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「レンズ光学入門」渋谷眞人著

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Academic year: 2021

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 本書は,著者が月刊誌 O plus E に連載した記事を単行本 にまとめたものである.当初からの構想がよかったのか, 連載ものの痕跡をあまり感じさせず,一冊の教科書として よくまとまっている.著者は,ニコンから大学に移った研 究者なので,光学メーカーの中での光学設計の現場もよく 知っているし,大学の中での教育の実態もわかっている. その経験を生かし,多くの実例を取り上げながら,その光 学系がなぜそうなっているのかという基本をちゃんと説明 している.現場の光学設計者には常識になっていると思わ れることも省略せず丁寧に書いてあり,現場を知らない評 者ら大学人にとって,大いに役立つところである.近年の twitter ブームに触発されたわけではないだろうが,とこ ろどころ著者のつぶやき(蘊蓄)が挿入されているのも楽 しい.  内容を目次に従って簡単に紹介すると,1 章:ガウス光 学,2 章:絞りと瞳,3 章:光線の自由度(このタイトルか ら中身が想像できないが,完全結像系が満たさなくてはな らない正弦条件とそれに関連する話題が述べられている. 回折格子の結像という観点から正弦条件が導かれるが,こ の証明法は著者のオリジナルで,幾何光学的な証明法と比 べ物理的なイメージが実に明瞭である.著者は半導体露光 装置における位相シフト法の発明者として有名であるが, 評者の個人的な意見では,それに勝る業績だと思う),4 章:収差(波面収差の級数展開からザイデル収差を導入し た後,各論として,非点収差と像面湾曲(ペッツバール 和)を近軸光学の延長線で論じている.最後に色収差補正 について触れている),5 章:像の明るさと照明系の基礎 (本章は輝度不変の法則についての詳しい議論から始まる.

特に,Jenkins-White “Fundamentals of Optics” の 3 版の記述 がおかしいと鋭く指摘する.事実,4 版からこの項は削除 されたとのことである.続いて,臨界照明やケーラー照明 など照明光学系の基礎的な事柄を丁寧に紹介した後,ス テッパー照明系で用いられるフライアイについて詳しく述 べられている.類書であまり見かけない内容であるが,著 者の得意な分野であり,本書の一番の特徴といってよいで あろう),ここまでが幾何光学で,この後,6 章:波動光学 の基礎(フラウンホーファー回折公式─評者はこの部分の 説明に若干の違和感をおぼえるが,結果は正しい─を導い た後,レンズの点像(線像)強度分布を計算する式が与え られる.さらに,正弦波物体の像のコントラストとして MTF が導入される.幾何光学的な MTF 計算法や測定法に ついて詳しく,実践的な記述が続く),7 章:レンズの自動 修正,8 章:赤外光学系(黒体放射のプランクの公式と熱 放射する面の輝度の関係が論じられている),となってい る.各章には「おまけ」というタイトルの付録がついてい て,本文で取り上げられなかったさまざまな話題が論じら れ,本文の理解の助けになるよう配慮されている.  レ ン ズ 設 計 で は 松 居 吉 哉 著「レ ン ズ 設 計 法」(共 立 出 版,1972 年)が著名であるが,本書はこれと対照的であ る.「レンズ設計法」が収差論や光線追跡をシステマティッ クに展開するというやり方,いいかえると,大上段から原 理原則を掲げ,演繹的に各論を導いていくのに対し,本書 では具体的に問題を設定して,それぞれに対し独自の切り 口から解明していくという,いわばボトムアップの方式を 取っている.個々の問題の取り組み方も,著者独自の視点 が色濃く出ていて,議論が個性的である.もちろん,これ は本書が元来連載記事をまとめたものであるという成り立 ちにもよるであろう.スタイルの問題で,どちらがよいと いうわけではないが,本書のほうが初学者には入りやすい であろう.しかし,内容が初等的という意味ではない.通 読するにはそれなりの努力が必要である.ともかく,個々 の問題に対する解説を読むと,著者がその問題をどのよう に考えているのか,思考法がよくわかって非常に興味深 い.「本を書くことは,頭の中身を読者の前にさらけ出す ことだ」とは谷田貝豊彦先生(宇都宮大学)の言である が,本書はそういう言い方がぴったりと当てはまる本であ る.レンズ設計の専門家には必読の書であることはいうま でもないが,専門家ではなくても光学に興味をもつ多くの 読者にとって,結像光学系の本質を理解する上で大いに役 に立つ,優れた解説書である.光学設計に携わる研究者, 技術者にぜひとも勧めたい一冊である. (東京大学生産技術研究所 黒田和男) 340(36) 光  学

書 評

レンズ光学入門

─結像の本質を射抜く─

渋谷 眞人 著

アドコム・メディア,2009 年(ISBN 978-4-915851-36-0)

参照

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