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へき地での保健・医療活動における看護職の役割を考える 里山におけるIT活用の可能性について 遠隔看護の視点から

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(1)

シンポジウム報告

里 山における

IT活

用の可能性 について一遠隔看護の視点か ら一

北 山

秋雄

*

I.は

じめに 21世紀 は

,先

進諸国ではほぼ例外 な く人口の高 齢化が進行する。特に

,わ

が国はスウェーデンや フランスの ような人日高齢化の先行国 と比較 して も高齢化の速度が非常に速 く,またかつて どの国 も経験 したことのないほど高い高齢化率 (2050年 には35。

7%に

達する

)に

達す ることが予測 されて いる。加 えて重要な課題は過疎である。平成14年 に厚生労働省が発表 した将来人 口推計 によればり, わが国の人口は2006年に頂点 を迎 え

,そ

の後急速 に減少 し,2050年には1億人,2100年には6,400万 人 になる と予測 されている。 この現象は

,従

来の ようなへ き地や離鳥だけでな く

,地

方小都市 にお いてさえ深刻な高齢過疎化が進行することを示唆 している。高齢過疎化は

,医

療費 をは じめ とする 社会保障費の高騰や生産年齢人口あた りの社会保 障費の負担増 を伴 うことか ら

,新

たな仕組みづ く り

,発

想 の転換が急務である。平成16年度 か ら 「新研修医制度」が実施 され

,地

方 における医療 の過疎化や大都市 と地方の医療の質の格差が一層 拡大す ることが危惧 される。 また

,住

民ニーズの 多様化 ・複雑化

,治

療中心・病院

/施

設中心か ら ケア中心 。地域

/在

宅中心への医療 システムのパ ラダイムシフ ト

,IT(情

報通信技術

)革

,グ

ロ ーバ リゼーシヨン等によつて

,私

たちの保健医療 福祉看護 を取 り巻 く生活環境 は急速 な変貌 を遂げ つつあ り

,そ

うした変化 に対応 したケアの質

,ウ

ェルネス (最適な生活状態

)を

高める地域づ くり が求め られている。 本稿 では,このような保健医療福祉看護 を取 り 巻 く生活環境の変化のなかで

,特

に里山 (農山村, 離 島等

)に

おける

Tを

活用 した在宅生活支援のあ りかた

,課

,展

望等 について

,事

例 をとお して 述べ たい。 Ⅱ

.研

究方法

1.使

用機器 図11よ

,現

在著者 らが開発 を進めてい る遠隔看 護 システムの概要である。 このシステムは血圧・ 体温 ・脈拍等の生体情報

,褥

着 ・外傷等の静止画 情報お よび看護実践等の動画情報 の収集 だけでな く

,独

居高齢者や在宅療養者 とその家族 の 自立支 援 ・学習支援 を目的 としてお り

,最

新情報通信 テ クノロジーを用いて何時で も ,何 処で も 。使 い易 く 。安心で ,安 価 な観方向音声映像伝送方式 によ って

,人

々の慣れ親 しんだ生活の場で

,効

果的な 看護 ・介護支援サー ビス を提供す ることを目指 し ている。テレビ電話搭載型次世代携市電話 と結 び, 外 出先か ら音声映像 を通 じて安否確認がで きる他, タッチパネルに「通常交信 ボタン」,「緊急通報 ボ タン」 の他 に「宅配依頼 ボ タン」等 を配置 して, ス トアの店貝 と相談 しなが ら商品を視覚的に品定 め して購入することが可能である。 図2は

,遠

隔看護 システムの臨床試験風 景であ る。大学側看護師のデイスプレイには

,在

宅療養 者 の映像 (最大約16cm×

21cm),看

護 師 の映像 (最大約9cm×9c口

),お

よび在宅療養者の基礎 デー タ (名前

,住

,年

,緊

急連絡先

,病

,家

庭 医連絡先

,主

介護者情報等

)が

表示 される。一方, ・ 長野県看護大学 図

1

遠 隔看護 システムの概要

(2)

在 宅療養者 のデ イスプ レイには

,相

手 の看護 師の 映 像 (最大 約 16cm× 2 1cm)と 在宅療養 者 の 映像 (最大約9cm×

9cm)が

表示 され る。在 宅療 養者 に は キーボー ドもマ ウスも不要 で ある。本 システム は独 居 高齢 者 や在 宅療 養 者 とその家族 の 自立 支 援 ・学習支援 を目的 としてい る こ とか ら

,在

宅 で 気 軽 に楽 しめ る ヨーガ ビデ オを開発 ・製作 してそ の有効性 を検討 している。 図

2

違隔看護 システムの臨床試験

2.用

語の定義 遠 隔看護 (telenursing or tclccarc)と は,「遠 距 離 通信技術 (IT)を用 いて在 宅療養者 と (家族) 介護者 の生活支援 を目的 とした看護実践 」 の こ と で あ る。里 山 (satOyama)と は,「人 間社 会 とそ の生活環境 としての 自然が持続 的 に共存 関係 を維 持 してい る地域 (農山村

,離

島等)」 の こ とで あ り

,経

験 的 には人 口3,000人以下 または人口密度10 人/k∬ 以下 の地域 をい う。里 山看護 (satOyama nursing)とは,「人 間 と自然が持 続可 能 な共存 関 係 にあ る地域づ くりのため にな される生活環境 資 源 を開発 し活用す る看護実践」 と定義す る。 なお, 平成16年度 か ら長野県看護大学大学院看護学石汗究 科博士前期課程 に新 たに健康資源 開発看護学領域 里 山看護学分野力靖1設された。

3.対

象者 長野県K市在住 の70歳 代 の夫 婦 で

,夫

は高血圧 症

,妻

は高血圧症 と糖尿病の慢性疾患 を有 す る。

4.調

査期間 平成17年 12月 ∼平成18年 12月

5.情

報収集 図2の ように

,毎

週月曜 日18時∼18時30分, ま 日本 ルー ラルナー シ ング学会誌 第

2巻

(2007) たは木曜 日9時∼9時30分

,看

護 師 ・保健 師の資格 を有 す る本学 の大学 院生2名が対 象者 の心 身状 態, 遠 隔看護 システムの使い易 さ

,機

器 の具合

,そ

の 他 について

,産

学共同で開発 中の遠 隔看護 シ ステ ム機器 を用 いて聴取 した。

6.倫

理 的配慮 臨床試験 の映像情報 を通 して本 人が特定 され る 可能性 が高 いため

,開

示 す る際 には事前 に承諾 を 得 る こ と等 の説明 を尽 くした うえで

,研

究参加 の 同意 を得 た。 なお

,本

研 究 は長野県看護大学倫理 委員会の承認 を得 て行われた (審査番号#34)。 Ⅲ。研究結果 里 山は 日本 人の故郷 (ふる さ と

)の

原風景 であ り

,昔

か ら人間 と自然が持続 的 に共存 関係 を維持 していた地域 で もある。 また

,里

山看護 を英語 の 「ルー ラルナーシ ング (mral nursing)」 と比較す る と

,地

域特 性 (人口規模

,人

口密度

),住

民特性 (食生活

,自

然認識

),看

護 職 の活動等 において異 な る点が多 い こ とか ら,「里 山」 お よび「里 山看 護」 とい う言葉が わが国 にお け る人間社会 と自然 の関わ りや看護実I夫の実態 を よ り正確 に反映 して い る と思 われる。著者等 は

,そ

う した里 山看護 を 支 えるひ とつの ツール と して遠 隔看護 を位置づ け て機器の開発 を進めて きた。 本研究 で は

,本

学 と在宅療養者 宅 に設置 したパ ソ コンを フ レッツ・

ADSL(40Mタ

イプ

)回

線 で 結 んで

,1年

間毎週1回臨床試験 を行 った。遠 隔看 護 実践 は,「在 宅療養者 と (家族

)介

護者 の 自己 管理お よび学習支援」(図

1)を

目的の ひ とつ と見 な して特 許 (出願番号特 願2003‐302676)を出願 した こ とか ら

,在

宅で も気軽 にで きるシエア向け 「楽笑 ヨー ガ」 ビデオ を開発 した。 ビデ オは理論 編 と実践 編 か らなってお り

,特

に実践編 は各3分 以内の20ポ ーズが収録 されてい る。研 究対象者 か ら

,短

くてわか りやす く

,自

宅 で も気軽 に行 うこ とがで きる とい う評価 を得 てい る。 研 究対象者 の男性 は高血圧症 の ため降圧剤 を服 用 してい たが

,毎

週 の遠 隔看護 に参加 して次 の よ うな感想 を話 していた (表1)。 第一 に

,周

囲や時 間 を気 に しないでいつ も顔 を見 なが ら話す こ とが で きるため,子瓜独感 ・不安感 が軽 減 された こと

/

質の高 い安心感が得 られた こ と

,薬

について気軽 に相談 で き

,服

薬 に対す る理解 や意識 が高 まった

(3)

こと

,あ

るいはかつて糖尿病 を息 う妻が在宅で糖 尿病性昏睡のために倒れた ときに

,気

が動転 して かか りつけ医院の電話番号 を間違 えた りして しま ったが

,こ

のシステムでは24時間見守 り (プライ バ シー保護のためシール ド選択が可能

)が

可能で, ボタンを押すだけです ぐに看護師が対応 して くれ る という緊急通報の利点 を挙 げていた。一方

,大

学側 で対応 した看護師・保健師の資格 を持つ大学 院生のインタビューか ら次の ようなことが明 らか となった (表1)。 第一に

,視

覚的に在宅療養者の 状態が把握で きるためより質の高い情報 と安心感 が得 られたこと

,家

族介護者か らも気軽 に相談 し て もらえるのでタイムリーに適切 なア ドバイスが で きたこと

,必

要なひとに必要なとき必要なだけ 訪問看護サービスが提供で きるので効率的である こと

,不

必要な家庭訪間がな くなるので訪問看護 師のス トレスが軽減 されること

,音

声映像 を通 じ て訪問看護

/介

護に対す る第三者評価が可能 とな ること等が挙げられた。システム機器 に対する評 価では

,相

手画面の大 きさ

,解

像度

,扱

いやすさ については特 に問題 はなか ったが

,マ

イクの性 能・回線帯域等 によって時々発生する音声の途切 れがス トレス となっていた。 表

1

在宅生活支援における違隔看護の効果 ・孤独感・不安感の軽減

/質

の高い安心感 ・疼痛管理/服薬管理 ・緊急対応が可能 。適切な介護者援助 ・訪問回数の減少→収益の効果 ・ラ蘇割職者のス トレス軸 。第二者評価が可能であること 。学びのプロセスの確認 ・ 終末期の不安感の軽減 ・医〉 (カニュー レ,ス トーマ等

)の

観察・管理 ・ネ ッ トワーク会議の実現 Ⅳ

.考

察 1年間の臨床試験 をとお して得 られた成果 をも とに

,遠

隔看護のあゆみ と現状

,里

山における在 宅生活支援のあ り方

,今

後の課題 と展望 について 考察 した。

1.里

山 (satoyama)および里 山看護 (satoya‐ ma nursing) わが国の里 山 と近い表記 とされる英語 のルー ラ ル (rural)を 比較すると

,自

然 に対す る認識 。関 わ りかたが明 らかに異 なる2つ。通常

,里

山は人間 と自然 (の神 々

)が

持続的に共存関係 にある (と もに暮 らす

)こ

とを前提 として成 り立 っているの 1こ対 して

,ル

ーラルは人間が中心で自然はその周 縁 に位置 し

,時

に対立的関係 にある。それ故

,食

文化 を含めた中山間地域の社会生活全般 と看護実 践が両者 で大 きく異 なってお り,「里 山」 お よび 「里 山看護」 の定義がわが国の中山問地域や離島 における人間社会 と自然の関わ りや看護実践の実 態 をより正確 に反映 していると思われる。

2.違

隔看護のあゆみ と現状 通常

,遠

隔医療は通信手段 による医療機関同士 の息者情報の授受を基本 としている。遠隔医療の 英語訳 「telemedicine」 の「tele」 は電話 (tele_

phone)や望遠鏡 (俺lescope),テ レビ (俺levision)

など

,遠

距離や遠隔操作 とい う意味の接頭語であ り

,そ

れ故,「tclcmcdicinc」 は遠隔地か ら医療 を 操作す ることを意味す る。厚生省遠隔医療研究班 (1997)は

,遠

隔医療 を「映像 を含 む息者情報 に 基づいて遠隔地か ら診断

,指

示な どの医療行為お よび医療 に関連 した行為 を行 うこと」 と定義 して いる。。す なわち

,息

者 に関わる映像情報 を伝送 す ることによつて医療行為お よび医療 に関連 した 行為 を行 うこ とであ る。世界保健機 関

(WHO)

は (1997),遠隔医療 を「健康 関連活動

,サ

ー ビ スお よびシステムを情報通信技術 により遠隔地か ら実行す る複合的用語の ことであ り

,そ

の目的は, 健康関連の教育

,マ

ネージメン トお よび研究の他 に

,健

康の維持・増進や疾病管理 も含む」 と定義 している。 こうした広範 な遠隔医療 を指す用語 と して

WHoは

,「 ヘ ル ス ・ テ レマ テ イ ック ス (hcdh teLmatics)」 とい う言葉 を用いている。。一 方

,遠

隔看護 は

,在

宅療養者 と (家族

)介

護者の 生活支援 を目的 とした 「 による看護実践であると いえよう。米国看護師協会 (1997)では

,遠

隔看 護 を「遠距離通信 テクノロジーを使用 した看護実 践」 と定義 し

',必

ず しも在宅 に限定 してはいな いが

,在

宅療養者への症状聴取等が現在で も主 に 電話 によって行われているD。 表21よ

,わ

が国の遠隔医療

/遠

隔看護 における 主 な出来事 を年代順 に ま とめ た ものであ る弘9■0。 わが国の遠隔医療は,1971年に和歌 山県で連絡通 信用有線テ レビCC]臣 (c10sed―chuit ttlevision)お

(4)

日本 ルー ラルナー シ ング学会誌 第

2巻

(2007) よび電話線 を用 いて

,映

像 に よる直接 的 な息者診 療

,心

電 図伝送等が行 われた こ とが始 ま りとされ ている。1990年 代 の飛躍 的な情報 通信技術 の開発 と普及 の中で

,厚

生省 (1997)は「1青報通信機器 を用 いた診療 (いわゆる「遠 隔診 療」

)に

ついて」 と題 した健康政策局長通知 を出 して

,再

診 に限 り 映像 に よって診 断治療 して も医師法 第20条 (対面 診療

)に

抵 触 しない ことを明示 し

0,1998年

には テ レビ電話 を使 った再診 につ いて通常 の電話再診 と同様 の 診 療 報 酬 が 請 求 で き る よ う に な っ た 。 2000年 には過疎地域 の多 い北 海道 で旭 川医科大学 が 地域 の医療 機 関 とISDN(htegratcd Services Digital Network)回 線 を用 いて「遠 隔医療 システ ム」 を本格 的 に稼働 させ てい る。 その後

,政

府 は 「e―Japan戦 略」 や「e_Japan戦略 Ⅱ」 を策定 してネ

ッ トワー クイ ンフラの整備 や

Tの

利 活用 に積極 的 に乗 り出 し,2003年には遠 隔医療 にお ける診療報 酬の対象 を離鳥 。へ き地医療お よび慢性疾患 にま で拡大 した。2006年1月の「IT新 改革戦略」では, ITによる構造改革の推進 と利用者の視点に立った ユ ビキタス社会の実現 と国際貢献 を打ち出 してい る")。 この ようなIT環境の基盤整備 や保健医療改 革の動向を考慮すれば,21世紀 には遠隔看護の利 活用が必要不可欠の課題 になると思われる。

3.里

山における在宅生活支援のありかた 前述の ように,21世紀のわが国はかつてない高 齢過疎化 に直面する。特 に

,地

方都市部周辺地域 では多 くの在宅療養する独居高齢者や高苫令夫婦が 点在 し

,こ

の ままでは最適な医療 を受けられない 事態が発生す る可能性がある。 この ような課題 を 解決する切 り札が人間と自然が持続可能な共存関 係 にある地域 (農山村

,離

島等

)づ

くりのために, コ ミュニテ ィの生活環境資源 を開発 し活用す る 表

2

わが国にお ける違隔医療

/遠

隔看護の あゆみ 表

3

里山看護職者に期待 されるコンピテンシー ・ プライマ リーケアができる 。救急対応 。トリアージができる 。地域の暮 らしに精通 し生活を共有できる ・個人

/家

/集

/地

域の健康アセスメン トと介入ができる lヘルスプロモーシ ョ功 ・生活資源やケアシステムの開発に関する知識

/経

験がある 。パー トナーシップとリーダーシップをとることができる 。コンピュータリテラシーが高い 。グローバルか仇点を持つている 。学際的な活動ができる 1971 1980必辛イ式市Ψ 1990Z千

イヽ

1997.12 1998.4 2000.7 2001.1 2001.3 2003.3 2003.7 2003.9 2006.1 2007オ沃降

C()IWお

よび電話線による山間へき地への遠隔医療 (和歌山局

ISDN,商

CATV網

を利用した在宅医療支援システム 健康政策局長通知「時報通庸磯器を用いた診療 (いわゆる)「遠隔診療」について」 遠隔医療は医師法第

20条

(対面診察 しないで診療 してはならない

)に

抵触 しない 遠隔医療の診療報酬化 「遠隔医療システム」本格稼働 川 II医科大学 略‐

Jap皿

戦B各 2(X)5年までに

W環

境の整備 「遠隔看護システム」特許出願 新産業創造研究機結 遠隔医療の対象を離島・へき地医療および罠性疾患に拡大 略‐Japall戦 略Ⅱ」 元気・安心・感動 。便希

1隆

ITの

利活用 「介護支援システム」特許出願 長野県看護大学 硼晴窺解響卸各」 ユ ビキタス社会の実現 ス ム

(5)

「里 山看護職者」である。表3は

,里

山看護職者 に 期待 されるコンピテ ンシーをまとめた ものである。 この ような能力を兼ね備 えた里山志向の看護師を 養成するためには

,プ

ライマ リーケアの臨床教育 が充実 した大学院 レベルの カリキュラムと教育環 境が整備 される必要がある。 もうひとつ重要なこ とは

,遠

隔看護 を看護実践 の補完 ツール として効 果的に活用することである。 農山村や離 島等でいつで も何処で も「必要なひ とに必要なときに必要 なサービス」 を提供するた めには

,遠

隔看護 は不可欠の ツールと考 える。著 者 らは

,昨

今の医療費の増大,IT革命

,グ

ローバ リゼーシ ョン等

,生

活環境の急速な変貌 に対応 し た新 たな地域づ くりのツール として遠隔看護 に着 日して

,そ

のシステム構築 に関する特許を申請す るとともに

,学

術振興会の科学研究費補助金 を得 て

,遠

隔看護の臨床試験 を平成17年12月か ら開始 して きた。特許項 目の「在宅療養者 と (家族

)介

護者の 自己管理お よび学習支援」(図1)を遠隔看 護実践 における目的のひ とつ と見 な したことか ら 1か

,医

療機器 (カニュー レ

,ス

トーマ等

)取

扱い のためのビデオ製作

,健

康維持向上のためのシエ ア向け「楽笑 ヨーガ」 ビデオ

,妊

産婦向け「マタ エテイヨーガ」 。「産後 ヨーガ」 ビデオ製作

,お

よび過去 の生体情報 や外傷写真等の保存 。再生装 置の開発 を推進 して きた。本研究では

,ひ

と組の 慢性疾患 (高血圧 と糖尿病

)の

ある70歳代の夫婦 を対象 として

,大

学側では看護師 。保健師の資格 を持つ大学院生が本学で開発 した遠隔看護 システ ム機器 を用いて対応 した。その結果

,表

1の よう に

,周

囲や時間を気 に しないでいつ も顔 を見なが ら話す ことがで きることや緊急時迅速かつ適切 な 対応が可能なため

,孤

独感・不安感が軽減 された こと

/質

の高い安心感が得 られたこと

,第

三者評 価が可能なことな どのメリッ トが示唆 された。第 三者評価 に関 しては

,現

在公 的介護保険制度の も とで在宅療養者 に提供 されている様 々なサー ビス の量 と質 に問題が生 じているが

,遠

隔看護 システ ムの導入 によつて透明性が確保 されてサービスの 質の向上が もた らされる と思 われる。農 山村や離 島では

,医

療過疎の拡大が危惧 され

,訪

問看護ス テーシ ョン

,在

宅介護支援セ ンター

,居

宅介護支 援事業所 などが遠隔看護

/介

護の中心機関 となっ て

,在

宅で生活 している要介護高齢者や慢性疾患 息者 と家族介護者 を支 えることか ら

,今

後 ます ま す 遠 隔看 護 が重 要 な役 割 を担 う もの と思 われ る。 在 宅療養高齢者や家族介護者 に とつて使 い勝手が よ くて安価 な遠隔看護機器 の開発 と普及 は

,21世

紀 に到来す る高齢過疎化 の課題 を克服す る有力 な 対 応策 となるであろう。

4.今

後の課題 と展望 今後 の口果題 としては

,1)法

令 上 の問題

,2)

経済的な問題

,3)看

護界の問題

,4)技

術的な問 題が考 えられるので

,そ

れぞれについて以下 に概 説す る。展望 については

,長

野県の ような里山を 多 く抱 える地域 における遠隔看護の活用 と効果に ついて述べたい。

1)今

後の課題 ① 法令上の問題 看護 師の業務 は

,保

健師助産師看護 師法第5条 で「傷病者若 しくは じよく婦 に対す る療養上の世 話又 は診療の補助 をなす こと」と定 め られてお り, 看護師が通信回線 を用いて24時間いつで も医療相 談 を受 けられるシステムを使 うことは

,医

師法第 17条 (無資格診療禁止規定

)に

抵触す る恐れがあ る。いわゆる家庭医 との連携や息者お よび家族 に 対す る十分な説明が必要であ り

,医

療事故が生 じ た ときの責任の所在 も明確 にしなければならない。 ② 経済的な問題 医師による遠隔医療では

,慢

性疾患の在宅療養 者の診療 において も診療報酬が請求で きるが

,遠

隔看護ではそうした議論 さえ起 きていない。政府 のe―Japan戦略 (2001)に よって

,ADSL(asym‐

mcttic digital subscriber line)や光 ファイバーなど を利用 した安価 (月額5千円

)な

高速 イ ンターネ ッ トが全国的に普及 してお り

,将

来通信 コス トは さらに安 くなることが期待 される。遠隔看護機器 も安価 (月額l万円以下

)で

筒便 な ものが開発 さ れつつある。21世紀は在宅ケアの時代 である。看 護師等 の医療従事者 による遠隔看護 に も診療報酬 が請求で きるような医療制度の改革が必要である。 そのためには

,安

全性等 に関す るガイ ドラインづ くりに早急に着手 しなければな らない。 ③ 看護界の問題 看護界自体にも

,遠

隔看護の意義は理解 しなが ら

,法

令上の問題

,対

面サービスを重要視する風

(6)

,機

器 に対 す る抵抗感

,音

声 映像情報

,セ

キュ リテ イな どの技術 的問題

,費

用文寸効 果 ・有効性等 に対 す る意見 の一致が ないため に

,慎

重論 が支配 的で ある。里 山における遠隔看護特 区づ くりも視 野 に入 れた看護戦略が求め られる。 ④ 技術 的な問題 個 人 の病歴 は

,犯

罪歴 と並 んで最 もプライバ シ ー に関わ る事項である。現在で も

,高

速 イ ンター ネ ッ ト技術 を用 いてセキュリテ イの高 い遠隔看護 用 ネ ッ トワー クを構築す ることが可 能 である。テ レビ電話 搭載型次世代携帯電話 とや り取 り可能 な テ レコ ミュニケーシ ョン・ネ ッ トワー ク型の遠隔 看 護 シス テ ム は

,技

術 的 には構 築 が 可 能 で あ る。 市場 を視野 に入 れた技術 開発が不可欠である。

2)展

望 米 国では,1980年代か ら低価格の高速電話 回線 (1.5Mbps)のインフラ整備が進 んだことや1997年 に米 国の公 的医療保険メデイケア (高歯令者医療保 険

)が

遠隔医療の一部 に診療報酬 を適用 したため, 遠隔医療の普及が一層加速 した。最近では

,外

科 手術用遠隔ロボッ トの開発

,光

ファイバー回線網 の整備

,通

信衛生の応用等

,最

先端の研究が進ん でいる ものの

,医

療事故 における責任 のあ り方等 の法的問題

,グ

ローバル化による資格・免許の問 題

,負

担の問題が在宅ケアを主な対象 とする遠隔 看護 の課題 となってお り

,在

宅ケアを対象 とした テ レビ電話付 きの次世代携帯電話 とや り取 り可能 なテ レコミュニケーシ ョン・ネ ッ トワーク型の遠 隔看護 システムの開発 と普及 に関 してはまだ途上 の段階である0。 わが国は

,今

後約100年間急激 な人 口減少 によ って

,地

方都市周辺地域の過疎化 と衰退が拡大す る と危倶 されている。 こうした状況 を変え

,地

域 を生活の場

,健

康の場 として再 び甦 らせ る切 り札 が遠隔看護

/遠

隔医療である (図3)。 2007年から 定年退職す る団塊の世代 (1947-1949年 生 まれ) を対象 に した長期滞在型健康づ くりを とお して地 域の再生 を図る取組みが保健 と医療 と福祉 と看護 と経済 の活性化 を同時に満た した地域づ くりを可 能 にす る。 遠隔看護が可能な診療報酬の創生等の医療制度 改革が実現すれば

,遠

隔看護 システム とその機器 の開発 によって

,遠

隔看護が大 きな市場 を形成す 日本 ルー ラルナー シ ング学会誌 第

2巻

(2007) るとともに

,在

宅ケアの質の向上 と医療費の低減 の双方 に貢献するもの と思われる。特 に

,過

疎地 域 における在宅ケアは

,現

在危惧 されている事態 より大幅 に改善す ることであろう。 21世紀のわが国における

,高

齢過疎化

,医

療の 過疎化・格差の拡大

,在

宅療養者の増加

,医

療費 の増大等の課題 に効果的に対処 し

,特

,農

山村 や離島等の中山問地域 を生活の場

,健

康の場 とし て再び甦 らせ る切 り札が遠隔看護・遠隔医療であ る。図3は

,地

域再生 に向けた戦略の枠組み を示 している。その地域 に根 ざした文化 (慣習

,食

生 活

)を

基盤 として

,プ

ライマ リーケアとヘルスプ ロモーシ ョンを実践する「里山看護学」 と遠隔看 護・遠隔医療 を軸 に

,録

健医療福祉看護 と農学 と リハ ビリ (温泉)。 栄養 を結びつけて

,こ

れか ら 定年 を迎 える団塊の世代 を対象 に した健康づ くり をとお して地域の再生 を図 りたい。すなわち

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健 と医療 と福祉 と看護 と経済の活性化 を同時に満 たす循環型の地域づ くりを

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りわけ信州 の里山で探求 したい。 図

3

過疎地域 にお ける在宅生活支援 モデル地域 にお ける在宅生活支援 モデル ー地域再生 に向 けた戦 略の枠 組 み― 文 献

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参照

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