地域素材を活用したCSアンプラグドに関する研究

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(1)情報処理学会第 76 回全国大会. 4F-2 地域素材を活用した CS アンプラグドに関する研究福岡久雄 † † 松江工業高等専門学校. 1. はじめに. の学習項目（例えば，テキスト圧縮）はそのまま踏襲. 初等・中等教育課程におけるコンピュータ関連技術の教育では生徒に数学等の前提知識を期待できないことから，その教授法に関して何らかの工夫が必要である．そのような工夫の一例として，ニュージーランド. Canterbury 大学の Timothy Bell 等によって提唱されている Computer Science Unplugged（以下，CS アンプラグド）がある．CS アンプラグドでは，一見してコンピュータ関連技術とは無関係の各種カードゲームなど. し，それを教授するためのゲームそのものを，地域素材を活用する新しいタイプのものに変更するものである（方向 3）．以下では，先行して検討を進めている方向 1 および方向 2 について詳述する．方向 3 については稿を改めて報告する予定である．. 3 方向 1：既存 Activity での地域素材活用 3.1. を用いることによって，「コンピュータを使うことなく」，各種コンピュータ関連技術の考え方を教授することを目指している．我が国でも，高校の科目「情報」において，この教授法を試行する動きが見られる．. CS アンプラグドのホームページ [1] や日本語教則本 [2] によれば，各種コンピュータ関連技術に対応して，現在 20 種類を超える Activity（学習項目）が用意されている．しかし，すべてのコンピュータ関連技術をカバーしているとは言い難く，今後も新たな Activity の考案を続けることが重要である．一般に，Activity の実践は，実践者の近隣の子供たちを対象に行われることが多い．地域素材を生かした. Activity は，近隣の子供たちが親しみやすく，かつ興味を持って取り組むことができ，教育効果も高まると考える．本稿では，この地域素材を活用した CS アンプラ. 活用が容易な例. 例えば，Activity 3「それ，さっきも言った」[2] は詩などの繰り返しの多い文章を用いて，LZ 符号の考え方に沿ったテキスト圧縮技術の要点を教授するものである．Bell 等が考案したオリジナルの Activity 3 では，圧縮の対象としてとして The Rain という詩（童謡）を用いている．この詩は Mother Goose の中の詩であり，英語圏の子供たちに対しては自然な選択と思われる．これに対して，筆者らは Activity 3 を日本の子供たちに実践するに当たり，対象として日本語の詩を用いるように改良し，地域の小学校において試行した．その結果については文献 [3] において報告済みである（図. 1）．. グドの構想について報告する．なお，他の地域の実践者がその Activity を使用する場合には，その地域の何らかの素材を同 Activity の主旨にマッピングすることも可能と考える．従って，地域素材を生かした Activity は必ずしも「地域限定」を意味するものではない．. 2. 地域素材活用の方向性 CS アンプラグドにおける地域素材の活用について. は，3 つの方向が考えられる．1 つは既存の Activity を精査し，Activity において使用される教材コンテンツを地域性の強いものに置き換えるという方向である（方図 1: Activity3 の日本語化. 向 1）．もう１つは，これまでにない学習項目に対応する Activity を考案する段階で地域素材を積極的に活用するという方向である（方向 2）．最後は，既存 Activity A study on CS unplugged utilizing regional materials †Hisao Fukuoka †Matsue College of Technology. 本稿で構想する「地域素材活用」の観点からは，Ac-. tivity3 の題材である詩をより地域性の高いものに変更し，地域の子供たちにとってより親しみやすいものに改善することができると考える．各地域には，その地域. 4-371. Copyright 2014 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved..

(2) 情報処理学会第 76 回全国大会. 独特の童謡やわらべ歌などの題材が豊富に存在すると考えている．同様に，Activity 2「色を数で表す」[2] も比較的容易に地域素材の導入が可能と考えている．この Activity はビットマップ画像をランレングス表現することによって，画像そのものが数値で表現できることを教授するものである．ここで題材とする画像を地域性の高いものに置き換えることが，地域の子供たちの親しみやすさという観点から有効と考える．特に，最近流行の「地域のゆるキャラ」を模した画像の活用は，地域興しの観点からも興味深い．. 3.2. 活用が困難な例. 図 2: ボトルネックを題材とした Activity の教材. 一方，Activity 1「点を数える」（2 進数の教授）や. Activity 4「カード交換の手品」（水平垂直パリティを用いたエラー検出・訂正技術の教授）[2] は地域素材の導入が困難な Activity と考える．これらの Activity では，カードの表に描かれた点（ドット）の個数をカウントしたりカードの表裏を識別するという，比較的簡単な作業を子供たちに行わせることが基本になっている．ここで，カードに描かれた点に具体的な意味はなく，単にその個数に注目するだけである．また，カードの表裏を識別する模様にも具体的な意味を持たせる必要はなく，単に識別が可能であればよい．これらの Activity は，何らかの具体的な意味をもつ「もの」（Activity 3 の詩や Activity 2 の画像）を扱うものではないことか. 5 まとめ地域素材を活用した CS アンプラグドの構想について報告した．今後は，既存 Activity の精査を進めるとともに，それぞれの方向に沿った，地域素材型の Activity の検討・教材開発を進める予定である．並行して，CS アンプラグドの教育効果の評価方法についても検討を進める計画である．謝辞本研究は JSPS 科研費 25350275 の助成を受けたものである．. 参考文献. ら，地域素材の導入は困難と判断している．これらの. [1] http://csunplugged.org/, 2013.7.29．. Activity については，上述の方向 3 を検討する必要があると考える．. [2] T. Bell, I.H. Witten and M. Fellow，兼宗進監訳，コ. 4. ンピュータを使わない情報教育アンプラグドコンピュータサイエンス，イーテキスト研究所，2007．. 方向 2：地域素材を活用する新 Activity 筆者らは，所属機関が存在する松江市の地理的な特. 徴を地域素材と捉えた Activity を提案し，中学 3 年生や高等専門学校 1 年生に対して実践してきた [4][5]．この Activity は，コンピュータの分野でよく見られる「ボトルネック」という現象を体験的に教授するために考案したものである．学習者は対戦型のボードゲームを行うことによって，ボトルネック現象を体感し，また. [3] 角佳代子，石飛奈央，福岡久雄， “ CS アンプラグド Activity 3 の日本語化とその実践，”情報処理学会第 72 回全国大会学生セッション，Vol.4，pp.669-670， 2010． [4] A. Kawakami and H. Fukuoka, ”A New CS Unplugged Activity for a Learning Experience in Bot-. その回避策を考えることができる（図 2）．なお，筆者. tlenecks,” Proceedings of the 1st International Symposium on Technology Sustainability (ISTS2011),. らが調査した範囲では，ボトルネック現象を教授する. CIT-015, pp.245-248, Jan. 2012.. ような CS アンプラグドの Activity はこれまで提案されていない．現在，出雲神話の一部である「ヤマタノオロチ伝説」に基づいて，「プロセスのスケジューリング」の考え方を教授する Activity を考案し，その教材を開発中であ. [5] 川上茜，福岡久雄， “ ボトルネックを題材とした CS アンプラグド新アクティビティの提案，”情報処理学会第 74 回全国大会学生セッション，Vol.4，. pp.645-646，2012．. る．本件については，稿を改めて報告する予定である．. 4-372. Copyright 2014 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved..

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