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工業高等学校におけるカリキュラムと大学進学率との関係

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Academic year: 2021

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(1)工業高等学校におけるカリキュラムと大学進学率との問儀 八高隆雄*,高木宣昭**. Relationship. between. Curriculums University. Takao. 概. YAKOU. in Technical Entered. and. Nobuaki. High. Schools. and. Ratio. TAKAGI. 要 高等学校の工業科のおかれた現状とそのあるべき婆を探るため,関東甲信越地区の高等. 学校電気科のカリキュラムと大学-の進学率の関係を調べた。その結果,普通科日が多い ほど大学進学率が高い場合が多いが,工業科の科目と大学進学率との間には関連性がな かった。しかし,工業科の科目は大学進学にマイナスには働かないこともわかった。また, 普通科目が多いほど大学への進学率が高くできる可能性があることがわかった。さらに, 大学附属の学校を除けば,人口密度の低い地方め学校ほど大学進学率が高い場合があるこ と等が明らかとなった。 I.はじめに. 高学歴社会の進展に伴い,普通科の高等学校のみならず職業科の高等学校からの大学へ の進学も増えている。その結果,高等学校の職業科,専修・専門学校および高等専門学校 などの職業前段階の教育を行う学校のあり方が問題になってきた.その要因として,これ らの学校における専門教育と大学での専門教育とが質の点でかなり異なっていること,両 者の関連が明確でないこと,およぴこれらの学校が社会へ出るための最終的な教育棟開と して完結した教育を行うよう設定されたため大講座化を伴う現在の大学の変身1)に十分対 応できていないことなどが考えられる。 また,最近安い労働力を釆めて生産の拠点が開発途上国きらには未開発地域にまでおよ ぴ,かつてアメリカ合衆国であったような技術の空洞化現象を引き起こし始めている2)0 その結果,国内では科学技術離れが起き,この波は大学の工学部も含め,日本の科学技術 教育全体を揺るがして3)。 本報告では,大学への進学者数の増加と技術離れの両方の影響を受けている工業科の高. *本学部技術学教室(機械工学担当) *. *東京工業大学附属工業高等学校教静(電子工学担当).

(2) 228. 八高隆雄,高木宣昭. 等学校について,集めたデータを解析し,これらの高等学校のカリキュラム構成と大学へ の進学率の関係を調べた¢ 2.資料の収集 大都市とその周辺地域,地方都市等の幅広いデータを集め,工業科の高等学校全体の傾 向を知る意味で,関東甲信越(東京,神奈川,埼玉,栃木,茨城,群馬,千葉,山梨,長 野,新潟)の10都県甲全ての工業科を有する高等学校-学校案内等の資料提供を依頼し た。この間に工業科を廃止した学校が1校あった。ほとんどの学校が協力的で,. 131校か. ら資料の提供を受け,回収率は93%であった。これらの学校案内に大学および短期大学 への進学者数を記載してあった学校数63校を対象校とした。 資料中全てに共通して存在する科が電気科であったため,ここでは電気科の資料のみを まとめた。大学進学者の全車叢生数に占める割合については,科ごとに記載してあるデー タをもとに全科の平均を求め,全科の平均進学率をもって進学率とした。さらに,最近の 傾向として,職業科の高等学校から大学-進学する場合に,高等学校からの推薦によって 入学する場合が増えている。ここでは推薦による入学と入学式験による入学を資料の上か ら分離することができなかったため,両者を含めて進学率を求めた。 3.結果および考轟 3.. 電気科のカリキュラムの現状. 1. 電気科のカリキュラムは,調べた範囲内では,普通科目48から64単位,実習科目13 から20単位,工業科日31から45単位,および工業基礎と工業数理か0から4単位であ 60 ●公立学校. (. 50. 0. A:;ム1'L宰七起. ◎大学(S付属弓私エ乙学校. 40. △メく・主声阿・T )iLi I;_l主J l・(_ ・!>:-I_・一生. 謡. 尊30 ;'s. 垂20. ● 0. ● ●. I. 10. ●l. ● ●. I. 0. 35. 30. 図1. ▲5. 40 工芸隻科禾斗巨暮.. ●. 句旦fl'L. 工業科科目の単位数と進学率との関係. 50.

(3) 229. 工業高等学校におけるか)キュラムと大学進学率との関係. り,学校によってかなり幅がある。工業基礎と工業数理を普通科目と数えれば,ほぼ普通 :. 科目:工業科目:実習科目の割合は3. 2. :. 1となっている。大学への進学りを一つのス. ケールとした場合,これらの比率の変化がどのように進学率に影響するかは今後の検討課 題である。 2. 3.. 工業科科目と進学率との関係. 図1に工業科科目の3年間における授業単位総数と大学進学率との関係を示す。ここで, 工業基礎および工業数理は大学受験甲科目として取り上げられている場合が多く,かつ内 容的にも数学や物理に近いため,エ業科科目からは除いた。図にみるように,大学付属私 立学校と大学付属国立学校の結果は,その他の公立および私立の学校の結果に比べて,進 学率が著しく高くしかも工糞科目の単位がかなり少か、ことを示している。そこでこれら の大学付属学校の結果を除いて考えると,工業科目の単位数と進学率との間たはばらつき が大きくほとんど関係が認められない。 一方,実習も工業科の基本となる重要な科目である。そこで高等学校の3年間の実習の 60 企てと学校. ●. (. ◎. 50. o. 私・立弓た七荘. ◎大学l;付J栴私二i2:学校 △. 40. 大学ISf.T信也l蓋J. Ji=革セ空. 賞. J30. i. 'l! ■■l. ;20. ● ●. ●!ヽ. 8 ●. ● ●. 10. ● ●. 0. ●. iii_i_;:. 実習科長ヨ.. 図2. 25. 20. 15. 10. 串f立. 実習科目の単位数と進学率との関係. 総単位数と進学率との関係を調べた結果が図2である。ここでも大学付属学校の結果が他 の学校の結果に比べてかなり異なる.やはりこれらのデータを除いて考えれば,ばらつき があるものの,この場合にも実習科目の単位数と大学進学率との間にはほとんど関連が認 められない。 以上の結果から,工業科の科目は,座学にしろ,自習にしろ,その多少は進学率にプラ スにもマイナスにも作用しないことを示している。このマイナスに作用しないということ は工業科の科目を含みかつ進学率の高い職業科の高等学校が可能であることを示唆してい る。. 30.

(4) 230. 八高隆雄,高木重昭. 60 √●公立学宅更. (. 50. ◎. 0私立学校 /. ◎大学l玉村f熊私立学校. 40. / ノ′. ム大学附嘱匡l文革佼. ′. 買. 30 堤 rJV. 笥 20 ′. 10 ′● ′. 0 ち5. I. ● ●. ●. 50. 60 普j畠科白,. 図3. 65. 単位. 普通科目の単位数と進学率との関係. 60 ●公立学校. (. 50. ◎. 0私立学校 /. ◎=大:学附属私立学校. iO. A. /. /. :大:寧fi付JA匡l立学校. ノ. /. ま. ′. 30. /. 昇. /. <. ・`小. /. 量20. ′ ′. /. 10. 0. ●. ● ●. ‡. +++. ●. ●. ●. ●!'.. I I ●. i:./i I_育_I. 0 50. 55. 督i由科目(含む工兵蓋世およ0工業放射,. 図4. ●. ●. ● ● ●. ●. ● ●. ●. 60. 65 単位. 普通科目(工業基礎と工業数理含む)と進学率との関係. 70.

(5) 231. 工業高等学校におけるが)キュラムと大学進学率との関係. 3.. 3. 普通科目と進学率との関係. 工業科の科目に比べて,大学受験科目となり得る普通科目は,より密接に進学率と結び っいている可能性がある。そこで普通科日の単位数と進学率の関係を詞ペたのが囲3であ るo図1や図2において大学付属学校のデ-タが他の公立・㌧私立学校のデータとはかけ離 れて特異な値を示したが,これらの結果も含めて図3のすべてのデータに共通の傾向が認 められる。すなわち,図3では,すべてのデータに対して普通科目の単位が多いほど進学 率の結果が大きくぼらつき,その最大値も大きくなる。同様の傾向は普通科の科目として 工業基礎と工業数理を含めた図4の場合においても認められる。 -これらの結果は,普通科目の単位数を増すこと自体が大学進学率を上げることには直接 結びつかないものの,普通科目の単位数が多いほど大学進学率を高_くできることを示して いる。なお,. ・普通科目として工業基礎および工業数理を含めた場合にも含めなかった場合 にも同様の傾向が認められたことから,工業基礎および工業数理は大学受験に関連した科 目であるものと判断できる。 ところで,大学付属学校の結果は普通科目の単位数が際だって多く進学率も著しく高い。 これらの大学付属では,公立や私立の学校に比べて,那)キiラム編成に対して各学校の. 裁量の範囲が広く与えられているためであろう。 大学-の進学率を上げること,すなわち将来の工業科の学校が工科系大学への前段階の 教育機関としての存在-と移行することの良否は別にして,もし大学への進学率を高める ことを望むならば,大学付属学校のような普通科目を重視した体制を取ることがその一つ の方策であろう。 3.. 4. 高等学校工菓科の今後のあり方-の-提案 60 ●. ,J>i+L学校. (. 50. ◎. 0私立学校 ◎コ七草附席私立一撃七空. 40. △大学附属国立学校. 安. 立30 A. 毒 20. ∼-● ー. I. ー ■■■■. 、. ●. 10. ー. 事. ∼._。 0. ー ー. ●. ー--_+ ●. ●. ●. ●_oて⊥●ユー●⊥● 〈ヽ. 5000. 0. 人⊂J密度,. 図5. 15008. 10000 人. /. k. m=. 学校所在地の人口密度(市,町単位)と進学率との関係. ー. 2W.

(6) 232. 八高隆雄,高木宣昭. 図5に学校所在地の人口密度(市,町単位)と進学率との関係を示す。この場合にも図 1や図2の場合と同様に大学付属学校のデータが,その他の公立および私立の学校のデー タとは特異な傾向を示している。そこで,この場合にもこれら大学付属学校のデータを除 いて考えれば,人口密度が低い場合にはデータのばらつきが大きくかつその最大値も大き い。すなわち,人口密度が高くなるに従って学校間の差が小さくなりかつ最大進学率も減 少している。大学付属の学校以外は,より大都市圏の学校ほどおしなべて進学率が低く, 地方都市の学校では進学率の低い学校もあるが高い学校もあることがわかる。 工業科の高等学校の今後を考えた場合,大学への進学率だけでその学校の教育を論じて よい筈はない。工業科の学校が大学の工学部の前段階としての教育棟開へとなることが工 業科の学校にとって望ましい道であろうか,またそのように変身できるであろうかは,餐 け入れる大学側と高等学校との重要な問題である。しかし,高学寮社会が浸透し,生徒数 (受験者数)が減少している現在,大学への進学希望者が増えることは必須であり,その 可能性が高い高校-より学力の高い生徒が集まる傾向にあることも自明である。このよう な状況の中で,工業科の特長を行かす道は何であろうか。工業科は中堅の技術者養成がそ の目的であり,技術の空洞化が生じた場合,再び元の状態に戻れるだけの基本的な技術を 教育しておく必要がある。第二次世界大戦後,しばらくの間,航空機の生産が禁止された。 その後遺症は現在でも残っており日本単独で作られた航空機数は極めて少ない。紙に書か れた多くの記録は存在したがそれを再現する技術の伝轟がなされていなかったことがその 原因と思われる。このように考えた場合,工業科の高等学校で必要なものは,机上での学 問だけでなく,人から人へと実習を通して受け継がれる技術を身につけさせることであろ ヽ. つ。. 図2に見たように,実習科目の単位数と大学進学とは相関が認められない。間接的な問 題として,決められた総単位数の中で実習科目の単位数を増やせば,そのしわ寄せが他の 科目に及び進学率に影響することは考えられる。そこで普通科目を減らさないで,専門科 目中の実習科目を重視したカリキュラムが必要となろう。 4.まとめ. 高等学校の工業科の置かれた現状とそのあるべき婆を探るため,関東甲信越地区の高等 学校電気科のカリキュラムと大学-の進学率の関係を調べ以下の結論を得た。 (1)工業科の科目と進学率とは関連が認められない。すなわち,工業科日の存在は大学進 学にマイナスには作用しない。 2. 普通科目が多いほど,大学-の進学率を高くすることができる。. 3. 大学付属学校の場合を除けば,大都市の学校ほどおしなべて進学率が低く,地方の学 校では進学率に差があるものの進学率が高い学校も存在する。 最後に,資料の提僕をいただいた関東甲信越地区の工業科の高等学校および資料の解析. に協力された横浜国立大学学生吉川祐一君に感謝する。また,本研究は横浜市地域研究助 成の一部により行われたものあり,同市に謝意を表する。.

(7) 233. 工業高等学校におけるか)キュラムと大学進学率との関係. 参考文献. 1)例えば,新機械工学一混沌から体系へ,日経メカニかレ,と些, 2). M.L.ダートゥゾフ,. L.K.レスタ-,. (1986),. p・52. R.M.ソロー:MadeinAmerica;依田直也訳:アメリ. カ再生のための米日欧産業比較,草思社, 3)総務庁行政観察局編:産業教育の現状と問題点,. 1990,. p・222. 1991,大蔵省印刷局.

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