな抵抗要因になることを上記の 議論は暗示していると言えるだろう.. ②だからこそ組織は変化する.  確かに,一貫性の論理を追求することは行動や決定における硬直性を増大させる側面がある だろう.しかしながら,果たして一貫性を追求する論理と変化や創造性を志向する論理とは対 立する論理なのだろうか..  実は一貫性を追求するという行為は,矛盾の存在を前提としている.さらに正確に言えば, 一貫性を追求する行為とは,互いに矛盾する要素の統合を追求する際に極めて重要な意味をも つ.たとえば,ミドルの管理者は,業績主義の経営者からの高評価と人問関係重視の部下から の厚い信頼を同時に得ることを要求されている.さらに上司に対しては積極的姿勢と服従が同 時に要求され,部下に対しては厳しさと思いやりが要求される.経営幹部は,外部環境への適 応と組織の内部要素の統合を同時に求められる.我々は組織生活を営むなかで,程度の差こそ. あれ,常にこのような互いに矛盾する要素に同時に対応することを求められている.そして 我々の一貫性が試されるのは実は上記のような局面である.言行不一致でも優柔不断でもなく,. そして八方美人にもならずに,我々は一貫した態度と基準をもって,これらの矛盾した要素を 統合する必要性に日々直面しているのである..  このように考えると,一貫性に基づく態度や基準を志向する行為とは,極めて創造的な行為.

(10) 22(88). 横浜摺…’嵩’布[究  第27巻  第2」号 〔2006). であることに気づかされる.Barnard(1938)は管理責任の性質に関する議論のなかで,組織 での地位の高低を区別する重要な基準として,地位が高くなればそこに含まれる道徳性が複雑 になり,その職位に内在する道徳的な対立に対処するために,一層の高い能力が要求されると いう点を指摘している.すなわち,地位が高くなるほど互いに対立し矛盾する要素の調整を一 貫した基準のもとで遂行する必要性が高まる.そのため管理職位に内在する諸々の基準間では. 内部対立が生じやすいが,これに対処するために選択や行動上の一貫性を確保する能力が管理 者には要求される.そして互いに対立し矛盾した要素を統合する、「道徳準則」を創造すること がリーダーシップの最も重要な機能であるとしている.  このように,一貫性を追求する論理と変化や創造性を志向する論理とは必ずしも対立しない.. むしろ,互いに矛盾する要素の統合において,一貫性を追求することは創造的な行為であり, さらに言えば組織に創造的な変化をもたらす行為であると言えるだろう.. (3)組織への帰属意識の裏返しとしての抵抗 ①変革の制約要因  前項で指摘したように,コミットメントには組織成員を過去の行動や決定に拘束する側面が あるが,それには過去の行動や決定への感情的な思い入れが強く作用する場合や,体面を守る. などの利害意識が働く場合,また責任感などの規範意識が働く場合があると考えられる.この ように組織成員は過去に自らがとった行動や決定に複合的な要因から縛られているのである..  このような自己拘束を「特定の組織に自己を拘束する意識」という文脈から解釈する場合, それは組織に対する帰属意識の問題として捉えることができる.というのも,組織成員が組織 に対して帰属意識をもつ状態とは,その組織に対して意識面で自分自身を縛りつけることを意 味するからである.このような自己拘束の意識に焦点を定めて組織への帰属意識を捉えた概念 として,組織コミットメントがある..  組織コミットメントの規定要因については,組織に対する個人の情緒的な愛着から帰属意識 が生じる側面を強調する捉え方(Mowday et al,,1979)や,組織と個人の交換閲係に基づく功. 利的側面から帰属意識を規定する捉え方(Becker,1960),さらに愛着などに基づく感情的要 因,組織を離脱する際に生じる将来コストの知覚に基づく存続的要因,社会規範に基づいた規 範的要因といった複合的な要因から組織コミットメントは規定されるとする捉え方(Allen& Meyer,ユ990)などがある..  それでは組織コミットメントは,組織変革に対してどのような影響を及ぼすと考えられるだ ろうか?たとえば,自分の所属する会社の家族主義的な経営方針に強い愛着の念を抱いていた 社員は,仮にその経営方針が個人合理主義的なものへと転換された場合,どのように感じるで あろうか.おそらく会社に対する失望感や裏切られた感覚 また怒りの感情さえも感じるかも しれない.この場合,この社員が経営方針の転i換に伴う組織変革の賛同者や協力者になる可能. 性は低いだろう.あるいは変革への積極的な抵抗者となる可能性さえある.このように,従来 の組織に対する愛着の意識が強いがゆえに,変革によって導入される新たな経営理念や組織編 成,制度などを拒絶するという組織成員の心理的側面の存在は,組織変革を推進するにあたっ て無視することのできない問題である..

(11) 組織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主揖的役割について一一(山岡 徹). (89)23. ②だからこそ組織は変化する  ここで特に注目すべきなのは,組織に対する組織成員の主観的な期待が変革の試みによって 裏切られる側面があるという点である.一般に組織成員は組織との関係において自らが果たす べきと想定する貢献や義務,返報などについて主観的な信念を持っている.「残業は1ヶ月に何 時間くらいすべきだ」とか「まじめに仕事に取り組めぱ定年まで面倒を見てもらえる」などと. いった組織に対する主観的な期待や了解がそれにあたる.Rousseau(1995)はそのような組 織成員の信念を「心理的契約(psychological contracts)」と名づけている.またそのような組. 織成員の信念は組織によって形成されるとしている.たとえば,従来の家族主義経営から個人 合理主義経営に転換することは,組織から発せられた何らかのメッセージとして組織成員に受 け取られ,その解読を通じて心理的契約は組織成員によって更新される.この更新プロセスに 影響を与える要因のひとつが心理的契約違反の認知である.たとえば,「まじめに仕事に取り 組めば定年まで面倒を見てもらえる」という家族主義経営の下での心理的契約は,経営方針の 転換に伴う心理的契約違反の認知を通じて,「まじめに頑張っても会社は定年まで面倒を見て くれないので仕事はほどほどにすべきだ」との契約内容に更新される..  心理的契約という概念に着目することよって,Rousseau(1995)は従業員と会社との間の 雇用関係が経済的な契約関係の側面だけではなく,従業員に主観的に了解された心理的な契約 関係としての側面をもつことを指摘した.組織成員は組織との閲係に関して主観的に了解した. 心理的契約を結んでいるわけだが,この契約が組織によって裏切られたと認知された場合,組 織成員の心理には葛藤が生じる.主観的に了解していた心理的契約の内容と,現に組織が自分 に対して発したメッセージの解釈との問の認知的不協和である.その緊張状態を解くために, 組織成員は組織に対する心理的契約の内容を更新するに至る.この更新によって組織成員と組 織との関わり合いには変化が生じ,その変化は,結果として組織の公式プロセスや成果に大き な変化をもたらす.このように組織に対する帰属意識は時として変革の試みを阻む抵抗要因と なり,同時に組織に大きな変化をもたらす要困ともなる.. lll組織変革の実施を制約する組織的要因と組織における矛盾  以上では,組織変革を推進するにあたって障害となりうる個人的要因に注目してきたが,組 織変革にとっての制約要因は個人レベルにとどまらない.組織成員の間で共有される認識など の文化的な要因や,分業体制の固定化から生じる構造的慣性など,組織的な要因が変革の推進 にあたって強力な制約要因として機能することが考えられる.したがって,以下では変革の実 施にとって制約となる組織的要因について検討することとする.. 1.組織文化 (1)組織の安定レベルとしての文化  Schein(1985)’によると,組織文化とは,外部適応と内部統合への対処方法を習得する際に,. ある集団が考案,発見もしくは開発した基本的な前提のパターンである.また基本的な前提の パターンは,外部適応や内部統合について理解したり考えたり意見を持つ場合の正しい方法と して,新たなメンバーに教示されるとされる.またSchreyoegg et aj.(19. 95)は組織文化の中. 核的な要素として,潜在的な現象であること,日常的な実践を含むこと,共有されていること,.

(12) 24(90). 横浜経営研究 第27巻 第2号(2006). 歴史に根ざしていること,意味づけのガイドラインとして機能すること,社会化プロセスとし て機能することという諸要素を列挙している.このように組織文化とは,ある組織の成員聞で 日常的に共有されている基本的な前提や認識枠組み,行動パターンなどを指しており,新参の 組織成員に対しては社会化プロセスを通じて教示されるものと一般に理解されている..  上記の定義や特質を考慮するならば,組織文化とは組織における意昧づけや行動の安定とそ の定着を志向する概念であり,組織変革の試みとは対立的な概念であることが示唆される.こ. の点に関して,Schein(1992)は「文化によって示唆されるのは,集団における構造上の安定 レベルである」とし,人間には安定,一貫性,意味が必要であり,組織文化の創造はそれらに 向けられた努力であると述べている.上記の個人的要因の項目で既に説明したように,人聞は. 安定や一貫性,意味づけを個人レベルで追求する側面をもつが,組織文化とはそれらを個人レ ベルではなく組織成員間レベルで共有化するプロセスを描く概念として位置づけることができ る..  Schein(1985)によると,組織文化は3つのレベルにその存在を確認することができる.最 も表層レベルでは人工物がそれにあたる.これは目で見ることはできるがその意味を解読する. ことが困難なことが多い.中層レベルでは価値観に組織文化の存在を確認することができる. これは自覚できる一般的な水準である.そして深層レベルに前提がある.前提は目で確認する ことができず,また当たり前と見なされているため自覚することすら困難であるとされる.こ. の議論は,組織文化を把握するにあたって二重の意味で困難が伴うことを示唆している.すな わち,視認できても意味が解読不能であることと,視認できず自覚することすら不能であるこ とである..  組織を変革することとは組織構造やプロセス,制度などの変革を直接的には指すが,究極的 には組織成員の認識や行動パターンが変化しない限り,その変革の取り組みの成果は限られた ものとなる.そして,組織成員の認識や行動パターンを強く規定する概念として組織文化を捉 えるならば,組織変革の取り組みにとって既存の組織文化への対処は,変革の成果を左右する 非常に重要な関数となる.たとえば,経営トップが新たな経営理念や組織目標を導入する際に,. 視認できない組織の不文律への対処を怠るならば,当初に意図された組織改革の成果は実現が 困難になるだろう(Scott−Morgan,1994).にもかかわらず,組織文化の把握や診断は容易で. はない.Harvey(1974)によると,組織においては特に暗黙の同意について議論しないとい う同意が基底に存在するとされる.したがって,この種の同意を表面化させ変革に向けて対処 できるようにすることが,組織変革を推進するうえで極めて重要となる. (2)それでも組織は変化する.  以上の議論では,組織成員間で価値観や行動様式が過度に均質化することによって,既存の 組織文化が保持・温存され,新たな外部環境との間に不適合を起こす原因となることが示唆さ れている..  しかしながら,果たして組織文化にはそこまで強い安定性が備わっているのだろうか.たと えば,創業当時から全く変わらない組織文化を保持し続けている企業は果たして存在するだろ うか.またそれほどの長期のスパンを前提としなくても,たとえば自分がかつて所属していた. 会社や職場,学校,集まりなどに2∼3年後に顔を出したら,メンバーの一部が入れ替わるな どして,自分が所属していた当時とは雰囲気が少なからず変化していることを実感し,何とな.

(13) 組織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主樟的役割について一一(山岡 徹). (91)25. く疎外感をもった経験のある人は少なくないのではないだろうか..  このように考えると,組織文化のもつ不安定さや流動的な側面にも注意を向ける必要がある ことがわかる.それでは組織文化は何を契機として変化するのだろうか.その契機について考 えてみると,経営者の交代や組織成員の入れ替わり,業績評価基準の変更などに代表される新 たな管理手法の導入,新戦略の導入による新たな知識の蓄積,規制緩和や競争激化などの外部 環境の変化,企業間提携などを通じた異なる組織文化との接触など,多岐にわたる契機を列挙 できる.このように組織文化が変化する契機とは,組織が外部環境に開かれたオープンシステ ムである以上,あらゆる機会に付随していると言えるだろう..  ここでの矛盾とは,組織文化の安定性と流動性に関する矛盾である.組織文化の安定性は, 組織に一体感や連帯感を醸成し,また意思決定の迅速化やコンフリクトの事前回避を可能にす る.したがって,組織成員にとっては心理面での充実した帰属意識と職務遂行面での効率性を 両立させるために,安定した組織文化を望む側面がある.それゆえに新参の組織成員に対して は組織文化の教示がなされる.その一方で,オープンシステムとしての組織には,あらゆる機. 会を通じて組織文化に変化の契機が与えられる.その契機を通じて,既存の要素とは異質な要 素を組織に取り込むことが可能となり,組織の新陳代謝は活発化され,組織の活動は活性化さ. れている.このように組織文化をめぐっては安定性と流動性との間での葛藤が絶えず展開され ており,そのような葛藤プロセスのなかで組織文化は変化を重ねていくと考えられる.. 2.構造的慣性 (1)組織も大人になり年をとる.  組織は個人に達成不可能な目標を達成することができるが,それは諸機能を分化させ,それ らを統合することによって実現されている(Lawrence&Lorsch、1967).特に外部環境におけ る変化のスピードや複雑性が増しつつある今日,組織においていかに機能分化とそれらの統合 を図るのかという構造上の問題は,組織変革に関わる最も重要な問題のひとつと言えるだろう..  ここで組織変革の推進にとって障害となるのは,事業規模の拡大に伴う過度の分化とそれに 伴う過度の統合から派生する問題である.組織にとって事業規模の拡大とは,組織としてより. 多様かつ複雑なタスクに対処しなければならない必要性が生じることを意味している、ここで 個人に備わる合理的能力の制約を前提とするならば,組織全体が追求する目標が複雑で高度に なるほど,更なる機能分化とそれらの緊密な統合が必要になる.たとえば,事業規模が拡大す るにつれて取り扱う製品ラインが増大すれば,それに応じて販売促進やアフターサービスの仕 事の量や複雑性は増大するだろう.そのため従来はひとつの部門が担当していたこれらの仕事 をそれぞれ新たに部門化することで,組織の専門化と高度化を全体として進めていく必要があ る.これが組織における分化の進展である.また組織における分化の進展は,統合の必要性を 同時に高める.組織全体の効率性や有効性の観点からすると,細分化されたタスクは相互に調 整される必要がある.たとえば,販売促進とアフターサービスの仕事がうまく調整されなけれ ば,顧客との間に継続的な取引関係を築くことは難しくなるだろう.このように分化したタス クや部門間における調整が機能しなければ,その組織の成果は限定的なものとなる.このよう に事業規模の拡大は,組織に対して分化と統合の進展を促すように作用する..  しかしながら,組織の年齢が増し規模が大きくなるにつれて,組織の適応的な柔軟性は制約. されるようになる(Hannan&Freeman,1984).たとえば,外部環境の変化によって組織全.

(14) 横浜経営研究  第27巻  第2」号 (2006). 26( 92). 体での対処が必要とされる重大な経営上の問題に直面したとしても,分化の進展により細分化 された各部門では自らのテリトリー以外の問題に全く無関心であったり,また統合の進展によ り管理部門が肥大化しているためにスピーディで臨機応変な意思決定が阻害されたりといった. 弊害が起こりうる.また組織の年齢が増すにつれて,ルーティンや分業体制の固定化が進み, 意思決定や戦略形成のプロセスがパターン化され,パワー関係や利害構造が制度化されるなど の傾向が見られるようになる..  Hannan&Free皿an(1984)は組織生態論の見地から,規模や年齢が増すにつれて組織の 適応的な柔軟性が制約される構造的な特性を構造的慣性(structural inertia)と定義した.組. 織変章の立場から考えると,当然のことながら,このような構造的慣性こそが変革の対象とな るわけだが,しかしながら,構造的慣性とは変革に対して組織内の安定性を保つように作用す るため,それ自体が組織変革の推進を制約する働きをもつといえる. (2)だからこそ組織は変化する  構造的慣性の議論は,組織の老化現象についての議論であり,その意味では「老化」という. 変化プロセスについての議論と言える.生物と同様に組織も老いるにしたがって,動作が緩慢 になり外界への感覚が鈍感になることがそこでは示唆されている.  ここでの矛盾とは,生き延びるために組織は俊敏であり外部環境に対して敏感であるべきだ. という論理と,生き延びるために組織は緩慢であり外部環境に対して鈍感であるべきだという. 論理の矛盾である.前者は環境適応を志向する組織変革論の論理であり,後者は上述の組織生. 態論からの暗示である.すなわち,Hannan&Freeman(1984)は組織の安定性と生き残り に閲する議論において,変化する外部環境に対しては適応を追求するよりも,むしろ組織の安 定性や再生性(reproducibility)を高めるほうが,組織の存続にとっては有益であるとしてい. る.生物の生き残りに関する議論に喩えるならば,老化現象の放置は寿命を縮めるので俊敏か つ敏感さを回復するために新しいことに挑戦するべきだというアンチ・エイジングの考え方が 組織変革論に支配的な考え方であり,一方,老化しているのに無理をしたら怪我をしたり病気 になったりして余計に寿命を縮めるので,あまり外界に触れずにゆっくりしておくべきだとい う考え方が組織生態論から暗示される考え方だろう.  確かに,老化して動作が緩慢になったり外界への感覚が鈍感になることは外部環境への不適. 応と見なすこともできるが,逆に外界の刺激に鈍感になり動きを緩慢にすることで自らの生存 エネルギーを温存し生き残りを図っていると考えることもできる.このように考えると,老化 現象としての構造的慣性の存在とは,ある意味では,自然の摂理に基づいた,老体としての組 織の外部環境への適応的対応と言えるのではないか.  組織が生き残るための論理である外部適応と構造的慣性の両概念は互いに矛盾しつつも,そ れらの葛藤のなかで組織は生き残りを図っている.. lV 組織変革の立案を制約する組織的要因と組織における矛盾  以上では組織変革の実施段階に焦点を定めて,その制約要因と矛盾要因との相互作用につい て個人および組織レベルからの考察を行った.しかしながら,組織変革にとっての制約要因は 実施段階だけにとどまるわけではない.組織変革プランが立案される段階においても,変革プ.

(15) 組織変革と組織変化一一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役割について一一一(山岡 徹). (93)L7. ランの内容や強度を規定する多様な制約要因が作用している.以下では,視点を組織変革の実 施段階から立案段階にさかのぼって,変革を制約する要因とそれとは矛盾する要因について考. 察する.なお組織変革の立案を制約する個人的要因については,本論の第E節で検討した知 覚・認知的要因および心理的要因と重複するところが多いので,以下では組織的要因に限定し て考察することにする.. 1.経営資源と戦略 (1)打たれ強い組織の寿命は短い  オープンシステムとしての組織は外部環境との取引を通じて各種の資源を調達し,それらを 蓄積・利用することで何らかの価値を創造し,外部環境に出力するという価値創造のプロセス を回転させることで自らの存続を維持している.ここで組織にとって経営資源とは,上記のプ ロセスにおいて価値を創出する役割を果たす.すなわち,他の組織が模倣することのできない. 独自の価値を創造できる組織とは,経営資源を有効に蓄積・活用することに成功している組織 として評価することができる.そのような評価が外部環境から組織に対して与えられるならば,. その組織は外部環境からより良質の経営資源を獲得することが可能になり,その経営資源がよ り大きな付加価値を生むという強化プロセスが想定できるかもしれない.このように考えるな らば,オープンシステムとしての組織にとって経営資源とは,外部環境への適応の結果として. 得られるものであり,同時に外部環境への適応を可能にするものとして捉えることができるだ ろう..  仮に上記の見地に立つならば,組織と外部環境との望ましい適合性を追求する組織変革にと って,経営資源は変革を推進するための手段として捉えることができる.というのも,経営資. 源の有効利用が組織の外部適合を可能にし,また組織の外部適合によって優れた経営資源の調 達が可能となるからである..  しかしながら,本論では逆に経営資源が組織変革の制約要因として作用する側面にも注目す る.すなわち,優れた経営資源を豊富に持つ組織ほど,外部環境の変化に対する感度が鈍くな るのではないかという論点である.たとえば,優れた経営資源を持たず,またそれらを獲得す る能力も乏しい組織であれば,外部環境の変化に敏感に反応し自己変革を続けなければ淘汰さ. れてしまう可能性が高いだろう.しかしながら,優れた経営資源を豊富にもつ組織であれば, 環境が若干変化しても強く影響されずに「そのままで持ちこたえる打たれ強さ」や「そのまま 変わらないで済ませられる押しの強さ」を持つのではないだろうか..  Katz&Kahn(1966)は,組織における分化の進展に関する議論で,組織では規模の拡大に 伴って,』. O部環境から組織の技術的コアにもたらされる衝撃を緩めるサポート活動(原材料の. 調達や製品の出荷など)が分化する点を‡旨摘している.また組織と外部環境を結ぶ境界担当者. の議論では,外部ソースからの情報を組織へ移転する役割が強調される(Aldrich&Herker, 1977).これらの議論では,組織の柔軟な外部適応性を促す働きがそれらの活動に想定されて いる.しかしながら,本論が指摘する「そのままで持ちこたえる打たれ強さ」や「そのまま変 わらないで済ませられる押しの強さ」とは,むしろ外部環境に対するインターフェイス自体の 感度が鈍化する点に着目している点で上記の議論とは異なる..  確かに,外部環境が若干変化したとしても,組織変革にその都度取り組まなくても済ませら れるのならば,そのほうが組織にとっての体力消耗も少なく済むため,組織の生存にとっては.

(16) 28(94). 横浜経営研究 第27巻 第2号(2006). 有益かもしれない.しかしながら,ここで問題視しているのは上記の「打たれ強さ」ゆえに外. 部環境の変化に対する組織の感度が鈍くなっているのではないかという点である.実はその組 織がそのままでは持ちこたえることのできないほどのインパクトをもつ環境変化に直面してい. たとしても,自らの「打たれ強さ」ゆえに,組織変革の立案が遅れたり変革の範囲が制約され る恐れがあるかもしれない.人間にたとえるならば,普段から自らの基礎体力に自信をもつ人 ほど,体調の若干の異変には鈍感な傾向があ1) ,異変への処置が遅れた結果,大病へと進展す. るケースである.f一病息災」という言葉が暗示するように,豊かな経営資源をもつ「健康な」 組織ほど生存能力が高いとは限らないと本論では考えている..  また組織変革の一環として,戦略転換やそれに伴う資源配分の変革を立案する際の制約要因 について以下では考察する.Zajac et al.(2000)は,組織の競争優位性に貢献している特定の. 経営資源が,その組織の多様な戦略的行動を規定する側面を指摘している.すなわち,多様な 戦略的行動は,組織の競争優位性を維持するべく特定の経営資源を利用する方向に集中する傾 向があるとされる..  近年の市場の成熟化と外部環境の複雑化に伴って,ドメイン選択と資源投入に関して一極集 中の圧力が強まる傾向があるが,そのような傾向が強まるほど特定の戦略や経営資源への組織 的なコミットメントは強化されると考えられる.この場合,戦略転換やそれに伴う資源配分の 変革を立案するプロセスは,特定の経営戦略や経営資源への組織的なコミットメントによって 大きく制約されることになるだろう.. (2)だからこそ組織は変化する  上述したように,組織にとって経営資源とは外部適応を可能にする手段であり,同時に外部 適応の結果として調達することのできる資源である.  ここでの矛盾とは,経営資源に関する上記の2つの捉え方から派生する矛盾である.外部環. 境への適応を可能にする手段としての経営資源とは,外部環境への敏感さを組織にもたらす働 きをする.すなわち,顧客の求めるニーズを先取りした製品開発力であったり,社会からの信 頼に値する高品質を生む生産能力であったり,優秀な取引先を新たに開拓する選択眼などがこ れにあたる.外部環境への敏感さを兼ね備えたこれらの経営資源によって,組織は外部適応の レベルを高めることができる.ここでの論理とは,外部環境への敏感さゆえに組織は成長する. ことができるという論理であり,その成長の原動力となるのが経営資源であるという考え方で ある..  一方,組織は外部適応のレベルを高め,事業規模を拡大することによって,外部環境に対す る影響力や存在感を増していく.その結果として,組織は外部環境に対してより強い立場から 経営資源を調達できるようになる.たとえば,より優れた技術を持つ企業や知名度のある金融 機関が新規の取引開始を求めて陳情に来たり,より多くの優秀な学生や他企業の社員が就職・. 転職を希望したりするようになる.すなわち,外部適応の結果として,組織はより優れた経営 資源を外部環境から調達できるようになるtこのように外部環境に対して影響力を及ぼせる立 場になると,組織は業界の取引ルールを自らが主導して制定するなどして,さらに優れた経営 資源を外部から調達できる地位を確保できるようになる.ここでの論理とは,外部環境への立 場の強さゆえに組織は成長することができるという論理であり,その成長の原動力となるのが 経営資源であるという考え方である.ここで外部環境に対する立場の強さが,必ずしも外部環.

(17) 組織変革と組織変化一変革と変化をつなぐ「矛盾」の主導的役捌について一(山岡 徹). (95)29. 境に対する鈍感さには直結しないかもしれないが,外部環境からの打たれ強さや外部への押し の強さとは深く関係しているだろう..  このように経営資源は2つの矛盾する論理を併せ持つ.すなわち,外部環境への敏感さや適 応性を促す側面と,外部環境への鈍感さや押しの強さを促進する側面である.このような経営 資源に関する矛盾した論理が,経営資源をめぐる葛藤を組織に生じさせ,そのプロセスのなか で組織は新たな経営戦略に向けた変化を生じさせると本論では考える.. 2.制度化されたパワー関係 (1)組織を救ったパワーが組織を滅ぼす  Dahl(1957:202)はパワーを次のように定義している.「Bがさもなければ行わないであろ. うことを,AがBにさせる程度に応じてAはBへのパワーをもつ」.公式の指揮命令系統によ る上下関係や部門聞での影響力の格差,属人レベルでの非公式な発言力の大小など,多様なパ ワー関係が交錯するかたちで組織は編成されている.より大きなパワーを持つ組織成員や部門 は,自らの意思や利害を優先して実現することができる.そのため,組織における資源配分の. 決定に対して部門がもつパワーに焦点を定めた組織内パワーの研究が主に展開されてきた.特 に外部環境の不確実性に直面する組織において,どの部門が相対的に大きなパワーを有するか について,Hickson et al.(1971)は組織が直面する不確実性の源泉に対処できる能力が組織. における部門パワーの源泉であるとした.さらにパワーを強化する要件として,第一に組織の オペレーションにとってその部門の活動が申心にあるか否か,第二に不確実性への対処活動が. 他部門にとって代替不可能であるか否かという要件を提示した.またSalancik&Pfeffer (1974)およびPfeffer&Moore(1980)では,大学組織における部局のパワーに関して,最も 多くの在籍者を抱える部局や,最も多くの助成金を実現した部局,あるいは大挙に対して何ら かの外部契約上の収入をもたらした部局にパワーがもたらされたことが報告されている..  いずれの研究においても,組織の成果に重大な影響を及ぽす不確実性への対処能力が組織内 パワーの源泉と見なされているわけだが,不確実性への対処能力が重視される背景に関して, Pfeffer(1981:110)は資源依存理論の見地から以下のように述べている.「不確実性に対処す. ることが組織内部で決定的なタスクおよび活動とみなされているのは,標準的な作業手続きや 予測,緩衝,組織における活動を合理的なものにするその他の諸活動を通じて,不確実性を減 少させる社会的存在として組織が見なされるためであり,同時にそのことで組織は外部の諸制 約に対して適応性を維持している」.すなわち,組織にとって重大な不確実性に対処できる能 力をもった部門が,組織における資源配分の決定に対して影響力をもつことによって,その部 門に対する重点的な資源配分が可能になる.その結果として,組織は不確実性への対処能力を 維持することが可能となり,外部環境への適応性が確保されると資源依存理論では考えている. それゆえ,PfefEer&Salancik(1978:229−30)では,「組織は自らの環境と柔軟に結合しており,. パワーは環境と組織の間を取りなす重要な変数のひとつである」と見なされ,パワーの再配分 によって組織の環境適合性が確保されると考えられている.すなわち,外部環境の変化によっ て組織にもたらされた不確実性への対処の機会が,組織内でのパワーの再配分を生じさせる. それによって経営トップの選抜や交代が生じ,新たな活動や構造についての意思決定がなされ るようになる.このように資源依存理論では,経営資源の配分決定への影響力というかたちで, パワーが組織と環境を結合する媒介変数として想定されている..

参照

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