Title
[報文]パパイヤの組織培養における内生バクテリアの除
去とテトラサイクリンの効果
Author(s)
上原, 周夫; 濱井, 義則
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 10(1): 11-13
Issue Date
1994-03-20
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14087
南方資源利用技術研究会誌 vol.10No1 ll-131994
パパ イヤの組織培養 における内生バ クテ リアの
除去 とテ トラサ イク リンの効果
上 原 周 夫 ・演 井 義 則
(中部製糖株式会社)
TechnigueofTetoracyclineinPapaya UsingPlantletfrom Meristem Cluture ChikaoUEHARA andYoshinoriHAMAI
DeparlmentofBiochemistryChubuSugarManufacturingco,Lid., 117-2KadekamLNishihara-Cho,Okinawa903Wl
緒 言 パパ イヤはメキシコ,西 イ ン ド諸島及 びブ ラ ジルにまたが る熱帯 アメ リカ原産で,沖縄 へ は 明治末期 に導 入 されてい る.1988年 の栽培 面 積 は15.4haで, 1983昭和 58年以 降, 栽培 面積 の増減 は認め られないが,庭先果樹 としてか な り定着 してお り,最 も親 しまれている果樹 の ひ とつである. 現在 は, 自給的な野菜用,加工用,生果用 と しての栽培が主 となっているが,最近の消費動 向の変化 に伴 い,市場 出荷 を前提 とした生果用, 加工用,酵素原料 としての需要が高まっている. 特 に,沖縄 にお いて は1991年 11月 に ウ リ ミバ エが根絶 され,植物防疫法の改正 と共 にパパ イ ヤ生果の移 出が解禁 とな り今後の経済果実 と し てかな り有望視 されている. しか し,パパ イヤ の経済栽培 は,実生繁殖 による種苗 によって営 まれているため幼苗期の性判別が難 しく,経 済 栽培上の大 きなネ ックになっている. 性判別の方法 は重要 な課題 とな って い るが, 実用的には幼苗期 に樹勢の強い もの を雄 と判 断 して除 き,残 りを定植 した り,又,定植時 に一 ヶ所 に3本植 え,性判別がなされた後 に取 り除 いている. しか し, この方法では雄のみの除去 であ り,雌,両性の性判別,及び,同形質の雌, *沖縄県中頭郡西原町字素手苅117-2 両性 を選抜す ることは不可能である. 同質の種苗 を得 るためには,挿 し木や接 ぎ木 等 による方法が一般的である.パパ イヤの栄養 繁殖 において も,挿 し木や接 ぎ木 によるクロー ン苗確保 も可能であるが1),パパ イヤは, 強 い 頂芽優勢 を有す るため挿 し穂 や接 ぎ穂 の量 的確 保が困難である. 組織培養 によるクロー ン繁殖 は,雌,両性 の 性 タイプのクロー ン化 した種苗の確保,異種交 配での品質,収量の優 れた系統,耐病性系統等 の遺伝的に優 れた系統の斉-な種苗の大量育成, 及び遺伝資源の保存 を可能 にす る重要 な手法 で ある. パパ イヤの組織培養 に よる クロー ン繁殖 は, 演井 らによって実用化 されているが2)茎頂 の内 生バ クテ リアによる汚染 については,い まだ明 確 にされていない. この ような背景か ら,本研 究 は,パパ イヤの組織培養 における培養段 階の 改善 として内生バ クテ リア除去 に関す るテ トラ サ イクリンの効果 を明 らかに した ものである. 材料及び方法 実験1.茎頂の内生バクテ リア汚染の季節性 に ついて 1989年 6月21日, ハ ウス内 に播種 し, 育苗 した83日苗の茎頂 を1989年 9月21日に切 り取 り,材料 として供試 した.材料 はエ タノール70 - ll
-%,次 亜塩素酸 ナ トリウム0.75%で滅 菌後 , 滅 菌水で洗 い,実体顕微鏡下 で葉原基2- 3枚 を つ けた成長点茎頂部 を0.5-0.7m の長 さで切 り 取 り, ホルモ ンフ リー のMurashige and Skoog (MS借 地)寒天培 地 に置床 した. 置床30日後,切 り口か ら借地 に侵 出す るバ ク テ リアの コロニ ー を実体顕微 鏡 で検鏡 し, 内生 バ クテ リア汚染 と判定 した.茎頂の採取時期 は, 1990年9月中旬,11月 中旬 に茎頂 端 部 をそ れ ぞれ採取 した, 野 外 で の採 取 は1990年8月 中 旬,12月 中旬 に玉城村字親 ケ原, 山人端氏 の圃 場 か ら行 った. 実験
2.
初代 定着培地 にお け・る内生 バ クテ リア の除去 につ いて 1990年8月12日に玉 城 村 字 親 ケ原 , 山人 端 氏 圃場 よ り着果 中の成木 か ら発生 した側枝 を採 取 し,茎頂 の大 きさで4種類 に分類 し材料 と し て用 いた.材料 の滅菌,水洗 は実験 1と同様 に 行 った.滅甫後 ,葉原基2- 3枚 をつ けた成 長 点茎頂部 を0.5-0.7mmの長 さで切 り, テ トラサ イク リンをそれぞれ1me当 り10FLg,20FLg, 50 〃g,100/Jgろ過滅菌 (マ イ レ ックスGS ミリ ポ ア0.22FLm)で加 えたMS寒 天 溶 液 を2
0
me試 験 管 に10me分注 した培 地 に置床 した. テ トラサ イク リン培 地 の処理期 間 を10日間 と し, その後無添加 のMS培 地 に移 植 し, 30日後 切 り口か ら侵 出す るバ クテ リア コロニ ー を実 体 顕微 鏡で調 べ,汚染 の有無 を確 認 した. 結 果 実験1
の茎頂 の採取時期 は,8
月 中旬, 9
月 中旬 の成長 旺盛 期,11月 中旬,12月 中旬 成 長 緩慢期 に行 った.茎頂 の内生 バ クテ リア汚 染 を 調べ た結 果 は,表1の通 りで あ る.8月 中旬 , 9月 中旬採取 は, 内生バ クテ リアの汚染が多 く, 野外 区が74.4%,ハ ウス内区が50.7%と極 め て 高 い汚染率 とな ってい る.11月 中旬 にお け るハ ウス内採取 区 は3.6%, 12月 中旬 採 取 は10.8% と低 く,成長旺盛期 よ りむ しろ成長媛慢期 に 内 生バ クテ リアに よる汚染 は低 くな るこ とが確 認 南方資源利用技術研究会誌 表 1. 内生 バ クテ リアの季節性 項 目 個体数外生バクカビ及びテリア 内生バク 内生バクテ 備 考 置床月 テリア リア汚染宰 8月 中旬 86 ll 64 74.4%野 外 9月 中旬 128 0 65 50.7 ハウス内 11月 中旬 110 1 4 3.6 ハウス内 12月 中旬 65 0 7 10.8 ハウス内 12月 中旬 96 12 28 29.2 野 外 された. 12月 中旬 に野外 よ り採取 した茎頂 も内生バ ク テ リアの汚染率 は29.2%とな ってお り8月中旬, 9月中旬 よ りも低 くな ってい る. 実験2においては,予備実験 で茎頂 の内 生 バ クテ リア汚染 が確 認 された圃場 か ら8月中旬 に 採取 し, テ トラサ イ ク リンに よる内生 バ クテ リ ア除去 につ いて検討 を行 ったが, その結果 は表 2の通 りで あ る. 表2.
テトラサイクリンの内性バクテリアに及ぼす影響 濃度 項 目 個 体 数 内性バクテリア 汚 染 率 10FLg 22 22 100% 20FLg 24 14 58.3%b 50FLg 22 10 45.5%b 100′`g 22 枯 死 -英小文字は異符号間で有意差のあることをしめす (p<0.05Mann-Whitneysのutestによる) 汚染率 は,無処理 区100%に対 して10/`g区 100%, 20FLg区58.3%, 50FLg区45.5%で , テ トラサ イ ク リン20/Jg以上 の 添 加 で バ クテ リ ア汚染 を抑 制 す る こ とが確 認 され た.100/Jg 区 はすべ て褐変枯死 しテ トラサ イ ク リンの濃 度 障害が認 め られた. -12-Vo110Nol 1994 内生バ クテ リアの培 地 へ の浸 出 は
,MS
寒 天 培地移植後3日目か ら認め られ,移植 8日後 と 30日後 に調査 した結果,バ クテ リアの浸 出 した 個体 は同数であ った. したが って,培地移植 後 3日∼8日後 に内生バ クテ リアは十分 に確 認 で きる もの と判断 された. テ トラサ イク リン50FLg区 で は, 外植 体 の培 地接着面 に褐変がみ られ るが,10El後 無 添加M S寒天培地 に移植す る と回復 し, Zip 0.5ppmMS
寒天培地で再分化 した. 8月中旬 に野外か ら採取 し分類 した茎頂 別 の 内生バ クテ リア汚染率 は,茎頂 の伸長 した もの は低 く,伸長 していない茎頂 ほ ど汚染率が 高 く なることが確認 された. 考 察 実験 1において は,パパ イヤの組織培養 の大 きな難点 となってい る内生バ クテ リアの発 生 消 長 についての調査 を行 った. 茎頂 の内生バ クテ リア汚染 に よるIn vitroに おけるパパ イヤの生存 率の低 下 につ い てR.M. Pandyら3'は成長旺盛期 よ り冬期 間の成 長停 止 期 に向か うに したが って多発す ると報告 して い る.今 回の実験 で は,沖縄 におけるパパ イヤ の 内生 バ クテ リアに よる汚染 はその報告 とは逆 に 成長級慢期 に比べ て8月, 9月の正長旺盛 期 で ある夏期 間に多発す ることが確認 された. それ らの差異 は,茎頂 に汚染 した内生バ クテ リアの種類 や生長サ イクル等 による検討が必 要 であるが,沖縄 における内生バ クテ リアは, 8 月, 9月の成長旺盛期 に繁殖,移動 に適応 して いる もの と思 われる. したが って, クロー ン苗 を目的 と して茎頂 の 採取時期 を行 う場合 は,本結果 か らも明 らか な ように11月-1
2
月が適 当 と判断 され る. 実験2においては,同 じくパパ イヤの大量増 殖 のネ ックとなっている内生バ クテ リアの除去 についての検討 を行 った.茎頂 の内生バ クテ リ アを抗菌 スペ ク トルが広 く培養変異が起 こ り難 しい とされ る抗生物質テ トラサ イク リン (タ ン バ ク合成 阻害 に よる殺菌) を添加 したMS
寒天 借地 に置床 して,除去の効果 を調査 した. シュー トの内生バ クテ リアの除去は,Hayashi, T.Hildebrandらが抗生物質テ トラサ イ ク リン, クロラムフェニ コール, ネオマ イシンを用 いて ヒマ ワ リの組織 の無菌化 を報告 している日. 本実験 も,その結果 を受 けてパパ イヤにお け る効果 につ いて検討 を行 った ものであ るが, パ パ イヤの内生 バ クテ リアは,側枝 の育成 ステ ー ジによって大 き く異 なってお り,伸長 して い な い側枝 は伸長 した側枝 に比べ て内生 バ クテ リア の密度が高 く,無菌化が困難 な傾 向にあ り, 級 織 の採取 に当た って は,特 にその点 に対す る留 意が必要である.伸長 した側枝 においては, チ トラサ イク リン50/′gの10日間処理 は内生 バ ク テ リアの タンパ ク合成 を阻害 し,茎頂の無菌化 は約54.5%となっている.それ らの結果 は, こ れ までパパ イヤの組織培養の ネ ックとなって い た内生バ クテ リアを除去 し,茎頂の無菌化 を可 能 な ら しめ る ものである. 参考文献1. Libby,W,∫,and Hood ∫,Ⅴ (1976) Juvenility in hedged radiata pine,Acta Horticulture,56:91-98 2.演井 義則,上原 周夫 , 松 田 義 昭, 福 村 直樹 , 大 仲 祐 二 (1993) 組 織培 養 宙 を用 いたパパ イヤの栽培管理 とその可 能性 につ いて, 南 方 資 源利 用技 術研 究 会 誌9 (1) :1- 4 3.R, M, Pandy, D,K, Kishoreand and K,Arumozh:(1986) Effect of seasons planttypearldsomepreexcissiontreatment oninVitro behaiviourofCarica papaya L, Indian Joumal of Horticulture, 43
(3- 4):174-179
4.竹内 正幸 ・石原 愛也 植物組織培 養 朝倉書店 :64-65