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音楽演奏による感情喚起についての心理学的研究

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Academic year: 2021

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音楽演奏による感情喚起についての心理学的研究

著者名(日)

山崎 晃男

雑誌名

大阪樟蔭女子大学研究紀要

4

ページ

237

発行年

2014-01-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1072/00003889/

BY-NC-ND

(2)

近年、音楽と感情についての研究が心理学、生理学、 脳科学などの分野を中心に盛んに行われるようになり、 実験室および日常生活の両方において音楽が様々な感 情を喚起することが繰り返し確認されるとともに、そ のメカニズムについての解明も進んできている(cf. Juslin & Sloboda, 2010; Peretz & Zatorre, 2009)。 ところが、それらの研究のほとんどは音楽聴取が感情 に及ぼす効果についてのものであり、音楽を演奏する ことが演奏者自身にどのような感情的効果を及ぼすか については、僅かな例外を除いて、国内・国外ともに あまり研究されていない。また、研究がなされる場合 も、その多くがプロもしくはセミプロの音楽家の演奏 不安といった否定的な感情喚起についての研究であり、 演奏することの肯定的な感情的効果についての研究は きわめて少ない(cf. Steptoe, 2001)。そのような中、 筆者はこれまでに2台のピアノによる合奏についての 実験的研究を実施し、非音楽家の演奏者による合奏お よび練習活動が演奏者自身の気分の改善をもたらすと いう肯定的な感情的効果を有することを示した(山崎, 2012)。また、その研究では、演奏に対する評価には 「楽しさ」と「満足」という二つの側面があり、前者 には対人的側面が大きく関わるのに対し、後者には演 奏の質的側面が主として関わることが示唆された。 本研究では、以上のことを踏まえて、日常的な合奏 活動においても演奏者への感情的効果が生じることを 確認するとともに、合奏活動のどのような側面がそう した感情的効果に関わっているかを調べることを目的 として質問紙調査をおこなった。 学校での音楽の教科教育とは別に吹奏楽や軽音楽の 合奏活動をおこなっている22 名(全員女性、平均年 齢20 歳)を対象に、「今までで一番良かった合奏」お よび「今までで一番つまらなかった合奏」について、 その時の状況やそう感じる理由などについて尋ねた。 その結果、「良かった合奏」については、練習(25.6%) よりも本番(53.9%)で生じたという回答が多かった。 良かったと感じる理由としては、「楽しかった」(29.2%)、 「達成感があった」(25.0%)、「人間関係が良かった」 (12.5%)、「良い評価を受けた」(10.4%)の順であり、 「楽しさ」に対人的側面が大きく関わるという先行研 究の結果とあわせて考えると、対人的側面と演奏の質 的側面が概ね拮抗しており、両者を合わせて7 割強を 占めていたと考えられる。 一方、「つまらなかった合奏」については、「良かっ た合奏」とは逆に、練習(73.1%)の方が本番(19.2%) よりも多かった。つまらなかったと感じる理由として は、「練習不足」(31.4%)、「人間関係が悪かった」 (28.6%)、「楽しくなかった」(11.4%)の順であり、 ここでも対人的側面と演奏の質的側面が拮抗しており、 両者を合わせて約7 割を占めていた。 このように、実際の合奏活動においても、肯定的お よび否定的な感情的効果が生じており、そのどちらに おいても合奏活動における対人的側面と演奏の質的側 面が同程度関係していることが示された。ただし、肯 定的な感情的効果は本番で多く生じ、否定的な感情的 効果は練習で多く生じるといった違いも見出された。 音楽の意義について、近年、人類の適応という進化 論的な見地からの議論が盛んになっており、たとえば 音楽の適応的機能は個人をより集団志向にすることで ある(Dunbar, 2012)といった主張がなされている。 こうした機能が演奏者の快感情を媒介として成立する と考えるのは自然であり、本研究において合奏への評 価の大きな部分を対人的側面が占めたことと整合的で あろう。 引用文献

Dunbar, R.(2012). On the evolutionary function of song and dance. In Bannan, N.(ed.), Music, language, and human evolution, pp. 201 214. Oxford: Oxford University Press.

Juslin, P. N. & Sloboda, J. A.(Eds.)(2010), Hand-book of Music and Emotion. New York: Oxford University Press.

Peretz, I. & Zatorre, R.(Eds.)(2009), The cogni-tive neuroscience of music. New York: Oxford University Press.

Steptoe, A. (2001). Negative emotions in music making: the problem of performance anxiety. In P. N. Juslin & J. A. Sloboda(Eds.), Music and emotion(pp. 291-308). New York: Oxford Uni-versity Press. 山崎晃男(2012). 合奏による演奏者自身の気分変化 について. 大阪樟蔭女子大学研究紀要,2, 35 42. -237 - 大阪樟蔭女子大学研究紀要第4 巻(2014)

音楽演奏による感情喚起についての心理学的研究

心理学部

心理学科

山崎

晃男

参照

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